(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022052799
(43)【公開日】2022-04-05
(54)【発明の名称】歯カバー具用プレート材、歯カバー具の製作方法
(51)【国際特許分類】
A63B 71/08 20060101AFI20220329BHJP
A61C 7/08 20060101ALI20220329BHJP
【FI】
A63B71/08 Z
A61C7/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020159243
(22)【出願日】2020-09-24
(71)【出願人】
【識別番号】592132730
【氏名又は名称】株式会社ライフ
(71)【出願人】
【識別番号】899000057
【氏名又は名称】学校法人日本大学
(74)【代理人】
【識別番号】100112689
【弁理士】
【氏名又は名称】佐原 雅史
(74)【代理人】
【識別番号】100128934
【弁理士】
【氏名又は名称】横田 一樹
(72)【発明者】
【氏名】古川 誠
(72)【発明者】
【氏名】山下 巧
(72)【発明者】
【氏名】長井 澄雄
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 浩司
(72)【発明者】
【氏名】小見山 道
【テーマコード(参考)】
4C052
【Fターム(参考)】
4C052JJ09
(57)【要約】
【課題】高品質な歯カバー具を容易に製作可能な歯カバー具用プレート材等を提供する。
【解決手段】 歯を覆う歯カバー具を製作する際に用いられる歯カバー具用プレート材100であって、前歯の外側近傍に相当する位置に形成される前歯側厚肉部800と、前歯の内側に相当する位置に形成され、前歯側厚肉部800よりも薄い前歯側薄肉部810と、を備えるようにした。工程と、を備えるようにした。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
歯を覆う歯カバー具を製作する際に用いられる歯カバー具用プレート材であって、
前歯の外側近傍に相当する位置に形成される前歯側厚肉部と、
前歯の内側に相当する位置に形成され、前記前歯側厚肉部よりも薄い前歯側薄肉部と、
を備えることを特徴とする歯カバー具用プレート材。
【請求項2】
前記前歯側厚肉部と前記前歯側薄肉部の境界が、前記前歯側に凸となる湾曲又は屈曲形状となることを特徴とする、
請求項1に記載の歯カバー具用プレート材。
【請求項3】
前記前歯側厚肉部は、前記境界を基線として面方向外側かつ基線直角方向に、7.0mm以上の範囲に延在することを特徴とする、
請求項2に記載の歯カバー具用プレート材。
【請求項4】
前記前歯側厚肉部よりも周縁側に形成されて、前記歯カバー具を製作する製造装置によって挟持される被挟持部を備え、
前記被挟持部は、前記前歯側厚肉部よりも薄いことを特徴とする、
請求項1~3のいずれか一項に記載の歯カバー具用プレート材。
【請求項5】
前記被挟持部が、均一の厚みで環状に形成されることを特徴とする、
請求項4に記載の歯カバー具用プレート材。
【請求項6】
前記被挟持部と前歯側薄肉部の厚みが同じであることを特徴とする、
請求項4または5に記載の歯カバー具用プレート材。
【請求項7】
臼歯近傍に相当する位置に形成されて前記前歯側厚肉部よりも薄い臼歯側薄肉部を備えることを特徴とする、
請求項1~6のいずれか一項に記載の歯カバー具用プレート材。
【請求項8】
前記前歯側薄肉部と前記臼歯側薄肉部の厚みが同じであることを特徴とする、
請求項7に記載の歯カバー具用プレート材。
【請求項9】
前記前歯側厚肉部と前記前歯側薄肉部の厚みの差が、0.3mm以上となることを特徴とする、
請求項1~8のいずれか一項に記載の歯カバー具用プレート材。
【請求項10】
歯を覆う歯カバー具を製作する際に用いられる歯カバー具用プレート材であって、
前歯の外側近傍に相当する位置に形成される前歯側厚肉部と、
臼歯近傍に相当する位置に形成されて前記前歯側厚肉部よりも薄い臼歯側薄肉部と、
を備えることを特徴とする歯カバー具用プレート材。
【請求項11】
前記前歯側厚肉部と前記臼歯側薄肉部の厚みの差が、0.3mm以上となることを特徴とする、
請求項10に記載の歯カバー具用プレート材。
【請求項12】
内側樹脂素材によって構成され且つ厚み方向の中央側に積層される内側層と、
前記内側層の両外側に隣接し且つ該内側脂素材と異なる外側樹脂素材によって構成される一対の外側層と、を備え、
前記外側樹脂素材は、前記内側樹脂素材と比較して硬いことを特徴とする、
請求項1~11のいずれか一項に記載の歯カバー具用プレート材。
【請求項13】
前記歯カバー具用プレート材の一方の面において部分的に凸状態で形成される凸領域を備え、
前記歯カバー具用プレート材の他方の面は平坦となっており、
前記凸領域に、前歯側厚肉部が形成されることを特徴とする、
請求項1~12のいずれか一項に記載の歯カバー具用プレート材。
【請求項14】
歯を覆う歯カバー具の製作方法であって、
歯カバー具用プレート材が、前歯側厚肉部、及び前記前歯側厚肉部よりも薄い前歯側薄肉部を有するようにし、
前記歯カバー具用プレート材の前記前歯側厚肉部を、歯型模型の前歯の外側近傍に相当する位置に調整すると共に、前記前歯側薄肉部を、前記前歯の内側に相当する位置に調整し、
前記歯カバー具用プレート材を加熱して軟化させてから前記歯型模型に接近させることで、前記前歯側厚肉部を前記前歯の表面に密着させることを特徴とする、
歯カバー具の製作方法。
【請求項15】
歯を覆う歯カバー具の製作方法であって、
歯カバー具用プレート材が、前歯側厚肉部、及び前記前歯側厚肉部よりも薄い臼歯側薄肉部を有するようにし、
前記歯カバー具用プレート材の前記前歯側厚肉部を、歯型模型の前歯の外側近傍に相当する位置に調整すると共に、前記臼歯側薄肉部を、前記歯型模型の臼歯に相当する位置に調整し、
前記歯カバー具用プレート材を加熱して軟化させてから前記歯型模型に接近させることで、前記前歯側厚肉部を前記前歯の表面に密着させることを特徴とする、
歯カバー具の製作方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歯を覆う歯カバー具を製作する際に用いられる歯カバー具用プレート材等に関する。
【背景技術】
【0002】
実際の歯を覆うように嵌める歯カバー具は、現在、様々な場面で活用されている。歯カバー具には、例えば、外部衝撃から歯を守るマウスガード(マウスピース)や、歯科矯正用マウスピース、噛み合わせや歯ぎしり防止用マウスピース、いびきや無呼吸症候群軽減用マウスピース、手術用マウスピースなどが存在し得る。
【0003】
これらの歯カバー具は、既製品とカスタム品に大別される。既製品は、様々は人に対応できるような汎用形状に予め作りこまれた製品であり、店頭や歯科、病院等で購入できる。一方、カスタム品は、熱等によって一時的に軟化させた樹脂のプレート材(以下、歯カバー具用プレート材)を、実際の歯又は歯型に密着させて成形した製品となる。既製品は安価で、入手が容易となる一方、適合性や形状が不完全なために使用感が劣る。従って、その使用目的が高度になるほど、カスタム品が利用される傾向がある。
【0004】
例えば、マウスガードは、歯牙の表面(主に上顎)に装着するために、軟質プラスチックでつくられたプロテクターであり、外力から歯を保護したり、自らの歯による口唇、舌、頬の損傷を防止ししたり、外力から顎関節を保護する。従って、受傷率の高いコンタクトスポーツ(ラグビー、サッカー、バスケットボール、野球等)においては、カスタム品のマウスガードを用いる場合が多く、その際は、歯科医師や歯科技師によって個々に製作される。
【0005】
マウスガードを製作する際、歯科医師は、まず、使用者から歯型をとって石膏模型を作る。その後、
