(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022053026
(43)【公開日】2022-04-05
(54)【発明の名称】金属張積層板及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
B32B 15/088 20060101AFI20220329BHJP
B32B 15/08 20060101ALI20220329BHJP
【FI】
B32B15/088
B32B15/08 U
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020159601
(22)【出願日】2020-09-24
(71)【出願人】
【識別番号】000120010
【氏名又は名称】宇部エクシモ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】北束 政波
【テーマコード(参考)】
4F100
【Fターム(参考)】
4F100AB01B
4F100AB17B
4F100AK01C
4F100AK17C
4F100AK49A
4F100BA02
4F100BA03
4F100BA05
4F100BA06
4F100EJ17
4F100EJ42
4F100EJ55A
4F100GB32
4F100GB41
4F100JA02A
4F100JB06A
4F100JB13A
4F100JG04A
4F100JK06
4F100JK15B
4F100JL11
4F100JL12C
4F100YY00A
4F100YY00C
(57)【要約】
【課題】金属層に対して接着性を有する熱融着樹脂層と、熱硬化性ポリイミド層との接着性を高めることができる金属張積層板及びその製造方法を提供する。
【解決手段】金属張積層板11は、絶縁層12と、絶縁層12の片面又は両面に積層される金属層13とを備える。絶縁層12は、熱硬化性ポリイミド層21と、熱硬化性ポリイミド層21と金属層13との間に設けられる熱融着樹脂層31とを備える。熱硬化性ポリイミド層21は、熱融着樹脂層31と接着される主面の水接触角が20°以下の熱硬化性ポリイミドフィルムから構成される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁層と、前記絶縁層の片面又は両面に積層される金属層とを備える金属張積層板であって、
前記絶縁層は、熱硬化性ポリイミド層と、前記熱硬化性ポリイミド層と前記金属層との間に設けられる熱融着樹脂層とを備え、
前記熱硬化性ポリイミド層は、前記熱融着樹脂層と接着される主面の水接触角が20°以下の熱硬化性ポリイミドフィルムから構成される、金属張積層板。
【請求項2】
前記熱硬化性ポリイミド層は、3,3´,4,4´-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物とp-フェニレンジアミンとを共重合成分として含有する、請求項1に記載の金属張積層板。
【請求項3】
前記熱融着樹脂層は、280℃以上の融点を有する、請求項1又は請求項2に記載の金属張積層板。
【請求項4】
前記金属層は、前記熱融着樹脂層と接着される主面の十点平均粗さ(Rzjis)が2.0以下の金属箔から構成される、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の金属張積層板。
【請求項5】
前記熱硬化性ポリイミド層の線膨張係数は、10ppm/K以上、26ppm/K以下の範囲内である、請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の金属張積層板。
【請求項6】
前記熱融着樹脂層の吸水率は、前記熱硬化性ポリイミド層の吸水率よりも低い、請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の金属張積層板。
【請求項7】
前記熱硬化性ポリイミド層と前記熱融着樹脂層との層間の剥離強度は、0.6N/mm以上である、請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の金属張積層板。
【請求項8】
前記熱融着樹脂層は、フッ素系樹脂から構成される、請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の金属張積層板。
【請求項9】
前記熱硬化性ポリイミド層は、前記熱融着樹脂層側に配置される主面が放電処理された熱硬化性ポリイミドフィルムから構成され、
X線光電子分光分析法を用いた前記熱硬化性ポリイミドフィルムの表面分析において、前記放電処理前の527~536eVの積算値A1と、前記放電処理後の527~536eVの積算値A2とから下記式(1):
R=A2/A1・・・(1)
により算出される比率Rが1.35以上である、請求項1から請求項8のいずれか一項に記載の金属張積層板。
【請求項10】
前記熱硬化性ポリイミド層は、前記熱融着樹脂層側に配置される主面が放電処理された熱硬化性ポリイミドフィルムから構成され、
X線光電子分光分析法を用いた前記熱硬化性ポリイミドフィルムの表面分析において、278~298eV、391~411eV、523~543eV、及び94~114eVのそれぞれの積算値の合計を100%とし、合計100%中において523~543eVの積算値の占める割合を酸素原子の含有量としたとき、
