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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022053034
(43)【公開日】2022-04-05
(54)【発明の名称】搬送装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/677 20060101AFI20220329BHJP
【FI】
H01L21/68 A
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020159612
(22)【出願日】2020-09-24
(71)【出願人】
【識別番号】302054866
【氏名又は名称】日新イオン機器株式会社
(72)【発明者】
【氏名】中澤 喜之
(72)【発明者】
【氏名】小野田 正敏
(72)【発明者】
【氏名】後藤 亮介
【テーマコード(参考)】
5F131
【Fターム(参考)】
5F131AA02
5F131AA03
5F131BA01
5F131BA23
5F131CA55
5F131DA02
5F131DB06
5F131DB72
5F131DB92
(57)【要約】      (修正有)
【課題】一端部が保持装置に接続された電源ケーブル等の長尺部材の損傷を抑制できる搬送装置を提供する。
【解決手段】基板Sに対して所定の処理を施す処理装置の備える収容室内に配置され、保持対象物を保持した状態で一方向に沿った往復運動を行う保持装置20を備える搬送装置10であて、曲げ領域63と、曲げ領域に隣接し互いに対向する第一支持領域64および第二支持領域65を有するベルト60を備える。電源ケーブル等の長尺部材41a、41bはベルトに沿って配置される。ベルトは、所定の曲げ形状を維持しつつ、第一支持領域および第二支持領域を一方向について相対的に反対方向へ移動させることで、曲げ領域の位置を一方向に沿って移動させるように動作する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板に対して所定の処理を施す処理装置の備える収容室内に配置され、保持対象物を保持した状態で一方向に沿った往復運動を行う保持装置を備える搬送装置であって、
一端部が前記保持装置に接続され、可撓性を有する長尺部材と、
所定の曲げ形状に曲げられた曲げ領域と、前記曲げ領域に隣接し、前記一方向に沿って互いに対向するよう形成された第一支持領域および第二支持領域とを有し、前記長尺部材の一部の領域が固定されるベルトと、
前記第一支持領域において前記ベルトに固定され、前記往復移動に追従して前記ベルトを動作させる第一固定部材と、を備え、
前記一部の領域は、前記第一支持領域から前記曲げ領域を介して前記第二支持領域に至るよう、前記一端部側から順次前記ベルトに沿うよう配置された状態で前記ベルトに固定され、
前記ベルトは、前記曲げ形状を維持しつつ、前記第一支持領域および前記第二支持領域を前記一方向について相対的に反対方向へ移動させることで、前記曲げ領域の位置を前記一方向に沿って移動させるように動作するよう構成されている搬送装置。
【請求項2】
前記第二支持領域において前記ベルトと前記収容室とを固定する第二固定部材をさらに備える請求項1に記載の搬送装置。
【請求項3】
前記第一固定部材は、前記保持装置と一体に動作するよう前記保持装置にさらに固定されており、
前記長尺部材は、前記一端部と前記第一支持領域に支持される領域との間において、前記第一固定部材に固定されている請求項1または2に記載の搬送装置。
【請求項4】
前記長尺部材を複数備え、各前記長尺部材は、互いに離間した状態で前記ベルトに固定されている請求項1~3のいずれか一項に記載の搬送装置。
【請求項5】
前記長尺部材は、前記ベルトに沿って互いに離間して配置された状態で前記ベルトに固定された複数のベルト固定部材を介して前記ベルトに固定されており、
前記複数のベルト固定部材のうち、前記長尺部材について前記一端部に最も近い位置に配置された第一ベルト固定部材は、前記往復移動の間、常に第一支持領域に位置し、
前記複数のベルト固定部材のうち、前記長尺部材について前記一端部から最も離れた位置に配置された第二ベルト固定部材は、前記往復移動の間、常に第二支持領域に位置するよう構成されている請求項1~4のいずれか一項に記載の搬送装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体製造工程やフラットパネルディスプレイ製造工程において、基板に対して所定の処理を施す処理装置に使用される搬送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体製造工程やフラットパネルディスプレイ製造工程において使用され、基板に対して所定の処理を施す処理装置として、特許文献1に開示されたイオン注入装置が知られている。特許文献1のイオン注入装置は、基板を保持する基板保持部と、基板保持部を水平方向へ移動させる基板搬送機構を備えている。このイオン注入装置は、基板保持部が水平方向へ搬送される間に、基板保持部に保持された基板がイオンビームを横切ることで基板にイオンビームが照射される構成である。
