(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022052955
(43)【公開日】2022-04-05
(54)【発明の名称】単独運転検出装置、単独運転検出方法、および、単独運転検出装置を備えたパワーコンディショナ
(51)【国際特許分類】
H02J 3/38 20060101AFI20220329BHJP
H02M 7/48 20070101ALI20220329BHJP
【FI】
H02J3/38 180
H02J3/38 130
H02J3/38 110
H02M7/48 R
H02M7/48 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020159503
(22)【出願日】2020-09-24
(71)【出願人】
【識別番号】000000262
【氏名又は名称】株式会社ダイヘン
(74)【代理人】
【識別番号】100135389
【弁理士】
【氏名又は名称】臼井 尚
(74)【代理人】
【識別番号】100168044
【弁理士】
【氏名又は名称】小淵 景太
(72)【発明者】
【氏名】川本 哲裕
(72)【発明者】
【氏名】田村 亨
(72)【発明者】
【氏名】服部 将之
【テーマコード(参考)】
5G066
5H770
【Fターム(参考)】
5G066AA09
5G066AD04
5G066HA13
5G066HB03
5G066HB06
5G066HB07
5G066HB09
5G066JB03
5H770BA13
5H770CA05
5H770EA01
5H770HA03Y
5H770HA05Y
5H770JA17Z
5H770KA01Z
5H770LA10Y
5H770LB05
5H770LB09
(57)【要約】
【課題】電圧フリッカ現象を誘発しない単独運転検出装置を提供する。
【解決手段】パワーコンディショナ1の単独運転を検出する単独運転検出装置3において、パワーコンディショナ1の出力電圧の周波数fを検出する周波数検出部31と、周波数検出部31が検出した周波数fが判定条件に一致したか否かを判定し、一致した場合に単独運転状態であると判断する判定部32とを備えた。判定条件は、パワーコンディショナ1が接続されている配電系統Cに配置された他の単独運転検出装置が当該配電系統Cに能動信号を注入したことによって生じた周波数fの変化を判定するための条件である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
パワーコンディショナの単独運転を検出する単独運転検出装置であって、
前記パワーコンディショナの出力に関する電気的な特性を検出する検出部と、
前記検出部が検出した検出値が判定条件に一致したか否かを判定し、一致した場合に、単独運転状態であると判断する判定部と、
を備え、
前記判定条件は、前記パワーコンディショナが接続されている配電系統に配置された他の単独運転検出装置が当該配電系統に能動信号を注入したことによって生じた前記電気的な特性の変化を判定するための条件である、
ことを特徴とする単独運転検出装置。
【請求項2】
前記判定条件は、前記検出値が所定範囲に収まらない状態が所定時間以上継続したことである、
請求項1に記載の単独運転検出装置。
【請求項3】
前記検出部は、前記パワーコンディショナの出力電圧の周波数を前記検出値として検出する、
請求項1または2に記載の単独運転検出装置。
【請求項4】
前記検出部は、前記検出値とは異なる第2の検出値をさらに検出し、
前記判定部は、前記検出値が前記判定条件に一致し、かつ、前記第2の検出値が第2の判定条件に一致した場合にのみ、単独運転状態であると判断する、
請求項1ないし3のいずれかに記載の単独運転検出装置。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれかに記載の単独運転検出装置を備えている、
ことを特徴とするパワーコンディショナ。
【請求項6】
パワーコンディショナの単独運転を検出する単独運転検出方法であって、
前記パワーコンディショナの出力に関する電気的な特性を検出する検出工程と、
前記検出工程で検出した検出値が判定条件に一致したか否かを判定し、一致した場合に、単独運転状態であると判断する判定工程と、
を備え、
前記判定条件は、前記パワーコンディショナが接続されている配電系統に配置された他の単独運転検出装置が当該配電系統に能動信号を注入したことによって生じた前記電気的な特性の変化を判定するための条件である、
ことを特徴とする単独運転検出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、単独運転検出装置、単独運転検出方法、および、単独運転検出装置を備えたパワーコンディショナに関する。
