(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022052873
(43)【公開日】2022-04-05
(54)【発明の名称】感光性樹脂組成物及び感光性樹脂組成物の硬化膜を備えたプリント配線板
(51)【国際特許分類】
G03F 7/027 20060101AFI20220329BHJP
G03F 7/004 20060101ALI20220329BHJP
C08K 5/00 20060101ALI20220329BHJP
C08K 5/1515 20060101ALI20220329BHJP
C08L 75/04 20060101ALI20220329BHJP
C08K 5/52 20060101ALI20220329BHJP
C08L 63/10 20060101ALI20220329BHJP
C08G 59/42 20060101ALI20220329BHJP
H05K 3/28 20060101ALI20220329BHJP
【FI】
G03F7/027 515
G03F7/004 501
C08K5/00
C08K5/1515
C08L75/04
C08K5/52
C08L63/10
C08G59/42
H05K3/28 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020159377
(22)【出願日】2020-09-24
(71)【出願人】
【識別番号】390005223
【氏名又は名称】株式会社タムラ製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(74)【代理人】
【識別番号】100143959
【弁理士】
【氏名又は名称】住吉 秀一
(72)【発明者】
【氏名】喜多村 明
【テーマコード(参考)】
2H225
4J002
4J036
5E314
【Fターム(参考)】
2H225AC36
2H225AC54
2H225AC58
2H225AD02
2H225AD15
2H225AE15P
2H225AM08P
2H225AM64P
2H225AN62P
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2H225BA16P
2H225BA22P
2H225BA38P
2H225CA13
2H225CB02
2H225CC01
2H225CC13
4J002CD041
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4J002EH077
4J002EL028
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4J036JA09
5E314AA27
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5E314BB06
5E314CC01
5E314EE01
5E314FF05
5E314FF19
5E314GG09
(57)【要約】
【課題】現像性を損なうことなく、柔軟性と耐熱性に優れた硬化塗膜を形成できる感光性樹脂組成物及び前記感光性樹脂組成物の硬化膜を備えたプリント配線板を提供する。
【解決手段】(A)a)1分子中に2つ以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂とb)エチレン性不飽和基含有カルボン酸とc)2つ以上のカルボキシル基を有するイソシアヌレート誘導体との反応により得られる化学構造を有するアルカリ可溶性感光性樹脂と、(B)光重合開始剤と、を含有する感光性樹脂組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)a)1分子中に2つ以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂とb)エチレン性不飽和基含有カルボン酸とc)2つ以上のカルボキシル基を有するイソシアヌレート誘導体との反応により得られる化学構造を有するアルカリ可溶性感光性樹脂と、(B)光重合開始剤と、を含有する感光性樹脂組成物。
【請求項2】
前記(A)アルカリ可溶性感光性樹脂が、(A-1)a)1分子中に2つ以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂とb)エチレン性不飽和基含有カルボン酸とc)2つ以上のカルボキシル基を有するイソシアヌレート誘導体との反応生成物である感光性樹脂、(A-2)a)1分子中に2つ以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂とb)エチレン性不飽和基含有カルボン酸とc)2つ以上のカルボキシル基を有するイソシアヌレート誘導体との反応生成物にd)多塩基酸及び/または多塩基酸無水物を付加させて得られる感光性樹脂、及び(A-3)a)1分子中に2つ以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂とb)エチレン性不飽和基含有カルボン酸とe)炭素数が10以上である少なくとも1種の脂肪族ジカルボン酸とc)2つ以上のカルボキシル基を有するイソシアヌレート誘導体との反応生成物にd)多塩基酸及び/または多塩基酸無水物を付加させて得られる感光性樹脂からなる群から選択された少なくとも1種である請求項1に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項3】
前記c)2つ以上のカルボキシル基を有するイソシアヌレート誘導体が、下記一般式(1)
【化1】
(式中、R
1、R
2、R
3は、それぞれ独立して、炭素数1~10個の飽和脂肪族炭化水素基を表す。)で表される化合物である請求項1または2に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項4】
前記c)2つ以上のカルボキシル基を有するイソシアヌレート誘導体が、トリス(3-カルボキシプロピル)イソシアヌレート及びトリス(2-カルボキシエチル)イソシアヌレートからなる群から選択された少なくとも1種である請求項1乃至3のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項5】
前記(A)アルカリ可溶性感光性樹脂の重量平均分子量が、2000以上20000以下である請求項1乃至4のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項6】
前記(A)アルカリ可溶性感光性樹脂の酸価が、50mgKOH/g以上150mgKOH/g以下である請求項1乃至5のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項7】
さらに、(C)反応性希釈剤を含有する請求項1乃至6のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項8】
さらに、(D)エポキシ化合物を含有する請求項1乃至7のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項9】
さらに、(E)有機フィラーとしてウレタンビーズを含有する請求項1乃至8のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項10】
さらに、(F)難燃剤として有機リン酸塩を含有する請求項1乃至8のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項11】
請求項1乃至10のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物の硬化膜を備えたプリント配線板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐熱性と折り曲げ性に優れた硬化塗膜を得ることができる感光性樹脂組成物及び該感光性樹脂組成物の硬化膜を有するプリント配線板に関する。
【背景技術】
【0002】
プリント配線板等の基板上には導体(例えば、銅箔)の回路パターンが形成され、該導体回路パターンのはんだ付けランドに電子部品をはんだ付けにより搭載し、はんだ付けランドを除く回路部分は保護膜としての絶縁被膜(ソルダーレジスト膜)で被覆される。絶縁被膜として、カルボキシル基含有感光性樹脂と、光重合開始剤とを含有する感光性樹脂組成物の硬化膜が使用されることがある。感光性樹脂組成物の塗膜を光硬化処理後に現像することで、はんだ付けランドを除く回路部分が絶縁被膜(ソルダーレジスト膜)で被覆される。
【0003】
また、近年、電子機器の小型化等から、プリント配線板等の基板の薄型化が要求されており、フレキシブルプリント配線板が使用されることがある。フレキシブルプリント配線板には、優れた折り曲げ性が要求されることに伴い、絶縁被膜には優れた柔軟性が要求される。そこで、柔軟性に優れる硬化塗膜を提供するために、(A)1分子中に2個以上の不飽和二重結合と1個以上のカルボキシル基を有する感光性プレポリマー、(B)光重合開始剤、(C)希釈剤、(D)エポキシ化合物、(E)1分子中に1個以上の内部エポキシド基を有するポリブタジエン、及び(F)ポリウレタン微粒子を含有する感光性樹脂組成物が提案されている(特許文献1)。
