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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022052894
(43)【公開日】2022-04-05
(54)【発明の名称】Tie2活性化作用剤及び飲食品
(51)【国際特許分類】
   A23L 33/105 20160101AFI20220329BHJP
   A61K 36/67 20060101ALI20220329BHJP
   A61K 36/73 20060101ALI20220329BHJP
   A61K 36/752 20060101ALI20220329BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20220329BHJP
【FI】
A23L33/105
A61K36/67
A61K36/73
A61K36/752
A61P43/00 111
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020159407
(22)【出願日】2020-09-24
(71)【出願人】
【識別番号】507039187
【氏名又は名称】株式会社ニコリオ
(74)【代理人】
【識別番号】100132207
【弁理士】
【氏名又は名称】太田 昌孝
(72)【発明者】
【氏名】横川 剛
(72)【発明者】
【氏名】鏡原 仁美
【テーマコード(参考)】
4B018
4C088
【Fターム(参考)】
4B018LB01
4B018LB02
4B018LB03
4B018LB05
4B018LB06
4B018LB07
4B018LB08
4B018LB09
4B018MD48
4B018MD52
4B018MD61
4B018ME14
4B018MF01
4C088AB36
4C088AB51
4C088AB62
4C088AC01
4C088BA08
4C088CA03
4C088MA07
4C088MA52
4C088NA14
4C088ZC41
(57)【要約】
【課題】安全性の高い天然物の中からTie2活性化作用を有するものを見出し、それを有効成分とするTie2活性化作用剤及び飲食品を提供する。
【解決手段】Tie2活性化作用剤に、ヒハツの抽出物、ビワの抽出物、及び柚子の抽出物を有効成分として含有せしめる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒハツの抽出物、ビワの抽出物、及び柚子の抽出物を有効成分として含有することを特徴とするTie2活性化作用剤。
【請求項2】
前記ヒハツの抽出物、前記ビワの抽出物、及び前記柚子の抽出物を、固形分換算の質量基準で1:1:1~100:1:1の配合比で含有することを特徴とする請求項1に記載のTie2活性化作用剤
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のTie2活性化作用剤を配合してなることを特徴とする飲食品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、Tie2活性化作用剤及び飲食品に関する。
【背景技術】
【0002】
血管は、血管内皮細胞と血管壁細胞(血管平滑筋細胞やペリサイト)とが、細胞外マトリックスを介して間接的に、又は直接的に接着する構造を有しており、酵素及び栄養素を生体組織に供給し、生体組織から老廃物を除去する機能を有している。
【0003】
一般に、血管の形成は、新たに血管が形成される血管発生(vasculogenesis)と、形成された既存の血管が伸長し、分岐することにより、新たな血管のネットワークが形成される血管新生(angiogenesis)との2段階の機序に分けられる。前者は、血管内皮増殖因子(VEGF)が作用し、脈管形成と呼ばれる血管の初期発生からその後の血管新生に至るまで非常に広い範囲の血管形成に関する機序であり、後者は、アンジオポエチン(Ang)が作用し、血管内皮細胞と血管壁細胞との接着の制御、血管の構造的安定化に関する機序である。
【0004】
通常の酵素の発現状況においては、血管内皮細胞とその周囲を裏打ちする血管壁細胞とが強固に接着しており、血管構造が安定に保たれているが、組織で低酸素状況が生じると血管壁細胞が血管内皮細胞から脱離し、無秩序な血管が増生する、すなわち血管新生が起こることがある。このような現象(血管新生)は、腫瘍、慢性関節リウマチ、糖尿病網膜症、高脂血症、高血圧等の血管病変を主体とした疾患において、しばしば観察されている。
【0005】