【背景技術】
【0002】
分散形電源を電力系統に接続する場合、パワーコンディショナは、単独運転を防止するための単独運転検出装置を備えている必要がある。単独運転とは、分散形電源が接続された配電系統が電力系統から切り離された場合に、分散形電源が配電系統の負荷に電力の供給を継続することである。単独運転検出装置は、単独運転を検出した場合、分散形電源を配電系統から切り離して、分散形電源から負荷への電力の供給を停止させる。単独運転の検出方法には受動方式と能動方式とがあり、様々な検出方法が開発されている。
【0003】
系統連系規程(JEAC 9701-2016)では、単独運転の能動方式の検出方法として、周波数シフト方式、スリップモード周波数シフト方式、無効電力変動方式、およびQCモード周波数シフト方式などが認められている。これらの方式は、従来型能動的方式と呼ばれている。系統連系規程では、従来型能動的方式の単独運転検出装置は、停電が発生して単独運転状態になった場合、0.5秒以上1秒以内(低圧配電線との連系の場合)にパワーコンディショナを配電系統から切り離すように定められている。また、系統連系規程では、従来型能動的方式より検出を高速化させた方式として、ステップ注入付き周波数フィードバック方式が認められている。当該方式は、新型能動的方式と呼ばれている。系統連系規程では、新型能動的方式の単独運転検出装置は、停電が発生して単独運転状態になった場合、パワーコンディショナを配電系統から瞬時に切り離すように定められており、一般的には、0.1秒以上0.2秒以内に切り離すように設定されている。これらの各方式は、配電系統に積極的に無効電力を代表とする能動信号を注入し、検出された周波数の変化に応じて単独運転を検出する。したがって、配電系統に多数の分散形電源が接続されている場合、配電系統には大量の無効電力が注入される。また、無効電力の注入量は、周波数偏差に応じて増加される。したがって、系統擾乱時に各分散形電源が無効電力の注入量を増加させることで、系統電圧が振動し、電圧フリッカ現象が発生する場合がある。
【0004】
電圧フリッカ現象の発生を抑制するための対策として、無効電力の注入量を抑制可能な単独運転検出装置が開発されている。例えば、特許文献1には、単独運転の可能性が低い場合に無効電力の注入量を抑制する単独運転検出装置が開示されている。また、特許文献2には、遅れ位相の無効電力と進み位相の無効電力とを交互に注入し、系統周波数の移動平均値の変化量の絶対値を積算した積算値に基づいて単独運転を検出することで、無効電力の注入量を低減しつつ、単独運転の誤検出や検出遅延を防止できる単独運転検出装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2017-93020号公報
【特許文献2】特開2019-92328号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1、2に開示された単独運転検出装置は、注入量を抑制しているが、無効電力の注入を行っている。したがって、これらの単独運転検出装置を備えたパワーコンディショナを、配電系統に新たに接続した場合、配電系統に注入される無効電力は増加する。よって、単独運転検出装置を備えたパワーコンディショナがすでに多数接続されている配電系統に、このようなパワーコンディショナを接続した場合でも、電圧フリッカ現象を誘発することになる。
【0007】
本発明は上記した事情のもとで考え出されたものであって、電圧フリッカ現象を誘発しない単独運転検出装置、単独運転検出方法、および、単独運転検出装置を備えたパワーコンディショナを提供することをその目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明では、次の技術的手段を講じている。
【0009】
本発明の第1の側面によって提供される単独運転検出装置は、パワーコンディショナの単独運転を検出する単独運転検出装置であって、前記パワーコンディショナの出力に関する電気的な特性を検出する検出部と、前記検出部が検出した検出値が判定条件に一致したか否かを判定し、一致した場合に、単独運転状態であると判断する判定部とを備え、前記判定条件は、前記パワーコンディショナが接続されている配電系統に配置された他の単独運転検出装置が当該配電系統に能動信号を注入したことによって生じた前記電気的な特性の変化を判定するための条件であることを特徴とする。
【0010】