図21に示すような歯カバー具製造装置1600の保持枠1610によって、一辺10cm~15cm程度、厚みが0.5mm~5mm程度となる歯カバー具用プレート材1100を保持させつつ、ヒータ1620によって加熱軟化させてから、保持枠1610を下降させることで、歯カバー具用プレート材1100を石膏模型1700に圧接する。その後、歯カバー具用プレート材1100が冷却固化してから、石膏模型1700を取り外し、口の形に合わせて余分な材料を切り取ることで、マウスガード1500が完成する(例えば、特許文献1参照)。この歯カバー具製造装置1600は、歯カバー具用プレート材1100を上方(石膏模型と反対側)から加圧して、石膏模型に圧接させる加圧タイプと、歯カバー具用プレート材1100を下方(石膏模型側)から真空吸引して、石膏模型に圧接させる真空タイプと、加圧タイプと吸引タイプの双方を組み合わせた加圧真空タイプが存在する。
【0006】
歯カバー具用プレート材は、サイズ、厚み、素材、硬さ等に関して最適な材料を選定することが望ましい。例えば、コンタクトの多いスポーツの場合、衝撃を吸収するためにも、厚みの大きい(例えば3mm以上)の歯カバー具用プレート材を採用する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、
図21(B)に示すように、前歯の外側(表側)を覆うように密着する歯カバー具用プレート材1100は、臼歯側と比較して、前歯の先端から歯茎方向に向かって大きく伸展することから、肉厚が薄くなるという問題がある。肉厚が薄くなると、マウスガード1500元来の保護力が低下するという問題があった。
【0009】
本発明は上記問題点に鑑みてなされたものであり、高品質な歯カバー具を製作する際に好適な歯カバー具用プレート材等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成する本発明は、歯を覆う歯カバー具を製作する際に用いられる歯カバー具用プレート材であって、前歯の外側近傍に相当する位置に形成される前歯側厚肉部と、前歯の内側に相当する位置に形成され、前記前歯側厚肉部よりも薄い前歯側薄肉部と、を備えることを特徴とする歯カバー具用プレート材である。
【0011】
上記歯カバー具用プレート材に関連する本発明は、前記前歯側厚肉部と前記前歯側薄肉部の境界が、前記前歯側に凸となる湾曲又は屈曲形状となることを特徴とする。
【0012】
上記歯カバー具用プレート材に関連する本発明は、前記前歯側厚肉部は、前記境界を基線として面方向外側かつ基線直角方向に、7.0mm以上の範囲に延在することを特徴とする。
【0013】
上記歯カバー具用プレート材に関連する本発明は、前記前歯側厚肉部よりも周縁側に形成されて、前記歯カバー具を製作する製造装置によって挟持される被挟持部を備え、前記被挟持部は、前記前歯側厚肉部よりも薄いことを特徴とする。
【0014】
上記歯カバー具用プレート材に関連する本発明は、前記被挟持部が、均一の厚みで環状に形成されることを特徴とする。
【0015】
上記歯カバー具用プレート材に関連する本発明は、前記被挟持部と前歯側薄肉部の厚みが同じであることを特徴とする。
【0016】
上記歯カバー具用プレート材に関連する本発明は、臼歯近傍に相当する位置に形成されて前記前歯側厚肉部よりも薄い臼歯側薄肉部を備えることを特徴とする。
【0017】
上記歯カバー具用プレート材に関連する本発明は、前記前歯側薄肉部と前記臼歯側薄肉部の厚みが同じであることを特徴とする。
【0018】
上記歯カバー具用プレート材に関連する本発明は、前記前歯側厚肉部と前記前歯側薄肉部の厚みの差が、0.3mm以上となることを特徴とする。
【0019】
上記目的を達成する本発明は、歯を覆う歯カバー具を製作する際に用いられる歯カバー具用プレート材であって、前歯の外側近傍に相当する位置に形成される前歯側厚肉部と、臼歯近傍に相当する位置に形成されて前記前歯側厚肉部よりも薄い臼歯側薄肉部と、を備えることを特徴とする歯カバー具用プレート材である。
【0020】
上記歯カバー具用プレート材に関連する本発明は、前記前歯側厚肉部と前記臼歯側薄肉部の厚みの差が、0.3mm以上となることを特徴とする。
【0021】
上記歯カバー具用プレート材に関連する本発明は、内側樹脂素材によって構成され且つ厚み方向の中央側に積層される内側層と、前記内側層の両外側に隣接し且つ該内側脂素材と異なる外側樹脂素材によって構成される一対の外側層と、を備え、前記外側樹脂素材は、前記内側樹脂素材と比較して硬いことを特徴とする。
【0022】
上記歯カバー具用プレート材に関連する本発明は、前記歯カバー具用プレート材の一方の面において部分的に凸状態で形成される凸領域を備え、前記歯カバー具用プレート材の他方の面は平坦となっており、前記凸領域に、前歯側厚肉部が形成されることを特徴とする。
【0023】
上記目的を達成する本発明は、歯を覆う歯カバー具の製作方法であって、歯カバー具用プレート材が、前歯側厚肉部、及び前記前歯側厚肉部よりも薄い前歯側薄肉部を有するようにし、前記歯カバー具用プレート材の前記前歯側厚肉部を、歯型模型の前歯の外側近傍に相当する位置に調整すると共に、前記前歯側薄肉部を、前記前歯の内側に相当する位置に調整し、前記歯カバー具用プレート材を加熱して軟化させてから前記歯型模型に接近させることで、前記前歯側厚肉部を前記前歯の表面に密着させることを特徴とする、歯カバー具の製作方法である。
【0024】
上記目的を達成する本発明は、歯を覆う歯カバー具の製作方法であって、歯カバー具用プレート材が、前歯側厚肉部、及び前記前歯側厚肉部よりも薄い臼歯側薄肉部を有するようにし、前記歯カバー具用プレート材の前記前歯側厚肉部を、歯型模型の前歯の外側近傍に相当する位置に調整すると共に、前記臼歯側薄肉部を、前記歯型模型の臼歯に相当する位置に調整し、前記歯カバー具用プレート材を加熱して軟化させてから前記歯型模型に接近させることで、前記前歯側厚肉部を前記前歯の表面に密着させることを特徴とする、歯カバー具の製作方法である。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、高品質な歯カバー具を容易に製作する方法等を提供できるという優れた効果を奏し得る。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】本発明の実施形態にかかるカバー具用プレート材において、(A)は全体構成を示す平面図、(B)は側面断面図、(C)は歯型模型との位置関係を示す平面図であり、(D)は変形例を示す平面図である。
【
図2】(A)は、同歯カバー具用プレート材及び歯カバー具製造装置を利用して歯カバー具を製作する準備工程を示す側面図であり、(B)は歯カバー具を製作する真空成形工程を示す側面図である。
【
図3】(A)は、同歯カバー具用プレート材及び歯カバー具製造装置を利用して歯カバー具及び歯型模型を示す側面図であり、(B)は(A)のB-B矢視断面図である。
【
図4】同カバー具用プレート材を製造するプレート材製造装置の全体構成を示す部分断面図である。
【
図5】同プレート材製造装置の筒状成形機の押出ヘッドを拡大して示す断面図である。
【
図6】同プレート材製造装置の板状成形装置において、(A)は金型開放状態を示す正面部分断面図及び平面部分断面図、(B)は金型閉鎖状態を示す正面部分断面図及び平面部分断面図である。
【
図7】(A)は同筒状成形機によって成形される筒状中間材の平面断面図であり、(B)は金型によって筒状中間材が成形される状態を示す平面断面図である。
【
図8】(A)乃至(C)は、同筒状中間材及び同歯カバー具用プレート材の変形例を示す平面断面図である。
【
図9】(A)は同筒状中間材及び同歯カバー具用プレート材の変形例を示す正面断面図であり、(C)は同歯カバー具用プレート材と歯型模型の配置関係を説明する正面図である。
【
図10】(A)及び(B)は同筒状中間材及び同歯カバー具用プレート材の変形例を示す平面断面図であり、(C)は同歯カバー具用プレート材と歯型模型の配置関係を説明する正面図である。
【
