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特開2022-52720ゼオライト配向体の製造方法およびゼオライト配向体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022052720
(43)【公開日】2022-04-04
(54)【発明の名称】ゼオライト配向体の製造方法およびゼオライト配向体
(51)【国際特許分類】
   C01B 39/02 20060101AFI20220328BHJP
   C01B 39/14 20060101ALI20220328BHJP
   C01B 39/22 20060101ALI20220328BHJP
   C01B 39/24 20060101ALI20220328BHJP
   C01B 39/32 20060101ALI20220328BHJP
【FI】
C01B39/02
C01B39/14
C01B39/22
C01B39/24
C01B39/32
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021131174
(22)【出願日】2021-08-11
(31)【優先権主張番号】P 2020159086
(32)【優先日】2020-09-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】504159235
【氏名又は名称】国立大学法人 熊本大学
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【弁理士】
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100126664
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 慎吾
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100189337
【弁理士】
【氏名又は名称】宮本 龍
(72)【発明者】
【氏名】松田 元秀
(72)【発明者】
【氏名】連川 貞弘
(72)【発明者】
【氏名】田畑 友望
【テーマコード(参考)】
4G073
【Fターム(参考)】
4G073BA17
4G073BA69
4G073BA75
4G073BA81
4G073BD21
4G073BD26
4G073CZ02
4G073CZ04
4G073CZ05
4G073CZ10
4G073FA30
4G073FD01
4G073GA03
4G073GA09
4G073GA40
(57)【要約】
【課題】強い磁場を用いることなく配向化されたゼオライトを製造できる汎用性の高いゼオライト配向体の製造方法を提供する。
【解決手段】磁性イオン元素を含む水溶液中に、原料ゼオライトを浸漬させてイオン交換することにより、前記原料ゼオライトの結晶構造内に前記磁性イオン元素が導入された磁性化ゼオライトを製造する磁性化工程と、前記磁性化ゼオライトの粉末を溶媒に分散させて分散液とし、前記分散液に磁場を印加しながら、前記磁性化ゼオライトを堆積させて集合させるとともに前記溶媒を除去することにより、前記磁性化ゼオライトの有するミクロ孔が規則配列化されたゼオライト配向体を製造する配向化工程とを有するゼオライト配向体の製造方法とする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁性イオン元素を含む水溶液中に、原料ゼオライトを浸漬させてイオン交換することにより、前記原料ゼオライトの結晶構造内に前記磁性イオン元素が導入された磁性化ゼオライトを製造する磁性化工程と、
前記磁性化ゼオライトの粉末を溶媒に分散させて分散液とし、前記分散液に磁場を印加しながら、前記磁性化ゼオライトを堆積させて集合させるとともに前記溶媒を除去することにより、前記磁性化ゼオライトの有するミクロ孔が規則配列化されたゼオライト配向体を製造する配向化工程とを有する、ゼオライト配向体の製造方法。
【請求項2】
前記磁性イオン元素が、遷移金属元素群、希土類金属元素群から選ばれる磁性を有する元素1種または2種以上である、請求項1に記載のゼオライト配向体の製造方法。
【請求項3】
前記磁性イオン元素が、Ho、Dy、Tb、Erから選ばれる元素1種または2種以上である、請求項1に記載のゼオライト配向体の製造方法。
【請求項4】
前記磁性化ゼオライトが、イオン交換率が5%~90%であるA型ゼオライト、イオン交換率が5%~40%であるL型ゼオライト、イオン交換率が5%~80%であるX型ゼオライト、イオン交換率が5%~70%であるY型ゼオライトから選ばれるいずれかである、請求項1~請求項3のいずれか一項に記載のゼオライト配向体の製造方法。
【請求項5】
前記配向化工程において、前記分散液に0.5~4Tの磁場を印加する、請求項1~請求項4のいずれか一項に記載のゼオライト配向体の製造方法。
【請求項6】
陽イオン元素を含む水溶液を、前記ゼオライト配向体に接触させることにより、前記陽イオン元素と前記ゼオライト配向体を構成する磁性化ゼオライトの有する前記磁性イオン元素とを交換するイオン交換工程を有する、請求項1~請求項5のいずれか一項に記載のゼオライト配向体の製造方法。
【請求項7】
前記ゼオライト配向体が、磁性化されたL型ゼオライトから構成され、前記イオン交換工程後のゼオライト配向体を構成するL型ゼオライトが、磁性イオン残存率4%以下である、請求項6に記載のゼオライト配向体の製造方法。
【請求項8】
前記L型ゼオライトが、c軸配向体である、請求項7に記載のゼオライト配向体の製造方法。
【請求項9】
ロットゲーリング法による配向度が0.05~0.6であり、ゼオライト配向体を構成するゼオライトの結晶構造内に磁性イオン元素が導入されたものである、ゼオライト配向体。
【請求項10】
前記磁性イオン元素が、遷移金属元素群、希土類金属元素群から選ばれる磁性を有する元素1種または2種以上である、請求項9に記載のゼオライト配向体。
【請求項11】
前記磁性イオン元素が、Ho、Dy、Tb、Erから選ばれる元素1種または2種以上である、請求項10に記載のゼオライト配向体。
【請求項12】
前記ゼオライト配向体を構成するゼオライトが、L型ゼオライトである、請求項9~11のいずれか一項に記載のゼオライト配向体。
【請求項13】
前記L型ゼオライトが、c軸配向体である、請求項12に記載のゼオライト配向体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゼオライト配向体の製造方法およびゼオライト配向体に関する。
【背景技術】
【0002】
ゼオライトは、分子サイズの多数のミクロ孔を有する結晶性アルミノケイ酸塩である。ゼオライトは、吸着材、触媒およびイオン交換体の材料として利用されている。近年、分離膜、化学センサーおよびオプトエレクトロニクスなどの分野で、ゼオライトを使用することが検討されている。
【0003】
ゼオライトにおいては、ゼオライトの有するミクロ孔を規則配列化する(配向化する)技術が検討されている。
ゼオライトを配向化する方法としては、特定の原料組成および反応温度で水熱合成処理を行う方法、構造指向剤となる有機分子を利用する方法、磁場を用いる方法が提案されている。磁場を用いる方法として、非特許文献1および非特許文献2には、強磁場を用いてゼオライトの配向を制御する方法が記載されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Chika Matsunaga, Tetsuo Uchikoshi, Tohru S. Suzuki, Yoshio Sakka, Motohide Matsuda, Orientation control of mordenite zeolite in strong magnetic field Microporous and Mesoporous Materials 151 (2012) 188‐194
【非特許文献2】Chika Matsunaga, Tetsuo Uchikoshi, Tohru S. Suzuki, Yoshio Sakka, Motohide Matsuda, Fabrication of the c-axis oriented zeolite L compacts using strong magnetic field Materials Letters 93 (2013) 408‐410
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来、磁場を用いてゼオライトを配向化する方法では、強い磁場を用いてゼオライトを配向化していた。具体的には、超伝導マグネットを利用して、12Tという強い磁場をゼオライトに印加して、ゼオライトの配向化を行っていた。
しかしながら、ゼオライトに強い磁場を印加するためには、大規模な設備が必要である。このため、磁場を用いてゼオライトを配向化する従来の方法は、汎用性が低く、配向化されたゼオライトを工業的に製造する方法として利用しにくかった。
【0006】
本発明は、上記事情を鑑みてなされたものであり、強い磁場を用いることなく配向化されたゼオライトを製造できる汎用性の高いゼオライトの製造方法を提供することを目的とする。
また、強い磁場を用いることなく、汎用性の高い方法で製造できる配向化されたゼオライトを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