前記放電処理前の酸素原子の含有量B1(%)と、前記放電処理後の酸素原子の含有量B2(%)とから下記式(2):
C(%)=B2-B1・・・(2)
により算出される酸素原子の変化量C(%)が5%以上である、請求項1から請求項9のいずれか一項に記載の金属張積層板。
【請求項11】
絶縁層と、前記絶縁層の片面又は両面に積層される金属層とを備え、
前記絶縁層は、熱硬化性ポリイミド層と、前記熱硬化性ポリイミド層と前記金属層との間に設けられる熱融着樹脂層とを備え、前記熱硬化性ポリイミド層は、前記熱融着樹脂層と接着される主面の水接触角が20°以下の熱硬化性ポリイミドフィルムから構成される金属張積層板を製造する金属張積層板の製造方法であって、
前記熱硬化性ポリイミドフィルムと、前記金属層となる金属箔との間に、前記熱融着樹脂層となる熱可塑性樹脂フィルムを配置した積層体を熱圧着する工程を備える、金属張積層板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属張積層板及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、IoT(Internet of Things)の活用に伴って、センサー等の電子機器は、様々な環境で使用される傾向にある。例えば、センサー等で用いられるミリ波は、光、天候、環境に対する安定性が高いため、自動車のミリ波レーダー等で使用されている他、より過酷な環境での使用が想定されている。このように近年の電子機器は、より過酷な環境で使用される場合があり、これに伴って電子機器の耐環境性能の向上が求められている。ここで、電子機器に装備されるプリント配線板には、絶縁層としてのポリイミド層と、金属層としての銅層との積層構造を有する金属張積層板が用いられている。例えば、特許文献1には、金属張積層板のポリイミド層に好適なポリイミドフィルムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような金属張積層板において、熱硬化性ポリイミド層と金属層との間に熱融着樹脂層を設けることで、熱硬化性ポリイミド層及び熱融着樹脂層を有する絶縁層と、金属層との接着性を改善することが可能となる。このように金属層に対して接着性を有する熱融着樹脂層と、熱硬化性ポリイミド層との接着性について改善の余地があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決する金属張積層板は、絶縁層と、前記絶縁層の片面又は両面に積層される金属層とを備える金属張積層板であって、前記絶縁層は、熱硬化性ポリイミド層と、前記熱硬化性ポリイミド層と前記金属層との間に設けられる熱融着樹脂層とを備え、前記熱硬化性ポリイミド層は、前記熱融着樹脂層と接着される主面の水接触角が20°以下の熱硬化性ポリイミドフィルムから構成される。
【0006】
この構成によれば、熱硬化性ポリイミドフィルムにおいて、熱融着樹脂層と接着される主面は、例えば、水素結合し易い状態であるため、熱硬化性ポリイミド層と熱融着樹脂層層間の結合力を高めることができる。
【0007】
上記金属張積層板において、前記熱硬化性ポリイミド層は、3,3´,4,4´-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物とp-フェニレンジアミンとを共重合成分として含有することが好ましい。この構成によれば、優れた低誘電特性を発揮させることが可能となる。
【0008】
上記金属張積層板において、前記熱融着樹脂層は、280℃以上の融点を有することが好ましい。この構成によれば、金属張積層板の半田耐熱性を容易に高めることができる。
上記金属張積層板において、前記金属層は、前記熱融着樹脂層と接着される主面の十点平均粗さ(Rzjis)が2.0以下の金属箔から構成されることが好ましい。この構成によれば、金属箔の主面の平滑性を高めることで、高周波帯域の電流が金属層の表面に集中する表皮効果を抑えることができるため、金属層において、高周波帯域の電気特性を十分に発揮させることができる。
【0009】
上記金属張積層板において、前記熱硬化性ポリイミド層の線膨張係数は、10ppm/K以上、26ppm/K以下の範囲内であることが好ましい。この構成によれば、例えば、金属張積層板の寸法安定性を向上させることができる。
【0010】
上記金属張積層板において、前記熱融着樹脂層の吸水率は、前記熱硬化性ポリイミド層の吸水率よりも低いことが好ましい。この構成によれば、金属層と接着される熱融着樹脂層の吸水や脱水を抑えることにより、金属層と熱融着樹脂層との界面の状態変化を抑えることができると推測される。これにより、温度変化を伴う長期の使用において、熱硬化性ポリイミド層を有する絶縁層に対する金属層の接着性の低下を抑えることができる。
【0011】
上記金属張積層板において、前記熱硬化性ポリイミド層と前記熱融着樹脂層との層間の剥離強度は、0.6N/mm以上であることが好ましい。
上記金属張積層板において、前記熱融着樹脂層は、フッ素系樹脂から構成されることが好ましい。この構成によれば、絶縁層の誘電率を低く抑えることができるため、例えば、高周波帯域の電気特性を十分に発揮させることができる。
【0012】
