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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022052739
(43)【公開日】2022-04-04
(54)【発明の名称】回転フレーム式血栓除去デバイス
(51)【国際特許分類】
   A61B 17/3207 20060101AFI20220328BHJP
【FI】
A61B17/3207
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021150960
(22)【出願日】2021-09-16
(31)【優先権主張番号】17/030,028
(32)【優先日】2020-09-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】515248931
【氏名又は名称】ニューラヴィ・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100088605
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 公延
(74)【代理人】
【識別番号】100130384
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 孝文
(72)【発明者】
【氏名】アビ・シャルギ
(72)【発明者】
【氏名】デビッド・ベイル
【テーマコード(参考)】
4C160
【Fターム(参考)】
4C160EE22
4C160KL03
4C160MM36
4C160NN01
(57)【要約】
【課題】血管から血塊を除去するためのデバイスを提供すること。
【解決手段】血管から血塊を除去するためのデバイスは、内側拡張可能本体が外側拡張可能本体内で延在する、二重層を有し得る。本デバイスは、折り畳まれた送達構成と、拡張された展開構成と、血塊挟持構成と、を有し得る。内側本体及び外側本体は、ストラットのネットワークによって形成された複数のセルであってもよい。デバイスが血塊内に展開されると、セルの開口部が整列し、拡張する本体からの径方向力が、開口部を通じて血塊の各部分を付勢する。内側本体と外側本体は、互いに対して選択的に並進可能となるように構成され得るが、それにより、並進がデバイスを血塊挟持構成へと遷移させるとき、セル開口部内の血塊の各部分が圧縮及び把持され得る。並進は、血塊が患者から回収されるときにその血塊を挟持するように維持され得る。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
拘束された送達構成と拡張された展開構成とを有する、血管から血塊を除去するためのデバイスであって、
第1のシャフトと、第2のシャフトと、前記第1のシャフト及び前記第2のシャフトから遠位側に延在する拡張可能部材を形成するストラットのフレームワークと、を備え、前記拡張可能部材は、
内側管状ルーメン及びその内部を通って延在する長手方向軸線と、
前記第2のシャフトに接続された内側本体であって、前記展開構成において前記長手方向軸線の周りで拡張可能な複数のセルを備える、内側本体と、
前記第1のシャフトに接続された外側本体であって、前記展開構成において前記内側本体よりも大きく拡張可能な複数のセルを備える、外側本体と、を備え、
前記内側本体と前記外側本体は、前記展開構成と血塊挟持構成との間で前記長手方向軸線を中心として互いに対して並進可能であり、
前記内側本体の前記セル及び前記外側本体の前記セルは、前記血塊挟持構成にあるときに、前記セル内に位置する血塊を挟持するように構成されている、デバイス。
【請求項2】
前記内側本体の前記セルは、サイズが前記外側本体の前記セルとほぼ等しい、請求項1に記載のデバイス。
【請求項3】
前記拡張された展開構成において、前記内側本体の前記セルは、前記外側本体の前記セルと整列されている、請求項1に記載のデバイス。
【請求項4】
前記内側本体及び前記外側本体の前記セルは、前記拡張された展開構成において前記血塊にはまり込むように構成されている、請求項1に記載のデバイス。
【請求項5】
前記血塊挟持構成は、前記血塊の少なくとも一部分が前記内側本体の前記セルと前記外側本体の前記セルとの間で圧縮されるまで、前記外側本体に対して前記内側本体を並進させることによって達成される、請求項1に記載のデバイス。
【請求項6】
前記第1のシャフトは、細長本体と、内部ルーメンと、その遠位端に近接するスロットと、を備える、請求項1に記載のデバイス。
【請求項7】
前記第2のシャフトは、前記第1のシャフトの前記ルーメン内に配設され、前記第2のシャフトの外側表面から径方向に延在するインデックスピンを備え、前記インデックスピンは、前記第1のシャフトの前記スロットと係合するように構成されている、請求項6に記載のデバイス。
【請求項8】
前記スロットのこの軸線は、前記第1のシャフトに対する前記第2のシャフトの線形並進が、前記スロット内における前記インデックスピンの回転を引き起こすように、前記長手方向軸線と角度を形成する、請求項7に記載のデバイス。
【請求項9】
前記内側本体及び前記外側本体の領域は、前記血塊に外向きの径方向力を及ぼして前記血塊を前記内側管状ルーメンに向かって付勢するように構成されている、請求項1に記載のデバイス。
【請求項10】
身体血管内の閉塞を治療するためのデバイスであって、
長手方向軸線の周りに構成された管状内側ルーメンと、
拘束された送達構成と、拡張された展開構成と、内側血塊足場組み区分を形成する複数のストラットと、を備える内側本体と、
前記内側本体の周りに配設された外側本体であって、拘束された送達構成と、拡張された展開構成と、外側血塊足場組み区分を形成する複数のストラットと、を備える、外側本体と、
前記内側本体及び前記外側本体に対して近位側に延在する細長シャフトと、を備え、
前記内側本体と前記外側本体は、前記展開構成と血塊挟持構成との間で前記長手方向軸線を中心として互いに対して並進可能であり、
血塊の少なくとも一部分は、前記内側本体が前記血塊挟持構成にあるときに、前記内側本体の前記ストラットと前記外側本体の前記ストラットとの間で圧縮される、デバイス。
【請求項11】
前記内側本体及び前記外側本体の前記足場組み区分の前記ストラットは、セルのリングを形成する、請求項10に記載のデバイス。
【請求項12】
前記内側本体の前記セルは、サイズが前記外側本体の前記セルとほぼ等しい、請求項11に記載のデバイス。
【請求項13】
前記拡張された展開構成において、前記内側本体の前記セルは、前記外側本体の前記セルと整列されている、請求項11に記載のデバイス。
【請求項14】
前記内側本体及び前記外側本体の前記足場組み区分は、血塊に外向きの径方向力を及ぼして前記血塊を前記内側管状ルーメンに向かって径方向内向きに付勢するように構成されている、請求項10に記載のデバイス。
【請求項15】
前記シャフトは、前記外側本体に接続された第1のシャフトと、前記内側本体に接続された第2のシャフトと、を含む、請求項10に記載のデバイス。
【請求項16】
前記第1のシャフト及び前記第2のシャフトは、前記外側本体に対して前記内側本体を並進させるように構成されている、請求項15に記載のデバイス。
【請求項17】
前記内側本体(110)及び前記外側本体(210)の前記足場組み区分の前記ストラットは、前記拡張された展開構成において血塊にはまり込むように構成されている、請求項10に記載のデバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般的には、血管内の医療処置中に血管から急性閉塞物を除去するためのデバイス及び方法に関する。より具体的には、本開示は、血管から血塊を除去するための血塊回収デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
本開示は、血管から急性閉塞物を除去するデバイス及び方法に関する。急性閉塞物としては、血塊、誤配置されたデバイス、移動したデバイス、大きな塞栓などが挙げられ得る。血栓塞栓症は、血栓の一部又は全てが血管壁から剥離したときに発生する。この血塊(ここでは、塞栓と呼ぶ)は次いで血流の方向に搬送されるが、それによって多くの合併症が引き起こされ得る。虚血性脳卒中は、脳の血管系内に血塊が詰まった場合に結果として生じ得る。肺塞栓症は、血塊が静脈系で又は心臓の右側で発生し、かつ肺動脈又はその支脈内で詰まった場合に、結果として生じ得る。血塊はまた、解放されずに塞栓の形状で発達して血管を局所的に遮断し得るが、この機序は、冠状動脈の遮断物の形成において一般的である。本明細書におけるデバイス及び方法は、急性虚血性発作(AIS)に苦しむ患者の大脳動脈から、肺塞栓症(PE)に苦しむ患者の肺動脈から、心筋梗塞(MI)に苦しむ患者の本来の又は移植された冠血管から、そして血塊が閉塞を引き起こしているその他の末梢動脈及び静脈から、血塊を除去するのに特に適している。
