IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 東京ラップ株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-フェイスシールド及びその製造方法 図1
  • 特開-フェイスシールド及びその製造方法 図2
  • 特開-フェイスシールド及びその製造方法 図3
  • 特開-フェイスシールド及びその製造方法 図4
  • 特開-フェイスシールド及びその製造方法 図5
  • 特開-フェイスシールド及びその製造方法 図6
  • 特開-フェイスシールド及びその製造方法 図7
  • 特開-フェイスシールド及びその製造方法 図8
  • 特開-フェイスシールド及びその製造方法 図9
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022052985
(43)【公開日】2022-04-05
(54)【発明の名称】フェイスシールド及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   A41D 13/11 20060101AFI20220329BHJP
   A62B 18/02 20060101ALI20220329BHJP
【FI】
A41D13/11 L
A41D13/11 H
A41D13/11 E
A62B18/02 A
A41D13/11 Z
【審査請求】有
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020159545
(22)【出願日】2020-09-24
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 令和2年6月25日に配布した宣伝用カタログ[A]及び令和2年8月26日に配布した宣伝用カタログ[B]
(71)【出願人】
【識別番号】397069721
【氏名又は名称】東京ラップ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106138
【弁理士】
【氏名又は名称】石橋 政幸
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 卓哉
【テーマコード(参考)】
2E185
【Fターム(参考)】
2E185AA06
2E185BA16
2E185BA17
2E185CC32
2E185CC45
(57)【要約】
【課題】本発明の目的は、目、鼻、口を含む顔面の一括防護が可能であり、ゴーグル部における光の屈折や乱反射が少なく良好な視界と目視対象物の視認性を確保でき、かつ、使い捨てタイプとして低コストでの提供も可能なフェイスシールド及びその製造方法を提供することにある。
【解決手段】装着者の両眼を含む領域を覆うフェイス面と、装着者の額に沿って湾曲自在に変形して密着可能な上端部とを有するゴーグル部と、装着者の口、上顎、下顎、頬及び鼻を含む領域を覆うためのマスク部と、ゴーグル部とマスク部を、装着者の鼻を覆う部分の両側部で仕切り、装着者の頬上部と接触可能に設けられた仕切部と、を有し、装着者の額の一部から下顎までの全面を覆うフェイスシールドを、真空成型により一体成型された熱可塑性樹脂製のシートから形成する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
真空成型により一体成型された熱可塑性樹脂製のシートからなり、装着者の額の一部から下顎までの全面を覆うフェイスシールドであって、
前記装着者の両眼を含む領域を覆うフェイス面と、前記装着者の額に沿って湾曲自在に変形して密着可能な上端部とを有するゴーグル部と、
前記装着者の口、上顎、下顎、頬及び鼻を含む領域を覆うためのマスク部と、
前記ゴーグル部と前記マスク部を、前記装着者の鼻を覆う部分の両側部で仕切り、前記装着者の頬上部と接触可能に設けられた仕切部と、
を、前記フェイスシールドの背面側から前面側に突出する凸部に有することを特徴とするフェイスシールド。
【請求項2】
