(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022052841
(43)【公開日】2022-04-05
(54)【発明の名称】レトルトパウチ、ソーラークッカー及び傘布
(51)【国際特許分類】
B65D 81/34 20060101AFI20220329BHJP
A45B 25/18 20060101ALI20220329BHJP
F24S 70/20 20180101ALI20220329BHJP
F24S 20/30 20180101ALI20220329BHJP
F24S 23/71 20180101ALI20220329BHJP
【FI】
B65D81/34 Z
A45B25/18 A
F24S70/20
F24S20/30
F24S23/71
F24S23/71 010
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020159327
(22)【出願日】2020-09-24
(71)【出願人】
【識別番号】511169999
【氏名又は名称】石川県公立大学法人
(74)【代理人】
【識別番号】100154966
【弁理士】
【氏名又は名称】海野 徹
(72)【発明者】
【氏名】藤田 萩乃
(72)【発明者】
【氏名】久保 遥奈
【テーマコード(参考)】
3B104
3E013
【Fターム(参考)】
3B104FA03
3E013AE12
3E013BA02
3E013BB12
3E013BD12
3E013BE10
3E013CB15
3E013CC12
(57)【要約】
【課題】短時間で安全に加熱できるレトルトパウチと、入手が容易なソーラークッカーと、このソーラークッカーに使用する傘布を提供する。
【解決手段】本発明のレトルトパウチ1は、内部に被加熱物を収容する収容部20を備えるレトルトパウチにおいて、レトルトパウチ本体部10の一方の端部と他方の端部とを連結させる連結部30を備えており、連結部において一方の端部と他方の端部が連結されることで平面視した場合に中央に穴部50を有するドーナツ形状になることを特徴とする。穴部内にソーラークッカーのパラボラ形状の反射面73の焦点位置Pを位置させることで、レトルトパウチが焼損することなく短時間で被加熱物を加熱することができる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に被加熱物を収容する収容部を備えるレトルトパウチにおいて、
レトルトパウチ本体部の一方の端部と他方の端部とを連結させる連結部を備えており、
前記連結部において前記一方の端部と前記他方の端部が連結されることで平面視した場合にドーナツ形状になることを特徴とするレトルトパウチ。
【請求項2】
表面に太陽熱吸収層を備えることを特徴とする請求項1に記載のレトルトパウチ。
【請求項3】
蒸気抜き部を備えることを特徴とする請求項1又は2に記載のレトルトパウチ。
【請求項4】
前記収容部を複数備えることを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載のレトルトパウチ。
【請求項5】
傘を流用して成るソーラークッカーにおいて、
親骨に張設される傘布がその内面側に太陽光の反射面を有するパラボラ形状であり、
中棒を中心として径方向にのびる受骨が受け部となり、
請求項1~4のいずれか一項に記載のレトルトパウチが、前記ドーナツ形状の穴部に前記中棒が通された状態で前記受け部に乗せられるものであり、
前記パラボラ形状の焦点位置が前記穴部の内部に位置することを特徴とするソーラークッカー。
【請求項6】
ソーラークッカー用の傘布において、
内面側に反射面を有するパラボラ形状であり、親骨に張設される際に使用する固定パーツを、異なる長さの親骨に対応して複数個備えることを特徴とする傘布。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、短時間で安全に加熱できるレトルトパウチと、入手が容易なソーラークッカーと、このソーラークッカーに使用する傘布に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、太陽光を集光して食材を加熱する調理器具(本明細書においては「ソーラークッカー」という。)が知られている。ソーラークッカーは電気やガスを得られない災害時やキャンプ等の屋外での調理器具として使用されている。