【0003】
標的部位にデバイスを送達することを困難にし得る、アクセスに関する多くの課題が存在する。アクセスが大動脈弓を誘導することを伴う場合(冠状動脈閉塞又は脳閉塞など)、一部の患者における大動脈弓の形状は、ガイドカテーテルを位置付けることを困難にする。蛇行の問題は、脳に近づく動脈では、更により深刻である。内頸動脈の遠位端においては、デバイスが、わずか数センチメートルの移動にわたって数回の屈曲を間断なく伴って血管部分を進まなければならないことも珍しくない。肺塞栓症の場合、静脈系を通り、次いで心臓の右心房及び右心室を通ってアクセスを得ることができる。右室流出路及び肺動脈は、不可撓性又は高プロファイルのデバイスによって容易に損傷する可能性のある繊細な血管である。これらの理由から、血塊回収デバイスは、可能な限り低プロファイルでかつ可撓性のアクセスカテーテル及び支持カテーテルと適合性があることが望ましい。
【0004】
血塊が詰まっている可能性のある領域の脈管構造は、多くの場合、脆弱であり、繊細である。例えば、神経血管は、身体の他の部分における同様のサイズの血管よりも脆弱であり、軟組織床にある。これらの血管に加えられる過剰な引張力は、穿孔及び出血をもたらす可能性がある。肺の血管は、脳血管系の血管より大きいが、本質的に、特により遠位の血管では繊細でもある。
【0005】
ステント様血塊回収デバイスは、急性脳卒中患者の脳血管から血塊を除去するために、ますます使用されるようになっている。これらのデバイスは多くの場合、自己拡張型ステント様本体と血管壁との間に血塊を捕捉することによって血塊を把持する挟み込み(pinning)機構に依存する。このアプローチは、多くの欠点を有する。
【0006】
ステント様血塊レトリーバは、後退の間、その外向きの径方向力に依存して血塊に対するその把持力を維持する。この圧縮力は、血塊を脱水する傾向があり、これはひいては、その摩擦係数を増加させ、血管から血塊を追い出すこと及び除去することをより困難にし得る。径方向力が小さすぎると、ステント様血塊レトリーバは、血塊に対するその把持力を失うが、径方向力が大きすぎると、ステント様血塊レトリーバは血管壁を傷つける場合があり、また引き抜くために過度に強い力が必要になる場合がある。したがって、全ての血塊タイプに対処するのに十分な径方向力を有するステント様血塊レトリーバは、血管外傷及び重篤な患者損傷を引き起こす場合があり、また非外傷性を維持するのに適切な径方向力を有するステント様血塊レトリーバは、多様な血栓除去術の状況において全ての血塊タイプを効果的に取り扱うことが可能でない場合もある。ステント様血塊レトリーバと血管壁との間に血塊を挟み込むことはまた、血塊が除去される際に血塊の側部に対して高い剪断力をもたらし、場合によっては血塊の断片を解放することになる。これらの断片がデバイスによって保持されない場合、それらは移動して遠位血管系内の更なる閉塞をもたらし得る。
【0007】
特定の従来のステント様血塊レトリーバ設計はまた、それらのストラット要素が互いに接続される方法が原因で、血管の屈曲部内で張力下に置かれたときに、それらの拡張した形状をあまり良好に保持しないが、その結果、ストラットは後退の間も張力下に置かれることになる。この張力は、デバイスと血管との間の摩擦に起因するものであり、付加的な荷重が、血塊によってもたらされる抵抗など加荷重である場合に増加する。これにより、ステント様血塊レトリーバが蛇行状血管の屈曲部の周りで近位に引き抜かれるときに、血塊に対する把持力の低下が生じる可能性があり、捕捉された血塊が抜け出す可能性を伴う。屈曲部において、屈曲部の外部のストラットは、内部のストラットよりも高い張力下に置かれる。可能な限り低いエネルギー状態を達成するために、血塊回収デバイスの外部表面は、屈曲部の内部表面に向かって移動し、それによってストラットの張力を低減するが、デバイスの拡張時直径をも減少させる。
【0008】
更に、長い血塊を除去しようとするとき、血塊よりも短い従来の装置は、展開時に閉塞エリアを通る流れを回復することができない可能性が高い。その結果、血塊全体にわたる圧力勾配は依然として、血塊の除去に対する重大な障害となる。このようなデバイスを単純に長くすることは、蛇行状の解剖学的構造を通じて追跡することを困難にし、また、脈管構造に外傷を与える可能性があり、引き抜くためにより多くの力を要し、場合によってはデバイスを動かせなくなってしまう可能性があり、除去するために手術が必要になり得る。
【0009】
所与のデバイスの制動性はまた、多くの理由により、医師が閉塞物を完全に除去するために複数回の通過を行うことがしばしば必要となるため重要である。血塊回収デバイスが引き抜かれるたびに、標的部位へのアクセスが失われる。したがって、ガイドワイヤとマイクロカテーテルを再度前進させて血塊にアクセスし、再度交差させ、次いでガイドワイヤを取り外し、マイクロカテーテルを通して血塊回収デバイスを前進させることが必要となり得る。ガイドワイヤ及びマイクロカテーテルを血塊まで誘導することは、特に血管が蛇行している場合にはかなりの時間を要することがある。この付加的な時間及びデバイスの操作は、患者が曝露される合併症のリスクを増加させ、有効的かつ効率的なデバイスの重要性を強調する。
【0010】
この環境での処置効率を求める際に、多数の本体を有するデバイスが多くの場合、好ましい。このようなデバイスは、標的血管に足場組みすることができる外側本体と、血塊を埋収及び捕捉するための内側本体と、を有し得る。これらのデバイスは、血塊と係合すること及び血塊を追い出すことにおいては十分に機能し得るが、より大きく、また多くの場合はより剛性の高いストラットのネットワークを有することは、デバイスを後退させ、部分的に又は完全に折り畳んで外側カテーテル内にデバイスを再度鞘入れすることを場合によってはより困難にし得る。これらのデバイスは、血塊が典型的には外側部材を通って移動することを求められるように設計されているため、外側部材は、血塊の周辺領域上ではあまり強固な把持力を有さないことがある。外側本体のより大きな拡張形状により、結果として、デバイスが後退中に部分的に又は完全に折り畳まれるときに、外側本体ストラットは内側本体のストラットに衝突するか、あるいはそれを偏向させることになり得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
任意のデバイスが、血塊を除去し、流れを回復させ、良好な患者転帰を容易にすることにおける高いレベルの成功をもたらすためには、上述した課題を克服する必要がある。本設計は、上記の欠陥に対処する改良された血塊回収デバイスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
血塊回収デバイスのための開示される設計は、内側部材と外側部材とが協働して作用してデバイスの全長に沿って血塊の全体を捕捉する二重層デバイスを提供することによって、これらの問題を解決する。この設計は、内側部材と外側部材の両方が大きなセル開口部を有する展開構成を特徴とし得るものであり、それらのセル開口部は、加えられた径方向力によって、デバイスが拡張されたときに開口部を通じて血塊を移動させることが可能となるように整列される。次いで、それらの部材の一方は他方に対して並進され得るが、その結果、整列されたセル開口部が閉鎖されて、内側部材及び外側部材のセルの対向する縁部の間に血塊を圧縮によって挟持する。この動作は、回収の全ての段階の間に、血塊に対するデバイスの把持の確実性を向上させて、より安全でかつより効率的な血流回復を可能にする。
【0013】
本デバイスは、外側カテーテル内に拘束されたときの折り畳まれた送達構成と、標的部位で展開されたときの拡張された血塊係合展開構成と、を有し得る。本デバイスは、独立した操作のための細長シャフトを有し得る。このシャフトは、シャフトから遠位側に延在する拡張可能部材を形成するストラットのフレームワークに接続し得る。細長シャフトは、第1のシャフトと、第1のシャフトに対して並進可能及び/又は回転可能な第2のシャフトと、を特徴とし得る。これらのシャフトは、処置中にユーザによって拡張可能部材の機能を制御及び活性化するために使用され得る。
【0014】
拡張可能部材は、第2のシャフトに接続された内側本体と、第1のシャフトに接続された外側本体とを有する二重層構造を有し得る。これらの本体は、実質的に管状の内側ルーメンと、それを通じて延在する長手方向軸線と、を包囲し得る。内側本体及び外側本体の特性は、互いに独立して調整され得る。外側本体は、内側本体と同軸であってもよく、あるいは径方向にオフセットされていてもよい。内側本体は、実質的に外側本体のルーメン内に配置され得る。
【0015】
内側本体は、複数のセルを有することができ、長手方向軸を中心として外側本体に対して並進可能であり得る。外側本体はまた、複数の閉じたセルを有することができ、拡張された展開構成にあるときに内側本体の径方向サイズよりも大きい径方向サイズを有することができ、また標的血管の壁と並置して支持するように構成され得る。外側本体はまた、長手方向軸線を中心として内側本体に対して並進可能であり得る。並進によってデバイスは、拡張された展開構成と血塊挟持構成との間で遷移され得る。
