(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022052959
(43)【公開日】2022-04-05
(54)【発明の名称】二次電池
(51)【国際特許分類】
H01M 10/24 20060101AFI20220329BHJP
H01M 10/30 20060101ALI20220329BHJP
H01M 10/26 20060101ALI20220329BHJP
H01M 10/28 20060101ALI20220329BHJP
H01M 50/409 20210101ALI20220329BHJP
H01M 4/24 20060101ALI20220329BHJP
H01M 4/62 20060101ALI20220329BHJP
H01M 4/32 20060101ALI20220329BHJP
H01M 4/34 20060101ALI20220329BHJP
H01M 4/52 20100101ALI20220329BHJP
H01M 4/50 20100101ALI20220329BHJP
H01M 4/54 20060101ALI20220329BHJP
H01M 50/531 20210101ALI20220329BHJP
H01M 50/463 20210101ALI20220329BHJP
H01M 50/543 20210101ALI20220329BHJP
H01M 50/10 20210101ALI20220329BHJP
【FI】
H01M10/24
H01M10/30 Z
H01M10/30 A
H01M10/26
H01M10/28 Z
H01M2/16 P
H01M2/16 M
H01M4/24 J
H01M4/62 C
H01M4/32
H01M4/34
H01M4/24 Z
H01M4/52
H01M4/50
H01M4/54
H01M2/26 A
H01M2/18 Z
H01M2/30 D
H01M2/02 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020159507
(22)【出願日】2020-09-24
(71)【出願人】
【識別番号】519406809
【氏名又は名称】株式会社堤水素研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100151046
【弁理士】
【氏名又は名称】鹿嶌 宗
(74)【代理人】
【識別番号】100166899
【弁理士】
【氏名又は名称】鳥巣 慶太
(72)【発明者】
【氏名】堤 香津雄
【テーマコード(参考)】
5H011
5H021
5H028
5H043
5H050
【Fターム(参考)】
5H011AA01
5H011CC06
5H011DD11
5H021BB15
5H021CC19
5H021EE02
5H021EE21
5H021EE22
5H028AA05
5H028AA06
5H028AA10
5H028BB04
5H028CC08
5H028CC11
5H028EE01
5H028EE05
5H028FF08
5H028HH01
5H028HH03
5H028HH05
5H043AA12
5H043BA15
5H043CA02
5H043CA03
5H043CA13
5H043DA03
5H043EA36
5H043EA60
5H043JA14E
5H043KA06D
5H043KA07D
5H043LA21E
5H050AA06
5H050BA14
5H050CA02
5H050CA03
5H050CA05
5H050CB16
5H050DA13
5H050DA19
5H050DA20
5H050EA02
5H050EA12
5H050FA02
5H050GA03
5H050HA01
5H050HA10
(57)【要約】
【課題】極地や冷凍倉庫のような低温環境で電池は動作しなくなる。これは、電池温度が低いと充電速度が極端に小さくなり、高い電圧をかけないと充電ができないからである。しかし、高い電圧をかけて充電すると活物質の酸化反応、分解反応が進み電極の破損や故障の原因となる。低温下で電池温度を保つために専用のヒーターを搭載する場合もあるが、設備の大型化につながる。
【解決手段】セパレータに固体電解質を用いて、水酸化リチウムと水酸化カリウムの混合比がモル数基準で1:3~1:5であって、支持電解質が5~7mol/Lの電解液を用いて、電極とセパレータを加圧することにより、ヒーターなどの加熱器を用いることなく-40℃で動作する二次電池の開発に成功した。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水素吸蔵合金を含む負極と、正極と、前記負極と前記正極の間に介在し固体電解質を有するセパレータと、
電解液を備え、
