(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022052735
(43)【公開日】2022-04-04
(54)【発明の名称】仮撚加工機
(51)【国際特許分類】
B65H 63/06 20060101AFI20220328BHJP
【FI】
B65H63/06 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021150028
(22)【出願日】2021-09-15
(31)【優先権主張番号】P 2020158750
(32)【優先日】2020-09-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】502455511
【氏名又は名称】TMTマシナリー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(72)【発明者】
【氏名】長井 規浩
【テーマコード(参考)】
3F115
【Fターム(参考)】
3F115AA10
3F115CA03
3F115CA23
3F115CB06
3F115CB20
(57)【要約】
【課題】仮撚加工された結節の解撚張力を特定することができる仮撚加工機を提供する。
【解決手段】仮撚加工機1は、給糸パッケージP1,P2と巻取パッケージP3との間において、走行する糸Yの解撚張力を検出する張力検出装置20と、糸Yを供給する給糸パッケージが一の給糸パッケージP1から他の給糸パッケージP2に切り替わったことを検出する切替検出装置30と、切替検出装置30の検出結果に基づいて、一の給糸パッケージP1の糸端Y1と他の給糸パッケージP2の糸端Y2との結節Cが張力検出装置20を移動すると予測される移動時刻帯を算出し、張力検出装置20の検出結果から移動時刻帯に対応する張力データ群を抽出して記憶する情報処理装置40と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
給糸パッケージから供給される糸に仮撚加工を施して巻取パッケージを形成する仮撚加工機であって、
前記給糸パッケージと前記巻取パッケージとの間において、走行する前記糸の解撚張力を検出する張力検出装置と、
前記糸を供給する前記給糸パッケージが一の給糸パッケージから他の給糸パッケージに切り替わったことを検出する切替検出装置と、
前記切替検出装置の検出結果に基づいて、前記一の給糸パッケージの糸端と前記他の給糸パッケージの糸端との結節が前記張力検出装置を移動すると予測される移動時刻帯を算出し、前記張力検出装置の検出結果から前記移動時刻帯に対応する張力データ群を抽出して記憶する情報処理装置と、を備える、仮撚加工機。
【請求項2】
前記情報処理装置は、前記張力検出装置の前記検出結果において前記糸の解撚張力の値が閾値を超えた場合には前記糸の解撚張力に異常が有ると判断し、異常を検出した時の張力データ群を前記張力検出装置の検出結果から抽出して、異常に係る当該張力データ群を前記結節に係る前記データ群とは識別可能に記憶する、請求項1に記載の仮撚加工機。
【請求項3】
前記情報処理装置は、前記切替検出装置の検出結果に基づいて前記結節が前記張力検出装置を移動すると予測される基準の移動時刻を算出し、前記基準の移動時刻に基づいて、前記基準の移動時刻を含む所定時間の範囲の前記張力データ群を抽出して記憶する、請求項1又は2に記載の仮撚加工機。
【請求項4】
前記情報処理装置は、前記切替検出装置が前記糸を供給する給糸パッケージが一の給糸パッケージから他の給糸パッケージに切り替わったことを検出した切替時刻と、前記糸の走行速度と、前記切替検出装置と前記張力検出装置との間の前記糸の走行経路の距離と、に基づいて、前記基準の移動時刻を算出する、請求項3に記載の仮撚加工機。
【請求項5】
前記情報処理装置は、記憶した前記張力データ群における張力値及び時刻に基づいて作成された波形を出力する出力部を備える、請求項1~4のいずれか一項に記載の仮撚加工機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、仮撚加工機に関する。
【背景技術】
【0002】
仮撚加工機は、原糸を巻き取った給糸パッケージから供給される糸に加工を施し、加工糸を巻き取った巻取パッケージを製造する。仮撚加工機では、2つの給糸パッケージが設置され、一方の給糸パッケージの糸端(尻糸)と他方の給糸パッケージの糸端(口糸)とが結ばれる。これにより、2つの給糸パッケージの糸が一本につながり、仮撚加工機では、一方の給糸パッケージから糸の供給が終了した場合であっても、他方の給糸パッケージから糸の供給が開始されるため、仮撚加工機に対して給糸パッケージから糸が連続的に供給される。2つの給糸パッケージの糸端同士が結ばれている箇所には、結節が形成されている。例えば、特許文献1に記載の仮撚加工機では、結節の移動を検出することによって、給糸パッケージの切り替えを検出している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
通常、一方の給糸パッケージの糸端と他方の給糸パッケージの糸端との糸継ぎ作業は、作業者の手作業によって実施される。作業者の技量や習熟度等によっては結節の出来が異なることがあり、結節が仮撚加工された場合、結節の出来が仮撚加工後の糸の性質に影響を及ぼすため、仮撚加工された結節の解撚張力等が不安定になり得る場合もある。そのため、一般的に、結節が巻取パッケージに含まれると、巻取パッケージの品質(グレード)が低く設定される。しかしながら、全ての結節が巻取パッケージの品質に影響を与えるとは限らず、仮撚加工された結節の状態に基づいて巻取パッケージの品質を評価したい場合もある。このように結節が巻取パッケージの品質に影響を与えるにも関わらず、仮撚加工された結節の解撚張力を特定できる仮撚加工機はこれまでになかった。
【0005】
