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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022052900
(43)【公開日】2022-04-05
(54)【発明の名称】電子回路モジュール
(51)【国際特許分類】
   H05K 7/20 20060101AFI20220329BHJP
   H01F 30/10 20060101ALI20220329BHJP
   H01F 37/00 20060101ALI20220329BHJP
   H01L 23/36 20060101ALI20220329BHJP
【FI】
H05K7/20 F
H01F30/10 S
H01F37/00 R
H01L23/36 D
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020159414
(22)【出願日】2020-09-24
(71)【出願人】
【識別番号】390005223
【氏名又は名称】株式会社タムラ製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100120592
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 崇裕
(72)【発明者】
【氏名】青木 弘利
(72)【発明者】
【氏名】橋本 誠
(72)【発明者】
【氏名】峰崎 雅大
(72)【発明者】
【氏名】柴田 比佐志
(72)【発明者】
【氏名】谷口 誠
【テーマコード(参考)】
5E322
5F136
【Fターム(参考)】
5E322AA03
5E322AA11
5E322AB11
5F136BA30
5F136BC05
5F136BC07
5F136DA27
5F136DA42
5F136EA66
(57)【要約】
【課題】効率的な熱伝達を実現することができる技術を提供する。
【解決手段】電子回路モジュール100は、実装部品114a,116aを有する回路基板114,116と、回路基板114,116を内部に収容するケース体102と、実装部品114a,116aとケース体102に接した状態で配置され、実装部品114a,116aからケース体102への熱伝達経路を構成する放熱シート118,120及びヒートシンク122,124とを備える。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
実装部品を有する回路基板と、
前記回路基板を内部に収容するケース体と、
少なくとも前記実装部品と前記ケース体とに接した状態で配置され、前記実装部品から前記ケース体への熱伝達経路を構成する第1部材及び第2部材からなる熱伝達体と
を備えた電子回路モジュール。
【請求項2】
請求項1に記載の電子回路モジュールにおいて、
前記熱伝達体は、
前記実装部品と前記第2部材との間に前記第1部材が押圧された状態で前記回路基板が前記ケース体に収容されることにより、前記第1部材の弾性力で前記第2部材が前記ケース体の内面に圧着されていることを特徴とする電子回路モジュール。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の電子回路モジュールにおいて、
前記熱伝達体は、
前記第1部材が前記実装部品と前記第2部材との間で押圧される放熱シートであり、
前記第2部材が前記放熱シートに一方の面で接し、前記放熱シートの弾性力で他方の面が前記ケース体の内面に接する金属板であることを特徴とする電子回路モジュール。
【請求項4】
請求項2又は3に記載の電子回路モジュールにおいて、
前記ケース体は、
内部を開放し、前記回路基板を外部から相対的に挿入可能とする開口を有し、
前記熱伝達体は、
前記回路基板の前記ケース体の開口を通じた内部への相対的な挿入に伴い、前記開口の縁に沿って前記第2部材を変位させることで前記第1部材を前記実装部品との間で押圧させる挿入方向に対して傾斜した案内部が前記第2部材に形成されていることを特徴とする電子回路モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば電子機器に用いられる電子回路モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
