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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022052796
(43)【公開日】2022-04-05
(54)【発明の名称】液体吐出ヘッド
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/14 20060101AFI20220329BHJP
   B41J 2/16 20060101ALI20220329BHJP
【FI】
B41J2/14 305
B41J2/14 611
B41J2/16 503
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020159234
(22)【出願日】2020-09-24
(71)【出願人】
【識別番号】000005267
【氏名又は名称】ブラザー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001841
【氏名又は名称】特許業務法人梶・須原特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田中 大樹
【テーマコード(参考)】
2C057
【Fターム(参考)】
2C057AF21
2C057AG12
2C057AG38
2C057AG41
2C057AG42
2C057AG44
2C057AG84
2C057AG91
2C057AP25
2C057BA03
2C057BA14
(57)【要約】
【課題】保護基板に多少の貼りズレが生じても、圧電素子の変位にばらつきが生じにくくする。
【解決手段】インクジェットヘッド1は、複数の圧力室21とこれら圧力室21を覆う振動膜11a2とが形成されたプレート11aを有する流路ユニットと、複数の圧電素子12bを有する圧電アクチュエータ12と、圧電アクチュエータ12に接着された保護部材13とを含む。複数の圧電素子12bは、互いに繋がった共通の圧電層12b2を有しており、圧電層12b2の、隔壁11a1と厚み方向に重なる隔壁重なり部分15には、環状の凹部16と、圧電層残存部17とがある。そして、保護部材13の仕切り壁13eが、圧電アクチュエータ12の圧電層残存部17上を押さえている。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方向に沿って配列された複数の圧力室と、前記一方向と直交する厚み方向における一方側に配置され前記複数の圧力室を覆う振動膜とを有する圧力室形成基板と、
前記振動膜の前記厚み方向における前記一方側の面に配置され、前記複数の圧力室と前記厚み方向に重なる複数の圧電素子を有する圧電アクチュエータと、
前記圧電アクチュエータの前記厚み方向における前記一方側の面に接合され、前記複数の圧電素子を覆う保護基板とを備えており、
前記複数の圧電素子は、互いに繋がって前記一方向に延在する共通の圧電層を有しており、
前記圧電層の、前記圧力室形成基板の前記圧力室間の隔壁と前記厚み方向に重なる隔壁重なり部分には、前記厚み方向において前記圧電層の少なくとも一部が除去されて前記一方側に開口する環状の凹部と、前記凹部に囲まれた島状の圧電層残存部とがあり、
前記保護基板の、前記圧電層残存部と前記厚み方向に重なる残存重なり部分が、前記圧電アクチュエータの前記圧電層残存部上を押さえていることを特徴とする液体吐出ヘッド。
【請求項2】
前記保護基板の前記残存重なり部分と、前記圧電アクチュエータの前記圧電層残存部上とが接着剤を介して接合されていることを特徴とする請求項1に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項3】
前記一方向及び前記厚み方向と直交する直交方向において、前記残存重なり部分が前記圧電層残存部よりも長く、前記残存重なり部分の前記圧電層残存部と前記厚み方向に重なる部分よりも外側の外側部分が、前記圧電アクチュエータの、前記圧電層の前記凹部よりも外側の外側部分上と接着剤を介して接合されていることを特徴とする請求項2に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項4】
前記圧電層残存部上には補助電極が形成されていることを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項5】
前記保護基板は、前記圧電アクチュエータの、前記圧力室と前記厚み方向に重なる部分と離隔されていることを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項6】
前記残存重なり部分の前記圧電アクチュエータとの接合面には、接着剤を逃がすための溝が形成されていることを特徴とする請求項2に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項7】
前記溝は、前記一方向に沿って延在しており、
前記接合面には、前記一方向及び前記厚み方向と直交する直交方向に沿って、複数の前記溝が並んで形成されていることを特徴とする請求項6に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項8】