例えば特許文献1には傘の傘布の内側に反射材を貼り付け、傘の湾曲を利用して太陽光を集光させるソーラークッカーが開示されている。
また、特許文献2には傘の骨組みに類似した構造を備えており、反射面を放物球面形状にしたソーラークッカーが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001-238712号公報
【特許文献2】特許第4744951号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記特許文献1及び2には以下のような問題がある。
調理器具として鍋やフライパンを使用することを想定しており、これら調理器具は熱容量が大きいため調理可能な温度まで上昇させるのに時間がかかる。
調理器具を使用せずに市販のレトルトパウチを引用文献1又は2のソーラークッカーで直接加熱した場合には、集光箇所が高温になり過ぎてレトルトパウチが焼損してしまうおそれがある。
災害時の使用を想定すると市販の傘を流用したソーラークッカーの方が入手が容易なため好ましい。
災害時だけでなく、日常的に時間や場所を問わずにソーラークッカーを利用できるようになれば省エネルギーに貢献できる。
【0005】
本発明は、上記のような問題を考慮して、短時間で安全に加熱できるレトルトパウチと、入手が容易なソーラークッカーと、このソーラークッカーに使用する傘布を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のレトルトパウチは、内部に被加熱物を収容する収容部を備えるレトルトパウチにおいて、レトルトパウチ本体部の一方の端部と他方の端部とを連結させる連結部を備えており、前記連結部において前記一方の端部と前記他方の端部が連結されることで平面視した場合にドーナツ形状になることを特徴とする。
また、表面に太陽熱吸収層を備えることを特徴とする。
また、蒸気抜き部を備えることを特徴とする。
また、前記収容部を複数備えることを特徴とする。
【0007】
本発明のソーラークッカーは、傘を流用して成るソーラークッカーにおいて、親骨に張設される傘布がその内面側に太陽光の反射面を有するパラボラ形状であり、中棒を中心として径方向にのびる受骨が受け部となり、上記のレトルトパウチが、前記ドーナツ形状の穴部に前記中棒が通された状態で前記受け部に乗せられるものであり、前記パラボラ形状の焦点位置が前記穴部の内部に位置することを特徴とする。
本発明の傘布は、ソーラークッカー用の傘布において、内面側に反射面を有するパラボラ形状であり、親骨に張設される際に使用する固定パーツを、異なる長さの親骨に対応して複数個備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明のレトルトパウチは両端部を連結した状態でドーナツ形状になり、その中央に穴部を備えている。この穴部内にソーラークッカーのパラボラ形状の反射面の焦点を位置させることで、後述するようにレトルトパウチが焼損することなく短時間で安全に被加熱物を加熱することができる。
レトルトパウチの表面に太陽熱吸収層を設けることでより短時間で非加熱物を加熱することができる。
また、蒸気抜き部を設けることでレトルトパウチの破裂を抑えるだけでなく、調理者が非加熱物の温度状態を把握することができる。
収容部を複数備えることにすれば一度で複数の被加熱物を加熱できる。
【0009】
本発明のソーラークッカーは本発明のレトルトパウチの加熱に適した構造を備えている。具体的には太陽光の反射面がパラボラ形状であり、受骨がレトルトパウチの受け部になる。
図14に示すようにパラボラ形状の焦点Pを含むXY平面上において、焦点Pを中心とした同心円S1,S2,S3が等温線となる。本発明のレトルトパウチは両端部を連結し、そのドーナツ形状の穴部に中骨を通した状態で等温線上に設置される。