【0016】
拡張可能部材の内側本体及び外側本体のセルは、サイズがほぼ等しくてもよく、あるいはそれらは、セルの境界間にいくらかの重なりが存在するように、異なったサイズにされてもよい。標的部位において血塊を横切って拡張された構成へと展開されると、内側本体及び外側本体のセルのストラットは、径方向力を及ぼして血管の壁に対して血塊を圧縮することによって、血塊に係合し、血塊にはまり込むことができる。内側本体及び外側本体のセルは整列され得るが、その結果、この圧縮によって血塊の少なくとも一部は、セルを通じて内側管状ルーメンに向かって径方向内向きに移動するように付勢される。外側部材によって及ぼされる径方向力は、内側部材によって及ぼされる径方向力よりも大きくても、小さくてもよい。他の例では、内側部材及び外側部材の径方向力は、ほぼ等しくてもよい。
【0017】
内側本体のセル及び外側本体のセルは、ユーザが、第1のシャフト及び第2のシャフトを使用するなど、内側本体又は外側本体を互いに対して並進させるときに、オフセットすることがある。並進は、長手方向軸線に沿った線形のものであっても、軸を中心とした回転であっても、あるいはこれらの組み合わせであってもよい。並進は、相対運動が拡張された展開構成から血塊挟持構成へとデバイスを遷移させる際に、本体のオフセットしたセルのストラット間で血塊を圧縮及び挟持することができる。セル内のこの挟持は、デバイスが標的部位から後退される際にしっかりと把持されるように、血塊の各部分を収縮させる。内側本体と外側本体との間の相対並進は、血塊が引き抜かれる際にも維持され得るが、その結果、デバイスは依然として血塊挟持構成にあり、把持力は失われない。
【0018】
血塊挟持構成のための内側本体及び外側本体の並進は、デバイスの第1のシャフト及び第2のシャフトを介して作動され得る。例えば、第1のシャフトは、内部ルーメンと、その遠位端とほぼ等しい壁厚を通るスロットと、を有する細長管状本体を有し得る。第2のシャフトは、第1のシャフトのルーメン内に配置された円筒状部材であってもよく、そのため、2つのシャフトは互いに対して移動可能である。インデックスピンが、第2のシャフトの外側表面から径方向外向きに延在することができ、それにより、第1のシャフト内のスロットに係合し、そのスロットの範囲内で移動するように構成される。インデックスピン及びスロットは、ピン(したがって内側シャフト及び内側本体)の円周方向の回転及び/又は軸方向の運動がスロットの長さ全体にわたって案内されるようなサイズであり得る。スロットの配向は、例えば、長手方向軸線と平行であってもよく、あるいは、スロットの軸線がデバイスの長手方向軸線と角度を形成するように配向されてもよい。次いで、ユーザがシャフトの軸線に沿って内側シャフトの細長本体を押すか又は引っ張った場合、インデックスピンは、スロット軸線に沿って運動を受けることができ、外側シャフト及び外側本体に対する内側シャフト及び内側本体の回転及び並進を可能にする。この運動は、血塊を挟持し、しっかりと把持するために、内側本体のセルと外側本体のセルをオフセットすることができる。このプロセスはまた、血塊挟持構成から拡張された展開構成へと戻るようにデバイスを遷移させるために、逆転されてもよい。
【0019】
別の例では、内側本体は、第2のシャフトに接合された内側支持アームを有してもよく、外側本体は、第1のシャフトに接合された外側支持アームを有してもよい。これらの支持アームは、長手方向軸線を中心に捻じれるように、ある角度をなして形成されてもよい。次いで、内側支持アーム又は外側支持アーム上の接線力は、外側カテーテル又はアクセスカテーテルがデバイス上で前進されるときに、デバイスの内側本体及び/又は外側本体上の互いに対する捻じれに影響を及ぼし得る。この相対的な捻じれは、血塊を挟持してしっかりと把持するために必要な並進を引き起こし得る。
【0020】
別の例では、身体血管内の血塊又は閉塞を治療するためのデバイスが、長手方向軸線の周りに構成された管状内側ルーメンを有し得る。本デバイスは、拘束された送達構成と、拡張された展開構成と、多孔性の内側血塊足場組み区分を形成する複数のストラットと、を備える内側本体を有し得る。外側本体は、内側本体の周囲に配設され、拘束された送達構成及び拡張された展開構成を共有し得る。外側本体はまた、外側血塊足場組み区分を形成する相互接続された複数のストラットによって多孔性であってもよい。内側本体及び外側本体の近位側に、ユーザがデバイスを制御及び操作することを可能にする細長シャフトが延在していてもよい。
【0021】
内側本体及び外側本体の足場組み区分のストラットは、開放セル又は閉鎖されたセルのリングを形成し得る。セルは、サイズがほぼ等しくてもよく、あるいは異なるサイズのものであってもよい。内側本体のセルは、デバイスが拘束された送達構成から送達されて標的部位で展開構成へと拡張するとき、外側本体のセルと整列し得る。足場組みストラットの拡張は、血塊又は閉塞物に外向きの径方向力を及ぼして、足場組み区分のストラットを埋め込み、整列したセルの開口部を通じてかつ内側管状ルーメンに向かって径方向内向きに移動及び突出するように血塊の各部分を促進し得る。
【0022】
内側本体と外側本体は、長手方向軸線を中心として互いに対して並進可能であってもよい。この並進は、細長シャフトの操作を通じてユーザによって活性化され得る。シャフトは、第1のシャフトと第2のシャフトが互いに対して並進可能となるように、内側本体に接続された第2のシャフトを包囲する外側本体に取り付けられた第1のシャフトを有し得る。このようにして、ユーザが外側の第1のシャフトを安定に保持しながら、内側の第2のシャフトを並進及び/又は回転させると、内側本体は、外側本体に対して並進及び/又は回転する。同様に、ユーザが第2のシャフトの位置を維持しながら、第1のシャフトを並進及び/又は回転させると、外側本体は、内側本体に対して並進及び/又は回転する。第1のシャフト及び第2のシャフトの構成に応じて、相対的並進は、直線運動、長手方向軸線の周りの回転、又はそれら2つの組み合わせであり得る。本体の並進は、血塊が突出している内側本体セル及び外側本体セルをオフセットさせ、それによって、それぞれのセルの対向する縁部の間で血塊を圧縮することができる。
【0023】
開示されるデバイスを利用して、血管を閉塞する血塊を有する患者を治療するための方法が、血塊を横切って血塊回収デバイスを送達する工程を有し得る。デバイスは、折り畳まれた送達構成及び拡張された展開構成と、デバイスを制御するための細長シャフトと、細長シャフトの遠位側の拡張可能要素と、を有し得る。折り畳まれた送達構成により、血塊回収デバイスは、カテーテルが引き抜かれるときに標的部位で拡張する前に、マイクロカテーテルなどの比較的小さい穴を有するカテーテルを通じて送達されることが可能となる。
【0024】
拡張可能要素は、複数のセルを含む内側本体と、複数のセルを含み、展開状態で内側本体よりも大きい径方向サイズに拡張可能な外側本体と、を有し得る。内側本体と外側本体は、展開構成と血塊挟持構成との間で長手方向軸線を中心として互いに対して並進するように構成され得る。
【0025】
細長シャフトは、外側本体に接続された第1のシャフトと、内側本体に接続された第2のシャフトと、を有し得る。外側本体と内側本体の並進は、例えば、第1のシャフトと第2のシャフトを互いに対して選択的に移動可能となるように構成することによって達成され得る。本方法は次いで、第1のシャフトにより内側本体に対して外側本体に運動を選択的に付与するか、又は外側本体に対して内側本体に運動を選択的に付与するために第2のシャフトを利用する工程を含み得る。この運動は、線形、曲線、回転、これらの組み合わせ、又は別の好適なプロファイルであり得る。
【0026】
別の工程は、互いに対する第1のシャフトと第2のシャフトの並進の範囲を制限することを含み得る。制限機能は、ユーザが内側本体及び外側本体を設計限界を超えて移動させることを防止するのを支援し得るものであり、本体のセルのオフセットが増大することは、血塊に対する把持力を弱めたり、血塊を剪断したりすることになり得る。制限は、シャフトの更なる並進を阻止するための物理的なストッパとして、スロット、スリーブ、カム/フォロワ、又は他の好適な装置使用することによって実現され得る。
【0027】
更なる工程は、内側本体のセルが外側本体のセルと整列され、露出されるように、血塊回収デバイスを拡張された展開構成に展開することを含み得る。拡張されると、内側本体と外側本体の両方が、血塊に外向きの径方向力を及ぼし、血管壁に対して血塊を挟持し、内側本体及び外側本体のセル内の開口部を通じて径方向内向きに血塊の少なくとも一部分を付勢し得る。血塊の各部分がセル開口部を通じて突出しているとき、ユーザは、内側本体又は外側本体のうちの一方を他方に対して並進させて、内側本体のセルストラットと外側本体のセルのストラットとの間で血塊を挟持するためにデバイスを拡張された展開構成から遷移させることができる。挟持された血塊は、セル間で圧縮してしっかりと保持され、内側本体と外側本体との間の相対的並進を維持することによって把持力が維持されている間に血塊回収デバイスを血管から引き抜くことが可能となる。血塊回収デバイスと挟持された血塊は次いで、独立してあるいはデバイス及び血塊を外側カテーテル又は中間カテーテルの中へと引き込むことによって、患者から回収され得る。