前記保護基板の前記残存重なり部分は、前記保護基板の前記圧力室と前記厚み方向に重なる部分よりも、前記厚み方向の他方側に突出していることを特徴とする請求項1~7のいずれか1項に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項9】
前記残存重なり部分は、前記一方向において、前記圧電層残存部の幅よりも大きな幅を有していることを特徴とする請求項8に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項10】
前記圧電層の前記一方側の面において、前記圧電層残存部の外周形状は前記凹部の外周形状に相似であることを特徴とする請求項1~9のいずれか1項に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項11】
前記凹部の外周形状が、前記一方向及び前記厚み方向と直交する直交方向に平行な二辺を有する六角形であることを特徴とする請求項10に記載の液体吐出ヘッド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ノズルから液体を吐出する液体吐出ヘッドに関する。
【背景技術】
【0002】
ノズルから液体を吐出する液体吐出ヘッドとして、特許文献1には、ノズルからインクを噴射するインクジェット式記録ヘッドが記載されている。特許文献1に記載の記録ヘッドでは、複数の圧力発生室が一方向に並んで形成された流路形成基板の上面に、複数の圧力発生室を覆う振動板が配置され、振動板の上面の、各圧力発生室と上下方向に重なる部分に、圧力発生室内の液体に吐出エネルギーを付与するための圧電素子が配置されている。各圧電素子は、圧電体層と、圧電体層を厚み方向に挟むように配置された第1電極及び第2電極とを有する。また、振動板の上面には、複数の圧電素子を覆う保護基板が配置され、複数の圧電素子は、保護基板によって形成された一方向に延在する圧電素子保持部に収容されている。保護基板の、流路形成基板の圧力発生室間の各隔壁と上下方向に重なる部分には、隔壁上の振動板を押さえるための押さえ部材が形成されており、これら押さえ部材が接着剤を介して振動板上に接合されている。このように押さえ部材で隔壁上の振動板を押さえることで、圧力室壁の剛性が増し、隣接する圧電素子が駆動されたときの振動伝播(クロストーク)を抑制することが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-130913号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に記載の記録ヘッドにおいては、各圧電素子の圧電体層が互いに繋がって一方向に連続している。そして、圧電体層の各隔壁と上下方向に重なる部分が除去されており、当該除去部分に保護基板に一体的に形成された各押さえ部材を介して、保護基板を振動板上に接合している。このように押さえ部材が保護基板に一体的に形成されていると、例えば、一方向に沿った貼りズレが保護基板に生じると、一方向において隔壁を挟んで配置された2つの圧力発生室に対応する2つの圧電素子のうちの一方に押さえ部材が近づく。つまり、振動板の隔壁と対向する領域において、押さえ部材によって押さえられる位置に片寄りが生じ、圧電素子の変位にばらつきが生じる問題がある。
【0005】
そこで、本発明の目的は、保護基板に多少の貼りズレが生じても、圧電素子の変位にばらつきが生じにくくすることが可能な液体吐出ヘッドを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の液体吐出ヘッドは、一方向に沿って配列された複数の圧力室と、前記一方向と直交する厚み方向における一方側に配置され前記複数の圧力室を覆う振動膜とを有する圧力室形成基板と、前記振動膜の前記厚み方向における前記一方側の面に配置され、前記複数の圧力室と前記厚み方向に重なる複数の圧電素子を有する圧電アクチュエータと、前記圧電アクチュエータの前記厚み方向における前記一方側の面に接合され、前記複数の圧電素子を覆う保護基板とを備えている。そして、前記複数の圧電素子は、互いに繋がって前記一方向に延在する共通の圧電層を有しており、前記圧電層の、前記圧力室形成基板の前記圧力室間の隔壁と前記厚み方向に重なる隔壁重なり部分には、前記厚み方向において前記圧電層の少なくとも一部が除去されて前記一方側に開口する環状の凹部と、前記凹部に囲まれた島状の圧電層残存部とがあり、前記保護基板の、前記圧電層残存部と前記厚み方向に重なる残存重なり部分が、前記圧電アクチュエータの前記圧電層残存部上を押さえている。
【発明の効果】
【0007】
本発明の液体吐出ヘッドによると、保護基板が圧電アクチュエータの圧電層残存部上を押さえているため、保護基板に多少の貼りズレが生じても、圧電層残存部を介して押さえる振動膜の位置がズレにくくなる。このため、圧電素子の変位にばらつきが生じにくくなる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の一実施形態に係るインクジェットヘッドを含むプリンタの概略構成図である。
図2図1のインクジェットヘッドの平面図である。
図3図2のIII-III線断面図である。
図4】圧電アクチュエータの要部平面図である。
図5図4に示すV-V線位置におけるインクジェットヘッドの要部断面図である。