上記金属張積層板において、前記熱硬化性ポリイミド層は、前記熱融着樹脂層側に配置される主面が放電処理された熱硬化性ポリイミドフィルムから構成され、X線光電子分光分析法を用いた前記熱硬化性ポリイミドフィルムの表面分析において、前記放電処理前の527~536eVの積算値A1と、前記放電処理後の527~536eVの積算値A2とから下記式(1)により算出される比率Rが1.35以上であることが好ましい。
【0013】
R=A2/A1・・・(1)
上記金属張積層板において、前記熱硬化性ポリイミド層は、前記熱融着樹脂層側に配置される主面が放電処理された熱硬化性ポリイミドフィルムから構成され、X線光電子分光分析法を用いた前記熱硬化性ポリイミドフィルムの表面分析において、278~298eV、391~411eV、523~543eV、及び94~114eVのそれぞれの積算値の合計を100%とし、合計100%中において523~543eVの積算値の占める割合を酸素原子の含有量としたとき、前記放電処理前の酸素原子の含有量B1(%)と、前記放電処理後の酸素原子の含有量B2(%)とから下記式(2)により算出される酸素原子の変化量C(%)が5%以上であることが好ましい。
【0014】
C(%)=B2-B1・・・(2)
金属張積層板の製造方法は、絶縁層と、前記絶縁層の片面又は両面に積層される金属層とを備え、前記絶縁層は、熱硬化性ポリイミド層と、前記熱硬化性ポリイミド層と前記金属層との間に設けられる熱融着樹脂層とを備え、前記熱硬化性ポリイミド層は、前記熱融着樹脂層と接着される主面の水接触角が20°以下の熱硬化性ポリイミドフィルムから構成される金属張積層板を製造する金属張積層板の製造方法であって、前記熱硬化性ポリイミドフィルムと、前記金属層となる金属箔との間に、前記熱融着樹脂層となる熱可塑性樹脂フィルムを配置した積層体を熱圧着する工程を備えることが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、金属層に対して接着性を有する熱融着樹脂層と、熱硬化性ポリイミド層との接着性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本実施形態の金属張積層板を示す断面図である。
【
図2】金属張積層板の製造方法を説明する概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、金属張積層板及びその製造方法の一実施形態について説明する。なお、図面では、金属張積層板を構成する各層の厚さを誇張して表現する場合もある。
図1に示すように、金属張積層板11は、絶縁層12と、絶縁層12に積層される金属層13とを備えている。本実施形態の金属層13は、絶縁層12の一方の主面に積層される第1金属層13aと、絶縁層12の他方の主面に積層される第2金属層13bとから構成されている。
【0018】
絶縁層12は、熱硬化性ポリイミド層21と熱融着樹脂層31とを備えている。熱融着樹脂層31は、熱硬化性ポリイミド層21と第1金属層13aとの間に設けられる第1熱融着樹脂層31aと、熱硬化性ポリイミド層21と第2金属層13bとの間に設けられる第2熱融着樹脂層31bとから構成されている。このように本実施形態の金属張積層板11は、熱硬化性ポリイミド層21と第1熱融着樹脂層31aと第2熱融着樹脂層31bとからなる3層構造の絶縁層12を有し、その絶縁層12の両面にそれぞれ積層された金属層13を有する5層構造の両面金属張積層板である。
【0019】
<熱硬化性ポリイミド層21>
熱硬化性ポリイミド層21は、熱融着樹脂層31と接着される主面の水接触角が20°以下の熱硬化性ポリイミドフィルムから構成される。熱硬化性ポリイミドフィルムの水接触角は、17°以下であることが好ましく、より好ましくは、14°以下である。熱硬化性ポリイミドフィルムの水接触角は、例えば、生産性等の観点から、5°以上であることが好ましく、より好ましくは、6°以上である。水接触角が20°以下の主面を有する熱硬化性ポリイミドフィルムは、例えば熱硬化性ポリイミドフィルムの主面を放電処理することで得ることができる。すなわち、熱硬化性ポリイミドフィルムの主面には、放電処理により親水基を導入することができる。このように導入された親水性基により、熱硬化性ポリイミドフィルムの主面の水接触角を小さくすることができる。
【0020】
熱硬化性ポリイミドフィルムは、酸成分とジアミン成分とから得られる。酸成分としては、例えば、3,3´,4,4´-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(s-BPDA)、ピロメリット酸等が挙げられる。ジアミン成分としては、p-フェニレンジアミン(PPD)、4,4-ジアミノジフェニルエーテル、m-トリジン、4,4´-ジアミノベンズアニリド等が挙げられる。熱硬化性ポリイミドフィルムの市販品としては、例えば、宇部興産株式会社製のユーピレックス-S(商品名)、ユーピレックス-SGA(商品名)等が挙げられる。
【0021】