このような血管新生は、血管内皮細胞に発現する受容体型チロシンキナーゼTie2(Tyrosine kinase with Ig and EGF homology domain2)を活性化させることにより、抑制されることが知られている(特許文献1参照)。
【0006】
従来、Tie2の活性化作用を有する物質としては、桂皮の抽出物(特許文献1参照)、霊芝の抽出物(特許文献2参照)、チリロサイド(特許文献3参照)等が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2009-263358号公報
【特許文献2】特開2017-132698号公報
【特許文献3】特開2013-213015号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、安全性の高い天然物の中からTie2活性化作用を有するものを見出し、それを有効成分とするTie2活性化作用剤及び飲食品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
このような目的を達成するために、本発明は、ヒハツの抽出物、ビワの抽出物、及び柚子の抽出物を有効成分として含有することを特徴とするTie2活性化作用剤を提供する。
【0010】
上記Tie2活性化作用剤において、前記ヒハツの抽出物、前記ビワの抽出物、及び前記柚子の抽出物を、固形分換算の質量基準で1:1:1~100:1:1の配合比で含有していればよい。
【0011】
また、本発明は、上記Tie2活性化作用剤を配合してなることを特徴とする飲食品を提供する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、安全性の高い天然物の中からTie2活性化作用を有するものを見出し、それを有効成分とするTie2活性化作用剤及び飲食品を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の実施の形態について説明する。
本実施形態に係るTie2活性化作用剤は、ヒハツの抽出物、ビワの抽出物、及び柚子の抽出物の混合物を有効成分として含有する。
【0014】
本実施形態において使用される抽出原料は、ヒハツ(学名:Piper longum L.)、ビワ(学名:Eriobotrya japonica Lindley)、及び柚子(学名:Citrus junosまたはCitrus maxima(文旦,中国名:柚子))である。なお、抽出原料として、上記柚子とともに、例えばグレープフルーツ(学名:Citrus×paradisi)等のCitrus属に属する柑橘類を用いてもよい。すなわち、本実施形態における柚子の抽出物は、上記柚子のみを抽出原料として用いた抽出処理により得られるものであってもよいし、上記柚子と上記柑橘類とを抽出原料として用いた抽出処理により得られるものであってもよい。
【0015】
ヒハツ(Piper longum)は、コショウ科コショウ属の蔓性の常緑木本であり、東南アジア等の地域で栽培されており、これらの地域から容易に入手され得る。抽出原料として使用し得るヒハツの構成部位としては、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、葉部、茎部、花部、果穂部、果実部、果皮部、果核部、種子部、根部、またはこれらの混合物等が挙げられるが、好ましくは果穂部である。
【0016】
ビワ(Eriobotrya japonica Lindley)は、バラ科ビワ属に属する常緑高木であり、中国南西部原産であり、長崎、千葉、鹿児島等で栽培されており、これらの地域から容易に入手され得る。抽出原料として使用し得るビワの構成部位としては、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、葉部、幹部、枝部、花部、蕾部、果実部、果皮部、果核部、種子部、根部、またはこれらの混合物等が挙げられるが、好ましくは葉部である。
【0017】
柚子(学名:Citrus junosまたはCitrus maxima)は、ミカン科ミカン属に属する常緑小高木であって、中国や日本で古くから栽培されており、これらの地域から容易に入手され得る。抽出原料として使用し得る柚子の構成部位としては、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、葉部、幹部、枝部、花部、蕾部、果実部、果皮部、果核部、種子部、根部又はこれらの混合物等が挙げられるが、好ましくは果実部である。なお、柚子とともに上記柑橘類を抽出原料として用いる場合、抽出原料として使用し得る柑橘類の構成部位としては、例えば、果実部等であればよい。