【0004】
しかし、ポリウレタン構造を多く導入した感光性樹脂組成物では、感光性樹脂組成物の硬化膜の耐熱性が低下してしまう場合があり、フレキシブルプリント配線板に電子部品をはんだ付けする際に、硬化膜が高温またはフラックスによるダメージを受けて膨れたり配線板から剥がれたりする場合があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記事情に鑑み、本発明は、現像性を損なうことなく、柔軟性と耐熱性に優れた硬化塗膜を形成できる感光性樹脂組成物及び前記感光性樹脂組成物の硬化膜を備えたプリント配線板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の構成の要旨は、以下の通りである。
[1](A)a)1分子中に2つ以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂とb)エチレン性不飽和基含有カルボン酸とc)2つ以上のカルボキシル基を有するイソシアヌレート誘導体との反応により得られる化学構造を有するアルカリ可溶性感光性樹脂と、(B)光重合開始剤と、を含有する感光性樹脂組成物。
[2]前記(A)アルカリ可溶性感光性樹脂が、(A-1)a)1分子中に2つ以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂とb)エチレン性不飽和基含有カルボン酸とc)2つ以上のカルボキシル基を有するイソシアヌレート誘導体との反応生成物である感光性樹脂、(A-2)a)1分子中に2つ以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂とb)エチレン性不飽和基含有カルボン酸とc)2つ以上のカルボキシル基を有するイソシアヌレート誘導体との反応生成物にd)多塩基酸及び/または多塩基酸無水物を付加させて得られる感光性樹脂、及び(A-3)a)1分子中に2つ以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂とb)エチレン性不飽和基含有カルボン酸とe)炭素数が10以上である少なくとも1種の脂肪族ジカルボン酸とc)2つ以上のカルボキシル基を有するイソシアヌレート誘導体との反応生成物にd)多塩基酸及び/または多塩基酸無水物を付加させて得られる感光性樹脂からなる群から選択された少なくとも1種である[1]に記載の感光性樹脂組成物。
[3]前記c)2つ以上のカルボキシル基を有するイソシアヌレート誘導体が、下記一般式(1)
【化1】
(式中、R
1、R
2、R
3は、それぞれ独立して、炭素数1~10個の飽和脂肪族炭化水素基を表す。)で表される化合物である[1]または[2]に記載の感光性樹脂組成物。
[4]前記c)2つ以上のカルボキシル基を有するイソシアヌレート誘導体が、トリス(3-カルボキシプロピル)イソシアヌレート及びトリス(2-カルボキシエチル)イソシアヌレートからなる群から選択された少なくとも1種である[1]乃至[3]のいずれか1つに記載の感光性樹脂組成物。
[5]前記(A)アルカリ可溶性感光性樹脂の重量平均分子量が、2000以上20000以下である[1]乃至[4]のいずれか1つに記載の感光性樹脂組成物。
[6]前記(A)アルカリ可溶性感光性樹脂の酸価が、50mgKOH/g以上150mgKOH/g以下である[1]乃至[5]のいずれか1つに記載の感光性樹脂組成物。
[7]さらに、(C)反応性希釈剤を含有する[1]乃至[6]のいずれか1つに記載の感光性樹脂組成物。
[8]さらに、(D)エポキシ化合物を含有する[1]乃至[7]のいずれか1つに記載の感光性樹脂組成物。
[9]さらに、(E)有機フィラーとしてウレタンビーズを含有する[1]乃至[8]のいずれか1つに記載の感光性樹脂組成物。
[10]さらに、(F)難燃剤として有機リン酸塩を含有する[1]乃至[8]のいずれか1つに記載の感光性樹脂組成物。
[11][1]乃至[10]のいずれか1つに記載の感光性樹脂組成物の硬化膜を備えたプリント配線板。
【発明の効果】
【0008】
本発明の態様によれば、(A)a)1分子中に2つ以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂とb)エチレン性不飽和基含有カルボン酸とc)2つ以上のカルボキシル基を有するイソシアヌレート誘導体との反応により得られる化学構造を有するアルカリ可溶性感光性樹脂と、(B)光重合開始剤と、を含有することにより、現像性を損なうことなく、柔軟性と耐熱性に優れた硬化塗膜を形成できる感光性樹脂組成物及び前記感光性樹脂組成物の硬化膜を備えたプリント配線板を得ることができる。
【0009】
本発明の感光性樹脂組成物の態様によれば、(A)アルカリ可溶性感光性樹脂が、(A-1)a)1分子中に2つ以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂とb)エチレン性不飽和基含有カルボン酸とc)2つ以上のカルボキシル基を有するイソシアヌレート誘導体との反応生成物である感光性樹脂、(A-2)a)1分子中に2つ以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂とb)エチレン性不飽和基含有カルボン酸とc)2つ以上のカルボキシル基を有するイソシアヌレート誘導体との反応生成物にd)多塩基酸及び/または多塩基酸無水物を付加させて得られる感光性樹脂、及び(A-3)a)1分子中に2つ以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂とb)エチレン性不飽和基含有カルボン酸とe)炭素数が10以上である少なくとも1種の脂肪族ジカルボン酸とc)2つ以上のカルボキシル基を有するイソシアヌレート誘導体との反応生成物にd)多塩基酸及び/または多塩基酸無水物を付加させて得られる感光性樹脂からなる群から選択された少なくとも1種であることにより、柔軟性と耐熱性がバランスよく向上した硬化塗膜を形成できる。
【0010】
本発明の感光性樹脂組成物の態様によれば、c)2つ以上のカルボキシル基を有するイソシアヌレート誘導体が、下記一般式(1)
【化2】
(式中、R
1、R
2、R
3は、それぞれ独立して、炭素数1~10個の飽和脂肪族炭化水素基を表す。)で表される化合物であることにより、柔軟性と耐熱性がバランスよく向上した硬化塗膜を形成できる。
【0011】
本発明の感光性樹脂組成物の態様によれば、c)2つ以上のカルボキシル基を有するイソシアヌレート誘導体が、トリス(3-カルボキシプロピル)イソシアヌレート及びトリス(2-カルボキシエチル)イソシアヌレートからなる群から選択された少なくとも1種であることにより、柔軟性と耐熱性がさらにバランスよく向上した硬化塗膜を形成できる。
【0012】
本発明の感光性樹脂組成物の態様によれば、(A)アルカリ可溶性感光性樹脂の重量平均分子量が、2000以上20000以下であることにより、硬化物の強靭性及び指触乾燥性の低下を防止しつつ、確実に現像性を得ることができる。
【0013】
本発明の感光性樹脂組成物の態様によれば、(A)アルカリ可溶性感光性樹脂の酸価が、50mgKOH/g以上150mgKOH/g以下であることにより、現像性と絶縁信頼性をバランスよく向上した硬化塗膜を形成できる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に、本発明の感光性樹脂組成物について詳細を説明する。本発明の感光性樹脂組成物は、(A)a)1分子中に2つ以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂とb)エチレン性不飽和基含有カルボン酸とc)2つ以上のカルボキシル基を有するイソシアヌレート誘導体との反応により得られる化学構造を有するアルカリ可溶性感光性樹脂と、(B)光重合開始剤と、を含有する。本発明の感光性樹脂組成物では、現像性を損なうことなく、柔軟性と耐熱性に優れた硬化塗膜を形成できる。上記各成分は、以下の通りである。
【0015】
(A)アルカリ可溶性感光性樹脂
(A)成分であるアルカリ可溶性感光性樹脂(以下、「A樹脂」ということがある。)は、その化学構造中に、a)1分子中に2つ以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂とb)エチレン性不飽和基含有カルボン酸とc)2つ以上のカルボキシル基を有するイソシアヌレート誘導体との反応により得られる化学構造を有する。より具体的には、例えば、a)1分子中に2つ以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂のエポキシ基の少なくとも一部にb)エチレン性不飽和基含有カルボン酸を反応させてエチレン性不飽和基含有カルボン酸化エポキシ樹脂を得て、生成した水酸基及び/または前記エポキシ樹脂の他のエポキシ基の少なくとも一部にc)2つ以上のカルボキシル基を有するイソシアヌレート誘導体を反応させて得られる化学構造を有する。2つ以上のカルボキシル基を有するイソシアヌレート誘導体がアルカリ可溶性感光性樹脂に導入されることで、柔軟性と耐熱性に優れた硬化塗膜を形成できる。