図12に示すように焦点を含むXY平面上では焦点位置から離れるほど被加熱物の温度上昇は緩やかになる。一般的なレトルトパウチ用包装材料では焦点位置に設置すると簡単に焼損してしまう。本発明のレトルトパウチは焦点Pを避けた同心円が連なるドーナツ形状とすることで、換言するとパラボラ形状の反射面の焦点位置Pがドーナツ形状の穴部の内部に位置するように設計しておくことで、レトルトパウチは焦点位置から同心円状にデフォーカスした位置に設置されることになり、焼損することなく短時間で安全に被加熱物を加熱することができる。
また、本発明のソーラークッカーは傘を流用するものであり、例えば市販の使い切り用の透明なビニール傘は入手が容易であるため、災害時だけでなく、日常的に時間や場所を問わずにソーラークッカーを設置・利用でき、省エネルギーに貢献できる。
本発明の傘布は上記ソーラークッカーに使用するものであり、固定パーツを異なる長さの親骨に対応して複数個備えるので、流用する傘のサイズが異なる場合にも対応できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】レトルトパウチの正面図(a)、平面図(b)及び右側面図(c)
【
図2】レトルトパウチの斜視図(a)、両端部を連結させる際の斜視図(b)及び連結させた状態の斜視図(c)
【
図3】レトルトパウチの変形例の正面図(a)、平面図(b)、右側面図(c)及び両端部を連結させた状態の斜視図(d)
【
図4】レトルトパウチの変形例の正面図(a)、平面図(b)及び両端部を連結させた状態の斜視図(c)
【
図5】太陽熱吸収層を設けたレトルトパウチ本体部の正面図(a)及び平面図(b)
【
図6】複数の収容部を備えたレトルトパウチの正面図
【
図7】傘布を構成する複数のパーツの平面図(a)及びパラボラ形状の傘布の正面図(b)
【
図8】一般的なビニール傘の正面図(a)、ビニールの傘布を取り外した状態の正面図(b)、パラボラ形状の傘布の正面図(c)、パラボラ形状の傘布を張設した状態を示す正面図(d)及びその変形例(e)
【
図9】親骨を固定パーツを挿入し、固定した状態を示す図(a)及び複数の固定パーツを径方向に配置した状態を示す傘布の底面図(b)
【
図10】ソーラークッカーの正面図(a)及び骨組みを示す縦断面図(b)
【
図11】受け部の上にレトルトパウチを載せた状態を示す縦断面図(a)及び平面図(b)
【
図12】試験片を加熱した際の焦点位置及び焦点位置から水平方向に離れた位置の温度変化を示すグラフ(a)及び加熱後の試験片の写真(b)
【
図13】照度に対するレトルトパウチ内の水の温度変化を示すグラフ
【
図14】焦点Pを中心とする同心円状の等温線を表した図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[レトルトパウチの実施の形態]
本発明のレトルトパウチの実施の形態について説明する。本発明のレトルトパウチはソーラークッカーによる加熱調理に使用される。
【0012】
図1及び
図2に示すようにレトルトパウチ1はレトルトパウチ本体部10、収容部20、連結部30及び蒸気抜き部40を備えている。
レトルトパウチ本体部10の層構成は一般的なものと同様であり詳細な説明は省略するが、可撓性材料からなる表面材と裏面材とを重ね合わせ、その四辺をヒートシール部21で接合されている。
可撓性材料としては例えば、結晶性ポリプロピレン, 結晶性プロピレン- エチレン共重合体, 結晶性ポリブテン-1, 結晶性ポリ4-メチルペンテン-1,ポリエチレン,エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA),エチレン-アクリル酸エチル共重合体(EEA),イオン架橋オレフィン共重合体(アイオノマー)等のポリオレフィン類;ポリスチレン,スチレン-ブタジエン共重合体等の芳香族ビニル共重合体;ポリ塩化ビニル,塩化ビニリデン樹脂等のハロゲン化ビニル重合体;アクリロニトリル-スチレン共重合体,アクリロニトリル-スチレン-ブタジエン共重合体等のニトリル重合体;ナイロン6,ナイロン66,パラ(又はメタ)キシリレンアジパミド等のポリアミド類;ポリエチレンテレフタレート,ポリテトラメチレンテレフタレート等のポリエステル類;各種ポリカーボネート;ポリオキシメチレン等のポリアセタール類などの熱可塑性樹脂からなるフィルム材を用いることができる。
