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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022052811
(43)【公開日】2022-04-05
(54)【発明の名称】難燃性ポリプロピレン系樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 23/14 20060101AFI20220329BHJP
   C08K 3/22 20060101ALI20220329BHJP
   C08K 5/101 20060101ALI20220329BHJP
   C08K 5/3492 20060101ALI20220329BHJP
   C08K 5/521 20060101ALI20220329BHJP
【FI】
C08L23/14
C08K3/22
C08K5/101
C08K5/3492
C08K5/521
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020159270
(22)【出願日】2020-09-24
(71)【出願人】
【識別番号】390010674
【氏名又は名称】理研ビタミン株式会社
(72)【発明者】
【氏名】澁谷 航太
(72)【発明者】
【氏名】稲垣 啓介
【テーマコード(参考)】
4J002
【Fターム(参考)】
4J002BB121
4J002BB141
4J002BB151
4J002BB161
4J002DE128
4J002EB046
4J002EB137
4J002EH077
4J002EU187
4J002EW056
4J002FD137
4J002FD138
4J002GL00
4J002GM00
4J002GN00
4J002GQ00
(57)【要約】
【課題】耐熱性に優れ、かつ成形品が良好な難燃性、耐ブリード性及び表面光沢を有する難燃性ポリプロピレン系樹脂組成物を提供すること。
【解決手段】(A)ポリプロピレン系樹脂、(B)トリス(臭素化ネオペンチル)ホスフェート、(C)融点又は軟化点が200~250℃である有機系難燃剤及び(D)三酸化アンチモンを含有し、(A)100質量部に対し、(B)と(C)の合計含有量が1~30質量部であり、かつ(B)と(C)の質量比(B/C)が1.5~4であり、かつ(D)の含有量が0.5~10質量部である難燃性ポリプロピレン系樹脂組成物。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)ポリプロピレン系樹脂、
(B)トリス(臭素化ネオペンチル)ホスフェート、
(C)融点又は軟化点が200~250℃である有機系難燃剤及び
(D)三酸化アンチモン
を含有し、(A)100質量部に対し、(B)と(C)の合計含有量が1~30質量部であり、かつ(B)と(C)の質量比(B/C)が1.5~4であり、かつ(D)の含有量が0.5~10質量部である難燃性ポリプロピレン系樹脂組成物。
【請求項2】
(C)が、2,4,6-トリス(トリブロモフェノキシ)トリアジン及び/又はポリ(ペンタブロモベンジルアクリレート)である請求項1に記載の難燃性ポリプロピレン系樹脂組成物。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の難燃性ポリプロピレン系樹脂組成物を含有するポリプロピレン系樹脂組成物。
【請求項4】
請求項3に記載のポリプロピレン系樹脂組成物から成形された成形品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、難燃性ポリプロピレン系樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリプロピレン系樹脂は、幅広い分野で使用される汎用樹脂である。しかし、着火しやすい、燃えやすいという欠点を有するため、使用の際には難燃化が施されることがある。特に電材部品、自動車部品、建材等に使用される際には、火災への安全性のために、ますます高度の難燃化が要求される傾向にある。このため、種々の難燃化の工夫がなされている。
【0003】
