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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022053022
(43)【公開日】2022-04-05
(54)【発明の名称】電動アクチュエータ
(51)【国際特許分類】
   H02K 7/06 20060101AFI20220329BHJP
   F16H 25/20 20060101ALI20220329BHJP
【FI】
H02K7/06 A
F16H25/20 Z
H02K7/06 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020159596
(22)【出願日】2020-09-24
(71)【出願人】
【識別番号】000102692
【氏名又は名称】NTN株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107423
【弁理士】
【氏名又は名称】城村 邦彦
(74)【代理人】
【識別番号】100120949
【弁理士】
【氏名又は名称】熊野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100207181
【弁理士】
【氏名又は名称】岡村 朋
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 光司
【テーマコード(参考)】
3J062
5H607
【Fターム(参考)】
3J062AA02
3J062AB24
3J062AC07
3J062BA16
3J062CD02
3J062CD22
3J062CD57
5H607BB01
5H607BB09
5H607CC03
5H607DD03
5H607EE52
5H607EE55
(57)【要約】
【課題】本発明では、突起部が直動部材から抜け出すことを防止することを課題とする。
【解決手段】電動モータ2と、電動モータ2によって回転駆動されるネジ軸7と、ネジ軸7と螺合したナット8と、ナット8の直線運動によって揺動する揺動部材11とを備えた電動アクチュエータ1であって、ナット8は揺動部材11に当接し、揺動部材11を揺動させる突起部12を有し、突起部12がナット8から抜け出すことを防止する抜け止め構造として、ナット8の孔部8b内にサークリップ32を備えたことを特徴とする。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動モータと、前記電動モータによって回転駆動される回転部材と、前記回転部材と螺合した直動部材と、前記直動部材の直線運動によって揺動する揺動部材とを備えた電動アクチュエータであって、
前記直動部材は前記揺動部材と当接し、前記揺動部材を揺動させる突起部を有し、
前記突起部が前記直動部材から抜け出すことを防止する抜け止め構造を備えたことを特徴とする電動アクチュエータ。
【請求項2】
前記直動部材に設けられた孔部に棒状部材が挿入され、
前記突起部は、前記直動部材の表面から突出した前記棒状部材の一部であり、
前記抜け止め構造として、前記孔部内に、前記棒状部材を保持する止め輪が取り付けられる請求項1記載の電動アクチュエータ。
【請求項3】
前記抜け止め構造として、前記直動部材と前記突起部とが一体で設けられる請求項1記載の電動アクチュエータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動アクチュエータに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、車両などの省力化、低燃費化のために電動化が進み、例えば、自動車の自動変速機やブレーキ、ステアリングなどの操作を電動機の力で行うシステムが開発され、市場に投入されている。
【0003】
このような用途に使用される電動アクチュエータとして、例えば特許文献1では、図9に示すように、電動モータ300の回転運動を直線運動(図の矢印A1,A2方向の運動)に変換する第1の運動変換機構100と、第1の運動変換機構100の直線運動を電動モータ300の回転軸と直交する軸の回転運動(図の矢印B1,B2方向の運動)に変換する第2の運動変換機構200とを備える電動アクチュエータが開示されている。具体的に、第1の運動変換機構100は、回転部材としてのねじ軸101と、ねじ軸101と螺合する直動部材としてのナット102とを有するすべりねじ機構で構成されている。一方、第2の運動変換機構200は、円筒部201aとアーム部201bとを有する揺動部材201で構成されている。アーム部201bには長孔201cが設けられている。また、ナット102の孔部にピン状の連結部材202が挿入されることで、連結部材202の一部がナット102から突出した突起部が形成される。この長孔201cに、ナット102に設けられた突起部が挿入されることにより、揺動部材201とナット102が連動可能に連結されている。