[1] 磁性イオン元素を含む水溶液中に、原料ゼオライトを浸漬させてイオン交換することにより、前記原料ゼオライトの結晶構造内に前記磁性イオン元素が導入された磁性化ゼオライトを製造する磁性化工程と、
前記磁性化ゼオライトの粉末を溶媒に分散させて分散液とし、前記分散液に磁場を印加しながら、前記磁性化ゼオライトを堆積させて集合させるとともに前記溶媒を除去することにより、前記磁性化ゼオライトの有するミクロ孔が規則配列化されたゼオライト配向体を製造する配向化工程とを有するゼオライト配向体の製造方法。
【0008】
[2] 前記磁性イオン元素が、遷移金属元素群、希土類金属元素群から選ばれる磁性を有する元素1種または2種以上である、上記[1]に記載のゼオライト配向体の製造方法。
[3] 前記磁性イオン元素が、Ho、Dy、Tb、Erから選ばれる元素1種または2種以上である、上記[1]に記載のゼオライト配向体の製造方法。
[4] 前記磁性化ゼオライトが、イオン交換率が5%~90%であるA型ゼオライト、イオン交換率が5%~40%であるL型ゼオライト、イオン交換率が5%~80%であるX型ゼオライト、イオン交換率が5%~70%であるY型ゼオライトから選ばれるいずれかである[1]~[3]のいずれかに記載のゼオライト配向体の製造方法。
[5] 前記配向化工程において、前記分散液に0.5~4Tの磁場を印加する、上記[1]~[4]のいずれかに記載のゼオライト配向体の製造方法。
【0009】
[6] 陽イオン元素を含む水溶液を、前記ゼオライト配向体に接触させることにより、前記陽イオン元素と前記ゼオライト配向体を構成する磁性化ゼオライトの有する前記磁性イオン元素とを交換するイオン交換工程を有する、上記[1]~[5]のいずれかに記載のゼオライト配向体の製造方法。
[7] 前記ゼオライト配向体が、磁性化したL型ゼオライトから構成され、前記イオン交換工程後のゼオライト配向体を構成するL型ゼオライトが、磁性イオン残存率4%以下である、上記[6]に記載のゼオライト配向体の製造方法。
[8] 前記L型ゼオライトが、c軸配向体である、上記[7]に記載のゼオライト配向体の製造方法。
【0010】
[9] ロットゲーリング法による配向度が0.05~0.6であり、ゼオライト配向体を構成するゼオライトの結晶構造内に磁性イオンが導入されたものである、ゼオライト配向体。
[10] 前記磁性イオン元素が、遷移金属元素群、希土類金属元素群から選ばれる磁性を有する元素1種または2種以上である、上記[9]に記載のゼオライト配向体。
[11] 前記磁性イオン元素が、Ho、Dy、Tb、Erから選ばれる元素1種または2種以上である、上記[10]に記載のゼオライト配向体。
[12] 前記ゼオライト配向体を構成するゼオライトが、L型ゼオライトである、上記[9]~[11]のいずれかに記載のゼオライト配向体。
[13] 前記ゼオライト配向体が、c軸配向体である、上記[12]に記載のゼオライト配向体。
【発明の効果】
【0011】
本発明のゼオライトの製造方法は、磁性イオン元素を含む水溶液中に、原料ゼオライトを浸漬させてイオン交換することにより、原料ゼオライトの結晶構造内に前記磁性イオン元素が導入された磁性化ゼオライトを製造する磁性化工程と、磁性化ゼオライトの粉末を溶媒に分散させて分散液とし、分散液に磁場を印加しながら、磁性化ゼオライトを堆積させて集合させるとともに溶媒を除去することにより、磁性化ゼオライトの有するミクロ孔が規則配列化されたゼオライト配向体を製造する配向化工程とを有する。分散液中の粉末の磁性化ゼオライトは、結晶構造内に磁性イオン元素が導入されたものであるため、分散液に印加する磁場が低磁場であってもミクロ孔が規則配列化される。したがって、本発明のゼオライト配向体の製造方法によれば、強い磁場を用いることなく、ゼオライト配向体を製造できる。よって、本発明のゼオライト配向体の製造方法は、汎用性が高く、配向化されたゼオライトを工業的に製造する方法として好適である。
【0012】
本発明のゼオライト配向体は、ロットゲーリング法による配向度が0.05~0.6であり、ゼオライトのミクロ孔が規則配列化されたものであるので、分離膜、化学センサーおよびオプトエレクトロニクスなどの分野において好ましく使用できる。また、本発明のゼオライト配向体は、汎用性の高い本発明のゼオライト配向体の製造方法を用いて製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、本実施形態の製造方法における配向化工程の一例を説明する図である。
図2図2は、本実施形態の製造方法における配向化工程の他の一例を説明する図である。
図3図3(a)は、製造例1の磁性化ゼオライトおよび原料ゼオライト1について、磁場と磁化との関係を示したグラフである。図3(b)は、製造例2の磁性化ゼオライトおよび原料ゼオライト2について、磁場と磁化との関係を示したグラフである。図3(c)は、製造例3の磁性化ゼオライトおよび原料ゼオライト3について、磁場と磁化との関係を示したグラフである。図3(d)は、製造例4の磁性化ゼオライトおよび原料ゼオライト4について、磁場と磁化との関係を示したグラフである。
図4図4(a)は、製造例5の磁性化ゼオライトおよび原料ゼオライト4について、磁場と磁化との関係を示したグラフである。図4(b)は、製造例6の磁性化ゼオライトおよび原料ゼオライト4について、磁場と磁化との関係を示したグラフである。
図5図5(a)は、製造例7の磁性化ゼオライトおよび原料ゼオライト4について、磁場と磁化との関係を示したグラフである。図5(b)は、製造例8の磁性化ゼオライトおよび原料ゼオライト4について、磁場と磁化との関係を示したグラフである。図5(c)は、製造例9の磁性化ゼオライトおよび原料ゼオライト4について、磁場と磁化との関係を示したグラフである。
図6図6(a)は、製造例10の磁性化ゼオライトおよび原料ゼオライト4について、磁場と磁化との関係を示したグラフである。図6(b)は、製造例11の磁性化ゼオライトおよび原料ゼオライト4について、磁場と磁化との関係を示したグラフである。図6(c)は、製造例12の磁性化ゼオライトおよび原料ゼオライト4について、磁場と磁化との関係を示したグラフである。
図7図7(a)は、参考製造例1の磁性化ゼオライトおよび原料ゼオライト4について、磁場と磁化との関係を示したグラフである。図7(b)は、参考製造例2の磁性化ゼオライトおよび原料ゼオライト4について、磁場と磁化との関係を示したグラフである。
図8図8(a)は、製造例13のゼオライト配向体を斜め上から撮影した写真である。図8(b)は、製造例13のゼオライト配向体を上から撮影した写真である。
図9図9は、原料として使用したゼオライトの粉末(原料粉末)と、粉末状の製造例4の磁性化ゼオライトの粉末(磁性化粉末)と、製造例13のゼオライト配向体およびイオン交換工程後のゼオライト配向体におけるX線回折結果を示したチャートである。
図10図10は、原料として使用したゼオライトの粉末(原料粉末)と、製造例14のゼオライト配向体と、製造例23のゼオライト配向体と、参考製造例5のゼオライト成形体におけるX線回折結果を示したチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明者らは、上記課題を解決するために、以下に示すように鋭意研究を重ねた。
すなわち、ゼオライトの磁性はきわめて弱い。このため、磁場を用いてゼオライトを配向化するためには、強い磁場を用いる必要がある。そこで、本発明者は、低い磁場を用いてゼオライトを配向化できるようにするためには、磁場を印加する前のゼオライトの磁場感受性を高めればよいと考えた。
【0015】
そして、本発明者は、ゼオライトの磁性とイオン交換特性とに着目して、鋭意検討した。その結果、ゼオライトに含まれる陽イオン元素の一部または全部を磁性イオン元素とイオン交換することにより、磁場感受性の高い磁性化ゼオライトが得られることを見出した。
さらに、本発明者は、イオン交換後に得られた磁性化ゼオライトの粉末を溶媒に分散させて分散液とし、分散液に磁場を印加しながら、磁性化ゼオライトを堆積させて集合させるとともに溶媒を除去することにより、汎用性の高い装置および方法を用いて印加できる低い磁場を用いてゼオライト配向体を製造できることを確認し、本発明を完成させた。
【0016】
以下、本発明のゼオライト配向体の製造方法およびゼオライト配向体について、詳細に説明する。
[ゼオライト配向体]
本実施形態のゼオライト配向体は、本実施形態のゼオライト配向体の製造方法を用いて製造されたものである。本実施形態のゼオライト配向体は、粉末の磁性化ゼオライトの有するミクロ孔が規則配列化されて集合した成形体である。本実施形態のゼオライト配向体は、ロットゲーリング法による配向度が0.05~0.6であり、結晶構造内に磁性イオン元素が導入されたゼオライトのミクロ孔が規則配列化されたものである。ロットゲーリング法による配向度においては、配向度が1であるときは完全に配向していることを示し、配向度が0であるときは配向していないことを示す。
【0017】