熱硬化性ポリイミド層21は、低誘電率、低誘電正接等の低誘電特性に優れるという観点から、3,3´,4,4´-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物とp-フェニレンジアミンとを共重合成分として含有することが好ましい。熱硬化性ポリイミド層21中における3,3´,4,4´-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物の含有量は、酸成分全体を100モル%とした場合、50モル%以上であることが好ましく、より好ましくは、70モル%以上である。熱硬化性ポリイミド層21中におけるp-フェニレンジアミンの含有量は、ジアミン成分全体を100モル%とした場合、50モル%以上であることが好ましく、より好ましくは、70モル%以上である。なお、3,3´,4,4´-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物とp-フェニレンジアミンとを共重合成分として含有する熱硬化性ポリイミドフィルムの市販品としては、例えば、宇部興産株式会社製のユーピレックス-SGA(商品名)が挙げられる。
【0022】
熱硬化性ポリイミドフィルムの放電処理としては、例えば、コロナ放電処理、大気圧プラズマ放電処理、真空プラズマ放電処理等が挙げられる。放電処理の中でも、設備のコストの低減、又は生産性向上の観点から、コロナ放電処理が好ましい。放電処理の条件は、上記の水接触角となるように調整すればよい。例えば、コロナ放電処理では、放電量を20W・min/m2以上、500W・min/m2以下の範囲に設定して行うことができる。
【0023】
水接触角が20°以下の主面を有する熱硬化性ポリイミドフィルムは、X線光電子分光分析法(XPS:X-ray Photoelectron Spectroscopy)を用いた表面分析において、親水性基に基づく酸素原子が検出される。このXPSを用いた熱硬化性ポリイミドフィルムの表面分析において、放電処理前の527~536eVの積算値A1と、放電処理後の527~536eVの積算値A2とから下記式(1)により算出される比率Rは、1.35以上であることが好ましい。
【0024】
R=A2/A1・・・(1)
XPSを用いた熱硬化性ポリイミドフィルムの表面分析において、炭素原子、窒素原子、酸素原子、及びケイ素原子の合計を基準として酸素原子の含有量を表すことができる。すなわち、278~298eV(炭素原子)、391~411eV(窒素原子)、523~543eV(酸素原子)、及び94~114eV(ケイ素原子)のそれぞれの積算値の合計を100%とする。この合計100%中において523~543eV(酸素原子)の積算値の占める割合を酸素原子の含有量として表すことができる。放電処理前の酸素原子の含有量B1(%)と、放電処理後の酸素原子の含有量B2(%)とから下記式(2)により算出される酸素原子の変化量C(%)は、5%以上であることが好ましい。
【0025】
C(%)=B2-B1・・・(2)
熱硬化性ポリイミド層21の厚さは、例えば、125μm以下であることが好ましい。熱硬化性ポリイミド層21の吸水率は、例えば、1.0%以上、2.0%以下の範囲内であることが好ましい。
【0026】
<熱融着樹脂層31>
熱融着樹脂層31の吸水率は、熱硬化性ポリイミド層21の吸水率よりも低いことが好ましく、より好ましくは、0.1%以下であり、さらに好ましくは、0.07%以下であり、最も好ましくは、0.05%以下である。
【0027】
熱融着樹脂層31は、例えば、半田耐熱性を容易に高めるという観点から、280℃以上の融点を有することが好ましい。熱融着樹脂層31の融点は、熱融着の容易性の観点から、320℃以下であることが好ましい。
【0028】
第1熱融着樹脂層31aの厚さ及び第2熱融着樹脂層31bの厚さは、それぞれ5μm以上であることが好ましく、より好ましくは、10μm以上であり、さらに好ましくは、12.5μm以上である。第1熱融着樹脂層31aの厚さ及び第2熱融着樹脂層31bの厚さは、それぞれ150μm以下であることが好ましく、より好ましくは、120μm以下であり、さらに好ましくは、100μm以下である。第1熱融着樹脂層31aの厚さ及び第2熱融着樹脂層31bの厚さは、互いに同じであってもよいし、異なってもよい。金属張積層板11のねじれや反りを抑えるという観点から、第1熱融着樹脂層31aの厚さと第2熱融着樹脂層31bの厚さの差は、3μm以下であることが好ましく、より好ましくは、2μm以下であり、さらに好ましくは、1μm以下である。
【0029】
本実施形態の絶縁層12の厚さは、10μm以上であることが好ましく、より好ましくは20μm以上であり、さらに好ましくは、25μm以上である。本実施形態の絶縁層12の厚さは、例えば、フレキシブル性をより高めるという観点から、400μm以下であることが好ましく、300μm以下であることがより好ましい。
【0030】
熱融着樹脂層31は、例えば、誘電率を低く抑えるという観点から、フッ素系樹脂から構成することが好ましい。フッ素系樹脂の中でも、良好な低誘電特性や良好な接着性を有するという観点から、テトラフルオロエチレン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、又はテトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)が好ましい。
【0031】
<金属層13>