図6図4に示すVI-VI線位置におけるインクジェットヘッドの要部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の好適な実施形態について説明する。
【0010】
<プリンタ100の全体構成>
図1に示すように、本実施形態に係るプリンタ100は、4つのインクジェットヘッド1(本発明の「液体吐出ヘッド」)を含むヘッドユニット1x、プラテン3及び搬送機構4を含んでいる。
【0011】
ヘッドユニット1xは、水平な紙幅方向(本発明の「一方向」)に長尺であり、位置が固定された状態で複数のノズル22(図2図4参照)から用紙Pに対してインクを吐出する、いわゆるラインヘッドである。4つのインクジェットヘッド1は、それぞれ紙幅方向に長尺である。また、4つのインクジェットヘッド1のうち、2つのインクジェットヘッド1が紙幅方向に並んでいる。また、これら2つのインクジェットヘッド1から、水平で且つ紙幅方向と直交する搬送方向(本発明の「直交方向」)にずれた位置に、4つのインクジェットヘッド1のうち残り2つのインクジェットヘッド1が紙幅方向に並んで配置されている。これら4つのインクジェットヘッド1は、紙幅方向に沿って千鳥状に配置されている。
【0012】
なお、以下では、図1に示すように、紙幅方向の右側及び左側を定義して説明を行う。また、以下では、図1に示すように、搬送方向の前側及び後側を定義して説明を行う。
【0013】
プラテン3は、ヘッドユニット1xの下方に配置されて、4つのインクジェットヘッド1の複数のノズル22と対向している。プラテン3の上面に、用紙Pが載置される。
【0014】
搬送機構4は、搬送方向にプラテン3を挟んで配置された2つのローラ対4a,4bを有する。ローラ対4a,4bは、用紙Pを挟持した状態で回転して、用紙Pを搬送方向に搬送する。
【0015】
<インクジェットヘッド1の構成>
次に、インクジェットヘッド1の構成について説明する。図2図6に示すように、インクジェットヘッド1は、流路ユニット11、圧電アクチュエータ12、保護部材13、及び、配線基板18を有する。
【0016】
流路ユニット11は、図3に示すように、圧力室形成プレート11aと、ノズル形成プレート11bとを有し、これらプレート11a,11bが鉛直方向(本発明の「厚み方向」)に積層され、互いに接着剤によって接着されて構成されている。本実施形態における2枚のプレート11a,11bは、シリコンからなる板材であるが、例えば樹脂や、ステンレス鋼などの金属で構成されていてもよい。また、これらのプレート11a,11bには、複数の個別流路20が形成されている。なお、本実施形態では、鉛直方向の上側が本発明の「厚み方向の一方側」に相当する。
【0017】
圧力室形成プレート11aには、図2及び図3に示すように、複数の圧力室21と、複数の幅狭流路24と、複数の幅広流路25と、連通部26とが形成されている。ノズル形成プレート11bには、複数のノズル22が形成されている。複数の個別流路20は、紙幅方向に並んで配置されている。各個別流路20は、圧力室21と、ノズル22と、幅狭流路24と、幅広流路25とを含む。
【0018】
圧力室21は、図2に示すように、鉛直方向に投影した形状が、搬送方向に長尺な略矩形である。また、複数の圧力室21は、紙幅方向に配列されて圧力室列を構成している。各圧力室21に対し、搬送方向における一方側の端にノズル22が接続し、搬送方向における他方側の端に幅狭流路24が接続している。ここで、搬送方向における一方側とは搬送方向における後側のことであり、搬送方向における他方側とは搬送方向における前側のことである。
【0019】
幅狭流路24は、図2に示すように、圧力室21よりも幅が狭く(紙幅方向の長さが短く)、絞りとして機能する。幅狭流路24の紙幅方向の中心は、対応する圧力室21の紙幅方向の中心に対して紙幅方向の左側に位置している。
【0020】
幅狭流路24の搬送方向における他方側の端には、幅広流路25が接続している。幅広流路25の幅(紙幅方向の長さ)は、圧力室21の幅とほぼ同じである。幅広流路25の紙幅方向の中心は、対応する圧力室21の紙幅方向の中心と一致している。
【0021】
また、図3に示すように、圧力室21、幅狭流路24、及び、幅広流路25は、圧力室形成プレート11a(本発明の「圧力室形成基板」)の一方の面(ここでは下面)からエッチングにより形成され、圧力室形成プレート11aの下面に開口した凹部によって構成されている。
【0022】
また、図5に示すように、圧力室形成プレート11aの、紙幅方向において隣接する2つの圧力室21間には、それぞれ、各圧力室21を仕切る隔壁11a1が形成されている。
【0023】
連通部26は、図2に示すように、紙幅方向に長尺に延在している。また、連通部26は、図3に示すように、圧力室形成プレート11aを鉛直方向に貫通しており、すべての幅広流路25の搬送方向の他方側の端と接続されている。なお、連通部26は、後述の保護部材13の凹部13bと連通して、各圧力室21に共通な共通流路32を構成する。
【0024】
また、圧力室形成プレート11aは、図3及び図5に示すように、振動板12aを有している。振動板12aは、圧力室形成プレート11aの上端部によって構成されており、全ての圧力室21を覆っている。振動膜11a2の厚みは、例えば10μm程度である。
【0025】