本発明の一側面は、仮撚加工された結節の解撚張力を特定することができる仮撚加工機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一側面に係る仮撚加工機は、給糸パッケージから供給される糸に仮撚加工を施して巻取パッケージを形成する仮撚加工機であって、給糸パッケージと巻取パッケージとの間において、走行する糸の解撚張力を検出する張力検出装置と、糸を供給する給糸パッケージが一の給糸パッケージから他の給糸パッケージに切り替わったことを検出する切替検出装置と、切替検出装置の検出結果に基づいて、一の給糸パッケージの糸端と他の給糸パッケージの糸端との結節が張力検出装置を移動すると予測される移動時刻帯を算出し、張力検出装置の検出結果から移動時刻帯に対応する張力データ群を抽出して記憶する情報処理装置と、を備える。
【0007】
本発明の一側面に係る仮撚加工機では、情報処理装置は、結節が張力検出装置を移動すると予測される移動時刻帯を算出し、張力検出装置の検出結果から移動時刻帯に対応する張力データ群を抽出して記憶する。これにより、仮撚加工された結節の解撚張力を特定することができる。
【0008】
一実施形態においては、情報処理装置は、張力検出装置の検出結果において糸の解撚張力の値が閾値を超えた場合には糸の解撚張力に異常が有ると判断し、異常を検出した時の張力データ群を張力検出装置の検出結果から抽出して、異常に係る当該張力データ群を結節に係るデータ群とは識別可能に記憶してもよい。この構成では、異常に係る張力データ群と、仮撚加工された結節の解撚張力に係る張力データ群とを識別できるように記憶することができる。したがって、異常に係る張力データ群と、仮撚加工された結節の解撚張力に係る張力データ群とを比較し易くなる。
【0009】
一実施形態においては、情報処理装置は、切替検出装置の検出結果に基づいて結節が張力検出装置を移動すると予測される基準の移動時刻を算出し、基準の移動時刻に基づいて、基準の移動時刻を含む所定時間の範囲の張力データ群を抽出して記憶してもよい。この構成では、基準の移動時刻に基づいて、結節が張力検出装置を移動すると予測される移動時刻帯を算出することができる。また、基準の移動時刻に基づいて、移動時刻帯の張力データ群を確認することができるため、移動時刻を基準としたデータ群として管理することができる。
【0010】
一実施形態においては、情報処理装置は、切替検出装置が糸を供給する給糸パッケージが一の給糸パッケージから他の給糸パッケージに切り替わったことを検出した切替時刻と、糸の走行速度と、切替検出装置と張力検出装置との間の糸の走行経路の距離と、に基づいて、基準の移動時刻を算出してもよい。この構成では、基準の移動時刻を精度良く算出することができる。
【0011】
一実施形態においては、情報処理装置は、記憶した張力データ群における張力値及び時刻に基づいて作成された波形を出力する出力部を備えていてもよい。この構成では、波形を出力部によって確認(視認)することができる。そのため、仮撚加工された結節の状態を確認することが可能となる。このように、仮撚加工された結節の解撚張力に係る張力データ群を品質評価の一つの指標として使用することができる。したがって、仮撚加工機では、巻取パッケージの品質の評価を詳細に行うことができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の一側面によれば、仮撚加工された結節の解撚張力を特定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図2】
図2(a)は、給糸パッケージの糸端を示す図であり、
図2(b)は、給糸パッケージの糸端同士の結節を示す図である。
【
図3】
図3は、仮撚加工機のうち情報処理装置、張力検出装置及び切換検出装置の構成を示すブロック図である。
【
図4】
図4は、仮撚加工された結節の張力データ群の抽出に係る動作を示すフローチャートである。
【
図5】
図5は、張力異常の張力データ群の抽出に係る動作を示すフローチャートである。
【
図6】
図6は、情報処理装置に表示される画面の一例を示す図である。
【
図7】
図7は、情報処理装置に表示される画面の一例を示す図である。
【
図8】
図8は、情報処理装置に表示される画面の一例を示す図である。
【
図9】
図9は、情報処理装置に表示される画面の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図面の説明において同一又は相当要素には同一符号を付し、重複する説明は省略する。
【0015】
図1に示されるように、仮撚加工機1は、給糸パッケージP1,P2から供給される糸Yに加工を施し、巻取パッケージP3を製造する。糸Yは、例えば、ポリエステル、ポリアミド等の熱可塑性の合成繊維からなる合繊糸である。給糸パッケージP1,P2は、給糸ボビン(図示省略)に半延伸糸(POY:Partially Oriented Yarn)が巻き取られて形成されている。巻取パッケージP3は、巻取ボビン(図示省略)に延伸加工糸(DTY:Draw Textured Yarn)が巻き取られて形成される。
【0016】
図1に示されるように、仮撚加工機1は、糸ガイド2と、第1給糸ローラ機構3と、第1加熱装置4と、冷却装置5と、仮撚装置6と、第2給糸ローラ機構7と、第2加熱装置8と、第3給糸ローラ機構9と、トラバース装置10と、巻取ローラ機構11と、を備えている。また、仮撚加工機1は、張力検出装置20と、切替検出装置30と、情報処理装置40と、を備えている。
【0017】
図1に示されるように、仮撚加工機1では、糸Yの走行方向において上流側から、糸ガイド2、第1給糸ローラ機構3、第1加熱装置4、冷却装置5、仮撚装置6、第2給糸ローラ機構7、第2加熱装置8、第3給糸ローラ機構9、トラバース装置10及び巻取ローラ機構11の順に設けられている。
【0018】
仮撚加工機1には、給糸パッケージP1,P2から糸Yが供給される。給糸パッケージP1,P2は、クリールスタンド(図示省略)に設けられたクリールCLに支持されている。2つの給糸パッケージP1,P2のうち、一方の給糸パッケージは仮撚加工機1に糸Yを供給し、他方の給糸パッケージは仮撚加工機1に糸Yを続いて供給するために待機する。