【0003】
特許文献1のイオン注入装置は、基板を冷却するための冷媒が流動する樹脂製配管と、基板搬送機構に電力を供給する電力ケーブルや制御用の信号線をさらに備えている。これらの樹脂製配管、電力ケーブル、および信号線は、いずれも一端部が基板保持部に接続されているとともに、蛇腹状のケーブルガイドに収容されており、所定の範囲内で基板搬送機構の動きに合わせて移動するよう構成されている。しかしながら、樹脂製配管、電力ケーブル、および信号線は、いずれも全体を撓ませた状態でケーブルガイド内に収容されているのみであり、ケーブルガイド内では自由に動くことができる。
【0004】
また、特許文献2には、基板に薄膜を形成する成膜装置が開示されている。特許文献2の成膜装置は、成膜材料を加熱して蒸発又は昇華させることによって基板に薄膜を形成するものであり、成膜材料を収容する容器を備える成膜源を備えている。この成膜装置は、成膜源をメンテナンス位置と成膜位置との間で往復移動させる搬送機構を備えており、成膜源には、成膜源が備えるヒーターに電力を供給する電力線等が接続されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2014-165283
【特許文献2】特開2016-14174
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1のイオン注入装置においては、樹脂製配管、電力ケーブル、または信号線などの可撓性を有する長尺部材は、ケーブルガイド内で自由に動くことができた。したがって、基板保持部が搬送される間、これらの長尺部材は保持部に追従して動きつつ、互いに接触し合うことや、ケーブルガイドの内面と接触することが懸念される。また、樹脂製配管、電力ケーブル、および信号線に想定よりも大きな変形や屈曲が発生することも懸念される。このように、他の構成要素と接触や摩擦を繰り返すことや、想定よりも大きな変形や屈曲が繰り返し発生すると、これらの長尺部材が損傷するおそれがある。
また、特許文献2のような成膜装置においても、電源ケーブル等の長尺部材を成膜源の動きに追従させるよう撓ませた状態で配置すると特許文献1のイオン注入装置と同様の課題が発生する。
【0007】
本発明は、上記課題を解決するものであり、保持対象物を保持した状態で一方向に沿った往復運動を行う保持装置を備える搬送装置において、一端部が保持装置に接続された長尺部材の損傷を抑制できる搬送装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の搬送装置は、基板に対して所定の処理を施す処理装置の備える収容室内に配置され、保持対象物を保持した状態で一方向に沿った往復運動を行う保持装置を備える搬送装置であって、一端部が前記保持装置に接続され、可撓性を有する長尺部材と、所定の曲げ形状に曲げられた曲げ領域と、前記曲げ領域に隣接し、前記一方向に沿って互いに対向するよう形成された第一支持領域および第二支持領域とを有し、前記長尺部材の一部の領域が固定されるベルトと、前記第一支持領域において前記ベルトに固定され、前記往復移動に追従して前記ベルトを動作させる第一固定部材と、を備え、前記一部の領域は、前記第一支持領域から前記曲げ領域を介して前記第二支持領域に至るよう、前記一端部側から順次前記ベルトに沿うよう配置された状態で前記ベルトに固定され、前記ベルトは、前記曲げ形状を維持しつつ、前記第一支持領域および前記第二支持領域を前記一方向について相対的に反対方向へ移動させることで、前記曲げ領域の位置を前記一方向に沿って移動させるように動作するよう構成されている。
【0009】
この構成によれば、保持装置が一方向へ移動した場合には、第一固定部材が保持装置に追従して一方向へ移動する。同時に、第一固定部材はベルトの第一支持領域に固定されていることから、ベルトは第一支持領域を一方向に移動させるよう動作する。さらに、長尺部材はベルトに固定されていることから、長尺部材はベルトに追従して動作することになる。すなわち、長尺部材は、第一固定部材およびベルトを介して保持装置の一方向への移動に追従することになる。
このとき、長尺部材の一部の領域が、第一支持領域から曲げ領域を介して第二支持領域に至るようベルトに沿って固定されており、べルトは、所定の曲げ形状を維持しつつ、第一支持領域および第二支持領域を一方向について相対的に反対方向へ移動させることで、曲げ領域の位置を一方向に沿って移動させるように動作する。したがって、長尺部材は、ベルトの曲げ形状によって規定される形状で曲げられながら、第一支持領域および第二支持領域に支持されたそれぞれの領域を一方向について相対的に反対方向へ移動させるようにして、保持装置の移動に追従する。
すなわち、本発明の搬送装置においては、長尺部材は、ベルトによって規定された形状を維持しながら保持装置の移動に追従させられることから、従来と異なり、長尺部材が不規則に動くことがなく、他の構成要素と接触や摩擦を繰り返すことによる損傷が抑制される。