なお、「電気的な特性」には、電圧、電流、電力(有効電力、無効電力)、および周波数などが含まれる。また、所定の高調波成分の電圧、電流、電力、および周波数なども含まれる。また、「検出部が検出した検出値」には、電圧、電流、電力、および周波数などの大きさだけでなく、偏差(基準からの変化量)および変化率なども含まれる。また、「能動信号」は、単独運転検出装置が能動方式で単独運転を検出する際に配電系統に注入する信号であり、例えば、無効電力、有効電力などが含まれる。
【0011】
本発明の好ましい実施の形態においては、前記判定条件は、前記検出値が所定範囲に収まらない状態が所定時間以上継続したことである。
【0012】
本発明の好ましい実施の形態においては、前記検出部は、前記パワーコンディショナの出力電圧の周波数を前記検出値として検出する。
【0013】
本発明の好ましい実施の形態においては、前記検出部は、前記検出値とは異なる第2の検出値をさらに検出し、前記判定部は、前記検出値が前記判定条件に一致し、かつ、前記第2の検出値が第2の判定条件に一致した場合にのみ、単独運転状態であると判断する。
【0014】
本発明の第2の側面によって提供されるパワーコンディショナは、本発明の第1の側面によって提供される単独運転検出装置を備えている。
【0015】
本発明の第3の側面によって提供される単独運転検出方法は、パワーコンディショナの単独運転を検出する単独運転検出方法であって、前記パワーコンディショナの出力に関する電気的な特性を検出する検出工程と、前記検出工程で検出した検出値が判定条件に一致したか否かを判定し、一致した場合に、単独運転状態であると判断する判定工程とを備え、前記判定条件は、前記パワーコンディショナが接続されている配電系統に配置された他の単独運転検出装置が当該配電系統に能動信号を注入したことによって生じた前記電気的な特性の変化を判定するための条件であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によると、判定部は、検出値が判定条件に一致した場合に、単独運転状態であると判断する。本発明に係る単独運転検出装置は、他の単独運転検出装置が配電系統に無効電力などの能動信号を注入したことによる配電系統での電気的な特性の変化に応じて単独運転を検出するので、配電系統に無効電力を注入しない。したがって、本発明に係る単独運転検出装置は、電圧フリッカ現象を誘発しない。
【0017】
本発明のその他の特徴および利点は、添付図面を参照して以下に行う詳細な説明によって、より明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】第1実施形態に係る単独運転検出装置を備えたパワーコンディショナを説明するためのブロック図であり、配電系統の全体構成を示している。
【
図2】単独運転検出装置が行う単独運転検出処理を説明するためのフローチャートである。
【
図3】パワーコンディショナの出力電圧の周波数の変化を示すタイムチャートであり、(a)は従来型電源および新型電源が接続された配電系統が停電状態になった場合を示し、(b)は従来型電源のみが接続された配電系統が停電状態になった場合を示している。
【
図4】パワーコンディショナの出力電圧の周波数の変化を示すタイムチャートであり、系統擾乱が発生した場合を示している。
【
図5】第2実施形態に係る単独運転検出装置の内部構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照して具体的に説明する。
【0020】
〔第1実施形態〕
【0021】
図1は、第1実施形態に係る単独運転検出装置を備えたパワーコンディショナを説明するためのブロック図であり、配電系統の全体構成を示している。
【0022】
パワーコンディショナ1は、直流電源Aが出力する直流電力を交流電力に変換して、接続している配電系統Cに出力する。パワーコンディショナ1および直流電源Aを合わせたものが分散形電源である。配電系統Cは、高圧配電系統であり、負荷L、従来型電源B1および新型電源B2が接続されている。負荷Lは、電力の供給を受ける需要家である。従来型電源B1は、従来型能動的方式の単独運転検出装置を有するパワーコンディショナを備えた分散形電源である。なお、本実施形態では、従来型電源B1の単独運転検出装置が、周波数シフト方式で単独運転を検出する場合を例として説明する。なお、従来型電源B1の単独運転検出装置の検出方式は限定されない。新型電源B2は、新型能動的方式の単独運転検出装置を有するパワーコンディショナを備えた分散形電源である。配電系統C(および変圧器を介して配電系統Cに接続された低圧配電系統)には、負荷L、従来型電源B1、および新型電源B2がそれぞれ複数ずつ接続されているが、