【0018】
本実施形態において、ヒハツの抽出物、ビワの抽出物及び柚子の抽出物の混合物に含まれるTie2活性化作用を有する物質の詳細は不明であるが、植物の抽出等に一般に用いられている抽出方法によって上記各抽出原料から得られる抽出物を混合することで、Tie2活性化作用を有する混合物を得ることができる。なお、抽出物には、抽出処理によって抽出原料から得られる抽出液、抽出液の希釈液もしくは濃縮液、抽出液を乾燥して得られる乾燥物、またはこれらの粗精製物もしくは精製物のいずれもが含まれる。
【0019】
上記抽出物は、抽出原料を乾燥した後、そのまま、または粗砕機を用いて粉砕し、抽出溶媒による抽出に供することにより得ることができる。乾燥は天日で行ってもよいし、通常使用される乾燥機を用いて行ってもよい。また、ヘキサン等の非極性溶媒によって脱脂等の前処理を施してから抽出原料として使用してもよい。脱脂等の前処理を行うことにより、植物の極性溶媒による抽出処理を効率よく行うことができる。
【0020】
抽出に用いられる溶媒としては、水、親水性有機溶媒、またはこれらの混合物等が挙げられ、室温または溶媒の沸点以下の温度で使用することが好ましい。Tie2活性化作用を有する上記混合物を得るための抽出物は、極性溶媒を抽出溶媒とする抽出処理によって容易に得ることができる。
【0021】
抽出溶媒として使用し得る水としては、例えば、純水、水道水、井戸水、鉱泉水、鉱水、温泉水、湧水、淡水等の他、これらに各種処理を施したものが含まれる。水に施す処理としては、例えば、精製、加熱、殺菌、濾過、イオン交換、浸透圧の調整、緩衝化等が含まれる。従って、本発明において抽出溶媒として使用し得る水には、精製水、熱水、イオン交換水、生理食塩水、リン酸緩衝液、リン酸緩衝生理食塩水等も含まれる。
【0022】
抽出溶媒として使用し得る親水性有機溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール等の炭素数1~5の低級脂肪族アルコール;アセトン、メチルエチルケトン等の低級脂肪族ケトン;1,3-ブチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン等の炭素数2~5の多価アルコール等が挙げられる。
【0023】
2種以上の極性溶媒の混合液を抽出溶媒として使用する場合、その混合比は適宜調整することができる。例えば、水と低級脂肪族アルコールとの混合液を使用する場合には水10容量部に対して低級脂肪族アルコール1~90容量部を混合することが好ましい。水と脂肪族ケトンとの混合液を使用する場合には、水10容量部に対して低級脂肪族ケトン1~40容量部を混合することが好ましい。水と多価アルコールとの混合液を使用する場合には、水10容量部に対して多価アルコール1~90容量部を混合することが好ましい。
【0024】
抽出処理は、抽出原料に含まれる可溶性成分を抽出溶媒に溶出させ得る限り特殊な抽出方法を採用する必要はなく、室温または還流加熱下で抽出することができる。例えば、抽出溶媒を満たした処理槽に各抽出原料を投入し、必要に応じて撹拌しながら、30分~4時間静置して可溶性成分を溶出した後、濾過して固形物を除去することにより抽出物を得ることができる。得られた抽出液から抽出溶媒を留去するとペースト状の濃縮物が得られ、この濃縮物をさらに乾燥することにより乾燥物が得られる。抽出条件は、抽出溶媒として水を用いた場合には50~95℃で1~4時間程度である。また、抽出溶媒として水とエタノールとの混合溶媒を用いた場合には、40~80℃で30分~4時間程度である。
【0025】
以上のようにして得られた抽出液は、該抽出液の希釈液もしくは濃縮液、該抽出液の乾燥物、またはこれらの粗精製物もしくは精製物を得るために、常法に従って希釈、濃縮、乾燥、精製等の処理を施してもよい。
【0026】
なお、得られた各抽出液をそのまま混合しても本実施形態に係るTie2活性化作用剤を調製することができるが、当該各抽出液から得られる濃縮液または乾燥物を混合してTie2活性化作用剤を調製する方が好ましい。乾燥物を得るにあたっては、吸湿性を改善するためにデキストリン、シクロデキストリン等のキャリアーを添加してもよい。
【0027】
また、各抽出原料は特有の匂いと味を有しているため、その生理活性の低下を招かない範囲で脱色、脱臭等を目的とする精製を行うことも可能であるが、大量に使用するものでない場合には、未精製のままでも実用上支障はない。精製は、例えば活性炭処理、吸着樹脂処理、イオン交換樹脂処理等によって行うことができる。
【0028】