本実施形態のゼオライト配向体は、ロットゲーリング法による配向度が0.05~0.6であり、0.05~0.5が好ましく、0.1~0.5であることがより好ましい。ゼオライト配向体の配向度は、用途に応じて適宜決定できる。ゼオライト配向体の配向度が0.05以上であると、配向化によってミクロ孔が規則配列化されていることによる効果が十分に得られる。ゼオライト配向体の配向度は、ミクロ孔が規則配列化されていることによる効果が顕著となるため、0.1以上であることが好ましく、0.2以上であることがより好ましい。また、配向度が0.5以下であるゼオライト配向体は、本実施形態の製造方法により、歩留まりよく製造できる。
【0018】
本実施形態のゼオライト配向体を構成するゼオライトの種類は、ゼオライト配向体の用途に応じて適宜選択でき、特に限定されない。
例えば、本実施形態のゼオライト配向体を構成するゼオライトの種類は、A型(LTA)、X型(FAU)、Y型(FAU)、L型(LTL)のいずれであってもよい。ゼオライト配向体を構成するゼオライトが結晶構造の異方性の大きいL型である場合、ゼオライトが配向化されていることによる効果、例えば分子ふるい能、吸着能等が発揮されやすく、好ましい。
【0019】
本実施形態のゼオライト配向体を構成する磁性化ゼオライトは、結晶性アルミノ珪酸塩であり、AlとSiとO(酸素)と陽イオン元素と磁性イオン元素とを含む。
本実施形態のゼオライト配向体を構成する磁性化ゼオライト中に含まれるシリコン原子数とアルミニウム原子数との比(Si:Al)、陽イオン元素および磁性イオン元素の種類および含有量は、用途に応じて適宜決定でき、特に限定されない。
【0020】
シリコン原子数とアルミニウム原子数との比(Si:Al)は、例えば、1:1~5:1とすることができる。
陽イオン元素としては、例えば、Cs,Rb,K,Ba,Sr,Na,Ca,Mgなどが挙げられる。陽イオン元素は、後述する本実施形態の製造方法における磁性化工程およびイオン交換工程を効率よく行うことができるため、KまたはNaであることが好ましい。ゼオライト配向体を構成するゼオライト中に含まれる陽イオン元素は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
【0021】
本実施形態のゼオライト配向体を構成する磁性化ゼオライトの結晶構造内に導入されている磁性イオン元素は、遷移金属元素群、希土類金属元素群から選ばれる磁性を有する元素1種または2種以上である。遷移金属元素群から選ばれる磁性を有する元素としては、例えば、Fe、Coが挙げられる。希土類金属元素群から選ばれる磁性を有する元素としては、例えば、Ho、Dyが挙げられる。磁性イオン元素は、大きな磁気モーメントを有するイオンとなる元素であることが好ましい。それは、本実施形態のゼオライト配向体を製造するために行う後述する配向化工程において、配向度の高いゼオライト配向体が得られやすいためである。ゼオライトの結晶構造内に導入されている磁性イオン元素は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。本実施形態において、ゼオライト配向体を構成する磁性化ゼオライトの結晶構造内に導入されている磁性イオン元素が、原料ゼオライト中に含まれる陽イオン元素でもある場合、陽イオンではなく磁性イオン元素とみなす。
【0022】
本実施形態のゼオライト配向体を構成する磁性化ゼオライトの結晶構造内に導入されている磁性イオン元素のイオンとしては、具体的には、Fe3+(磁気モーメント5.92(μ)),Fe2+(磁気モーメント6.70(μ)),Co2+(磁気モーメント6.63(μ)),Ni2+(磁気モーメント5.59(μ)),Gd3+(磁気モーメント7.98(μ)),Ho3+(磁気モーメント10.60(μ)),Dy3+(磁気モーメント10.63(μ))、Mn2+(磁気モーメント5.92(μ)),Tb3+(磁気モーメント9.72(μ)),Er3+(磁気モーメント9.59(μ)),Tm3+(磁気モーメント7.57(μ)),Ti3+、V4+(磁気モーメント1.55(μ)),V3+(磁気モーメント1.63(μ)),Cr2+、V2+(磁気モーメント0.77(μ)),Cu2+(磁気モーメント3.55(μ)),Ce3+(磁気モーメント2.54(μ)),Pr3+(磁気モーメント3.58(μ)),Nd3+(磁気モーメント3.62(μ)),Pm3+(磁気モーメント2.68(μ)),Sm3+(磁気モーメント0.85(μ)),Yb3+(磁気モーメント4.53(μ))などが挙げられる。これらの磁性イオン元素の中でも、ゼオライト配向体を構成する磁性化ゼオライトの結晶構造内に導入されている磁性イオン元素は、大きな磁気モーメントを有するため、Ho、Dy、Tb、Erから選ばれる元素1種または2種以上であることが好ましい。また、これらのうち、原料の入手がしやすい観点からは、Hoであることがより好ましい。
【0023】
本実施形態のゼオライト配向体を構成する磁性化ゼオライトにおける陽イオン元素の数と磁性イオン元素の数との比は、ゼオライト配向体の用途に応じて適宜選択できる。本実施形態のゼオライト配向体を構成する磁性化ゼオライトに導入されている磁性イオン元素が陽イオン元素を兼ねる場合、本実施形態のゼオライト配向体を構成する磁性化ゼオライトには陽イオン元素が含まれていなくてもよい。
【0024】
本実施形態のゼオライト配向体を構成する磁性化ゼオライトにおけるイオン交換率は、ゼオライトの種類によって異なる。磁性化ゼオライトは、イオン交換率が高いものであるほど、結晶構造内に導入されている磁性イオン元素の量が多く磁場感受性が高いものであり、ゼオライト配向体をより低い磁場で製造可能であるため好ましい。
本明細書において「イオン交換率」とは、以下に示す式により算出した値であることを意味する。
イオン交換率(%)={b/(a+b)}×100
(式中のaは陽イオンの価数と数の積であり、bは磁性イオンの価数と数との積bである。)
【0025】
磁性化ゼオライトのイオン交換率は、A型ゼオライトの場合、5%~90%で交換可能であり、より低い磁場を用いてゼオライト配向体を得るには、イオン交換率が10%~90%であることが好ましく、20%~90%であることがより好ましい。イオン交換率が20%以上であると、磁性イオン元素を含むことによる効果が得られやすい。
磁性化ゼオライトのイオン交換率は、L型ゼオライトの場合、5%~40%で交換可能であり、より低い磁場を用いてゼオライト配向体を得るには、イオン交換率が10%~40%であることが好ましく、20%~40%であることがより好ましい。イオン交換率が20%以上であると、磁性イオン元素を含むことによる効果が得られやすい。
【0026】
磁性化ゼオライトのイオン交換率は、X型ゼオライトの場合、5%~80%で交換可能であり、より低い磁場を用いてゼオライト配向体を得るには、イオン交換率が10%~80%であることが好ましく、20%~80%であることがより好ましい。イオン交換率が20%以上であると、磁性イオン元素を含むことによる効果が得られやすい。
磁性化ゼオライトのイオン交換率は、Y型ゼオライトの場合、5%~70%で交換可能であり、より低い磁場を用いてゼオライト配向体を得るには、イオン交換率が10%~70%であることが好ましく、20%~70%であることがより好ましい。イオン交換率が20%以上であると、磁性イオン元素を含むことによる効果が得られやすい。
【0027】
本実施形態のゼオライト配向体の結晶配向は、特に限定されるものではなく、例えば、c軸配向であってもよいし、ab面配向であってもよい。
例えば、本実施形態のゼオライト配向体がL型ゼオライトの場合、L型ゼオライトは、c軸配向体であってもよいし、ab面配向体であってもよい。
本実施形態のゼオライト配向体を構成するゼオライトが、例えばL型ゼオライトの場合、結晶配向がc軸配向であるc軸配向体を容易に製造するためには、磁性化ゼオライトの結晶構造内に導入されている磁性イオン元素がCe,Pr,Nd,Tb,Dy,Hoから選ばれる1種又は2種以上であることが好ましい。
本実施形態のゼオライト配向体を構成するゼオライトが、例えばL型ゼオライトの場合、結晶配向がab面配向であるab面配向体を容易に製造するためには、磁性化ゼオライトの結晶構造内に導入されている磁性イオン元素がPm,Sm,Er,Tm,Ybから選ばれる1種又は2種以上であることが好ましい。
【0028】
本実施形態のゼオライト配向体は、ロットゲーリング法による配向度が0.05~0.6であり、結晶構造内に磁性イオン元素が導入されたゼオライトのミクロ孔が規則配列化されたものである。したがって、本実施形態のゼオライト配向体は、分離膜、化学センサーおよびオプトエレクトロニクスなどの分野において好ましく使用できる。また、本実施形態のゼオライト配向体は、後述する汎用性の高い本実施形態のゼオライト配向体の製造方法を用いて製造できる。
【0029】
[ゼオライト配向体の製造方法]
本実施形態のゼオライト配向体の製造方法は、磁性化工程と、配向化工程とを有する。本実施形態のゼオライト配向体の製造方法では、配向化工程の後に、必要に応じてイオン交換工程を行う。
(磁性化工程)
まず、磁性イオン元素を含む水溶液中に、原料ゼオライトを浸漬させてイオン交換する。このことにより、原料ゼオライトに含まれる陽イオン元素が磁性イオン元素と交換され、原料ゼオライトの結晶構造内に磁性イオン元素が導入された磁性化ゼオライトが生成される。
【0030】
磁性化工程において使用する原料ゼオライトは、結晶性アルミノ珪酸塩であり、AlとSiとO(酸素)と陽イオン元素とを含む。
原料ゼオライト中に含まれる、陽イオン元素の種類および含有量は、ゼオライトの種類に応じて適宜決定される。
【0031】