【0028】
多くの場合、閉塞性血塊の一部又は全てを回収した後、より完全な血管開存性についての評価が可能となるように、外側カテーテルを通して造影剤を注入することができる。閉塞物が血管内に残っている場合、付加的な通路が血塊回収デバイスによって形成され得る。次いで、標的血管が適切に再開通したことが確認されると、残りの全てのデバイスを患者から除去することができる。本開示のデバイスは、患者を治療するために必要とされるカテーテルの前進回数を最小限に抑えるための手段を提供し、それによって、複数の通路が必要とされる場合にも、血管損傷の可能性及び関連する血管解離のリスクを低減する。
【0029】
本開示の他の態様及び特徴は、以下の詳細な説明を添付の図と併せて考察することで、当業者には明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
本発明の上記及び更なる態様は、添付の図面と併せて以下の説明を参照して更に考察され、同様の参照番号は、機能的に類似又は同一の要素を示す。図面は、必ずしも縮尺どおりではなく、代わりに、本発明の原理を例示することに主眼が置かれている。図は、限定としてではなく単なる例示として、本発明のデバイスの1つ以上の実装形態を描写している。
図1】本発明の態様による、血塊回収デバイスの等角図である。
図2】本発明の態様による、別の血塊回収デバイスの側面図である。
図3】本発明の態様による、血塊回収デバイスの更なる例を示す。
図4】本発明の態様による、第1のシャフト及び第2のシャフトを使用した血塊挟持配向のための考えられる起動機構の例である。
図5】本発明の態様による、拡張された展開構成にある血塊回収デバイスの軸線に対して平行な内側本体及び外側本体のセルの位置合わせを示す。
図6】本発明の態様による、デバイス軸線に沿ったセルの線形並進の適用後の、血塊挟持構成における図5からのデバイスのセルの配向の例を示す。
図7】本発明の態様による、第1のシャフト及び第2のシャフトを使用した血塊挟持配向のための考えられる起動機構の別の例である。
図8】本発明の態様による、拡張された展開構成にある血塊回収デバイスの軸線に対して横断する内側本体及び外側本体のセルの位置合わせを示す。
図9】本発明の態様による、デバイス軸線を中心とするセルの並進及び回転の適用後の、血塊挟持構成における図8からのデバイスのセルの配向の例を示す。
図10】本発明の態様による、拡張された展開構成にあるセル開口部を通じて血塊が移動することを可能にする内側本体及び外側本体の位置合わせされたセルの図である。
図11】本発明の態様による、内側本体が血塊挟持構成へと軸線を中心として回転されている図10のセルを示す。
図12】本発明の態様による血塊回収デバイスの使用方法を概説するフロー図である。
図13】本発明の態様による血塊回収デバイスの使用方法を概説するフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
開示される設計の目的は、血管構造内の広範な組成物の血塊をより効果的かつ効率的に除去する一方で、処置中に高いレベルの送達性及び可撓性を維持することが可能な血塊回収デバイスを作製することである。この設計は、内部に内側拡張可能本体が延在する外側拡張可能本体を有し得る。開示されるデバイスは、外側本体と内側本体が大きなセル開口部を有し、径方向力によって血塊の各部分が開口部の中へと移動することを可能にする、二重層構造の共通のテーマを共有している。次いで、外側部材又は内側部材のうちの1つは、以前に整列されたセル開口部が閉鎖されるように、他方の本体に対して並進され、血塊の一部分又は各部分が内側で挟持される。これらの挟持設計は、血塊回収デバイスの保持安全性を増加させる。
【0032】
内側拡張可能部材及び外側拡張可能部材は共に、著しくひずんだ送達構成から解放されると、その形状を自動的に回復することができる材料から作製されるのが望ましい。材料は、ワイヤ、ストリップ、シート、又は管などの多くの形態をなし得る。好適な製造プロセスは、ニチノール管をレーザ切断し、次いで、結果として生じた構造体を熱処理及び電解研磨して、ストラット及び接続要素のフレームワークを作製することであり得る。記載されているように、これらの要素のそれぞれについて設計の範囲が想定され、これらの要素のいずれも、任意の他の要素と共に使用され得ることが意図されるが、繰り返しを避けるために、これらの要素は考えられる全ての組み合わせでは示されていない。
【0033】
ここで、本発明の具体例を図を参照して詳細に説明する。これらの説明は、多くの場合、機械的血栓除去治療に関連しているが、本設計は、他の処置及び他の身体通路にも同様に適合させることができる。
【0034】
冠状血管であるか、肺血管であるか、脳血管であるかによらず、血管系内の様々な血管にアクセスして血塊に到達するには、周知の手技工程及び多くの従来の市販アクセサリ製品の使用を伴う。血管造影材料、回転止血弁、送達アクセスカテーテル、及びガイドワイヤなどのこれらの製品は、検査機関及び医療処置において広く使用されている。これらの又は同様の製品が、以下の説明文において本発明の開示物と共に使用される場合、それらの機能及び正確な構成を詳細に記載することはしない。
【0035】
図1を参照すると、血塊回収デバイス100は、細長シャフト6と、細長シャフトの遠位端に構成された拡張可能部材101と、を有し得る。拡張可能部材101は、血管閉塞の標的部位において折り畳まれた又は拘束された送達構成から拡張された展開構成へと拡張可能な内側本体110と外側本体210とを有し得る。送達方法は、例えば、標的位置のアクセス要件に応じて、マイクロカテーテルを通じたものであっても、他の外側カテーテルを通じたものであってもよい。閉塞は、血栓(血液凝塊)、動脈硬化性プラーク、又は血管内の血流を妨げる何らかの他の閉塞であり得る。
【0036】
外側本体210は、近位端212の接続部から細長シャフト6及び遠位端213へと延在する概ね管状の形状をなしてもよい。内側本体110はまた、実質的に管状の輪郭を有し、外側本体210の内部を通じて延在し得る。内側本体110はまた、細長シャフトに接続され得るが、外側本体210との接続を共有する必要はない。換言すれば、両方の本体は、シャフトに固定的に接続され得るが、内側本体の近位端112において同じ接続点を必ずしも共有しなくてよい。次いで、特定のシャフト設計により、内側本体110及び外側本体210は、血塊又は閉塞物の部分を挟持及び捕捉が可能となるように、互いに対して選択的に並進可能となり得る。この血塊挟持構成は、例えば、外側本体210に対する内側本体110の回転又は線形並進によって活性化され得る。この挟持は、特にフィブリンに富む血塊の場合に、血塊に対するデバイスの把持力を増加させることによって、血塊の除去を容易にする。この挟持はまた、血塊を伸長させ、それにより、追い出しプロセス中に血塊を血管壁から離れる方向に引くことによって、追い出し力を低減し得る。その間の血塊の保持は、血塊の近位端を制御し、その近位端が側枝血管にひっかかるのを防止することによって、マイクロカテーテル又は外側カテーテルへの回収の間に改善され得る。
【0037】
外側本体210の遠位端213及び内側本体110の遠位端113は、拡張可能部材101の軸線111の周りに環状輪郭を形成して、デバイス100の内側ルーメン119を画定し得る。外側本体210の遠位端213は、内側部材110の遠位端113と平面をなしてもよく、あるいは標的部位で展開及び拡張されるときに血管の外傷を回避するために、大部分が非外傷性の輪郭をなす別の形状を形成してもよい。いくつかの例では、角度付きストラットが、より大きな径方向力をもたらし得るか、あるいはセルの最終リング上の遠位頂点236が頑固な血塊を追い出すのを支援するために使用され得る状況では、図示のようなフレア状の又は輪郭形成された端部が有利であると判明し得る。遠位頂部236は、デバイス100の長手方向軸線111からオフセットされてもよく、また拡張されたときに外側本体210によって画定される円筒面に近接してもよい。
【0038】