なお、本実施形態に係るTie2活性化作用剤の有効成分である、ヒハツの抽出物、ビワの抽出物及び柚子の抽出物の混合物は、それぞれの抽出物を混合して得られるものであってもよいし、抽出原料としてのヒハツ、ビワ及び柚子の混合物を上記抽出処理に供して得られる抽出物であってもよい。
【0029】
以上のようにして得られるヒハツの抽出物、ビワの抽出物及び柚子の抽出物の混合物は、優れたTie2活性化作用を有しているため、その作用を利用してTie2活性化作用剤の有効成分として用いられ得る。
【0030】
本実施形態に係るTie2活性化作用剤の有効成分としての上記混合物において、ヒハツの抽出物、ビワの抽出物、及び柚子の抽出物の配合比(混合比)は、特に限定されるものではなく、目的等に応じて適宜決定されればよいが、ヒハツの抽出物、ビワの抽出物、及び柚子の抽出物の配合比(固形分換算の質量基準)が1:1:1~100:1:1であることが好ましい。特に、ビワの抽出物及び柚子の抽出物の配合量が、ヒハツの抽出物の配合量に対して相対的に多くなると、Tie2活性化作用剤において優れたTie2活性化作用が奏される傾向にあるため、上記配合比は、1:1:1~10:1:1であることが好ましく、1:1:1~3:1:1であることが特に好ましい。
【0031】
本実施形態に係るTie2活性化作用剤は、ヒハツの抽出物、ビワの抽出物、及び柚子の抽出物の混合物を製剤化したものであってもよい。
【0032】
上記混合物は、デキストリン、シクロデキストリン等の薬学的に許容し得るキャリアーその他任意の助剤を用いて、常法に従い、粉末状、顆粒状、液状等の任意の剤形に製剤化することができる。この際、助剤としては、例えば、賦形剤、安定剤、矯臭剤等を用いることができる。上記混合物を製剤化したTie2活性化作用剤の形態としては、例えば、軟膏剤、外用液剤等が挙げられる。
【0033】
本実施形態に係るTie2活性化作用剤は、例えば、ヒハツの抽出物、ビワの抽出物、及び柚子の抽出物の混合物が有するTie2活性化作用を通じて、例えば血管新生を抑制することができ、これによる種々の用途(例えば、腫瘍、慢性関節リウマチ、糖尿病網膜症、高脂血症、高血圧等の疾患の予防、治療又は改善用途等)に用いることができる。ただし、本実施形態に係るTie2活性化作用剤は、これらの用途以外にもTie2活性化作用を発揮する意義のあるすべての用途に用いることができる。
【0034】
また、本実施形態に係るTie2活性化作用剤は、優れたTie2活性化作用を有するため、飲食品等に配合するのに好適である。
【0035】
飲食品とは、人の健康に危害を加えるおそれが少なく、通常の社会生活において、経口または消化管投与により摂取されるものをいい、行政区分上の食品、医薬品、医薬部外品等の区分に制限されるものではない。したがって、本実施形態に係る「飲食品」は、経口的に摂取される一般食品、健康食品(機能性飲食品)、保健機能食品(特定保健用食品、栄養機能食品、機能性表示食品)、医薬部外品、医薬品等を構成する組成物を幅広く含むものである。本実施形態における飲食品は、当該飲食品またはその容器や包装、その販促物等に上記抽出物の混合物が有するTie2活性化作用が表示されているものであってもよいし、保健機能食品(特定保健用食品、機能性表示食品、栄養機能食品)、医薬部外品又は医薬品であってもよい。
【0036】
上記抽出物の混合物、又は上記抽出物の混合物から製剤化したTie2活性化作用剤を飲食品に配合する場合、それらにおける有効成分の配合量は、使用目的、症状、性別等を考慮して適宜変更することができるが、添加対象となる飲食品の一般的な摂取量を考慮して、成人1日あたりの抽出物摂取量が約1~1000mgになるようにするのが好ましい。なお、添加対象飲食品が顆粒状、錠剤状又はカプセル状の形態である場合、上記抽出物の混合物、又は上記抽出物の混合物から製剤化したTie2活性化作用剤の添加量は、添加対象飲食品に対して通常0.1~100質量%であり、好ましくは5~100質量%である。
【0037】
上記抽出物の混合物又は上記抽出物の混合物から製剤化したTie2活性化作用剤を配合し得る飲食品は特に限定されないが、その具体例としては、清涼飲料、炭酸飲料、栄養飲料、果実飲料、乳酸飲料等の飲料(これらの飲料の濃縮原液および調整用粉末を含む);アイスクリーム、アイスシャーベット、かき氷等の冷菓;そば、うどん、はるさめ、ぎょうざの皮、しゅうまいの皮、中華麺、即席麺等の麺類;飴、チューインガム、キャンディー、ガム、チョコレート、錠菓、スナック菓子、ビスケット、ゼリー、ジャム、クリーム、焼き菓子等の菓子類;かまぼこ、ハム、ソーセージ等の水産・畜産加工食品;加工乳、発酵乳等の乳製品;サラダ油、てんぷら油、マーガリン、マヨネーズ、ショートニング、ホイップクリーム、ドレッシング等の油脂および油脂加工食品;ソース、たれ等の調味料;スープ、シチュー、サラダ、惣菜、漬物;その他種々の形態の健康・栄養補助食品;錠剤、カプセル剤、ドリンク剤等が挙げられ、これらの飲食品に上記抽出物の混合物又はTie2活性化作用剤を配合するときに、通常用いられる補助的な原料や添加物を併用することができる。