原料ゼオライトに含まれる陽イオン元素としては、例えば、Cs,Rb,K,Ba,Sr,Na,Ca,Mgなどが挙げられる。原料ゼオライト中に含まれる陽イオン元素は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。原料ゼオライトに含まれる陽イオン元素は、目的物であるゼオライト配向体に含まれる陽イオン元素と同じであってもよいし、異なっていてもよい。原料ゼオライトに含まれる陽イオン元素が、目的物であるゼオライト配向体に含まれる陽イオン元素と同じである場合、ゼオライト配向体の製造工程において、陽イオン元素の種類を変更するためのイオン交換工程を行うことなく、容易に製造できる場合がある。
【0032】
磁性化工程において使用する原料ゼオライトの種類は、如何なる種類であってもよく、例えば、A型、X型、Y型、L型などが挙げられ、特に結晶構造の異方性の大きいL型であることが好ましく、目的物である配向化されたゼオライトの種類に応じて適宜決定できる。
原料ゼオライトとしては、市販されているゼオライトを用いてもよい。
【0033】
原料ゼオライトとしては、粉末状のゼオライトを用いることができる。原料ゼオライトとしては、粉末状のゼオライトを、必要に応じて、板状、ペレット状などの任意の形状に成形したものを用いてもよい。
粉末状のゼオライトを成形する方法としては、例えば、一軸加圧成形法など公知の方法を用いることができる。
【0034】
磁性化工程において使用する磁性イオン元素を含む水溶液としては、例えば、上述した磁性イオン元素を含む硝酸塩の水溶液、塩化物の水溶液などが挙げられる。例えば、磁性イオン元素がHoである場合、磁性イオン元素を含む水溶液として、硝酸ホルミウム水溶液などを好ましく用いることができる。
磁性イオン元素を含む水溶液中の磁性イオン元素の濃度は、例えば、0.01mol/L~1mol/Lとすることができ、原料ゼオライトの種類、目的物である磁性化ゼオライトの組成などに応じて適宜決定できる。
【0035】
本実施形態において製造するゼオライト配向体の結晶配向は、磁性化工程において使用する磁性イオン元素の種類によって制御できる。このため、磁性化工程において使用する磁性イオン元素は、製造するゼオライト配向体の結晶配向に応じて選択することが好ましい。
具体的には、例えばL型ゼオライトのc軸配向体を製造する場合、磁性イオン元素としてCe,Pr,Nd,Tb,Dy,Hoから選ばれる1種又は2種以上を選択することが好ましい。また、例えばL型ゼオライトのab面配向体を製造する場合、磁性イオン元素としてPm,Sm,Er,Tm,Ybから選ばれる1種又は2種以上を選択することが好ましい。
【0036】
磁性化工程において、磁性イオン元素を含む水溶液中に原料ゼオライトを浸漬させる方法としては、公知の方法を用いることができ、原料ゼオライトの種類によって特に限定されない。
磁性化工程において、磁性イオン元素を含む水溶液中に原料ゼオライトを浸漬させる温度、時間などの条件は、原料ゼオライトの種類、目的物である磁性化ゼオライトの組成などに応じて適宜決定できる。
【0037】
磁性化工程においては、原料ゼオライトに含まれる陽イオン元素のうち一部のみが磁性イオン元素と交換されてもよいし、陽イオン元素の全部が磁性イオン元素と交換されてもよい。原料ゼオライトに含まれる陽イオン元素の全部が磁性イオン元素と交換された場合、製造された磁性化ゼオライトには、陽イオン元素が含まれない。
【0038】
磁性化工程において製造した磁性化ゼオライトのイオン交換率は、磁性化ゼオライト(原料ゼオライト)の種類によって異なる。磁性化ゼオライトは、イオン交換率が高いほど、結晶構造内に導入されている磁性イオン元素の量が多く、磁場感受性が高い。このため、イオン交換率の高い磁性化ゼオライトであるほど、後述する配向化工程において、より低い磁場を用いることができ、好ましい。
【0039】
磁性化ゼオライトのイオン交換率は、A型ゼオライトである場合、5%~90%であり、ゼオライト配向体を得るには、イオン交換率が10%~90%であることが好ましく、20%~90%であることがより好ましい。イオン交換率が20%以上であると、十分な磁場感受性を有する磁性化ゼオライトとなる。このため、イオン交換率が20%以上であると、後述する配向化工程において磁性化ゼオライトに印加する磁場の強度が低くてすむ効果が顕著になるとともに、配向度の高いゼオライト配向体が得られやすくなる。また、イオン交換率が90%以下であると、必要に応じて後述するイオン交換工程を行うことにより、磁性イオン元素の残存量が少ない配向化されたゼオライトが得られる。
【0040】
磁性化ゼオライトのイオン交換率は、L型ゼオライトである場合、5%~40%であり、ゼオライト配向体を得るには、イオン交換率が10%~40%であることが好ましく、20%~40%であることがより好ましい。イオン交換率が20%以上であると、十分な磁場感受性を有する磁性化ゼオライトとなる。このため、イオン交換率が20%以上であると、後述する配向化工程において磁性化ゼオライトに印加する磁場の強度が低くてすむ効果が顕著になるとともに、配向度の高いゼオライト配向体が得られやすくなる。また、イオン交換率が40%以下であると、必要に応じて後述するイオン交換工程を行うことにより、磁性イオン残存率が4%以下である磁性イオン元素の残存量が少ない配向化されたゼオライトが得られる。
【0041】
磁性化ゼオライトのイオン交換率は、X型ゼオライトである場合、5%~80%であり、ゼオライト配向体を得るには、イオン交換率が10%~80%であることが好ましく、20%~80%であることがより好ましい。イオン交換率が20%以上であると、十分な磁場感受性を有する磁性化ゼオライトとなる。このため、イオン交換率が20%以上であると、後述する配向化工程において磁性化ゼオライトに印加する磁場の強度が低くてすむ効果が顕著になるとともに、配向度の高いゼオライト配向体が得られやすくなる。また、イオン交換率が80%以下であると、必要に応じて後述するイオン交換工程を行うことにより、磁性イオン元素の残存量が少ない配向化されたゼオライトが得られる。
【0042】
磁性化ゼオライトのイオン交換率は、Y型ゼオライトである場合、5%~70%であり、ゼオライト配向体を得るには、イオン交換率が10%~70%であることが好ましく、20%~70%であることがより好ましい。イオン交換率が20%以上であると、十分な磁場感受性を有する磁性化ゼオライトとなる。このため、イオン交換率が20%以上であると、後述する配向化工程において磁性化ゼオライトに印加する磁場の強度が低くてすむ効果が顕著になるとともに、配向度の高いゼオライト配向体が得られやすくなる。また、イオン交換率が70%以下であると、必要に応じて後述するイオン交換工程を行うことにより、磁性イオン元素の残存量が少ない配向化されたゼオライトが得られる。
【0043】
(配向化工程)
次に、本実施形態では、磁性化工程で製造された磁性化ゼオライトの粉末を溶媒に分散させて分散液とし、分散液に磁場を印加しながら、磁性化ゼオライトを堆積させて集合させるとともに溶媒を除去する。このことにより、粉末の磁性化ゼオライトの有するミクロ孔が規則配列化されて集合した成形体であるゼオライト配向体が形成する。
【0044】
磁性化ゼオライトとしては、粉末のものを用いる。
原料ゼオライトとして粉末状のゼオライトを用いた場合には、磁性化工程を行うことにより、粉末の磁性化ゼオライトが得られる。したがって、磁性化工程で製造された磁性化ゼオライトを、そのまま配向化工程において使用できる。
原料ゼオライトとして、粉末状のゼオライトを、板状、ペレット状などの任意の形状に成形したものを用いた場合、磁性化工程で製造された磁性化ゼオライトを、公知の方法により粉砕して粉末としてから配向化工程において使用する。
【0045】
磁性化ゼオライトの粉末を溶媒に分散させて分散液とする方法としては、公知の方法を用いることができる。溶媒としては、例えば水などを用いることができる。
【0046】
分散液に磁場を印加する方法としては、市販のネオジウム磁石を用いる方法、市販のサマリウムコバルト磁石を用いる方法、電磁石を用いる方法など公知の方法を用いることができ、磁性化ゼオライトの磁場感受性に応じて適宜決定できる。
【0047】
配向化工程において、分散液に印加する磁場は、0.5~4Tであることが好ましく、0.9~1.5Tであることがより好ましい。分散液に印加する磁場が0.5T以上であると、配向度が0.05以上である配向化ゼオライトが得られやすく、好ましい。分散液に印加する磁場が0.9T以上であると、配向度が0.2以上である配向化ゼオライトが得られやすく、好ましい。分散液に印加する磁場が4T以下であると、超伝導マグネットを利用することなく、汎用性の高い方法および装置を用いて、分散液に磁場を印加でき、好ましい。分散液に印加する磁場が1.5T以下であると、市販のネオジウム磁石やサマリウムコバルト磁石など、より汎用性の高い方法および装置を用いることができる。
【0048】
配向化工程においては、スリップキャスト法を用いることが好ましい。
具体的には、スリップキャスト法として、以下に示す方法を用いることができる。まず、磁性化ゼオライトの粉末を溶媒に分散させた分散液を用意する。次に、基板上に設置した枠状の成形型を用意する。成形型の形状は、枠状であればよく、例えば、平面視円形状、平面視多角形状など任意の形状とすることができる。次に、成形型内に分散液を流し込み、分散液に所定の方向の磁場を印加して、分散液中の磁性化ゼオライトを配向させながら、磁性化ゼオライトを成形型内で堆積させて集合させるとともに分散液中の溶媒を除去する。その後、得られた堆積物を乾燥させて、成形型を取り外す。以上の工程により、成形型の形状に対応する形状を有するゼオライト配向体が得られる。