難燃化にあたっては、ポリプロピレン系樹脂は、他の樹脂に比べても難燃性が著しく低いため、主に臭素系難燃剤による難燃化が行われている。特に難燃化効果が高いものとしてはデカブロモジフェニルオキシドが存在するが、これを配合した樹脂からダイオキシンが発生するといった報告がなされてから、海外を中心として使用制限が進められており、現在は臭素化ビスフェノールA誘導体、臭素化ビスフェノールS誘導体、臭素化イソシアヌレート誘導体等が用いられる場合が多い。また、今日では、高い難燃性はもちろんのこと、その他の性能要求も同時に満たすことが求められている。例えば、日用品、食品容器、家電製品、住宅設備用品、自動車部品等の各種用途に用いられる際には、成形品の色、表面光沢性が良好に保たれることは特に重要である。しかし、難燃剤を添加した際、その種類によっては表面光沢が失われ、成形加工時に難燃剤の分解による焼けが起こり、変色が発生する等が問題となることが多い。
【0004】
従来技術として、ポリオレフィン100重量部に対し、トリス(臭素化ネオペンチル)ホスフェート0.1~50重量部、三酸化アンチモン0.05~20重量部、ヒンダードアミン系化合物0.01~5重量部が配合されてなる難燃性樹脂組成物(特許文献1)、ポリオレフィン系樹脂100重量部、テトラブロモビスフェノールAのビス(2,3-ジブロモプロピル)エーテルと、テトラブロモビスフェノールSのビス(2,3-ジブロモプロピル)エーテル又はトリス(2,3-ジブロモプロピル)イソシアヌレートとの混合物1~30重量部、酸化アンチモン0.5~20重量部及びハイドロタルサイト類0.05~2重量部からなり、テトラブロモビスフェノールAのビス(2,3-ジブロモプロピル)エーテルとテトラブロモビスフェノールSのビス(2,3-ジブロモプロピル)エーテルとの混合比又はテトラブロモビスフェノールAのビス(2,3-ジブロモプロピル)エーテルとトリス(2,3-ジブロモプロピル)イソシアヌレートとの混合比が重量比で1:9~9:1である難燃性樹脂組成物(特許文献2)等が開示されているが、その効果は必ずしも十分とはいえない。また、これらの従来技術には、表面光沢性に関する効果は開示されておらず、難燃性、耐熱性、耐ブリード性に加え、表面光沢性に優れた樹脂組成物に関する技術が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平6-136188号公報
【特許文献2】特開平11-158329号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、耐熱性に優れ、かつ成形品が良好な難燃性、耐ブリード性及び表面光沢を有する難燃性ポリプロピレン系樹脂組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、前記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、ポリプロピレン系樹脂に対し、特定の有機系難燃剤、アンチモン系化合物を配合することにより、前記課題を解決することを見出した。本発明者らは、これらの知見に基づきさらに研究を重ね、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は以下の構成からなる。
(1)
(A)ポリプロピレン系樹脂、
(B)トリス(臭素化ネオペンチル)ホスフェート、
(C)融点又は軟化点が200~250℃である有機系難燃剤及び
(D)三酸化アンチモン
を含有し、(A)100質量部に対し(B)と(C)の合計含有量が1~30質量部であり、かつ(B)と(C)の質量比(B/C)が1.5~4であり、かつ(A)100質量部に対し(D)の含有量が0.5~10質量部である難燃性ポリプロピレン系樹脂組成物。
(2)(C)が、2,4,6-トリス(トリブロモフェノキシ)トリアジン及び/又はポリ(ペンタブロモベンジルアクリレート)である(1)に記載の難燃性ポリプロピレン系樹脂組成物。
(3)(1)又は(2)に記載の難燃性ポリプロピレン系樹脂組成物を含有するポリプロピレン系樹脂組成物。
(4)(3)に記載のポリプロピレン系樹脂組成物から成形された成形品。
【発明の効果】
【0009】
本発明の難燃性ポリプロピレン系樹脂組成物は、優れた耐熱性を有し、かつ成形品が良好な難燃性、耐ブリード性及び表面光沢を有する。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の難燃性ポリプロピレン系樹脂組成物に用いられる(A)ポリプロピレン系樹脂(以下、「A成分」ともいう。)は、例えば、プロピレンの単独重合体、プロピレンとエチレン、ブテン-1等のプロピレン以外のα-オレフィンとのブロック共重合体、ランダム共重合体、グラフト共重合体等の共重合体を挙げることができ、これら重合体のうち任意の2種以上の混合物からなる樹脂であってもよい。更に、例えば、エチレン-プロピレン共重合体ゴム、エチレン-プロピレン-非共役ジエン共重合体ゴム等の各種合成ゴム、ポリブタジエン、ポリイソプレン、塩素化ポリエチレン、塩素化ポリプロピレン、スチレン-エチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体(SEBS)、スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体(SBS)等を含有させたポリプロピレン系樹脂も本発明で用いられるA成分に含まれる。