【0016】
A樹脂は、上記化学構造を有していれば、特に限定されないが、柔軟性と耐熱性がバランスよく向上した硬化塗膜を形成できる点から、(A-1)a)1分子中に2つ以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂とb)エチレン性不飽和基含有カルボン酸とc)2つ以上のカルボキシル基を有するイソシアヌレート誘導体との反応生成物である感光性樹脂(以下、「A-1樹脂」ということがある。)、(A-2)a)1分子中に2つ以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂とb)エチレン性不飽和基含有カルボン酸とc)2つ以上のカルボキシル基を有するイソシアヌレート誘導体との反応生成物にd)多塩基酸及び/または多塩基酸無水物を付加させて得られる感光性樹脂(以下、「A-2樹脂」ということがある。)、(A-3)a)1分子中に2つ以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂とb)エチレン性不飽和基含有カルボン酸とe)炭素数が10以上である少なくとも1種の脂肪族ジカルボン酸とc)2つ以上のカルボキシル基を有するイソシアヌレート誘導体との反応生成物にd)多塩基酸及び/または多塩基酸無水物を付加させて得られる感光性樹脂(以下、「A-3樹脂」ということがある。)が好ましい。A-1樹脂、A-2樹脂、A-3樹脂は、それぞれ単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0017】
以下に、A-1樹脂、A-2樹脂、A-3樹脂について、詳細を説明する。
【0018】
A-1樹脂
A-1樹脂としては、例えば、a)1分子中に2つ以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂のエポキシ基の少なくとも一部にb)エチレン性不飽和基含有カルボン酸を反応させてエチレン性不飽和基含有カルボン酸化エポキシ樹脂を得て、生成した水酸基及び/または前記エポキシ樹脂の他のエポキシ基の少なくとも一部にc)2つ以上のカルボキシル基を有するイソシアヌレート誘導体を反応させて得られる樹脂が挙げられる。
【0019】
a)1分子中に2つ以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂
1分子中に2つ以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂は、2官能以上のエポキシ樹脂(すなわち、多官能エポキシ樹脂)であればいずれでも使用可能である。1分子中に2つ以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂のエポキシ当量は、特に限定されないが、エポキシ当量の上限値は、b)エチレン性不飽和基含有カルボン酸とc)2つ以上のカルボキシル基を有するイソシアヌレート誘導体の導入割合の低下による感光性、現像性、柔軟性及び耐熱性の低下を確実に防止する点から1000g/eqが好ましく、500g/eqがより好ましく、400g/eqが特に好ましい。一方で、エポキシ当量の下限値は、機械的強度の点から100g/eqが好ましく、200g/eqが特に好ましい。
【0020】
1分子中に2つ以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂は、特に限定されないが、例えば、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂、フェニルアラルキル型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、シリコーン変性エポキシ樹脂等のゴム変性エポキシ樹脂、ε-カプロラクトン変性エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂等のフェノールノボラック型エポキシ樹脂、о-クレゾールノボラック型等のクレゾールノボラック型エポキシ樹脂、環状脂肪族多官能エポキシ樹脂、グリシジルエステル型多官能エポキシ樹脂、グリシジルアミン型多官能エポキシ樹脂、複素環式多官能エポキシ樹脂、ビスフェノール変性ノボラック型エポキシ樹脂、多官能変性ノボラック型エポキシ樹脂、フェノール類とフェノール性水酸基を有する芳香族アルデヒドとの縮合物型エポキシ樹脂、フルオレン骨格を有するエポキシ樹脂、アダマンタン骨格を有するエポキシ樹脂等を挙げることができる。
【0021】
b)エチレン性不飽和基含有カルボン酸
エチレン性不飽和基含有カルボン酸としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸(アクリル酸及び/またはメタクリル酸を「(メタ)アクリル酸」ということがある。)、クロトン酸、チグリン酸、アンゲリカ酸、桂皮酸などのラジカル重合性不飽和モノカルボン酸を挙げることができる。これらのエチレン性不飽和基含有カルボン酸は、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。A-1樹脂(固形分)中における、エチレン性不飽和基含有カルボン酸の割合(仕込み割合)は、特に限定されないが、その下限値は、感度を確実に得る点から3質量%が好ましく、5質量%が特に好ましい。一方で、エチレン性不飽和基含有カルボン酸の割合(仕込み割合)の上限値は、c)2つ以上のカルボキシル基を有するイソシアヌレート誘導体の導入量を維持して現像性と柔軟性と耐熱性をバランスよく向上させる点から15質量%が好ましく、10質量%が特に好ましい。
【0022】
c)2つ以上のカルボキシル基を有するイソシアヌレート誘導体
2つ以上のカルボキシル基を有するイソシアヌレート誘導体としては、2つ以上のカルボキシル基とイソシアヌレート骨格とを有する化合物であれば、特に限定されないが、例えば、柔軟性と耐熱性がバランスよく向上した硬化塗膜を形成できる点から、下記一般式(1)
【化3】
(式中、R
1、R
2、R
3は、それぞれ独立して、炭素数1~10個の飽和脂肪族炭化水素基、好ましくは炭素数1~10個の直鎖状飽和脂肪族炭化水素基、より好ましくは炭素数1~5個の直鎖状飽和脂肪族炭化水素基を表す。)で表される化合物が好ましい。一般式(1)で表される化合物は、3つのカルボキシル基とイソシアヌル酸骨格を有している。
【0023】
一般式(1)で表される化合物のうち、柔軟性と耐熱性がさらにバランスよく向上した硬化塗膜を形成できる点から、-R1-、-R2-、-R3-がいずれも-CH2-CH2-CH2-であるトリス(3-カルボキシプロピル)イソシアヌレート、-R1-、-R2-、-R3-がいずれも-CH2-CH2-であるトリス(2-カルボキシエチル)イソシアヌレートが特に好ましい。これらの化合物は、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0024】
A-1樹脂(固形分)中における、2つ以上のカルボキシル基を有するイソシアヌレート誘導体の割合(仕込み割合)は、特に限定されないが、その下限値は、現像性と柔軟性と耐熱性を確実に得る点から20質量%が好ましく、30質量%が特に好ましい。一方で、2つ以上のカルボキシル基を有するイソシアヌレート誘導体の割合(仕込み割合)の上限値は、b)エチレン性不飽和基含有カルボン酸の導入量を維持して感度を確実に得る点から50質量%が好ましく、40質量%が特に好ましい。
【0025】
A-2樹脂
A-2樹脂としては、例えば、a)1分子中に2つ以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂のエポキシ基の少なくとも一部にb)エチレン性不飽和基含有カルボン酸を反応させてエチレン性不飽和基含有カルボン酸化エポキシ樹脂を得て、生成した水酸基及び/または前記エポキシ樹脂の他のエポキシ基の一部にc)2つ以上のカルボキシル基を有するイソシアヌレート誘導体を反応させて得られた反応生成物に、さらにd)多塩基酸及び/または多塩基酸無水物を付加させて得られる感光性樹脂が挙げられる。
【0026】
a)1分子中に2つ以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂
1分子中に2つ以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂としては、特に限定されず、例えば、A-1樹脂と同じく、2官能以上のエポキシ樹脂(すなわち、多官能エポキシ樹脂)であればいずれでも使用可能である。1分子中に2つ以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂のエポキシ当量は、特に限定されないが、エポキシ当量の上限値は、b)エチレン性不飽和基含有カルボン酸とc)2つ以上のカルボキシル基を有するイソシアヌレート誘導体とd)多塩基酸及び/または多塩基酸無水物の導入割合の低下による感光性、現像性、柔軟性及び耐熱性の低下を確実に防止する点から1000g/eqが好ましく、500g/eqがより好ましく、400g/eqが特に好ましい。一方で、エポキシ当量の下限値は、機械的強度の点から100g/eqが好ましく、200g/eqが特に好ましい。
【0027】
1分子中に2つ以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂は、特に限定されないが、例えば、A-1樹脂と同じく、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂、フェニルアラルキル型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、シリコーン変性エポキシ樹脂等のゴム変性エポキシ樹脂、ε-カプロラクトン変性エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂等のフェノールノボラック型エポキシ樹脂、о-クレゾールノボラック型等のクレゾールノボラック型エポキシ樹脂、環状脂肪族多官能エポキシ樹脂、グリシジルエステル型多官能エポキシ樹脂、グリシジルアミン型多官能エポキシ樹脂、複素環式多官能エポキシ樹脂、ビスフェノール変性ノボラック型エポキシ樹脂、多官能変性ノボラック型エポキシ樹脂、フェノール類とフェノール性水酸基を有する芳香族アルデヒドとの縮合物型エポキシ樹脂、フルオレン骨格を有するエポキシ樹脂、アダマンタン骨格を有するエポキシ樹脂等を挙げることができる。
【0028】
b)エチレン性不飽和基含有カルボン酸
エチレン性不飽和基含有カルボン酸としては、例えば、A-1樹脂と同じく、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、チグリン酸、アンゲリカ酸、桂皮酸などのラジカル重合性不飽和モノカルボン酸を挙げることができる。これらのエチレン性不飽和基含有カルボン酸は、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。A-2樹脂(固形分)中における、エチレン性不飽和基含有カルボン酸の割合(仕込み割合)は、特に限定されないが、その下限値は、感度を確実に得る点から3質量%が好ましく、5質量%が特に好ましい。一方で、エチレン性不飽和基含有カルボン酸の割合(仕込み割合)の上限値は、c)2つ以上のカルボキシル基を有するイソシアヌレート誘導体とd)多塩基酸及び/または多塩基酸無水物の導入量を維持して現像性と柔軟性と耐熱性をバランスよく向上させる点から15質量%が好ましく、10質量%が特に好ましい。
【0029】
c)2つ以上のカルボキシル基を有するイソシアヌレート誘導体
2つ以上のカルボキシル基を有するイソシアヌレート誘導体としては、2つ以上のカルボキシル基とイソシアヌレート骨格とを有する化合物であれば、特に限定されないが、例えば、柔軟性と耐熱性がバランスよく向上した硬化塗膜を形成できる点から、A-1樹脂と同じく、上記一般式(1)で表される化合物が好ましい。また、一般式(1)で表される化合物のうち、柔軟性と耐熱性がさらにバランスよく向上した硬化塗膜を形成できる点から、-R1-、-R2-、-R3-がいずれも-CH2-CH2-CH2-であるトリス(3-カルボキシプロピル)イソシアヌレート、-R1-、-R2-、-R3-がいずれも-CH2-CH2-であるトリス(2-カルボキシエチル)イソシアヌレートが特に好ましい。これらの化合物は、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0030】
A-2樹脂(固形分)中における、2つ以上のカルボキシル基を有するイソシアヌレート誘導体の割合(仕込み割合)は、特に限定されないが、その下限値は、現像性と柔軟性と耐熱性を確実に得る点から15質量%が好ましく、25質量%が特に好ましい。一方で、2つ以上のカルボキシル基を有するイソシアヌレート誘導体の割合(仕込み割合)の上限値は、b)エチレン性不飽和基含有カルボン酸の導入量を維持して感度を確実に得つつ、d)多塩基酸及び/または多塩基酸無水物の導入量を維持して現像性を確実に得る点から50質量%が好ましく、40質量%が特に好ましい。
【0031】
d)多塩基酸及び/または多塩基酸無水物
多塩基酸及び/または多塩基酸無水物が付加反応することで、樹脂に遊離のカルボキシル基がさらに導入される。多塩基酸及び/または多塩基酸無水物は、特に限定されず、飽和、不飽和のいずれも使用可能である。多塩基酸には、例えば、A-1樹脂と同じく、コハク酸、マレイン酸、アジピン酸、クエン酸、フタル酸、テトラヒドロフタル酸、3-メチルテトラヒドロフタル酸、4-メチルテトラヒドロフタル酸、3-エチルテトラヒドロフタル酸、4-エチルテトラヒドロフタル酸等のテトラヒドロフタル酸類、ヘキサヒドロフタル酸、3-メチルヘキサヒドロフタル酸、4-メチルヘキサヒドロフタル酸、3-エチルヘキサヒドロフタル酸、4-エチルヘキサヒドロフタル酸等のヘキサヒドロフタル酸類、メチルテトラヒドロフタル酸、エンドメチレンテトラヒドロフタル酸、メチルエンドメチレンテトラヒドロフタル酸等のテトラヒドロフタル酸類、トリメリット酸、ピロメリット酸及びジグリコール酸等が挙げられる。多塩基酸無水物としては、上記した多塩基酸の無水物が挙げられる。これらの化合物は、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。A-2樹脂(固形分)中における、多塩基酸及び/または多塩基酸無水物の割合(仕込み割合)は、特に限定されないが、その下限値は、良好な現像性と固形分酸価を調整する点から1質量%が好ましく、3質量%が特に好ましい。一方で、多塩基酸及び/または多塩基酸無水物の割合(仕込み割合)の上限値は、絶縁信頼性の低下を確実に防止し、固形分酸価を調整する点から20質量%が好ましく、15質量%が特に好ましい。
【0032】
A-3樹脂
A-3樹脂としては、例えば、a)1分子中に2つ以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂のエポキシ基の少なくとも一部にb)エチレン性不飽和基含有カルボン酸とe)炭素数が10以上である少なくとも1種の脂肪族ジカルボン酸を反応させてエチレン性不飽和基含有カルボン酸化エポキシ樹脂を得て、生成した水酸基及び/または前記エポキシ樹脂の他のエポキシ基の一部にc)2つ以上のカルボキシル基を有するイソシアヌレート誘導体を反応させて得られた反応生成物に、さらにd)多塩基酸及び/または多塩基酸無水物を付加させて得られる感光性樹脂が挙げられる。
【0033】
a)1分子中に2つ以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂
1分子中に2つ以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂としては、特に限定されず、例えば、A-1樹脂、A-2樹脂と同じく、2官能以上のエポキシ樹脂(すなわち、多官能エポキシ樹脂)であればいずれでも使用可能である。1分子中に2つ以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂のエポキシ当量は、特に限定されないが、エポキシ当量の上限値は、b)エチレン性不飽和基含有カルボン酸とc)2つ以上のカルボキシル基を有するイソシアヌレート誘導体とd)多塩基酸及び/または多塩基酸無水物とe)炭素数が10以上である少なくとも1種の脂肪族ジカルボン酸の導入割合の低下による感光性、現像性、柔軟性及び耐熱性の低下を確実に防止する点から1000g/eqが好ましく、500g/eqがより好ましく、400g/eqが特に好ましい。一方で、エポキシ当量の下限値は、機械的強度の点から100g/eqが好ましく、200g/eqが特に好ましい。
【0034】
1分子中に2つ以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂は、特に限定されないが、例えば、A-1樹脂、A-2樹脂と同じく、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂、フェニルアラルキル型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、シリコーン変性エポキシ樹脂等のゴム変性エポキシ樹脂、ε-カプロラクトン変性エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂等のフェノールノボラック型エポキシ樹脂、о-クレゾールノボラック型等のクレゾールノボラック型エポキシ樹脂、環状脂肪族多官能エポキシ樹脂、グリシジルエステル型多官能エポキシ樹脂、グリシジルアミン型多官能エポキシ樹脂、複素環式多官能エポキシ樹脂、ビスフェノール変性ノボラック型エポキシ樹脂、多官能変性ノボラック型エポキシ樹脂、フェノール類とフェノール性水酸基を有する芳香族アルデヒドとの縮合物型エポキシ樹脂、フルオレン骨格を有するエポキシ樹脂、アダマンタン骨格を有するエポキシ樹脂等を挙げることができる。