金属層13の金属としては、例えば、金、銀、銅、銅合金、アルミニウム、アルミニウム合金等が挙げられる。第1金属層13a及び第2金属層13bは、互いに同じ金属から構成されてもよいし、異なる金属から構成されてもよい。金属層13は、例えば、銅箔を用いて形成することができる。銅箔としては、例えば、電解銅箔、及び圧延銅箔が挙げられる。第1金属層13aを形成する金属箔及び第2金属層13bを形成する金属箔は、互いに同じ製法で得られたものであってもよいし、異なる製法で得られたものであってもよい。
【0032】
第1金属層13aの厚さ及び第2金属層13bの厚さは、それぞれ2μm以上、105μm以下の範囲内であることが好ましく、より好ましくは、2μm以上、35μm以下の範囲内である。第1金属層13aの厚さ及び第2金属層13bの厚さは、互いに同じ厚さであってもよいし、互いに異なる厚さであってもよい。
【0033】
ここで、金属層13と熱融着樹脂層31との接着強度は、金属箔において、熱融着樹脂層31と接着される主面の表面粗さが粗いほど高くなる傾向にある。一方、上記金属箔の主面は、より平滑であることで、高周波帯域の電流が金属層13の表面に集中する表皮効果が抑えられることにより、高周波帯域の電気特性を十分に発揮させることができる。近年、5Gスマートフォン等の電子機器の高周波化に伴い、より小さい伝送損失を有するプリント配線板の需要が増大している。このため、金属張積層板11を高周波帯域に対応したプリント配線板として用いる場合、金属層13は、熱融着樹脂層31と接着される主面の十点平均粗さ(Rzjis)が2.0以下の金属箔から構成されることが好ましい。十点平均粗さ(Rzjis)は、JIS B0601(2001)に規定される。金属箔の上記主面における十点平均粗さ(Rzjis)は、1.5以下であることがより好ましく、さらに好ましくは、1.0以下である。
【0034】
<線膨張係数及び剥離強度>
絶縁層12の線膨張係数を金属層13の線膨張係数に近づけることで、金属張積層板11の寸法安定性を向上させることができる。例えば、銅の線膨張係数は、18ppm/Kである。金属層13が銅層の場合、絶縁層12の線膨張係数は、例えば、10ppm/K以上、40ppm/K以下の範囲内であることが好ましい。絶縁層12を構成する熱硬化性ポリイミド層21の線膨張係数は、10ppm/K以上、26ppm/K以下の範囲内であることが好ましい。例えば、熱融着樹脂層31の線膨張係数が熱硬化性ポリイミド層21の線膨張係数よりも大きい場合であっても、熱硬化性ポリイミド層21の線膨張係数を上記範囲とすることで、金属張積層板11の寸法安定性を向上させることができる。
【0035】
熱硬化性ポリイミド層21と熱融着樹脂層31との層間の剥離強度は、0.6N/mm以上であることが好ましい。
<金属張積層板11の製造方法>
次に、金属張積層板11の製造方法について説明する。
【0036】
図2に示すように、金属張積層板11の製造方法は、熱硬化性ポリイミドフィルム121と金属箔113との間に熱可塑性樹脂フィルム131を配置した積層体111を熱圧着する工程を備えている。熱硬化性ポリイミドフィルム121は、上述した熱硬化性ポリイミド層21を形成する。第1熱可塑性樹脂フィルム131a及び第2熱可塑性樹脂フィルム131bは、それぞれ第1熱融着樹脂層31a及び第2熱融着樹脂層31bを形成する。第1金属箔113a及び第2金属箔113bは、それぞれ第1金属層13a及び第2金属層13bを形成する。
【0037】
積層体111を熱圧着する工程では、熱可塑性樹脂フィルム131が融点以上の温度となるように積層体111を加熱する。積層体111を熱圧着する工程の最高温度は、熱可塑性樹脂フィルム131の融点をTm℃としたとき、Tm+70℃以下であることが好ましい。
【0038】
積層体111を熱圧着する工程の圧力は、例えば、0.5N/mm2以上、10N/mm2以下の範囲内であることが好ましく、より好ましくは2N/mm2以上、6N/mm2以下の範囲内である。
【0039】
積層体111を熱圧着する工程の加熱時間は、例えば、10秒以上、600秒以下の範囲であることが好ましく、より好ましくは30秒以上、500秒以下の範囲内である。
積層体111を熱圧着する工程は、ダブルベルトプレス装置51を用いて行うことが好ましい。ダブルベルトプレス装置51は、積層体111を搬送しながら加熱及び加圧する。ダブルベルトプレス装置51は、積層体111の搬送方向の上流側に位置する第1搬送部52と、下流側に位置する第2搬送部53とを有している。
【0040】
第1搬送部52には、上側第1ドラム52a及び下側第1ドラム52bが装着されている。第2搬送部53には、上側第2ドラム53a及び下側第2ドラム53bが装着されている。上側第1ドラム52a及び上側第2ドラム53aには、無端状の上側ベルト54が架け渡されている。下側第1ドラム52b及び下側第2ドラム53bには、無端状の下側ベルト55が架け渡されている。そして、各第1ドラム52a,52bは、各第2ドラム53a,53bの駆動により各ベルト54,55を介して従動されるように構成されている。各ベルト54,55は、例えばステンレス鋼等の金属から形成される。
【0041】
第1搬送部52と第2搬送部53との間には、上側温度調節装置56及び下側温度調節装置57が各ベルト54,55を介在させて対向するように配置されている。上側温度調節装置56及び下側温度調節装置57は、上側ベルト54及び下側ベルト55を介して積層体111を加熱及び加圧する。上側温度調節装置56及び下側温度調節装置57は、例えば、オイル等の熱媒体により上側ベルト54及び下側ベルト55を加熱及び加圧する。