【0011】
本発明の難燃性ポリプロピレン系樹脂組成物に用いられる(B)トリス(臭素化ネオペンチル)ホスフェート(以下、「B成分」ともいう。)は、臭素含有リン酸エステル化合物の1種であり、例えば、トリス(モノブロモネオペンチル)ホスフェート、トリス(ジブロモネオペンチル)ホスフェート、トリス(トリブロモネオペンチル)ホスフェート等を挙げることができ、その中でもトリス(トリブロモネオペンチル)ホスフェートが好ましい。
【0012】
B成分は、樹脂用難燃剤として広く市販されており、具体的な例としてCR-900(商品名;大八化学工業社製)、FR-370(商品名;ICL JAPAN社製)等が挙げられ、本発明ではこれらを用いることができる。
【0013】
本発明の難燃性ポリプロピレン系樹脂組成物に用いられる(C)融点又は軟化点が200~250℃である有機系難燃剤(以下、「C成分」ともいう。)は、融点又は軟化点が200~250℃であり、205~240℃が好ましい。融点又は軟化点が200~250℃であると、融点の低いB成分のブリードを良好に抑制しつつ、優れた耐熱性を発揮することができ、さらに、ポリプロピレン系樹脂の加工温度で当該樹脂中に良好に分散させることができるため、成形品に対して優れた表面光沢を発揮することができる。なお、融点及び軟化点は、メーカーが公表している値を採用することができる。
【0014】
本発明の難燃性ポリプロピレン系樹脂組成物に用いられるC成分は、融点又は軟化点が200~250℃である有機化合物から構成された難燃剤であれば、特に制限はなく、例えば、ハロゲン系難燃剤、リン系難燃剤、窒素系難燃剤等の種々の有機系難燃剤を挙げることができ、ハロゲン系難燃剤が難燃性能や入手の容易さの点で好ましく、中でも臭素系難燃剤がより好ましい。臭素系難燃剤としては、ビス(2,4,6-トリブロモフェノキシ)エタン、ポリ(ペンタブロモベンジルアクリレート)、ポリブロモフェニレンエーテル、臭素化ポリスチレン、2,4,6-トリス(トリブロモフェノキシ)トリアジン等が挙げられ、これらの中でも、2,4,6-トリス(トリブロモフェノキシ)トリアジン、ポリ(ペンタブロモベンジルアクリレート)が特に好ましい。C成分は、単独又は2種以上を併用して用いることができる。
【0015】
2,4,6-トリス(トリブロモフェノキシ)トリアジンは、樹脂用難燃剤として広く市販されているものであり、具体的な例としてピロガードSR-245(商品名;融点232℃;第一工業製薬社製)、FR-245(商品名;融点230℃;ICL JAPAN社製)等が挙げられ、本発明ではこれらを用いることができる。
【0016】
ポリ(ペンタブロモベンジルアクリレート)は、樹脂用難燃剤として広く市販されているものであり、具体的な例としてFR-1025(商品名;軟化点205~215℃;ICL JAPAN社製)等が挙げられ、本発明ではこれを用いることができる。
【0017】
本発明の難燃性ポリプロピレン系樹脂組成物に用いられるポリプロピレン系樹脂(A成分)100質量部に対するトリス(臭素化ネオペンチル)ホスフェート(B成分)と融点又は軟化点が200~250℃である有機系難燃剤(C成分)の合計含有量は、1~30質量部、好ましくは2~15質量部である。合計含有量が1~30質量部であると、ポリプロピレン系樹脂に均一に分散させることができるため、優れた耐熱性を有し、成形品の焼けの発生を良好に抑制することができる。また、成形品の難燃性及び耐ブリード性の向上やシルバーストリークの抑制による表面光沢の向上も図ることができる。
【0018】
更に、B成分とC成分の質量比(B/C)は、1.5~4、好ましくは1.8~3である。質量比(B/C)が1.5~4であると、耐熱性効果に加え、成形品の良好な難燃性効果、十分なブリード抑制効果を得ることができる。
【0019】
本発明の難燃性ポリプロピレン系樹脂組成物に用いられる(D)三酸化アンチモン(以下、「D成分」ともいう。)は、臭素系難燃剤と併用することによりポリプロピレン系樹脂組成物の難燃性を向上するという効果を発揮する。広く市販されているものであり、具体的な例としてPATOX-M(商品名;日本精鉱社製)、AT-3CN(商品名;鈴裕化学社製)が挙げられ、本発明ではこれらを用いることができる。