図1に示される例では、給糸パッケージP1から糸Yが供給され、給糸パッケージP2は待機している。
【0019】
図1に示されるように、糸ガイド2は、給糸パッケージP1,P2から供給された糸Yを第1給糸ローラ機構3にガイドする。糸ガイド2は、筒状部材であり、糸Yを内挿させて糸Yをガイドする。第1給糸ローラ機構3は、糸ガイド2から供給された糸Yを一対のローラ(駆動ローラ、従動ローラ)で引き出す。第1給糸ローラ機構3は、一定の速度で糸Yを搬送する。第1加熱装置4は、糸Yに加熱処理を施す。冷却装置5は、第1加熱装置4によって加熱された糸Yを冷却する。仮撚装置6は、糸Yに仮撚を施す。
【0020】
第2給糸ローラ機構7は、張力検出装置20を移動した糸Yを一対のローラで引き出す。第2給糸ローラ機構7が糸Yを搬送する速度は、第1給糸ローラ機構3が糸Yを搬送する速度と異なっている。第2給糸ローラ機構7は、第1給糸ローラ機構3よりも速い一定の速度で糸Yを搬送する。これにより、第1給糸ローラ機構3と第2給糸ローラ機構7との間において、糸Yが延伸される。
【0021】
第2加熱装置8は、糸Yに加熱処理を施す。第3給糸ローラ機構9は、第2加熱装置8を移動した糸Yを一対のローラで引き出す。第3給糸ローラ機構9が糸Yを搬送する速度は、第2給糸ローラ機構7が糸Yを搬送する速度と異なっている。第3給糸ローラ機構9は、第2給糸ローラ機構7よりも遅い一定の速度で糸Yを搬送する。これにより、第2給糸ローラ機構7と第3給糸ローラ機構9との間において、糸Yが弛緩される。
【0022】
トラバース装置10は、糸Yをトラバース(綾振り)する。巻取ローラ機構11は、巻取パッケージP3に接触して、巻取パッケージP3を回転駆動させる。これにより、糸Yは、トラバースされながら巻取パッケージP3に巻き取られる。
【0023】
張力検出装置20は、仮撚装置6によって仮撚が施された糸Yの解撚張力を検出する。すなわち、張力検出装置20は、仮撚装置6と第2給糸ローラ機構7との間に設けられている。張力検出装置20は、検出した張力信号を、情報処理装置40に出力する。張力検出装置20としては、機械式、光学式等、公知の装置を採用することができる。張力検出についての具体的な方法を、以下に説明する。張力検出装置20内にあるセンサから所定間隔(例えば、10ミリ秒)毎に電圧値を取得する。取得した電圧値は、張力信号として情報処理装置40へ送信する。
【0024】
切替検出装置30は、給糸パッケージP1,P2の切り替わりを検出する。給糸パッケージP1、P2のうち、一方の給糸パッケージ(一の給糸パッケージ)は仮撚加工機1に糸Yを供給し、他方の給糸パッケージ(他の給糸パッケージ)は仮撚加工機1に糸Yを続いて供給するために待機する。一方の給糸パッケージの内層側の糸端(尻糸)と、他方の給糸パッケージの外層側の糸端(口糸)を交絡させておく。これにより、一方の給糸パッケージによる仮撚加工機への糸Yの供給が終了しても、他方の給糸パッケージによる仮撚加工機への糸Yの供給が開始するため、給糸パッケージP1、P2からの糸Yの仮撚加工機1への供給が連続して行われることとなる。
【0025】
尻糸と口糸との交絡による結節Cは、
図2(a)に示されるように、給糸パッケージP1の内層側の糸端Y1である尻糸と、給糸パッケージP2の外層側の糸端Y2である口糸を、
図2(b)に示されるように、交絡させることにより生じる。2つの糸端Y1,Y2が交絡されている部分には、結節Cが形成される。なお、結節Cは、交絡によらず、尻糸と口糸を結び合わせることにより形成してもよい。
【0026】
切替検出装置30は、切替検出装置30の所定位置に設定された、結節Cの移動を検出することによって、給糸パッケージP1,P2の切り替えを検出する。切替検出装置30は、検出した切り替えに係る切替信号を、情報処理装置40に出力する。切替検出装置30としては、機械式、光学式等、公知の装置を採用することができる。切替検出装置30の所定位置への糸Y(結節C)の設定は、例えば、糸継ぎ作業を行った作業者によって行われる。
【0027】
切替検出についての具体的な方法は、以下に説明する。結節Cを切替検出装置30の所定位置に設定すると切替検出装置30が糸なし状態から糸あり状態に変化する。切替検出装置30の状態の変化により、切替検出装置30の出力信号が低電圧状態から高電圧状態に変化する。切替検出装置30の出力信号が低電圧状態から高電圧状態へ変化した時点から所定時間、高電圧状態が継続した場合、結節Cが切替検出装置30の所定位置に設定されたと認識する。仮撚加工機1に糸Yを供給している給糸パッケージの糸Yが無くなり、結節Cが切替検出装置30から外れると糸あり状態から糸なし状態に変化することとなる。
【0028】
切替検出装置30の状態の変化により、切替検出装置30の出力信号が高電圧状態から低電圧状態に変化する。切替検出装置30の出力信号が高電圧状態から低電圧状態へ変化した時点から所定時間、低電圧状態が継続した場合、給糸パッケージP1,P2が切り替わったと認識するとともに、結節Cが切替検出装置30の所定位置に設定されていないと認識する。切替検出装置30が取得した電圧値を切替信号として情報処理装置40へ送信する。なお、切替検出装置30の所定位置に結節Cを設定したときの切替検出装置30の出力信号を低電圧状態から高電圧状態へと変化しているが、高電圧状態から低電圧状態へと変化しても良い。
【0029】
図3に示されるように、情報処理装置40は、集積回路を実装したプロセッサあるいはそれを装備したコンピュータシステムである。情報処理装置40は、仮撚加工機1における各種動作を制御すると共に仮撚加工機を管理する部分であり、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等、及び入出力インターフェース等から構成される。ROMには、各種データ又はプログラムが格納されており、これらデータ等がRAMに展開され、CPUで処理される。入出力インターフェースとしては、例えば、キーボード、マウス等の入力装置やモニタ、スピーカ等の出力装置が該当する。また、入出力インターフェースを介して、張力検出装置及び切替検出装置と通信可能に接続されている。