この種の電子回路モジュールに関する先行技術として、スイッチング電源やAC/DCコンバータ等として用いられる電源用回路モジュールが知られている(例えば、特許文献1参照。)。このモジュールは、スイッチング電源の1次側主基板及び2次側主基板をケース内部の相対向する側面に面するように配置させた構造を有する。また、1次側主基板や2次側主基板の実装部品が使用時に発熱するため、そのような実装部品を基板上でヒートシンクにより囲うことで放熱性を持たせている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第5916673号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した先行技術のモジュールでは、実装部品からの熱をヒートシンクに輻射させて吸熱し、そこからさらにケースに輻射させて放熱することになるが、組立体全体としてケース内面との間にクリアランスを設けているため、実装部品の熱をヒートシンクからケースに直接伝達することはできない。このため、熱源からケースまでの間に熱伝達の要素が多く入り込み、また、熱伝達の態様も複雑(輻射や伝導)になる分、効率を高めにくい。
【0005】
本発明は、効率的な熱伝達を実現することができる技術を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、電子回路モジュールを提供する。電子回路モジュールは、実装部品を有する回路基板をケース体の内部に収容した基本構造を有する。その上で電子回路モジュールは、特徴的な構成として熱伝達体を有する。熱伝達体は、少なくとも実装部品とケース体の両方に接した状態でケース体内部に配置される。熱伝達体は、第1部材及び第2部材の複合材からなり、これら2つの部材で実装部品からケース体への熱伝達経路を構成する。
【0007】
この場合、熱源となる実装部品の熱は、熱伝達体の第1部材及び第2部材を通じてケース体に伝達されるため、その間で熱伝達の要素は2つの部材だけとなる。また、経路上で熱伝達の態様は、熱伝達体を通じた伝導のみに集約される。これにより、実装部品から効率的にケース体へ熱伝達を行うことができ、結果として放熱・冷却効率を高めることができる。
【0008】
また、上記のように熱伝達体を第1部材及び第2部材の複合材構成としたことには発明者等に特有の着想がある。すなわち、熱伝達体を実装部品とケース体内面の両方に接した構造とするにあたり、熱伝達体のうち第1部材を実装部品の方に密着させ、第2部材をケース体の方に密着させることで、例えば第1部材を第2部材よりも柔軟性や圧縮性などの弾性に優れた材質にすれば、第1部材の性質を活用して第2部材とケース体との密着性を高めることができる。
【0009】
このため熱伝達体は、実装部品と第2部材との間に第1部材が押圧(又は圧縮)された状態で回路基板を含む電子部品の組立体がケース体に収容されることにより、第1部材の弾性力で第2部材がケース体の内面に圧着されていることが好ましい。これにより、熱伝達体による実装部品からケース体への熱伝達をより効率的に行うことができる。また、モジュールの完成状態で第2部材とケース体内面との間にクリアランスが設けられていないとしても、製造過程では回路基板を含む電子部品組立体をケース体に収容する際、第1部材の材質を活用して熱伝達体を変形させることで、組み立て作業性を向上することもできる。
【0010】
この点、例えば、熱伝達体を単一部材構成とした場合を考えてみる。この場合、単一部材には、熱伝達に優れるアルミニウム合金を用いたヒートシンク等を用いることが考えられるが、そうすると、モジュールの完成状態ではヒートシンクとケース体内面との間にクリアランスが一切ないということになり、製造過程で回路基板を含む組立体をケース体に収容する作業が極めて困難になる。逆に、僅かでも製造誤差でクリアランスが空いてしまうと、ヒートシンクからケース体への熱伝達が効率よく行われなくなってしまう。
【0011】
これに対し、本発明の電子回路モジュールは、完成状態で第2部材とケース体内面との間にクリアランスを設けないことによる熱伝達性能の向上と、製造過程での第1部材の材質を活かした作業性の向上という2つの利点を同時に達成している点で極めて優位である。
【0012】
本発明の電子回路モジュールは、上記の利点をより高めるための構成を有することができる。すなわち、熱伝達体は、ケース体への相対的な挿入を案内し、作業を容易にするための案内部が第2部材に形成されている。案内部は、挿入方向に対して傾斜していることで、ケース体の開口を通じた回路基板の内部への挿入に伴い、開口の縁に沿って第2部材を変位させ、それによって第1部材を実装部品との間で押圧(圧縮)させるものである。これにより、回路基板を含む電子部品組立体をケース体内へ相対的に圧入させることが容易になり、製造時の作業性を向上しつつ、完成状態での熱伝達の効率を高めることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、効率的な熱伝達を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】一実施形態の電子回路モジュール100の斜視図である。