また、長尺部材は、ベルトによって規定された形状で曲げられることから、想定よりも大きな変形や屈曲が発生することがない。すなわち、長尺部材に想定よりも大きな変形や屈曲が繰り返し発生することに起因する長尺部材の損傷が抑制される。
【0010】
また、本発明の搬送装置は、前記第二支持領域において前記ベルトと前記収容室とを固定する第二固定部材をさらに備える構成としてもよい。
【0011】
この構成によれば、ベルトは、第二固定部材によって固定された位置において収容室に固定されることから、ベルトは第一固定部材の動作のみに連動して動作できるようになる。したがって、ベルトの動作を規定することが容易となるとともに、搬送装置の構成を簡易なものとすることができる。
【0012】
また、本発明の搬送装置は、前記第一固定部材は、前記保持装置と一体に動作するよう前記保持装置にさらに固定されており、前記長尺部材は、前記一端部と前記第一支持領域に支持される領域との間において、前記第一固定部材に固定されている構成としてもよい。
【0013】
この構成によれば、第一固定部材は、保持装置と一体に動作するよう保持装置にさらに固定されていることから、ベルトを保持装置と一体に動作させることができる。また、
長尺部材は、一端部とベルトの第一支持領域に支持される領域との間において、第一固定部材に固定されている。したがって、一端部とベルトの第一支持領域に支持される領域との間においても長尺部材の不規則な動きや屈曲が規制され、長尺部材の損傷が抑制される。
【0014】
また、本発明の搬送装置は、前記長尺部材を複数備え、各前記長尺部材は、互いに離間した状態で前記ベルトに固定されている構成としてもよい。
【0015】
この構成によれば、複数の長尺部材が互いに離間した状態で前記ベルトに固定されることから、複数の長尺部材を備える場合であっても、複数の長尺部材が互いに接触することがなく、接触や摩擦による損傷が抑制される。
【0016】
また、本発明の搬送装置は、前記長尺部材は、前記ベルトに沿って互いに離間して配置された状態で前記ベルトに固定された複数のベルト固定部材を介して前記ベルトに固定されており、前記複数のベルト固定部材のうち、前記長尺部材について前記一端部に最も近い位置に配置された第一ベルト固定部材は、前記往復移動の間、常に第一支持領域に位置し、前記複数のベルト固定部材のうち、前記長尺部材について前記一端部から最も離れた位置に配置された第二ベルト固定部材は、前記往復移動の間、常に第二支持領域に位置するよう構成されていてもよい。
【0017】
この構成によれば、保持装置が往復移動を行う間、第一ベルト固定部材および第二ベルト固定部材は、それぞれ常に第一支持領域および第二支持領域に位置している。したがって、長尺部材は、第一支持領域から曲げ領域を介して第二支持領域に至るようにベルトに沿わせて固定された状態をより確実に維持されることから、長尺部材の動作をより確実に規定できる。すなわち、長尺部材の損傷をより確実に抑制することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明の搬送装置によれば、保持対象物を保持した状態で一方向に沿った往復運動を行う保持装置を備える搬送装置において、一端部が保持装置に接続された長尺部材の損傷を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の一実施形態における搬送装置を使用したイオン注入装置を示す平面図。
図2】同実施形態における基板処理装置を示す斜視図。
図3】同実施形態における基板処理装置を示す側面図。
図4】同実施形態の開始位置における基板処理装置を示す模式的背面図
図5】同実施形態に到達位置における基板処理装置を示す模式的背面図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の搬送装置は、半導体製造工程またはフラットパネルディスプレイ製造工程において使用され、基板に対して所定の処理を施す処理装置の内部に配置されて使用されるものである。処理装置の例としては、イオン注入装置や成膜装置が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
まず、本発明における一実施形態である搬送装置10の構成について説明する。図1に示すように、本実施形態における搬送装置10は、イオン注入装置100の処理室101内に配置され、本発明における収容室である処理室101内に導入されたイオンビームIBを基板Sが横切るよう基板Sを搬送するものである。
【0021】
本実施形態におけるイオン注入装置100は、液晶ディスプレイや有機ELディスプレイ等のフラットパネルディスプレイの製造工程において使用され、基板Sに対してイオン注入処理を施す装置であり、本実施形態における基板Sは矩形状のガラス基板である。