ノズル22は、ノズル形成プレート11bに形成された貫通孔で構成されている。また、複数のノズル22は、紙幅方向に配列されてノズル列を構成している。各ノズル22は、紙幅方向において圧力室21の中央に位置し、圧力室21と鉛直方向に重なっている。
【0026】
圧電アクチュエータ12は、図3に示すように、下から順に、複数の圧電素子12b及び補助電極層12cなどから構成されている。複数の圧電素子12bは、振動膜11a2の上面(本発明の「厚み方向の一方側の面」)に形成されている。圧電素子12bは、振動膜11a2の各圧力室21に対応する部分、すなわち変位部の上面に配置されている。つまり、各圧電素子12bは、鉛直方向に沿って圧力室21と重なっている。本実施形態における圧電素子12bは、下から順に、個別電極12b1、圧電層12b2及び共通電極12b3が、成膜技術により積層されて構成されている。本実施形態における各電極12b1,12b3は、約0.2μmの厚みを有している。圧電層12b2は、約1.0μmの厚みを有している。
【0027】
個別電極12b1は、図4に示すように、圧力室21毎に独立して設けられる。一方、共通電極12b3は、複数の圧力室21に亘って連続して設けられている。より詳細には、個別電極12b1の幅は、図4及び図5に示すように、紙幅方向において、圧力室21の幅よりも狭く形成されている。また、図4に示すように、個別電極12b1は、搬送方向において、前側の端部が圧力室21の端部を超えて幅狭流路24と重なる位置まで延在され、後側の端部が接続電極部40(後述)まで延在されている。
【0028】
共通電極12b3は、紙幅方向に沿って長尺に延在した帯状を有しており、その紙幅方向の両端部が、圧力室列を構成する最も外側の圧力室21よりも外側に配置されている。また、共通電極12b3は、図4に示すように、搬送方向において、前側の端部が個別電極12b1の端部を超えて外側まで延在され、後側の端部が圧力室21の端部を超えて当該圧力室21と接続電極部40との間の領域まで延在されている。本実施形態における共通電極12b3は、図5に示すように、後述の凹部16内及び圧電層残存部17上にも形成されている。このように複数の圧電素子12bに含まれる共通電極12b3は互いに繋がった共通の電極である。
【0029】
圧電層12b2は、図3に示すように、圧力室21の搬送方向の両端部を超えて外側まで延在されると共に、複数の圧力室21に跨るようにして紙幅方向に沿って延在して形成されている。そして、図4図6に示すように、圧電層12b2の隔壁11a1と鉛直方向に重なる隔壁重なり部分15のそれぞれには、圧電層12b2が部分的に除去されることで構成された環状の凹部16が形成されている。また、各隔壁重なり部分15には、凹部16に囲まれた島状の圧電層残存部17が形成されている。これら複数の凹部16及び圧電層残存部17は、紙幅方向に沿って、圧力室21の形成ピッチと同じピッチで形成されている。換言すると、隣接する2つの凹部16間及び2つの圧電層残存部17間に、1つの圧力室21に対応する圧電素子12bが圧力室21の形成ピッチと同じピッチで形成されている。また、図5に示すように、圧力室21上の圧電層12b2の紙幅方向の幅は、圧力室21の紙幅方向の幅よりも狭く、且つ、個別電極12b1の紙幅方向の幅よりも広く形成されている。
【0030】
図4に示すように、凹部16の搬送方向の長さは、圧力室21の搬送方向の長さよりも短く形成されている。また、凹部16は、搬送方向の両端部が圧力室21の搬送方向の両端部より内側に位置するように配置されている。また、凹部16は、平面視において、搬送方向に沿って長尺な細長六角形状に形成されている。より詳細には、凹部16の外周形状が、搬送方向に平行な二辺を有する六角形である。なお、搬送方向において、凹部16よりも外側にある圧電層12b2は複数の圧力室21に亘って連続して形成されている。換言すると、複数の圧電素子12bに含まれる圧電層12b2は、互いに繋がって紙幅方向に沿って延在する共通の圧電層12b2である。
【0031】
圧電層残存部17も、図4に示すように、平面視において、搬送方向に沿って長尺な細長六角形状に形成されている。より詳細には、圧電層残存部17は、圧電層12b2の上面(本発明の「厚み方向の一方側の面」)において、その外周形状が凹部16の外周形状に相似となっている。そして、平面視において、圧電層残存部17の中心と、凹部16の中心とが一致している。このように圧電層残存部17は、凹部16の外周形状に沿って形成されている。また、図5に示すように、圧電層残存部17の厚みは、圧電層12b2の厚みに等しい。つまり、圧電層残存部17の上面17aは、圧電層12b2の圧電層残存部17以外の上面と同じ高さレベルに配置されている。
【0032】
このような圧電素子12bは、図5に示すように、圧力室21に対応する領域において、紙幅方向における寸法が、共通電極12b3の幅、圧力室21の幅、圧電層12b2の幅、個別電極12b1の幅の順に小さくなっている。そして、個別電極12b1と共通電極12b3との間に挟まれた圧電層12b2の領域が、両電極への電圧の印加により圧電歪みが生じる能動部となる。
【0033】