図2】電子回路モジュール100の基本構成を示す分解斜視図である。
図3】電子回路モジュール100の内部構成を示す分解斜視図である。
図4】電子回路モジュール100の内部構成を示す分解斜視図である。
図5図1中のV-V線に沿う断面図である。
図6図1中のVI-VI線に沿う断面図である。
図7】電子回路モジュール100の組立作業を示す連続図である。
図8】電子回路モジュール100の組立作業を示す連続図である。
図9】比較参考例の電子回路モジュール111を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、以下の実施形態では、電子回路モジュールの一例としてスイッチング電源に用いられるものを挙げているが、本発明はこれに限られるものではない。
【0016】
図1は、一実施形態の電子回路モジュール100の斜視図である。また図2は、電子回路モジュール100の基本構成を示す分解斜視図である。これら図1及び図2において、図1中(A)は電子回路モジュール100の上方斜視図であり、図1中(B)はその下方斜視図である。また、図2中(A)が電子回路モジュール100の分解状態でみた上方斜視図であり、図2中(B)がその下方斜視図である。
【0017】
〔全体構成〕
電子回路モジュール100は、大きく分けてケース体102及び電子部品組立体104から構成されており、ケース体102の内部に電子部品組立体104が収容されて完成状態となっている。
【0018】
〔ケース体〕
ケース体102は、例えば樹脂製であり、図1及び図2に示す姿勢において、ある程度の高さ(厚み)を有した箱形状をなしている。ケース体102の一短辺の角部は面取り状に形成されているが、これは電子回路モジュール100の電気的な極性(例えば1次側-2次側)を表すためである。
【0019】
またケース体102は、図2中(B)に示すように、その内部全体が収容空間として形成されている。また、ケース体102は、下側面が全体的に開口することで、内部を大きく開放しており、電子回路モジュール100の完成状態では、電子部品組立体104が全体的にケース体102の内部に収容されている。なお、電子部品組立体104は多数のピン端子(図1図2では細部に符号なし)を有しており、完成状態でピン端子はケース体102の開口から外側へ突出している。
【0020】
〔電子部品組立体〕
図3及び図4は、電子回路モジュール100の内部構成を示す分解斜視図である。このうち、図3図1中(A)の方向に一致し、図4図3に示される分解状態での電子回路モジュール100の向きを180°反転させて示したものである。
【0021】
電子回路モジュール100の電子部品組立体104は、中心的な部品としてボビンユニット106を備える他、例えば1次側及び2次側のコイル108や2つのコア部品110,112を備えている。コイル108は、ボビンユニット106の中央位置で巻かれており、それぞれ巻両端が1次側と2次側とに分かれて引き出されている。
【0022】
ボビンユニット106には、コイル108の巻中心位置に貫通孔106eが形成されており、2つのコア部品110,112は、それぞれの中脚110a,112aを貫通孔106eに挿入させた状態で1つに組み合わされる(E-E型コア)。そしてコア部品110,112は、1つに組み合わされた状態でコイル108の1次側と2次側とを磁気結合し、絶縁トランスを構成する。
【0023】
また、電子部品組立体104は、1次側及び2次側の回路基板114,116を備えており、これら回路基板114,116がコイル108及びコア(コア部品110,112)を挟んで1次側と2次側とに分かれて配置され、互いに絶縁されている。ボビンユニット106には、中央のコイル108及びコア部品110,112が配置される部位を挟んで両側に対をなす1次側基板保持部106a,106b及び2次側基板保持部106c,106dが一体に形成されており、このうち、1次側基板保持部106a,106bはコイル108を挟んで巻中心軸の方向(図3図4の上下方向)に分かれて位置し、2次側基板保持部106c,106dも同じくコイル108を挟んで巻中心軸の方向に分かれて位置している。
【0024】
〔回路基板〕