図11】同プレート材製造装置の筒状成形機の押出ヘッドの変形例を示す拡大断面図である。
【
図12】(A)及び(B)は同筒状中間材及び同歯カバー具用プレート材の変形例を示す平面断面図である。
【
図13】(A)及び(B)はは同歯カバー具用プレート材と歯型模型の配置関係を説明する正面図である。
【
図14】(A)は同プレート材製造装置の変形例を示す正面部分断面図であり、(B)は(A)におけるB-B矢視断面図であり、(C)は(A)におけるC-C矢視断面図である。
【
図15】(A)は同プレート材製造装置の変形例を示す正面部分断面図であり、(B)乃至(D)はピンチローラ及びのその変形例を示す平面図である。
【
図16】(A)は同筒状成形機10の変形例を示す正面部分断面図であり、(B)及び(C)は、同板状成形装置の変形例を示す平面断面図である。
【
図17】(A)~(C)は、射出成形装置によって同歯カバー具用プレート材を製造する際の金型を示す断面図である。
【
図18】(A)は、Tダイ法による押出射出成形又はカレンダリング装置によって成形されるシート材を最終加工して同歯カバー具用プレート材を製造する際のピンチローラの配置を示す図であり、(B)は、最終成形用のピンチローラを拡大して示す正面図である。
【
図19】(A)~(F)は、同歯カバー具用プレート材の変形例を示す正面図及び断面図である。
【
図20】(A)~(F)は、同歯カバー具用プレート材の変形例を示す正面図及び断面図である。
【
図21】(A)は、従来の歯カバー具用プレート材及び歯カバー具製造装置を利用して歯カバー具を製作する準備工程を示す側面図であり、(B)は歯カバー具を製作する真空成形工程を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施の形態について添付図面を参照して説明する。
【0028】
<プレート材>
【0029】
図1に、本発明の実施形態に係る歯カバー具用プレート材(以下、プレート材)100の全体構成を示す。プレート材100は、第1樹脂素材S1によって構成される第1層110と、第1層110の両外側に隣接し且つ第2樹脂素材S2によって構成される一対の第2層120A,120Bとを有する。
【0030】
なお、第1及び第2樹脂素材S1、S2は、様々な原材料を選択することができるが、代表的な材料として、エチレン酢酸ビニル共重合樹脂(EVA)、オレフィン系熱可塑性エラストマー(TPO)、スチレン系熱可塑性エラストマー(TPS)、グリコール変性PET(PETG)、ポリオレフィン樹脂と非結晶性樹脂の性能を融合させた環状オレフィンコポリマー(COC)、ポリウレタン系熱可塑性エラストマー(TPU)、ハード部とソフト部のブロックからなるブロック共重合体、熱可塑性シリコーン樹脂、熱可塑性アクリル樹脂(PMMA)、振動吸収ゲル等を用いることができる。
【0031】
また、第1樹脂素材S1と第2樹脂素材S2は、互いに異なる材料(異材料)が選定される。この「異なる材料」とは、上述で列挙した原材料を異ならせる場合の他に、同一原材料であっても、製造工程や添加剤によって、色や硬さ、柔軟性、衝撃吸収性、耐久性等を異ならせる場合なども含まれる。本実施形態では、第2樹脂素材S2が第1樹脂素材S1よりも硬い材料で構成される。
【0032】
図1(A)及び(B)に示すように、プレート材100は、前歯側厚肉部800、前歯側薄肉部810、臼歯側薄肉部820、被挟持部880を有する。
【0033】
前歯側厚肉部800は、歯カバー具を製作する際に、前歯(中切歯、側切歯、犬歯)の先端の外側(表側)近傍に相当する位置に形成される(
図1(C)参照)。前歯側厚肉部800は、U字形状に沿って帯状に広がる領域となる。帯状領域の帯幅Oは、7.0mm以上に設定され、より望ましくは10.0mm以上となる。U字形状となる前歯側厚肉部800は、例えば、前歯側に凸となる直径20.0mmの正半円805の周囲を取り囲むような形状となる。
【0034】
プレート材100の一方の面(ここでは第2層120Bの表面)には、部分的に凸状態となる凸領域900が形成されており、ここでは、この凸領域900が前歯側厚肉部800に相当している。なお、プレート材100の他方の面(ここでは第2層120Aの表面)は、平坦となっている。
【0035】
前歯側薄肉部810は、歯カバー具を製作する際に、前歯(中切歯、側切歯、犬歯)の先端よりも内側(裏側)に相当する位置に形成され(
図1(C)参照)、かつ、前歯側厚肉部800よりも厚みが薄くなる。なお、前歯側厚肉部800との厚みの差は0.3mm以上となっており、ここでは0.5mmに設定される。更に前歯側薄肉部810と前歯側厚肉部800の境界線815はU字形状となる。なお、ここでは境界線815がU字形状となる場合を例示したが、この形状は、円弧(正円弧・楕円弧)形状によって構成される場合に限られない。例えば
図1(D)に示すような屈曲形状であっても良い。即ち、この境界線815は、平面方向に沿って前歯側に凸となる湾曲又は屈曲形状とすることが好ましい。前歯側薄肉部810の面積は、上記正半円805の面積となる1.57cm2以上となることが好ましい。また、前歯側薄肉部810の厚みは、例えば、0.5mm以上が好ましく、1.5mm以上がさらに好ましく、より好ましくは2.0mm以上とする。一方、前歯側薄肉部810の厚みは、例えば、8.0mm以下が好ましく、6.0mm以下がさらに好ましく、より好ましくは5.0mm以下に設定され、更に望ましくは4.5mm以下、より望ましくは4.0mm以下に設定される。
【0036】
また、前歯側厚肉部800は、上記U字形状の境界線715を基線として、プレート材100の面方向外側(周縁側)かつ基線に対して直角方向Mに、7.0mm以上の範囲に延在することになる。
【0037】
臼歯側薄肉部820は、歯カバー具を製作する際に、両側の臼歯近傍に相当する位置にそれぞれ形成され(
図1(C)参照)、前歯側厚肉部800よりも薄い。なお、臼歯側薄肉部820は、第1小臼歯、第2小臼歯、第1大臼歯、第2大臼歯の少なくとも一部と重複する領域となっており、本実施形態では、主に、第1大臼歯、第2大臼歯に相当する位置に形成される。また、臼歯側薄肉部820は、前歯側厚肉部800のU字形状の帯両端の延長線上に位置している。なお、前歯側厚肉部800との厚みの差は0.3mm以上となっており、ここでは0.5mmに設定される。
【0038】
各臼歯側薄肉部820の面積は、3.14cm2以上となることが好ましい。また、臼歯側薄肉部820の厚みは、例えば、0.5mm以上が好ましく、1.5mm以上がさらに好ましく、より好ましくは2.0mm以上とする。一方、臼歯側薄肉部820の厚みは、例えば、8.0mm以下が好ましく、6.0mm以下がさらに好ましく、より好ましくは5.0mm以下に設定され、更に望ましくは4.5mm以下、より望ましくは4.0mm以下に設定される。本実施形態では、前歯側薄肉部810と臼歯側薄肉部820の厚みが同じとなる。
【0039】
被挟持部880は、前歯側厚肉部800、前歯側薄肉部810及び臼歯側薄肉部820よりも周縁側に形成される環状領域となり、後述する歯カバー具製造装置600によって挟持される。この被挟持部880は、均一の厚みで構成されることで、歯カバー具製造装置600の環状の保持枠610によって挟持される際、隙間が形成されないようになっている。被挟持部880は、前歯側厚肉部800よりも薄い。なお、前歯側厚肉部800との厚みの差は0.3mm以上となっており、ここでは0.5mmに設定される。
【0040】
また、被挟持部880の厚みは、例えば、0.5mm以上が好ましく、1.5mm以上がさらに好ましく、より好ましくは2.0mm以上とする。一方、被挟持部880の厚みは、例えば、8.0mm以下が好ましく、6.0mm以下がさらに好ましく、より好ましくは5.0mm以下に設定され、更に望ましくは4.5mm以下、より望ましくは4.0mm以下に設定される。本実施形態では、被挟持部880の厚みは、前歯側薄肉部810及び/又は臼歯側薄肉部820の厚みと同じに設定される。