尚、搬送装置10は、半導体製造工程において使用されるものであってもよい。この場合、基板Sは半導体ウェーハとなる。また、本発明における収容室は、搬送装置10が収容される空間を規定する処理装置の構成要素を指す。例えば、搬送装置10は、処理室101内に配置されることに限らず、イオン注入装置等の処理装置が備える搬送室またはロードロック室に収容されていてもよい。この場合、搬送装置10が配置される搬送室またはロードロック室が本発明における収容室である。また、搬送装置10が搬送室と処理室に跨って配置される場合には、本発明における収容室は、搬送室と処理室を含めた構成を指すものとなる。
【0022】
図1に示すように、本実施形態における搬送装置10は、本発明における保持対象物である基板Sを保持する保持装置20と、処理室101内において保持装置20を一方向Dに往復搬送する移送装置30を備えている。移送機構30は、保持装置20を開始位置P1から到達位置P2に移送した後、保持装置20を再び到達位置P2から開始位置P1に移送できるよう構成されている。換言すれば、保持装置20は、移送装置30により移送されることによって、一方向Dに沿った往復移動を行う構成とされている。
尚、本発明における保持対象物は基板Sに限定されるものではない。例えば、特許文献2における成膜装置では、成膜材用を収容した成膜源は、搬送装置に保持された状態でレールに沿って一方向に往復移動できる構成とされている。この場合、成膜源が本発明における保持対象物であり、成膜源を保持する搬送装置が本発明における保持装置であるものと捉えることができる。
【0023】
図2に示すように、保持装置20は、基板Sを保持するホルダ21と、ホルダ21を支持する支持部材22を備えている。ホルダ21は全体櫛状をなしており、幅方向両端にシャフト23を備える。また、支持部材22は、上方に開口したコ字状(U字状)をなしており、シャフト23を回転可能に支持している。また、支持部材22の内部には、シャフト23を回転させるためのモーター25が配置されている。すなわち、ホルダ21は、シャフト23を介して支持部材22に回転可能に支持されており、モーター25の動力が伝えられてシャフト23まわりに回転動作するように構成されている。保持装置20は、外部と基板Sの受け渡しを行う場合や、基板Sに対するイオンビームIBの向きを変更する場合にホルダ21を回転させ、適切な位置又は姿勢で基板Sを保持できる構成とされている。
【0024】
また、保持装置20は、支持部材22の下方において支持部材22と接合されたスライダ24を備えている。スライダ24は、後述する移送装置30のガイドレール31に連結されている。
【0025】
図3に示すように、移送装置30は、ガイドレール31と、ガイドレール31に連結されたスライダ24をガイドレール31に沿って直線的に移動させる直動機構(不図示)を備えている。直動機構は、図示されないモーター等の駆動源からの動力をスライダ24に伝達し、スライダ24をガイドレール31に沿って直線的に往復移動させるものである。また、図1に示すように、ガイドレール31は、一方向Dと平行に配置されている。すなわち、保持装置20は、スライダ24がガイドレール31上を移動することにより、一方向Dに沿って移動できる構成である。
【0026】
図1に示すように、本実施形態におけるイオン注入装置100においては、処理室101には外部からイオンビームIBが導入されている。搬送装置10は、基板Sを保持した保持装置20が移送装置30により、開始位置P1から到達位置P2まで一方向Dに搬送される間に、基板SがイオンビームIBを横切るように構成されている。すなわち、基板Sは、保持装置20に保持された状態でイオンビームIBを横切ることでイオンビームIBに曝されてイオン注入されることになる。
【0027】
図2に示すように、本実施形態における搬送装置10は、可撓性を有する二つの長尺部材40a、40bをさらに備えている。本実施形態における長尺部材40aはモーター25または支持部材22を冷却するための冷却水が流動する冷却管であり、長尺部材40bはモーター25に電力を供給するための電力ケーブルである。
尚、前述の長尺部材40a、40bの種類や用途は一例であり、本発明における長尺部材の種類や用途を限定するものではない。
【0028】
長尺部材40a、40bは、それぞれの一端部41a、41bが保持装置20に接続されている。
尚、長尺部材40a、40bの一端部41a、41bに保持装置20に接続されている構成とは、一端部41a、41bが保持装置20と一体となって移動できる構成要素に接続されている構成を含む。すなわち、長尺部材40a、40bの一端部41a、41bに保持装置20に接続されている構成は、一端部41a、41bが結果として保持装置20に追従して移動する構成をすべて含んでいる。
【0029】
図1および図2に示すように、搬送装置10は、二つのプーリー50a、50bと、二つのプーリー50a、50bに巻き掛けられた環状のベルト60を備える。図4および図5に示すように、プーリー50a、50bはそれぞれ外周面に複数のプーリー歯51a、51bを備える歯付きプーリーである。また、ベルト60は内側に複数のベルト歯61を有する歯付きベルトから成り、プーリー歯51a、1bとベルト歯61とが噛み合うことにより、プーリー50a、50bとベルト60は連動して動作するよう構成されている。