このようなフィルム材は未延伸、一軸延伸又は二軸延伸して用いることができる。また、フィルム材は単層でも、二種以上の熱可塑性樹脂を積層してもよいが、例えば、延伸ナイロンフィルムを外層とし、低密度ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィンフィルムを内層とする二層構成としたり、延伸ポリエステルフィルムを外層とし、ポリオレフィンフィルムを内層とする二層構成としたりすることができる。フィルム材に対して金属箔をラミネートしてもよく、フィルム材を二層以上の多層構成とした場合には、フィルム材の層間に金属箔をラミネートしてもよい。
【0013】
収容部20はその内部に被加熱物(食材)を収容するための部位であり、ヒートシール部21で区切られてレトルトパウチ本体部10の内部に形成される。
連結部30はレトルトパウチ本体部10の一方の端部と他方の端部とを連結させるための部位である。本実施の形態の連結部30は一方の端部から長手方向にのびる筒状部31を備えている。
図2(b)及び(c)に示すように他方の端部を筒状部31の内側に収容することで、連結部30において一方の端部と他方の端部が連結されることになり、レトルトパウチ本体部10は平面視した場合に中央に穴部50を有するドーナツ形状になる。
連結部30の他の構成例として
図3に示すように一方の端部に帯状部32、他方の端部にベルト部33を設けて、帯状部32をベルト部33に通すことでドーナツ形状になるようにしてもよい。或いは、
図4に示すように一方の端部と他方の端部のそれぞれに帯状部34を設けて、両帯状部32を重ねた状態で輪ゴム35やクリップ等の周知の締結手段で固定することでドーナツ形状にしてもよい。
【0014】
図5に示すようにレトルトパウチ本体部10の表面に太陽熱吸収層60を設けてもよい。
太陽熱吸収層60としては例えば黒色塗料や、アクリル、ウレタン等のバインダーに酸化銅、二酸化マンガン等の微粒子を混合した塗料を塗布することで形成できる。レトルトパウチ本体部10の表面の印刷可能面に黒色塗料をいわゆる黒ベタ印刷するのが太陽熱吸収層60の簡便な作成方法である。太陽熱吸収層60を設けることでレトルトパウチ本体部10からの熱損失を抑えることができ、被加熱物をより短時間で加熱することができる。
【0015】
蒸気抜き部40は、加熱時に非加熱物の水分から生じる蒸気を外部に放出するための部位である。レトルトパウチ1の蒸気抜きは加熱時の内圧上昇を利用して微細なスリットから蒸気を外部に放出する周知の技術である。蒸気抜き部40を設けることでレトルトパウチ1の破裂を抑えるだけでなく、調理者が非加熱物の温度状態を把握することができる。一般的なレトルトパウチは鍋等の調理器具にお湯を沸かし、その中で加熱されるものであるが、本発明のレトルトパウチ1は後述するとおり調理器具を用いずに集光した太陽熱で直接加熱される。したがって、蒸気抜き部40から蒸気が放出されることで調理者はレトルトパウチ1が適切に加熱されていることを知ることができる。
【0016】
図6に示すように収容部20を複数備えることにしてもよい。例えば一方の収容部20にご飯、他方の収容部20に味噌汁やスープ状のカレールーを入れることで一度で複数の被加熱物を加熱できる。
【0017】
[ソーラークッカーの実施の形態]
次にソーラークッカーの実施の形態について説明する。
本発明のソーラークッカーは既成の傘を流用して成るものである。傘としていわゆるビニール傘を使用することにすれば、ビニール傘の大量廃棄問題を解消する一助になる。
【0018】
傘布70はパラボラ形状に加工されている。傘布70をパラボラ形状に加工する方法については周知であるため詳しい説明は省略するが、
図7(a)に示すような左右の2辺が所定の曲率を有する円弧状であり、且つのりしろ部71を有するパーツ72を複数(例えば8つ)作成し、隣接するパーツ72同士をのりしろ部71で接着していくことで
図7(b)に示すような傘布70をパラボラ形状にすることができる。
パラボラ形状の傘布70の材料としては特に限定されないが、上記レトルトパウチ1の材料と同様にポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエステル、PET等の透明な合成樹脂を接着剤を介して積層し、層間にアルミ箔等の金属箔その他太陽光の反射面73として機能する材料を配置する。
【0019】