【0004】
電動モータ300の駆動によりねじ軸101が正回転又は逆回転すると、ナット102が矢印A1方向又は矢印A2方向に移動することで、回転運動が直線運動に変換される。そして、ナット102の移動に伴って、突起部によりアーム部201bがその移動方向に押し動かされ、揺動部材201が円筒部201aを中心に矢印B1方向または矢印B2方向に揺動する。これにより、直線運動が電動モータ300の回転軸とは直交する軸の回転運動に変換される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2019-97352号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の構成では、上記のようにねじ軸の回転動作により直動部材が直線運動し、突起部が揺動部材を押し動かす際に、突起部が揺動部材からその反力を受けることになる。つまり、突起部が、直動部材が直線運動する方向とは逆方向の力を受けることになる。そして、電動モータの駆動を繰り返すと、突起部が直動部材の移動方向とは逆方向で、直動部材の移動方向の両方向(図9の左方向および右方向)へ、交互に繰り返し加圧されることになる。これにより、突起部が直動部材から抜け出す方向の力を受け、電動アクチュエータの駆動時間が増加するに伴って、突起部を構成する部材が直動部材から徐々に抜け出してしまうことを発明者らは発見した。そして最終的には、突起部を構成する部材が直動部材から抜け落ちてしまうことを発見した。
【0007】
本発明では、上記事情に鑑みて、突起部が直動部材から抜け出すことを防止することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するため、本発明は、電動モータと、前記電動モータによって回転駆動される回転部材と、前記回転部材と螺合した直動部材と、前記直動部材の直線運動によって揺動する揺動部材とを備えた電動アクチュエータであって、前記直動部材は前記揺動部材に当接し、前記揺動部材を揺動させる突起部を有し、前記突起部が前記直動部材から抜け出すことを防止する抜け止め構造を備えたことを特徴とする。
【0009】
上記電動アクチュエータにより、突起部の直動部材からの抜け止めが実現できる。
【0010】
直動部材に設けられた孔部に棒状部材が挿入され、突起部は、直動部材の表面から突出した棒状部材の一部であり、抜け止め構造として、孔部内に、棒状部材を保持する止め輪が取り付けられるものとすることができる。
【0011】
抜け止め構造として、直動部材と突起部とが一体で設けられる構成とすることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、突起部の直動部材からの抜け止めが実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の実施の一形態に係る電動アクチュエータの斜視図である。
図2】電動アクチュエータの縦断面図である。
図3】ねじ軸が挿入されたナットの斜視図である。
図4】ねじ軸が挿入されたナットの正面図である。
図5】ピンおよびサークリップの斜視図である。
図6図4のA-A線断面図である。
図7】異なる実施形態のナットの斜視図である。
図8】ねじ軸が挿入された図7のナットの断面図である。
図9】従来の電動アクチュエータを示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に係る実施の形態について、図面を参照して説明する。なお、各図中、同一または相当する部分には同一の符号を付しており、その重複説明は適宜に簡略化ないし省略する。
【0015】
図1は、本発明の実施の一形態に係る電動アクチュエータの斜視図、図2は、本実施形態に係る電動アクチュエータの縦断面図である。
【0016】
図1に示すように、本実施形態に係る電動アクチュエータ1は、電動モータ2と、電動モータ2の回転を減速して出力する減速機3と、減速機3から出力された回転運動を直線運動に変換する第1の運動変換機構4と、第1の運動変換機構4から出力された直線運動を電動モータ2の回転軸2aとは異なる方向の軸の回転運動に変換する第2の運動変換機構5と、これらを収容するハウジング6とを主に備えている。
【0017】