【0041】
なお、プレート材100において、被挟持部880は、前歯側厚肉部800、前歯側薄肉部810及び臼歯側薄肉部820を除いた領域の厚みは特に限定されないが、本実施形態では、被挟持部880は、前歯側薄肉部810及び臼歯側薄肉部820の厚みに一致させている。例えば、被挟持部880、前歯側薄肉部810及び臼歯側薄肉部820を4.0mmとする場合は、前歯側厚肉部800は4.3mm以上、望ましくは4.5mm以上とする。また例えば、被挟持部880、前歯側薄肉部810及び臼歯側薄肉部820を3.0mmとする場合は、前歯側厚肉部800は3.3mm以上、望ましくは3.5mm以上とする。更に例えば、被挟持部880、前歯側薄肉部810及び臼歯側薄肉部820を2.0mmとする場合は、前歯側厚肉部800は2.3mm以上、望ましくは2.5mm以上とする。
【0042】
なお、
図1では、説明の便宜上、プレート材100における厚みT方向を大幅に誇張表示している。プレート材100の縦幅H及び横幅Wは、8cm~20cmの範囲内、好ましくは10cm~15cmの範囲内に設定される。縦幅H及び横幅Wが大きすぎると、材料が無駄になる。
【0043】
<歯カバー具用プレート材を用いた歯カバー具の製造方法>
【0044】
図2を参照して、本実施形態の歯カバー具製造装置600を利用した歯カバー具500の製造工程を説明する。
図2(A)に示すように、歯カバー具製造装置600は、プレート材100の被挟持部880を保持する保持枠610と、保持枠610を上下動させる昇降機構650と、保持枠610の上方に配置されて、プレート材100を加熱するヒータ620と、保持枠610の下方に配置される台座630を有する。なお、台座630には、歯型模型700を傾斜姿勢で載置するための治具640が設けられている。この治具640は、歯形模型700を傾斜させるように支持しており、結果として、前歯から臼歯を連ねる歯面Xを傾斜させる。具体的には、前歯側が上方のプレート材100に接近し、臼歯側がプレート材100から離れるように歯面Xを傾斜させる。台座630には、負圧を案内するための吸引穴635が形成される。
【0045】
プレート材100は、一方の表面に形成される凸領域900が、歯型模型700と反対側(ここでは上側)となるように保持枠610によって保持される。即ち、プレート材100において、平坦となる他方の表面が、歯型模型700と対向する。
【0046】
図1(C)に、プレート材100と歯型模型700の位置関係を示す。前歯側厚肉部800は、歯型模型700の前歯(中切歯、側切歯、犬歯)の先端の外側(周縁側)近傍に相当する位置に調整される。即ち、U字形状の境界線815が、前歯の先端に接近するように位置調整される。結果、前歯側薄肉部810は、歯型模型700における前歯の裏側から、口蓋側(上顎の場合)又は舌側(下顎の場合)に広がる。臼歯側薄肉部820は、歯型模型700の両側の臼歯近傍に相当する位置にそれぞれ調整される。
【0047】
図2(A)に示すように、プレート材100を保持した保持枠610を、歯型模型700よりも高所に位置決めした状態で、ヒータ620によってプレート材100を加熱する。プレート材100は、加熱によって軟化されて、点線に示されるように鉛直下方に湾曲する。この状態で、昇降機構650を利用して、保持枠610を下降させて、台座630に当接させることで、プレート材100が歯型模型700に接触(接近)する。なお、プレート材100の下降停止位置は、歯型模型700の前歯の先端にプレート材100が丁度接触するか、または接触直前となるような位置が望ましい。
【0048】
その後、
図2(B)に示すように、特に図示しない真空ポンプを稼働させて、吸引穴635を利用して、台座630とプレート材100の隙間のエアを外部に放出する(負圧を導入する)。結果、負圧によってプレート材100が下方に引っ張られて、プレート材100と歯型模型700が密着する。この際、前歯側厚肉部800が、歯型模型700の前歯の表側に密着するので、仮に上下方向に引き延ばされたとしても、その部分を厚肉に維持できる。また、ヒータ620によってプレート材100を加熱する際、肉厚となる前歯側厚肉部800の軟化タイミングが遅くなるので、前歯側厚肉部800以外の領域の方が柔らかい状態となる。従って、前歯側厚肉部800と比較して、その周囲の領域が優先的に伸ばされる。これにより、歯型模型700の前歯の表側に位置する前歯側厚肉部800を、周囲と比較して厚肉化できる。
【0049】
また、治具640によって、歯形模型700の歯面Xが傾斜しているので、密着時のプレート材100の伸展量は、プレート材100に近い前歯側が小さくなり、プレート材100から遠い臼歯側が大きくなる。これにより、臼歯側を薄肉としつつも、前歯側厚肉部800の伸展量を小さくできる。
【0050】
この状態で、ヒータ620をOFFにして、プレート材100を冷却固化させてから、歯型模型700から取り外し、口の形に合わせて余分な材料を切り取ることで、
図3に示す歯カバー具500が完成する。
図3(B)に示すように、この歯カバー具500では、前歯側厚肉部800によって、前歯の表側R1が厚肉となり、歯側薄肉部810によって前歯の裏側R2が薄肉となる。また、臼歯側薄肉部820によって、臼歯の周囲R2が薄肉となる。従って、この歯カバー具500によれば、前歯側厚肉部800によって、前方から受ける衝撃から前歯を守ることが出来る。また、歯側薄肉部810によって、舌の近傍が薄肉となり、日常の定位置からずれにくいので、快適な使用感が得られる。更に、臼歯側薄肉部820によって、臼歯側が薄肉となり、噛み合わせに対する悪影響や違和感を抑制できる。
【0051】
<プレート材製造装置>
【0052】
次に、
図4を参照して、本発明の実施形態に係るプレート材100を製造するプレート材製造装置1の全体構成を示す。プレート材製造装置1は、筒状成形機10と、板状成形装置60と、これらの間に配置される切断装置80を有する。
【0053】
筒状成形機10は、溶融された樹脂素材Sを、環状流路(環状スリット)36を経由させて押し出すことで筒形状に成形して、筒状中間材(パリソン)14を得る。詳細に、筒状成形機10は、第1押出機20Aと、第2押出機20Bと、押出ヘッド30と、筒状中間材14の肉厚を制御する肉厚制御装置50を有する。
【0054】
第1押出機20Aは、スクリュー式押出機であり、溶融前の第1樹脂ペレットP1が貯留されるホッパ16Aと、ホッパ16Aから第1樹脂ペレットP1が導入される筒状のシリンダ18Aと、シリンダ内に同軸方向に配置されるスクリュー20Aと、スクリュー20Aを回転させる駆動装置22Aを有する。ホッパ16Aからシリンダ18Aに供給される第1樹脂ペレットP1は、回転するスクリュー20Aの根本から先端側に移動するに伴って圧縮されて、溶融状態の第1樹脂素材S1に変化する。第1樹脂素材S1は、押出ヘッド30に案内される。
【0055】
第2押出機20Bは、スクリュー式押出機であり、溶融前の第2樹脂ペレットP2が貯留されるホッパ16Bと、ホッパ16Bから第2樹脂ペレットP2が導入される筒状のシリンダ18Bと、シリンダ内に同軸方向に配置されるスクリュー20Bと、スクリュー20Bを回転させる駆動装置22Bを有する。ホッパ16Bからシリンダ18Bに供給される第2樹脂ペレットP2は、回転するスクリュー20Bの根本から先端側に移動するに伴って圧縮されて、溶融状態の第2樹脂素材S2に変化する。第2樹脂素材S2は、押出ヘッド30に案内される。
【0056】
図5に拡大して示すように、押出ヘッド30は、第1樹脂素材S1が上下方向に筒状に流れる第1筒状流路32と、第2樹脂素材S2が上下方向に筒状に流れる第2筒状流路34と、第1筒状流路32と第2筒状流路34が合流する環状の合流部36と、合流部36の下流側(下方側)に連続して第1及び第2樹脂素材S1,S2が筒状且つ層状に流れる共通筒状流路38と、共通筒状流路38の下流端に形成される環状スリット39を有する。
【0057】
