(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022052793
(43)【公開日】2022-04-05
(54)【発明の名称】桁式サポート装置
(51)【国際特許分類】
E04G 27/00 20060101AFI20220329BHJP
E04G 23/08 20060101ALI20220329BHJP
F16B 45/00 20060101ALI20220329BHJP
【FI】
E04G27/00
E04G23/08 Z
F16B45/00 Z
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020159227
(22)【出願日】2020-09-24
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2021-02-17
(71)【出願人】
【識別番号】513219762
【氏名又は名称】株式会社伸光リース
(74)【代理人】
【識別番号】100074251
【弁理士】
【氏名又は名称】原田 寛
(74)【代理人】
【識別番号】100066223
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 政美
(72)【発明者】
【氏名】小澤 英雄
【テーマコード(参考)】
2E176
3J038
【Fターム(参考)】
2E176AA01
2E176DD64
3J038AA01
3J038BA02
3J038BA14
(57)【要約】
【課題】小型の解体重機による使用が可能になり、しかも、走行時の振動を抑止して脱落を防止することができる桁式サポート装置を提供する。
【解決手段】H形鋼のウェブ片面を走行面とする桁フレーム10を設ける。該桁フレーム10の走行面の裏側に補助フレーム20を設ける。桁フレーム10の長手方向に沿った角パイプ材で補助フレーム20を構成する。補助フレーム20下面に配置する補強板30を設ける。補助フレーム20の長手両端部覆う端部補強板40を設ける。補強板30と端部補強板40とで、桁フレーム10と補助フレーム20とを固着する。桁フレーム10の外側に重合する掴み補強板50を形成する。掴み補強板50を桁フレーム10の長手方向に沿った複数個所に固定する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
H形鋼のウェブ片面を走行面とする桁フレームと、該桁フレームの走行面の裏側に、長手方向に沿って複数本固着される補助フレームと、を備え、走行面に解体重機を走行せしめる桁式サポート装置において、
前記補助フレームは、前記桁フレームの長手方向に沿った角パイプ材にて構成され、前記補助フレームの下面に沿って配設され、前記桁フレームと前記補助フレームとを固定する補強板と、前記補助フレームの長手両端部に固定する端部補強板とにより、前記補助フレームが前記桁フレームの走行面の裏側に一体化するように固着され、
前記桁フレームのフランジの外側に重合する掴み補強板を形成し、該掴み補強板を前記桁フレームの長手方向に沿った複数個所に固定したことを特徴とする桁式サポート装置。
【請求項2】
前記桁フレームを構成するH形鋼のフランジ長手端部に、上層階に係止せしめる係止部を形成すると共に、前記掴み補強板を該係止部の形状に合わせて形成して前記係止部の外側に固着し、前記係止部と前記掴み補強板との重合部の外側にストッパーを揺動自在に設けた請求項1記載の桁式サポート装置。
【請求項3】
前記ストッパーは、前記桁フレームのフランジ端部と前記掴み補強板とを貫通する固定ピンにて揺動自在に連結され、被係止部材の上面に載置する上面部と、被係止部材の側面側に係止する側面部とを備えた請求項2記載の桁式サポート装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パワーショベルなどの解体重機を使用してコンクリート造等の建物を解体する際に、梁の上に架け渡した桁式サポート装置で解体重機の重量を分散させながら建物を解体する際に使用する桁式サポート装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
当発明者は、先に、機解体重機の走行が可能な桁式サポート装置を使用することで、建物の周囲にクレーンを使用するスペースがない場合でも屋上から解体工事を行うことが可能になる桁式サポート装置を使用した解体方法及び桁式サポート装置を提案している(特許文献1)。
【0003】
この桁式サポート装置を使用した解体方法は、
図1に示すごとく、最下層に配置した解体重機Sにて、上層階のスラブQに解体重機S移動用の移動開口部Rを形成する。そして、この移動開口部Rの上面に桁式サポート装置100を下層階から斜めに架け渡す。次に、この桁式サポート装置100を渡って解体重機Sを移動開口部Rから上層階に移動し、上層階のスラブQに到達した解体重機Sは、梁P相互間に架け渡した桁式サポート装置100を介して自由に移動することができるようになるというものである。
【0004】
従来の桁式サポート装置100は、
図7に示すごとく、H形鋼のウェブ片面を走行面とする桁フレーム10と、該桁フレーム10の裏側に複数本固着されるH形鋼の補助フレーム200と、該補助フレーム200の長手両端部に固定するタイロッド棒30と、を備えたものである。
【0005】