【0030】
情報処理装置40は、入力部41と、制御部42と、記憶部43と、演算部44と、出力部45と、によって構成されている。
【0031】
入力部41は、接続された外部機器からの信号又はデータを受信し、そのデータ等を制御部42へ送信する。例えば、入力部41は、作業者が入力装置を介して入力したデータ等、例えば、糸Yの走行速度(解舒速度)、切替検出装置30と張力検出装置20との間の糸Yの走行経路及び張力異常判断の閾値を受信し、これらを制御部42へ送信する。これらのデータ等は使用機器、使用糸条等の条件により適宜、変更される。また、入力部41は、張力検出装置20から出力された張力信号、及び、切替検出装置30から出力された切替信号を受信し、それらを制御部42へ送信する。
【0032】
制御部42は、情報処理装置40を構成している各部を制御する。制御部42は、入力部41、演算部44又は記憶部43からのデータ等に応じて、記憶部43へのデータ等の書き込み、呼び出しを実行するように制御する。制御部42は、入力部41、演算部44又は記憶部43からのデータ等に応じて、演算部44へ演算を実行するように制御する。制御部42は、入力部41、演算部44又は記憶部43からのデータ等に応じて、出力部45へデータ等の出力を実行するように制御する。
【0033】
記憶部43は、制御部42からの命令に基づいて、データ等を記憶する。記憶するデータ等としては、糸Yの走行速度(解舒速度)、切替検出装置30と張力検出装置20との間の糸Yの走行経路の距離、張力異常判断の閾値、張力データ及び切替データ等が挙げられる。また、記憶するデータ等としては、演算部44による演算結果も挙げられる。
【0034】
演算部44は、制御部42からの命令に基づいて、データ等を処理する。演算部44による具体的な処理については、後述する。
【0035】
出力部45は、制御部42からの命令に基づいて、データ等を出力する。出力部45としては、ディスプレイ等の表示装置が挙げられる。表示装置による具体的な出力については後述する。
【0036】
続いて、情報処理装置40の動作について説明する。
【0037】
まず、情報処理装置40において、張力検出装置20から情報処理装置40に送信された張力信号の処理について説明する。情報処理装置40は、張力検出装置20から送信された張力信号を受信する。入力部41は、受信した張力信号をA/D変換、所定のフィルタ等の所定の補正計算に従って、張力値に変換する。入力部41は、変換された張力値を制御部42に送信する。張力値を受信した制御部42は、入力部41から張力値を受信した時刻と張力値を演算部44に送信し、時刻と張力値を関連付ける処理を演算部44に命令する。演算部44は、制御部42からの命令を実行し、その演算結果(時刻を関連付けた張力データ)を制御部42に送信する。制御部42は、演算部44からの張力データを受信し、その張力データを記憶部43に記憶させる。そして、張力検出装置20から情報処理装置40に逐次的に送信される張力データをこのようにして記憶部43に記憶させる。
【0038】
次に、情報処理装置40において、切替検出装置30から情報処理装置40へ送信された切替信号の処理について説明する。情報処理装置40は、切替検出装置30から送信された切替信号を受信する。入力部41は、受信した切替信号にI/O変換を行い、切替値に変換する。入力部41は、変換された切替値を制御部42に送信する。切替値を受信した制御部42は、入力部41から切替値を受信した時刻と切替値を演算部44に送信し、時刻と切替値を関連付ける処理を演算部44に命令する。演算部44は、制御部42からの命令を実行し、その演算結果(時刻を関連付けた切替データ)を制御部42に送信する。制御部42は、演算部44からの切替データを受信し、その切替データを記憶部43に記憶させる。そして、切替検出装置30から情報処理装置40に逐次的に送信される切替データをこのようにして記憶部43に記憶させる。
【0039】
次に、情報処理装置40において、仮撚加工された結節Cの張力データ群を抽出し、記憶する方法の一例について、
図4を参照して説明する。
【0040】
図4に示されるように、仮撚加工機1が、糸Y(DTY)の巻き取りを開始すると(ステップS01)、情報処理装置40は、切替検出装置30の検出結果に基づいて、給糸パッケージP1,P2の切り替えが行われたか否か、すなわち切替検出装置30の所定位置から結節Cが外れたか否かの判断を行う(ステップS02)。
【0041】
情報処理装置40が、切替検出装置30の所定位置から結節Cが外れたと判断した場合、すなわち給糸パッケージP1,P2間の切り替えが行われていると判断した場合には(ステップS02:YES)、情報処理装置40の処理はステップS03に進む。一方、情報処理装置40が、切替検出装置30の所定位置から結節Cが外れたと判断しなかった場合、すなわち給糸パッケージP1,P2の切り替えが行われてない場合には(ステップS02:NO)、情報処理装置40の処理はステップS06に進む。
【0042】
情報処理装置40は、切替検出装置30から情報処理装置40に出力された切替信号に基づいて、切替時刻を記憶する(ステップS03)。続いて、情報処理装置40は、結節Cが張力検出装置20を移動すると予測される基準の移動時刻を算出する(ステップS04)。情報処理装置40は、算出した基準の移動時刻にも基づいて、基準の移動時刻を含んだ所定の時間の範囲の張力データ群を抽出し、当該張力データ群を記憶する(ステップS05)。
【0043】
続いて、情報処理装置40は、仮撚加工機1が糸Yの巻き取りを終了したか否かを判断する(ステップS06)。情報処理装置40は、仮撚加工機1が糸Yの巻き取りを終了したと判断した場合には(ステップS06:YES)、情報処理装置40は処理を終了する。情報処理装置40は、仮撚加工機1が糸Yの巻き取りを終了したと判断しなかった場合には(ステップS06:NO)、情報処理装置40は、ステップS02の処理に戻って、ステップS02以降の処理を実施する。
【0044】