前記電解液は水酸化リチウムと水酸化カリウムの混合比がモル数基準で1:3~1:5であって、支持電解質が5~7mol/Lである二次電池。
【請求項2】
前記固体電解質がジルコニアまたは酸化イットリウムである請求項1に記載の二次電池。
【請求項3】
前記水素吸蔵合金の体積基準累積粒径分布における50%粒子径が0.2~3μmである請求項1または2のいずれかに記載の二次電池。
【請求項4】
前記負極が前記負極の質量を100としたときの質量比で2%~8%の前記固体電解質を有し、かつ、前記正極が前記正極の質量を100としたときの質量比で2%~8%の前記固体電解質を有する請求項1~3のいずれか一項に記載の二次電池。
【請求項5】
前記負極、前記正極および前記セパレータを加圧する加圧機構を備えた請求項1~4のいずれか一項に記載の二次電池。
【請求項6】
前記セパレータがプラズマ処理またはフッ素ガス処理されている請求項1~5のいずれか一項に記載の二次電池。
【請求項7】
前記正極が水酸化ニッケル、二酸化マンガンおよび酸化銀のいずれか1つ、もしくは、2つ以上の組み合わせを含む請求項1~6のいずれか一項に記載の二次電池。
【請求項8】
前記負極、前記正極および前記セパレータからなる第1電極群が、筒状の外装体の軸方向に沿って積層されており、
前記第1電極群を前記外装体の軸方向に沿って貫通している導電性を有する集電体を備えていて、
前記正極および前記負極のいずれか一方の電極が、前記外装体の内面に当接して、前記外装体と電気的に接続されている一方、前記集電体と接触しておらず、
前記正極および前記負極のいずれか他方の電極が、前記外装体に接触していない一方、前記集電体の外側面に当接して、前記集電体と電気的に接続されており、
前記加圧機構が前記第1電極群を前記外装体の軸方向に加圧する請求項7に記載の二次電池。
【請求項9】
前記正極と前記負極とが蛇腹状の前記セパレータを挟んで交互に配置された第2電極群を有し、
前記第2電極群の側端部を囲む枠形部材と、前記枠形部材の開口部を対向して覆う第1蓋部材と第2蓋部材とを備え、
前記負極の上端部が前記第1蓋部材の内側の面に当接し、前記正極の下端部が前記第2蓋部材の内側の面に当接しており、
前記加圧機構が前記第2電極群を垂直方向に加圧する請求項7に記載の二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低温動作二次電池に関し、詳しくは加熱装置なしに低温度で動作する二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
冷凍倉庫内のフォークリフトや照明設備などに用いる二次電池は、その温度条件下で連続して使用することが困難である。また、寒冷地における街頭などの屋外照明は低温度で動作することが求められている。更に、地理的に北海道、米国北部、ロシア、カナダ、北欧など冬季気温がマイナス20℃以下の地域では低温度で動作する二次電池が求められている。
【0003】
このような問題を解決する技術として、例えば、特許文献1には、低温環境下で安定した点灯が可能な低温用照明装置の技術が提案されている。また、特許文献2には、二次電池を収納した筐体内に放熱部材を配して、低温状態の二次電池を迅速に昇温させることができる組電池モジュールの技術が提案されている。
【0004】
また、固体電解質電池は比較的低温に適合しているとして、電池パックの底部にヒータを配した固体電解質リチウムイオン電池が開示されている(例えば特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008-251359号公報
【特許文献2】特開2015-125930号公報
【特許文献3】特開2016-164888号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
二次電池は、温度が低いと(例えば-40℃)充電速度が極端に小さくなり、高い電圧をかけないと充電ができない。しかし高い電圧をかけて充電すると活物質の酸化反応、分解反応が進み電極の破損や故障の原因となり、この結果、発熱量が多くなって電池効率が悪化するといった問題点がある。
【0007】
また、低温下で電池温度を保つために専用のヒーターを搭載する場合も見受けられるが、電池全体の寸法が大きくなるばかりでなく、コストがかかるという問題がある。
【0008】
本発明は、係る課題を解決するためになされたものであり、ヒーターのような特別な加熱手段を必要とすることなく、電池を損傷することのない低温度で動作する二次電池を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記した目的を達成するために、本発明に係る二次電池は、水素吸蔵合金を含む負極と、正極と、前記負極と前記正極の間に介在し固体電解質を有するセパレータと、電解液を備え、前記電解液は水酸化リチウムと水酸化カリウムの混合比がモル数基準で1:3~1:5であって、支持電解質が5~7mol/Lである。