図1においては、代表して1個ずつ記載している。配電系統Cは、遮断器を介して電力系統に接続されている。電力系統で事故が発生した場合などに、電力系統側に設けられた保護装置によって遮断器が開放されて、配電系統Cが電力系統から切り離される(停電状態)。これにより、電力系統から切り離された配電系統Cに接続しているパワーコンディショナ1が単独運転状態になる。
【0023】
直流電源Aは、直流電力を出力するものであり、例えば太陽電池を備えている。太陽電池は、太陽光エネルギーを電気エネルギーに変換することで、直流電力を生成する。直流電源Aは、生成した直流電力を、パワーコンディショナ1に出力する。なお、直流電源Aは、太陽電池により直流電力を生成するものに限定されない。例えば、直流電源Aは、燃料電池または蓄電池などであってもよいし、ディーゼルエンジン発電機または風力タービン発電機などにより生成された交流電力を直流電力に変換して出力する装置であってもよい。
【0024】
パワーコンディショナ1は、インバータ装置2、単独運転検出装置3、連系用遮断器4、および電圧センサ5を備えている。パワーコンディショナ1は、連系用遮断器4を介して、配電系統Cに接続している。
【0025】
インバータ装置2は、直流電源Aから入力される直流電力を交流電力に変換して出力する。インバータ装置2は、例えば、図示しないインバータ回路、フィルタ回路、および制御回路を備えている。インバータ回路は、制御回路から入力されるPWM信号に基づいてスイッチング素子(図示しない)のオンとオフとを切り替えることで直流電力を交流電力に変換する。フィルタ回路は、スイッチングによる高周波成分を除去する。制御回路は、インバータ回路を制御する。制御回路は、インバータ装置2の出力電流を制御するPWM信号を生成して、インバータ回路に出力する。制御回路は、単独運転検出装置3から後述するゲートブロック信号を入力された場合、PWM信号の生成を停止する。この場合、インバータ回路はスイッチングを停止するので、インバータ装置2は、電力変換動作を停止する。なお、インバータ装置2の構成は限定されない。
【0026】
連系用遮断器4は、パワーコンディショナ1と配電系統Cとの接続を遮断する。連系用遮断器4は通常時は閉路されており、パワーコンディショナ1は配電系統Cに接続している。しかし、単独運転検出装置3から後述する開放指令が入力された場合、連系用遮断器4は開放され、パワーコンディショナ1が配電系統Cから切り離される。これにより、パワーコンディショナ1の単独運転状態が回避される。
【0027】
電圧センサ5は、パワーコンディショナ1の出力電圧を検出し、検出した電圧信号を単独運転検出装置3に入力する。なお、電圧センサ5は、インバータ装置2の制御用と兼用であってもよい。この場合、電圧センサ5は、検出した電圧信号をインバータ装置2の制御回路にも入力する。
【0028】
単独運転検出装置3は、パワーコンディショナ1の単独運転を検出する。単独運転検出装置3は、電圧センサ5から入力される電圧信号に基づいて単独運転を検出し、単独運転を検出した場合、パワーコンディショナ1を停止させて、配電系統Cから切り離す。単独運転検出装置3は、周波数検出部31、判定部32、および停止処理部38を備えている。
【0029】
周波数検出部31は、パワーコンディショナ1の出力電圧の周波数fを検出する。周波数検出部31は、電圧センサ5から入力される電圧信号に基づいて、周波数fを検出する。周波数検出部31は、例えばゼロクロス点間カウント方式により周波数を検出する。ゼロクロス点間カウント方式は、交流電圧の瞬時値がゼロレベルを交差する点(ゼロクロス点)間の時間を計測し、計測された時間の逆数から周波数を検出する方法である。なお、周波数検出部31の周波数検出方法は限定されない。例えば、周波数検出部31は、乗算式PLL(Phase Locked Loop)を用いて周波数を検出してもよい。周波数検出部31は、検出した周波数fを、判定部32に出力する。周波数検出部31が本発明の「検出部」に相当し、周波数fが本発明の「検出値」に相当する。
【0030】
判定部32は、周波数検出部31から入力される周波数fに基づいて判定を行う。判定部32は、周波数fがあらかじめ設定された判定条件に一致したか否かを判定する。判定条件は、単独運転が発生したと断定できる条件が設定されている。単独運転が発生した場合、従来型電源B1および新型電源B2の単独運転検出装置は、注入する無効電力を増加させて配電系統Cの電圧の周波数を変化させ、周波数がしきい値を超えた場合に単独運転を検出する。判定条件は、このときの周波数の変化に基づいて設定されている。
【0031】