補助電極層(本発明の「補助電極」)12cは、図4に示すように、複数の圧電素子12bの搬送方向の両端部上において、紙幅方向に沿って延在する2つの帯状補助電極層12c1と、各圧電層残存部17上に形成された複数の島状補助電極層12c2とを有している。本実施形態における帯状補助電極層12c1及び島状補助電極層12c2も、各電極12b1,12b3とほぼ同様な0.2μmの厚みを有しているが、特に限定するものではない。この補助電極層12cは、金(Au)からなり、図示しない密着層を介して共通電極12b3の上に積層される。2つの帯状補助電極層12c1は、搬送方向において、複数の凹部16を挟んだ両側に配置されている。これにより、各圧電素子12bの変形を抑制しすぎることなく、圧力室21の端部に対応する領域における圧電素子12bの剛性を高めることが可能となる。さらには、圧電素子12b毎の共通電極12b3を繋ぐ経路における電気抵抗を小さくすることも可能となる。なお、補助電極層12cは、紙幅方向の外側において、接続電極部40側の端子領域(後述の複数の個別接続電極層43が形成された領域:図示せず)まで延在している。そして、当該端子領域において、配線基板18の共通配線と電気的に接続される。
【0034】
接続電極部40は、図3に示すように、圧力室21よりも搬送方向の後側の領域における圧電層12b2上に形成されている。接続電極部40は、圧電層12b2の上面から個別電極12b1に至るスルーホール41が形成されている。このスルーホール41に対応する領域には、接続用電極42がスルーホール41よりもわずかに大きく形成されている。接続用電極42は、スルーホール42に対応してパターニングされ、スルーホール41を通じて個別電極12b1に導通している。また、接続用電極42上には、個別接続電極層43が個別電極12b1(スルーホール41)に対応してパターニングされており、接続用電極42を介して個別電極12b1と導通されている。なお、個別電極12b1は、スルーホール41と相対する範囲を除いて圧電層12b2に覆われている。これにより、個別電極12b1からのリーク電流が極力抑えられ、また、当該リーク電流を抑制するための特別な措置(例えば、酸化アルミニウム等の保護膜による保護)を施す手間を省くことができる。
【0035】
保護部材(本発明の「保護基板」)13は、図3に示すように、圧電アクチュエータ12の上面及び流路ユニット11の上面に接着されている。本実施形態における保護部材13は、シリコンからなるが、例えば樹脂や、ステンレス鋼などの金属から構成されていてもよい。保護部材13は、プレート11a及び圧電アクチュエータ12と、鉛直方向に投影した外形が同じであり、プレート11aの外形及び圧電アクチュエータ12の外形と鉛直方向に完全に重なっている。保護部材13には、下面からのエッチングにより、複数の凹部13a,13b,13h、及び、複数の貫通孔13c,13dが形成されている。
【0036】
複数の凹部13aは、図5に示すように、複数の圧電素子12bに対して個別に設けられている。そして、複数の凹部13aは、紙幅方向に並んでいる。各凹部13aによって形成される空間である収容空間13a1には、圧電素子12bが個別に収容されている。保護部材13に凹部13aが形成されていることで、保護部材13は、圧電アクチュエータ12の圧力室21と鉛直方向に重なる部分と離隔されている。本実施形態においては、保護基板13と、圧電アクチュエータ12の圧力室21と鉛直方向に重なる部分との離隔距離が、約10μmとなっている。これにより、圧電素子12bが駆動されたときに、圧電素子12bに対して保護基板13の接触が影響しにくくなる。このため、圧電素子12bの変位を妨げるのを抑制することが可能となる。
【0037】
また、保護部材13の隣接する凹部13a間の部分は、図5に示すように、収容空間13a1同士を仕切る仕切り壁13eとなっている。各仕切り壁13e(本発明の「残存重なり部分」)は、圧電層残存部17と鉛直方向に重なって配置されている。また、仕切り壁13eは、凹部13aの底面(保護部材13の圧力室21と鉛直方向に重なる部分)よりも下方側(本発明の「厚み方向の他方側」)に突出して一体的に形成されている。また、仕切り壁13eは、図6に示すように、搬送方向に沿って長尺に延在しており、その長さは凹部16の搬送方向の長さよりも長く、その下面13e1が接着剤14を介して圧電アクチュエータ12と接合されている。より詳細には、下面13e1(本発明の「接合面」)の圧電層残存部17と鉛直方向に重なる中央部分13e2が、圧電アクチュエータ12の圧電層残存部17上と接着剤14で接合されている。また、搬送方向において、下面13e1の当該中央部分13e2よりも外側の外側部分13e3と、圧電アクチュエータ12の、圧電層12b2の凹部16よりも外側の外側部分上とが接着剤14で接合されている。このようにして、圧電アクチュエータ12の圧電層残存部17上が保護部材13の仕切り壁13eによって押さえられる。
【0038】