【0010】
本発明に係る二次電池は、前記固体電解質がジルコニアまたは酸化イットリウムである。また、本発明に係る二次電池は、前記水素吸蔵合金の体積基準累積粒径分布における50%粒子径が0.2~3μmである。
【0011】
本発明に係る二次電池は、前記負極が前記負極の質量を100としたときの質量比で2%~8%の前記固体電解質を有し、かつ、前記正極が前記正極の質量を100としたときの質量比で2%~8%の前記固体電解質を有する。
【0012】
本発明に係る二次電池は、前記負極、前記正極および前記セパレータを加圧する加圧機構を備えている。
【0013】
本発明に係る二次電池は、前記セパレータがプラズマ処理またはフッ素ガス処理されている。また、本発明に係る二次電池は、前記正極が水酸化ニッケル、二酸化マンガンおよび酸化銀のいずれか1つ、もしくは、2つ以上の組み合わせを含んでいる。
【0014】
本発明に係る二次電池は、前記負極、前記正極および前記セパレータからなる第1電極群が、筒状の外装体の軸方向に沿って積層されており、前記第1電極群を前記外装体の軸方向に沿って貫通している導電性を有する集電体を備えていて、前記正極および前記負極のいずれか一方の電極が、前記外装体の内面に当接して、前記外装体と電気的に接続されている一方、前記集電体と接触しておらず、前記正極および前記負極のいずれか他方の電極が、前記外装体に接触していない一方、前記集電体の外側面に当接して、前記集電体と電気的に接続されており、前記加圧機構が前記第1電極群を前記外装体の軸方向に加圧する。
【0015】
本発明に係る二次電池は、前記正極と前記負極とが蛇腹状の前記セパレータを挟んで交互に配置された第2電極群を有し、前記第2電極群の側端部を囲む枠形部材と、前記枠形部材の開口部を対向して覆う第1蓋部材と第2蓋部材とを備え、前記負極の上端部が前記第1蓋部材の内側の面に当接し、前記正極の下端部が前記第2蓋部材の内側の面に当接しており、前記加圧機構が前記第2電極群を垂直方向に加圧する。
【発明の効果】
【0016】
本発明は、電極の破損や故障の原因となる高い電圧をかけて充電する必要がない低温度で動作する二次電池の提供を可能にする。更に、設備の大型化につながる加熱および加温装置を必要としない低温度で動作する二次電池の提供を可能にする。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1A】第1実施形態に係る二次電池の軸方向断面図である。
【
図1B】第1実施形態に係る二次電池の側面図である。
【
図2A】第2実施形態に係る二次電池の構造を示す一部破断図である。
【
図2B】第2実施形態に係る二次電池の構造を示す側面図である。
【
図3】-40℃においてフローティング充電したときの充電曲線である。
【
図4】-40℃においてフローティング充電後に4C放電したときの放電曲線である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の実施の形態について以下説明する。本実施形態は本発明を実施する一例であって、本発明は本実施形態に限定されるものではない。
【0019】
本発明の各実施形態について説明するのに先立ち、本発明が適用される二次電池としてニッケル水素電池を例に取り説明する。なお、二次電池のタイプはニッケル水素電池に限定されるものでない。
【0020】
発明者は、-40℃でも充電が可能な二次電池の開発を行った。これは、低温においては放電よりも充電が難しいからである。実際、発明者は-40℃で充電可能な二次電池を開発し、-40℃で自動車の始動が可能であることを確かめた。試験結果の詳細は後述する。
【0021】
二次電池の充放電速度は、周囲温度に大きく左右される。これは、温度が低いと電池の反応速度が遅くなるからである。アウレニウスの法則によれば、化学反応の速度は、常温においては10℃で2倍になるといわれている。単純計算をすれば、-40℃では反応速度は1/64となる。二次電池内におけるイオン拡散速度も充放電速度に影響を与える。電池反応速度よりもイオンの拡散速度が十分早ければ、電池反応速度が充放電速度の律速となる。逆に電池反応速度が十分速ければ、イオン拡散速度が充放電速度の律速となる。
【0022】
電池反応において、負極における水素の反応が律速となる。負極の反応速度は水素吸蔵合金の粒子の表面積に依存する。粒子が小さければその分水素吸蔵合金としての表面積は増加する。従来は50ミクロンであった粒子径を2ミクロンにすることにより、負極の反応速度の向上を図った。好ましい粒子の大きさは、体積基準累積粒径分布における50%径(D50V)が、1~5ミクロンである。粒径が小さいほうが表面積は増えるが、極端に小さくなれば粒子は安全に砕き難くなる。発明者は、2ミクロンが最も好ましい寸法と考えた。試験に用いた水素吸蔵合金の体積基準累積粒径分布における50%径(D50V)は2ミクロンである。ここに粒径分布の測定にはレーザー回折散乱法を用いた。