【0030】
図2に示すように、ベルト60は、プーリー50aに沿うように所定の曲げ形状に曲げられた曲げ領域63と、曲げ領域63に隣接し、一方向Dに沿って互いに上下方向において対向するよう形成された第一支持領域64および第二支持領域65とを有する。長尺部材40a、40bの一部の領域は、第一支持領域64から曲げ領域63を介して第二支持領域65に至るよう、一端部41a、41b側から順次ベルト60に沿うように配置されている。さらに、長尺部材40a、40bはともに後述する五つのベルト固定部材66a~66eによって、ベルト60の幅方向に所定間隔離間した状態でベルト60に固定されている。
尚、長尺部材40a、40bはベルト60の厚さ方向に離間させた状態でベルト60に固定されていてもよい。
【0031】
また、搬送装置10は、第一支持領域64においてベルト60に固定され、保持装置20の往復移動に追従してベルト60を動作させるための第一固定部材70を備えている。第一固定部材70は、保持装置20にも固定されており、保持装置20と一体となって動作することができる。すなわち、ベルト60と保持装置20は、第一固定部材70によって連結されており、ベルト60は第一固定部材70を介して保持装置20の往復移動に追従するよう動作する構成である。
【0032】
また、搬送装置10は、第二支持領域65においてベルト60と処理室101とを固定する第二固定部材72をさらに備えている。より詳細には、第二固定部材72は、ベルト60を、処理室101が備える構造物102に対して固定するものである。
【0033】
図2に示すように、第一固定部材70は長尺部材40a、40bを支持する支持面71を有している。長尺部材40a、40bはともにそれぞれの一端部41a、41bと第一支持領域64に支持される領域との間の一部が支持面71に支持されており、バンド等の固定部材73により第一固定部材70に固定されている。
【0034】
図2および図3に示すように、搬送装置10は、プーリー50a、50bを回転可能に支持するガイド部材80a、80bと、ガイド部材80a、80bを一方向Dに沿って直線的に移動するようガイドするレール81をさらに備えている。ガイド部材80a、80bは板状の連結部材82により連結されており、連結部材82によってプーリー50a、50bの位置関係が固定されている。プーリー50a、50bは連結部材82により位置関係が固定された状態で一方向Dに沿って移動できるため、ベルト60は、プーリー50a、50bに巻き掛けられた全体形状を変えることなく、動作することができる。
【0035】
図2に示すように、長尺部材40a、40bは、一部の領域がベルト60に沿うようにして五つのベルト固定部材66a~66eにより、ベルト60に固定されている。ベルト固定部材66a~66eはベルト60に沿って互いに離間して配置されており、ベルト固定部材66a~66eは、いずれもそれぞれベルト60の隣り合うベルト歯61間に形成された歯底62においてベルト60を厚さ方向に挟むように取り付けられている。また、ベルト固定部材66a~66fは、長尺部材40a、40bを互いにベルト60の幅方向に所定間隔離間させるとともに、ベルト60からベルト60の厚さ方向に所定間隔離間した状態でベルト60に固定できる構成とされている。
【0036】
図2に示すように、五つの固定部材66a~66eのうち、長尺部材40a、40bについて見た場合において、長尺部材40a、40bの一端部41a、41bに最も近い位置に配置された固定部材66aが、本発明における第一ベルト固定部材である。また、長尺部材40a、40bの一端部41a、41bから最も離れた位置に配置された固定部材66eが、本発明における第二ベルト固定部材である。
【0037】
図4および図5に示すように、第一ベルト固定部材である固定部材66aは、保持装置20が往復移動する間、常に第一支持領域64に位置するよう配置されている。また、第二ベルト固定部材である固定部材66aは、常に第二支持領域65に位置するよう配置されている。本実施形態においては、ベルト60は、第二支持領域65において第二固定部材72により処理室101に固定しているため、固定部材66aは保持装置20が往復移動する場合においても、処理室101に対して位置を変えることはない。
【0038】
図1および図3に示すように、本発明の搬送装置10においては、保持装置20はレール81に対してイオンビームIBに向かう側に位置しており、ベルト60はレール81を挟んで保持装置20と反対側に位置するように配置されている。また、搬送装置10は、レール60と保持装置20との間において一方向Dに沿って配置された板状のカバー90を備えている。カバー90はベルト60や長尺部材40a、40b等をイオンビームIBから保護するものである。カバー90は、保持装置20が往復移動する間、カバー90よりイオンビームIBの進行方向側に位置する搬送装置10の構成要素を保護するために設けられているものである。
尚、図2図3図4および図5においては、カバー90の図示は省略されている。
【0039】