仕切り壁13eの下面13e1には、図5及び図6に示すように、接着剤14を逃がすための複数の溝13fが形成されている。これら溝13fは、紙幅方向に沿って延在しており、搬送方向に沿って配列されている。また、仕切り壁13eの下面13e1には、2つの切り欠き13gが形成されている。これら切り欠き13gは、鉛直方向に沿って凹部16と重なる位置において、紙幅方向に延在して形成されている。また、切り欠き13gは、溝13fよりも鉛直方向の深さが深くなっている。このような切り欠き13gが形成されていることで、下面13e1を圧電アクチュエータ12に接合するために下面13e1に塗布する接着剤14の塗布量が少なくなる。仮に、下面13e1に切り欠き13gが形成されていない場合、下面13e1の凹部16と鉛直方向に重なる部分にも接着剤14が塗布されることとなる。この状態で保護部材13を圧電アクチュエータ12側に押圧して接合すると、余剰接着剤が凹部16内に流れ出し、場合によっては圧電アクチュエータ12の圧力室21と重なる部分(圧電素子12b)に付着する。しかしながら、本実施形態においては下面13e1に切り欠き13gが形成されているため、下面13e1に塗布する接着剤14の塗布量が少なくなり、余剰接着剤量も抑制することが可能となる。なお、保護部材13に接着剤14を塗布するパターニング処理の方が、圧電アクチュエータ12及び流路ユニット11に接着剤を塗布するパターニング処理よりも簡単である。このため、本実施形態においては、保護部材13に接着剤を塗布し、保護部材13を圧電アクチュエータ12及び流路ユニット11に接着している。
【0039】
また、図5に示すように、仕切り壁13eの下面13e1は、紙幅方向において、圧電層残存部17の上面17aの幅W1よりも大きな幅W2を有している。このように幅W2が幅W1よりも大きい場合は、保護部材13が圧電アクチュエータ12に対して貼りズレが紙幅方向に生じても、幅W2が幅W1よりも小さいときよりも、その幅W1,W2の大きさの差程度、貼りズレの許容範囲が広がり、圧電アクチュエータ12の圧電層残存部17上を押さえやすくなる。また、幅W2が幅W1よりも大きい方が、仕切り壁13eによって、圧電アクチュエータ12の圧電層残存部17上を均等に押さえることが可能となる。
【0040】
また、図2及び図3に示すように、保護部材13の複数の凹部13aを画定する壁部13a2~13a4,13b1,13eはいずれも圧電アクチュエータ12に接合されている。壁部13a2は、搬送方向中央よりもやや後側に配置され、壁部13b1は、搬送方向中央よりもやや前側に配置されている。これら壁部13a2,13b1は、壁部13a3,13a4を繋ぐように紙幅方向に沿って延在している。また、複数の壁部13eは、紙幅方向に沿って複数配置され、壁部13a2,13b1を繋ぐように搬送方向に沿って延在している。残りの壁部13a3,13a4は、紙幅方向の両側に配置され、搬送方向に沿って延在している。このような複数の凹部13aの外周を囲う壁部13a2~13a4,13b1によって、圧電アクチュエータ12の複数の圧電素子12bが囲まれる。このような壁構造を有する保護部材13により、圧電アクチュエータ12の複数の圧電素子12bが外部と遮断された密閉空間(複数の収容空間13a1)内に配置され、空気中の水分による酸化が抑制される。
【0041】
保護部材13の凹部13hは、図2及び図3に示すように、紙幅方向に沿って長尺に延在している。保護部材13の凹部13hの一部は、壁部13a2~13a5によって画定されている。これら壁部13a2~13a5のうちの壁部13a5は、搬送方向の後端に配置され、圧電アクチュエータ12に接合されており、これ以外は上述と同様である。そして、貫通孔13cが、保護部材13の凹部13hの底部となる部分の中央に形成されている。また、貫通孔13cは、複数の個別接続電極層43にわたって紙幅方向に延び、複数の個別接続電極層43と鉛直方向に重なっている。
【0042】
保護部材13は、図2及び図3に示すように、流路ユニット11の搬送方向の前側部分を覆って接合されている。保護部材13の凹部13bは、紙幅方向に沿って長尺に延在している。また、凹部13bは、流路ユニット11の連通部26と対向する位置に配置され、この凹部13bと連通部26とで共通流路32が構成されている。保護部材13の凹部13bを画定する壁部13b1~13b4であって、搬送方向の中央に配置された上述の壁部13b1が圧電アクチュエータ12に接合され、搬送方向の前側に配置された壁部13b2が流路ユニット11に接合されている。残りの紙幅方向の両側に配置された壁部13b3,13b4が流路ユニット11に接合されている。そして、図2に示すように、保護部材13の凹部13bの底部となる部分の中央に、貫通孔13dが形成されている。共通流路32は、貫通孔13dを介して図示しないサブタンクに連通している。サブタンクは、インクを貯留するメインタンクに連通し、メインタンクから供給されたインクを貯留する。サブタンク内のインクは、貫通孔13dから共通流路32に流入する。共通流路32に流入したインクは、各個別流路20に供給される。
【0043】
配線基板18は、図2及び図3に示すように、COF(Chip On Film)等からなり、圧電アクチュエータ12の上面の搬送方向における後端部に、その下端部が接合されている。配線基板18の下端部は、圧電アクチュエータ12の上面において紙幅方向に延び(図4参照)、複数の個別接続電極層43のそれぞれと電気的に接続される複数の個別配線18a(図3参照)と、共通配線(図示略)とを有する。個別配線18aは、個別流路20毎に設けられている。共通配線は、補助電極層12cを介して共通電極12b3と電気的に接続されている。共通電極12b3は、共通配線を介して図示しない電源に接続され、グランド電位に保持されている。
【0044】
配線基板18は、図3に示すように、圧電アクチュエータ12の上面から、貫通孔13cを通って上方に延び、上端部が図示しない制御基板に接続されている。また、配線基板18には、ドライバIC19が実装されている。