【0038】
なお、本実施形態に係るTie2活性化作用剤はヒトに対して好適に適用されるものであるが、Tie2活性化効果が奏される限り、ヒト以外の動物に対して適用することも可能である。
【実施例0039】
以下、試験例等を示して本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は、下記試験例等に何ら制限されるものではない。
【0040】
〔被験試料1の調製〕
ヒハツ抽出物(丸善製薬社製)、ビワ葉抽出物(丸善製薬社製)、及び柑橘抽出物(東洋精糖社製,製品名:ゆずポリフェノール)を1:1:1の比率(固形分換算の質量基準)で配合した混合物をジメチルスルホキシドに溶解して、混合物濃度300μg/mL(ヒハツ抽出物濃度:100μg/mL)、600μg/mL(ヒハツ抽出物濃度:200μg/mL)の被験試料1を調製した。
【0041】
〔被験試料2の調製〕
ヒハツ抽出物(丸善製薬社製)、ビワ葉抽出物(丸善製薬社製)、及び柑橘抽出物(東洋精糖社製,製品名:ゆずポリフェノール)を10:1:1の比率(固形分換算の質量基準)で配合した混合物をジメチルスルホキシドに溶解して、混合物濃度120μg/mL(ヒハツ抽出物濃度:100μg/mL)、240μg/mL(ヒハツ抽出物濃度:200μg/mL)の被験試料2を調製した。
【0042】
〔被験試料3の調製〕
ヒハツ抽出物(丸善製薬社製)をジメチルスルホキシドに溶解して、ヒハツ抽出物濃度100μg/mL、200μg/mLの被験試料3を調製した。
【0043】
〔試験例〕Tie2活性化作用試験
被験試料1~3について、下記の方法によりTie2活性化作用の試験を実施した。
【0044】
マウスpro-B細胞(Ba/F3)にhuman Tie2を過剰発現させたBa/F3-human Tie2細胞をTie2活性化作用試験の評価に用いた。各被験試料によるBa/F3-human Tie2の刺激は、FBSを含まないRPMI-1640培地(SIGMA社製)で溶解した所定濃度(表1を参照)の各被験試料を添加することにより行った。15分経過後、細胞をPBSで洗浄し、PhosphoSafeTM Extraction Reagent(Novagen社製)にて細胞抽出液を回収した。細胞抽出液を7.5%SDSゲルにて電気泳動し、PVDF膜に転写した。転写されたPVDF膜にブロッキング処理を施した後、抗リン酸化Tie2抗体(R&D社製)、抗Tie2抗体(Santacruz社製)及びHRP標識2次抗体(Jackson ImmunoResearch社製)を用いてウエスタンブロッティングを行った。また、陰性コントロールとして、各被験試料の溶解に用いたジメチルスルホキシドについても同様の処理を行った。
【0045】
画像撮影装置ChemiDoc XRS Plus(Bio-Red Laboratories社製)及びImage Lab Software version 2.0(Bio-Red Laboratories社製)を用いてバンドの検出及び解析を行い、解析結果から、下記式によりTie2活性化率(%)を算出した。結果を表1に示す。
【0046】
Tie2活性化率(%)=[(A/B)/(C/D)]×100
式中の「A」は、被験試料添加時のリン酸化型Tie2の測定値を表し、「B」は、被験試料添加時の総Tie2の測定値を表し、式中の「C」は、陰性コントロールでのリン酸化型Tie2の測定値を表し、式中の「D」は、陰性コントロールでの総Tie2の測定値を表す。
【0047】
【表1】
【0048】
表1に示す結果から、ヒハツ抽出物、ビワ抽出物及び柚子抽出物の混合物は、Tie2活性化作用を有することが確認された。また、被験試料1及び被験試料2の結果から、当該混合物におけるビワ抽出物及び柚子抽出物の含有量が、ヒハツ抽出物の含有量に対して相対的に多くなるに従い、優れたTie2活性化作用を奏することが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明のTie2活性化作用剤は、優れたTie2活性化作用を有するので、飲食品(例えば、サプリメント、飲料等)、医薬品(例えば、皮膚外用剤、内服薬等)、医薬部外品の原材料として好適に利用できる。