(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022052829
(43)【公開日】2022-04-05
(54)【発明の名称】コンクリート構造物
(51)【国際特許分類】
H04R 1/06 20060101AFI20220329BHJP
【FI】
H04R1/06 330
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020159298
(22)【出願日】2020-09-24
(71)【出願人】
【識別番号】304000836
【氏名又は名称】学校法人 名古屋電気学園
(71)【出願人】
【識別番号】000243364
【氏名又は名称】本多電子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114605
【弁理士】
【氏名又は名称】渥美 久彦
(72)【発明者】
【氏名】津田 紀生
(72)【発明者】
【氏名】岩月 栄治
(72)【発明者】
【氏名】小塚 晃透
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 正典
(72)【発明者】
【氏名】本多 祐二
(72)【発明者】
【氏名】疋田 智美
【テーマコード(参考)】
5D019
【Fターム(参考)】
5D019EE05
5D019FF05
5D019GG09
(57)【要約】
【課題】自身が発生するノイズがなく、かつ超音波振動子を長期に亘って使用することができるコンクリート構造物を提供すること。
【解決手段】本発明のコンクリート構造物10は、超音波S1を受信する超音波振動子31と、超音波振動子31に電力を供給する太陽電池41とを備える。また、コンクリート構造物10は、超音波振動子31と太陽電池41とを一体化した構造の超音波センサユニット20を備える。超音波センサユニット20は、太陽電池41の受光面42がコンクリート構造物10の外方にて露出しかつ超音波振動子31の受信面がコンクリート構造物10に接する状態で、少なくとも超音波振動子31の一部がコンクリート構造物10に埋設される。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
超音波を受信する超音波振動子と、前記超音波振動子に電力を供給する太陽電池とを備えるコンクリート構造物であって、
前記超音波振動子と前記太陽電池とを一体化した構造の超音波センサユニットを備え、
前記太陽電池の受光面が前記コンクリート構造物の外方にて露出しかつ前記超音波振動子の受信面が前記コンクリート構造物に接する状態で、前記超音波センサユニットにおける少なくとも前記超音波振動子の一部が前記コンクリート構造物に埋設されている
ことを特徴とするコンクリート構造物。
【請求項2】
前記超音波振動子と前記太陽電池とは重ねて配置されていることを特徴とする請求項1に記載のコンクリート構造物。
【請求項3】
前記超音波センサユニットを前記超音波振動子と前記太陽電池とが重なり合う方向から見たときに、前記太陽電池の投影面積が前記超音波振動子の投影面積よりも大きいことを特徴とする請求項2に記載のコンクリート構造物。
【請求項4】
前記超音波センサユニットの全体が前記コンクリート構造物に埋設されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のコンクリート構造物。
【請求項5】
前記コンクリート構造物はコンクリート電柱であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載のコンクリート構造物。
【請求項6】
前記超音波センサユニットは、前記超音波振動子によるセンシング結果を外部機器に出力する無線通信回路をさらに備えることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載のコンクリート構造物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波を受信する超音波振動子を備えるコンクリート構造物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、非破壊検査の一種として、コンクリート電柱等のコンクリート構造物の表面を木槌やゴムハンマー等で叩き、発生した打音の高さによってコンクリート構造物の状態(健常性)を把握する打音検査が行われている(例えば、非特許文献1参照)。しかしながら、打音検査に慣れた熟練の作業者であれば、打音を正確に聞き分けることができるものの、打音検査に慣れていない作業者が打音を聞き分けることは困難である。そこで、コンクリート構造物に超音波振動子等のセンサを設ける技術が従来提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-178879号公報(請求項1,4、段落[0012],[0014]、