図4は、保持装置20が開始位置P1に位置する状態における搬送装置10を示している。また、図5は、保持装置20が到達位置P2に位置する状態における搬送装置10を示している。図4および図5に示すように、保持装置20が開始位置P1から到達位置P2に移動する間、ベルト60は、プーリー50aで規定される曲げ形状を維持しつつ、第一支持領域64および第二支持領域65を一方向Dについて相対的に反対方向へ移動させることで、曲げ領域63の位置を一方向Dに沿って移動させるように動作するよう構成されている。
尚、本実施形態においては、プーリー50a、50b間に位置するベルト60の二つの領域のうち上方に位置する領域が第一支持領域64であり、下方に位置する領域が第二支持領域65である。
【0040】
より詳細には、保持装置20が開始位置P1から到達位置P2に向かって一方向Dに向かって移動すると、第一固定部材70が保持装置20に追従して一方向Dに移動する。同時に、第一固定部材70はベルト60に固定されているため、ベルト60は第一固定部材70に追従し開始位置P1における第一支持領域64を一方向Dに移動させるよう動作する。また、ベルト60は、第二支持領域65において第二固定部材72により処理室101に固定されていることから、このとき、プーリー50aはベルト60を第一支持領域64側から第二支持領域65側へ巻き込むように動作する。例えば、図4に示すように、保持装置20が初期位置P1に位置する状態では、第一支持領域64上に位置するベルト固定部材66dは、保持装置20が到達位置P2に位置する状態では、第一支持領域65上に位置している。
この場合、保持装置20が開始位置P1から到達位置P2に至る間に、プーリー50aが一方向Dに移動する距離は、保持装置20が一方向Dに移動する距離の約2分の1となる。
尚、保持装置20が到達位置P2から開始位置P1に移動する場合には、前述と逆の動作となることは明らかであるため説明を省略する。
【0041】
この間、長尺部材40a、40bは、ベルト60に沿って配置された状態で、ベルト固定部材66a~66eによりベルト60に固定されていることから、ベルト60に沿う形状を維持した状態で、保持装置20の移動に追従することができる。より詳細には、長尺部材40a、40bのベルト60に固定される領域は、プーリー50aに沿ったベルト60の曲率に規定された所定の曲げ形状を維持しつつ、ベルト60がプーリー50aに巻き込まれるように移動するのに追従する。プーリー50a、50bから見た場合に長尺部材40a、40bは、プーリー50a、50bの周りをベルト60とともに回るように移動する。すなわち、長尺部材40a、40bは、第一支持領域64および第二支持領域65に支持された長尺部材40a、40bのそれぞれの領域を一方向Dについて相対的に反対方向へ移動させるようにして、保持装置20の移動に追従する。
【0042】
したがって、本実施形態における搬送装置10においては、長尺部材40a、40bを、ベルト60によって規定された形状を維持しながら、保持装置20の移動に追従させることができる。その結果、長尺部材40a、40bが不規則に動くことがなく、他の構成要素と接触や摩擦を繰り返すことによる損傷が抑制される。同時に、長尺部材40a、40bは、ベルト60に沿わせて固定されていることで、曲げ形状を規定できることから、長尺部材40a、40bは想定外の大きな曲げが生じることがなくなく、その結果、長尺部材40a、40bの損傷が抑制される。
【0043】
また、本実施形態における搬送装置10においては、第二支持領域65においてベルト60と処理室101とを固定する第二固定部材72を備えていることから、ベルト60は第一固定部材70の動作のみに連動して動作させられるようになる。したがって、ベルト60の動作を規定することが容易となるとともに、搬送装置10の構成を簡易なものとすることができる。
【0044】
また、長尺部材40a、40bは、第一固定部材70においても固定部材73により固定されていることから、一端部41a、41bとベルト60の第一支持領域64に支持される領域との間においても長尺部材40a、40bの不規則な動きや屈曲が規制され、長尺部材41a、41bの損傷が抑制される。
【0045】
また、二つの長尺部材40a、40bは、ベルト固定部材66a~66eにより互いに離間した状態でベルト60に固定されていることから、長尺部材40a、40bが互いに接触することがなく、接触や摩擦による損傷が抑制される。
【0046】
また、保持装置20が往復移動を行う間、固定部材66aおよび固定部材66eは、それぞれ常に第一支持領域64および第二支持領域65に位置している。したがって、長尺部材40a、40bは、第一支持領域64から曲げ領域63を介して第二支持領域65に至るようにベルト60に沿わせて固定された状態をより確実に維持される。したがって、長尺部材40a、40bの動作をより確実に規定できる。すなわち、長尺部材40a、40bの損傷をより確実に抑制することができる。
【0047】