【0020】
本発明の難燃性ポリプロピレン系樹脂組成物に用いられるポリプロピレン系樹脂(A成分)100質量部に対する三酸化アンチモン(D成分)の含有量は、0.5~10質量部、好ましくは1~5質量部である。含有量が0.5~10質量部であると、良好な耐熱性効果が得られるため、成形品の焼けの発生を良好に抑制することができる。また、成形品の難燃性及び耐ブリード性の向上やシルバーストリークの抑制による表面光沢の向上も図ることができる。
【0021】
本発明の難燃性ポリプロピレン系樹脂組成物には、本発明の効果を阻害しない範囲で、B成分及びC成分以外の難燃剤も併用することができる。このような難燃剤としては、B成分及びC成分以外の難燃剤であれば、特に制限はなく、例えば、ハロゲン含有有機化合物、リン酸エステル、水和金属化合物、シリコーン化合物等が挙げられる。B成分及びC成分以外の難燃剤は単独又は2種以上を併用して用いることができる。
【0022】
ハロゲン含有有機化合物としては、例えば、テトラブロムビスフェノール-A-ビス(2,3-ジブロモプロピルエーテル)、テトラブロムビスフェノール-S-ビス(2,3-ジブロモプロピルエーテル)、ヘキサブロモシクロドデカン、テトラブロモシクロオクタン、ビス(ペンタブロモフェニル)エタン、ヘキサブロモベンゼン、トリス(2,3-ジブロモプロピル)イソシアヌレート、トリブロモフェノール、トリブロモフェニルアリルエーテル、トリブロモネオペンチルアルコール、テトラブロムビスフェノール-A、テトラブロムビスフェノール-S、テトラブロムビスフェノール-A-ビス(2-ヒドロキシエチルエーテル)、テトラブロムビスフェノール-A-ジアリルエーテル、デカブロモジフェニルオキサイド、エチレンビステトラブロモフタルイミド、塩素化パラフィン、クロレンド酸、デクロラン類等が挙げられる。
【0023】
リン酸エステルとしては、例えば、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、ジフェニル-クレジルホスフェート、レゾルシノール-ビス(ジフェニル)ホスフェート、ビスフェノール-A-ビス(ジフェニル)ホスフェート、レゾルシノール-ビス(ジ-2,6-キシレニル)ホスフェート等が挙げられる。水和金属化合物としては、例えば、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム等が挙げられる。
【0024】
本発明の難燃性ポリプロピレン系樹脂組成物には、本発明の効果を阻害しない範囲で、撥水性を付与する成分も併用することができる。例えば、シリコーンオイル、ポリオルガノシロキサン変性ポリプロピレン等が挙げられる。これらは単独又は2種以上を併用して用いることができる。シリコーンオイルとしては、例えば、ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、オルガノポリシロキサン、ポリフェニルメチルシロキサン、ポリアルキルフェニルシロキサン、ポリアルキル変性シロキサン、ポリエーテル変性シロキサン、ポリ脂肪酸エステル変性シロキサン等が挙げられる。
【0025】
ポリオルガノシロキサン変性ポリプロピレンは、ポリプロピレン系樹脂、及び1分子中に少なくとも1個のケイ素原子結合ラジカル重合性官能基を含有するポリオルガノシロキサンが、化学的に結合(グラフト化)したものである。グラフトするポリオルガノシロキサンの成分骨格に制限はなく、ジメチルシロキサン、オルガノシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、メチルハイドロジエンポリエイロキサン、両末端トリメチルシロキシ基封鎖ポリメチルビニルシロキサン、両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルヘキセニル共重合体等が挙げられ、これらの混合物でもよい。
【0026】
本発明の難燃性ポリプロピレン系樹脂組成物には、その他の添加剤として、金属セッケン、グリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル等の分散剤、ヒンダードフェノール系、亜リン酸エステル系等の酸化防止剤、ジグリシジルビスフェノールA、トリスグリシジルイソシアヌレート等のエポキシ化合物、有機スズ化合物、ハイドロタルサイト、ゼオライト等の熱安定剤、ベンゾトリアゾール系等の紫外線吸収剤、ベンゾエート系、ヒンダードアミン系等の紫外線安定化剤、ガラス繊維、カーボン繊維等の耐衝撃改良剤、酸化チタン、カーボンブラック等の着色剤、タルク、アエロジル等の充填剤、ベンジリデンソルビトール系、有機酸アルミニウム塩系等の結晶核剤、ポリエーテル系、界面活性剤等の帯電防止剤、アゾジカルボンアミド、炭酸ナトリウム等の発泡剤、相溶化剤等を配合しても良い。これらその他の添加剤は、単独又は2種以上を併用して用いることができる