【0023】
従来の電解液では低温におけるイオン拡散速度に限界があるので、低温でのイオン拡散性が良好な固体電解質を用いた。すなわち、セパレータに固体高分子を分散させることにより、低温におけるイオン拡散速度の向上を図った。なお、固体電解質は電極との接触性に難点があるので、セパレータには水酸化リチウム(LiOH)および水酸化カリウム(KOH)の溶液を保持させて、電極と固体電解質との接触性の改善を図った。水酸化リチウムは凍り難く低温に強いがパワーがなく、水酸化カリウムは低温においてもイオン導電性が良いので、両者の混合液を用いた。LiOHとKOHの混合割合はモル数基準で1/3~1/5が好ましく、支持電解質としては5~7mol/Lが好ましい。発明者は、電解液の混合割合がモル数基準で1/4で、支持電解質として6mol/Lの溶液が最も好ましいと考えた。試験にはこの数値の電解液を用いた
【0024】
ジルコニア(ZrO2)もしくは酸化イットリウム(Y2O3)等の金属酸化物は親水性を有しており、かつ、水素により劣化しにくいから長期にわたって親水性を保持し、電解液のドライアウトを抑制することが可能である。セパレータにはこれら電解質を分散配置した。
【0025】
電極もその深さ方向のイオン拡散速度が低温において問題となる。活物質の隙間に充填された電解液のイオン拡散速度が充放電における律速となることがある。電極に固体電解質を混合すれば、低温における電極のイオン導電性を改善することができる。
【0026】
負極材料、結着剤、固体電解質、および、導電助剤の合計を100質量%とした場合、負極に配合される固体電解質の質量比は、2~10質量%に設定するのが好ましく、3~8質量%に設定するのがより好ましい。同様に、正極材料、結着剤、固体電解質、および、導電助剤の合計を100質量%とした場合、正極に配合される固体電解質の質量比は、2~10質量%に設定するのが好ましく、3~8質量%に設定するのがより好ましい。
【0027】
なお、固体電解質としてはジルコニア(ZrO2)および酸化イットリウム(Y2O3)が好ましい。このいずれ一方もしくは両方の固体電解質を用いることができる。試験にはジルコニアを用いた。
【0028】
電極基板の材質は、電気伝導性が高く、保持した電極材料に通電し得る材料であれば特に限定されない。負極基板は、電解液中の安定性と耐還元性の観点からNi等が好ましい。なお、鉄にニッケルやカーボンを被覆したものを用いてもかまわない。正極基板は、電解液中の安定性と耐酸化性の観点から正極基板としてはNiが好ましい。なお、鉄にニッケルを被覆したものを用いてもよい。
【0029】
電極基板の形状としては、三次元構造の金属多孔体が望ましく、このうち充填密度を高めることができること、出力特性が良好なことから、エンボス体又は発泡体が好ましい。
【0030】
負極材料に使用される水素吸蔵合金は、水素の吸蔵・放出が行えるものであれば特に限定されない。このうち、水素貯蔵容量、充放電特性、自己放電特性およびサイクル寿命特性の観点から、AB5型の希土類-ニッケル合金である、MmNiCoMnAlのミッシュメタルを含んだ5元系合金であることが好ましい。あるいは、超格子水素吸蔵合金といわれるLaMgNi系であることが好ましい。なお、これら合金は1種又は2種以上を用いてもよい。正極材料は、アルカリ二次電池の正極として利用可能なものであれば特に限定されなく、水酸化ニッケル系の正極材料もしくは酸化銀系の正極材料であってもよい。水酸化ニッケルが好ましいが、二酸化マンガンであってもよく、これらの混合であてもよい。また、正極活物質は、高容量化が達成しやすいことから、嵩密度が大きいもの、例えば球状のものが好ましい。
【0031】
導電助剤は、活物質に導電性を付与し、その利用率を高めるためのものである。導電助剤は、放電時に電解液に溶出することなく、かつ、水素で還元されにくい炭素材料であることが好ましい。正極に用いる導電助剤はグラファイト化したソフトカーボンがより好ましい。
【0032】
負極材料、結着剤、固体電解質、および、導電性粉末を混合してペースト状に混練する。このペーストを、負極基板に塗布または充填し、乾燥させる。その後、ローラープレス等で負極基板を圧延することにより、負極を作製する。同様に、正極材料、結着剤、固体電解質、および、導電性粉末を混合してペースト状に混練する。このペーストを、正極基板に塗布または充填し、乾燥させる。その後、ローラープレス等で正極基板を圧延することにより、正極を作製する。
【0033】