1次側の回路基板114は、2つの1次側基板保持部106a,106bに支持されている。1次側の回路基板114と1次側基板保持部106aとの間には複数の接続端子114bが設けられており、また、1次側の回路基板114と1次側基板保持部106bとの間にも複数の入力端子114cが設けられている。1次側の回路基板114の図示しない電子回路は、接続端子114b及び入力端子114cと半田付けされるとともに、1次側のコイル108に接続されている。
【0025】
同様に、2次側の回路基板116もまた、2つの2次側基板保持部106c,106dに支持されている。そして、2次側の回路基板116と2次側基板保持部106cとの間には複数の接続端子116bが設けられており、また、2次側の回路基板116と2次側基板保持部106dとの間には複数の出力端子116bが設けられている。2次側の回路基板116の図示しない電子回路は、接続端子116b及び出力端子116cと半田付けされるとともに、2次側のコイル108に接続されている。
【0026】
〔実装部品〕
1次側の回路基板114には、1次側の実装部品114aが実装されており、2次側の回路基板116には、2次側の実装部品116aが実装されている。これらの実装部品114a,116aは、例えば制御ICやMOSFET等のスイッチング素子をパッケージした電子部品であり、電子回路モジュール100の作動時には特に高音の発熱源となる。
【0027】
〔熱伝導体(第1部材)〕
電子部品組立体104は、1次側及び2次側に分かれた2枚の放熱シート118,120を備えている。1次側の放熱シート118は、1次側の回路基板114の基板面(実装面)に密着して配置され、また、2次側の放熱シート120は、2次側の回路基板116の基板面(実装面)に密着して配置されている。また、各放熱シート118,120は、対応する回路基板114,116の基板面を覆う大きさ(面積)を有した矩形状に形成されている。各放熱シート118,120は、その弾性によって実装部品114a,116aやその他の実装品の各実装高さ(外形)に応じて変形し、基板面上の凹凸形状に追従する。なお、放熱シート118,120には公知の既製品を用いることができる。
【0028】
〔熱伝導体(第2部材)〕
さらに電子部品組立体104は、1次側及び2次側に分かれた2つのヒートシンク122,124を備えている。1次側のヒートシンク122は、1次側の放熱シート118に密着して配置され、また、2次側のヒートシンク124は、2次側の放熱シート120に密着して配置されている。各ヒートシンク122,124は、矩形板状の中伝熱部122a,124aを有する他、中伝熱部122a,124aの長手方向の両端にそれぞれ連なる両側伝熱部122b,122c,124b,124cを有している。
【0029】
ヒートシンク122,124は、それぞれ中伝熱部122a,124aで対応する放熱シート118,120と接触し、このため中伝熱部122a,124aもまた、対応する放熱シート118,120の外面を覆う大きさ(面積)を有している。両側伝熱部122b,122c,124b,124cは、中伝熱部122a,124aの各両端にて回路基板114,116の方向へ屈曲され、放熱シート118,120の両側端及び回路基板114,116の両側縁の近傍を通過して中央方向に延びている。本実施形態では、2次側の実装部品116aに比較して1次側の実装部品114aの単位時間あたり発熱量が大きく高温になりやすい傾向にあるため、2次側よりも1次側のヒートシンク122の方が大きくなっている。
【0030】
〔案内部〕
ここで、各ヒートシンク122,124には、中伝熱部122a,124aの一つの長辺に連なって案内部122d,124dが形成されている。これら案内部122d,124dは、電子部品組立体104のケース体102内部への挿入側に位置し、かつ、挿入方向に対して中央寄りに傾斜した面(両側で1つのテーパー面)を形成している。なお、案内部122d,124dの機能については後述する。
【0031】
〔熱伝達経路〕
図5は、電子回路モジュール100の長手方向の縦断面図(図1中のV-V線に沿う断面図)である。また図6は、電子回路モジュール100の水平断面図(図1中のVI-VI線に沿う断面図)である。
【0032】
上記のように、電子回路モジュール100の完成状態では、ケース体102の内面(長手方向で対向する一対の内壁面)に1次側及び2次側のヒートシンク122,124がいずれも接している。また、完成状態で1次側及び2次側の放熱シート118,120は、それぞれ密着する回路基板114,116とヒートシンク122,124との間で厚み方向に圧縮されている。これにより、各ヒートシンク122,124は、放熱シート118,120の弾性力(復元力)でケース体102の内面に強く押し付けられた状態となっている。