【0042】
ダブルベルトプレス装置51を用いることで、連続して金属張積層板11を得ることができる。長尺状の金属張積層板11を巻き取ることで、金属張積層板11のロール品として保管又は輸送される。金属張積層板11は、例えば、フレキシブルプリント配線板等のプリント配線板に用いることができる。
【0043】
次に、本実施形態の作用及び効果について説明する。
(1)金属張積層板11の絶縁層12は、熱硬化性ポリイミド層21と、熱硬化性ポリイミド層21と金属層13との間に設けられる熱融着樹脂層31とを備えている。熱硬化性ポリイミド層21は、熱融着樹脂層31と接着される主面の水接触角が20°以下の熱硬化性ポリイミドフィルム121から構成されている。
【0044】
この構成によれば、熱硬化性ポリイミドフィルム121において、熱融着樹脂層31と接着される主面は、例えば、水素結合し易い状態であるため、熱硬化性ポリイミド層21と熱融着樹脂層31との層間の結合力を高めることができる。これにより、金属層13に対して接着性を有する熱融着樹脂層31と、熱硬化性ポリイミド層21との接着性を高めることができる。
【0045】
(2)熱硬化性ポリイミド層21は、3,3´,4,4´-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物とp-フェニレンジアミンとを共重合成分として含有することが好ましい。この場合、優れた低誘電特性を発揮させることが可能となる。
【0046】
(3)熱融着樹脂層31は、280℃以上の融点を有することが好ましい。この場合、金属張積層板11の半田耐熱性を容易に高めることができる。
(4)金属層13は、熱融着樹脂層31と接着される主面の十点平均粗さ(Rzjis)が2.0以下の金属箔から構成されることが好ましい。この場合、金属箔の主面の平滑性を高めることで、高周波帯域の電流が金属層13の表面に集中する表皮効果を抑えることができるため、金属層13において、高周波帯域の電気特性を十分に発揮させることができる。
【0047】
(5)熱硬化性ポリイミド層21の線膨張係数は、10ppm/K以上、26ppm/K以下の範囲内であることが好ましい。この場合、金属張積層板11の寸法安定性を向上させることができる。
【0048】
(6)熱融着樹脂層31の吸水率は、熱硬化性ポリイミド層21の吸水率よりも低いことが好ましい。この場合、金属層13と接着される熱融着樹脂層31の吸水や脱水を抑えることにより、金属層13と熱融着樹脂層31との界面の状態変化を抑えることができると推測される。これにより、温度変化を伴う長期の使用において、熱硬化性ポリイミド層21を有する絶縁層12に対する金属層13の接着性の低下を抑えることができる。
【0049】
(7)熱硬化性ポリイミド層21と熱融着樹脂層31との層間の剥離強度は、0.6N/mm以上であることが好ましい。このように熱硬化性ポリイミド層21と熱融着樹脂層31との接着性を確保することができる。
【0050】
(8)熱融着樹脂層31は、フッ素系樹脂から構成されることが好ましい。この場合、絶縁層12の誘電率を低く抑えることができるため、例えば、高周波帯域の電気特性を十分に発揮させることができる。
【0051】
(9)X線光電子分光分析法を用いた熱硬化性ポリイミドフィルム121の表面分析において、放電処理前の527~536eVの積算値A1と、放電処理後の527~536eVの積算値A2とから算出される比率Rは、1.35以上であることが好ましい。このように放電処理により改質された熱硬化性ポリイミドフィルム121を熱硬化性ポリイミド層21に好適に用いることができる。
【0052】
(10)X線光電子分光分析法を用いた熱硬化性ポリイミドフィルムの表面分析において、 放電処理前の酸素原子の含有量B1(%)と、放電処理後の酸素原子の含有量B2(%)とから算出される酸素原子の変化量C(%)は、5%以上であることが好ましい。このように放電処理により改質された熱硬化性ポリイミドフィルム121を熱硬化性ポリイミド層21に好適に用いることができる。
【0053】
(11)金属張積層板11の製造方法は、熱硬化性ポリイミド層21となる熱硬化性ポリイミドフィルム121と金属層13となる金属箔113との間に熱融着樹脂層31となる熱可塑性樹脂フィルム131を配置した積層体111を熱圧着する工程を備えている。この場合、金属張積層板11を効率的に製造することができる。また、積層体111を熱圧着する工程では、ダブルベルトプレス装置51を用いることで、金属張積層板11を連続して製造することができるため、金属張積層板11の製造効率を容易に高めることができる。
【0054】
(変更例)
上記実施形態を次のように変更して構成してもよい。上記実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0055】
・金属張積層板11は、ダブルベルトプレス装置51以外のラミネート装置等を用いて製造することもできる。また、上記実施形態では、連続的に長尺状の金属張積層板11を製造しているが、所定の寸法の金属張積層板を1枚ずつ製造してもよい。
【0056】