内側本体110及び外側本体210は、好ましくは、ニチノール又は高い回復可能なひずみを有する別のそのような合金など、超弾性又は擬似弾性材料から作製される。全ての細長シャフト6のうちのいくつかは、先細のワイヤであってもよく、あるいは、ステンレス鋼、MP35N、ニチノール、又は適度に高い弾性率及び引張強度を有する他の材料から作製されてもよい。これらの材料を備えた自己拡張型本体を使用する利点は、標的血塊の体積特性及び剛性のため、抵抗によって、デバイス100は、デバイスが血塊の全体にわたって展開されるときのその自在に拡張した直径の数分の一にしか初期には拡張され得ないことである。これにより、外側本体210は、後退されている間もより大きな直径へ更に拡張する能力を与えられ、それにより、外側本体は、漸進的により大きくかつより近位の血管へと後退されるときに、血管壁との接触を維持することができる。
【0039】
シャフト6及びデバイス100はまた、挿入中にデバイスの遠位端がマイクロカテーテルの端部に接近していることをユーザに指示するか、あるいは処置中にデバイスの末端部をマーキングするための表示バンド又はマーカを有し得る。これらの表示バンドは、シャフトの残りの部分から視覚的に区別されるように、コーティング用のシャフトのエリア、又は蛍光透視下で視認可能な放射線不透過性の要素を印刷、除去、又はマスキングすることによって形成され得る。
【0040】
シャフト6は、摩擦及び血栓形成を低減するために、ある材料でコーティングされてもよく、あるいは高分子ジャケットを有してもよい。コーティング又はジャケットは、ポリマー、シリコンなどの低摩擦潤滑剤、又は親水性/疎水性コーティングからなり得る。このコーティングはまた、外側本体210及び内側本体110の一部又は全部に適用され得る。
【0041】
本開示全体を通して様々な図に示されるような二重層マルチ径デバイス100は、いくつかの利点を有する。外側本体210と内側本体110は両方とも、自己拡張型ステント様構造であり、内側本体の外径は、自由拡張状態において外側本体の内径とほぼ等しい。したがって、外側本体210が血管及び/又は血塊内に拘束されるとき、内側本体110は、それ自体が外側本体によって拘束される。一例では、内側本体110の外径は、自由拡張状態において外側本体210の内径の20%以内である。より好ましい例では、内側本体110の外径は、自由拡張状態において外側本体210の内径の10%以内である。最も好ましい例では、内側本体110の外径は、内側本体が外側本体内に拘束されないように、デバイスが分解されなければならない場合には、自由拡張状態において外側本体210の内径に等しいか、又はそれよりもわずかに大きい。
【0042】
外側本体210のこの径方向寸法は、漸進的に径が大きくなる血管の中へとデバイスが近位に後退されるときに、外側本体が血管壁との接触を維持し、血管壁と並置するだけでなく、血塊が遠位に移動することを阻止することを可能にし得る。血管壁との並置はまた、血管から血塊を最初に追い出すのに必要な軸方向力を低減することになり得る。
【0043】
図1のものと同様の二重の内側拡張可能本体110及び外側拡張可能本体210を有する複合デバイス100の側面図が、図2に示されている。内側本体110と外側本体210は両方ともモノリシック構造体であってもよく、外側本体は、その中に内側本体を実質的に包囲するように構成されている。内側本体110のセル114及び外側本体210のセル214は、血塊の入口として機能するものであり、また、デバイスが、後退されるとき、血塊が血管から引っ張られる方向に対して実質的に平行(すなわち、長手方向軸線111に対して実質的に平行)な方向において、血塊に力を加えることを可能にする。これは、外側本体210によって脈管構造に適用される任意の外向きの径方向力が最小に保たれ得ることを意味する。血塊が内側ルーメン119まで横断するのを促進するように外側本体210を構成することによって、デバイスは、血管の壁から血塊をより効果的に係合解除することができる。内側本体110及び外側本体210はまた、開放遠位端113、213を有してもよく、あるいは、処置中に血塊断片又は他の細片が遠位移動することを阻止するために、細片阻止要素(図示せず)を伴って構成されてもよい。
【0044】
内側本体110のセル114及び外側本体210のセル214は、様々な形状を有し得る。図2は、大部分が六角形の形状を有するセルを示すが、何らかの他の多角形であってもよい。内側本体及び外側本体のこれらのセルは、相当な引張力又は圧縮力を接合部に適用することなく、デバイスが伸張によって、わずかな長さの差に対処することを可能にし得る。長さの差は、例えば、デバイスが小血管内で拡張されるか、折り畳まれるか、又は展開されるときに生じ得る。内側本体セル114及び外側本体セル214のストラットの六角形の構成配置は、マイクロカテーテル内に装填されるとき、また標的部位で自由に拡張されるときに、内側本体110及び外側本体210の長さが実質的に同じになり得るように、セルが十分に延長及び短縮することを可能にする。しかしながら、セルの形状は十分な構造的剛性を有し得るものであり、したがって、デバイス100は、内側本体110及び外側本体210を過度に延長及び短縮することなく、前進又は後退され得る。
【0045】
セル114、214の形状は、デバイス100の内部に少なくとも部分的に入り込む血塊の能力を著しく損なわないように選択され得る。多くの場合、セルは、図示のように、内側接合部144において隣接セルと互いに接合された内側本体セル114及び外側接合部244において接合された外側本体セル214の頂点と共に閉鎖され得る。別の例では、開放セルと閉鎖セルとの組み合わせが存在し得るが、ここで開放セルは、軸方向に隣接するセルのリングから不連続であるストラットのリングを有する。
【0046】
内側本体110と外側本体210は、展開構成への拡張時に異なる半径方向力を発生させるように構成され得る。これは、異なる幾何学的形状、材料などの複数の方法によって、又は異なる残留ひずみを有するヒートセットによって達成され得る。一例では、外側本体210は、血管外傷を引き起こさないように制限された半径方向力を有することができ、内側本体110は、より高い半径方向力を有することができ、その結果、強い開放力が、展開時の血流を回復するために血塊の少なくとも一部分を通じたルーメンを形成することができる。ルーメンを通じた一定量の制限された血流は、血流回復直後に血管に加えられる圧力が正常よりも低くなり、これにより、血管床における出血のリスクが低減されることを確実にし得る。その後、デバイス及び捕捉された血塊を除去することによって、完全な潅流が回復され得る。他の例では、外側本体210の径方向力と内側本体110の径方向力は実質的に等しくてもよく、あるいは、外側本体は、それら本体が並進されるときに血塊の各部分を挟持すると共に捻じるために、より大きな径方向力を有してもよい。
【0047】
デバイスシャフト6は、2つの別個のシャフトである第1のシャフト8と第2のシャフト7に細分化され得るが、これらは、互いに一致し、またデバイス100の長手方向軸線111に一致する。近位側に、デバイスの外側本体210は、第1のシャフト8と近位接合部で接合され、本体の外径へと円錐状の形式で放射状に広がる支持アーム222を有し得る。支持アーム222は、第1のシャフト8から、血塊に係合する外側本体210の完全な管状の輪郭への漸進的な剛性遷移を確実にするために、図示のような先細の輪郭を有してもよい。支持アーム222は、デバイス100の長手方向軸線111の周りの別個の位置で、数及び配置が異なり得るため、隣接するアーム間には小さな又は大きな円周方向の間隙が存在する。
【0048】
内側本体110は、第2のシャフト7に接合する内側支持アーム122を有し得る。外側本体210の支持アーム222と同様に、内側支持アーム122は、内側本体の管状部分からシャフト7へと先細になっていてもよく、また、長手方向軸線111に対して平行であっても、長手方向軸線111に対してある角度をなしても、あるいは長手方向軸線111を中心として捻じられてもよい。軸線を中心とした捻じりを伴って形成される場合、支持アーム122は、外側カテーテルの中へと引き込まれるときに、外側本体210に対してデバイスの内側本体110上に捻じれを誘発し得る。代替的に、好適な外側カテーテルが、支持アーム122に衝突するようにデバイス上で前進され得る。この回転捻じれは、血塊挟持構成で血塊を把持するために、内側本体及び外側本体の以前に整列したセル114、214を閉鎖する別の方法となり得る。同様に、相対並進によって内側本体110のセルと外側本体210のセルとの間で挟持が既に達成されている場合であっても、デバイスは依然として所望であれば、内側支持アーム122と外側支持アーム222とを衝突させて血塊の近位部分を更に挟持するために、外側カテーテルの中へと引き込まれ得るが、拡張可能本体のセルは、干渉を伴うことなく血塊に対する確実な把持を維持し得る。
【0049】
支持アーム122はまた、血塊挟持セルから離れる方向又は血塊挟持セルと少なくとも同じではない方向に運動を付勢する屈曲部又はクラウンを有してもよく、それにより、支持アームは、デバイスの近位部分が外側カテーテルによって部分的に拘束されるときにも、血塊の各部分を剪断することがない。屈曲部又はクラウンはまた、血管から血塊を係合解除する臨床上の初期工程のために、血塊に対する強力な把持力をもたらすのを支援することができ、外側本体210を低い径方向力で構成することを可能にする。内側本体セル114及び外側本体セル214の支持アーム122、222への接続は、血管構造内での屈曲中に内側本体及び外側本体の中立軸線を整列させるように実質的に整列され得る。