【0049】
ゼオライト配向体の形状としては、例えば、球状、円筒状、円柱状など任意の形状とすることができる。
【0050】
図1は、本実施形態の製造方法における配向化工程の一例を説明する図である。図1では、L型ゼオライトを用いた場合を例に挙げて説明する。
図1に示すように、例えば、分散液に、基板Sに対して垂直な方向に磁場B1を印加しながら、ゼオライトの結晶構造内にDy3+、Ho3+、Tb3+、Nd3+、Pr3+又はCe3+が導入された磁性化ゼオライトMZ1を集合堆積させて溶媒を除去する。これにより、磁性化ゼオライトMZ1のc軸が磁場B1の印加方向に沿って配列し、粉末の磁性化ゼオライトMZ1の有するミクロ孔MP1が基板Sに対して垂直な方向に規則配列化されて集合した成形体であるゼオライト配向体A1を形成することができる。このゼオライト配向体A1は、磁性化ゼオライトMZ1のc軸が基板表面に対して垂直に配列したc軸配向体である。
【0051】
また、例えば、磁場B1を印加しながら、ゼオライトの結晶構造内にEr3+、Yb又はTm3+が導入された磁性化ゼオライトMZ2を集合堆積させて溶媒を除去する。これにより、磁性化ゼオライトMZ2のab面が磁場B1の印加方向に沿って配列し、粉末の磁性化ゼオライトMZ2の有するミクロ孔MP2が基板Sの面内方向に規則配列化されて集合した成形体であるゼオライト配向体A2を形成することができる。このゼオライト配向体A2は、磁性化ゼオライトMZ1のab面が基板表面に対して垂直に配列したab面配向体である。
【0052】
一方、例えば、磁場B1を印加しながら、ゼオライトの結晶構造内にGd3+又はEuが導入された磁性化ゼオライトMZ3を集合堆積させて溶媒を除去する。この場合、磁性化ゼオライトMZ3のc軸、ab面のいずれも、磁場B1の印加方向に沿って配列せず、粉末の磁性化ゼオライトMZ3の有するミクロ孔MP3が無配向な状態で集合した成形体であるゼオライト配向体A3が形成される。
【0053】
図2は、本実施形態の製造方法における配向化工程の他の一例を説明する図である。
図2に示すように、例えば、分散液に、基板Sに対して水平な方向に磁場B2を印加しながら、ゼオライトの結晶構造内にDy3+、Ho3+、Tb3+、Nd3+、Pr3+又はCe3+が導入された磁性化ゼオライトMZ1を集合堆積させて溶媒を除去する。これにより、磁性化ゼオライトMZ1のc軸が磁場B2の印加方向に沿って配列し、粉末の磁性化ゼオライトMZ1の有するミクロ孔MP1が基板Sの磁場印加方向に沿って規則配列化されて集合した成形体であるゼオライト配向体A4を形成することができる。このゼオライト配向体A4は、磁性化ゼオライトMZ1のab面が基板表面に対して垂直に配列したab面配向体である。
【0054】
また、例えば、磁場B2を印加しながら、ゼオライトの結晶構造内にEr3+、Yb又はTm3+が導入された磁性化ゼオライトMZ2を集合堆積させて溶媒を除去する。これにより、磁性化ゼオライトMZ2のab面が磁場B2の印加方向に沿って配列し、粉末の磁性化ゼオライトMZ2の有するミクロ孔MP2が基板Sに対して垂直な方向に規則配列化されて集合した成形体であるゼオライト配向体A5を形成することができる。このゼオライト配向体A5は、磁性化ゼオライトMZ2のc軸が基板表面に対して垂直に配列したc軸配向体である。
【0055】
一方、例えば、磁場B2を印加しながら、ゼオライトの結晶構造内にGd3+又はEuが導入された磁性化ゼオライトMZ3を集合堆積させて溶媒を除去する。この場合、磁性化ゼオライトMZ3のc軸、ab面のいずれも、磁場B2の印加方向に沿って配列せず、粉末の磁性化ゼオライトMZ3の有するミクロ孔MP3が無配向な状態で集合した成形体であるゼオライト配向体A6が形成される。
【0056】
尚、上記配向化工程において、ゼオライトの結晶構造内にTm3+、Pm3+又はSm3+が導入された磁性化ゼオライトを用いる場合、これらの金属イオンの電子状態がEr3+等と類似していることから、磁性化ゼオライトMZ2或いは磁性化ゼオライトMZ5と同様の配向挙動を示すと推察される。
また、ゼオライトの結晶構造内にLu3+が導入された磁性化ゼオライトを用いる場合、金属イオンの電子状態がGd3+等と類似していることから、磁性化ゼオライトMZ3或いは磁性化ゼオライトMZ6と同様の配向挙動を示すと推察される。
【0057】
このように、上記配向化工程において、磁性化ゼオライトの結晶構造内に導入された金属イオンの種類や、印加される磁場の方向を調整することにより、各種磁性イオン元素を含有し且つ磁性化ゼオライトの配向が異なるゼオライト配向体を得ることができる。
【0058】
(イオン交換工程)
次に、本実施形態では、配向化工程で製造されたゼオライト配向体に、必要に応じて、陽イオン元素を含む水溶液を接触させる。このことにより、陽イオン元素とゼオライト配向体を構成する磁性化ゼオライトの有する磁性イオン元素とを交換する。
【0059】
イオン交換工程において使用する陽イオン元素を含む水溶液としては、例えば、上述した陽イオンとなる元素を含む塩化物の水溶液などが挙げられる。例えば、陽イオン元素がKである場合、塩化カリウム水溶液などを好ましく用いることができる。陽イオン元素を含む水溶液中の陽イオン元素は、原料ゼオライトに含まれる陽イオン元素と同じであってもよいし、異なっていてもよい。
陽イオン元素を含む水溶液中の陽イオン元素濃度は、例えば、0.01~1mol/Lとすることができ、ゼオライト配向体を構成するゼオライトの種類、イオン交換工程後のゼオライト配向体を構成するゼオライトの組成などに応じて適宜決定できる。
【0060】
イオン交換工程において、陽イオン元素を含む水溶液とゼオライト配向体とを接触させる方法としては、陽イオン元素を含む水溶液中にゼオライト配向体を浸漬させる方法などを用いることができ、ゼオライト配向体を構成するゼオライトの種類によって特に限定されない。
イオン交換工程において、陽イオン元素を含む水溶液とゼオライト配向体とを接触させる温度、時間などの条件は、ゼオライト配向体を構成するゼオライトの種類、目的物であるイオン交換工程後のゼオライト配向体の組成などに応じて適宜決定できる。
【0061】
イオン交換工程において得られたイオン交換工程後のゼオライト配向体を構成するゼオライトの磁性イオン残存率は、ゼオライト配向体を構成するゼオライトの種類によって異なる。
イオン交換工程後のゼオライト配向体を構成するゼオライトの磁性イオン残存率は、例えば、L型ゼオライトである場合、4%以下とすることができ、1%以下であることが好ましい。磁性イオン残存率が4%以下であると、磁性イオン元素の数が十分に少ないため、磁性イオン元素を含まないゼオライト配向体と同様の用途に用いることができる。また、イオン交換工程後のゼオライト配向体を構成するゼオライトの磁性イオン残存率が4%以下であるものは、本実施形態のイオン交換工程を行うことにより、容易に製造できる。
【0062】
イオン交換工程において、陽イオン元素を含む水溶液とゼオライト配向体とを接触させる温度、時間などの条件は、ゼオライト配向体を構成する磁性化ゼオライトの組成、ゼオライト配向体を構成するゼオライトの種類などに応じて適宜決定できる。
本実施形態においては、イオン交換工程の条件を調整することにより、イオン交換工程後のゼオライト配向体中に残存する磁性イオン元素の残存量が検出限界以下となる(すなわち、磁性イオン元素を含まない)ようにしてもよい。
【0063】
本実施形態のイオン交換工程を行うことによるゼオライト配向体の配向性(ロットゲーリング法による配向度)への影響は僅かであり、イオン交換工程を行うことによるゼオライト配向体の配向性への影響はないとみなすことができる。
【0064】
本実施形態のゼオライト配向体の製造方法では、磁性化工程を行うことにより製造した磁性化ゼオライトの粉末を溶媒に分散させて分散液とし、分散液に磁場を印加しながら、磁性化ゼオライトを堆積させて集合させるとともに溶媒を除去する。磁性化ゼオライトは、結晶構造内に磁性イオン元素が導入されたものであるため、分散液に印加する磁場が低磁場であってもミクロ孔が規則配列化される。したがって、本実施形態のゼオライト配向体の製造方法によれば、強い磁場を用いることなく、ゼオライト配向体を製造できる。
【0065】
また、本実施形態のゼオライト配向体の製造方法において、必要に応じて、陽イオン元素とゼオライト配向体を構成する磁性化ゼオライトの有する磁性イオン元素とを交換するイオン交換工程を行うことで、磁性イオン元素を含まないゼオライト配向体、または磁性イオン元素の残存量が少ないゼオライト配向体が得られる。したがって、磁性イオン元素を含まない、または磁性イオン元素の残存量が少ないことが好ましい用途に好適なゼオライト配向体が得られる。
【実施例0066】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明する。なお、本発明は、以下の実施例のみに限定されない。
[製造例1]
(磁性化工程)
硝酸ホルミウムn水和物(富士フイルム和光純薬株式会社製)を純水に溶解し、磁性イオン元素を含む水溶液として、0.1mol/L硝酸ホルミウム水溶液を調製した。
また、原料ゼオライトとして、以下に示す粉末状の原料ゼオライト1を用意した。