ここで、ステップS04にあるように、情報処理装置40が、切替検出装置30の検出結果に基づいて、結節Cが張力検出装置20を移動すると予測される基準の移動時刻を算出する具体的な方法の一例を説明する。
【0045】
制御部42は、切替信号、切替信号を取得した時刻、糸Yの走行速度(解舒速度)及び切替検出装置30と張力検出装置20との間の糸Yの走行経路の距離を、記憶部43から取得する。そして、これらのデータ等に基づいて、結節Cが張力検出装置20を移動すると予測される時刻を算出する命令を演算部44に送信する。演算部44は、これらのデータ等に基づいて、結節Cが張力検出装置20を移動すると予測される時刻を算出し、算出した時刻を基準の結節移動時刻として制御部42に送信する。
【0046】
また、ステップS05にあるように、情報処理装置40が、張力検出装置20の検出結果に基づいて、結節Cが張力検出装置20を移動すると予測される基準の移動時刻に基づいて、基準の移動時刻を含んだ所定の時間の範囲の張力データ群を抽出し、記憶する具体的な方法の一例を説明する。
【0047】
本実施形態では、制御部42は、算出結果に基づいて、記憶部43から、基準の結節移動時刻を含む所定時間の張力データ群を抽出する。具体的には、制御部42は、結節移動時刻を基準(中心)として、その前後の所定時間(例えば、基準時刻を中心に5秒毎)を含む範囲の張力データを結節移動に係る張力データ群として抽出する。制御部42は、抽出した結節移動に係る張力データ群を記憶部43に記憶するように、記憶部43に命令する。具体的には、制御部42は、結節移動に係る張力データ群に対して、「結節移動」の張力データ群であることを示すフラグを設定して記憶するように、記憶部43に命令する。制御部42は、抽出した張力データ群に基づいて、表示装置に表示する表示画面に係る画像データを作成するように演算部44に命令する。
【0048】
ここまでにおいて、情報処理装置40が、仮撚加工された結節Cの張力データ群を抽出し、記憶する一例を、
図4を参照して説明した。具体的には、情報処理装置40が、結節Cが張力検出装置20を移動すると予測される基準の移動時刻を算出し、算出した基準の移動時刻に基づいて、基準の移動時刻を含んだ所定の時間の範囲の張力データ群を抽出して記憶することを説明した。
【0049】
この情報処理装置40が、仮撚加工された結節Cの張力データ群を抽出し、記憶することの本質を以下に説明する。
【0050】
つまり、情報処理装置40が、結節Cが張力検出装置20を移動すると予測される基準の移動時刻を算出し、算出した基準の移動時刻に基づいて、基準の移動時刻を含んだ所定の時間の範囲の張力データ群を抽出することは、情報処理装置40が、結節Cが張力検出装置20を移動すると予測される時刻に基づいて、移動時刻帯を算出していることである。ここで、移動時刻帯とは、結節Cが張力検出装置20を移動し始めると予測される移動時刻から移動し終わると予測される移動時刻までを指す。
【0051】
また、情報処理装置40が、算出した基準の移動時刻に基づいて、基準の移動時刻を含んだ所定の時間の範囲の張力データ群を抽出して記憶することは、情報処理装置40が、算出した移動時刻帯と、張力検出装置20の検出結果から移動時刻帯に対応する張力データ群を抽出して記憶していることである。ここで、移動時刻帯に対応する張力データ群とは、結節Cが張力検出装置20を移動し始めると予測される移動時刻と移動し終わると予測される移動時刻との間の張力データ群のみならず、その前後の張力データ群を含んでいてもよい。
【0052】
次に、情報処理装置40において、張力異常の張力データ群を抽出する方法について、
図5を参照して説明する。
【0053】
図5に示されるように、仮撚加工機1が、糸Y(DTY)の巻き取りを開始すると(ステップS11)、情報処理装置40は、張力検出装置20の検出結果に基づいて、張力値が閾値を超えたか否か、すなわち張力異常が発生しているか否かの判断を行う(ステップS12)。情報処理装置40が、張力値が閾値を超えたと判断した場合、すなわち張力異常が発生していると判断した場合には(ステップS12:YES)、情報処理装置40の処理はステップS13に進む。一方、情報処理装置40が、張力値が閾値を超えたと判断しなかった場合、すなわち張力異常が発生していると判断しなかった場合には(ステップS12:NO)、情報処理装置40の処理はステップS15に進む。
【0054】
情報処理装置40は、張力検出装置20から情報処理装置40に出力された張力信号に基づいて、異常検出時刻を記憶する(ステップS13)。続いて、情報処理装置40は、異常検出時刻に対応する張力データ群を抽出し、その張力データ群を記憶する(ステップS14)。
【0055】
続いて、情報処理装置40は、仮撚加工機1が糸Yの巻き取りを終了したか否かを判断する(ステップS15)。情報処理装置40は、仮撚加工機1が糸Yの巻き取りを終了したと判断した場合には(ステップS15:YES)、情報処理装置40は処理を終了する。情報処理装置40は、仮撚加工機1が糸Yの巻き取りを終了したと判断しなかった場合には(ステップS15:NO)、情報処理装置40は、ステップS12の処理に戻って、ステップS12以降の処理を実施する。
【0056】
ここで、ステップS12にあるように、情報処理装置40が、張力検出装置20の検出結果に基づいて、ある時刻における糸Yの張力値が閾値を超えた場合には、その時刻における糸Yの解撚張力に異常が有ると判断する具体的な方法を説明する。
【0057】
制御部42は、張力データ、閾値を、記憶部43から取得する。そして、これらのデータ等に基づいて、張力異常が発生しているか否かを判断する命令を演算部44に送信する。演算部44は、以下の演算を行い、張力異常が発生しているか否かを判断する。張力値と閾値を比較し、張力値が閾値を超えている状態が所定時間継続しているときは、張力異常が発生していると判断する。そして、張力値が閾値を超えた時を異常検出時刻とする。そして、判断結果として、異常検出時刻を制御部42に送信する。
【0058】
また、ステップS14にあるように、情報処理装置40が、張力検出装置20の検出結果から異常検出時刻に対応する張力データ群を抽出する具体的な方法を説明する。