前記装着者の顔の側面及び下顎を含む輪郭を包含するように連続的に配置された周縁部を有し、
前記周縁部と前記ゴーグル部の上端部の両端とが、前記フェイルシールドの背面側に置いた同じ仮想平面の上に位置するように設けられており、
前記仮想平面から前記フェイスシールドの前面側に突出して前記装着者の顔の額から下の部分の全面を覆うように前記凸部が設けられている
請求項1に記載のフェイスシールド。
【請求項3】
前記熱可塑性樹脂がポリエステルである請求項1または2に記載のフェイスシールド。
【請求項4】
前記装着者への装着に利用する耳部を、前記周縁部の前記ゴーグル部の長手方向に対応した位置に有する請求項1~3のいずれか一項に記載のフェイスシールド。
【請求項5】
前記装着者への装着に利用する耳部に着脱自在に結合した装着用のベルト、バンドまたは紐を有する請求項4に記載のフェイスシールド。
【請求項6】
請求項1~3のいずれか一項に記載のフェイスシールドの製造方法であって、
加熱により成型可能な状態にある一枚の熱可塑性樹脂シート部材を、前記フェイスシールドの凸部に対応する部分を含む真空成型用の型を覆う位置に配置する工程と、
真空引きをして前記シート部材を前記真空成型用の型により真空成型して、前記シート部材中に前記フェイスシールドを含む成型体を得る工程と、
前記シート部材中の成型体から前記フェイスシールドを型抜する工程と
を有することを特徴とするフェイスシールドの製造方法。
【請求項7】
前記真空成型用の型が、凸型である請求項6に記載のフェイスシールドの製造方法。
【請求項8】
前記真空成型用の型が、凹型である請求項6に記載のフェイスシールドの製造方法。
【請求項9】
前記ゴーグル部の真空引きを、前記フェイス面を成型する面には設けずに、前記フェイス面を取り囲む位置に間隔を以って設けた複数の孔により行う請求項6~8のいずれか一項に記載のフェイスシールドの製造方法。
【請求項10】
前記フェイスシールドが、前記装着者への装着に利用する耳部を、前記周縁部の前記ゴーグル部の長手方向に対応した位置に有する請求項6~9のいずれか一項に記載のフェイスシールドの製造方法。
【請求項11】
装着者への装着に利用する耳部に着脱自在に結合した装着用のベルト、バンドまたは紐を取り付ける工程を有する請求項10に記載のフェイスシールドの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はフェイスシールド及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
医療従事者、介護従事者、薬品取扱い従事者、警察、救急、警備員、各種受付業務、対面販売員等の専門職従事者等において感染性飛沫や薬液等から従事者の顔を守るための器具としてフェイスシールドが用いられてきた。近年、感染症を引き起こす新型のウイルスの出現と感染の拡大が大きな問題となっており、フェイスシールドは飛沫感染に対する防御用の器具として重要な役割を果たしつつある。特に、目、鼻及び口からの感染の可能性が指摘されている新型コロナウイルスにおける飛沫感染の場合には、フェイスシールドによって、目、鼻及び口をガードすることが重要となっている。
更に、感染源を有する、あるいは感染源を有する可能性のある者においても、他人への飛沫感染のリスクを低減する上でもフェイスシールドが有用であるとされている。
フェイスシールドとしては種々の形態のものが知られており、特許文献1には、顔面保護対象としての装着者の頭部に装着される本体フレームと、本体フレームの外側に配置され、装着者の顔面を保護するシールド部材と、シールド部材の着脱を容易とする機構を有する顔面保護具が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015-205105号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
飛沫感染防止用としてのフェイスシールドにおいては、細菌やウイルスを含む飛沫から装着者の顔面を守る機能と共に、装着者における良好な視界や、風景や人物等の目視対象物に対する歪みの少ない視認性を確保できることが好ましい。更に、殺菌処理等による再使用における危険性や煩雑さを考慮する場合には、使い捨て用途に対応できる価格での製造販売が可能であることが好ましい。