第1筒状流路32は、押出ヘッド30の押出軸に沿って配置される棒状又は筒状の中子40と、中子40の外周に配置される筒状の第1スリーブ41の内周面との隙間によって形成される。第1筒状流路32は、上流端(上方端)において第1押出機20Aの吐出口24Aと連続しており、第1樹脂素材S1が流れ込む。なお、ここでは第1スリーブ41が、製造や組み立ての便宜上、2つの部材に分割可能に構成されているが、一体的に製作されても良い。
【0058】
第2筒状流路34は、第1スリーブ41の外周面と、第1スリーブ41の外周に配置される筒状の第2スリーブ42の内周面との隙間によって形成される。結果、第2筒状流路34は、第1筒状流路32の外周側に同軸状に配置される。第2筒状流路34は、上流端(上方端)において第2押出機20Bの吐出口24Bと連続しており、第2樹脂素材S2が流れ込む。なお、本実施形態では、第1筒状流路32が内周側、第2筒状流路34が外周側に配置される場合を例示したが、第2筒状流路34が、第1筒状流路32の内側に配置される構造も採用可能である。
【0059】
合流部36は、中子40の外周面と、第1スリーブ41の下端縁と、第2スリーブ42の内周面が径方向に重なる位置に形成される。なお、ここでは特に図示しないが、第1スリーブ41の下端縁を軸方向に前後させたり、第1樹脂素材S1と第2樹脂素材S2の液圧を相対的に変化させたり、第1樹脂素材S1と第2樹脂素材S2の流量を相対的に変化させたりすることで、合流後の第1樹脂素材S1と第2樹脂素材S2の層厚を可変的に調整することができる。
【0060】
合流部36から下方に連続する共通筒状流路38は、中子40の外周面と、第2スリーブ42の内周面の隙間によって形成される。共通筒状流路38では、第1樹脂素材S1が内周側を流れると共に、第2樹脂素材S2がその外周側を流れることによる複層流状態となる。
【0061】
共通筒状流路38の下端に形成される環状スリット39は、第2スリーブ42の内周面の下端近傍と中子40の下端近傍に配置されるコア44の外周面によって形成される。この環状スリット39から、二層流状態の第1及び第2樹脂素材S1,S2が吐出されることで、
図4(A)に示されるように、最内周に位置する第1樹脂素材層15Aと、第1樹脂素材層15Aの外周に隣接する第2樹脂素材層15Bの二層構想の筒状中間材(パリソン)14が生成される。
【0062】
コア44は、中子40の内部に挿入される摺動軸45と連続しており、中子40の上端に配置される肉厚制御装置50によって、上下方向に移動制御される。なお、肉厚制御装置50は、摺動軸45を上下方向に往復移動させる駆動部と、この駆動部を制御する制御装置(計算機)によって構成される。本実施形態44では、共通筒状流路38の下端近傍が、下方に向かって拡径するテーパ形状となっている。結果、コア44が上方に移動すると環状スリット39の間隔が狭くなり、コア44が下側に移動すると環状スリット39の間隔が広くなる。すなわち、肉厚制御装置50によって、筒状中間材14の肉厚を自在に調整できる。なお、共通筒状流路38の下端近傍が、下方に向かって縮径するテーパ形状の場合は、コア44を反対方向に制御すればよい。
【0063】
コア44及び摺動軸45には、上下方向に貫通するエア流路47が形成される。このエア流路47の上端には、正圧を導入するコンプレッサ48と、エアを排気する排気弁49が接続される。コンプレッサ48は、エア流路47を介して筒状中間材14の内部に正圧の空気を導入することで、筒状中間材14を膨張させることができ、この膨張度合いによって肉厚制御ができる。また、排気弁49によって、筒状中間材14内の余分な空気を排気することもできる。更に、コンプレッサ48と排気弁49を同時に制御することで、筒状中間材14の内圧を一定に制御することもできる。排気弁49には、圧力制御弁やリリーフバルブ等を採用しても良い。
【0064】
図4に戻って、板状成形装置60は、溶融状態の筒状中間材14を径方向に挟み込むことにより、筒状の内周面同士(最内周の第1樹脂素材層同士)を溶着させることで、板状に成形する。詳細に、板状成形装置60は、一対の金型62A,62Bと、金型62A,62Bの各々を案内する直動機構64A,64Bと、直動機構64A,64Bが設置される台座65と、台座65全体を案内する移動機構66と、移動機構66を支持する基台67を有する。
【0065】
一対の金型62A,62Bは、直動機構64A,64Bによって直線駆動させることで、互いに接近・離反可能な開閉構造となる。金型62A,62Bの上方には、押出ヘッド30が配置される。金型62A,62Bが離反した姿勢(開姿勢:
図3(A)参照)では、一対の金型62A,62Bの隙間には、押出ヘッド30から押出成形される筒状中間材14が垂下される。金型62A,62Bが接近した姿勢(閉姿勢:
図6(B)参照)では、筒状中間材14が径方向に挟み込まれることで、筒状中間材14が圧し潰される。なお、
図4では、紙面の左右方向に金型62A,62Bが往復移動する。
【0066】
基台67状に配置される移動機構66は、台座65を介して一対の金型62A,62B全体を、直動機構64A,64Bの移動方向と直交する方向に移送する。結果、金型62A,62B全体が、押出ヘッド30の下側に位置決めされる状態(受入姿勢)と、押出ヘッド30の下方から離反する状態(冷却姿勢又は待機姿勢)の間を移送できる。なお、
図4では、移動機構66によって、紙面の垂直方向に金型62A,62Bが移送される。
【0067】
図6及び
図7に示すように、一対の金型62A,62Bには、それぞれ、凹部68A,68Bが形成される。この凹部68A,68Bの開口に相当する方形且つ環状の縁部69A,69Bは、凹部68A,68Bの底面から相手側の金型62A,62Bに向かって突出した位置となる。一方の凹部68Bには、更に、前歯側厚肉部800に相当する前歯側厚肉用凹部68Cが形成される。前歯側厚肉用凹部68Cの深さStcは、凹部68Bの深さStbよりも大きい。なお、本実施形態では、一対の金型62A,62Bにおいて、合計3組の凹部68A,68Bが、鉛直方向に並んで形成されることで、単一の筒状中間材14から同時に3枚の歯カバー具用プレート材(以下プレート材)100を成形する場合を例示するが、本発明はこれに限定されず、1組の凹部68A,68Bであってもよい。
【0068】
図6(B)及び
図7(B)に示すように、一対の金型62A,62Bが閉じられると、縁部69A,69B同士が当接する。結果、一対の凹部68A,68Bによって密閉される内部空間が形成される。この内部空間によって、筒状中間材14が圧し潰されて板状に成形され、
図1に示されるようなプレート材100が完成する。圧し潰す際に、筒状中間材14は溶融状態となるので、最内周の第1樹脂素材層15Aの内周面14A同士が溶着されることになる。
【0069】
成形されるプレート材100において、前歯側薄肉部810、臼歯側薄肉部820及び被挟持部880の厚みをT1、前歯側厚肉部800の厚みをT2、成形前の筒状中間材14の軸方向に沿う寸法を縦幅H、厚みT1,T2及び縦幅Hに直交する方向(成形前の筒状中間材14の径方向)に沿う寸法を横幅Wと定義すると、厚みT1は、凹部68A,68Bの深さSta,Stbの合計値と一致し、厚みT2は、凹部68A,68Cの深さSta,Stcの合計値と一致し、縦幅Hは、凹部68A,68Bの高さSh(
図3参照)と一致し、横幅Wは、凹部68A,68Bの横幅Swと一致する。
【0070】
図7(A)に示すように、筒状中間材14の内周面14Aの周長をLとすると、プレート材100の横幅W(凹部68A,68Bの幅Sw)は、L/2>Wの関係を満たす。筒状中間材14の内周面14Aの直径Rで表現すると、πR/2>Wとなる。
【0071】
図6(B)に示すように、圧し潰される筒状中間材14の一部は、凹部68A,68Bの高さSh方向の両外側にはみ出す。同様に、