【0059】
制御部42は、判断結果に基づいて、記憶部43から、異常検出時刻に対応する張力データ群を抽出する。制御部42は、異常検出時刻を含む所定時間の張力データ群を抽出する。本実施形態では、制御部42は、異常検出時刻を基準(中心)として、異常検出時刻の前後の所定時間(例えば、基準時刻を中心に5秒毎)を含む範囲の張力データを張力異常に係る張力データ群として抽出する。制御部42は、抽出した張力異常に係る張力データ群を、結節移動に係る張力データ群とは識別可能に記憶部43に記憶するように、記憶部43に命令する。具体的には、制御部42は、張力異常に係る張力データ群に対して、「張力異常」の張力データ群であることを示すフラグを設定して記憶するように、記憶部43に命令する。制御部42は、抽出した張力データ群に基づいて、表示装置に表示する表示画面に係る画像データを作成するように演算部44に命令する。
【0060】
次に、情報処理装置40において、仮撚加工された結節Cの張力データ群及び張力異常の張力データ群を表示する方法について、
図6~
図9を参照して説明する。
【0061】
図6~
図9に示されるように、表示装置は、仮撚加工された糸Yの張力データ群を表した表示画面を表示する。この表示画面は、ある巻取パッケージP3の1巻当たりに生じた事象、すなわち仮撚加工された結節Cの張力検出又は張力異常検出を表している。表示画面には、左側に事象を表す表が設けられ、右側にグラフが設けられている。表には、右から「番号」、「グレード」、「発生日時」、「種別」が設けられている。「番号」は、事象が生じた通し番号を表している。「グレード」は、その事象が発生した時点での巻取パッケージの品質を表している。「グレード」は、品質が下がる毎に、A、B、C、…といったアルファベットの昇順に従って表される。「グレード」は張力異常検出と相関関係を有しており、張力異常検出が一度生じると、その都度品質が下がり、アルファベットの表示が変化する。「発生日時」は、事象が発生した日時を表している。「種別」は、事象の種別を表しており、「結節移動」は仮撚加工された結節Cの張力データ群を、「張力異常」は張力異常の張力データ群を表している。
【0062】
グラフは、表で選択された事象に該当する張力データ群を波形として表示する。グラフの縦軸は張力値を表しており、グラフの横軸は時刻を表している。張力値、時刻共に、適宜、表示単位、表示範囲を変更することができる。表の表示内容とグラフの表示内容は表示テーブルで関連付けられており、表の「番号」選択するとその「番号」に関連付けられた波形がグラフに表示される。表示テーブルは、記憶部43に予め記憶されており、表示装置に表示画面を表示する際には、制御部42、演算部44に表示テーブルを展開し、その演算結果として画像データを作成する。作成された画像データは出力部45を通して表示装置に送信し、表示装置に表示画面として表示される。
【0063】
次に、情報処理装置40において、表示画面に表示する画像データの作成について、説明する。
【0064】
制御部42は、記憶部43から結節移動時刻、結節移動に係る張力データ群、異常検出時刻、異常検出に係る張力データ群及び表示テーブルを抽出する。制御部42は、抽出した、結節移動時刻、結節移動に係る張力データ群、異常検出時刻、異常検出に係る張力データ群及び表示テーブルに基づいて、画像データを作成する命令を演算部44に送信する。演算部44は、結節移動時刻、結節移動に係る張力データ群、異常検出時刻と異常検出に係る張力データ群及び表示テーブルから、表示画面の表及びグラフに表示する画像データを演算し作成する。具体的には、以下の手順を踏んでいく。
【0065】
結節移動に係る張力データ群と異常検出に係る張力データ群から結節移動に係る波形と異常検出に係る波形をそれぞれ作成する。表示テーブルの「発生日時」欄に結節移動時刻と異常検出時刻を入れる。「発生日時」を早い順に並べ替え、表示テーブルの「番号」の昇順に対応するように割り振っていく。結節移動時刻の場合は、表示画面の「種別」欄に「結節移動」を表示するように、表示テーブルの「種別」にタグを入れる。結節移動時刻の場合は、その結節移動時刻に係る張力データ群から作成された波形と表示テーブルで関連付けておく異常検出時刻の場合は、表示画面の「種別」欄に「異常検出」を表示するように、表示テーブルの「種別」にタグを入れる。異常検出時刻の場合は、表示画面の「グレード」欄の表示が、以前よりも品質を下げた表示となるように、表示テーブルの「グレード」にタグを入れる。異常検出時刻の場合は、その異常検出時刻に係る張力データ群から作成された波形と表示テーブルで関連付けておく。
【0066】
続いて、情報処理装置40において、表示装置に表示された表示画面の操作について、説明する。
【0067】
表示画面に表示したい番号を選択するとその番号の列が灰色背景となる。その番号と関連付けられた波形がグラフに表示される。
図6及び
図7は、20XX年8月1日に巻取パッケージP3-1について、表している。
【0068】
図6は、「番号」2を選択した状態を示している。使用者が「番号」2を選択したため、「番号」2に係る列が灰色背景に変更されている。「番号」2は、「発生日時」が20XX年8月1日11時15分5秒である。「番号」2は、「種別」が張力異常である。「番号」2は、張力異常であるため、「番号」1から品質の評価が下がり、「グレード」がAからBへ変更されている。グラフには、「番号」2に対応する波形が表示されている。グラフにある横点線は閾値を示している。ここで、張力値が閾値を超えた時点が異常検出時刻であり、縦点線と横軸が交差した「発生日時」20XX年8月1日11時15分5秒と対応している。
【0069】
図7は、「番号」3を選択した状態を示している。使用者が「番号」3を選択したため、「番号」3に係る列が灰色背景に変更されている。「番号」3は、「発生日時」が20XX年8月1日13時30分35秒である。「番号」3は、「種別」が結節移動である。「番号」3は、結節移動であるため、巻取パッケージの品質評価に関係がなく、「グレード」はブランクとなっている。グラフには、「番号」3に対応する波形が表示されている。ここで、結節が張力検出装置を移動すると予測される基準の移動時刻は、縦点線と横軸が交差した「発生日時」20XX年8月1日13時30分35秒と対応している。