低価格を実現できる簡易構造のフェイスシールドとしては、一枚の透明樹脂製のシートやフィルムを、湾曲部を介して顔面の側方から正面に方向に沿って単に変形させたシールド部を必要に応じてホルダー部で保持した構成を有するものが知られている。
しかしながら、このようなシールド部においては、湾曲部における光の屈折やシールド部材での光の乱反射によって、装着者における良好な視界や、目視対象物の歪みのない視認性が妨げられる場合が多い。また、シールド部がスペースを以って装着者の口、鼻及び目を覆う面を有するフェイスシールドでは、口、鼻からの水分を含む息が目を覆うシールド部分の内側を曇らせて装着者の視界の妨げとなる場合もあった。
そこで、本発明の目的は、目、鼻、口を含む顔面の一括防護が可能であり、ゴーグル部における光の屈折や乱反射が少なく良好な視界と目視対象物の視認性を確保でき、かつ、使い捨てタイプとして低コストでの提供も可能なフェイスシールド及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明にかかるフェイスシールドは、
真空成型により一体成型された熱可塑性樹脂製のシートからなり、装着者の額の一部から下顎までの全面を覆うフェイスシールドであって、
前記装着者の両眼を含む領域を覆うフェイス面と、前記装着者の額に沿って湾曲自在に変形して密着可能な上端部とを有するゴーグル部と、
前記装着者の口、上顎、下顎、頬及び鼻を含む領域を覆うためのマスク部と、
前記ゴーグル部と前記マスク部を、前記装着者の鼻を覆う部分の両側部で仕切り、前記装着者の頬上部と接触可能に設けられた仕切部と、
を、前記フェイスシールドの背面側から前面側に突出する凸部に有することを特徴とする。
本発明にかかるフェイスシールドの製造方法は、上記の構成のフェイスシールドの製造方法であって、
加熱により成型可能な状態にある一枚の熱可塑性樹脂シート部材を、前記フェイスシールドの凸部に対応する部分を含む真空成型用の型を覆う位置に配置する工程と、
真空引きをして前記シート部材を前記真空成型用の型により真空成型して、前記シート部材中に前記フェイスシールドを含む成型体を得る工程と、
前記シート部材中の成型体から前記フェイスシールドを型抜する工程と
を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、目、鼻、口を含む顔面の一括防護が可能であり、ゴーグル部における光の屈折や乱反射が少なく良好な視界と目的物の視認性を確保でき、かつ、使い捨てタイプとして低コストでの提供も可能なフェイスシールド及びその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明にかかるフェイスシールドの一実施形態の正面図である。
図2】本発明にかかるフェイスシールドの一実施形態の右側面図である。
図3】本発明にかかるフェイスシールドの一実施形態の平面図である。
図4】本発明にかかるフェイスシールドの一実施形態の底面図である。
図5図1のA-A’線拡大断面図である。
図6図1のB-B’線断面図である。
図7】本発明にかかるフェイスシールドの一実施形態の斜視図である。
図8】(A)は本発明にかかるフェイスシールドの上端部の構成を示す拡大縦部分端面図であり、(B)は装着用のゴム紐を耳部に結び付けた状態を示す部分図である。
図9】(A)~(C)は、本発明にかかるフェイスシールドの製造工程の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
(フェイスシールド)
本発明にかかるフェイスシールドは、真空成型により一体成型された熱可塑性樹脂製の全体が透明なシートからなり、装着者の額の一部から下顎までの全面を覆う構造を有する。
本発明にかかるフェイスシールドは、ゴーグル部と、マスク部と、これらの部分を仕切る仕切部と、を有し、必要に応じて、装着者への装着に利用する耳部を有していてもよい。