【0035】
b)エチレン性不飽和基含有カルボン酸
エチレン性不飽和基含有カルボン酸としては、例えば、A-1樹脂、A-2樹脂と同じく、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、チグリン酸、アンゲリカ酸、桂皮酸などのラジカル重合性不飽和モノカルボン酸を挙げることができる。これらのエチレン性不飽和基含有カルボン酸は、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。A-3樹脂(固形分)中における、エチレン性不飽和基含有カルボン酸の割合(仕込み割合)は、特に限定されないが、その下限値は、感度を確実に得る点から3質量%が好ましく、5質量%が特に好ましい。一方で、エチレン性不飽和基含有カルボン酸の割合(仕込み割合)の上限値は、c)2つ以上のカルボキシル基を有するイソシアヌレート誘導体とd)多塩基酸及び/または多塩基酸無水物とe)炭素数が10以上である少なくとも1種の脂肪族ジカルボン酸の導入量を維持して現像性と柔軟性と耐熱性をバランスよく向上させる点から15質量%が好ましく、10質量%が特に好ましい。
【0036】
e)炭素数が10以上である少なくとも1種の脂肪族ジカルボン酸
炭素数が10以上である脂肪族ジカルボン酸は、多官能エポキシ樹脂のエポキシ基に反応して、多官能エポキシ樹脂に上記脂肪族ジカルボン酸由来の長鎖炭化水素構造が導入されることで、感光性樹脂組成物の硬化物の柔軟性、絶縁信頼性を向上させることができる。炭素数が10以上である脂肪族ジカルボン酸としては、直鎖状または分岐状脂肪族ジカルボン酸が挙げられ、飽和、不飽和のいずれも使用可能である。上記脂肪族ジカルボン酸は、柔軟性と指触乾燥性の両立の点から、直鎖状または炭素数2以下の側鎖を2本以下有する分岐状が好ましい。
【0037】
炭素数が10以上である脂肪族ジカルボン酸としては、例えば、セバシン酸(C10)、ドデカン二酸(C12)、テトラデカン二酸(C14)、ヘキサデカン二酸(C16)、エイコサン二酸(C20)、エチルオクタデカン二酸(C20)、エイコサジエン二酸(C20)、ビニルオクタデカエン二酸(C20)、ジメチルエイコサジエン二酸(C22)、ジメチルエイコサン二酸(C22)、ジフェニルヘキサデカン二酸(C28)、オレイン酸(C18)等の不飽和脂肪酸の二量体化反応によるC36ダイマー酸等を挙げることができる。上記した脂肪族ジカルボン酸は、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0038】
A-3樹脂(固形分)中における、炭素数が10以上である脂肪族ジカルボン酸の割合(仕込み割合)は、特に限定されないが、その下限値は、柔軟性と絶縁信頼性をより向上させる点から5質量%が好ましく、10質量%が特に好ましい。一方で、炭素数が10以上である脂肪族ジカルボン酸の割合(仕込み割合)の上限値は、c)2つ以上のカルボキシル基を有するイソシアヌレート誘導体とd)多塩基酸及び/または多塩基酸無水物の導入量を維持して現像性と柔軟性と耐熱性をバランスよく向上させる点から25質量%が好ましく、20質量%が特に好ましい。
【0039】
c)2つ以上のカルボキシル基を有するイソシアヌレート誘導体
2つ以上のカルボキシル基を有するイソシアヌレート誘導体としては、2つ以上のカルボキシル基とイソシアヌレート骨格とを有する化合物であれば、特に限定されないが、例えば、柔軟性と耐熱性がバランスよく向上した硬化塗膜を形成できる点から、A-1樹脂、A-2樹脂と同じく、上記一般式(1)で表される化合物が好ましい。また、一般式(1)で表される化合物のうち、柔軟性と耐熱性がさらにバランスよく向上した硬化塗膜を形成できる点から、-R1-、-R2-、-R3-がいずれも-CH2-CH2-CH2-であるトリス(3-カルボキシプロピル)イソシアヌレート、-R1-、-R2-、-R3-がいずれも-CH2-CH2-であるトリス(2-カルボキシエチル)イソシアヌレートが特に好ましい。これらの化合物は、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0040】
A-3樹脂(固形分)中における、2つ以上のカルボキシル基を有するイソシアヌレート誘導体の割合(仕込み割合)は、特に限定されないが、その下限値は、現像性と柔軟性と耐熱性を確実に得る点から5質量%が好ましく、10質量%が特に好ましい。一方で、2つ以上のカルボキシル基を有するイソシアヌレート誘導体の割合(仕込み割合)の上限値は、b)エチレン性不飽和基含有カルボン酸の導入量を維持して感度を確実に得つつ、d)多塩基酸及び/または多塩基酸無水物の導入量を維持して多塩基酸及び/または多塩基酸無水物に由来する現像性を確実に付与し、またe)炭素数が10以上である少なくとも1種の脂肪族ジカルボン酸の導入量を維持して上記脂肪族ジカルボン酸の長鎖炭化水素骨格に起因した柔軟性を確実に付与する点から25質量%が好ましく、20質量%が特に好ましい。
【0041】
d)多塩基酸及び/または多塩基酸無水物
多塩基酸及び/または多塩基酸無水物が付加反応することで、樹脂に遊離のカルボキシル基がさらに導入される。多塩基酸及び/または多塩基酸無水物は、特に限定されず、飽和、不飽和のいずれも使用可能である。多塩基酸には、例えば、A-1樹脂、A-2樹脂と同じく、コハク酸、マレイン酸、アジピン酸、クエン酸、フタル酸、テトラヒドロフタル酸、3-メチルテトラヒドロフタル酸、4-メチルテトラヒドロフタル酸、3-エチルテトラヒドロフタル酸、4-エチルテトラヒドロフタル酸等のテトラヒドロフタル酸類、ヘキサヒドロフタル酸、3-メチルヘキサヒドロフタル酸、4-メチルヘキサヒドロフタル酸、3-エチルヘキサヒドロフタル酸、4-エチルヘキサヒドロフタル酸等のヘキサヒドロフタル酸類、メチルテトラヒドロフタル酸、エンドメチレンテトラヒドロフタル酸、メチルエンドメチレンテトラヒドロフタル酸等のテトラヒドロフタル酸類、トリメリット酸、ピロメリット酸及びジグリコール酸等が挙げられる。多塩基酸無水物としては、上記した多塩基酸の無水物が挙げられる。これらの化合物は、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。A-3樹脂(固形分)中における、多塩基酸及び/または多塩基酸無水物の割合(仕込み割合)は、特に限定されないが、その下限値は、良好な現像性と固形分酸価を調整する点から2質量%が好ましく、4質量%が特に好ましい。一方で、多塩基酸及び/または多塩基酸無水物の割合(仕込み割合)の上限値は、絶縁信頼性の低下を確実に防止し、固形分酸価を調整する点から30質量%が好ましく、20質量%が特に好ましい。
【0042】
A-1樹脂、A-2樹脂、A-3樹脂のうち、柔軟性がさらに向上する点からは、A-1樹脂とA-3樹脂が好ましく、現像性と耐熱性がさらに向上する点からは、A-1樹脂とA-2樹脂が好ましく、現像性と耐熱性と柔軟性のいずれもがさらに向上する点から、A-1樹脂が特に好ましい。
【0043】
(A)アルカリ可溶性感光性樹脂の重量平均分子量は、特に限定されないが、その下限値は、硬化物の強靭性及び指触乾燥性の低下を防止する点から、2000が好ましく、3000が特に好ましい。一方で、(A)アルカリ可溶性感光性樹脂の重量平均分子量の上限値は、現像性の低下を防止する点から、20000が好ましく、10000が特に好ましい。
【0044】
(A)アルカリ可溶性感光性樹脂の酸価は、特に限定されないが、現像性と絶縁信頼性をバランスよく向上した硬化塗膜を形成できる点から、50mgKOH/g以上150mgKOH/g以下が好ましく、60mgKOH/g以上120mgKOH/g以下が特に好ましい。
【0045】
(B)光重合開始剤