本実施形態では、電動モータ2として、ブラシ付きモータやブラシレスモータなどの小型のモータを用いている。電動モータ2は、ハウジング6内に設けられたスイッチング素子であるリレー回路(図示省略)などを介して外部の電源(図示省略)に接続されている。電動モータ2の軸方向一端部側(減速機3側)には、電動モータ2を保持するモータホルダ16が設けられている。モータホルダ16は、ハウジング6に組み付けられている。これにより、電動モータ2は、モータホルダ16を介してハウジング6に支持されている。また、モータホルダ16と電動モータ2は、固定部材としての複数のボルト17(図2参照)によって固定されている。
【0018】
ハウジング6は、2つのハウジング分割体60が組み付けられて構成される。図1では、2つのハウジング分割体60の一方が他方に対して取り外された状態を示す。ハウジング分割体60同士は、その合わせ面間にシール部材(図示省略)を介して組み付けられることで、ハウジング6の内部空間が密閉され、ハウジング6内への粉塵や水などの異物の侵入が防止される。特に、本実施形態のように、ハウジング分割体60の合わせ面を、電動モータ2の回転軸2aと平行な(段差の無い)平面とすることで、組み付け時に、ハウジング分割体60の合わせ面同士の間で多少のずれが生じても、合わせ面同士の間に隙間が生じにくく、密閉性を確保しやすい。シール部材としては、Oリング、ゴムシート、樹脂シート、ジョイントシート、メタルガスケットなどの固体のシール材、あるいは、液状ガスケットなどの液体のシール部材を採用することができる。
【0019】
図2に示すように、第1の運動変換機構4は、回転部材としてのねじ軸7と、直動部材としてのナット8とを有している。ナット8は、ねじ軸7の回転に伴ってその回転軸方向に直線運動する。ねじ軸7の外周面とナット8の内周面には、それぞれねじ溝が形成されており、これらのねじ軸が直接螺合することで、すべりねじ機構を構成している。なお、第1の運動変換機構4として、ねじ軸(回転部材)とナット(直動部材)との間に複数のボールを介在させたボールねじ機構を用いてもよい。ねじ軸7は、その回転軸方向の両端部で、それぞれラジアル軸受9とスラスト軸受10を介してハウジング6に対して回転可能に支持されている。また、ねじ軸7の一端部側と他端部側に配置される二組のラジアル軸受9およびスラスト軸受10は、それぞれハウジング6に組み付けられる軸受ホルダ18によって保持されている。
【0020】
第2の運動変換機構5は、円筒状の出力軸14と、出力軸14に取り付けられる揺動部材11とを備えている。出力軸14は、ラジアル軸受15(図1参照)を介して、ハウジング6に回転可能に支持されている。揺動部材11は、出力軸14の軸方向の両端部側にそれぞれ取り付けられており、出力軸14を中心として出力軸14と一体的に揺動可能(回転可能)に構成されている。また、出力軸14には、内周面に複数の凹凸(スプライン)が形成された連結孔14aが設けられている。この連結孔14aは、図示しない操作対象に設けられた操作軸を挿入するための孔である。操作軸が連結孔14aに挿入されてスプライン嵌合することにより、操作軸は出力軸14と一体的に回転可能に連結される。また、揺動部材11には、図1に示す下端側で開口するスリット状の、凹部としての長孔11cが設けられる。この長孔11cには、ナット8から突出する円柱状の突起部12が挿入されている。これにより、ナット8と揺動部材11とが突起部12を介して連動可能に構成されている。また、本実施形態では、突起部12がナット8の互いに反対側の面にそれぞれ設けられており、これに対応して長孔11cを有する揺動部材11もナット8を挟んで両側に設けられている。
【0021】
減速機3は、電動モータ2と第1の運動変換機構4との間に配置されている。本実施形態では、減速機3として二段の遊星減速機20を用いている。具体的に、遊星減速機20は、図2に示すように、一段目の入力回転体としての第1太陽ギヤ21と、一段目の遊星回転体としての複数の第1遊星ギヤ22と、一段目の出力回転体および二段目の入力回転体を兼ねる第1キャリア23と、二段目の遊星回転体としての複数の第2遊星ギヤ24と、二段目の出力回転体としての第2キャリア25と、一段目および二段目の軌道リングを兼ねるリングギヤ26とを備えている。
【0022】