ゴーグル部は、装着者の両眼を含む領域を覆うフェイス面と、装着者の額に沿って湾曲自在に変形して密着可能な上端部とを有する。
マスク部は、装着者の口、上顎、下顎、頬及び鼻を含む領域を覆うように設けられる。
仕切部は、ゴーグル部とマスク部を、装着者の鼻を覆う部分の両側部で仕切り、装着者の頬上部と接触可能に設けられる。
【0009】
本発明にかかるフェイスシールドの好ましい実施形態について図面を用いて以下に説明する。
【0010】
図1図8は、本発明にかかるフェイスシールドの好ましい一実施形態を示す図である。図示したフェイスシールド1は、ゴーグル部2とマスク部3と、これらの部分を仕切る仕切部4を有する。フェイスシールドの大きさは、装着者の額の一部から下顎までの全面を覆うように設定される。例えば、標準的な顔の大きさと、顔の大きさのバラツキを考慮して、各種の顔の大きさの最大値に合わせてフェイスシールドの大きさを設定することができる。また、かかる観点から、外国人等の大顔用、大人一般用、子供用、未就学児童用等の顔の大きさに関連した用途を設定してもよい。
また、装着者への装着に利用する耳部6を、周縁部5のゴーグル部2の長手方向に対応した位置に有する。耳部6の幅が狭まった狭窄部6aを、紐等を結ぶ固定位置として利用して、装着に利用することができる。
フェイスシールド1の前面側から背面側へ窪んでいる溝部6bは、耳部6とゴーグル部2との接続部を形成し、この溝部によってシート厚を薄くすることで、耳部6の可動範囲を大きくすることが可能となり、装着における自由度を広げることができる。
【0011】
ゴーグル部2は、装着者の両眼を含む領域を覆うフェイス面2aと、装着者の額に沿って湾曲自在に変形して密着可能な上端部2bとを有する。
上端部2bは、図8(A)のフェイスシールドの装着時における上下方向における部分端面部(部分縦断面図)に示すように、ゴーグル部の上端に、装着者の顔側に突出し、顔の横方向にわたって額の一部に密着可能な先端部2b-1を有する断面が湾曲した折り返し構造を介して先端部2b-2に至る構造を有する。この先端部2b-2は、後述する製造方法において型抜き切断によって周縁部5と一緒に、あるいは別々に形成される。上端部2bをこのような構造とすることで、鋭利となる可能性もある先端部2b-2ではなく、湾曲部の先端2b-1が当たることによって装着者の額へのソフトで安全な接触を可能とし、かつ、上端部2bを装着者の額の幅や大きさに応じて変形する際に、装着者の額の横方向に対応した良好な湾曲状態(アーチ形状)を提供することができる。
【0012】
フェイス面2aは、装着者の顔の横方向を長手方向として装着者の両眼を含む領域を覆うものであり、フェイスシールド1の前面側、すなわち、装着者の顔側に対して反対側へ突出して設けられた箱型の部分の前面部分を構成している。
マスク部3は、フェイスシールド1の前面側に突出し、その背面側に位置する装着者の口、上顎、下顎及び頬を覆うための凸状湾曲部3aと、フェイスシールド1の前面側に突出し、背面側に位置する装着者の鼻を覆うための凸状部3bと、を有する。
仕切部4は、装着者の鼻を覆う部分の両側部において、ゴーグル部2とマスク部3の境界領域を形成し、装着者の頬の上部と接触可能に設けられる。このような仕切部4を設けることによって、装着者がフェイスシールド1を装着した際に、装着者の口から吐き出された息がフェイスシールド1の内面(背面)に沿ってゴーグル部2内へ上昇するのを防ぎ、ゴーグル部2の内面、特にフェイス面2aの内面における曇りの発生を防止することができる。
【0013】
フェイスシールド1は、装着者の顔の側面及び下顎を含む輪郭を包含するように連続的に配置された周縁部5を有し、図7に示すように、周縁部5とゴーグル部2の上端部2bとが、フェイルシールド1の背面側に置いた同じ仮想平面5b上に位置するように設けられている。仮想平面5bからフェイスシールド1の前面側に突出して、装着者の顔の額から顎の下の部分までの全面を覆う部分となり、ゴーグル部2、マスク部3及び仕切部4を有する凸部5aが設けられている。