図7(B)に示すように、圧し潰される筒状中間材14の一部は、凹部68A,68Bの横幅Sw方向の両外側にはみ出す。このはみ出し材180は、筒状中間材14の内周に残存する空気を、板状に成形されるプレート材100の周囲に押しやる役割も担う。従って、板状に成形された材料を金型62A,62Bから取り外した際に、プレート材100の周縁に、はみ出し材180が残存する場合がある。この場合は、事後的にはみ出し材180を切り離すことで、プレート材100が完成する。
【0072】
別の観点から説明すると、金型62A,62Bにおける凹部68A,68Bの周縁には、はみ出し材180が存在できるような逃がし空間70が確保されている。
【0073】
図1に示すように、完成したプレート材100は、第1樹脂素材層15Aの内周面同士を溶着されて単層化した第1層110と、この第1層110の両外側に隣接し且つ第2樹脂素材層15Bからなる一対の第2層120A,120Bを有することになる。プレート材100の周縁は、一対の第2層120A,120Bによって閉じられるので、第2層120A,120Bの内部に、第1層110が密閉される状態となる。また、一方の第2層120Bには、前歯側厚肉用凹部68Cによって凸領域900が凸状態で形成される。この凸領域900に相当する範囲が前歯側厚肉部800となる。
【0074】
このようなプレート材100の場合、内側に位置する第1層110の材料(第1樹脂材料S1)を、柔らかくて衝撃を吸収する材料を用いることが好ましい。外側に位置する第2層120A,120Bの材料(第2樹脂材料S2)は、第1樹脂材料S1よりも硬い材料を選定することが好ましい。このようにすると、硬い第2層120A,120Bによって外部からの衝撃を受け止め、この衝撃を拡散させながら、第一層110に伝達できるので、衝撃吸収能力を高めることが出来る。歯カバー具の損傷も抑制できる。
【0075】
一方で、内側に位置する第1層110の材料(第1樹脂材料S1)を、硬い材料を用い、外側に位置する第2層120A,120Bの材料(第2樹脂材料S2)を、第1樹脂材料S1よりも柔らかい材料を用いても良い。このようにすると、歯や舌に触れる部分が柔らかくなるので、使用感や密着感を高めることが出来る。
【0076】
なお、この第1層110は、詳細には、溶着面111を境界として一方側に位置する一方側領域110Aと、他方側に位置する他方側領域110Bが存在するが、この溶着面111は、肉眼では判別できない状態となる。また、第1層110の他方側領域110Bにおける凸領域900に相当する位置は、部分的に層厚が大きくなっている。
【0077】
なお、本実施形態では、金型62A,62B同士の当接面を基準として、一対の凹部68A,68Bが形成される場合を例示したが、それに限られず、一方の金型に凹部が形成され、他方の金型は平面又は相手側の凹部に嵌合する凸部であってもよい。いずれにしろ、一対の金型62A,62Bが閉じられることによって、シート材100の成形用の内部空間が確保されれば良い。
【0078】
図6(B)に示されるように、切断装置80は、筒状中間材14が金型62A,62Bによって挟み込まれた後に、素早く、筒状中間材14を押出ヘッド30から切り離す。その後も、押出ヘッド30からは新たな筒状中間材14が連続的に吐出されるため、移動機構66によって、切り出された筒状中間材14を保持した金型62A,62Bを押出ヘッド30の下方から離反させる(
図6(B)平面図の点線参照)。移動機構66による移送先において、金型62A,62B内で筒状中間材14(成形されるプレート材100)を冷却固化した後、金型62A,62Bを開放してプレート材100を離型する。その後、移動機構66によって、開放姿勢の金型62A,62Bを
図3(A)に示す押出ヘッド30の下方位置に復帰させることで、次の成形の準備に入る。
【0079】
<歯カバー具用プレート材の製造方法>
【0080】
次に、プレート材製造装置1を用いたプレート材100の製造工程について説明する。
【0081】
(中間材生成工程)
【0082】
中間材生成工程では、樹脂ペレットを溶融することで得られる樹脂素材を、環状スリット39を経由させて押し出すことで筒形状に成形して筒状中間材14を得る。本実施形態では、第1樹脂素材S1を最内周に押出て第1樹脂素材層15Aを形成し、同時に、第1樹脂素材層15Aと異材料となる第2樹脂素材S2を第1樹脂素材層15Aの外周に隣接する状態で押し出すことで第2樹脂素材層15Bを形成する。結果、筒状中間材14は二層構造となる。
【0083】
(膨張工程)
【0084】
膨張行程では、環状スリット39から押し出された筒状中間材14の内部に正圧を導入して、この筒状中間材14を膨らませる。これにより、肉厚を制御することが可能となる。環状スリット39の直径よりも大きい筒状中間材14を成形する場合や、環状スリット39の間隔よりも薄い肉厚の筒状中間材14を成形したい場合に、この膨張行程は有効活用される。一方、筒状中間材14の断面形状が、環状スリット39と同一寸法で足りる場合は、この膨張行程を省略できる。
【0085】
(板状体生成工程)
【0086】
板状体生成工程では、冷却硬化する前の溶融状態の筒状中間材14を径方向に挟み込む(圧し潰す)ことにより、内周面14A同士を溶着させることで、板状に成形し、そのまま冷却固化させることでプレート材100を得る。この際、プレート材100の横幅Wと、筒状中間材14の内周面14Aの周長をLとの関係が、L/2>Wを満たすようにすることが好ましい。
【0087】
同様に、筒状中間材14を径方向に挟み込む(圧し潰す)際に、プレート材100における横幅W方向の外側及び縦幅H方向Hの外側に、はみ出し材180が残存するように成形する。この成形を実現するために、板状体生成工程では、凹部68A,68Bを有する開閉式の金型62A,62Bによって、一部の材料が凹部68A,68Bの外側にはみ出るように筒状中間材14を挟み込む。
【0088】
結果、板状体生成工程で得られるプレート材100は、第1樹脂素材層15Aの内周面同士を溶着して単層化した第1層110と、第1層110の両外側に隣接し且つ第2樹脂素材層15Bからなる一対の第2層120とを有する。
【0089】
筒状成形機10は、筒状に樹脂素材を押し出すので、肉厚の均一化や、多層化が極めて容易であり、高品質な筒状中間材14を安価に量産できる。
【0090】
しかも、プレート材100としての最終的な肉厚は、板状成形装置60を用いて、筒状中間材14を径方向の圧し潰すことで画定させるので、筒状中間材14の肉厚に多少ばらつきが生じても、最終的なプレート材100の厚みを高精度に制御できる。
【0091】
とりわけ、本実施形態では、筒状中間材14を径方向に圧し潰す際に、プレート材100の横幅W方向の両外側に、はみ出し材180が残存するように設定している。すなわち、プレート材100の横幅Wに対して、筒状中間材14の内周面14Aの周長Lの半分(L/2)を、大きく設定しておくことで、筒状中間材14のサイズに余裕を持たせている。結果、プレート材100を成形する際に、筒状中間材14の径が細すぎことに起因して、横幅Wが不足したり、板厚Tが不足したりするような事態を確実に回避できる。
【0092】
なお、筒状成形機10は、従来のいわゆるブロー成形装置における押出成形機を流用できる。板状成形装置60も、ブロー成形装置におけるブロー成型用金型を、本実施形態の金型62A,62Bに交換することで流用できる。ブロー成形装置は、Tダイ法の押出成形機と比較して安価であることから、保有している中小規模事業者が日本国内に多数存在する。従って、遊休設備を利用して、少量多品種のプレート材100を量産することも可能となる。
【0093】
また、本実施形態では、筒状成形機10によって二層構造の筒状中間材14を成形し、これを圧し潰すことで、二種類の材料からなる三層構造のプレート材100を製造できる。従って、二種類の材料を適宜変更することで、様々な目的・用途に対応可能な多品種のプレート材100を量産できる。
【0094】
なお、ここでは二層構造の筒状中間材14を成形する場合を例示したが、本発明はこれに限定されない。例えば