図1~
図3等)
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】株式会社ダイム ホームページ、[令和2年8月18日検索]、インターネットURL:http://www.di-me.co.jp/technology02.html
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、センサが超音波振動子である場合、超音波振動子を駆動させるためには電源が必要である。電源としては、例えば電池を用いることが考えられるが、電池切れとなる度に交換しなければならないという問題がある。また、電源として外部電源を用いることも考えられるが、この場合には、外部電源を別途準備しなければならない。つまり、電源として電池や外部電源を用いる場合には、メンテナンスが大変であるため、超音波振動子を長期に亘って使用することが困難である。さらに、電源として発電装置を用いることも考えられるが、例えば風力を用いた発電装置である場合には、超音波振動子が風力発電用のモータやプロペラ等の振動をノイズとして受信してしまう可能性がある。
【0006】
本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、自身が発生するノイズがなく、かつ超音波振動子を長期に亘って使用することができるコンクリート構造物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、超音波を受信する超音波振動子と、前記超音波振動子に電力を供給する太陽電池とを備えるコンクリート構造物であって、前記超音波振動子と前記太陽電池とを一体化した構造の超音波センサユニットを備え、前記太陽電池の受光面が前記コンクリート構造物の外方にて露出しかつ前記超音波振動子の受信面が前記コンクリート構造物に接する状態で、前記超音波センサユニットにおける少なくとも前記超音波振動子の一部が前記コンクリート構造物に埋設されていることを特徴とするコンクリート構造物をその要旨とする。
【0008】
請求項1に記載の発明によれば、超音波振動子に電力を供給する電源として、電池切れが発生しない太陽電池が用いられている。また、超音波振動子に対して太陽電池を一体化した構造の超音波センサユニットがコンクリート構造物に埋設されているため、超音波振動子の電源を別途準備しなくても済む。従って、超音波振動子をメンテナンスフリーで長期に亘って使用することができる。ゆえに、超音波振動子を、例えば数か月ごとに実施される打音検査等に利用することができる。しかも、請求項1に記載の発明では、発電時に振動を発生しない太陽電池から超音波振動子に電力を供給するため、超音波振動子が打音とは関係ないノイズを拾いにくい。
【0009】
しかも、請求項1では、超音波センサユニットにおける少なくとも超音波振動子の一部がコンクリート構造物に埋設されている。その結果、コンクリート構造物の表面を木槌やゴムハンマー等で叩く打音検査を行う際に、超音波振動子によって打音を直接的に受信できるため、超音波振動子の感度が高くなり、打音検査の検査精度が向上する。また、超音波振動子が「埋設」されているため、コンクリート構造物に対する超音波振動子の固定強度も高くなる。しかも、超音波センサユニットを埋設しない場合と比べて、コンクリート構造物の外側への超音波センサユニットの突出部分が少なくなるため、超音波センサユニットが邪魔になりにくい。また、太陽電池の破損等が起きにくくなる。但し、太陽電池の受光面は露出しているため、発電効率が低下することはない。
【0010】
ここで、コンクリート構造物としては、コンクリート電柱(請求項5)、コンクリート橋、トンネル、ビルディング、コンクリートダム、堤防などを挙げることができる。
【0011】
請求項2に記載の発明は、請求項1において、前記超音波振動子と前記太陽電池とは重ねて配置されていることをその要旨とする。
【0012】
例えば、超音波振動子と太陽電池とを平面方向に沿って横並びに配置する場合、超音波振動子の設置面積を確保するのに伴って太陽電池の設置面積が小さくなるため、太陽電池の発電能力が低下する傾向にある。そこで、太陽電池の設置面積を大きくして発電能力を増大させることも考えられるが、この場合には、超音波センサユニット全体が平面方向に大型化してしまう。一方、請求項2に記載の発明では、超音波振動子と太陽電池とが重ねて配置されている。この場合、超音波振動子が太陽電池とは別の層に配置されるため、超音波センサユニットの大型化を伴うことなく、太陽電池の設置面積を大きくすることができる。また、太陽電池が薄くて強度が比較的低いようなときでも、超音波振動子と太陽電池とが接する場合には、太陽電池を超音波振動子で補強することができる。