【0050】
内側本体110及び外側本体210の最遠位部分は、図示のように開放されてもよく、あるいは代替的に、遠位端213に対して実質的に円錐状の輪郭をなして径方向にスリム化する先細の端部を有してもよい。端部におけるストラットの先細り及び収束は、細片捕捉ゾーンを形成するように、ストラット間のセル開口部の孔径を低減し得る。更なる例では、外側本体210の遠位端213が、使用される血管に対して非外傷的となるように、隆起した又はフレア状である遠位頂点236が含められ得る。隆起又はフレアを形成するストラットは、外側本体210の隣接する部分のストラットと平行でなくてもよい。遠位端213はまた、処置中にデバイス100の末端部にマーキングするために放射線不透過性の特性を与えられてもよい。
【0051】
内側本体110と外側本体210を長手方向軸線111の周りに配設される二重層構造を有する血塊回収デバイス100の別の例が図3に示されている。この例では、内側本体110のセル114及び外側本体210のセル214は不規則的な形状を有してもよく、それにより、ストラットは、セルの1つのセット又はリングから次へと軸線方向に鏡写しでなくてもよい曲線状の様式で屈曲部を有するか、あるいは延在する。図では、デバイスを形成するセルのリングは、それらが内側本体接合部144及び外側本体接合部244で会合する正弦波状縁部によって境界を画され得る。正弦波状縁部は、径方向力の山と谷の大きさ(又は振幅)がデバイス100の長さに沿って変化し得ることを意味する。この不規則的なセル形状によって、デバイスは、血塊を埋収及び把持するのを支援するために、様々な領域において鋭角及びより高い径方向圧力(表面積当たりの径方向力)を与えられ得る。
【0052】
血塊の各部分がデバイスに接触する場合、小さな表面積及び径方向力は、血塊の一部が内側本体セル114及び外側本体セル214を貫いて突出することを可能にし得る。所与のレベルの径方向力の場合、デバイスの径方向圧力は、セル又はストラット幅を構成するストラットの数を低減することによって増大され得る。
【0053】
細長シャフト6は、内側本体110と外側本体210が独立して操作及び/又は並進され得るように構成され得る。並進は、例えば、軸線に沿った線形並進、一方の本体の他方に対する回転、又はこれらの何らかの組み合わせであり得る。ユーザは、拡張された展開構成にあるときに内側本体110のセル114と外側本体210のセル214とを位置合わせすることから、血塊挟持構成においてオフセットされることへと、多数の方式でデバイス100を遷移させ得る。この配向の変化の例が図5及び図6に示されており、図5は、デバイスが最初に標的血塊内に展開されるときに最初に整列されるセルを示す。図4に示されるように、デバイスシャフト6は、互いに一致しかつデバイス100の長手方向軸線111に一致する2つの別個のシャフトへと細分化され得る。シャフト構造は、患者に対して外部の近位端におけるユーザからの力伝達を可能にするように、十分に剛性の材料又は材料の組み合わせのものであり得る。第1のシャフト8は、外側本体212の近位端212に接続されてよく、第2のシャフト7は、内側本体110の近位端112に接続されてよい。第1のシャフト8は、第2のシャフト7が第1のシャフトのルーメン322内に存在し得るように、管状の細長本体320を有し得る。
【0054】
デバイス100の血塊挟持構成は、外側本体210に対する内側本体110の並進、又は代替的に内側本体110に対する外側本体210の並進によって達成され得る。図4に示される例では、インデックスピン312が、第2のシャフト7から径方向に延在し、第の1シャフト8の細長本体320内のスロット324内に存在し得る。スロット324の軸線が、図示のように長手方向軸線111と平行に配置される場合、ユーザは、本体セル内における線形並進を誘発するために、一方のシャフトを他方に対して押すか又は引くことができる。
【0055】
セルが図5のように整列されているとき、例えば、第2のシャフト7を押しながら第1のシャフト8を安定に保持することにより、内側本体110の軸線111に沿った線形並進が引き起こされて、内側本体110のセル114が、突出した血塊と共に外側本体210のセル214に対して閉鎖される。並進は、図6に見られるように、セル114、214の新しい配向をもたらす。内側本体110のストラット116によって形成された角度付き接合部144は、並進の間にネットとして機能することができ、血塊の突出部分を把持し、外側本体210のストラット216によって形成されたそれぞれの接合部244に対してその突出部分を挟持する。代替的な例では、第1のシャフト8を押すか又は引きながら第2のシャフト7を安定に保持することにより、外側本体210の軸線111に沿った線形並進が引き起こされて、外側本体210のセル214が内側本体110のセル114に対して閉鎖され、突出する血塊が挟持される。また、第1のシャフト8と第2のシャフト7の両方が同時に反対方向に並進されて、同じ機能を達成し得ることも想定され得る。スロット324の末端部は、適用される許容可能な並進を制限して、捕獲された血塊に対する偶発的な剪断又は把持力の損失を防止することができる。マイクロカテーテル、中間カテーテル、又は他の外部シースによる回収中にデバイス100を部分的に再度鞘入れすることは、(内側本体のセルと外側本体のセルとの間の突出する血塊に加えて)カテーテル又はシースの先端部と内側本体110及び外側本体210の近位ストラットとの間の突出する血塊に付加的な挟持力を加えることになり得る。
【0056】
デバイス100の血塊挟持構成への遷移を制御するための手段としてインデックスピンを使用する別の例が、図7に示されている。前の例と同様に、第2のシャフト7は、シャフトが互いに対して並進可能かつ回転可能となるように、管状の第1のシャフト8のルーメン322内に存在し得る。インデックスピン312は、第2のシャフト7から径方向に延在することができ、また、スロットの軸線が長手方向軸線111に対して角度326を形成するように、第1のシャフト8の細長本体320の中へと切り込まれたスロット324内に存在することができる。スロット324の軸線が、長手方向軸線111(図4を参照)と平行に配置される場合、ユーザは、本体セル内における線形並進を誘発するために、一方のシャフトを他方に対して押すか又は引くことができる。しかしながら、図示のような角スロットは、第1のシャフト8に対する第2のシャフト7への押込み/引張り力が、外側本体部材210に対する内側本体部材110の線形並進と角回転(図7の矢印を参照)の両方をもたらすことを意味する。スロット324がインデックスピン312の必要な移動を案内するので、ユーザからの単一の押込み/引張り力がこの起動に必要である。この動きは、図8に示されるような内側本体セル114及び外側本体セル214の展開状態から、図9に示されるような軸線111及び軸線150からオフセットされたセルの血塊挟持構成へと遷移するものである。
【0057】
デバイス100の血塊挟持構成を活性化するこの方法では、第1のシャフト8内のスロット324の長手方向軸線111に対する角度326がより鋭角になると、内側本体110のセル114と外側本体210のセル214との間の線形並進の相対的成分がより大きくなることが理解され得る。同様に、より鈍い角度326は、軸線111を中心とした本体のより大きな相対的な回転成分をもたらすことになる。
【0058】
拡張された展開構成にあるデバイス100の内側本体110及び外側本体210、並びに血塊挟持構成へと操作された後のそれら内側本体及び外側本体のより広範な図が、図10及び図11にそれぞれ示されている。外側本体210は、デバイスの展開中にマイクロカテーテルが後退されるとき、拡張して血管壁に接触することができる。壁との並置は、デバイス100に安定性を提供し、また、デバイスが血管内で鞘出しされるときに、外側本体210と内側本体110との間の展開における捻じれを最小限に抑える。これにより、血塊を血管壁に対して挟持することによって、閉塞物又は血塊20内におけるデバイス100の均一な展開及び拡張が容易となる。展開されると、軸線111を中心とした本体の拡張による径方向力は、セル114、214内の開口部を通じて血塊20を付勢することになる。
【0059】