図8(A)に示すように、単層構造の筒状中間材14を圧し潰して、単層のプレート材102を製造してもよい。
【0095】
更に、
図8(B)に示すように、第1樹脂素材S1による第1樹脂素材層15Aと、第1樹脂素材S1と異なる材料となる第2樹脂素材層15Bと、第1及び第2樹脂素材S1,S2の双方と異なる第3樹脂素材S3による第3樹脂素材層15Cの三層構想の筒状中間材14を押出成形できる。この筒状中間材14を圧し潰すと、三種類の材料からなる五層構造のプレート材103を製造できる。この5層構造のプレート材103は、第1樹脂素材層15Aの内周面同士を溶着して単層化した第1層110、第1層110の両外側に隣接し且つ第2樹脂素材層15Bからなる一対の第2層120、一対の第2層120の外側に隣接し且つ第3樹脂素材層15Cからなる一対の第3層130を備える。
【0096】
また更に、
図8(C)に示すように、第1樹脂素材S1による第1樹脂素材層15Aと、第1樹脂素材S1と異なる材料となる第2樹脂素材層15Bと、第1樹脂素材S1と同一材料となる第3樹脂素材層15Cの三層構想の筒状中間材14を押出成形できる。この筒状中間材14を圧し潰すと、二種類の材料からなる五層構造のプレート材104を製造できる。この5層構造のプレート材104は、第1樹脂素材層15Aの内周面同士を溶着して単層化した第1層110、第1層110の両外側に隣接し且つ第2樹脂素材層15Bからなる一対の第2層120、一対の第2層120の外側に隣接し且つ第3樹脂素材層15Cからなる一対の第3層130を備える。
【0097】
図8(B)や
図8(C)の五層構造のプレート材103、104によれば、樹脂材料の多様な組み合わせによって、衝撃吸収性を一層高めることが可能になる。なお、
図8においても、説明の便宜上、肉厚方向を誇張表示している。
【0098】
更にまた、上記実施形態では、筒状中間材14において、第1樹脂素材層15Aと第2樹脂素材層15Bの層厚比率が一定の場合を例示したが、本発明はこれに限定されない。例えば
図9(A)に示すように、筒状中間材14の軸方向に沿って、第1樹脂素材層15Aと第2樹脂素材層15Bの層厚比率を変化させることができる。この筒状中間材14を利用すると、
図9(B)に示すように、縦幅H方向に沿って、第1層110と一対の第2層120の層厚比率が変化するプレート材105を得る。結果、例えば
図9(C)に示すように、前歯近傍では、一対の第2層120の合計層厚に対して第1層110の層厚を大きくし、奥歯近傍では、一対の第2層120の合計層厚に対して、第1層110の層厚を小さくできる。衝撃を受けやすい前歯近傍のプレート材105の特性と、噛み合わせの影響を受けやすい奥歯近傍のプレート材105の特性を、領域を区分して調整できる。もちろん、前歯と奥歯の関係を正反対にすることもできる。なお、
図9では、説明の便宜上、肉厚方向を誇張表示している。
【0099】
また、例えば
図10(A)及び(B)に示すように、筒状中間材14の周方向に沿って、第1樹脂素材層15Aと第2樹脂素材層15Bの層厚比率を変化させることができる。これは、押出ヘッド30の合流部36における第1筒状流路32と第2筒状流路34の形状、具体的には第1スリーブ41の下端縁の形状を、周方向に楕円状に変位させればよい。
【0100】
図10(A)のように、筒状中間材14を板状に成形したプレート材106Aでは、横幅W方向の中央部分では、一対の第2層120の合計層厚に対して、第1層110の層厚を大きく設定し、横幅W方向の外側部分では、一対の第2層120の合計層厚に対して、第1層110の層厚を小さく設定できる。
【0101】
図10(B)のように、筒状中間材14を板状に成形したプレート材106Bでは、、横幅W方向の中央部分では、一対の第2層120の合計層厚に対して、第1層110の層厚を小さく設定し、横幅W方向の外側部分では、一対の第2層120の合計層厚に対して、第1層110の層厚を大きく設定できる。
【0102】
結果、例えば
図10(C)に示すように、前歯近傍の第1層110の層厚を大きくしたり、小さくしたりすることが可能となる。なお、
図10では、説明の便宜上、肉厚方向を誇張表示している。
【0103】
歯カバー具500において、前歯近傍は強度不足に陥りやすい。従って、プレート材106Aの場合、第1層110を、第2層120と比較して硬い素材、剛性の高い素材、あるいは弾性の小さい材料等にすることが好ましい。結果、
図10(C)に示すように、プレート材106Aの幅方向の中央近傍に、帯状に伸びる高強度領域100Hが形成され、更に、高強度領域100Hの幅方向両外側に、帯状に伸びる低強度領域100Kが形成される。このプレート材106Aを用いて歯カバー具500を製造すれば、前歯近傍の内部強度を、高強度領域100Hによって、局所的に高めることができる。また、本プレート材106Aの場合、第1層110の両外側が、柔らかい第2層120で覆われるので、高強度領域100Hであっても、歯カバー具500の表面は第2層120となる。実際の歯と接触する表面を、柔らかい素材とすることで、歯カバー具500を快適に使用できる。
【0104】
また、特に図示しないが、
図9に示す縦幅H方向の層厚比率の変化と、
図10に示す横幅W方向の層厚比率の変化を組み合わせることで、三次元的に層厚比率を変化させることもできる。
【0105】
また、
図4に示す押出ヘッド30では、第1筒状流路32が、全周に亘って環状となる流路を形成する場合を例示したが、本発明はこれに限定されない。例えば
図11に示す押出ヘッド30では、第1筒状流路32が、周方向の一部を占有する部分筒状の流路となる。このようにすると、第1樹脂素材S1を、周方向の一部に制限して流すことが可能となる。
【0106】
図12に、この種の押出ヘッド30を利用して得られる筒状中間材14を示す。
図12(A)では、第1樹脂素材層15Aが、周方向の一部の一か所に形成され、第2樹脂素材層15Bが、第1樹脂素材層15Aの外側を覆うように環状に形成される。第1樹脂素材層15Aが、プレート材107Aの幅方向の中央に帯状に形成されるように、筒状中間材14を圧し潰す。
【0107】
図12(B)では、第1樹脂素材層15Aが、周方向の一部となる二か所に形成され、第2樹脂素材層15Bが、第1樹脂素材層15Aの外側を覆うように環状に形成される。なお、一対の第1樹脂素材層15Aは、周方向において180度の角度位相差で配置される。一対の第1樹脂素材層15Aを互いに当接させることで、プレート材107Bの幅方向の中央に帯状に形成されるように、筒状中間材14を圧し潰す。
【0108】
これらのプレート材107A、107Bの場合、第1層110を、第2層120と比較して硬い素材、剛性の高い素材、あるいは弾性の小さい材料等にすることが好ましい。
図13に示すように、プレート材107A、107Bの幅方向の中央近傍に、帯状に伸びる高強度領域100Hが形成され、更に、高強度領域100Hの幅方向両外側に、帯状に伸びる低強度領域100Lが形成される。
【0109】
結果、歯カバー具500における前歯近傍の内部強度を、高強度領域100Hによって部分的に高めることが可能となる。一方、歯カバー具500の奥歯側の全域を、低強度領域100Lで構成できるので、使用感を高めることができる。
【0110】
また、本実施形態では、
図4に示すプレート材製造装置1において、押出ヘッド30の下方で、移動機構66によって金型62A,62Bを往復移動させながら量産する場合を例示したが、本発明はこれに限定されない。例えば
図14に示すように、複数の金型セット200を移動機構66によって環状に一方向に移送してもよい。金型セット200を循環させながら、押出ヘッド30の下方に進退させることができる。
【0111】
また、本実施形態では、板状成形装置60において、開閉式の金型62A,62Bによって、プレート材を成形する場合を例示したが、本発明はこれに限定されない。例えば