【0013】
請求項3に記載の発明は、請求項2において、前記超音波センサユニットを前記超音波振動子と前記太陽電池とが重なり合う方向から見たときに、前記太陽電池の投影面積が前記超音波振動子の投影面積よりも大きいことをその要旨とする。
【0014】
請求項3に記載の発明によれば、太陽電池の投影面積が超音波振動子の投影面積よりも大きくなることで、太陽電池の設置面積が大きくなるため、太陽電池の発電能力を向上させることができる。
【0015】
請求項4に記載の発明は、請求項1乃至3のいずれか1項において、前記超音波センサユニットの全体が前記コンクリート構造物に埋設されていることをその要旨とする。
【0016】
請求項4に記載の発明によれば、超音波センサユニットがコンクリート構造物の外側に突出しないため、超音波センサユニットが邪魔になることはない。また、太陽電池の破損等が起きにくくなる。
【0017】
請求項6に記載の発明は、請求項1乃至5のいずれか1項において、前記超音波センサユニットは、前記超音波振動子によるセンシング結果を外部機器に出力する無線通信回路をさらに備えることをその要旨とする。
【0018】
請求項6に記載の発明によれば、無線通信回路により、超音波振動子によるセンシング結果が外部機器に出力される。その結果、外部機器は、センシング結果に基づいて、コンクリート構造物が健常であるか否かを判定することができる。また、外部機器は、例えば「超音波の波形がどのような状態であればコンクリート構造物が健常であるか」等を、センシング結果に基づいて学習することもできる。
【発明の効果】
【0019】
以上詳述したように、請求項1~6に記載の発明によると、自身が発生するノイズがなく、かつ超音波振動子を長期に亘って使用することができるコンクリート構造物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本実施形態におけるコンクリート電柱を示す概略斜視図。
【
図2】コンクリート電柱及び超音波センサユニットを示す概略斜視図。
【
図4】他の実施形態におけるコンクリート電柱及び超音波センサユニットを示す概略斜視図。
【
図5】他の実施形態における超音波センサユニットを示す概略断面図。
【
図6】他の実施形態における超音波センサユニットを示す概略断面図。
【
図7】他の実施形態における超音波センサユニットを示す概略断面図。
【
図8】他の実施形態における超音波センサユニットを示す概略断面図。
【
図9】他の実施形態において、(a),(b)は超音波振動子の配置態様を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明を具体化した一実施形態を図面に基づき詳細に説明する。
【0022】
図1に示されるように、本実施形態のコンクリート電柱10(コンクリート構造物)には、超音波センサユニット20が埋設されている。超音波センサユニット20は、例えばコンクリート電柱10の頂部付近に配置される。
【0023】
また、
図2,
図3に示されるように、超音波センサユニット20は、超音波振動子31と太陽電池パネル41とを一体化した構造を有している。超音波振動子31は、打音検査において発生した打音に含まれている超音波S1を受信する。なお、打音とは、コンクリート電柱10の外周面11を木槌12(
図1参照)で叩くことによって発生した音である。また、超音波振動子31は、超音波センサユニット20を構成するケース21内に収容されている。ケース21は、例えばABS樹脂(アクリロニトリルブタジエンスチレン樹脂)などの樹脂材料を用いて一端が開口する有底円筒状に形成されている。なお、ケース21の開口部は、太陽電池パネル41によって閉塞される。
【0024】
また、超音波振動子31は、例えば、圧電セラミックスであるチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)を用いて形成された円板状のセラミックス製板状物である。超音波振動子31は、超音波S1を受信する受信面32と、受信面32の裏側にある非受信面33とを有している。また、超音波振動子31は、受信面32及び非受信面33の垂線L1がコンクリート電柱10の中心軸L0と直交するように配置されている。そして、超音波振動子31の受信面32は、接着剤層(図示略)を介してケース21の底板部22の内側面に接合され、底板部22の外側面はコンクリート電柱10に接触している。即ち、本実施形態では、受信面32が底板部22を介してコンクリート電柱10に接する状態で、超音波振動子31の全体、ひいては、超音波振動子31が収容されたケース21の全体がコンクリート電柱10に埋設されている。なお、底板部22は、音響整合層としての機能も有している。