第1太陽ギヤ21は、電動モータ2の回転軸2aに対してこれと一体的に回転するように取り付けられている。リングギヤ26は、第1太陽ギヤ21の外周に配置され、ハウジング6に対して回転しないように組み付けられている。第1遊星ギヤ22は、第1太陽ギヤ21の周方向に複数設けられる。各第1遊星ギヤ22は第1太陽ギヤ21とリングギヤ26との間に介在し、それぞれに対して噛み合うように配置されている。また、各第1遊星ギヤ22は、第1キャリア23の円筒部23aから外径方向に突出するフランジ部23bに回転可能に取り付けられている。第1キャリア23の円筒部23aの外周面には、複数の歯が周方向に並ぶギヤ部23cが設けられている。また、第1キャリア23の円筒部23aの内周には、電動モータ2の回転軸2aが相対的に回転可能な状態で挿入されている。第1キャリア23のギヤ部23cとリングギヤ26との間には、これらと噛み合う複数の第2遊星ギヤ24が配置されている。各第2遊星ギヤ24は、第2キャリア25の円筒部25aから外径方向に突出するフランジ部25bに回転可能に取り付けられている。また、第2キャリア25は、上記ねじ軸7の一端部側が挿入されている。第2キャリア25の円筒部25aの内周面と、ねじ軸7の一端部側の外周面には、それぞれ軸方向に伸びる複数の凹凸(スプライン)25d,7aが形成されており、これらの凹凸25d,7a同士がスプライン嵌合することにより、ねじ軸7は第2キャリア25に対して軸方向に移動可能で、かつ、周方向に一体的に回転可能に連結されている。また、第2キャリア25の円筒部25aの外周面には、ねじ軸7の一端部側を支持する一方のラジアル軸受9が配置されている。
【0023】
ここで、本実施形態では、第1キャリア23が、一段目の出力回転体および二段目の入力回転体を兼ねているが、一段目の出力回転体として機能する部分(第1遊星ギヤ22を保持するフランジ部23b)と、二段目の入力回転体として機能する部分(ギヤ部23cを有する円筒部23a)とを別体で構成してもよい。同様に、リングギヤ26も、一段目の軌道リングとして機能する部分(第1遊星ギヤ22と噛み合う部分)と、二段目の軌道リングとして機能する部分(第2遊星ギヤ24と噛み合う部分)とを別体で構成してもよい。
【0024】
続いて、本実施形態に係る電動アクチュエータの動作について説明する。
【0025】
上記リレー回路の切換により電源から電動モータ2へ電力が供給され、電動モータ2が正回転または逆回転すると、その回転運動が遊星減速機20(減速機3)に伝達される。遊星減速機20では、第1太陽ギヤ21が電動モータ2(回転軸2a)と一体的に回転することで、これと噛み合う複数の第1遊星ギヤ22が回転を開始する。各第1遊星ギヤ22は、自転しながらリングギヤ26に沿って公転し、その公転運動が第1遊星ギヤ22を保持する第1キャリア23の回転運動として出力される。これにより、電動モータ2の回転運動が一段階減速される。
【0026】
また、第1キャリア23の回転に伴って、そのギヤ部23cに噛み合う複数の第2遊星ギヤ24が回転を開始する。各第2遊星ギヤ24は、自転しながらリングギヤ26に沿って公転し、その公転運動が第2遊星ギヤ24を保持する第2キャリア25の回転運動として出力される。これにより、回転運動はさらに減速される。
【0027】
以上のように、遊星減速機20を介することで、回転軸2aの回転運動が減速されてねじ軸7に伝達される。従って、ねじ軸7の回転トルクを増加することができ、小型の電動モータ2であっても大きな回転トルクを得ることができる。
【0028】
減速機3によって減速された回転運動は、第1の運動変換機構4に伝達される。すなわち、遊星減速機20の第2キャリア25が回転することで、これと一体的に第1の運動変換機構4のねじ軸7が回転する。ねじ軸7が回転すると、その回転に伴ってナット8が直線運動する。ナット8は、電動モータ2が正回転する場合、図2中の矢印A1方向に前進し、電動モータ2が逆回転する場合、図2中の矢印A2方向に後退する。
【0029】
そして、ナット8が前進または後退することで、ナット8に設けられた突起部12が揺動部材11(の長孔11cを形成する壁面部)に当接し、揺動部材11を押し動かす。これにより、揺動部材11は、図2中の矢印B1方向または矢印B2方向に揺動運動し、これと一体的に出力軸14が回転することで、ナット8の直線運動が電動モータ2の回転軸2aとは異なる方向の軸(出力軸14)の回転運動として出力される。本実施形態では、出力軸14が、電動モータ2の回転軸2aと直交する方向(図2の紙面に直交する方向)に配置されている。従って、電動モータ2の回転運動は、電動モータ2の回転軸2aとは直交する軸の回転運動として出力される。
【0030】
次に、ナット8およびナット8に設けられた突起部12について、より詳細に説明する。
【0031】
図3および図4に示すように、ナット8は、その内側に設けられた貫通孔8a内にねじ軸7が挿入されている。ねじ軸7は貫通孔8a内の内周面に形成されたねじ溝と螺合する。ナット8は、貫通孔8aの両側に、貫通孔8aと直交する方向に開口する孔部8bを有し、この孔部8bに、それぞれ棒状部材としてのピン31が挿入されている。ピン31の一端部で、ナット8の表面よりも突出した部分が各突起部12を構成する。