(原料ゼオライト1)A型ゼオライト、商品名:合成ゼオライトA-4粉末、和光純薬工業株式会社製、シリコン原子数とアルミニウム原子数との比(Si/Al=1.0)
【0067】
原料ゼオライト1について、振動試料型磁力計(Vibrating Sample Magnetometer:VSM)(商品名:TM-VSM15148S、株式会社玉川製作所製)を用いて、室温で、周波数82.5Hz、振幅3mmP-P、最大磁場2T、ロックインアンプ感度100μV、時定数30msec.の条件で、磁気特性(磁化および磁場)を測定した。その結果を図3(a)に示す。
【0068】
上記の0.1mol/L硝酸ホルミウム水溶液40mLに、原料ゼオライト1を2g浸漬し、振とう機(タイテック株式会社製)を用いて室温(25℃)で24時間、回転速度160rpmで攪拌し、ゼオライトの結晶構造内にHo3+が導入された磁性化ゼオライトを生成させた。
磁性化ゼオライトを生成させた反応液を、目の粗さが0.2μmのメンブレンフィルターを用いて濾過し、純水を用いて3回洗浄して、粉末状の磁性化ゼオライトを得た。
【0069】
このようにして得られた製造例1の磁性化ゼオライトの磁気特性(磁化および磁場)を、原料ゼオライト1と同様にして測定した。その結果を図3(a)に示す。
図3(a)は、製造例1の磁性化ゼオライトおよび原料ゼオライト1について、磁場と磁化との関係を示したグラフである。
【0070】
[製造例2~3]
原料ゼオライト1に代えて、以下に示す粉末状の原料ゼオライト2~3をそれぞれ用いたこと以外は、製造例1と同様にして磁性化工程を行い、粉末状の製造例2~3の磁性化ゼオライトを得た。
【0071】
(原料ゼオライト2)市販X型ゼオライト、商品名:NaX、シリコン原子数とアルミニウム原子数との比(Si/Al=1.3)
(原料ゼオライト3)Y型ゼオライト、商品名:HSZ-320NAA、東ソー株式会社製、シリコン原子数とアルミニウム原子数との比(Si/Al=2.7)
【0072】
[製造例4]
硝酸ホルミウムn水和物(富士フイルム和光純薬株式会社製)を純水に溶解し、磁性イオン元素を含む水溶液として、0.1mol/L硝酸ホルミウム水溶液を調製した。
また、原料ゼオライトとして、以下に示す粉末状の原料ゼオライト4を用意した。
(原料ゼオライト4)L型ゼオライト、商品名:HSZ-500KOA、東ソー株式会社製、シリコン原子数とアルミニウム原子数との比(Si/Al=3.0)
【0073】
上記の0.1mol/L硝酸ホルミウム水溶液40mLに、原料ゼオライト1を2g浸漬し、振とう機(タイテック株式会社製)を用いて室温(25℃)で24時間、回転速度160rpmで攪拌し、ゼオライトの結晶構造内にHo3+が導入された磁性化ゼオライトを生成させた。
【0074】
原料ゼオライト2~4と、製造例2~4の磁性化ゼオライトの磁気特性(磁化および磁場)を、原料ゼオライト1と同様にして測定した。その結果を図3(b)~図3(d)に示す。
【0075】
図3(b)は、製造例2の磁性化ゼオライトおよび原料ゼオライト2について、磁場と磁化との関係を示したグラフである。図3(c)は、製造例3の磁性化ゼオライトおよび原料ゼオライト3について、磁場と磁化との関係を示したグラフである。図3(d)は、製造例4の磁性化ゼオライトおよび原料ゼオライト4について、磁場と磁化との関係を示したグラフである。
【0076】
図3(a)~図3(d)に示すように、原料ゼオライト1~4は、いずれも磁場を変化させることによる磁化の変化がほとんどなく、磁性が弱いことが確認できた。一方、図3(a)~図3(d)に示すように、製造例1~4の磁性化ゼオライトは、いずれも磁場を高くすることに伴って磁化が大きくなっている。このことから、原料ゼオライトの種類に関わらず、磁性化工程を行うことにより、磁場感受性の高い磁性化ゼオライトが得られることが確認できた。
【0077】
[製造例5]
硝酸ジスプロシウム六水和物(富士フイルム和光純薬株式会社製)を純水に溶解し、磁性イオン元素を含む水溶液として、0.1mol/L硝酸ジスプロシウム水溶液を調製した。
また、原料ゼオライトとして、以下に示す粉末状の原料ゼオライト4を用意した。
(原料ゼオライト4)L型ゼオライト、商品名:HSZ-500KOA、東ソー株式会社製、シリコン原子数とアルミニウム原子数との比(Si/Al=3.0)
【0078】
上記の0.1mol/L硝酸ジスプロシウム水溶液40mLに、原料ゼオライト1を2g浸漬し、振とう機(タイテック株式会社製)を用いて室温(25℃)で24時間、回転速度160rpmで攪拌し、ゼオライトの結晶構造内にDy3+が導入された磁性化ゼオライトを生成させた。
【0079】
[製造例6]
塩化テルビウム(III)六水和物(関東化学株式会社製)を純水に溶解し、磁性イオン元素を含む水溶液として、0.1mol/L塩化テルビウム水溶液を調製した。
また、原料ゼオライトとして、以下に示す粉末状の原料ゼオライト4を用意した。
(原料ゼオライト4)L型ゼオライト、商品名:HSZ-500KOA、東ソー株式会社製、シリコン原子数とアルミニウム原子数との比(Si/Al=3.0)
【0080】
上記の0.1mol/L塩化テルビウム水溶液40mLに、原料ゼオライト1を2g浸漬し、振とう機(タイテック株式会社製)を用いて室温(25℃)で24時間、回転速度160rpmで攪拌し、ゼオライトの結晶構造内にTb3+が導入された磁性化ゼオライトを生成させた。
【0081】
[製造例7]
硝酸ネオジム(III)六水和物(ナカライテスク株式会社製)を純水に溶解し、磁性イオン元素を含む水溶液として、0.1mol/L硝酸ネオジム水溶液を調製した。
また、原料ゼオライトとして、以下に示す粉末状の原料ゼオライト4を用意した。
(原料ゼオライト4)L型ゼオライト、商品名:HSZ-500KOA、東ソー株式会社製、シリコン原子数とアルミニウム原子数との比(Si/Al=3.0)
【0082】
上記の0.1mol/L硝酸ネオジム水溶液40mLに、原料ゼオライト1を2g浸漬し、振とう機(タイテック株式会社製)を用いて室温(25℃)で24時間、回転速度160rpmで攪拌し、ゼオライトの結晶構造内にNd3+が導入された磁性化ゼオライトを生成させた。
【0083】
[製造例8]
硝酸プラセオジム(III)六水和物(関東化学株式会社製)を純水に溶解し、磁性イオン元素を含む水溶液として、0.1mol/L硝酸プラセオジム水溶液を調製した。
また、原料ゼオライトとして、以下に示す粉末状の原料ゼオライト4を用意した。
(原料ゼオライト4)L型ゼオライト、商品名:HSZ-500KOA、東ソー株式会社製、シリコン原子数とアルミニウム原子数との比(Si/Al=3.0)
【0084】
上記の0.1mol/L硝酸プラセオジム水溶液40mLに、原料ゼオライト1を2g浸漬し、振とう機(タイテック株式会社製)を用いて室温(25℃)で24時間、回転速度160rpmで攪拌し、ゼオライトの結晶構造内にPr3+が導入された磁性化ゼオライトを生成させた。
【0085】
[製造例9]
硝酸セリウム(III)六水和物(富士フイルム和光純薬株式会社製)を純水に溶解し、磁性イオン元素を含む水溶液として、0.1mol/L硝酸セリウム水溶液を調製した。
また、原料ゼオライトとして、以下に示す粉末状の原料ゼオライト4を用意した。
(原料ゼオライト4)L型ゼオライト、商品名:HSZ-500KOA、東ソー株式会社製、シリコン原子数とアルミニウム原子数との比(Si/Al=3.0)
【0086】
上記の0.1mol/L硝酸セリウム水溶液40mLに、原料ゼオライト1を2g浸漬し、振とう機(タイテック株式会社製)を用いて室温(25℃)で24時間、回転速度160rpmで攪拌し、ゼオライトの結晶構造内にCe3+が導入された磁性化ゼオライトを生成させた。
【0087】
[製造例10]
塩化エルビウム(III)六水和物(シグマアルドリッチジャパン合同会社製)を純水に溶解し、磁性イオン元素を含む水溶液として、0.1mol/L塩化エルビウム水溶液を調製した。
また、原料ゼオライトとして、以下に示す粉末状の原料ゼオライト4を用意した。
(原料ゼオライト4)L型ゼオライト、商品名:HSZ-500KOA、東ソー株式会社製、シリコン原子数とアルミニウム原子数との比(Si/Al=3.0)
【0088】
上記の0.1mol/L塩化エルビウム水溶液40mLに、原料ゼオライト1を2g浸漬し、振とう機(タイテック株式会社製)を用いて室温(25℃)で24時間、回転速度160rpmで攪拌し、ゼオライトの結晶構造内にEr3+が導入された磁性化ゼオライトを生成させた。
【0089】
[製造例11]
硝酸イッテルビウム(III)n水和物(富士フイルム和光純薬株式会社製)を純水に溶解し、磁性イオン元素を含む水溶液として、0.1mol/L硝酸イッテルビウム水溶液を調製した。
また、原料ゼオライトとして、以下に示す粉末状の原料ゼオライト4を用意した。
(原料ゼオライト4)L型ゼオライト、商品名:HSZ-500KOA、東ソー株式会社製、シリコン原子数とアルミニウム原子数との比(Si/Al=3.0)
【0090】
上記の0.1mol/L硝酸イッテルビウム水溶液40mLに、原料ゼオライト1を2g浸漬し、振とう機(タイテック株式会社製)を用いて室温(25℃)で24時間、回転速度160rpmで攪拌し、ゼオライトの結晶構造内にYb3+が導入された磁性化ゼオライトを生成させた。
【0091】
[製造例12]