すなわち、フェイスシールド1は、装着者の顔の側面及び下顎を含む輪郭を包含するように連続的に配置された周縁部5を有し、周縁部5と、周縁部5と接続するゴーグル部2の上端部2bの両端とが、フェイルシールド1の背面側に置いた同じ仮想平面5b上に位置するように設けられている。仮想平面5a上に置かれた周縁部5からフェイスシールド1の前面側に突出して、背面側と上端部2b側が解放された中空部を構成する凸部5aが形成されている。この凸部5aは、周縁部5及び上端部2aにより外周が規定された解放部を有し、フェイスシールド1を構成する1枚のシートによって前面側の空間と区分された構造を有する。この凸部5aの内側の面が、フェイスシールド1の内面(背面側の面)を構成しており、かつ、装着者の顔の額から顎の下の部分までの全面を覆うようになっている。この凸部5aに、ゴーグル部2、マスク部3及び仕切部4が設けられている。なお、ゴーグル部2の上端部2bは、側面側の両端部において仮想平面5bと接し、ゴーグル部2の横方向(長手方向)における中央部に向かって仮想平面5bから遠ざかるアーチ状の形状を形成し、このアーチ状の形状が仮想平面5bと接触していない非接触部を形成している。このアーチ状の部分が、先に図8(A)を用いて説明した湾曲状の折り返し部を有することによって、上端部2aが装着者の額に、その顔の横方向(幅方向)に沿って湾曲自在に変形して密着する機能を得ることができる。
【0014】
ゴーグル部2のフェイス面2aは、平面や曲面から形成することができ、曲面とする場合の曲率は、装着者の視界や視認性を妨げない程度に設定すればよい。
ゴーグル部2のフェイス面2aは、フェイスシールド1の上下方向において下向きの面を形成する傾斜を有することが好ましい。例えば、図2に示すゴーグル部2の仮想平面5b上にある周縁部5に対する傾斜を規定する角度θは、仕切部4、すなわち、装着者の頬骨部分を押さえる部分、並びに、上端部2b、すなわち装着者の額を押さえる部分の両方を支点とし、ゴム紐6c等の装着時の位置を力点として、装着者各自にフェイスシールドが合致できる範囲となるように設定することが好ましい。
ゴーグル部2には、その両方の上部側面側に、フェイス面2aから周縁部5方向を長手方向として伸び、この長手方向に直行する方向における断面形状がフェイスシールド1前面側に湾曲する概ね半円状の中空溝部2cを有する。この中空溝部2cによってゴーグル部2の補強効果を得ることができる。
【0015】
フェイスシールド1の背面には防曇機能が付与されていてもよい。この防曇機能は、例えば、公知の曇り防止剤の被覆層を表面に形成することによってフェイスシールド1の背面に付与することができる。
装着者への装着は、耳部6に着脱自在に結合した装着用のベルト、バンドまたは紐等によって行うことができ、装着手段は特に限定されない。
フェイスシールド1は、一枚の熱可塑性樹脂製のシート部材の真空成型により一体成型された透明シートからなる。この透明シートの厚さは、特に限定されず、真空成型可能であり、目的とする透明性、機械的強度、可撓性等の物性が得られるように設定すればよい。例えば、透明シートの厚さは、0.25mm~1.5mmの範囲から選択することができ、0.25mm~0.35mmの範囲から選択することが好ましく、0.3mmとすることがより好ましい。
【0016】
シート部材を構成する熱可塑性樹脂としては、真空成型可能であり、かつ、視界や目視対象物の視認性のよい透明度をフェイスシールド1に付与できるものであればよく、種々の熱可塑性樹脂から選択して用いることができる。熱可塑性樹脂としては真空成型用として市販されている、あるいは知られている各種熱可塑性樹脂を利用することができる。このような熱可塑性樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、これらの共重合体等のオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル、アクリル系樹脂、ポリ塩化ビニル等を挙げることができる。これらの中では、良好な真空成型性を有し、目的とする透明度を実現でき、かつ、製造コストの低減にも有用であるという観点から、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステルが好ましい。種々のグレードのポリエステルから本発明の目的にあったものを選択して用いればよい。ポリエステルとしては、空気、ウイルス、水蒸気等のバリア性、廃棄時の無公害性等の観点から、ポリエチレンテレフタレートが好ましい。