【0025】
図1~
図3に示される太陽電池パネル41は、照射された太陽光を電力に変換し、変換した電力を超音波振動子31に供給する機能を有している。太陽電池パネル41は、正面視略矩形状の板状物である。また、太陽電池パネル41は、可撓性を有しており、コンクリート電柱10の外周面11に沿った湾曲形状をなしている。そして、太陽電池パネル41は、太陽光を受光する受光面42と、受光面42の裏側にある非受光面43とを有している。受光面42は、コンクリート電柱10の外方にて露出しており、外周面11と面一になっている。従って、本実施形態では、太陽電池パネル41の全体、ひいては、太陽電池パネル41とケース21(超音波振動子31)とを一体化した超音波センサユニット20の全体が、コンクリート電柱10に埋設されている。
【0026】
なお、
図2,
図3に示されるように、超音波振動子31及び太陽電池パネル41は重ねて配置されている。詳述すると、超音波センサユニット20を超音波振動子31と太陽電池パネル41とが重なり合う方向から見たときに、超音波振動子31の中心O1と太陽電池パネル41の中心O2とが一致するように配置されている。また、超音波振動子31と太陽電池パネル41とが重なり合う方向から見たときに、太陽電池パネル41の投影面積は、超音波振動子31の投影面積よりも大きくなっている。なお、超音波振動子31及び太陽電池パネル41は、互いに接しておらず、厚さ方向に離間している。
【0027】
そして、
図3に示されるように、ケース21内の開口部付近には基板51が収容されている。基板51の表面52には、蓄電池54が取り付けられている。蓄電池54は、太陽電池パネル41に対して電気的に接続されるとともに、超音波振動子31に対して電気的に接続されている。一方、基板51の裏面53には、導体パターン(図示略)が形成されている。そして、基板51の裏面53は、太陽電池パネル41の非受光面43に固定されている。なお、基板51は、太陽電池パネル41を補強する機能も有している。また、超音波振動子31と太陽電池パネル41と基板51とが重なり合う方向から見たときに、基板51の投影面積は、太陽電池パネル41の投影面積よりも小さく、かつ超音波振動子31の投影面積よりも大きくなっている。
【0028】
また、超音波センサユニット20は、無線通信回路61をさらに備えている。無線通信回路61は、基板51の表面52上に例えばチップコンデンサやトランジスタ等の電気部品62を実装することにより構成され、アンテナ63、RF回路(図示略)、ベースバンド回路(図示略)、送信回路(図示略)、センサ回路(図示略)等を備えている。センサ回路には超音波振動子31が電気的に接続されている。また、無線通信回路61、具体的には、基板51上のコネクタ(図示略)には、太陽電池パネル41がケーブル(図示略)を介して接続されている。そして、RF回路、ベースバンド回路、送信回路及びセンサ回路には、蓄電池54に蓄電された電力が供給されるようになっている。また、無線通信回路61は、超音波振動子31によるセンシング結果を示す超音波S1の受信信号を生成し、生成した受信信号を、アンテナ63を介して無線で外部機器(本実施形態では、
図1に示すパーソナルコンピュータ70)に送信(出力)する。なお、本実施形態の無線通信回路61は、受信信号を外部機器にそのまま送信しているが、受信信号を加工したうえで外部機器に送信してもよい。また、アンテナ63は、太陽電池パネル41に内蔵されており、太陽電池パネル41の外周部において面方向に沿って延びている。そして、アンテナ63は、基板51上のコネクタ64に対して同軸ケーブル65を介して接続されている。
【0029】
図1に示されるように、パーソナルコンピュータ70は、超音波センサユニット20の無線通信回路61から送信されたセンシング結果(超音波S1の受信信号)を内蔵している受信部(図示略)を介して受信可能なコンピュータである。また、パーソナルコンピュータ70は、キーボード72及びディスプレイ73を備えている。さらに、パーソナルコンピュータ70には、ハードディスクドライブ等の記憶装置(図示略)が設けられている。記憶装置には、正常な超音波S1のスペクトログラムを示すデータと、異常な超音波S1のスペクトログラムを示すデータとが予め記憶されている。なお、「正常な超音波S1のスペクトログラム」とは、コンクリート電柱10が「健常」である場合に打音検査を行うことにより得られる超音波S1のスペクトログラムを言う。また、「異常な超音波S1のスペクトログラム」とは、コンクリート電柱10が「異常」である場合に打音検査を行うことにより得られる超音波S1のスペクトログラムを言う。