図15(A)に示す板状成形装置60のように、板厚Tに相当する隙間を開けて配置される一対のピンチローラ220,222を利用して、筒状中間材14を挟み込むことでシート状に成形できる。このようにすると、筒状中間材14が連続的に成形されて帯状となる。ピンチローラ222よりも下流側において、この帯状の板材を所定長さに切断することで、連続的にプレート材100を得る。
図15(B)に示すように、ピンチローラ220における押圧幅Kは、筒状中間材14の内周面14Aの周長をLの半分(L/2)よりも大きく設定し、筒状中間材14全体を板厚Tに成形してもよい。また、
図15(C)に示すように、ピンチローラ220における押圧幅Kを、筒状中間材14の内周面14Aの周長Lの半分(L/2)よりも小さく設定してもよい。この場合は、ピンチローラ220の幅方向の両外側に、板厚が不安定となるはみ出し材180が形成されるので、下流側で切り離すことが好ましい。
【0112】
更に、
図15(D)に示すように、下流側のピンチローラ222の外周面に、帯状(又は筒状)の凹部230を形成しておき、一対のピンチローラ220を互いに当接させて、この凹部230によってスリットを形成してもよい。一方のピンチローラ222の凹部230には、更に、前歯側厚肉用凹部230Cが形成される。前歯側厚肉用凹部230Cの深さは、凹部230の深さよりも大きい。この際、凹部230による押圧幅Kを、筒状中間材14の内周面14Aの周長Lの半分(L/2)よりも小さく設定する。筒状中間材14を径方向に変形させながらスリットを通過させることで、プレート材100における横幅W方向の断面形状を成形できる。なお、この際も、ピンチローラ220の幅方向の両外側に、板厚が不安定となるはみ出し材180が形成されるので、下流側で切り離すことが好ましい。
【0113】
ちなみに、ピンチローラ220,222等を利用して筒状中間材14を連続的に板状(帯状)成形する場合、膨張工程を活用し易い。その理由として、ピンチローラ220,222よりも上流側の筒状中間材14の内部空間が密閉空間となるからである。従って、押出ヘッド30に設けられるエア流路47を利用して、筒状中間材14内に正圧を導入すると、容易に、筒状中間材14を膨らませることが可能となる。
【0114】
また、本実施形態では、押出ヘッド30から導出される筒状中間材14が、周方向に連続している場合を例示したが、本発明はこれに限定されない。例えば
図16(A)に示すように、押出ヘッド30内では、完全な筒状中間材14であり、これを第1中間材成形工程と定義できる。環状スリット39と同一位置又はその下流に配置されるカッター250によって、筒状中間材14が周方向に分断されるが、これを第2中間材生成工程と定義できる。この第2中間材生成工程においては、180度の周方向位相差で配置される一対のカッター250によって、筒状中間材14が、一対の分断線14Xによって周方向に二分される。二分された各々の材料は、断面部分円弧形状となる部分円筒中間材14Yと定義できるが、この部分円筒中間材14Yは、本発明の筒状中間材14の概念の一部に含まれる。
【0115】
図16(B)に示すように、この分断線14Xが、はみ出し材180側に位置するように、板状成形装置60によって成形することで、一対の部分円筒中間材14Yを溶着する。結果、プレート材100を製造できる。分断線14Xによって、筒状中間材14の内部の空気を逃がしやすいので、プレート材100の内部に気泡が残存しにくくなる。また、
図16(C)に示すように、一対の部分円筒中間材14Yの各々を、板状成形装置60によって別々に成形することで、プレート材100を生成することもできる。
【0116】
なお、ここでは筒状成形機10を利用してプレート材100を製造する場合を例示したが、本発明はこれに限定されない。例えば
図17(A)に示すように、一対の金型62A,62B内に、プレート材100に相当する内部空洞を形成しておき、
図17(B)に示すように、特に図示しない射出成形機によって、この内部空洞に樹脂を注入して冷却固化させ、
図17(C)に示すように、単層構造のプレート材102を製造することもできる。
【0117】
更に
図18に示すように、Tダイ法による押出成形装置(図示省略)や金属ローラを用いたカレンダリング装置(図示省略)によって、広幅の帯状シートYを製造した後、任意のピンチローラ220を経て、裁断用の一対のローラ224によってダイス状に成形及びカットすることもできる。裁断用の一対のローラ224のそれぞれには、格子状に複数の凹部230が形成される。また、一方のピンチローラ224の各凹部230には、更に、前歯側厚肉用凹部230Cが形成される。結果、帯状シートYから連続的に多数のプレート材102を製造できる。
【0118】
次に、
図1で示した本実施形態に係るプレート材100の変形例について説明する。ここでは、
図1のプレート材100と異なる点を中心に説明する。
【0119】
図19(A)及び(B)に示すプレート材100では、前歯側厚肉部800が、横幅方向Wに延びる直線状の帯状領域となっている。この前歯側厚肉部800を、歯型模型700の前歯の先端の外側に位置調整しながら、歯カバー具を製作することができる。
【0120】
図19(C)及び(D)に示すプレート材100では、前歯側厚肉部800が、前歯側薄肉部810に対するU字形状の境界線715を基線として、プレート材100の面方向外側(周縁側)かつ基線に対して直角方向Mに、1.5mm以上の範囲に広範囲に延在する。従って、歯カバー具を製作する際に、この前歯側厚肉部800と歯型模型700の前歯の先端の位置調整の自由度を高めることが出来る。
【0121】
図19(E)及び(F)に示すプレート材100では、被挟持部880の厚みを基準として厚肉状態となる凸領域900に、前歯側厚肉部800が形成される。一方で、被挟持部880の厚みを基準として薄肉状態となる凹領域910に、前歯側薄肉部810が形成される。この際、前歯側厚肉部800と前歯側厚肉部800との厚みの差は0.3mm以上となっており、好ましくは0.5mm以上に設定される。なおここでは、臼歯側薄肉部820は、被挟持部880の厚みと同じに設定される場合を例示したが、臼歯側薄肉部820を凹領域900又は凸領域910として形成しても良い。
【0122】
図20(A)及び(B)に示すプレート材100は、被挟持部880と前歯側厚肉部800が同じ肉厚となっている。一方、被挟持部880の厚みを基準として薄肉状態となる凹領域910に対して、前歯側薄肉部810及び臼歯側薄肉部820を配置している。この凹領域910は、被挟持部880と前歯側厚肉部800を連ねる範囲に広がっている。
【0123】
図20(C)及び(D)に示すプレート材100では、両面に凸領域900が形成されており、この双方の凸領域900を利用して、前歯側厚肉部800が形成されている。
【0124】
なお、以上で示した本発明の実施形態では、プレート材が方形となる場合を例示したが、本発明はこれに限定されず、三角形、五角形以上の多角形、円形や楕円形など、様々な形状を採用し得る。
【0125】
尚、本発明は、上記した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0126】
1 プレート材製造装置
10 筒状成形機
14 筒状中間材(パリソン)
14Y 部分円筒中間材
36 環状流路(環状スリット)
36 合流部
36 環状スリット
38 共通筒状流路
39 環状スリット
40 中子
47 エア流路
50 肉厚制御装置
60 板状成形装置
62A,62B 金型
64A,64B 直動機構
65 台座
66 移動機構
67 基台
68A,68B 凹部
69A,69B 縁部
80 切断装置
100、101、102、103、104、105、106A、106B、107A、107B 歯カバー具用プレート材
100H 高強度領域
100L 低強度領域
108A 前歯相当領域
108B 奥歯相当領域
110 第1層
111 溶着面
120 第2層
180 はみ出し材
220、222、224 ピンチローラ
230 凹部
250 カッター
500 歯カバー具
600 歯カバー具製造装置