【0045】
ドライバIC19は、個別配線18aを介して個別電極12b1と電気的に接続されている。ドライバIC19は、図示しない制御基板からの制御信号に基づいて駆動信号を生成し、当該駆動信号を個別電極12b1に付与することで、個別電極12b1の電位を所定の駆動電位とグランド電位との間で切り換える。これにより、振動膜11a2及び圧電層12b2の圧力室21と鉛直方向に重なる部分が変形して、圧力室21の容積が変化する。これにより、圧力室21内のインクに圧力が付与され、ノズル22からインクが吐出される。
【0046】
以上に述べたように、本実施形態のインクジェットヘッド1によると、圧電層12b2の隔壁11a1と鉛直方向に重なる隔壁重なり部分15のそれぞれに、環状の凹部16が形成されていることで、隣接する圧電素子12b間における圧電層12b2の繋がりを分断することが可能となる。このため、各圧電素子12bが駆動変形する際の隔壁重なり部分15による規制が小さくなり、各圧電素子12bの駆動変形量を大きくすることが可能となる。
【0047】
これに加えて、圧電アクチュエータ12の、環状の凹部16に囲まれた圧電層残存部17上が、保護部材13の仕切り壁13eによって押さえられている。つまり、圧力室21間の隔壁11a1上が、圧電層残存部17を介して仕切り壁13eによって押さえられる。これにより、各圧力室21の周壁の剛性が増し、一の圧電素子12bが駆動されときに一の圧電素子12bに隣接する他の圧電素子12bに対応する圧力室21への振動伝播によるクロストークを抑制することが可能となる。また、圧電アクチュエータ12の仕切り壁13eと鉛直方向に重なる部分は、圧力室21間の隔壁11a1と仕切り壁13eとに挟まれ、変形しにくい。したがって、仕切り壁13eが、圧電アクチュエータ12の、一の圧力室21と鉛直方向に重なる部分の変形が、一の圧力室21と隣接する他の圧力室21と鉛直方向に重なる部分に伝わりにくくなる。すなわち、圧電アクチュエータ12の、一の個別流路20を構成する圧力室21と鉛直方向に重なる部分の変形が、他の個別流路20を構成する圧力室21と鉛直方向に重なる部分に伝わる、クロストークをより一層抑制することができる。
【0048】
そして、本実施形態のインクジェットヘッド1によると、保護部材13の仕切り壁13eが、圧電アクチュエータ12の圧電層残存部17上を押さえているため、保護部材13が圧電アクチュエータ12に対して多少の貼りズレが生じても、圧電層残存部17を介して押さえる振動膜11a2の位置がズレにくくなる。より詳細には、圧電層残存部17が形成されていない状態で仕切り壁13eが振動膜11a2を押さえる場合、例えば、保護部材13が圧電アクチュエータ12に対して紙幅方向の一方に僅かにでも貼りズレが生じると、振動膜11a2を押さえる位置が紙幅方向の一方にダイレクトにずれる。このため、圧電素子12bが駆動されたときに、振動膜11a2の圧力室21と対向する部分において、紙幅方向の一方側と他方側とで変位に片寄りが生じやすくなる。しかしながら、本実施形態においては、圧電層12b2の、隔壁11a1と鉛直方向に重なる隔壁重なり部分15に圧電層残存部17が形成されている。この圧電層残存部17と振動膜11a2との位置は、保護部材13と圧電アクチュエータ12とに貼りズレが生じても、ズレない。このとき、仕切り壁13eと圧電アクチュエータ12の圧電層残存部17との間に、例えば紙幅方向に多少の貼りズレが生じても、仕切り壁13eは圧電アクチュエータ12の圧電層残存部17上を押さえているため、当該圧電層残存部17を介して押さえる振動膜11a2の位置もズレにくくなる。したがって、振動膜11a2の圧力室21と対向する部分において、紙幅方向の一方側と他方側とで変位に片寄りが生じにくくなって、圧電素子12bの変位にばらつきが生じにくくなる。
【0049】
なお、圧電層残存部17に相当する部位を、圧電層12b2の一部(凹部16をなす部分)を除去することで形成せずに、凹部内に形成する際は、当該凹部を圧電層12b2に形成した後、別工程で形成する必要があり、製造工程が複雑化する。また、保護部材13の仕切り壁13eに相当する部位を凹部16内又は圧電層残存部17上に形成する際も、別工程となって、製造工程が複雑化する。
【0050】
仕切り壁13eが、接着剤14を介して圧電アクチュエータ12の圧電層残存部17上と接合されている。これにより、仕切り壁13eと圧電アクチュエータ12とが離れたり、横ズレしにくくなる。このため、振動膜11a2を確実に押さえることができる。
【0051】
また、仕切り壁13eは、下面13e1の外側部分13e3と、圧電アクチュエータ12の、圧電層12b2の凹部16よりも搬送方向に外側の外側部分上とが接着剤14で接合されている。これにより、仕切り壁13eの下面13e1の外側部分13e3を、圧電アクチュエータ12に接合することが可能となり、振動膜11a2を効果的に押さえることができる。
【0052】