【0030】
そして、パーソナルコンピュータ70のCPU(図示略)は、超音波S1の受信信号を受信した場合に、受信した受信信号を、記憶装置に記憶するようになっている。次に、CPUは、受信信号が示す超音波S1のスペクトログラムを、記憶装置に予め記憶されている正常及び異常な超音波S1のスペクトログラムと比較する。受信信号が示す超音波S1のスペクトログラムが正常なスペクトログラムにより近い場合、CPUは、コンクリート電柱10が「健常」であると判定する。一方、受信信号が示す超音波S1のスペクトログラムが、異常なスペクトログラムにより近い場合、CPUは、コンクリート電柱10に「異常」があると判定する。
【0031】
次に、コンクリート電柱10の検査方法を説明する。
【0032】
まず、超音波センサユニット20の太陽電池パネル41に太陽光が照射されると、太陽電池パネル41は、太陽光を電力に変換し、変換した電力を蓄電池54に蓄電する。なお、蓄電池54に蓄電されている電力は、常時超音波振動子31に供給される。これにより、超音波振動子31が駆動する。
【0033】
そして、木槌12を用いてコンクリート電柱10を叩くと、コンクリート電柱10内に打音が発生する(
図1参照)。発生した打音は、コンクリート電柱10内を伝搬し、打音に含まれている超音波S1が超音波振動子31に入力(受信)される。その後、無線通信回路61は、超音波振動子31によるセンシング結果を示す超音波S1の受信信号を生成し、生成した受信信号をパーソナルコンピュータ70に送信する。
【0034】
その後、パーソナルコンピュータ70のCPUは、受信信号が示す超音波S1のスペクトログラムを、パーソナルコンピュータ70の記憶装置に予め記憶されている正常及び異常な超音波S1のスペクトログラムと比較する。そして、受信信号が示す超音波S1のスペクトログラムが正常なスペクトログラムにより近い場合、CPUは、コンクリート電柱10が「健常」であると判定し、その旨をディスプレイ73に表示させる制御を行う。一方、受信信号が示す超音波S1のスペクトログラムが、異常なスペクトログラムにより近い場合、CPUは、コンクリート電柱10に「異常」があると判定し、その旨をディスプレイ73に表示させる制御を行う。
【0035】
従って、本実施形態によれば以下の効果を得ることができる。
【0036】
(1)本実施形態では、超音波振動子31に電力を供給する電源として、電池切れが発生しない太陽電池パネル41が用いられている。また、超音波振動子31に対して太陽電池パネル41を一体化した構造の超音波センサユニット20がコンクリート電柱10に埋設されているため、超音波振動子31の電源を別途準備しなくても済む。従って、超音波振動子31をメンテナンスフリーで長期に亘って使用することができる。ゆえに、超音波振動子31を、例えば数か月ごとに実施される打音検査等に利用することができる。しかも、本実施形態では、発電時に振動を発生しない太陽電池パネル41から超音波振動子31に電力を供給するため、超音波振動子31が打音とは関係ないノイズを拾いにくい。つまり、超音波振動子31によってコンクリート電柱10の健常性を正確に検知できるため、太陽電池パネル41は、超音波振動子31にとって相性の良い組み合わせであると言える。
【0037】
(2)本実施形態では、超音波センサユニット20の全体がコンクリート電柱10に埋設されている。この場合、超音波センサユニット20がコンクリート電柱10の外側に突出しないため、超音波センサユニット20が邪魔になることはない。また、本実施形態では、超音波振動子31がコンクリート電柱10に埋設されているため、コンクリート電柱10の外周面11を木槌12で叩く打音検査を行う際に、超音波振動子31によって打音を直接的に受信することができる。その結果、超音波振動子31の感度が高くなる。しかも、超音波振動子31が埋設されることで安定的に固定される。
【0038】
(3)例えば、超音波センサユニット20をコンクリート電柱10に外付けすることも考えられる。しかし、超音波センサユニット20を取り付けたままにしておくと、超音波センサユニット20の取付部材(バンド等)が劣化して破損するおそれがある。一方、本実施形態では、超音波センサユニット20がコンクリート電柱10に埋設されているため、上記の取付部材が不要である。よって、取付部材の破損に起因する問題が生じないため、超音波センサユニット20の信頼性を長期に亘って維持することができる。
【0039】