(B)成分である光重合開始剤は、一般的に使用されるものであれば特に限定されず、例えば、1,2-オクタンジオン,1-〔4-(フェニルチオ)-2-(O-ベンゾイルオキシム)〕、エタノン1-〔9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-1-(0-アセチルオキシム)、2-(アセチルオキシイミノメチル)チオキサンテン-9-オン、1,8-オクタンジオン,1,8-ビス[9-エチル-6-ニトロ-9H-カルバゾール-3-イル]-,1,8-ビス(O-アセチルオキシム)、1,8-オクタンジオン,1,8-ビス[9-(2-エチルヘキシル)-6-ニトロ-9H-カルバゾール-3-イル]-,1,8-ビス(O-アセチルオキシム)、(Z) -(9-エチル-6-ニトロ-9H-カルバゾール-3-イル)(4-((1-メトキシプロパン-2-イル)オキシ) -2-メチルフェニル)メタノン O-アセチルオキシム等のオキシムエステル系光重合開始剤、2-ベンジル-2-(N,N-ジメチルアミノ)-1-(4-モルフォリノフェニル)ブタン-1-オン、2-メチル-1-(4-メチルチオフェニル)-2-モルフォリノプロパン-1-オン等のα―アミノアルキルフェノン系光重合開始剤等が挙げられる。また、オキシムエステル系光重合開始剤及びα―アミノアルキルフェノン系光重合開始剤以外の光重合開始剤としては、例えば、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾイン-n-ブチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、アセトフェノン、ジメチルアミノアセトフェノン、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン、2,2-ジエトキシ-2-フェニルアセトフェノン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル-2-(ヒドロキシ-2-プロピル)ケトン、ベンゾフェノン、p-フェニルベンゾフェノン、4,4′-ジエチルアミノベンゾフェノン、ジクロルベンゾフェノン、2-メチルアントラキノン、2-エチルアントラキノン、2-ターシャリーブチルアントラキノン、2-アミノアントラキノン、2-メチルチオキサントン、2-エチルチオキサントン、2-クロルチオキサントン、2,4-ジメチルチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン、ベンジルジメチルケタール、アセトフェノンジメチルケタール、P‐ジメチルアミノ安息香酸エチルエステル等が挙げられる。これらの光重合開始剤は、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0046】
光重合開始剤の配合量は、特に限定されないが、アルカリ可溶性感光性樹脂100質量部に対して、1.0質量部以上30質量部以下が好ましく、3.0質量部以上15質量部以下が特に好ましい。
【0047】
(C)反応性希釈剤
本発明の感光性樹脂組成物では、必要に応じて、さらに(C)反応性希釈剤を含有してもよい。(C)成分である反応性希釈剤は、例えば、光重合性モノマーであり、1分子当たり少なくとも1つ、好ましくは1分子当たり2つ以上の重合性二重結合を有する化合物である。反応性希釈剤は、感光性樹脂組成物の光硬化を補強して、耐酸性、耐アルカリ性などを有する光硬化物を形成するのに寄与する。
【0048】
反応性希釈剤としては、例えば、単官能の(メタ)アクリレートモノマー、2官能の(メタ)アクリレートモノマー、3官能以上の(メタ)アクリレートモノマー等の(メタ)アクリレートモノマーを挙げることができる。具体例としては、メタクリル酸2-ヒドロキシエチル、フェノキシエチルメタクリレート、ジエチレングルコールモノメタクリレート、2‐ヒドロキシ‐3‐フェノキシプロピルアクリルレート等の単官能の(メタ)アクリレートモノマー;1,4‐ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6‐ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールアジペートジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルジ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジシクロペンテニルジ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性燐酸ジ(メタ)アクリレート、アリル化シクロヘキシルジ(メタ)アクリレート、イソシアヌレートジ(メタ)アクリレート等の2官能の(メタ)アクリレートモノマー;トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、プロピオン酸変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等のカプロラクトン変性ジペンタエリスリトールの(メタ)アクリレート等の3官能以上の(メタ)アクリレートモノマーを挙げることができる。また、反応性希釈剤としては、ウレタン(メタ)アクリレート類等を挙げることができる。これらは単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0049】
反応性希釈剤の配合量は、特に限定されないが、例えば、アルカリ可溶性感光性樹脂100質量部に対して、20質量部以上200質量部以下が好ましく、40質量部以上150質量部以下が特に好ましい。
【0050】
(D)エポキシ化合物
本発明の感光性樹脂組成物では、必要に応じて、さらに、(D)エポキシ化合物を含有してもよい。(D)成分であるエポキシ化合物は、硬化物の架橋密度を上げて、十分な強度を有する硬化塗膜等の硬化物を得るためのものである。エポキシ化合物には、例えば、エポキシ樹脂が挙げられる。エポキシ樹脂としては、特に限定されないが、例えば、上記した(A)アルカリ可溶性感光性樹脂の調製に使用できるエポキシ樹脂を挙げることができる。具体的には、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂、フェニルアラルキル型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、シリコーン変性エポキシ樹脂等のゴム変性エポキシ樹脂、ε-カプロラクトン変性エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂等のフェノールノボラック型エポキシ樹脂、о-クレゾールノボラック型等のクレゾールノボラック型エポキシ樹脂、環状脂肪族多官能エポキシ樹脂、グリシジルエステル型多官能エポキシ樹脂、グリシジルアミン型多官能エポキシ樹脂、複素環式多官能エポキシ樹脂、ビスフェノール変性ノボラック型エポキシ樹脂、多官能変性ノボラック型エポキシ樹脂、フェノール類とフェノール性水酸基を有する芳香族アルデヒドとの縮合物型エポキシ樹脂、フルオレン骨格を有するエポキシ樹脂、アダマンタン骨格を有するエポキシ樹脂等を挙げることができる。これらのエポキシ化合物は、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0051】
エポキシ化合物の配合量は、特に限定されないが、硬化塗膜の強度と十分な現像性をバランスよく向上させる点から、アルカリ可溶性感光性樹脂100質量部に対して、50質量部以上300質量部以下が好ましく、100質量部以上250質量部以下が特に好ましい。
【0052】
(E)有機フィラー
本発明の感光性樹脂組成物では、必要に応じて、さらに、(E)有機フィラーとしてウレタンビーズを含有してもよい。(E)成分であるウレタンビーズは、感光性樹脂組成物の硬化物の柔軟性向上に寄与して、結果、フレキシブルプリント配線板の絶縁被膜としてフレキシブルプリント配線板の折り曲げ性向上に寄与する。ウレタンビーズの平均粒子径としては、例えば、0.1μm以上8μm以下が挙げられる。
【0053】
ウレタンビーズの配合量は、特に限定されないが、感光性樹脂組成物の硬化物の柔軟性向上に確実に寄与しつつ、感光性樹脂組成物の塗工性を確実に得る点から、アルカリ可溶性感光性樹脂100質量部に対して、20質量部以上120質量部以下が好ましく、40質量部以上80質量部以下が特に好ましい。
【0054】
(F)難燃剤
本発明の感光性樹脂組成物では、必要に応じて、さらに、(F)難燃剤を含有してもよい。プリント配線板には、高発熱量の電子部品や光源が搭載されることがあるところ、感光性樹脂組成物に難燃剤を配合することで、硬化物の難燃性向上に寄与することができる。難燃剤としては、例えば、リン系の難燃剤を挙げることができる。リン系の難燃剤としては、例えば、トリス(クロロエチル)ホスフェート、トリス(2,3-ジクロロプロピル)ホスフェート、トリス(2-クロロプロピル)ホスフェート、トリス(2,3-ブロモプロピル)ホスフェート、トリス(ブロモクロロプロピル)ホスフェート、2,3-ジブロモプロピル-2,3-クロロプロピルホスフェート、トリス(トリブロモフェニル)ホスフェート、トリス(ジブロモフェニル)ホスフェート、トリス(トリブロモネオペンチル)ホスフェートなどの含ハロゲン系リン酸エステル;トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリオクチルホスフェート、トリブトキシエチルホスフェートなどのノンハロゲン系脂肪族リン酸エステル;トリフェニルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、ジクレジルフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、キシレニルジフェニルホスフェート、トリス(イソプロピルフェニル)ホスフェート、イソプロピルフェニルジフェニルホスフェート、ジイソプロピルフェニルフェニルホスフェート、トリス(トリメチルフェニル)ホスフェート、トリス(t-ブチルフェニル)ホスフェート、ヒドロキシフェニルジフェニルホスフェート、オクチルジフェニルホスフェートなどのノンハロゲン系芳香族リン酸エステル;トリスジエチルホスフィン酸アルミニウム、トリスメチルエチルホスフィン酸アルミニウム、トリスジフェニルホスフィン酸アルミニウム、ビスジエチルホスフィン酸亜鉛、ビスメチルエチルホスフィン酸亜鉛、ビスジフェニルホスフィン酸亜鉛、ビスジエチルホスフィン酸チタニル、テトラキスジエチルホスフィン酸チタン、ビスメチルエチルホスフィン酸チタニル、テトラキスメチルエチルホスフィン酸チタン、ビスジフェニルホスフィン酸チタニル、テトラキスジフェニルホスフィン酸チタンなどのホスフィン酸の金属塩、ジフェニルビニルホスフィンオキサイド、トリフェニルホスフィンオキサイド、トリアルキルホスフィンオキサイド、トリス(ヒドロキシアルキル)ホスフィンオキサイド等のホスフィンオキサイド系化合物等が挙げられる。これらのうち、有機リン酸塩系の難燃剤が好ましい。