【0017】
(フェイスシールドの製造方法)
本発明にかかるフェイスシールドは、真空成型工程を有する製造方法によって製造することができる。
本発明にかかるフェイスシールドの製造方法は、上記の構成のフェイスシールドの製造方法であって、
加熱により成型可能な状態にある一枚の熱可塑性樹脂シート部材を、前記フェイスシールドの凸部に対応する部分を含む真空成型用の型を覆う位置に配置する工程と、
真空引きをして前記シート部材を前記真空成型用の型により真空成型して、前記シート部材中に前記フェイスシールドを含む成型体を得る工程と、
前記シート部材中の成型体から前記フェイスシールドを型抜する工程と
を有する。
真空成型用の型としては、平面状の型面から突出する部分にフェイスシールドの凸部に対応する部分を有する凸型や、平面状の型面から窪んだ部分にフェイスシールドの凸部に対応する部分を有する凹型を用いることができ、フェイス面の成型精度をより向上させるという観点からは凸型を用いるのが好ましい。
【0018】
本発明にかかるフェイスシールドの製造方法の一実施形態を図9(A)~(C)を用いて以下に説明する。
図9(A)及び(B)は、フェイスシールド1の側面側から見た製造装置を模式的に示す図である。この装置は、熱可塑性樹脂製の全体が透明なシート部材7を巻き込んだ繰り出しロール7aと、加熱装置8と、水冷真空成型金型9と、成型補助木型10と、型抜き装置11と、を有する。
シート部材7は、繰り出しロール7aと巻き取りロール7bとの間に張架されており、矢印A方向に不図示の搬送機構によって張架された状態で搬送される。
シート部材7の厚さは、最終的に形成されるフェイスシールド1の厚さが得られるように設定する。シート部材7は少なくともフェイスシールドの装着者の顔と対向する背面となる面に防曇機能を施したものでもよい。なお、シート部材7の両面に防曇機能を施したものでもよい。
繰り出しロール7aから繰り出されたシート部材7は、加熱装置8によって成型可能な状態に軟化するまで加熱される。シート部材7の軟化状態にある部分を水冷真空成型金型9の有する真空成型用の凸型9aを覆う位置に搬送し、成型補助木型10と凸型9aとを利用して凸型9a方向、すなわち矢印Bの方向に真空吸引して凸型9aにより真空成型を行う。この真空成型によって、シート部材7の一部の領域に成型体1aが形成される。この段階の成型体1aは型抜き工程で分離される頭部1cを有する。
なお、先に述べたとおり、凸型9aとこれに対応する形状の成型補助木型10に代えて、凹型(不図示)とこれに対応する形状の成型補助木型(不図示)の組合せを用いててもよい。
【0019】
成型体1aは、冷却後、シート部材7の搬送とともに、型抜き装置11が配置された領域に搬送され、型抜き工程によってシート部材7の一部からフェイスシールド1が分離される。その際、成型体1aの頭部1cがフェイススシールド1から分離され、フェイスシールド1のゴーグル部2の周縁部5と上端部2bが形成される。なお、周縁部5と上端部2aは別の工程で形成されてもよい。
なお、周縁部5は、凸型の有する平面状の型面、すなわち凸型のフェイスシールドの凸部に対応する部分の周囲に配置された平面状の型面により成形される。図示した例は凸型9aを用いているが、凸型9aに代えて凹型(不図示)を用いた場合には、凹型の有する平面状の型面、すなわち凹型のフェイスシールドの凸部に対応する部分の周囲に配置された平面状の型面により周縁部5が成形される。
フェイスシールド1の型抜き後の型抜き穴1bを有するシート部材7は巻き取りロール7bに巻き取られる。
【0020】
加熱装置8、水冷真空成型金型9、成型補助木型10及び型抜き装置11としては公知の装置を用いればよく、特に限定されない。真空成型金型としても、図示したような水冷真空成型の金型に限定されず、その他の方式の真空成型金型を用いることもできる。