この桁式サポート装置により、建物の梁Pの上相互間に桁式サポート装置100を架け渡し、この桁式サポート装置100上で解体重機Sを走行させて解体重機Sを屋上まで移動させる解体方法が実現した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来の桁式サポート装置では、大型の解体重機の走行を可能にするため、H形鋼を多用しているので、桁式サポート装置全体の重量が極めて重くなっていた。そのため、小型の解体重機では桁式サポート装置の搬送が困難になるので、解体工事で小型の解体重機を使用することはできなかった。
【0008】
一方、桁式サポート装置を軽量化すると、解体重機を支える強度が低下すると共に、解体重機の走行時に課題が生じることが判った。すなわち、軽量の桁式サポート装置を解体重機が走行すると、走行時の振動で軽量の桁式サポート装置が揺れることになる。そのため、この振動が大きくなると解体重機の走行が不安定になることが判った。しかも、走行時の振動が桁式サポート装置端部の梁に係止している部分に伝わると、桁式サポート装置が梁から脱落するおそれもあった。
【0009】
そこで、本発明は上述の課題を解消すべく創出されたもので、桁式サポート装置を軽量化することで、小型の解体重機による使用が可能になり、しかも、走行時の振動を抑止して解体重機の走行を安定させると共に、梁に係止している部分の脱落を防止することができる桁式サポート装置の提供を目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述の目的を達成すべく本発明における第1の手段は、H形鋼のウェブ片面を走行面とする桁フレーム10と、該桁フレーム10の走行面の裏側に、長手方向に沿って複数本固着される補助フレーム20と、を備え、走行面に解体重機Sを走行せしめる桁式サポート装置において、補助フレーム20は、桁フレーム10の長手方向に沿った角パイプ材にて構成され、該補助フレーム20の下面に沿って配設され、桁フレーム10と補助フレーム20とを固定する補強板30と、補助フレーム20の長手両端部に固定する端部補強板40とにより、補助フレーム20が桁フレーム10の走行面の裏側に一体化するように固着され、桁フレーム10のフランジの外側に重合する掴み補強板50を形成し、該掴み補強板50を桁フレーム10の長手方向に沿った複数個所に固定したものである。
【0011】
第2の手段は、前記桁フレーム10を構成するH形鋼のフランジ長手端部に、上層階に係止せしめる係止部11を形成すると共に、前記掴み補強板50を該係止部11の形状に合わせて形成して係止部11の外側に固着し、係止部11と掴み補強板50との重合部の外側にストッパー12を揺動自在に設けたものである。
【0012】
第3の手段の前記ストッパー12は、前記桁フレーム10のフランジ10A端部と前記掴み補強板50とを貫通する固定ピン13にて揺動自在に連結され、被係止部材の上面に載置する上面部12Aと、被係止部材の側面側に係止する側面部12Bとを備えたものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明の請求項1によると、補助フレーム20は、桁フレーム10の長手方向に沿った角パイプ材にて構成され、該補助フレーム20の下面に沿って配設され、桁フレーム10と補助フレーム20とを固定する補強板30と、補助フレーム20の長手両端部に固定する端部補強板40とにより、補助フレーム20が桁フレーム10の走行面の裏側に一体化するように固着されたことにより、桁式サポート装置の重量を軽量化して小型の解体重機による運搬を可能にした。
【0014】
しかも、桁フレーム10のフランジの外側に重合する掴み補強板50を形成し、該掴み補強板50を桁フレーム10の長手方向に沿った複数個所に固定した構成により、走行時の振動を抑止することができる。この結果、解体重機の走行を安定させることに成功した。
【0015】
請求項2のごとく、桁フレーム10を構成するH形鋼のフランジ長手端部に、上層階に係止せしめる係止部11を形成し、係止部11と掴み補強板50との重合部の外側にストッパー12を揺動自在に設けているので、解体重機Sの走行に伴い桁フレーム10が揺れたとしても、ストッパー12を梁P等に係止させることで、係止部11の脱落を防止することができる。
【0016】
しかも、係止部11と掴み補強板50との重合部の外側にストッパー12を揺動自在に設けているので、解体重機Sが桁フレーム10上を走行する際に、ストッパー12が解体重機Sの妨げにならずに済む。また、掴み補強板50が係止部11とストッパー12との連結強度を高める効果もある。
【0017】
請求項3のように、前記ストッパー12は、前記桁フレーム10のフランジ10A端部と前記掴み補強板50とを貫通する固定ピン13にて揺動自在に連結され、被係止部材の上面に載置する上面部12Aと、被係止部材の側面側に係止する側面部12Bとを備えているので、ストッパー12は梁P等の上面から側面に掛けて確実に係止される。
【0018】
しかも、このストッパー12は、固定ピン13を介して桁フレーム10のフランジ10A端部に揺動自在に連結されているので、桁フレーム10上を走行する解体重機Sの振動が桁フレーム10端部に伝わっても、固定ピン13で減衰するのでストッパー12の振動が少なくなる。この結果、桁フレーム10からの脱落を確実に防止し、解体重機Sの走行を安全に行うことができる。
【0019】
このように、本発明によると桁式サポート装置を軽量化することで小型の解体重機による使用が可能になり、しかも、解体重機の走行を安定させると共に、走行時の振動による脱落を防止することができるなどといった当初の目的を達成した。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明装置を使用して解体重機が移動する工程を示す概略側面図である。