【0055】
本発明の感光性樹脂組成物には、上記した(A)~(F)成分に加えて、必要に応じて、種々の添加成分、例えば、着色剤、添加剤、消泡剤、非反応性希釈剤などを、適宜、含有させることができる。
【0056】
着色剤は、顔料、色素等、特に限定されない。また、着色剤の色彩は、白色着色剤、青色着色剤、緑色着色剤、黄色着色剤、紫色着色剤、黒色着色剤、赤色着色剤等、いずれの色彩も使用可能である。上記着色剤には、例えば、白色着色剤である酸化チタン(例えば、ルチル型酸化チタン、アナターゼ型酸化チタン等)、黒色着色剤であるカーボンブラック、アセチレンブラック等の無機系着色剤を挙げることができる。また、緑色着色剤であるフタロシアニングリーン、青色着色剤であるフタロシアニンブルーやリオノールブルー等のフタロシアニン化合物、クロモフタルイエロー等のアントラキノン化合物等の有機系着色剤を挙げることができる。
【0057】
添加剤としては、例えば、ジシアンジアミド(DICY)及びその誘導体、メラミン及びその誘導体、三フッ化ホウ素-アミンコンプレックス、有機酸ヒドラジド、ジアミノマレオニトリル(DAMN)及びその誘導体、グアナミン及びその誘導体、アミンイミド(AI)等の硬化促進剤を挙げることができる。消泡剤としては、シリコーン系、炭化水素系及びアクリルポリマー系を挙げることができる。
【0058】
非反応性希釈剤は、感光性樹脂組成物の粘度、乾燥性、塗工性等を調節するためのものである。非反応性希釈剤として、例えば、有機溶剤を挙げることができる。有機溶剤には、例えば、メチルエチルケトン等のケトン類、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、メタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、シクロヘキサノール等のアルコール類、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の脂環式炭化水素類、セロソルブ、ブチルセロソルブ等のセロソルブ類、カルビトール、ブチルカルビトール等のカルビトール類、酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート、カルビトールアセテート、ブチルカルビトールアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチルジグリコールアセテート等のエステル類等を挙げることができる。これらは、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0059】
上記した本発明の感光性樹脂組成物の製造方法は、特定の方法に限定されず、例えば、上記各成分を所定割合で配合後、室温(例えば、10℃~30℃)にて、三本ロール、ボールミル、サンドミル、ビーズミル、ニーダー等の混合、混練手段、またはスーパーミキサー、プラネタリーミキサー、トリミックス等の攪拌、混合手段により、混練または混合して製造することができる。また、混練または混合の前に、必要に応じて、予備混練、予備混合を行ってもよい。
【0060】
次に、本発明の感光性樹脂組成物の使用方法例を説明する。ここでは、本発明の感光性樹脂組成物を、プリント配線板上に塗工して、ソルダーレジスト膜等の絶縁被膜をプリント配線板に形成する方法、すなわち、本発明の感光性樹脂組成物の硬化膜を備えたプリント配線板の製造方法を例にして説明する。
【0061】
上記のように製造した本発明の感光性樹脂組成物を、プリント配線板に所望の厚さ(例えば5~30μmの厚さ)で塗布する。塗工の手段としては、公知の手段をいずれも使用でき、例えば、スクリーン印刷、バーコータ、スプレー塗工、アプリケータ、ブレードコータ、ナイフコータ、ロールコータ、グラビアコータ等を挙げることができる。感光性樹脂組成物の塗工後、必要に応じて、感光性樹脂組成物を加熱装置(例えば、熱風炉、遠赤外線炉等)で予備乾燥し、感光性樹脂組成物から非反応性希釈剤を揮発させて、塗膜の表面をタックフリーの状態にする。予備乾燥の条件としては、例えば、乾燥温度60℃~90℃、乾燥時間10分~60分が挙げられる。予備乾燥の後、塗布した感光性樹脂組成物上に、回路パターンのランド以外を透光性にしたパターンを有するネガフィルムを密着させ、ネガフィルムの上から紫外線(例えば、波長300~400nm)を照射させて感光性樹脂組成物の塗膜を光硬化させて光硬化膜を形成する。次に、前記ランドに対応する非露光領域を希アルカリ水溶液で除去することにより塗膜が現像される。現像方法には、例えば、スプレー法、シャワー法等が用いられ、希アルカリ水溶液としては、例えば、0.5~5質量%の炭酸ナトリウム水溶液を使用することができる。次に、前記現像後の塗膜を、加熱装置(例えば、熱風循環式の乾燥機等)で、120℃~170℃で20分~80分、熱硬化処理(ポストキュア)を行って硬化膜を形成することにより、プリント配線板上に目的とするパターンを有する絶縁被膜(ソルダーレジスト膜)を形成させることができる。なお、プリント配線板としては、樹脂フィルムを基板としたフレキシブルプリント配線板、リジット基板を用いたプリント配線板が挙げられ、本発明の感光性樹脂組成物では、柔軟性に優れた硬化膜をプリント配線板に形成できるので、特に、フレキシブルプリント配線板への適用に優れている。
【実施例0062】
次に、本発明の実施例を説明するが、本発明はその趣旨を超えない限り、これらの例に限定されるものではない。
【0063】
実施例1~3、比較例1~2
下記表1に示す各成分を下記表1に示す配合割合にて配合し、3本ロールを用いて室温にて混合分散させて、実施例1~3、比較例1~2にて使用する感光性樹脂組成物を調製した。そして、調製した感光性樹脂組成物を以下のように塗工して試験サンプルを作製した。下記表1中の配合量の数字は、特に断りのない限り質量部を示す。また、下記表1中の空欄は配合なしを意味する。
【0064】
(A)アルカリ可溶性感光性樹脂
A-1樹脂の合成
攪拌機、還流冷却管、温度計を備えた500mLの四つ口セパラブルフラスコに、エチルジグリコールアセテート(EDGAC)を157.8g、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂(日本化薬株式会社、NC-3000、エポキシ当量227)を138.5g(エポキシ基:0.5mol)仕込み、反応容器内に窒素:空気(2:1)を0.1mL/secで吹き込みながら、100℃で溶解するまで加熱撹拌した。溶解後、アクリル酸を14.4g(0.2mol)、トリフェニルホスフィンを0.4g、メトキシハイドロキノンを0.1g加えて、115℃で6時間、加熱撹拌し、酸価が3mgKOH/gとなった。次いで、トリス(3-カルボキシプロピル)イソシアヌレート(四国化成株式会社、C3-CIC酸)を83.9g(カルボキシル基:0.65mol)加えて、さらに115℃で10時間、加熱撹拌した。これにより固形分60質量%、固形分酸価82.9mgKOH/g、重量平均分子量(Mw)4200の感光性樹脂溶液(A-1樹脂の溶液)を395g得た。
【0065】
A-2樹脂の合成
A-1樹脂の合成と同様に、攪拌機、還流冷却管、温度計を備えた500mLの四つ口セパラブルフラスコに、エチルジグリコールアセテート(EDGAC)を150.7g、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂(日本化薬株式会社、NC-3000、エポキシ当量227)を138.5g(エポキシ基:0.5mol)仕込み、反応容器内に窒素:空気(2:1)を0.1mL/secで吹き込みながら、100℃で溶解するまで加熱撹拌した。溶解後、アクリル酸を14.4g(0.2mol)、トリフェニルホスフィンを0.4g、メトキシハイドロキノンを0.1g加えて、115℃で6時間、加熱撹拌し、酸価が3mgKOH/gとなった。次いで、トリス(2-カルボキシエチル)イソシアヌレート(四国化成株式会社、CIC酸)を63.3g(カルボキシル基:0.55mol)加えて、さらに115℃で10時間、加熱撹拌し、さらに水添トリメリット酸無水物(三菱ガス化学株式会社、H-TMAn-S)を9.9g(0.05mol)加えて100℃で4時間、加熱撹拌した。これにより固形分60質量%、固形分酸価86.9mgKOH/g、重量平均分子量(Mw)3900の感光性樹脂溶液(A-2樹脂の溶液)を377g得た。