・上記実施形態では、一段階の熱圧着により金属張積層板11を製造しているが、複数段階の熱圧着により製造することもできる。例えば、熱硬化性ポリイミドフィルム121と熱可塑性樹脂フィルム131とを熱圧着することで積層フィルムを得る工程と、この積層フィルムと金属箔113とを熱圧着する工程とにより金属張積層板11を製造してもよい。
【0057】
・上記金属張積層板11において、第1熱融着樹脂層31aと第1金属層13aとからなる積層構造、及び第2熱融着樹脂層31bと第2金属層13bとからなる積層構造のいずれか一方の積層構造を省略してもよい。すなわち、金属張積層板は、熱硬化性ポリイミド層及び熱融着樹脂層の二層構造の絶縁層を有し、その絶縁層の片面に積層された金属層を有する片面金属張積層板であってもよい。片面金属張積層板の場合、絶縁層の厚さは、5μm以上であることが好ましく、より好ましくは10μm以上であり、さらに好ましくは、12.5μm以上である。片面金属張積層板の場合、絶縁層の厚さは、例えば、フレキシブル性をより高めるという観点から、200μm以下であることが好ましく、150μm以下であることがより好ましい。
【実施例0058】
次に、実施例及び比較例を説明する。
(実施例1)
実施例1では、絶縁層の両面に金属層を積層した金属張積層板を製造した。絶縁層の熱硬化性ポリイミド層は、両主面の水接触角が12°の熱硬化性ポリイミドフィルムから構成した。この熱硬化性ポリイミドフィルムは、市販の熱硬化性ポリイミドフィルム(宇部興産株式会社製、商品名:ユーピレックス-SGA)を放電処理することで得た。この放電処理には、放電量を155W・min/m2に設定したコロナ放電処理を用いた。
【0059】
絶縁層の第1熱融着樹脂層及び第2熱融着樹脂層は、いずれもフッ素系樹脂フィルム(AGC株式会社製、商品名:EA-2000)を用いて形成した。金属層は、銅箔(三井金属鉱業株式会社製、商品名:TQ-M4-VSP)を用いて形成した。フィルム及び銅箔を熱圧着する工程には、ダブルベルトプレス装置を用いた。
【0060】
各層の物性及び熱圧着の条件を表1に示す。
表1に示される“水接触角”は、放電処理後の熱硬化性ポリイミドフィルムを接触角計(協和界面科学株式会社製、商品名:DMs-401)を用いた液滴法により3回測定した平均値である。
【0061】
また、X線光電子分光分析法(XPS)を用いて放電処理前後の熱硬化性ポリイミドフィルムの表面分析を行った。この表面分析には、X線光電子分光分析装置(アルバック・ファイ株式会社製、商品名:PHI 5000 Versa ProbeII)を用いた。また、表面分析のX線源としては、AlKα線(1486.6eV)を用いた。
【0062】
XPSを用いた熱硬化性ポリイミドフィルムの表面分析では、放電処理前の527~536eVの積算値A1と、放電処理後の527~536eVの積算値A2とから上記式(1)に従って比率Rを算出した。表1中の“酸素原子の増加量”欄には、比率Rが1.35以上である場合を“○”、1.35未満である場合を“×”で示している。
【0063】
また、XPSを用いた熱硬化性ポリイミドフィルムの表面分析では、放電処理前の酸素原子の含有量B1(%)と、放電処理後の酸素原子の含有量B2(%)とから下上記(2)に従って酸素原子の変化量C(%)を算出した。その結果を表1中の“酸素原子の変化量”欄に示す。
【0064】
表1に示される熱硬化性ポリイミド層及び熱融着樹脂層の吸水率は、JIS K7209:2000(ASTM D570)に準じて、各層を形成するフィルムを23℃の水中に24時間浸漬後の重量変化率の測定値から求めた値である。
【0065】
(実施例2)
実施例2では、第1熱融着樹脂層及び第2熱融着樹脂層の厚さを変更した以外は、実施例1と同様に、金属張積層板を製造した。フィルム及び銅箔を熱圧着する工程には、実施例1と同じダブルベルトプレス装置を用いた。各層の物性及び熱圧着の条件を表1に示す。
【0066】
(実施例3)
実施例3では、絶縁層の熱硬化性ポリイミド層を、両主面の水接触角が8°の熱硬化性ポリイミドフィルムから構成し、第1熱融着樹脂層及び第2熱融着樹脂層の厚さを変更した以外は、実施例1と同様に、金属張積層板を製造した。この熱硬化性ポリイミドフィルムは、市販の熱硬化性ポリイミドフィルム(宇部興産株式会社製、商品名:ユーピレックス-SGA)を放電処理することで得た。この放電処理には、放電量を200W・min/m2に設定したコロナ放電処理を用いた。フィルム及び銅箔を熱圧着する工程には、実施例1と同じダブルベルトプレス装置を用いた。各層の物性及び熱圧着の条件を表1に示す。
【0067】
(実施例4)
実施例4では、絶縁層の熱硬化性ポリイミド層を、両主面の水接触角が15°の熱硬化性ポリイミドフィルムから構成した以外は、実施例1と同様に、金属張積層板を製造した。この熱硬化性ポリイミドフィルムは、市販の熱硬化性ポリイミドフィルム(宇部興産株式会社製、商品名:ユーピレックス-SGA)を放電処理することで得た。この放電処理には、放電量を310W・min/m2に設定したコロナ放電処理を用いた。フィルム及び銅箔を熱圧着する工程には、実施例1と同じダブルベルトプレス装置を用いた。各層の物性及び熱圧着の条件を表1に示す。
【0068】
(実施例5)