上述のように、本実施形態における搬送装置10においては、プーリー50a、50bおよびベルト60等の配置や大きさ等を長尺部材40a、40bに合わせて事前に適切に設定することによって、長尺部材40a、40bの曲げや動きをコントロールできるようにしている。本実施形態における搬送装置10によれば、従来と異なり、長尺部材40a、40bは事前に規定された曲げや動きで保持装置20に追従できることから、長尺部材40a、40bの損傷が抑制されるものである。
【0048】
また、本発明は前記実施形態に限られず、その趣旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能であることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0049】
S 基板
D 一方向
P1 開始位置
P2 到達位置
100 イオン注入装置
101 処理室
10 搬送装置
20 保持装置
30 移送装置
31 ガイドレール
40a、40b 長尺部材
41a、41b 一端部
50a、50b プーリー
60 ベルト
63 曲げ領域
64 第一支持領域
65 第二支持領域
66a~66e ベルト固定部材
70 第一固定部材
71 支持面
72 第二固定部材
73 固定部材


図1
図2
図3
図4
図5
【手続補正書】
【提出日】2021-07-06
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0007
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0007】
本発明は、上記課題を解決するものであり、保持対象物を保持した状態で一方向に沿った往復動を行う保持装置を備える搬送装置において、一端部が保持装置に接続された長尺部材の損傷を抑制できる搬送装置を提供することを目的としている。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0008
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0008】
本発明の搬送装置は、基板に対して所定の処理を施す処理装置の備える収容室内に配置され、保持対象物を保持した状態で一方向に沿った往復動を行う保持装置を備える搬送装置であって、一端部が前記保持装置に接続され、可撓性を有する長尺部材と、所定の曲げ形状に曲げられた曲げ領域と、前記曲げ領域に隣接し、前記一方向に沿って互いに対向するよう形成された第一支持領域および第二支持領域とを有し、前記長尺部材の一部の領域が固定されるベルトと、前記第一支持領域において前記ベルトに固定され、前記往復移動に追従して前記ベルトを動作させる第一固定部材と、を備え、前記一部の領域は、前記第一支持領域から前記曲げ領域を介して前記第二支持領域に至るよう、前記一端部側から順次前記ベルトに沿うよう配置された状態で前記ベルトに固定され、前記ベルトは、前記曲げ形状を維持しつつ、前記第一支持領域および前記第二支持領域を前記一方向について相対的に反対方向へ移動させることで、前記曲げ領域の位置を前記一方向に沿って移動させるように動作するよう構成されている。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0018
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0018】
本発明の搬送装置によれば、保持対象物を保持した状態で一方向に沿った往復動を行う保持装置を備える搬送装置において、一端部が保持装置に接続された長尺部材の損傷を抑制できる。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0022
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0022】
図1に示すように、本実施形態における搬送装置10は、本発明における保持対象物である基板Sを保持する保持装置20と、処理室101内において保持装置20を一方向Dに往復搬送する移送装置30を備えている。移送装置30は、保持装置20を開始位置P1から到達位置P2に移送した後、保持装置20を再び到達位置P2から開始位置P1に移送できるよう構成されている。換言すれば、保持装置20は、移送装置30により移送されることによって、一方向Dに沿った往復移動を行う構成とされている。
尚、本発明における保持対象物は基板Sに限定されるものではない。例えば、特許文献2における成膜装置では、成膜材用を収容した成膜源は、搬送装置に保持された状態でレールに沿って一方向に往復移動できる構成とされている。この場合、成膜源が本発明における保持対象物であり、成膜源を保持する搬送装置が本発明における保持装置であるものと捉えることができる。
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0038
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0038】