図8(a)に示すように一般的なビニール傘100に使用されている透明又は半透明のビニールの傘布101を
図8(b)に示すように親骨102から取り外し、
図8(c)に示すパラボラ形状の傘布70を親骨102に張設する。傘布70の内面側には反射面73が形成されている。
なお、透明又は半透明のビニールの傘布101を親骨102から取り外さずに、このビニールの傘布101の上からパラボラ形状の傘布70を親骨102に張設することにしてもよく、この場合はソーラークッカーの使用後にパラボラ形状の傘布70を取り外すことで傘を再利用できる。透明又は半透明でない傘布の場合は親骨102から取り外してパラボラ形状の傘布70を親骨102に張設する必要がある。
具体的には、
図9(a)に示すように親骨102の先端を差し込んで固定するための挿入孔80を備える固定パーツ81をパラボラ形状の傘布70の内面側の周縁部分において周方向に等間隔で配置しておく。一般的なビニール傘100であれば親骨102の長さが50cm,55cm,60cm,65cm、親骨102の本数が8本にほぼ規格化されているため、この規格に合わせて固定パーツ81を配置すればよい。複数の長さの親骨102に対応するべく、
図9(b)に示すように径方向に複数の固定パーツ81(
図9(b)では3つの固定パーツ81)を配置してもよい。これにより傘のサイズが異なる場合にも対応できる。
【0020】
図8(a)に示すように一般的なビニール傘100は傘布101の湾曲が緩やかになっている。パラボラ形状の傘布70を親骨102に張設する際に、親骨102の曲率を大きくしながら(親骨102を湾曲させながら)その先端を固定パーツ81の挿入孔80に差し込んでいく。パラボラ形状の傘布70を親骨102に張設することでパラボラ形状の反射面73を形成することができる。以上で
図8(d)に示すようにパラボラ形状の傘布70の張設作業が完了する。なお、
図8(e)に示すようにパラボラ形状の傘布70の中心に穴を開けて傘の石突き103aを外部に突出させてもよい。
図10に示すように、パラボラ形状の傘布70を下側にして、中棒103が上方にのびるように配置した状態で、中棒103を中心として径方向にのびる受骨104がレトルトパウチ1の受け部90となる。符号Pはパラボラ形状の反射面73の焦点位置である。
【0021】
図11は受け部90の上にレトルトパウチ1を載せた状態を示している。穴部50に中棒103を通した状態で受け部90の上にレトルトパウチ1を載せる。パラボラ形状の反射面73の焦点位置Pが穴部50の内部に位置するように予め傘布70のパラボラ形状を設計しておく。
【0022】
ソーラークッカー200を使用して薄い円形の試験片を加熱した際の焦点位置P及び焦点位置Pから水平方向に3cm, 6cm, 9cm離れた位置の温度変化を示すグラフを
図12(a)に示す。
図12(b)は加熱後の試験片の写真である。測定開始から6分ほど経過した時点で焦点位置Pでは300℃を超えており、試験片が焼損している。焦点位置Pから水平方向に3cm移動した点では150℃程度であり、試験片は焼損していない。鉛直方向についても同様の温度変化になる。このように、本発明のレトルトパウチ1は両端部を連結した状態で中央に穴部50を備えており、この穴部50内にパラボラ形状の反射面73の焦点位置Pを位置させる。最も高温になる焦点位置Pにはレトルトパウチ1が存在せず、焦点位置Pの周囲にレトルトパウチ1が存在することになるので、レトルトパウチ1が焼損することなく短時間で安全に被加熱物を加熱することができる。
【実施例0023】
本発明のレトルトパウチ1及びソーラークッカー200を使用し、被加熱物として水を加熱した場合の実施例を示す。
図13のグラフは照度に対するレトルトパウチ1内の水の温度変化を表している。グラフの第一縦軸は水温、第二縦軸は照度、横軸は時間を表している。
実験開始から約18分で95℃に到達し、約25分で最高温度の97.2℃に到達した。その後、照度が下がっても95℃を維持しているためレトルトパウチ1から放熱していないといえる。水が沸騰してもレトルトパウチ1は焼損しなかったので短時間で安全に加熱できることを確認できた。
本発明は、短時間で安全に加熱できるレトルトパウチと、入手が容易なソーラークッカーと、このソーラークッカーに使用する傘布であり、産業上の利用可能性を有する。