塩化ツリウム(III)六水和物(三津和化学薬品株式会社製)を純水に溶解し、磁性イオン元素を含む水溶液として、0.1mol/L塩化ツリウム水溶液を調製した。
また、原料ゼオライトとして、以下に示す粉末状の原料ゼオライト4を用意した。
(原料ゼオライト4)L型ゼオライト、商品名:HSZ-500KOA、東ソー株式会社製、シリコン原子数とアルミニウム原子数との比(Si/Al=3.0)
【0092】
上記の0.1mol/L塩化ツリウム水溶液40mLに、原料ゼオライト1を2g浸漬し、振とう機(タイテック株式会社製)を用いて室温(25℃)で24時間、回転速度160rpmで攪拌し、ゼオライトの結晶構造内にTm3+が導入された磁性化ゼオライトを生成させた。
【0093】
[参考製造例1]
硝酸ガドリニウム六水和物(富士フイルム和光純薬株式会社製)を純水に溶解し、磁性イオン元素を含む水溶液として、0.1mol/L硝酸ガドリニウム水溶液を調製した。
また、原料ゼオライトとして、以下に示す粉末状の原料ゼオライト4を用意した。
(原料ゼオライト4)L型ゼオライト、商品名:HSZ-500KOA、東ソー株式会社製、シリコン原子数とアルミニウム原子数との比(Si/Al=3.0)
【0094】
上記の0.1mol/L硝酸ガドリニウム水溶液40mLに、原料ゼオライト1を2g浸漬し、振とう機(タイテック株式会社製)を用いて室温(25℃)で24時間、回転速度160rpmで攪拌し、ゼオライトの結晶構造内にGd3+が導入された磁性化ゼオライトを生成させた。
【0095】
[参考製造例2]
塩化ユウロピウム(III)六水和物(東京化成工業株式会社製)を純水に溶解し、磁性イオン元素を含む水溶液として、0.1mol/L塩化ユウロピウム水溶液を調製した。
また、原料ゼオライトとして、以下に示す粉末状の原料ゼオライト4を用意した。
(原料ゼオライト4)L型ゼオライト、商品名:HSZ-500KOA、東ソー株式会社製、シリコン原子数とアルミニウム原子数との比(Si/Al=3.0)
【0096】
上記の0.1mol/L塩化ユウロピウム水溶液40mLに、原料ゼオライト1を2g浸漬し、振とう機(タイテック株式会社製)を用いて室温(25℃)で24時間、回転速度160rpmで攪拌し、ゼオライトの結晶構造内にEu3+が導入された磁性化ゼオライトを生成させた。
【0097】
原料ゼオライト4と、製造例5~12及び参考製造例1~2の磁性化ゼオライトの磁気特性(磁化および磁場)を、原料ゼオライト1と同様にして測定した。その結果を図4(a)~図7(b)に示す。
【0098】
図4(a)~図4(b)及び図5(a)~図5(c)は、それぞれ製造例5~9の磁性化ゼオライトおよび原料ゼオライト4について、磁場と磁化との関係を示したグラフである。図6(a)~図6(b)は、それぞれ製造例10~12の磁性化ゼオライトおよび原料ゼオライト4について、磁場と磁化との関係を示したグラフである。図7(a)~図7(b)は、それぞれ参考製造例1~2の磁性化ゼオライトおよび原料ゼオライト4について、磁場と磁化との関係を示したグラフである。
【0099】
図4(a)~図7(b)に示すように、製造例5~12及び参考製造例1~2の磁性化ゼオライトは、いずれも磁場を高くすることに伴って磁化が大きくなっている。このことから、導入される磁性金属イオンの種類に関わらず、磁性化工程を行うことにより、磁場感受性の高い磁性化ゼオライトが得られることが確認できた。また、製造例5~9のうち、Dy3+又はTb3+が導入された磁性化ゼオライト(製造例5~6)は、Nd3+、Pr3+又はCe3+が導入された磁性化ゼオライト(製造例7~9)よりも、磁場の高さに対する磁化の度合が大きいことが分かった。同様に、製造例10~12のうち、Er3+が導入された磁性化ゼオライト(製造例10)は、Yb3+又はTm3+が導入された磁性化ゼオライト(製造例11~12)よりも、磁場の高さに対する磁化の度合が大きいことが分かった。
【0100】
また、参考製造例1~2のうち、Gd3+が導入された磁性化ゼオライト(参考製造例1)は、Eu3+が導入された磁性化ゼオライト(参考製造例2)よりも、磁場の高さに対する磁化の度合が大きいことが分かった。
【0101】
[製造例13]
(配向化工程)
超純水5gと、粉末状の製造例4の磁性化ゼオライト1gと、ポリエチレンイミン(Polyethyleneimine;PEI、和光純薬工業株式会社製)0.004gとを混合し、超音波ホモジナイザー(Sonics&Materials製)を用いて5分間分散させて分散液を得た。得られた分散液を室温(25℃)で3日間静置した後、上澄み液を採取することにより、粒径の大きな沈殿物と分離した。
【0102】
また、8mol%イットリア安定化ジルコニア粉末(Yttria Stabilized Zirconia;YSZ、商品名;TZ-8Y、東ソー株式会社製)を、金型に充填し、100MPaの圧力で一軸加圧成形した。その後、YSZ成形体に対して、1250℃で10時間の熱処理を行い、YSZ基板を得た。このことにより、直径8.5mm、厚み1.9mmのYSZ基板を形成した。
【0103】
続いて、磁性化ゼオライトを含む分散液の上澄み液を用い、磁場中にてスリップキャスト法を行うことにより成形し、ゼオライト配向体を作製した。より詳細には、YSZ基板上に成形型を設置し、成形型内に磁性化ゼオライトを含む分散液の上澄み液を流し込んだ。次に、成形型内に流し込んだ分散液に磁場を印加し、分散液中の磁性化ゼオライトを配向させながら、配向させた磁性化ゼオライトを成形型内で堆積させるとともに分散液中の水を除去した。分散液には、ネオジウム磁石を用いて、YSZ基板に垂直な方向に0.9Tの磁場を印加した。その後、得られた堆積物を乾燥させて、成形型を取り外すことにより、円柱状のYSZ基板上に製造例13のゼオライト配向体を作製した。
図8(a)は、製造例13の円柱状のYSZ基板上のゼオライト配向体を斜め上から撮影した写真である。図8(b)は、製造例13の円柱状のYSZ基板上のゼオライト配向体を上から撮影した写真である。
【0104】
(イオン交換工程)
塩化カリウム(キシダ化学株式会社製)を純水に溶解し、陽イオン元素を含む水溶液として、0.2mol/L塩化カリウム水溶液を調製した。
0.2mol/L塩化カリウム水溶液5mLに、製造例5の円柱状のYSZ基板上のゼオライト配向体を浸漬し、室温(25℃)で24時間静置した。このことにより、製造例12のゼオライト配向体を構成する磁性化ゼオライトの有するHo3+とKとを交換した。
その後、Ho3+とKとを交換した製造例13のゼオライト配向体を、純水を用いて3回洗浄し、イオン交換工程後のゼオライト配向体を得た。
【0105】
次に、粉末状の原料ゼオライト4、粉末状の製造例4の磁性化ゼオライト、製造例13のゼオライト配向体およびイオン交換工程後のゼオライト配向体について、X線回折(X-Ray Diffraction;XRD)装置(商品名;Ultima IV、株式会社リガク製)を用いて、それぞれX線回折測定を行った。X線回折測定は、X線源としてCuKα線を用い、測定条件管電圧40kV、管電流40mAの条件で行った。粉末状の原料ゼオライト4(原料粉末)および粉末状の製造例4の磁性化ゼオライト(磁性化粉末)のスキャンスピードは、10degree/min.とし、製造例13のゼオライト配向体およびイオン交換工程後のゼオライト配向体のスキャンスピードは、8degree/min.とした。その結果を図9に示す。
【0106】
図9は、粉末状の原料ゼオライト4(原料粉末)と、粉末状の製造例4の磁性化ゼオライト(磁性化粉末)と、製造例13のゼオライト配向体およびイオン交換工程後のゼオライト配向体におけるX線回折結果を示したチャートである。図9に示す「○」は、YSZ基板のX線回折測定において確認された回折ピークを示す。
【0107】
図9に示す粉末状の製造例4の磁性化ゼオライト(磁性化粉末)のチャートと、製造例13のゼオライト配向体のチャートから、ネオジウム磁石を用いて0.9Tの磁場を印加することにより、配向化できることが確認できた。
また、製造例13のゼオライト配向体のチャートと、イオン交換工程後のゼオライト配向体のチャートから、イオン交換工程を行うことによる配向度への影響は僅かであることが確認できた。
【0108】
図9に示す粉末状の原料ゼオライト4(原料粉末)と、製造例4の磁性化ゼオライト(磁性化粉末)と、製造例13のゼオライト配向体およびイオン交換工程後のゼオライト配向体のX線回折測定の結果を用いて、以下に示す式により、ロットゲーリング(Lotgering)法による配向度(f)を算出した。式中のρは製造例13のゼオライト配向体またはイオン交換工程後のゼオライト配向体の積分強度比である。製造例13のゼオライト配向体の場合、ρは、製造例13で用いた磁性化ゼオライト粉末(製造例4の磁性化ゼオライト)の積分強度比である。イオン交換工程後のゼオライト配向体の場合、ρは、粉末状の原料ゼオライト4の積分強度比である。f=1の場合、完全配向を意味し、f=0の場合、無配向を意味する。
f=(ρ-ρ)/(1-ρ
なお、ρおよびρは、以下に示す式により算出する。
c軸配向の評価の場合
ρ=ΣI(00l)/ΣI(hkl)
ρ=ΣI(00l)/ΣI(hkl)
ab面配向の評価の場合
ρ=ΣI(hk0)/ΣI(hkl)
ρ=ΣI(hk0)/ΣI(hkl)
【0109】
上記式より算出した製造例13のゼオライト配向体のロットゲーリング法による配向度は、0.21であった。このことから、ネオジウム磁石を用いて0.9Tの磁場を印加することにより、磁性化ゼオライトを配向化できることが確認できた。