【0027】
本発明の難燃性ポリプロピレン系樹脂組成物は、(A)ポリプロピレン系樹脂、(B)トリス(臭素化ネオペンチル)ホスフェート、(C)融点又は軟化点が200~250℃である有機系難燃剤、(D)三酸化アンチモンを公知の混練機を用いて加熱混練することで得られる。
【0028】
混練機としては、例えば、バンバリーミキサー、ニーダー、単軸押出機、二軸押出機等を用いることができる。中でも、生産性、混練力等を考慮した場合、二軸押出機が好適である。二軸押出機には、二軸異方向回転非噛み合わせ型押出機、二軸異方向回転噛み合わせ型押出機、二軸同方向回転非噛み合わせ型押出機、二軸同方向回転噛み合わせ型押出機等があり、いずれも好適に用いることができるが、混練力や生産性の観点から二軸同方向回転噛み合わせ型押出機を用いることがより好ましい。
【0029】
混練する際の加熱温度としては、A成分が溶融する温度以上であり、かつA成分や配合した各成分が劣化しない程度の温度範囲であれば、特に制限はなく、例えば、180~230℃の範囲である。当該温度範囲における加熱混練する時間は、使用する混練機、加熱条件等により異なるが、例えば、混練機として二軸押出機を用いる場合、好ましくは0.5~30分間、より好ましくは1~5分間である。また、A~D成分それぞれの加熱混練する際の添加時期に特に制限はなく、均一に混練されればよい。
【0030】
本発明の難燃性ポリプロピレン系樹脂組成物を含有するポリプロピレン系樹脂組成物も本発明の形態の1つである。当該ポリプロピレン系樹脂組成物は、本発明の難燃性ポリプロピレン系樹脂組成物そのものであってもよく、本発明の難燃性ポリプロピレン系樹脂組成物に、更にポリプロピレン系樹脂等を加えて、加熱混錬等をすることにより得られたものであってもよい。
【0031】
本発明の難燃性ポリプロピレン系樹脂組成物を含有するポリプロピレン系樹脂組成物から成形された成形品も本発明の形態の1つである。本発明の難燃性ポリプロピレン系樹脂組成物を含有するポリプロピレン系樹脂組成物は、押出成形、射出成形、ブロー成形、シート成形等の種々の成形手段に供して任意の形状の成形品として使用することができる。これら成形品の用途としては、例えば、自動車材料、家電材料、住宅設備材料、OA機器材料、食品容器、農業用資材、建材、排水設備、トイレタリー材料、各種タンク、コンテナー、シート等が挙げられる。
【0032】
自動車材料としては、例えば、ドアトリム、ピラー、インストルメンタルパネル、コンソール、ロッカーパネル、アームレスト、ドアインナーパネル、スペアタイヤカバー、トランクマット等の内装部品、バンパー、スポイラー、フェンダー、サイドステップ、ドアアウターパネル等の外装部品等が挙げられる。
【0033】
家電材料としては、例えば、洗濯機用材料(外槽、内槽、蓋、パルセータ、バランサー、洗濯パン等)、乾燥機用材料(外装、内箱、蓋等)、掃除機用材料、炊飯器用材料、ポット用材料、保温機用材料、食器洗浄機用材料、空気清浄機用材料等が挙げられる。
【0034】
住宅設備材料としては、例えば、キッチン用材料、トイレ用材料、風呂用材料等が挙げられる。
【0035】
以下に本発明を実施例で説明するが、これは本発明を単に説明するだけのものであって、本発明を限定するものではない。
【実施例0036】
<難燃性ポリプロピレン系樹脂組成物及びその成形品の作製>
(1)原材料
A成分:ポリプロピレン系樹脂
A-1:ノバテックPP BC03C(商品名;ブロックポリプロピレン;MI=30;日本ポリプロ社製)
B成分:トリス(臭素化ネオペンチル)ホスフェート
B-1:CR-900(商品名;トリス(トリブロモネオペンチル)ホスフェート;融点180℃;大八化学工業社製)
C成分:融点又は軟化点が200~250℃である有機系難燃剤
C-1:ピロガードSR-245(商品名;2,4,6-トリス(トリブロモフェノキシ)トリアジン;融点232℃;第一工業製薬社製)
C-2:FR-1025(商品名;ポリ(ペンタブロモベンジルアクリレート);軟化点205~215℃;ICL JAPAN社製)
D成分:三酸化アンチモン
D-1:AT-3CN(商品名;三酸化アンチモン;鈴裕化学社製)
E成分:融点又は軟化点が200~250℃以外の有機系難燃剤
E-1:FR-1210(商品名;デカブロモジフェニルオキサイド;融点295℃;ICL JAPAN社製)