図7のグラフにある横点線は、
図6と同様に閾値を示しているが、
図7のグラフでは、
図6と比較すると閾値を表す横点線が上部に表れている。これは、
図7の縦軸の張力値の一目盛りの値が、
図6の張力値の一目盛りの値よりも大きく設定しているからである。すなわち、
図7のグラフでは、張力値の表示範囲が広い設定となっており、波形の張力値が閾値と比較すると低いため、閾値を表す横点線がグラフの上部に表れる。
図7のグラフでは、張力異常に関係する閾値を示している横点線を波形が超えておらず、かつ、閾値と張力値との間が離れていることから、仮撚加工された結節Cに係る部分は低い張力値を保っているので、この結節Cを仮撚加工することは解撚張力にあまり影響を及ぼしていないと考えられる。
【0070】
図8及び
図9は、20XX年8月2日に巻取パッケージP3-2について、表している。
【0071】
図8は、「番号」1を選択した状態を示している。使用者が「番号」1を選択したため、「番号」1に係る列が灰色背景に変更されている。「番号」1は、「発生日時」が20XX年8月2日10時30分15秒である。「番号」1は、「種別」が張力異常である。「番号」1は、張力異常であるため、「番号」1から品質の評価が下がり、「グレード」がAへ変更されている。グラフには、「番号」1に対応する波形が表示されている。
図8のグラフでは、縦軸の張力値の一目盛りの値は、
図6張力値の一目盛りの値と等しい。グラフにある横点線は
図6と同様に閾値を示している。ここで、張力値が閾値を超えた時点が異常検出時刻であり、縦点線と横軸が交差した「発生日時」20XX年8月2日10時30分15秒と対応している。
【0072】
図9は、「番号」2を選択した状態を示している。使用者が「番号」2を選択したため、「番号」2に係る列が灰色背景に変更されている。「番号」2は、「発生日時」が20XX年8月2日10時30分15秒である。「番号」2は、「種別」が結節移動である。「番号」2は、結節移動であるため、巻取パッケージの品質評価に関係がなく、「グレード」はブランクとなっている。グラフには、「番号」2に対応する波形が表示されている。ここで、結節が張力検出装置を移動すると予測される基準の移動時刻は、縦点線と横軸が交差した「発生日時」20XX年8月2日10時30分15秒と対応している。
図9のグラフでは、縦軸の張力値の一目盛りの値は、
図8の張力値の一目盛りの値と等しい。グラフにある点線は
図8と同様に閾値を示している。
図9のグラフでは、張力異常に関係する閾値を示している横点線を波形が超えている、すなわち、閾値を張力値が超えていることから、この結節Cを仮撚加工することにより張力異常が発生したと考えられる。
【0073】
以上説明したように、本実施形態に係る仮撚加工機1では、情報処理装置40は、結節Cが張力検出装置20を移動すると予測される移動時刻帯を算出し、張力検出装置20の検出結果から移動時刻帯に対応する張力データ群を抽出して記憶する。これにより、仮撚加工された結節Cの解撚張力を特定することができる。
【0074】
本実施形態に係る仮撚加工機1では、情報処理装置40は、張力検出装置20の検出結果において糸Yの解撚張力の値が閾値を超えた場合には糸Yの張力に異常が有ると判断し、張力異常を検出した時の張力データ群を抽出して、張力異常に係る当該張力データ群を結節Cに係るデータ群とは識別可能に記憶する。この構成では、張力異常に係る張力データ群と、仮撚加工された結節Cの解撚張力に係る張力データ群とを識別できる。そのため、張力異常に係る張力データ群と、仮撚加工された結節Cの解撚張力に係る張力データ群とを関連付けて記憶することができる。したがって、張力異常に係る張力データ群と、仮撚加工された結節Cの解撚張力に係る張力データ群とを比較し易くなる。
【0075】
本実施形態に係る仮撚加工機1では、情報処理装置40は、切替検出装置30の検出結果に基づいて結節が張力検出装置20を移動する基準の結節移動時刻を算出し、基準の結節移動時刻に基づいて、基準の結節移動時刻を含む所定時間の範囲の張力データ群を抽出して記憶する。この構成では、基準の移動時刻に基づいて、結節が張力検出装置を移動すると予測される移動時刻帯を算出することができる。また、基準の移動時刻に基づいて、移動時刻帯の張力データ群を確認することができるため、結節移動時刻を基準としたデータ群として管理することができる。そのため、データを管理し易くなる。
【0076】
本実施形態に係る仮撚加工機1では、情報処理装置40は、糸Yの解撚張力に異常が有ると判断した異常検出時刻を基準として、異常検出時刻を含む所定時間の範囲の張力データ群を抽出して記憶する。この構成では、異常検出時刻に基づいて、張力データ群を確認することができるため、異常検出時刻を基準としたデータ群として管理することができる。そのため、データを管理し易くなる。
【0077】
本実施形態に係る仮撚加工機1では、情報処理装置40は、記憶した張力データ群における張力値及び時刻に基づいて作成された波形を出力する出力部45を備えている。この構成では、波形を表示装置によって確認(視認)することができる。そのため、仮撚加工された結節Cの状態を確認することが可能となる。このように、仮撚加工された結節Cの解撚張力に係る波形を品質評価の一つの指標として使用することができる。例えば、仮撚加工された結節Cの解撚張力に係る波形の傾向に基づいて、巻取パッケージP3の品質を段階的に評価すること等が可能となる。したがって、仮撚加工機1では、巻取パッケージP3の品質の評価を詳細に行うことができる。
【0078】
ここで、巻取パッケージP3の品質の評価を行うために、全ての解撚張力に係る張力データを記憶することも考えられる。しかしながら、巻取パッケージP3に巻き取られる糸Yの長さは非常に長いため、全ての張力データを記憶しようとすると、膨大な記憶容量が必要となる。本実施形態に係る仮撚加工機1では、品質に影響を与える可能性が高い仮撚加工された結節Cの解撚張力に係る張力データ群を抽出して記憶するため、記憶容量の増大を抑制することがしつつ、有効な品質評価を行うことができる。