【0021】
真空成型用の凸型9aは、フェイスシールド1の形状に合わせて製造されたものであり、凸型9aに配置する真空引き用の孔の大きさ及び配置形態は、目的とする成型体1aが得られるように設定すればよい。
凸型9aに設ける真空引きの孔の位置に関して、フェイス面2aを成型する部分には設けず、フェイス面2aを取り囲む位置を成型する部分に真空引きの孔を所定の間隔で設けることが、視界や目視対象物の視認性を有する平面あるいは曲面のフェイス面を成型する上で好ましい。凸型9aのフェイス面2aの成型用の部分における真空引き用の孔の配置の好ましい形態の一例を、図9(C)のフェイスシールドの部分正面図上に真空引き用の孔に対応する箇所2dにより示す。
フェイスシールド1の製造方法は、装着者への装着に利用する耳部に着脱自在に設けた装着用のベルト、バンドまたは紐を取り付ける工程を更に有してもよい。
【実施例0022】
厚さ0.3mmの食品容器用ポリエチレンテレフタレート製(融点約255℃)のシート部材を用い、図9(A)及び(B)に示す工程によって加熱温度と加熱時間のバランスをとり約210℃で真空成型を行い、シート部材内に形成された図1に示す構成のフェイスシールドを型抜きして分離した。
得られたフェイスシールドの2つの耳の部分のそれぞれに、図8(B)に示すように、装着用の一本のゴム紐6cの両端を結び付けてゴム紐付きフェイスシールドを得た。得られたフェイスシードは、装着者の顔に容易にフィットし、ゴーグル部における乱反射が効果的に抑えられており、ゴーグル部を通した視界や目視対象物の視認性に優れていた。また、仕切部が装着者の頬上部に、装着者の顔の横方向にわたって密着していることで、マスク部とゴーグル部が効果的に分離され、装着者の口や鼻からの水蒸気を含む息のマスク部からゴーグル部への流入が防止され、ゴーグル部のフェイス面の曇りによる視界や視認性の低下を防ぐことが可能となった。
【産業上の利用可能性】
【0023】
本発明によって、目、鼻、口を含む顔面の一括防護が可能であり、ゴーグル部における光の屈折や乱反射が少なく良好な視界と目視対象物の視認性を確保でき、かつ、使い捨てタイプとして低コストでの提供も可能なフェイスシールド及びその製造方法を提供することができる。
【符号の説明】
【0024】
1 フェイスシールド
1a 成型体
1b シート材料中のフェイスシールド型抜き後の型抜き穴(貫通穴)
1c 成型体の頭部
2 ゴーグル部
2a フェイス面
2b ゴーグル部の上端部
2c 中空溝部
2d 凸型の真空引き孔に対応する箇所
3 マスク部
3a 顎、口及び頬部を覆うための凸状湾曲部
3b 鼻を覆うための凸状部
4 仕切部
5 周縁部
5a 凸部
5b 仮想平面
6 耳部
6a 狭窄部
6b 溝部
6c 装着用ゴム紐
7 シート部材
7a シート部材繰り出しロール
7b シート部材巻き取りロール
8 加熱装置
9 水冷真空成型金型
9a 真空成型用の凸型
10 成型補助木型
11 型抜き装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
【手続補正書】
【提出日】2022-02-14
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
真空成型により一体成型された熱可塑性樹脂製のシートからなり、装着者の額の一部から下顎までの全面を覆うフェイスシールドであって、
前記装着者の両眼を含む領域を覆うフェイス面と、前記装着者の額に沿って湾曲自在に変形して密着可能な上端部とを有するゴーグル部と、
前記装着者の口、上顎、下顎、頬及び鼻を含む領域を覆うためのマスク部と、
前記ゴーグル部と前記マスク部を、前記装着者の鼻を覆う部分の両側部で仕切り、前記装着者の頬上部と接触可能に設けられた仕切部と、
を、前記フェイスシールドの背面側から前面側に突出する凸部に有し、
前記装着者への装着に利用する耳部を、前記フェイスシールドの周縁部の前記ゴーグル部の長手方向に対応した位置に有し、