【0032】
ところで、前述のように電動アクチュエータ1の駆動により突起部12が揺動部材11を押し動かすと(図2参照)、突起部12がその反力を受ける。つまり、ナット8と一体的に移動するピン31が、ナット8の移動方向とは逆方向の力を受けることになる。そして、電動アクチュエータ1が駆動を繰り返すことで、ピン31は、ナット8の移動方向とは逆方向で、図2の右方向および左方向(矢印A1方向およびA2方向)の力を、交互に繰り返し受けることになる。これにより、ピン31に孔部8bから抜け出す方向の力が作用し、電動アクチュエータ1の駆動時間が長くなるに伴って、ピン31が孔部8bから徐々に抜け出していってしまう。これにより、突起部12のナット8からの突出量が大きくなったり、ピン31が孔部8bから完全に抜け落ちてしまうおそれがある。突起部12の突出量が大きくなると、突起部12(ピン31)の一端がハウジング6の内面と摺動し、ハウジング6の摩耗の原因となってしまう。また、ピン31が抜け落ちることで、ナット8が揺動部材11を揺動させることができなくなってしまう。このような不具合に対処するために、本実施形態のナット8はピン31の抜け止め構造を有する。以下、この抜け止め構造について説明する。
【0033】
図5に示すように、ピン31は円筒状をなし、ナット8に挿入される他端側に、周方向にわたって(全周にわたって)形成された溝部31aを有する。溝部31aは、止め輪としてのサークリップ32が装着される部分である。サークリップ32は、その周方向の一部が欠けたC状の部材である。サークリップ32をC状とすることで、後述するピン31の圧入時に、サークリップ32が拡径しやすくなる。また、溝部31aの溝深さはサークリップ32の線径以上の深さに設定される。
【0034】
図6に示すように、ナット8の孔部8bには、部分的にその孔径が拡大された拡径部8b1が設けられる。拡径部8b1は孔部8bに周状に設けられる。拡径部8b1は、ナット8を成形した後、例えば切削可能により形成される。
【0035】
ピン31をナット8に取り付ける際には、まず、ピン31の溝部31aにサークリップ32を押し込んだ状態で、孔部8bにピン31を圧入していく。そして、サークリップ32が孔部8b内の拡径部8b1に到達すると、サークリップ32が自身の弾性力により拡径し、拡径部8b1内に入り込む。この位置で、ピン31がナット8の孔部8b内に保持される。両方の孔部8bに拡径部8b1が設けられ、両方の拡径部8b1にサークリップ32が取り付けられる。
【0036】
サークリップ32が、孔部8bの途中の拡径部8b1内に入り込み、拡径部8b1とピン31との間に保持されることで、サークリップ32がピン31(突起部12)の孔部8bに対する抜け止め構造として機能する。これにより、上記のように突起部12が繰り返し加圧されても、ピン31(突起部12)が孔部8bから抜け出すことがない。従って、ナット8に対するピン31の組み付け性および部品としての信頼性を向上できる。
【0037】
また、突起部12の抜け止め構造として、図7および図8に示すように、突起部12をナット8と一体的に成形してもよい。突起部12がナット8と一体で設けられることにより、上記のように突起部12が繰り返し加圧されても、突起部12がナット8から抜け出すことがない。
【0038】
また、突起部12をナット8と一体的に成形することで、前述の図6の実施形態のように、拡径部8b1をナット8に後加工する工程や、サークリップ32をピン31に押し込み、このピン31を孔部8bに圧入する工程を省略できる。また、別途サークリップ32のような抜け止めのための部材を設ける必要もない。
【0039】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加え得ることは勿論である。
【0040】
止め輪の構造は上記のC状のサークリップ32に限らない。例えば、ピン31の圧入時に十分に拡径すれば、環状の止め輪を用いることもできる。また、必ずしも止め輪の断面は円形状に限らない。
【符号の説明】
【0041】
1 電動アクチュエータ
2 電動モータ
2a 回転軸
3 減速機
6 ハウジング
7 ねじ軸
8 ナット(直動部材)
8b 孔部
8b1 拡径部
9 ラジアル軸受(軸受)
11 揺動部材
11c 長孔(凹部)
12 突起部
14 出力軸
31 ピン(棒状部材)
32 サークリップ(止め輪)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9