(4)特開平10-224896号公報に記載の従来技術には、超音波振動子と太陽電池とを平面方向に沿って横並びに配置する技術が開示されている。また、特許第6592377号公報に記載の従来技術には、超音波振動子である振動センサと太陽電池とを平面方向に沿って横並びに配置する技術が開示されている。しかし、これらの従来技術では、超音波振動子の設置面積を確保するのに伴って太陽電池の設置面積が小さくなるため、太陽電池の発電能力が低下する傾向にある。そこで、太陽電池の設置面積を大きくして発電能力を増大させることも考えられるが、この場合には、超音波センサユニット20全体が平面方向に大型化してしまう。一方、本実施形態では、超音波振動子31と太陽電池パネル41とが重ねて配置されている。この場合、超音波振動子31が太陽電池パネル41とは別の層に配置されるため、超音波センサユニット20の大型化を伴うことなく、太陽電池パネル41の設置面積を大きくすることができる。
【0040】
なお、上記実施形態を以下のように変更してもよい。
【0041】
・上記実施形態では、超音波センサユニット20の全体がコンクリート電柱10に埋設されていたが、超音波センサユニット20における少なくとも超音波振動子31の一部のみがコンクリート電柱10に埋設されていればよい。例えば、
図4に示されるように、超音波センサユニット80における超音波振動子81の全体がコンクリート電柱10に埋設され、超音波センサユニット80における太陽電池パネル82の全体がコンクリート電柱10の外側に突出していてもよい。この場合、太陽電池パネル82の角度を調整する機構を設けることができる(
図4参照)。その結果、太陽電池パネル82に太陽光が当たりやすくなるため、発電効率が向上する。また、上記実施形態の太陽電池パネル41は、コンクリート電柱10の外周面11に沿った湾曲形状をなしていたが、
図4に示すような平らな形状をなす太陽電池パネル82であってもよい。このようにすれば、太陽電池パネル82により太陽光が当たりやすくなるため、発電効率がよりいっそう向上する。また、湾曲形状をなす太陽電池パネル41よりも低コストの太陽電池パネル82を用いることができる。
【0042】
・上記実施形態では、超音波振動子31と太陽電池パネル41とが重ねて配置されるものの、両者は基板51を介して配置されていた。しかし、基板51を別の箇所に移動または省略したうえで、超音波振動子31と太陽電池パネル41とを接するように配置してもよい。この場合、太陽電池パネル41が薄くて強度が比較的低いようなときでも、太陽電池パネル41を超音波振動子31で補強することができる。
【0043】
・上記実施形態の超音波センサユニット20は、太陽電池パネル41に対して1つの超音波振動子31を一体化させることにより構成されていた。しかし、
図5,
図6に示されるように、超音波センサユニット90,100は、太陽電池パネル41に対して複数(ここでは2つ)の超音波振動子31を一体化させることにより構成されていてもよい。このようにすれば、使用していない超音波振動子31を、使用している超音波振動子31が故障等した際のバックアップとすることができる。
【0044】
・上記実施形態では、超音波振動子31の受信面32がケース21の底板部22を介してコンクリート電柱10に接する状態で、超音波振動子31がコンクリート電柱10に埋設されていた。しかし、
図7に示されるように、ケース21の外側面(
図7では下面)上に超音波振動子31を配置し、受信面32が直接コンクリート電柱10に接する状態で、超音波振動子31をコンクリート電柱10に埋設してもよい。このようにすれば、打音検査において、超音波振動子31によって打音をより直接的に受信できるため、検査精度がよりいっそう向上する。また、ケース21を省略することも可能となる。
【0045】
・上記実施形態の超音波振動子31は、円板状をなしていたが、楕円板状、矩形板状などの他の形状をなしていてもよい。また、
図8の超音波センサユニット110に示されるように、超音波振動子111は筒状をなしていてもよい。このようにすれば、上記実施形態のケース21を省略することができる。また、超音波振動子111内に基板51を収容できるため、超音波センサユニット110をコンパクトにすることができる。さらに、超音波振動子111の厚さは、上記実施形態の超音波振動子31の厚さよりも大きいため、超音波S1を様々な方向から受信できる可能性がある。
【0046】
・上記実施形態の超音波振動子31は、受信面32の垂線L1がコンクリート電柱10の中心軸L0と直交するように配置されていたが、超音波振動子31の配置態様は異なっていてもよい。例えば、
図9(a)に示されるように、超音波振動子31は、受信面32の垂線L1が中心軸L0と平行となるように配置されていてもよい。また、
図9(b)に示されるように、超音波振動子31は、受信面32の垂線L1が中心軸L0に対して傾斜するように配置されていてもよい。なお、
図6に示されるように、超音波センサユニット100を構成する超音波振動子31が複数(