本実施形態では、判定条件は、周波数fが所定範囲に収まらない状態が所定時間T1以上継続したことである。所定範囲は、パワーコンディショナ1の出力電圧の通常時の周波数f0を中心とした範囲であり、f1(>f0)以下、f1’(<f0)以上の範囲である。例えば、周波数f0が60Hzの場合、f1=61Hzであり、f1’=59Hzである。なお、f1およびf1’は限定されない。所定範囲は、単独運転が発生して、従来型電源B1および新型電源B2の単独運転検出装置による無効電力の注入によって変化した周波数が収まらない範囲が設定される。所定範囲は、実験、シミュレーション結果、または、現地における調査結果などに基づいて適宜設定される。ただし、単独運転以外の系統擾乱などによっても、周波数fが上昇して所定範囲を超える場合がある。しかし、この場合は、周波数fが所定範囲を超えている時間は短い。所定時間T1は、系統擾乱などによる周波数fの上昇を単独運転と判定しないために設定されている。本実施形態では、所定時間T1は、事故時運転継続要件(FRT要件)に応じて、例えば0.3秒とされている。なお、所定時間T1は限定されない。
【0032】
本実施形態では、判定部32は、周波数fがf1より大きい状態、または、周波数fがf1’より小さい状態が所定時間T1以上継続した場合に、判定条件に一致したと判定する。判定部32は、周波数fが判定条件に一致したと判定した場合、単独運転状態であると判断し、例えばハイレベル信号である単独運転検出信号を停止処理部38に出力する。なお、判定条件は限定されず、単独運転が発生したと断定できる条件であればよい。
【0033】
停止処理部38は、判定部32から単独運転検出信号を入力された場合に、パワーコンディショナ1の停止処理を行う。具体的には、停止処理部38は、インバータ装置2にゲートブロック信号を出力して、インバータ装置2の電力変換動作を停止させる。また、停止処理部38は、連系用遮断器4に開放指令を出力して、パワーコンディショナ1を配電系統Cから切り離させる。
【0034】
系統連系規程では、高圧配電系統に接続されたパワーコンディショナは、単独運転状態になった場合に3秒以内に切り離されるように定められている。新型電源B2は停電から0.2秒以内に単独運転を検出して配電系統Cから切り離され、従来型電源B1は停電から1秒以内に単独運転を検出して配電系統Cから切り離される。したがって、従来型電源B1および新型電源B2が無効電力の注入量を増加させたことで変化する系統周波数の変化をとらえてから、所定時間T1の経過を待ったとしても、単独運転検出装置3は、3秒以内にパワーコンディショナ1を配電系統Cから切り離すことができる。
【0035】
なお、単独運転検出装置3は、アナログ回路として実現してもよいし、ディジタル回路として実現してもよい。また、各部が行う処理をプログラムで設計し、当該プログラムを実行させることでコンピュータを単独運転検出装置3として機能させてもよい。また、当該プログラムを記録媒体に記録しておき、コンピュータに読み取らせるようにしてもよい。
【0036】
図2は、単独運転検出装置3が行う単独運転検出処理を説明するためのフローチャートである。単独運転検出処理は、判定条件に基づいて単独運転を検出する処理である。単独運転検出処理は、パワーコンディショナ1が配電系統Cに接続している状態で、インバータ装置2が電力変換動作を開始したときに実行される。
【0037】
まず、周波数検出部31によって検出された周波数fが所定範囲に収まっている(f1’≦f≦f1)か否かが判別される(S1)。所定範囲に収まっている場合(S1:YES)、ステップS1に戻って、ステップS1の判別が繰り返される。一方、所定範囲に収まっていない場合(S1:NO)、計時が開始される(S2)。
【0038】
次に、計時された時間が所定時間T1以上になったか否かが判別される(S3)。所定時間T1以上になっていない場合(S3:NO)、周波数fが所定範囲に収まっている(f1’≦f≦f1)か否かが判別される(S4)。所定範囲に収まっていない場合(S4:NO)、ステップS3に戻って、ステップS3およびステップS4の判別が繰り返される。
【0039】
ステップS4において、周波数fが所定範囲に収まった場合(S4:YES)、ステップS1に戻って、ステップS1の判別が繰り返される。なお、この場合、計時は終了されて、計時された時間はゼロにクリアされる。また、ステップS3において、所定時間T1以上になった場合(S3:YES)、周波数fが所定範囲に収まらない状態が所定時間T1以上継続して判定条件に一致したと判定される。この場合、単独運転状態であると判断され、停止処理が行われて(S5)、第1検出処理は終了する。停止処理では、ゲートブロック信号がインバータ装置2に出力され、開放指令が連系用遮断器4に出力される。
【0040】
なお、