E-2:SAYTEX BT-93/W(商品名;エチレンビステトラブロモフタルイミド;融点456℃;アルベマール社製)
E-3:ピロガード720N(商品名;テトラブロムビスフェノール-A-ビス(2,3-ジブロモプロピルエーテル);融点110℃;第一工業製薬社製)
E-4:SAYTEX HP-900(商品名;ヘキサブロモシクロドデカン;融点180℃;アルベマール社製)
【0037】
(2)難燃性ポリプロピレン系樹脂組成物の作製
A-1を1kgとして、下記表1に記載の組成のとおり、所定量のB成分、C成分、D成分、E成分をそれぞれ秤量した。ストランドダイを設置し、バレル(C1~C6 H/D)温度を100~220℃(C1=100℃ C2=190℃ C3~C6=220℃ H/D=210℃)、スクリュー回転数300rpmに設定した二軸同方向回転噛み合わせ型押出機(型式:MFU15TW-45MG-NH;スクリュー直径=15mm L/D=45;テクノベル社製)の原料投入口から原材料を添加後、バレルC2からH/D通過までの時間が3分間になるよう混錬し、押し出されたストランドを水で冷却した後にペレタイザーを用いてカットし、ペレット状の難燃性ポリプロピレン系樹脂組成物(実施例1~9、比較例1~11)をそれぞれ作製した。
【0038】
【表1】
【0039】
(3)難燃性ポリプロピレン系樹脂組成物成形品の作製
得られた難燃性ポリプロピレン系樹脂組成物(実施例1~9、比較例1~11)それぞれを射出成型機(型式:IS-55EPN;東芝社製)を用い、バレル温度220℃、金型温度40℃で射出成型して難燃性評価用試験片(縦125mm×横13mm×厚さ3mm)である難燃性ポリプロピレン系樹脂組成物成形品をそれぞれ作製した。また、同条件にて金型を変更して、各種評価用平板(縦80mm×横1000mm×厚さ2mm)である難燃性ポリプロピレン系樹脂組成物成形品をそれぞれ作製した。ただし、比較例4の難燃性ポリプロピレン系樹脂組成物は、B成分とC成分の合計含有量が多く、これらをポリプロピレン系樹脂に均一に分散させることができなかったため、成形品を作製することができなかった。
【0040】
<性能評価>
(1)耐熱性の評価
得られた各種評価用平板を縦15mm×横20mmの大きさに裁断し、200℃に熱した金属板に挟み、1.5MPaでプレスしながら2分間加熱したものを耐熱性試験前プレスシートとし、180分間加熱したものを耐熱性試験後プレスシートとしてそれぞれ作製した。得られた耐熱性試験前後のプレスシートにつき、分光色差計(型式:SE-7700;日本電色工業社製)を用い、HUNTERの色差式に基づき、耐熱性試験前プレスシートと耐熱性試験後プレスシートの色差ΔEを測定し、以下基準で評価した。色差ΔEの値が小さいほど、加熱による変色が少なく、樹脂組成物の耐熱性が高いことを表しており、「◎」及び「○」を本発明の効果を満足するものとした。
◎:ΔE=2.5未満
○:ΔE=2.5以上5.0未満
△:ΔE=5.0以上7.5未満
×:ΔE=7.5以上
【0041】
(2)難燃性の評価
得られた難燃性評価用試験片を用いてUL-94Vの耐炎性試験に準じてそれぞれ難燃性の評価を行った。本発明の効果を満足する良好な難燃性を示すものを「V2~V0」で表し、数字部分が小さいほど難燃性が高いことを表している。難燃性を示さないものを「notV」で表した。
【0042】
(3)耐ブリード性の評価
得られた各種評価用平板を50℃の恒温器で1週間静置し、難燃剤の耐ブリード性試験を実施した。評価は以下の基準にて、目視で実施した。
○:ブリード物が見られない
×:ブリード物が見られる
【0043】
(4)表面光沢の評価
得られた各種評価用平板につき、ハンディ型光沢計(型式:PG-2M;日本電色工業社製)を用い、JIS-Z8741に基づいて光沢度を測定した。測定入射角は60°とした。光沢度が70以上のものを本発明の効果を満足するものとした。
【0044】
難燃性ポリプロピレン系樹脂組成物(実施例1~9、比較例1~3、5~11)それぞれの耐熱性、成形品それぞれの難燃性、耐ブリード性及び表面光沢の評価結果を表2に示す。
【0045】
【表2】
【0046】
以上の結果より、本発明の難燃性ポリプロピレン系樹脂組成物(実施例1~9)は耐熱性を有し、成形品が難燃性、耐ブリード性及び表面光沢全ての効果を発揮しているのに対し、比較例1~3、5~11はこれら全ての効果を発揮しているものがないことが分かった。また、これら全ての効果を発揮するためには、質量比(B/C)が1.5~4の範囲内である必要があること、及びB成分と併用する有機系難燃剤の融点又は軟化点が200~250℃の範囲内である必要があることが分かった。