【0079】
本実施形態に係る仮撚加工機1では、異常を検出した異常検出時刻に対応する波形と仮撚加工された結節Cの解撚張力に係る波形とを比較することによって、張力異常と仮撚加工された結節Cとの関係性を確認することができる。例えば、作業者は、表示装置において
図6~
図9に示される表示画面を表示させ、仮撚加工された結節Cの解撚張力に係る波形を抽出した結節移動時刻と一致又は近似している時刻において、異常を検出した異常検出時刻に対応する波形が抽出されている場合には、仮撚加工された結節Cに張力異常が発生していること、すなわち仮撚加工された結節Cと張力異常とに関連性があることを確認できる。
【0080】
本実施形態に係る仮撚加工機1では、情報処理装置40は、切替検出装置30が結節Cの移動を検出した切替時刻と、糸Yの走行速度と、切替検出装置と張力検出装置との間の距離と、に基づいて、基準の結節移動時刻を算出してもよい。この構成では、基準の結節移動時刻を精度良く算出することができる。
【0081】
以上、本発明の実施形態について説明してきたが、本発明は必ずしも上述した実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。
【0082】
上記実施形態では、張力検出装置20が張力信号を出力する形態を一例に説明した。しかし、張力検出装置20は、張力データを出力してもよい。張力データでは、張力信号と検出時刻とが対応付けられている。同様に、切替検出装置30は、切替データを出力してもよい。
【0083】
上記実施形態では、作業者が、表示装置において表示画面を表示させて、仮撚加工された結節Cと張力異常とに関連性があることを確認する形態を一例に説明した。しかし、情報処理装置40が、仮撚加工された結節Cの解撚張力に係る張力データ群を抽出した結節移動時刻と一致又は近似している時刻において、異常を検出した異常検出時刻に対応する張力データ群が抽出されている場合には、仮撚加工された結節Cに張力異常が発生していることを示すフラグを異常検出に係る張力データ群等に設定するようにしてもよい。これにより、作業者は、フラグが設定されている張力データ群を確認することによって、仮撚加工された結節Cと張力異常との関連性を確認することができる。
【0084】
上記実施形態では、切替検出装置30の所定位置に結節Cを設定し、結節Cの移動を検出する形態を一例に説明した。しかし、切替検出装置30は、必ずしも結節Cを所定位置に設定して、結節Cの移動を検出しなければならないのではなく、給糸パッケージP1,P2の切り替えを検出すればよい。例えば、他の実施形態の切替検出装置として、次の構成をとる。糸ガイド2の位置に切替検出装置を設ける。給糸パッケージP1が設置されている方向から糸Yが供給されているときは、給糸パッケージP1から糸Yが供給されていると切替検出装置は認識する。給糸パッケージP2が設置されている方向から糸Yが供給されているときは、給糸パッケージP2から糸Yが供給されていると切替検出装置は認識する。切替検出装置が、給糸パッケージP1から給糸パッケージP2に糸Yの供給の認識を変更したとき、給糸パッケージP1,P2の切り替えがあったと認識する。同様に、給糸パッケージP2から給糸パッケージP1に糸Yの供給の認識を変更したとき、給糸パッケージP1,P2の切り替えがあったと認識する。
【0085】
上記実施形態では、制御部42が、結節移動時刻を基準(中心)として、その前後の所定時間を含む範囲の張力データを結節移動に係る張力データ群として抽出する形態を一例に説明した。しかし、制御部42は、結節移動時刻を含む所定時間の範囲の張力データ群を抽出すればよい。例えば、制御部42は、結節移動時刻を所定時間の開始時刻として張力データ群を抽出してもよいし、結節移動時刻を所定時間の終了時刻として張力データ群を抽出してもよい。要は、結節移動時刻が所定時間内に含まれていればよい。異常検出時刻を含む所定時間の範囲の張力データ群の抽出についても、同様である。
【0086】
上記実施形態では、結節Cに係る張力データ群の抽出方法として、情報処理装置40が、切替検出装置30の検出結果に基づいて基準の結節移動時刻を算出し、基準の結節移動時刻に対応する張力データ群を抽出する形態を一例に説明した。しかし、情報処理装置40が結節Cに係る張力データ群を抽出する方法は他の方法であってもよい。例えば、情報処理装置40は、切替検出装置30の検出結果に基づいて、結節Cが張力検出装置20を移動すると予測される移動時刻帯を算出して、結節Cが張力検出装置20を移動し始めると予測される移動時刻と移動し終わると予測される移動時刻との間の張力データ群を抽出してもよい。
【0087】
上記実施形態では、糸Yの解撚張力に異常が有ると判断した時の張力データ群の抽出方法として、情報処理装置40が、糸Yの解撚張力に異常が有ると判断した異常検出時刻に対応する張力データ群を抽出する形態を一例に説明した。しかし、情報処理装置40において異常があると判断した時の張力データ群を抽出する方法は他の方法であってもよい。例えば、情報処理装置40は、異常が有ると判断した時刻を含む始点と終点とを算出(設定)して、始点と終点との間の張力データ群を抽出してもよい。
【0088】
上記実施形態では、仮撚加工機1が
図1及び
図3に示される構成を備えている形態を一例に説明した。しかし、仮撚加工機1は、一部の装置を備えていなくてもよいし、他の装置を更に備えていてもよい。
【0089】
上記実施形態では、情報処理装置40が表示装置に張力データ群(波形)を表示させる形態を一例に説明した。しかし、張力データ群は、他の装置で表示されてもよい。この場合、情報処理装置40の出力部45は、張力データ群を他の装置に出力する。
【符号の説明】
【0090】
1…仮撚加工機、6…仮撚装置、20…張力検出装置、30…切替検出装置、40…情報処理装置、45…出力部、C…結節、P1,P2…給糸パッケージ、P3…巻取パッケージ、Y…糸、Y1,Y2…糸端。