内側本体110及び外側本体210の拡張は、ストラットによって提供される足場支持体のレベルに応じて、拡張中の血塊の圧縮及び/又は変位を引き起こし得る。拡張可能本体が高レベルの足場を提供するとき、血塊は圧縮され得る。代替的に、拡張可能本体が脱出経路又は開口部を提供するとき、拡張する本体は、開口部に向かって血塊を付勢する。血塊自体は、多くの自由度を有することができ、また様々な異なる方向に移動することができる。デバイスが十分に長いとき、血塊にとって利用可能な移動自由度の多くが排除される。これにより、過度に圧縮することなく血塊を回収することができる。これは、血塊の圧縮によって血塊を脱水させ得るため有利であるが、今度は、摩擦特性及び剛性が増大し、それによって、血塊を血管から係合解除及び除去することがより困難となる。この圧縮は、本体が血管壁に向かって外向きに拡張する際に、血塊がセルを通じて内向きに容易に移動するか、又は内側本体110及び外側本体210の近位部分内の間隙を通じて容易に移動する場合に回避され得る。
【0060】
血塊挟持構成が、内側本体110と外側本体210との相対的な変位及び/又は回転(図11の矢印)を利用することによって活性化されるとき、内側本体セル114を形成するストラット116は、図11に示されるような外側本体セル214を形成するストラット216とはもはや整列されない。血塊20は、セルを形成するストラットの間で衝突及び圧縮され、初期の血管からの追い出し及びその後の回収のための血塊の領域をしっかりと把持する挟持が可能になる。
【0061】
図12及び図13は、かかるデバイスを用いて血栓除去処置を実施するための方法の工程を示す。この方法の工程は、本明細書に記載され、当業者に既知である例示的なデバイス又は好適な代替物のいずれかによって実現され得る。本方法は、記載される工程の一部又は全てを有し得るが、多くの場合、各工程は、以下に開示されるものとは異なる順序で実施され得る。
【0062】
図12に概説される方法1200を参照すると、工程1210は、標的血塊を横切って血塊回収デバイスを送達することを含み得る。血塊回収デバイスは、マイクロカテーテル又は他の好適な送達カテーテルを通して送達され得るものであり、送達中の折り畳まれた構成と、送達カテーテルが後退されるときの拡張された展開構成と、を有し得る。ユーザによってデバイスを操作するために、細長シャフトが使用され得る。拡張可能要素は、細長シャフトの遠位端部に取り付けられてもよく、また、実質的に管状のルーメンと共に長手方向軸線に沿って延在する外側本体を有し得る。内側本体は、外側本体のルーメン内に軸線に沿って配設されてもよく、また、完全に収容されるように外側本体よりも小さい範囲で径方向に拡張可能であってもよい。デバイスが血塊挟持構成において血塊を挟持及び把持するために展開構成から遷移するように、内側本体と外側本体は、互いに対して長手方向軸線に沿って、かつ/又は長手方向軸線を中心として並進することが可能であってもよい。
【0063】
多くの場合、内側本体は、外側本体よりわずかに小さい外径にまでのみ拡張することができ、また、外側本体によって発生される径方向力よりも大きくても、小さくても、あるいはそれに等しくてもよい径方向力を発生させるように構成されてもよい。これにより、内側本体及び外側本体は、デバイスの初回通過の成功確率を増加させるように、標的血塊のサイズ、位置、及び組成に合わせて調整されることが可能となる。
【0064】
内側本体と外側本体は両方とも、複数のセルを形成するストラットから作製され得る。セルは、任意の多様な形状及びサイズであってよい。工程1220では、本体は、拡張及び展開されると、両方の本体のセル内の開口部が軸方向と周方向の両方において大部分が整列するように構成され得る。セルは大きな中央開口部を有することができ、それにより、拡張されると、デバイスは血管壁と並置し得る一方で、ストラットによって提供される制限された足場が、標的血塊を圧縮し、標的血塊を埋収することができる。その後、近傍の血塊の各部分は、内側本体セル及び外側本体セル内の間隙を通じて同時に内向きに容易に通過することができる。
【0065】
デバイスは、工程1230のように、細長シャフトが外側本体の近位端に接続された第1のシャフトと、内側本体の近位端に接続された第2のシャフトと、から形成されるように構成され得る。第2のシャフトは、例えば、外側本体から独立して内側本体を線形並進又は回転させるために選択的に使用され得るように、第1のシャフトと一致していてもよい。同様に、第1のシャフトは、内側本体とは独立して外側本体を線形並進又は回転させるために使用され得る。
【0066】
代替的に、血塊を挟持するために、何らかの他の機構がこの工程において利用され得る。例えば、内側本体又は外側本体の近位支持アームは、マイクロカテーテル又は外側カテーテルが拡張可能本体の近位端を越えて支持アームへと前進された場合に、本体のうちの一方の上に他方に対して捻じれが付与され得るように、長手方向軸線に対してある角度をなして形成され得る。
【0067】
デバイスは、折り畳まれた送達構成で、マイクロカテーテルを通じて閉塞された血管へと送達され得る。頭蓋内閉塞の場合、頚動脈へのダイレクトスティック、上腕アプローチ、又は大腿アクセスを含めて、様々なアクセス経路が可能である。従来の技術及び十分に理解された技術を用いて動脈系へのアクセスが得られると、ガイドカテーテル又は長いシースが通常は、実際的に閉塞性血塊に近接して配置される。例えば、中大脳動脈閉塞の場合、ガイドカテーテルは頸動脈サイフォンの近位の内頸動脈内に配置され得る。次いで、マイクロカテーテルが、ガイドワイヤの援助を受けてあるいは受けずに、血塊の全体にわたって前進され得る。マイクロカテーテル先端部が血塊を横切って、血塊の遠位側に前進されると、ガイドワイヤは、使用されている場合、除去されてよく、血塊回収デバイスは、遠位端に到達するまでマイクロカテーテルを通じて前進される。次いで、マイクロカテーテルは後退され得るが、これにより、血塊回収デバイスは、閉塞性血塊の中で、また閉塞性血塊のいずれかの側へと拡張することが可能となる。
【0068】
工程1240は、拡張された展開構成へと血塊回収デバイスを展開することを含む。デバイスの内側本体及び外側本体によって印加される径方向力は、整列したセル開口部を通じて径方向内向きに血塊の少なくとも一部分を付勢し得る。血塊の大部分がデバイスの内側ルーメンに完全に進入する必要がないが故に、印加される径方向圧力も非常に高いものである必要がないため、血塊圧縮は制御され最小限に抑えられ得る。血塊の圧縮を最小限に抑えることにより、血塊を追い出し後退させるときに克服すべき摩擦力が低減される。
【0069】
引き続き図13を参照すると、方法1300は、内側本体のセルのストラットと外側本体のセルのストラットとの間にある血塊の少なくとも一部分を圧縮して挟持するために、外側本体に対して内側本体を、あるいは内側本体に対して外側本体を並進させる工程1310を有し得る。並進は、直線運動、回転、又はそれら2つの組み合わせであり得る。並進運動を成立させることは、前述のように、内側シャフト及び外側シャフトを有するシステムを通じて達成され得る。代替的に、螺旋状に配設されたデバイスの近位部分の上で外側カテーテルを前進させることは、デバイスの螺旋状部分に接線力を加えて、他の部分に対して捻回及び/又は回転させることになり得る。それにかかわらず、相対並進は、内側本体のセルのストラットと外側本体のセルのストラットとの間で圧縮して血塊を挟持する役割を果たす。この工程は、血塊に対する堅固な把持を維持すること及び細片の損失を回避することを支援するために、外側カテーテル及び/又はガイドカテーテルを通じた吸引の支援を伴って行われ得る。処置中に必要である場合、工程1310のプロセスを反転させることは、血塊挟持構成から再び拡張された展開構成にデバイスを遷移させることになり得る。
【0070】
マイクロカテーテル又は他の外側カテーテルが血塊に対する挟持を増大させるように前進される場合、ユーザは、その挟持を抵抗として感じ、カテーテルの前進を停止させることができ、あるいは代替的に、拡張可能本体の近位端の全体にわたって一定の距離だけ前進させてもよい。拡張可能本体における比較的低いレベルの足場組みは、血塊の後退中に挟持が低下しないように、デバイスとカテーテルとの間の相対張力を維持することを可能にする。
【0071】
工程1320では、血塊挟持構成へと遷移するとき、また血塊挟持構成から遷移するときに、内側本体と外側本体との間の総合的な相対運動を制限するために、内側シャフト又は外側シャフトに、スロット内のピン又はカムとフォロワの構成などの特徴部が設けられ得る。並進を制限することにより、血塊は挟持されるが、剪断又は細片化されないことが確実となる。
【0072】
工程1330では、挟持された血塊を有する血塊回収デバイスは、内側本体のセルと外側本体のセルとの間の挟持を維持しながら、血管から引き抜かれ得る。吸引と共に、この係合は、屈曲部及び連続的により大きくなる血管直径を通じて引き抜かれる際に、血塊に対する堅固に挟持する把持力を維持する。
【0073】
工程1340では、血塊回収デバイス及び挟持された血塊が患者から除去され得る。必要に応じて、デバイスは生理食塩水ですすぎ洗いされ、マイクロカテーテルに再装填される前に穏やかに洗浄されてもよい。次いで、閉塞性血塊の更なる区域に、あるいは完全な再開通のための更なる通路が必要とされる場合に、再展開されるように血管系の中へと再導入され得る。