【0033】
また、電子回路モジュール100の作動時には、上記のように1次側及び2次側の実装部品114a,116aが発熱する。このとき、実装部品114a,116aの熱は、それぞれ対応する放熱シート118,120、ヒートシンク122,124、そしてケース体102の順に伝達される(図5図6)。本実施形態では、各ヒートシンク122,124がケース体102の内面と大きく面接触し、かつ放熱シート118,120によって押圧(圧着)されているため、効率よく熱伝達を行うことができる。また、このときの熱伝達の態様は、いずれも接触による熱伝導となる。
【0034】
また、ケース体102のその他の内面(短手方向で対向する一対の内壁面)では、各ヒートシンク122,124の両側伝熱部122b,122c,124b,124cから熱が伝達され、ケース体102の外面から放熱される(図6)。このときの熱伝達の態様は、クリアランスが設けられることで例えば輻射となるが、クリアランスを設けることなく、接触による熱伝導が行われることとしてもよい。
【0035】
その結果、図5及び図6に矢印で示すように、電子回路モジュール100内部の熱がケース体102から外部(外気)に効率よく放出されることとなり、放熱効率や冷却効率の向上が図られるとともに、電子回路モジュール100の動作の不安定化が抑えられる。
【0036】
〔組立作業〕
図7及び図8は、電子回路モジュール100の組立作業を示す連続図である。以下、作業手順に沿って説明する。
【0037】
〔挿入前〕
図7中(A):組立作業の終盤において、これまでに組み上がった電子部品組立体104がケース体102の内部(収容空間)に挿入される。挿入前の段階では、各放熱シート118,120が圧縮されていない自由状態にあり、それぞれが無負荷時における厚みTを有している。また、電子部品組立体104の長手方向寸法L1は、1次側及び2次側でそれぞれ放熱シート118,120の無負荷時における厚みTを含む長さとなっており、長手方向寸法L1がケース体102内部における収容空間の長手方向寸法L2よりも大きくなっている(L1>L2)。なお、放熱シート118,120の厚みTは互いに異なっていてもよい。
【0038】
〔挿入時〕
図7中(B):ケース体102開口の長手方向寸法L2よりも電子部品組立体104の長手方向寸法L1が大きいため、挿入時においてケース体102の開口縁に1次側及び2次側のヒートシンク122,124が当接する。このとき、各ヒートシンク122,124の案内部122d,124dは、上記のように挿入方向に対して中央寄りに傾斜していることから、電子部品組立体104の挿入に伴い、ケース体102の開口縁に沿って各案内部122d,124dが相対的に案内され、各ヒートシンク122,124が中央寄りに押し込まれるように変位する。これにより、各放熱シート118,120が厚み方向に圧縮されて変形しつつ、電子部品組立体104の挿入(圧入)作業が容易に行われる。なお、電子部品組立体104の挿入後、さらにケース体102の内部に樹脂が充填されることとしてもよい。
【0039】
〔挿入後〕
図8:上記のようにして電子部品組立体104全体がケース体102内部に挿入されると、電子回路モジュール100の組立作業が完了する。このとき、1次側及び2次側の放熱シート118,120はいずれも圧縮された状態にあり、そのため厚みT’が無負荷時の厚みTよりも小さくなっている。また、挿入後の電子部品組立体104の長手方向寸法L1’は、ケース体102内部における収容空間の長手方向寸法L1と等しくなる。これにより、電子回路モジュール100の完成状態で、1次側及び2次側のヒートシンク122,124が各放熱シート118,120の弾性力によってケース体102内面に常時押圧(圧着)された状態となり、上記のように効率よく熱伝達が行われる。
【0040】
〔比較参考例〕
図9は、本実施形態と対比される比較参考例の電子回路モジュール111を示す断面図である。比較参考例の電子回路モジュール111は、ヒートシンク122,124を備えておらず、放熱シート118,120のみで熱伝達経路(単一の熱伝達部材)を構成している。その他の構成は本実施形態の電子回路モジュール100と同じであり、共通する箇所には同じ符号を付している。
【0041】
〔挿入前〕