図2のフローチャートに示す処理は一例であって、単独運転検出装置3が行う単独運転検出処理は上述したものに限定されない。
【0041】
図3は、
図1に示す配電系統Cが停電状態になって、パワーコンディショナ1が単独運転状態になったときの、出力電圧の周波数fの変化を示すタイムチャートである。横軸は、停電発生を0秒とし、その後の経過時間を示している。また、縦軸は周波数fを示している。なお、本明細書で参照する波形図やタイムチャートの縦軸および横軸は、理解を容易とするために適宜拡大、縮小したものであり、また示される各波形も、理解の容易のために簡略化され、あるいは誇張もしくは強調されている。
【0042】
図3(a)は、配電系統Cに、従来型電源B1および新型電源B2が接続されている場合(
図1参照)を示している。なお、配電系統Cに、従来型電源B1が接続されておらず、新型電源B2だけが接続されている場合も同様である。
【0043】
停電が発生すると配電系統Cの系統周波数が若干変化する。新型電源B2は、その周波数変化をとらえて無効電力を注入し、系統周波数を上昇または下降させる。
図3(a)では、系統周波数が上昇した場合を示している。なお、
図3(b)および
図4でも、系統周波数が上昇する場合を示す。新型電源B2は、一般的に、停電から0.1秒以上0.2秒以内に単独運転を検出して配電系統Cから切り離される。したがって、停電発生から無効電力が注入され、系統周波数は上昇する。パワーコンディショナ1の出力電圧の周波数fは系統周波数に一致するので、
図3(a)に示すように、周波数fは上昇して、停電発生から0.1秒の手前で、所定範囲の上限周波数であるf
1を超えている。その後の周波数fの変化は、配電系統Cに接続された従来型電源B1および新型電源B2の数および容量、ならびに、負荷Lの数および大きさなどによって異なる。
【0044】
図3(a)に実線で示すように、周波数fが上昇から下降に転じた場合でも、周波数fがf
1を超えた状態(所定範囲に収まらない状態)が所定時間T
1以上継続された場合、単独運転検出装置3は、周波数fが判定条件に一致したとして、単独運転を検出して、パワーコンディショナ1を配電系統Cから切り離す。また、
図3(a)に破線で示すように、周波数fがさらに上昇した場合や、下降することなく維持された場合も、周波数fがf
1を超えた状態が所定時間T
1以上継続されることで、単独運転検出装置3は、周波数fが判定条件に一致したとして、単独運転を検出して、パワーコンディショナ1を配電系統Cから切り離す。
【0045】
図3(b)は、配電系統Cに、新型電源B2が接続されておらず、従来型電源B1だけが接続されている場合を示している。
【0046】
図3(b)の場合、新型電源B2が接続されていないので、停電が発生すると、従来型電源B1が、系統周波数の変化をとらえて無効電力を注入し、系統周波数を上昇させる。従来型電源B1は、停電から0.5秒以上1秒以内に単独運転を検出して、配電系統Cから切り離される。したがって、
図3(b)に示すように、停電発生から1秒までの間に、周波数fは上昇して、所定範囲の上限周波数であるf
1を超えている。その後の周波数fの変化は、配電系統Cに接続された従来型電源B1の数および容量、ならびに、負荷Lの数および大きさなどによって異なる。
【0047】
図3(b)に実線で示すように、周波数fが上昇から下降に転じた場合でも、周波数fがf
1を超えた状態が所定時間T
1以上継続された場合、単独運転検出装置3は、周波数fが判定条件に一致したとして、単独運転を検出して、パワーコンディショナ1を配電系統Cから切り離す。また、
図3(b)に破線で示すように、周波数fがさらに上昇した場合や、下降することなく維持された場合も、周波数fがf
1を超えた状態が所定時間T
1以上継続されることで、単独運転検出装置3は、周波数fが判定条件に一致したとして、単独運転を検出して、パワーコンディショナ1を配電系統Cから切り離す。
【0048】
図3(a),(b)に示すように、配電系統Cに新型電源B2または従来型電源B1が接続されていれば、単独運転検出装置3は、3秒以内に単独運転を検出して、パワーコンディショナ1を配電系統Cから切り離すことができる。
【0049】
図4は、配電系統Cが停電状態になっていないが、系統擾乱が発生したときの、出力電圧の周波数fの変化を示すタイムチャートである。横軸は、系統擾乱の発生を0秒とし、その後の経過時間を示している。また、縦軸は周波数fを示している。
図4は、配電系統Cに、従来型電源B1および新型電源B2が接続されている場合(
図1参照)を示している。なお、配電系統Cに、従来型電源B1だけが接続されている場合、および、新型電源B2だけが接続されている場合も同様である。
【0050】