図1および図3に示すように、本発明の搬送装置10においては、保持装置20はレール81に対してイオンビームIBに向かう側に位置しており、ベルト60はレール81を挟んで保持装置20と反対側に位置するように配置されている。また、搬送装置10は、レール81と保持装置20との間において一方向Dに沿って配置された板状のカバー90を備えている。カバー90はベルト60や長尺部材40a、40b等をイオンビームIBから保護するものである。カバー90は、保持装置20が往復移動する間、カバー90よりイオンビームIBの進行方向側に位置する搬送装置10の構成要素を保護するために設けられているものである。
尚、図2図3図4および図5においては、カバー90の図示は省略されている。
【手続補正6】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0040
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0040】
より詳細には、保持装置20が開始位置P1から到達位置P2に向かって一方向Dに向かって移動すると、第一固定部材70が保持装置20に追従して一方向Dに移動する。同時に、第一固定部材70はベルト60に固定されているため、ベルト60は第一固定部材70に追従し開始位置P1における第一支持領域64を一方向Dに移動させるよう動作する。また、ベルト60は、第二支持領域65において第二固定部材72により処理室101に固定されていることから、このとき、プーリー50aはベルト60を第一支持領域64側から第二支持領域65側へ巻き込むように動作する。例えば、図4に示すように、保持装置20が開始位置P1に位置する状態では、第一支持領域64上に位置するベルト固定部材66dは、保持装置20が到達位置P2に位置する状態では、第支持領域65上に位置している。
この場合、保持装置20が開始位置P1から到達位置P2に至る間に、プーリー50aが一方向Dに移動する距離は、保持装置20が一方向Dに移動する距離の約2分の1となる。
尚、保持装置20が到達位置P2から開始位置P1に移動する場合には、前述と逆の動作となることは明らかであるため説明を省略する。
【手続補正7】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0044
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0044】
また、長尺部材40a、40bは、第一固定部材70においても固定部材73により固定されていることから、一端部41a、41bとベルト60の第一支持領域64に支持される領域との間においても長尺部材40a、40bの不規則な動きや屈曲が規制され、長尺部材4a、4bの損傷が抑制される。
【手続補正8】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板に対して所定の処理を施す処理装置の備える収容室内に配置され、保持対象物を保持した状態で一方向に沿った往復動を行う保持装置を備える搬送装置であって、
一端部が前記保持装置に接続され、可撓性を有する長尺部材と、
所定の曲げ形状に曲げられた曲げ領域と、前記曲げ領域に隣接し、前記一方向に沿って互いに対向するよう形成された第一支持領域および第二支持領域とを有し、前記長尺部材の一部の領域が固定されるベルトと、
前記第一支持領域において前記ベルトに固定され、前記往復移動に追従して前記ベルトを動作させる第一固定部材と、を備え、
前記一部の領域は、前記第一支持領域から前記曲げ領域を介して前記第二支持領域に至るよう、前記一端部側から順次前記ベルトに沿うよう配置された状態で前記ベルトに固定され、
前記ベルトは、前記曲げ形状を維持しつつ、前記第一支持領域および前記第二支持領域を前記一方向について相対的に反対方向へ移動させることで、前記曲げ領域の位置を前記一方向に沿って移動させるように動作するよう構成されている搬送装置。
【請求項2】
前記第二支持領域において前記ベルトと前記収容室とを固定する第二固定部材をさらに備える請求項1に記載の搬送装置。
【請求項3】
前記第一固定部材は、前記保持装置と一体に動作するよう前記保持装置にさらに固定されており、
前記長尺部材は、前記一端部と前記第一支持領域に支持される領域との間において、前記第一固定部材に固定されている請求項1または2に記載の搬送装置。
【請求項4】
前記長尺部材を複数備え、各前記長尺部材は、互いに離間した状態で前記ベルトに固定されている請求項1~3のいずれか一項に記載の搬送装置。
【請求項5】
前記長尺部材は、前記ベルトに沿って互いに離間して配置された状態で前記ベルトに固定された複数のベルト固定部材を介して前記ベルトに固定されており、
前記複数のベルト固定部材のうち、前記長尺部材について前記一端部に最も近い位置に配置された第一ベルト固定部材は、前記往復移動の間、常に前記第一支持領域に位置し、
前記複数のベルト固定部材のうち、前記長尺部材について前記一端部から最も離れた位置に配置された第二ベルト固定部材は、前記往復移動の間、常に前記第二支持領域に位置するよう構成されている請求項1~4のいずれか一項に記載の搬送装置。