結着剤としては、例えば、ポリアクリル酸ソーダ、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルブチラール(PVB)、エチレン-ビニルアルコール、エチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、フッ素系樹脂、スチレン-エチレン-ブチレン-スチレン共重合体(SEBS)を含む。
【0034】
また、結着剤としてポリテトラフルオロエチレン(PTFE)を使用してもよい。PTFEは、水素により還元されにくく、水素雰囲気中で長期間使用しても劣化が進みにくく、長寿命が期待できる。
【0035】
セパレータとしては、水素を活物質とする電池に用いられる公知のものが使用できる。セパレータの形状としては、微多孔膜、織布、不織布、圧粉体が挙げられ、このうち、出力特性と作製コストの観点から不織布が好ましい。セパレータの材質としては、特に限定されないが、耐アルカリ性、耐酸化性、耐還元性を有することが好ましい。具体的には、セパレータを形成する素材としては、例えば、ポリエチレン繊維やポリプロピレン繊維などのポリオレフィン系繊維、ポリフェニレンサルファイド繊維、ポリフルオロエチレン系繊維、ポリアミド系繊維などを使用することができる。なお、セパレータには電解液が保持される。
【0036】
ポリオレフィン系繊維は疎水性であるので、親水処理する必要がある。水素ガス雰囲気中で使用する場合は、フッ素ガス処理を施したセパレータが好ましい。フッ素ガス処理により、親水性を付与したセパレータは、水素ガス中で使用しても、水素により親水性が失われにくく、長寿命が期待できる。
【0037】
<第1実施形態>
二次電池の構造の形態は特に限定されないが、積層型の電池は加圧機構を設けるのに好都合である。
【0038】
図1Aに本発明に係る二次電池の軸方向断面図を示す。
図1Bは二次電池の側面図である。
図1Aに示す積層型の二次電池11は、筒状の外装体12と棒状の集電体17と外装体内部に収納される電極群13とを主な構成要素として備えている。外装体12の両端開口部に取り付けられた蓋部材16は、電極群13を外装体12に収納後に開口部において密に嵌合される。
【0039】
集電体17は、鉄にニッケルメッキを施した材料でできている。電極群13は、集電体を貫通して順次積み重ねるように配されている。集電体17がセパレータ13cに含まれる電解液により腐食されるのを防止するために、ニッケルメッキが施されている。集電体の軸部17aは、正極13aと負極13bとセパレータ13cとから構成される電極群13の中央を外装体12の軸方向(
図1AのX方向)に貫通している。
【0040】
正極13aと、負極13bと、正極13aと負極13bの間に介在するセパレータ13cとから構成される電極群13は、外装体12の軸方向(
図1AのX方向)に積層して外装体12の内部に収納されている。負極13bの中央に設けられた穴の径は、集電体の軸部17aの外径より小さいので、負極13bは穴の周縁部において集電体の軸部17aと接触して、負極13bと集電体17は、電気的に接続されている。正極13aの外径は外装体12の内径より少し大きいので、正極13aはその外縁部において外装体の内面12aと接触しており、正極13aと外装体12は電気的に接続されている。
【0041】
負極13bの外径は外装体12の内径よりも小さく、負極13bは外装体12に接触せず、負極13bと外装体12は電気的に絶縁されている。一方、正極13aの中央に設けられた穴の径は、軸部17aの外径より大きく、正極の穴の周縁部は軸部17aと接触せず、正極13aと集電体17は、電気的に絶縁されている。外装体12は正極端子として機能し、集電体の軸部17aは負極端子を構成する。
【0042】
セパレータ13cの外縁が、正極13aにより覆われており、セパレータ13cにおける集電体17が貫通する穴の周縁が負極13bにより覆われており、負極13bの外縁がセパレータ13cにより覆われており、正極13aにおける集電体17が貫通する穴の周縁がセパレータ13cにより覆われている。この結果、正負電極間、正極と集電体および負極と外装体との間は確実に絶縁されている。
【0043】
外装体12の両端の蓋部材16は、絶縁板14を介して電極群13に当接している。2つの蓋部材16は連結ボルト18により互いに連結されている。蓋部材16には連結ボルト18を通すための穴が設けられている。
図1Bでは6本の連結ボルト18により蓋部材18が互いに連結されている。連結ボルトの数は4以上であることが好ましく、6乃至は10であってもよい。
【0044】
連結ボルト18の両端部又は全体にネジが切られており、連結ボルト18で連結してナット19で固定することにより二次電池11を組み立てる。
【0045】
複数のボルト18で連結された左右の蓋部材16にサンドイッチされた電極群13は、ナット19を締め付けることにより、電極の積層方向(