系統擾乱が発生した場合も配電系統Cの系統周波数が若干変化する。従来型電源B1および新型電源B2は、その周波数変化をとらえて無効電力を注入するが、停電していないので、周波数fは上昇しない。したがって、
図4に実線で示すように、周波数fはf
1を超えない。また、
図4に破線で示すように、周波数fがf
1を瞬間的に超えることがあったとしても、周波数fがf
1を超えた状態が所定時間T
1以上継続されることはない。したがって、これらの場合、単独運転検出装置3は、判定条件に一致しなかったとして、単独運転を検出しない。
【0051】
次に、本実施形態に係る単独運転検出装置3の作用効果について説明する。
【0052】
本実施形態によると、単独運転検出装置3は、判定部32によって、単独運転が発生したと断定できる判定条件に周波数fが一致したと判定された場合に、単独運転状態であると判断する。単独運転検出装置3は、従来型電源B1および新型電源B2の単独運転検出装置が配電系統Cに無効電力を注入したことによる配電系統Cでの系統周波数の変化に応じて単独運転を検出するので、配電系統Cに無効電力を注入しない。したがって、単独運転検出装置3は、電圧フリッカ現象を誘発しない。つまり、電圧フリッカ現象が発生していない配電系統Cであれば、単独運転検出装置3を備えるパワーコンディショナ1が多数追加された場合でも、電圧フリッカ現象は発生しない。また、電圧フリッカ現象が発生している配電系統Cに、単独運転検出装置3を備えるパワーコンディショナ1が多数追加された場合でも、電圧フリッカ現象を助長しない。
【0053】
また、本実施形態によると、単独運転検出装置3は、パワーコンディショナ1の出力電圧の周波数fに基づいて、単独運転を検出する。従来型電源B1および新型電源B2の単独運転検出装置は、単独運転を検出するために、周波数偏差に応じた無効電力を注入することで系統周波数をより変化させる。したがって、単独運転検出装置3は、適切に単独運転を検出できる。
【0054】
また、本実施形態によると、判定条件は、周波数fが所定範囲に収まらない状態が所定時間T1以上継続したことである。所定範囲は、単独運転が発生して、従来型電源B1および新型電源B2の単独運転検出装置による無効電力の注入によって変化した周波数fが収まらない範囲として設定される。また、所定時間T1は、系統擾乱などによる周波数fの上昇を単独運転と判定しないために設定される。したがって、周波数fが判定条件に一致した場合、単独運転が発生したと断定できる。これにより、単独運転検出装置3は、判定部32によって、単独運転を適切に検出できる。
【0055】
なお、本実施形態においては、単独運転検出装置3は、周波数検出部31が検出した、パワーコンディショナ1の出力電圧の周波数fに基づいて、単独運転を検出する場合について説明したが、これに限られない。単独運転検出装置3は、パワーコンディショナ1の出力電流または出力電力の周波数を用いてもよい。また、単独運転検出装置3は、パワーコンディショナ1が出力する電圧、電流、および電力(有効電力、無効電力)などの電気的な特性に基づいて、単独運転を検出してもよい。また、3次、5次、7次などの所定の高調波成分の電圧、電流、電力、および周波数などに基づいて、単独運転を検出してもよい。また、判定部32で用いる検出値は、電圧、電流、電力、および周波数などの大きさを検出した検出値に限定されず、偏差(基準からの変化量)および変化率などであってもよい。判定部32に設定される判定条件は、用いる検出値に応じて、適宜設定される。例えば、検出値が所定範囲の上限値または下限値を超えたこと(所定範囲に収まらなかったこと)を判定条件として、判定部32は、所定時間T1の継続を待つことなく単独運転と判断してもよい。
【0056】
〔第2実施形態〕
図5は、第2実施形態に係る単独運転検出装置の内部構成を示すブロック図である。同図において、第1実施形態に係る単独運転検出装置3(
図1参照)と同一または類似の要素には同一の符号を付して、重複する説明を省略する。
【0057】
本実施形態に係る単独運転検出装置3aは、判定部32が2種類の検出値を用いて判定を行う点で単独運転検出装置3と異なる。
【0058】
単独運転検出装置3aは、電圧検出部39をさらに備えている。電圧検出部39は、パワーコンディショナ1の出力電圧の電圧実効値vを検出する。電圧検出部39は、電圧センサ5から入力される電圧信号に基づいて、電圧実効値vを検出する。電圧検出部39は、検出した電圧実効値vを、判定部32に出力する。本実施形態では、電圧検出部39も本発明の「検出部」に相当し、電圧実効値vが本発明の「第2の検出値」に相当する。なお、電圧検出部39は、電圧の最大値または平均値などを検出してもよい。