また、上記式より算出したイオン交換工程後のゼオライト配向体のロットゲーリング法による配向度は0.18であり、製造例13のゼオライト配向体の配向度との差は僅かであった。このことから、イオン交換工程を行うことによる配向度への影響は僅かであることが確認できた。
【0110】
次に、粉末状の原料ゼオライト4、製造例5のゼオライト配向体およびイオン交換工程後のゼオライト配向体について、波長分散型の蛍光X線(X-Ray Fluorescence;XRF)分析装置(商品名;ZSX Primus II、株式会社リガク製)を用いて、それぞれ分析し、組成を同定した。波長分散型の蛍光X線(X-Ray Fluorescence;XRF)分析は、真空中で、管電圧50kV、管電流50mA、ターゲット元素Rhの条件で行った。その結果を以下に示す。
(粉末状の原料ゼオライト4)KAlSi2772
(製造例13のゼオライト配向体)K6.6Ho0.8AlSi2772
(イオン交換工程後のゼオライト配向体)K8.7Ho0.1AlSi2772
【0111】
上記結果から、原料ゼオライト4は、AlとSiとO(酸素)と陽イオン元素としてのKを含むものであることが確認できた。
また、上記結果から、磁性化工程を行うことにより、原料ゼオライト4に含まれるKがHo3+と交換され、ゼオライトの結晶構造内にHo3+が導入された磁性化ゼオライト(すなわち、製造例13のゼオライト配向体の組成)が生成されたことが確認できた。また、上記結果から、イオン交換工程を行うことにより、製造例13のゼオライト配向体を構成する磁性化ゼオライトの有するHo3+とKとが交換したことが確認できた。
【0112】
[製造例14]
超純水5gと、粉末状の製造例4の磁性化ゼオライト1gと、ポリエチレンイミン(Polyethyleneimine;PEI、和光純薬工業株式会社製)0.020gとを混合したこと以外は、製造例13と同様にして、Ho3+が導入されたゼオライト配向体を作製した。
【0113】
[製造例15~19]
エタノール5gと、粉末状の製造例5~9の磁性化ゼオライト1gと、ポリエチレンイミン(Polyethyleneimine;PEI、和光純薬工業株式会社製)0.010gとを混合したこと以外は、製造例13と同様にして、Dy3+、Tb3+、Nd3+、Pr3+又はCe3+が導入されたゼオライト配向体を作製した。
【0114】
[製造例20]
エタノール5gと、粉末状の製造例10の磁性化ゼオライト1gと、ポリエチレンイミン(Polyethyleneimine;PEI、和光純薬工業株式会社製)0.015gとを混合したこと以外は、製造例13と同様にして、Er3+が導入されたゼオライト配向体を作製した。
【0115】
[製造例21]
エタノール5gと、粉末状の製造例12の磁性化ゼオライト1gと、ポリエチレンイミン(Polyethyleneimine;PEI、和光純薬工業株式会社製)0.010gとを混合したこと以外は、製造例13と同様にして、Tm3+が導入されたゼオライト配向体を作製した。
【0116】
[製造例22]
エタノール5gと、粉末状の製造例11の磁性化ゼオライト1gと、ポリエチレンイミン(Polyethyleneimine;PEI、和光純薬工業株式会社製)0.010gとを混合したこと以外は、製造例13と同様にして、Yb3+が導入されたゼオライト配向体を作製した。
【0117】
[参考製造例3]
超純水5gと、粉末状の参考製造例1の磁性化ゼオライト1gと、ポリエチレンイミン(Polyethyleneimine;PEI、和光純薬工業株式会社製)0.004gとを混合したこと以外は、製造例13と同様にして、Gd3+が導入されたゼオライト成形体を作製した。
【0118】
[参考製造例4]
超純水5gと、粉末状の参考製造例2の磁性化ゼオライト1gと、ポリエチレンイミン(Polyethyleneimine;PEI、和光純薬工業株式会社製)0.004gとを混合したこと以外は、製造例13と同様にして、Eu3+が導入されたゼオライト成形体を作製した。
【0119】
製造例14~22及び参考製造例3~4で得られたゼオライト配向体について、上述の式により、ロットゲーリング(Lotgering)法によるf値を算出した。結果を表1に示す。
【0120】
【表1】
【0121】
表1の結果から、製造例14~19のゼオライト配向体のロットゲーリング法による配向度(f)は、0.12~0.44であり、ネオジウム磁石を用いて0.9Tの磁場を印加することにより、磁性化ゼオライトを配向化できることが確認できた。特に、実施例13~15では、Ho3+、Dy3+又はTb3+が導入された磁性化ゼオライトを用いた場合、ロットゲーリング法による配向度は、0.33~0.44であり、磁性化ゼオライトの配向度がより大きいことが確認された。
【0122】
また、製造例20~22のゼオライト配向体のロットゲーリング法による配向度(f)は、0.11~0.13であり、ネオジウム磁石を用いて0.9Tの磁場を印加することにより、磁性化ゼオライトを配向化できることが確認できた。
【0123】
一方、参考製造例3~4では、ロットゲーリング法による配向度は、0.03~0.04であり、磁性化ゼオライトの配向度が非常時に小さく、磁性化ゼオライトが殆ど配向していないことが確認された。
【0124】
配向度の参考として、製造例14~19で得られたゼオライト配向体について、例えば特開2020-158323号公報に記載された算出法を用いてロットゲーリングファクターオルソゴナル(Fortho)値を算出した。算出式及び算出結果を表1に示す。式中、ρorthoは、配向体の回折強度比、ρ0orthoは、無配向体の回折強度比である。
【0125】
ortho=(ρortho-ρ0ortho)/(1-ρ0ortho
ρortho=ΣI(00l)/ΣI((h00)+(0k0)+(00l))
ρ0ortho=ΣI(00l)/ΣI((h00)+(0k0)+(00l))
【0126】
表1に示すように、上記式より算出した製造例14~19のゼオライト配向体のFortho値は0.28~0.91であった。このことから、本実施例では、特開2020-158323号公報に記載された方法で算出すると、磁性化ゼオライトの配向度がより大きい値となることが分かった。特に、実施例14~16では、Ho3+、Dy3+又はTb3+が導入された磁性化ゼオライトを用いた場合、Fortho値は0.86~0.92であり、特開2020-158323号公報に記載されたゼオライト配向体と比較して、磁性化ゼオライトの配向度が大きいことが分かった。
【0127】
[製造例23]
次に、分散液に、ネオジウム磁石を用いて、YSZ基板に水平な方向に0.9Tの磁場を印加したこと以外は、製造例14と同様にして、円柱状のYSZ基板上に製造例23のゼオライト配向体を作製した。
【0128】
[参考製造例5]
参考例として、磁場を印加しなかったこと以外は、製造例14と同様にして、円柱状のYSZ基板上に参考製造例5のゼオライト成形体を作製した。
【0129】
次に、製造例23のゼオライト配向体及び参考製造例5のゼオライト成形体について、X線回折(X-Ray Diffraction;XRD)装置(商品名;Ultima IV、株式会社リガク製)を用いて、それぞれX線回折測定を行った。測定条件は上記と同様とした。
【0130】
図10は、製造例4の磁性化ゼオライト(磁性化粉末)と、製造例14のゼオライト配向体と、製造例23のゼオライト配向体と、参考製造例5のゼオライト成形体と、におけるX線回折結果を示したチャートである。図10に示す「○」は、YSZ基板のX線回折測定において確認された回折ピークを示す。
【0131】
上記式より算出した参考製造例5のゼオライト成形体のロットゲーリング法による配向度は、0.02であり、製造例14のゼオライト配向体のロットゲーリング法による配向度は、0.44であり、製造例23のゼオライト配向体のロットゲーリング法による配向度は、0.40であった。このことから、(1)0.9Tの磁場を基板に垂直に印加することにより、Ho3+が導入された磁性化ゼオライトがc軸配向し、(2)0.9Tの磁場を基板に水平に印加することにより、Ho3+が導入された磁性化ゼオライトがab面配向することが確認できた。
【0132】
また、この結果から、(3)0.9Tの磁場を基板に垂直に印加すると、Dy3+、Tb3+、Nd3+、Pr3+又はCe3+が導入された磁性化ゼオライトはc軸配向し、また、(4)0.9Tの磁場を基板に水平に印加すると、Dy3+、Tb3+、Nd3+、Pr3+又はCe3+が導入された磁性化ゼオライトはab面配向すると推察される。
【0133】
同様にして、(5)0.9Tの磁場を基板に垂直に印加すると、Er3+、Yb3+又はTm3+が導入された磁性化ゼオライトはab面配向し、また、(6)0.9Tの磁場を基板に水平に印加すると、Er3+、Yb3+又はTm3+が導入された磁性化ゼオライトはc軸配向すると推察される。
【符号の説明】
【0134】
A1 ゼオライト配向体
A2 ゼオライト配向体
A3 ゼオライト配向体
A4 ゼオライト配向体
A5 ゼオライト配向体
A6 ゼオライト配向体
MZ1 磁性化ゼオライト
MZ2 磁性化ゼオライト
MP1 ミクロ孔
MP2 ミクロ孔
MP3 ミクロ孔
S 基板
B1 磁場
B2 磁場
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10