図9中(A):比較参考例の電子回路モジュール111では、1次側及び2次側の放熱シート118,120の表面間が電子部品組立体(符号なし)の長手方向寸法L3となる。この場合でも、挿入前の段階では各放熱シート118,120は圧縮されておらず、ケース体102内部における収容空間の長手方向寸法L2よりも電子部品組立体の長手方向寸法L3は大きい。
【0042】
〔挿入時〕
図9中(B):この場合、電子部品組立体の挿入作業時に放熱シート118,120がケース体102と干渉するため、そのままでは容易に挿入することができない。無理やりに挿入すると、ケース体102の開口縁に引っ掛かって放熱シート118,120が回路基板114,116から剥がれてしまい、完全な組立作業が不可となる。
【0043】
これに対し、本実施形態の電子回路モジュール100では、熱伝達経路(熱伝達体)を2つの部材(放熱シート118,120及びヒートシンク122,124)で構成し、ケース体102内面に接する外側にはヒートシンク122,124を配置し、回路基板114,116と接する内側には柔軟性(圧縮性、弾性)がより高い放熱シート118,120を配置することにより、挿入時の作業性を向上している。また、上記のように案内部122d,124dがケース体102の開口縁に沿って相対的に案内されて変位することにより、さらに作業性を高めることができる点で優位である。
【0044】
上述した実施形態の電子回路モジュール100によれば、以下の利点が得られる。
(1)発熱源となる実装部品114a,116aからケース体102へ効率的に熱伝達を行い、放熱性や冷却性を高めることで動作を安定させ、製品の信頼性を高めることができる。
(2)放熱シート118,120及びヒートシンク122,124を用いた熱伝達の態様が物理的接触による熱伝導のみであり、間に輻射を介在させる場合に比較して、より効率的に熱伝達を行うことができる。
(3)ヒートシンク122,124が放熱シート118,120の弾性力によってケース体102内面に押圧されるため、密着度が高まり、熱伝達の効率をさらに高めることができる。
(4)ケース体102内面と接するヒートシンク122,124に案内部122d,124を形成することで、製造組立過程での作業性を向上することができる。
【0045】
本発明は、上述した実施形態に制約されることなく、種々に変形して実施することができる。
ケース体102の形状は、一実施形態のような箱形状に限らず、その他の形状であってもよい。また、ケース体102が複数のパーツで構成されていてもよい。
【0046】
一実施形態では、電子部品組立体104が1次側と2次側の電子回路を有する構成を例に挙げているが、回路構成はその他でもよい。したがって、単一の回路基板を備え、その実装部品の熱を放熱シート及びヒートシンクによってケース体に伝達させる構成としてもよい。
【0047】
実装部品114a,126aは、各回路基板114,116に複数あってもよい。また、1次側又は2次側のいずれか一方だけに発熱源となる実装部品が実装されていて、その一方だけを放熱シート及びヒートシンクによりケース体102に熱伝達させる構成としてもよい。
【0048】
放熱シート118,120やヒートシンク122,124の形状は実施形態のものに限定されるものではなく、ケース体102の形状に合わせて適宜に変形が可能であるし、それらの配置や個数についても特に制約はない。
【0049】
また、放熱シート118,120は、実装部品114a,116aの外面のみに接触し、その他の基板面には接していない態様であってもよい。この場合でも、実装部品114a,116aから放熱シート118,120及びヒートシンク122,124によってケース体102に効率よく熱伝達させることができる。
【0050】
一実施形態では、熱伝達経路を構成する部材として放熱シート118,120及びヒートシンク122,124を例に挙げているが、必要な熱伝導性能を有するものであれば、放熱シート118,120をその他の柔軟性を有した部材としたり、ヒートシンク122,124をその他の部材としたりしてもよい。
【0051】
その他、実施形態において図示とともに挙げた構造はあくまで好ましい一例であり、基本的な構造に各種の要素を付加し、あるいは一部を置換しても本発明を好適に実施可能であることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0052】
100 電子回路モジュール
102 ケース体
114,116 回路基板
114a,116a 実装部品
118,120 放熱シート
122,124 ヒートシンク
122d,124d 案内部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9