本実施形態においては、補助電極層12cが、2つの帯状補助電極層12c1と、複数の島状補助電極層12c2とを有している。仮に、2つの帯状補助電極層12c1が形成された状態で、島状補助電極層12c2が形成されておらず、且つ仕切り壁13eの下面13e1の外側部分13e3が、圧電アクチュエータ12の、圧電層12b2の凹部16よりも搬送方向に外側の外側部分上を押さえる場合、下面13e1の中央部分13e2と圧電アクチュエータ12の圧電層残存部17上との間に隙間が生じやすくなる。しかしながら、圧電層残存部17上には、島状補助電極層12c2が形成されているため、圧電アクチュエータ12の圧電層残存部17上の高さレベルが周囲よりも低くなりにくくなる。このため、仕切り壁13eと、圧電アクチュエータ12の圧電層残存部17上との間に隙間が生じにくくなり、仕切り壁13eで圧電アクチュエータ12の圧電層残存部17上を押さえやすくなる。この結果、振動膜11a2も押さえやすくなる。
【0053】
下面13e1には、複数の溝13fが形成されている。これにより、仕切り壁13eを圧電アクチュエータ12に接着剤14で接着した際の余剰接着剤が、周囲に流れ出すのを抑制することができる。また、複数の溝13fは、紙幅方向に沿って延在しており、搬送方向に沿って配列されている。これにより、仕切り壁13eを圧電アクチュエータ12に接着剤14で接着した際の余剰接着剤が、周囲に流れ出すのをより一層抑制することができる。
【0054】
保護部材13の圧電層残存部17と鉛直方向に重なる部分が、下方側に突出してなる仕切り壁13eであるため、保護部材13と圧電アクチュエータ12の圧力室21と重なる部分とが離隔しやすくなる。このため、圧電素子12bが駆動されたときに、圧電素子12bに対して保護部材13の接触が影響しにくくなって、圧電素子12bの変位を妨げるのを抑制することが可能となる。
【0055】
圧電層残存部17は、圧電層12b2の上面において、その外周形状が凹部16の外周形状に相似となっている。これにより、保護部材13に多少の貼りズレが生じても、仕切り壁13eの下面13e1の中央部分13e2との貼りズレに対してどの方向(水平方向)も等しい許容差を持つことができる。
【0056】
凹部16の外周形状が、搬送方向に平行な二辺を有する六角形である。このように圧電層12b2の隔壁11a1と鉛直方向に重なる隔壁重なり部分15のそれぞれに凹部16が形成されることで、圧電素子12bの能動部のバネ性(変位量)を担保することができる。そして、凹部16の外周形状が六角形を有することで、搬送方向の端部の紙幅方向両側の角部に応力集中が係りにくくなって圧電層12b2の剛性の低下を抑制することができる。
【0057】
以上、本発明の好適な実施の形態について説明したが、本発明は上述の実施の形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した限りにおいて様々な変更が可能なものである。
【0058】
上述の実施形態においては、保護部材13の仕切り壁13eが圧電アクチュエータ12の圧電層残存部17上に接着剤14を介して接合されているが、接着剤14を使用せずに当接して押さえているだけであってもよい。また、保護部材13には、下方に突出する仕切り壁13eが形成されていなくてよい。この場合、保護部材13の圧電層残存部17と鉛直方向に重なる残存重なり部分が、圧電アクチュエータ12の圧電層残存部17上を押さえておればよい。
【0059】
また、圧電層残存部17は、圧電層12b2の厚みよりも大きくてもよいし、小さくてもよい。また、圧電アクチュエータ12には、圧電層残存部17上に補助電極としての島状補助電極層12c2が形成されているが、特に形成されていなくてもよい。そして、圧電アクチュエータ12の圧電層残存部17上の部分が、搬送方向にこの部分を挟む部分よりも高さが低い場合、その差だけ、仕切り壁13eの下面13e1の中央部分13e2が外側部分13e3よりも下側に突出していることが望ましい。また、保護部材13は、下面13e1の中央部分13e2だけを有していてもよい。つまり、保護部材13は、圧電アクチュエータ12の圧電層残存部17上を押さえておればよい。
【0060】
また、仕切り壁13eの下面13e1に溝13fが形成されていなくてもよい。また、下面13e1に形成された溝が、紙幅方向と交差する方向に延在していてもよい。
【0061】
下面13e1の幅W2が、幅W1以下であってもよい。また、圧電層残存部17の外周形状が、凹部16の外周形状と相似でなくてもよい。また、凹部16の外周形状が、六角形以外の形状であってもよい。
【0062】
また、以上では、ラインヘッドに本発明を適用した例について説明したが、これには限られない。キャリッジに搭載され、キャリッジとともに移動しながら複数のノズルからインクを吐出する、いわゆるシリアルヘッドに本発明を適用することも可能である。
【0063】
さらには、ノズルからインクを吐出するインクジェットヘッドに本発明を適用することにも限られない。インク以外の液体を吐出する、インクジェットヘッド以外の液体吐出ヘッドに本発明を適用することも可能である。
【符号の説明】
【0064】
1 インクジェットヘッド(液体吐出ヘッド)
11a プレート(圧力室形成基板)
12 圧電アクチュエータ
11a2 振動膜
12b 圧電素子
12b2 圧電層
12c 補助電極層(補助電極)
13 保護部材(保護基板)
13e 仕切り壁(残存重なり部分)
13e1 下面(接合面)
13e2 中央部分
13e3 外側部分
13f 溝
14 接着剤
15 隔壁重なり部分
16 凹部
17 圧電層残存部
21 圧力室
図1
図2
図3
図4
図5
図6