【0074】
本発明は、構成及び詳細において変化し得る、記載された例に必ずしも限定されない。「遠位」及び「近位」という用語は、前述の説明を通して使用され、処置している医師に対する位置及び方向を指すことを意味する。したがって、「遠位」又は「遠位に」は、医師に対して離れた位置又は医師から離れる方向を指す。同様に、「近位」又は「近位に」は、医師に対して近い位置又は医師に向かう方向を指す。更に、文脈が明らかに既定しない限り、「a」、「an」、及び「the」という単数形は、複数の指示対象を含む。
【0075】
本明細書で使用するとき、任意の数値又は数値の範囲について「約」又は「およそ」という用語は、構成要素の部分又は構成要素の集合が、本明細書において説明されるその意図された目的に沿って機能することを可能にする、好適な寸法の許容誤差を示すものである。より具体的には、「約)」又は「およそ」は、列挙された値の±20%の値の範囲を指し得、例えば「約90%」は、71%~99%の値の範囲を指し得る。
【0076】
例示的な実施形態について説明する際、明確にするために、専門用語が利用されている。各用語は、当業者によって理解されるその最も広い意味を有することが企図されており、本開示の範囲及び趣旨を逸脱することなく、類似の目的を実現するために同様に作用する全ての技術的な均等物を含むことが意図される。方法の1つ以上の工程への言及は、追加の方法工程又は明示的に識別されたそれらの工程間に介在する方法工程の存在を排除しないことも理解されたい。同様に、方法のいくつかの工程は、開示される技術の範囲から逸脱することなく、本明細書に述べられる順序とは異なる順序で実施することができる。明確さ及び簡潔さのために、全ての可能な組み合わせが列挙されているわけではなく、かかる変更例は、多くの場合、当業者には明らかであり、以下の特許請求の範囲内にあることが意図される。
【0077】
〔実施の態様〕
(1) 拘束された送達構成と拡張された展開構成とを有する、血管から血塊を除去するためのデバイスであって、
第1のシャフトと、第2のシャフトと、前記第1のシャフト及び前記第2のシャフトから遠位側に延在する拡張可能部材を形成するストラットのフレームワークと、を備え、前記拡張可能部材は、
内側管状ルーメン及びその内部を通って延在する長手方向軸線と、
前記第2のシャフトに接続された内側本体であって、前記展開構成において前記長手方向軸線の周りで拡張可能な複数のセルを備える、内側本体と、
前記第1のシャフトに接続された外側本体であって、前記展開構成において前記内側本体よりも大きく拡張可能な複数のセルを備える、外側本体と、を備え、
前記内側本体と前記外側本体は、前記展開構成と血塊挟持構成との間で前記長手方向軸線を中心として互いに対して並進可能であり、
前記内側本体の前記セル及び前記外側本体の前記セルは、前記血塊挟持構成にあるときに、前記セル内に位置する血塊を挟持するように構成されている、デバイス。
(2) 前記内側本体の前記セルは、サイズが前記外側本体の前記セルとほぼ等しい、実施態様1に記載のデバイス。
(3) 前記拡張された展開構成において、前記内側本体の前記セルは、前記外側本体の前記セルと整列されている、実施態様1に記載のデバイス。
(4) 前記内側本体及び前記外側本体の前記セルは、前記拡張された展開構成において前記血塊にはまり込むように構成されている、実施態様1に記載のデバイス。
(5) 前記血塊挟持構成は、前記血塊の少なくとも一部分が前記内側本体の前記セルと前記外側本体の前記セルとの間で圧縮されるまで、前記外側本体に対して前記内側本体を並進させることによって達成される、実施態様1に記載のデバイス。
【0078】
(6) 前記第1のシャフトは、細長本体と、内部ルーメンと、その遠位端に近接するスロットと、を備える、実施態様1に記載のデバイス。
(7) 前記第2のシャフトは、前記第1のシャフトの前記ルーメン内に配設され、前記第2のシャフトの外側表面から径方向に延在するインデックスピンを備え、前記インデックスピンは、前記第1のシャフトの前記スロットと係合するように構成されている、実施態様6に記載のデバイス。
(8) 前記スロットのこの軸線は、前記第1のシャフトに対する前記第2のシャフトの線形並進が、前記スロット内における前記インデックスピンの回転を引き起こすように、前記長手方向軸線と角度を形成する、実施態様7に記載のデバイス。
(9) 前記内側本体及び前記外側本体の領域は、前記血塊に外向きの径方向力を及ぼして前記血塊を前記内側管状ルーメンに向かって付勢するように構成されている、実施態様1に記載のデバイス。
(10) 身体血管内の閉塞を治療するためのデバイスであって、
長手方向軸線の周りに構成された管状内側ルーメンと、
拘束された送達構成と、拡張された展開構成と、内側血塊足場組み区分を形成する複数のストラットと、を備える内側本体と、
前記内側本体の周りに配設された外側本体であって、拘束された送達構成と、拡張された展開構成と、外側血塊足場組み区分を形成する複数のストラットと、を備える、外側本体と、
前記内側本体及び前記外側本体に対して近位側に延在する細長シャフトと、を備え、
前記内側本体と前記外側本体は、前記展開構成と血塊挟持構成との間で前記長手方向軸線を中心として互いに対して並進可能であり、
血塊の少なくとも一部分は、前記内側本体が前記血塊挟持構成にあるときに、前記内側本体の前記ストラットと前記外側本体の前記ストラットとの間で圧縮される、デバイス。
【0079】
(11) 前記内側本体及び前記外側本体の前記足場組み区分の前記ストラットは、セルのリングを形成する、実施態様10に記載のデバイス。
(12) 前記内側本体の前記セルは、サイズが前記外側本体の前記セルとほぼ等しい、実施態様11に記載のデバイス。
(13) 前記拡張された展開構成において、前記内側本体の前記セルは、前記外側本体の前記セルと整列されている、実施態様11に記載のデバイス。
(14) 前記内側本体及び前記外側本体の前記足場組み区分は、血塊に外向きの径方向力を及ぼして前記血塊を前記内側管状ルーメンに向かって径方向内向きに付勢するように構成されている、実施態様10に記載のデバイス。
(15) 前記シャフトは、前記外側本体に接続された第1のシャフトと、前記内側本体に接続された第2のシャフトと、を含む、実施態様10に記載のデバイス。
【0080】
(16) 前記第1のシャフト及び前記第2のシャフトは、前記外側本体に対して前記内側本体を並進させるように構成されている、実施態様15に記載のデバイス。
(17) 前記内側本体(110)及び前記外側本体(210)の前記足場組み区分の前記ストラットは、前記拡張された展開構成において血塊にはまり込むように構成されている、実施態様10に記載のデバイス。
(18) 血管を閉塞する血塊を有する患者を治療する方法であって、
前記血塊を横切って血塊回収デバイスを送達する工程であって、前記血塊回収デバイスは、
折り畳まれた送達構成と、拡張された展開構成と、細長シャフトと、前記細長シャフトの遠位側にある拡張可能要素と、を備え、前記拡張可能要素は、
複数のセルを備える内側本体と、
前記内側本体の周りに長手方向軸線に沿って延在する外側本体であって、複数のセルを備え、前記展開構成において前記内側本体よりも大きく拡張可能である、外側本体と、を備え、
前記内側本体と前記外側本体は、前記展開構成と血塊挟持構成との間で前記長手方向軸線を中心として互いに対して並進するように構成されている、送達する工程と、
前記内側本体の前記セル及び前記外側本体の前記セルが整列されるように、前記拡張された展開構成へと前記血塊回収デバイスを展開する工程と、
前記血塊の少なくとも一部分が前記内側本体及び前記外側本体の前記セルの開口部を通じて径方向内向きに付勢されるように、前記デバイスにより径方向力を及ぼす工程と、
前記内側本体のセルの前記ストラットと前記外側本体のセルの前記ストラットとの間の前記血塊の少なくとも一部分を圧縮して挟持するように、前記外側本体に対して前記内側本体を並進させる工程と、
前記血塊に対する把持力を維持するために、前記内側本体と前記外側本体との間の相対並進の少なくとも一部を維持しながら、前記血管から前記血塊回収デバイスを引く抜く工程と、
前記血塊回収デバイス及び挟持された前記血塊を前記患者から除去する工程と、を含む、方法。
(19) 前記細長シャフトは、前記外側本体に接続された第1のシャフトと、前記内側本体に接続された第2のシャフトとを含み、前記第1のシャフトと前記第2のシャフトは、互いに対して選択的に移動可能となるように構成されており、
前記第1のシャフトは、前記内側本体に対して前記外側本体に運動を選択的に付与し、前記第2のシャフトは、前記外側本体に対して前記内側本体に運動を選択的に付与する、実施態様18に記載の方法。
(20) 前記第1のシャフトは、前記第2のシャフトの並進の範囲を制限するように構成されている、実施態様19に記載の方法。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
【外国語明細書】