実施例5では、絶縁層の熱硬化性ポリイミド層を、両主面の水接触角が18°であり、厚さが25μmの熱硬化性ポリイミドフィルムから構成し、第1熱融着樹脂層及び第2熱融着樹脂層の厚さを変更した以外は、実施例1と同様に、金属張積層板を製造した。この熱硬化性ポリイミドフィルムは、市販の熱硬化性ポリイミドフィルム(宇部興産株式会社製、商品名:ユーピレックス-SGA)を放電処理することで得た。この放電処理には、放電量を155W・min/m2に設定したコロナ放電処理を用いた。フィルム及び銅箔を熱圧着する工程には、実施例1と同じダブルベルトプレス装置を用いた。各層の物性及び熱圧着の条件を表1に示す。
【0069】
(実施例6)
実施例6では、金属層を実施例1の銅箔とは十点平均粗さ(Rzjis)の異なる銅箔を用いて形成した以外は、実施例1と同様に、金属張積層板を製造した。フィルム及び銅箔を熱圧着する工程には、実施例1と同じダブルベルトプレス装置を用いた。各層の物性及び熱圧着の条件を表2に示す。
【0070】
(比較例1)
比較例1では、絶縁層の熱硬化性ポリイミド層を、両主面の水接触角が24°の熱硬化性ポリイミドフィルムから構成した以外は、実施例1と同様に、金属張積層板を製造した。この熱硬化性ポリイミドフィルムは、市販の熱硬化性ポリイミドフィルム(宇部興産株式会社製、商品名:ユーピレックス-S)を放電処理することで得た。この放電処理には、放電量を155W・min/m2に設定したコロナ放電処理を用いた。フィルム及び銅箔を熱圧着する工程には、実施例1と同じダブルベルトプレス装置を用いた。各層の物性及び熱圧着の条件を表2に示す。
【0071】
(比較例2)
比較例2では、絶縁層の熱硬化性ポリイミド層を、両主面の水接触角が29°の熱硬化性ポリイミドフィルムから構成し、第1熱融着樹脂層及び第2熱融着樹脂層の厚さを変更した以外は、実施例1と同様に、金属張積層板を製造した。この熱硬化性ポリイミドフィルムは、市販の熱硬化性ポリイミドフィルム(宇部興産株式会社製、商品名:ユーピレックス-VT)を放電処理することで得た。この放電処理には、放電量を155W・min/m2に設定したコロナ放電処理を用いた。フィルム及び銅箔を熱圧着する工程には、実施例1と同じダブルベルトプレス装置を用いた。各層の物性及び熱圧着の条件を表2に示す。
【0072】
(比較例3)
比較例3では、絶縁層の熱硬化性ポリイミド層を、両主面の水接触角が79.5°の熱硬化性ポリイミドフィルムから構成し、第1熱融着樹脂層及び第2熱融着樹脂層の厚さを変更した以外は、実施例1と同様に、金属張積層板を製造した。この熱硬化性ポリイミドフィルムは、市販の熱硬化性ポリイミドフィルム(宇部興産株式会社製、商品名:ユーピレックス-SGA)である。フィルム及び銅箔を熱圧着する工程には、実施例1と同じダブルベルトプレス装置を用いた。各層の物性及び熱圧着の条件を表2に示す。
【0073】
(比較例4)
比較例4では、絶縁層の熱硬化性ポリイミド層を、両主面の水接触角が76°の熱硬化性ポリイミドフィルムから構成した以外は、実施例1と同様に、金属張積層板を製造した。この熱硬化性ポリイミドフィルムは、市販の熱硬化性ポリイミドフィルム(宇部興産株式会社製、商品名:ユーピレックス-S)である。フィルム及び銅箔を熱圧着する工程には、実施例1と同じダブルベルトプレス装置を用いた。各層の物性及び熱圧着の条件を表2に示す。
【0074】
<外観検査>
各例で得られた金属張積層板から500mm×500mmのサンプルを採取し、サンプルの外観を目視にて観察した。サンプルに皺がないものを良好(○)とし、サンプルに皺があるものを不良(×)と判定した。その結果を表1及び表2中の“外観検査”欄に示す。
【0075】
<剥離強度>
各例で得られた金属張積層板を幅寸法10mmの短冊状に切断することでサンプルを作製し、JIS C6471に規定される“方法A”(90°方向引きはがし方法)にて、熱硬化性ポリイミド層と熱融着樹脂層との層間における剥離強度を測定した。この剥離強度の値が0.6N/mm以上の場合を良好(○)とし、0.6N/mm未満の場合を不良(×)と判定した。その結果を表1及び表2中の“剥離強度”欄に示す。
【0076】
<高周波の伝送特性>
各例の金属張積層板における金属層をエッチングすることにより回路長さ100mm、インピーダンス50Ωのマイクロストリップ線路を形成したサンプルを準備した。このサンプルについて、ネットワーク・アナライザ(キーサイト・テクノロジー社製、商品名:E8363B)にて40GHzの挿入損失(S21)を測定した。
【0077】
挿入損失(S21)の絶対値が0.4dB/cm未満の場合を高周波の伝送特性が良好(○)、0.4dB/cm以上、0.5dB/cm未満を高周波の伝送特性がやや劣る(△)、0.5dB/cm以上の場合を高周波の伝送特性が劣る(×)と判定した。その結果を表1及び表2中の“高周波の伝送特性”欄に示す。
【0078】
【0079】
【表2】
表1に示すように、実施例1~6では、熱硬化性ポリイミド層と熱融着樹脂層との層間における剥離強度について良好な評価結果が得られることが分かる。また、実施例1~5では、平滑性の高い主面を有する金属箔を用いて金属層を形成しているため、高周波の伝送特性についても、良好な評価結果が得られることが分かる。
【0080】
一方、比較例1~4に示すように、水接触角が20°を超える熱硬化性ポリイミドフィルムを用いた場合、熱硬化性ポリイミド層と熱融着樹脂層との層間における剥離強度について良好な評価結果が得られないことが分かる。