【0066】
A-3樹脂の合成
A-1樹脂、A-2樹脂の合成と同様に、攪拌機、還流冷却管、温度計を備えた500mLの四つ口セパラブルフラスコに、エチルジグリコールアセテート(EDGAC)を159.4g、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂(日本化薬株式会社、NC-3000、エポキシ当量227)を138.5g(エポキシ基:0.5mol)仕込み、反応容器内に窒素:空気(2:1)を0.1mL/secで吹き込みながら、100℃で溶解するまで加熱撹拌した。溶解後、アクリル酸を14.4g(0.2mol)、トリフェニルホスフィンを0.4g、メトキシハイドロキノンを0.1g、8-エチルオクタデカン二酸(岡村製油株式会社、SB-20)を34.2g(カルボキシル基:0.2mol)加えて、115℃で10時間、加熱撹拌し、酸価が3mgKOH/gとなったところで、トリス(3-カルボキシプロピル)イソシアヌレート(四国化成株式会社、C3-CIC酸)を32.25g(カルボキシル基:0.25mol)加えて、さらに115℃で10時間、加熱撹拌した。さらに、水添トリメリット酸無水物(三菱ガス化学株式会社、H-TMAn-S)を19.8g(0.1mol)加えて100℃で4時間、加熱撹拌した。これにより固形分60質量%、固形分酸価82.1mgKOH/g、重量平均分子量(Mw)6900の感光性樹脂溶液(A-3樹脂の溶液)を399g得た。
【0067】
(A)成分ではないアルカリ可溶性感光性樹脂(以下、「G樹脂」ということがある。)の調製
G-1樹脂
A樹脂の合成と同様に、攪拌機、還流冷却管、温度計を備えた500mLの四つ口セパラブルフラスコに、エチルジグリコールアセテート(EDGAC)を136.1g、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂(日本化薬株式会社、NC-3000、エポキシ当量227)を138.5g(エポキシ基:0.5mol)仕込み、反応容器内に窒素:空気(2:1)を0.1mL/secで吹き込みながら、100℃で溶解するまで加熱撹拌した。溶解後、アクリル酸を36.0g(0.5mol)、トリフェニルホスフィンを0.4g、メトキシハイドロキノンを0.1g加えて、115℃で10時間、加熱撹拌し、酸価が3mgKOH/gとなったところで、水添トリメリット酸無水物(三菱ガス化学株式会社、H-TMAn-S)を29.7g(0.15mol)加えて100℃で4時間、加熱撹拌した。これにより固形分60質量%、固形分酸価82.4mgKOH/g、重量平均分子量(Mw)3800の感光性樹脂溶液(G-1樹脂の溶液)を341g得た。
【0068】
G-2樹脂
A樹脂の合成と同様に、攪拌機、還流冷却管、温度計を備えた500mLの四つ口セパラブルフラスコに、エチルジグリコールアセテート(EDGAC)を159.4g、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂(日本化薬株式会社、NC-3000、エポキシ当量227)を138.5g(エポキシ基:0.5mol)仕込み、反応容器内に窒素:空気(2:1)を0.1mL/secで吹き込みながら、100℃で溶解するまで加熱撹拌した。溶解後、アクリル酸を14.4g(0.2mol)、トリフェニルホスフィンを0.4g、メトキシハイドロキノンを0.1g、8-エチルオクタデカン二酸(岡村製油株式会社、SB-20)を51.3g(カルボキシル基:0.3mol)加えて、115℃で10時間、加熱撹拌し、酸価が3mgKOH/gとなったところで、さらに、水添トリメリット酸無水物(三菱ガス化学株式会社、H-TMAn-S)を35.6g(0.18mol)加えて100℃で4時間、加熱撹拌した。これにより固形分60質量%、固形分酸価84.2mgKOH/g、重量平均分子量(Mw)9000の感光性樹脂溶液(G-2樹脂の溶液)を400g得た。
【0069】
(B)光重合開始剤
・chemcure DETX:日本シイベルヘグナー株式会社
・イルガキュア907:チバ・スペシャリティ・ケミカルズ
【0070】
(C)反応性希釈剤
・KAYARAD DPCA-60:日本化薬株式会社
【0071】
(D)エポキシ化合物
・EPICRON 860:DIC社
【0072】
(E)有機フィラー
・RHC-730:平均粒子径6μm、大日精化工業株式会社
【0073】
(F)難燃剤
・OP 935:クラリアントジャパン社
【0074】
着色剤
・LIONOL BLUE FG7351:東洋インキ製造株式会社
・クロモフタルイエロー AGR:チバ・スペシャリティ・ケミカルズ株式会社
非反応性希釈剤
・EDGAC:三洋化成品株式会社
添加剤
・DICY-7:硬化促進剤、三菱ケミカル株式会社
・メラミン:硬化促進剤、日産化学株式会社
消泡剤
・KS-66:信越化学工業株式会社
【0075】
試験体作製工程
厚さ25μmのポリイミドフィルム(東レ・デュポン株式会社、カプトン100H)にDRY膜厚が20μmとなるように,スクリーン印刷法にて、上記のように調製した感光性樹脂組成物を塗布し、BOX炉内にて70℃、20分の予備乾燥を行った。予備乾燥後、塗布した感光性樹脂組成物上に、露光装置(株式会社オーク製作所、HMW-680GW)にて400mJ/cm2の紫外線(波長300~400nm)を照射した。照射後、BOX炉内にて、150℃、60分の熱硬化処理(ポストキュア)を行って熱硬化させることにより硬化塗膜を得、評価用試験体とした。
【0076】
評価項目
(1)現像性
上記の試験体作製工程において、予備乾燥後の基板を、1質量%炭酸ナトリウム水溶液を用いて30℃、60秒、0.2MPaでスプレー現像した。現像後の基板を目視により観察し、以下の基準に従って評価した。
○:基板上に残渣無し
△:基板上に白色の残渣あり
×:基板上に黒色の残渣あり
【0077】
(2)耐熱性
ポリイミドフィルムに代えて銅箔付きポリイミドを用いて上記の試験体作製工程に準じて作製したサンプルについて、硬化塗膜をJIS C-6481の試験方法に従って、260℃のはんだ層に10秒間浸漬後、セロハンテープによるピーリング試験を1サイクルとし、これを繰り返した後の塗膜状態を目視により観察し、以下の基準に従って評価した。
○:2サイクル繰り返し後の塗膜に変化が認められない。
△:2サイクル繰り返し後の塗膜に変化が認められる。
×:1サイクル後の塗膜に変化が認められる。
【0078】
(3)折り曲げ性(柔軟性)
試験体作製工程で得られたサンプルについて、はぜ折りにより180°折り曲げを数回繰り返して行い、その際の硬化塗膜におけるクラック発生状況を目視及び200倍の光学顕微鏡で観察し、クラックの発生しなかった回数を測定し、以下の基準に従って評価した。
○:折り曲げを2~4回繰り返してもクラック発生無し。
△:折り曲げを1回行ってもクラック発生無し。
×:折り曲げを1回行ってクラック発生。
【0079】
評価結果を下記表1に示す。また、A-1樹脂、A-2樹脂、A-3樹脂、G-1樹脂、G-2樹脂の合成に使用した成分とその配合量を下記表2に示す。
【0080】
【0081】
【0082】
上記表1、2に示すように、2つ以上のカルボキシル基を有するイソシアヌレート誘導体であるトリス(3-カルボキシプロピル)イソシアヌレートまたはトリス(2-カルボキシエチル)イソシアヌレートがアルカリ可溶性樹脂に導入されたA樹脂を使用した実施例1~3の感光性樹脂組成物では、現像性を損なうことなく、柔軟性と耐熱性に優れた硬化塗膜を形成できた。特に、炭素数が10以上である脂肪族ジカルボン酸がアルカリ可溶性樹脂に導入されなかったA-1樹脂を用いた実施例1、炭素数が10以上である脂肪族ジカルボン酸がアルカリ可溶性樹脂に導入されなかったA-2樹脂を用いた実施例2では、現像性と耐熱性がさらに向上した。また、トリス(3-カルボキシプロピル)イソシアヌレートがアルカリ可溶性樹脂に導入されたA-1樹脂を用いた実施例1、トリス(3-カルボキシプロピル)イソシアヌレートがアルカリ可溶性樹脂に導入されたA-3樹脂を用いた実施例3は、トリス(2-カルボキシエチル)イソシアヌレートがアルカリ可溶性樹脂に導入されたA-2樹脂を用いた実施例2と比較して折り曲げ性がさらに向上した。
【0083】
一方で、上記表1、2に示すように、2つ以上のカルボキシル基を有するイソシアヌレート誘導体がアルカリ可溶性樹脂に導入されなかったG樹脂を使用した比較例1、2の感光性樹脂組成物では、柔軟性と耐熱性を両立させることができなかった。
本発明の感光性樹脂組成物は、現像性を損なうことなく、柔軟性と耐熱性に優れた硬化塗膜を形成できるので、特に、フレキシブルプリント配線板の絶縁被膜の分野で利用価値が高い。