【0059】
第2実施形態に係る判定部32は、周波数検出部31から入力される周波数f、および、電圧検出部39から入力される電圧実効値vに基づいて判定を行う。判定部32は、第1判定部321、第2判定部322、およびAND部323を備えている。第1判定部321は、第1実施形態に係る判定部32と同様の機能ブロックであり、周波数検出部31から入力される周波数fが判定条件に一致したか否かを判定する。第1判定部321は、周波数fが判定条件に一致したと判定した場合、ハイレベル信号である第1検出信号をAND部323に出力する。
【0060】
第2判定部322は、電圧検出部39から入力される電圧実効値vが第2の判定条件に一致したか否かを判定する。本実施形態では、第2の判定条件は、電圧実効値vに基づいて単独運転が発生したと断定できる条件が設定されており、例えば、電圧実効値vが第2の所定範囲に収まらない状態が第2の所定時間T2以上継続したことである。第2の所定範囲は、パワーコンディショナ1の出力電圧の通常時の電圧実効値v0を中心とした範囲であり、v1(>v0)以下、v1’(<v0)以上の範囲である。なお、v1およびv1’は限定されない。第2の所定範囲は、単独運転が発生して、従来型電源B1および新型電源B2の単独運転検出装置による無効電力の注入によって変化した電圧実効値vが収まらない範囲が設定される。第2の所定範囲は、実験、シミュレーション結果、または、現地における調査結果などに基づいて適宜設定される。ただし、単独運転以外の系統擾乱などによっても、電圧実効値vが上昇して第2の所定範囲を超える場合がある。しかし、この場合は、電圧実効値vが第2の所定範囲を超えている時間は短い。第2の所定時間T2は、系統擾乱などによる電圧実効値vの上昇を単独運転と判定しないために設定されている。本実施形態では、第2の所定時間T2は、事故時運転継続要件(FRT要件)に応じて、例えば0.3秒とされている。なお、第2の所定時間T2は限定されない。本実施形態では、第2判定部322は、電圧実効値vがv1より大きい状態、または、電圧実効値vがv1’より小さい状態が第2の所定時間T2以上継続した場合に、第2の判定条件に一致したと判定する。第2判定部322は、電圧実効値vが第2の判定条件に一致したと判定した場合、ハイレベル信号である第2検出信号をAND部323に出力する。なお、第2の判定条件は限定されず、単独運転が発生したと断定できる条件であればよい。
【0061】
AND部323は、第1判定部321から入力される信号と第2判定部322から入力される信号との論理積信号を生成して停止処理部38に出力する。したがって、AND部323は、第1判定部321から第1検出信号(ハイレベル信号)を入力され、第2判定部322から第2検出信号(ハイレベル信号)を入力された場合に、ハイレベル信号である単独運転検出信号を停止処理部38に出力する。つまり、第2実施形態に係る判定部32は、周波数fが判定条件に一致し、かつ、電圧実効値vが第2の判定条件に一致したと判定した場合に、単独運転状態であると判断し、単独運転検出信号を停止処理部38に出力する。
【0062】
本実施形態においても、第1実施形態と同様の効果を奏することができる。また、本実施形態によると、判定部32は、周波数fが判定条件に一致し、かつ、電圧実効値vが第2の判定条件に一致したと判定した場合に、単独運転状態であると判断する。したがって、単独運転検出装置3aは、各判定条件を調整することで検出をより高速化しつつ、確実に単独運転を検出できる。
【0063】
なお、判定部32は、AND部323に代えて、第1判定部321から入力される信号と第2判定部322から入力される信号との論理和信号を生成するOR回路を備えてもよい。すなわち、判定部32は、周波数fが判定条件に一致したか、または、電圧実効値vが第2の判定条件に一致したと判定した場合に、単独運転状態であると判断してもよい。
【0064】
また、判定部32が判定に用いる検出値は、周波数fおよび電圧実効値vの組み合わせに限定されない。また、判定部32は、3種類以上の検出値に基づいて判定を行ってもよい。つまり、判定部32は、いずれの検出値を何種類用いて判定してもよい。
【0065】
本発明に係る単独運転検出装置、単独運転検出方法、および、単独運転検出装置を備えたパワーコンディショナは、上述した実施形態に限定されるものではない。本発明に係る単独運転検出装置、単独運転検出方法、および、単独運転検出装置を備えたパワーコンディショナの各部の具体的な構成は、種々に設計変更自在である。
【符号の説明】
【0066】
1:パワーコンディショナ、3,3a:単独運転検出装置、31:周波数検出部、32:判定部、39:電圧検出部