図6では2つ)存在する場合、それぞれの超音波振動子31の向きは互いに異なっていてもよい。このようにすれば、各超音波振動子31によって、超音波S1を複数の方向から受信することができる。
【0047】
・上記実施形態の超音波振動子31は、木槌12の打音に含まれている超音波S1を受信するものであった。しかし、超音波振動子31は、木槌12の打音に加えて、雨音、風の音、電線の振動、自動車の騒音、道路の振動などに含まれている超音波も受信するものであってもよい。ここで、雨音に含まれている超音波は、例えば雨や雨量の検知に用いることができる。風の音や電線の振動に含まれている超音波は、例えば風速の検知に用いることができる。自動車の騒音に含まれている超音波は、例えば交通量の調査に用いることができる。道路の振動に含まれている超音波は、例えば地震の検知に用いることができる。なお、音や振動の種類を、AI解析等によって超音波の波形等を確認することにより判別してもよい。
【0048】
・上記実施形態の超音波振動子31は、太陽電池パネル41から供給される電力によって常時駆動するものであった。しかし、超音波振動子31は、超音波S1を一定期間受信しないことを契機として、超音波振動子31への電力供給を停止させる省電力モードに移行するものであってもよい。なお、省電力モードに移行した超音波振動子31は、例えば、一定レベル以上の超音波S1を受信したことを契機として再び駆動する。このようにした場合、省電力モードの移行時において、太陽電池パネル41が発電した電力は、蓄電池54に蓄電される。従って、太陽電池パネル41に太陽光が照射されない時間帯(夜間など)であっても、省電力モードから超音波振動子31を駆動する通常モードに復帰すれば、蓄電池54から供給される電力によって超音波振動子31を使用できるため、打音検査が可能となる。
【0049】
・上記実施形態の太陽電池は、略矩形板状をなす太陽電池パネル41であったが、略台形板状、略八角形板状などの他の形状の太陽電池パネルであってもよい。また、太陽電池は、板状ではなく、棒状等の他の形状をなす太陽電池であってもよい。
【0050】
・上記実施形態の超音波センサユニット20は、コンクリート電柱10の頂部付近に配置されていたが、超音波センサユニット20の位置は任意に変更可能である。例えば、超音波センサユニット20は、コンクリート電柱10の地面付近に配置されていてもよいし、コンクリート電柱10の高さ方向における中央部分に配置されていてもよい。
【0051】
・上記実施形態では、超音波振動子31によるセンシング結果を外部機器(パーソナルコンピュータ70)に出力する無線通信回路61として、アンテナ63やRF回路等を備えるものが用いられていた。しかし、無線通信回路は、Bluetooth (ブルートゥース エスアイジー,インコーポレイテッドの登録商標)、赤外線通信、インターネット回線(電話回線等)などの通信手段を介してセンシング結果を出力するものであってもよい。
【0052】
・上記実施形態では、パーソナルコンピュータ70のCPUが、超音波振動子31によるセンシング結果(受信信号が示す超音波S1のスペクトログラム)に基づいて、コンクリート電柱10が健常であるか否かを推定していた。しかし、CPUは、さらに「超音波S1のスペクトログラムがどのような状態であればコンクリート電柱10が健常であると推定できるか」等を学習するものであってもよい。この場合、CPUは、得られた学習結果を示すデータを記憶装置に記憶する。そして、CPUは、記憶装置に記憶されている学習結果に基づいて超音波S1のスペクトログラムの判定を行い、その判定結果に基づいて、コンクリート電柱10が健常であるか否かを判別する。
【0053】
次に、特許請求の範囲に記載された技術的思想のほかに、前述した実施形態によって把握される技術的思想を以下に列挙する。
【0054】
(1)請求項1乃至6のいずれか1項において、前記コンクリート構造物はコンクリート電柱であり、前記太陽電池は、可撓性を有し、前記コンクリート電柱の外周面に沿った湾曲形状をなす太陽電池パネルであることを特徴とするコンクリート構造物。
【0055】
(2)請求項1乃至6のいずれか1項において、前記コンクリート構造物はコンクリート電柱であり、前記超音波振動子は、前記受信面の垂線が前記コンクリート電柱の中心軸と直交するように配置されていることを特徴とするコンクリート構造物。
【符号の説明】
【0056】
10…コンクリート構造物としてのコンクリート電柱
20,80,90,100,110…超音波センサユニット
31,81,111…超音波振動子
32…超音波振動子の受信面
41,82…太陽電池としての太陽電池パネル
42…太陽電池の受光面
61…無線通信回路
70…外部機器としてのパーソナルコンピュータ
S1…超音波