【
図2】本発明装置の一実施例を示す分解斜視図である。
【
図3】本発明装置の桁フレームを示す横断面図である。
【
図4】本発明装置の桁フレームの係止部を示す要部側断面図である。
【
図5】本発明装置のストッパーを示す分解斜視図である。
【
図6】本発明装置のストッパーの使用状態を示す側面図である。
【
図7】従来の桁式サポート装置を示す分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施例を説明する。本発明装置の基本構成は、H形鋼のウェブ片面を走行面とする桁式サポート装置100である。そして、例えば上層階のスラブQに解体重機S移動用の移動開口部Rを形成し、上層階の梁Pに桁式サポート装置100を下層階から斜めに架け渡し、この桁式サポート装置100に解体重機Sを走行させ、最上階まで移動した後、桁式サポート装置100上の解体重機Sで解体工事を行う(
図1参照)。
【0022】
桁式サポート装置100の基本構成は、桁フレーム10、補助フレーム20、補強板30、端部補強板40、掴み補強板50を備えるものである(
図2参照)。
【0023】
桁フレーム10はH形鋼を使用するもので、H形鋼のウェブ片面を解体重機Sの走行面としており、梁Pの上に架け渡した一対の桁フレーム10上に解体重機Sを載置するものである。この走行面には、滑り止めとして多数の棒鋼14を溶接してあり、解体重機Sの移動を確実にしている(
図3参照)。更に、この桁フレーム10を補強するために、補助フレーム20、補強板30、端部補強板40、掴み補強板50にて、桁フレーム10の支持強度を高めている。
【0024】
補助フレーム20は、桁フレーム10の長手方向に沿った角パイプ材にて構成される(
図2参照)。図示の補助フレーム20は、桁フレーム10のフランジ10Aの下面側の幅と同じ幅の角パイプ材を使用している(
図3参照)。例えば、長さ6500mm、フランジ幅250mmのH型鋼を桁フレーム10に使用した場合、補助フレーム20の角材は、長さ5500mm、幅120mm×120mm、厚み9.5mmの角材を、桁フレーム10の走行面の裏側に2本、等間隔で配置しているが、補助フレーム20のサイズや数、配置位置等は任意に変更できる。
【0025】
補強板30は、補助フレーム20の下面に沿って配設される板状の部材である(
図3参照)。そして、この補強板30と補助フレーム20の長手両端部を覆う端部補強板40とで補助フレーム20を囲み、桁フレーム10の走行面の裏側に一体化するように固着している(
図4参照)例えば、長さ5500mm、幅120mm×120mm、厚み9.5mmの角材を使用した場合、この補強板30として、長さ5500mm、幅526mm、厚み9.5mmの鋼板を使用する。また、補強板30のサイズはこの例に限られず、任意に変更できるものである。
【0026】
掴み補強板50は、桁フレーム10のフランジの外側に重合する板状部材である(
図2参照)。そして、この掴み補強板50を桁フレーム10の長手方向に沿った複数個所に固定する。図示例では、長手両端部と中央部とに夫々溶接して固着することで、振れ止め効果を得ている(
図6参照)。尚、掴み補強板50の枚数や位置等は任意に変更することができる。
【0027】
桁フレーム10を上層階のスラブQに開口した移動開口部Rや梁Pに係止するために、桁フレーム10の一端部に係止部11を設けている(
図4参照)。この係止部11は、桁フレーム10を構成するH形鋼のフランジ10Aに形成した部位で、略L字形状に切り欠き形成している。図示例では、この係止部11に隣接する位置に傾斜板15を設けている。解体重機Sはこの傾斜板15から上層階に移動する。
【0028】
桁フレーム10の長手端部に固着する掴み補強板50は、この係止部11に固着する(
図5参照)。すなわち、このワーク移動具50は、予め係止部11の形状に合わせたL字形の切り欠きを形成したもので、係止部11の外側に固着したものである。
【0029】
更に、桁フレーム10のフランジ10A端部と掴み補強板50とにストッパー12を揺動自在に連結している(
図5参照)。ストッパー12は、梁P等に係止せしめる連結部材であり、梁P等の被係止部材の上面に載置する上面部12Aと、側面側に係止する側面部12Bとを備えている。そして、桁フレーム10のフランジ10A端部と掴み補強板50とを貫通する固定ピン13にて揺動自在に連結されている。
【0030】
したがって、梁P等に桁フレーム10を係止する場合、係止部11が梁Pの上面に係止すると共に、ストッパー12が梁Pの上面から側面にかけて係止する状態になる(
図6参照)。
【0031】
尚、桁フレーム10やストッパー12、あるいは補助フレーム20、補強板30、端部補強板40、掴み補強板50等の構成は図示例に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更する構成でなければ他の形状に変更することも可能である。
【符号の説明】
【0032】
P 梁
Q スラブ
R 移動開口部
S 解体重機
10 桁フレーム
10A フランジ
11 係止部
11A 上面部
11B 側面部
12 ストッパー
12A 上面部
12B 側面部
13 固定ピン
14 棒鋼
15 傾斜板
20 補助フレーム
30 補強板
40 端部補強板
50 掴み補強板
100 桁式サポート装置
200 補助フレーム
300 タイロッド棒
400 補強プレート