図1AのX方向)に加圧・圧縮される。この圧縮による応力は蓋部材16を介して電極群13の固体電解質を含むセパレータ13cに伝わる。これにより、固体電解質を含むセパレータ13cのイオン透過性が高まる。なお、ナット19には緩み止めのロックナットを装備してもよい。
【0046】
加圧機構を利用してセパレータを圧縮すれば、固体電解質を含むセパレータのイオン透過性を高めることできる。
【0047】
-40℃においてフロート充電したときの充電曲線を
図3に示す。図の横軸が時間を(h)で、縦軸が充電深度を(%)で示す。実線が充電深度を示している。約28時間で満充電になっている。破線は電池温度であり、ほぼ-40℃を保っている。
【0048】
図4は、フローティング充電後に4C放電したときの放電曲線である。自動車のエンジンの始動が可能であって、1V以上が20秒継続しており、0.6V以上を3分間継続している。
【0049】
<第2実施形態>
図2Aは、本発明の第2実施形態に係る二次電池の構造を示す一部破断断面図である。
図2Bは、第2実施形態に係る二次電池の側面図である。二次電池31は、第1実施形態と同様、水素吸蔵合金を主材料とした負極33と、水酸化ニッケルを主材料とした活物質からなる正極34と、固体電解質を有するポリオレフィン系の不織布からなるセパレータ35とを有する。なお、負極3と正極34とセパレータ35とを合わせて電極群32と称する。電極群32の周囲を取り囲むように形成された矩形の枠形部材37と、枠形部材37と電極群32とを上下から覆う矩形の第1蓋部材38と第2蓋部材39とによって角形の二次電池31が構成されている。
【0050】
図2Aに示すように、二次電池31の内部には、短冊状の負極33と短冊状の正極34とが、蛇腹状(プリーツ状)に折り曲げられたセパレータ35を介して互いに対向して交互に挟みこまれ、セパレータ35の上方に負極33、下方に正極34となるよう配置されている。そして、負極33と第1蓋部材38の負極集電面38aとが当接し、正極34と第2蓋部材39の正極集電面39aとが当接した状態となっている。
【0051】
なお、第1蓋部材38および第2蓋部材39はニッケルめっきを施した鋼板で形成されており、第1蓋部材38は負極端子として機能し、第2蓋部材39が正極端子として機能する。電極群32を内包した蓋部材38,39は、絶縁性のケース40の内部に収納されている。
【0052】
また、第1蓋部材38および第2蓋部材39の材料としては、ニッケルめっきした鋼板を用いたが、例えばニッケル金属や炭素板およびニッケルめっきした炭素板でもよい。蓋部材38,39の内方空間には所定量の電解液が装填されている。なお、電極群32の周囲を囲む枠形部材37は絶縁材からなる。
【0053】
積層された電極群32の一方の端面であって、電極群32と枠形部材37の間に押板41が配置されている。ケース40の側面にねじ穴43が設けられていて、このねじ穴43に押しボルト42が螺合するようになっている。押しボルト42の先端は枠形部材37を貫通して押板41に当接している。
【0054】
押しボルト42を回転させることにより、押しボルト42は左方に移動して電極群32を加圧・圧縮する。これにより固体電解質を含んだセパレータ35の垂直方向に大きな応力が作用する。このように押しボルトを利用した加圧機構を用いてセパレータを圧縮することにより、固体電解質を含むセパレータのイオン透過性を高めることできる。
図2Bは二次電池31の側面図である。
図2Bでは3本の押しボルト42で加圧機構を構成しているが、押しボルトの数はこれより多くても少なくてもよい。
【0055】
なお、押板41の側面にはシール剤が塗布されていて、第1蓋部材38及び第2蓋部材39と押板41の隙間から電解液が漏れるのを防いでいる。
【0056】
第1実施形態および第2実施形態の二次電池は、いずれも積層タイプの電池である。積層電池の場合、加圧機構を設けることが容易であって、その寸法も小さいことは各実施形態に示すとおりである。加圧機構を用いても、電池の容積当たりの電気量を維持することができる。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明に係る二次電池は、産業用のみならず民生用の二次電池としてとして好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0058】
11 二次電池
12 外装体(a:側部内面)
13 電極群(a:正極、b:負極、c:セパレータ)
14 絶縁板
16 蓋部材
17 集電体(a:軸部)
18 連通ボルト
19 ナット
31 二次電池
32 電極群
33 負極
34 正極
35 セパレータ
37 枠形部材
38 第1蓋部材(a 負極集電面)
39 第2蓋部材(a 正極集電面)
40 ケース
41 押板
42 押しボルト
43 ねじ穴