前記装着者への装着において、前記ゴーグル部の上端部が前記装着者の額に接触し、前記仕切部が前記装着者の頬上部に接触する
ことを特徴とするフェイスシールド。
【請求項2】
前記周縁部が、前記装着者の顔の側面及び下顎を含む輪郭を包含するように連続的に配置され、
前記周縁部と前記ゴーグル部の上端部の両端とが、前記フェイスシールドの背面側に置いた同じ仮想平面の上に位置するように設けられており、
前記仮想平面から前記フェイスシールドの前面側に突出して前記装着者の顔の額から下の部分の全面を覆うように前記凸部が設けられている
請求項1に記載のフェイスシールド。
【請求項3】
前記熱可塑性樹脂がポリエステルである請求項1または2に記載のフェイスシールド。
【請求項4】
熱可塑性樹脂製のシートの厚さが、0.25~1.5mmである請求項1に記載のフェイスシールド。
【請求項5】
前記装着者への装着に利用する耳部に着脱自在に結合した装着用のベルト、バンドまたは紐を有する請求項に記載のフェイスシールド。
【請求項6】
請求項1~のいずれか一項に記載のフェイスシールドの製造方法であって、
加熱により成型可能な状態にある一枚の熱可塑性樹脂シート部材を、前記フェイスシールドの凸部に対応する部分を含む真空成型用の型を覆う位置に配置する工程と、
真空引きをして前記シート部材を前記真空成型用の型により真空成型して、前記シート部材中に前記フェイスシールドを含む成型体を得る工程と、
前記シート部材中の成型体から前記フェイスシールドを型抜する工程と
を有することを特徴とするフェイスシールドの製造方法。
【請求項7】
前記真空成型用の型と、前記真空成型用の型に対応する形状の成形補助型と、を利用して、前記真空成型を行う請求項6に記載のフェイスシールドの製造方法。
【請求項8】
前記真空成型用の型が、凸型である請求項6または7に記載のフェイスシールドの製造方法。
【請求項9】
前記真空成型用の型が、凹型である請求項6または7に記載のフェイスシールドの製造方法。
【請求項10】
前記ゴーグル部の真空引きを、前記フェイス面を成型する面には設けずに、前記フェイス面を取り囲む位置に間隔を以って設けた複数の孔により行う請求項のいずれか一項に記載のフェイスシールドの製造方法。
【請求項11】
装着者への装着に利用する耳部に着脱自在に結合した装着用のベルト、バンドまたは紐を取り付ける工程を有する請求項6~10のいずれか一項に記載のフェイスシールドの製造方法。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0005
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0005】
本発明にかかるフェイスシールドは、
真空成型により一体成型された熱可塑性樹脂製のシートからなり、装着者の額の一部から下顎までの全面を覆うフェイスシールドであって、
前記装着者の両眼を含む領域を覆うフェイス面と、前記装着者の額に沿って湾曲自在に変形して密着可能な上端部とを有するゴーグル部と、
前記装着者の口、上顎、下顎、頬及び鼻を含む領域を覆うためのマスク部と、
前記ゴーグル部と前記マスク部を、前記装着者の鼻を覆う部分の両側部で仕切り、前記装着者の頬上部と接触可能に設けられた仕切部と、
を、前記フェイスシールドの背面側から前面側に突出する凸部に有し、
前記装着者への装着に利用する耳部を、前記フェイスシールドの周縁部の前記ゴーグル部の長手方向に対応した位置に有し、
前記装着者への装着において、前記ゴーグル部の上端部が前記装着者の額に接触し、前記仕切部が前記装着者の頬上部に接触する
ことを特徴とする。
本発明にかかるフェイスシールドの製造方法は、上記の構成のフェイスシールドの製造方法であって、
加熱により成型可能な状態にある一枚の熱可塑性樹脂シート部材を、前記フェイスシールドの凸部に対応する部分を含む真空成型用の型を覆う位置に配置する工程と、
真空引きをして前記シート部材を前記真空成型用の型により真空成型して、前記シート部材中に前記フェイスシールドを含む成型体を得る工程と、
前記シート部材中の成型体から前記フェイスシールドを型抜する工程と
を有することを特徴とする。