(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022053051
(43)【公開日】2022-04-05
(54)【発明の名称】ガイディングカテーテル
(51)【国際特許分類】
A61M 25/06 20060101AFI20220329BHJP
A61M 25/00 20060101ALI20220329BHJP
【FI】
A61M25/06 556
A61M25/00 540
A61M25/00 510
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020159639
(22)【出願日】2020-09-24
(71)【出願人】
【識別番号】591245624
【氏名又は名称】株式会社東海メディカルプロダクツ
(74)【代理人】
【識別番号】100129676
【弁理士】
【氏名又は名称】▲高▼荒 新一
(72)【発明者】
【氏名】矢吹 隆明
(72)【発明者】
【氏名】西 絵里子
(72)【発明者】
【氏名】神谷 薫
【テーマコード(参考)】
4C267
【Fターム(参考)】
4C267AA05
4C267BB02
4C267BB03
4C267BB27
4C267CC08
4C267HH30
(57)【要約】
【課題】
ガイディングカテーテルを使用した治療において、別の補助デバイスを使用することなく、ガイドワイヤ等をガイディングカテーテル内に固定することができ、容易にガイディングカテーテル内に挿入されたカテーテルを交換することができるガイディングカテーテルを提供する。
【解決手段】
本発明にかかるガイディングカテーテル100は、内部にルーメン51を有する円筒形チューブ50と、円筒形チューブ50内に設けられたバルーン20と、円筒形チューブ50の手元側に設けられるハブ90と、ハブ90とバルーン20との間に形成され、バルーン拡張流体をバルーンに注入するためのバルーン拡張流体用ルーメン60と、を備えたことを特徴とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部にルーメンを有する円筒形チューブと、
前記円筒形チューブ内に設けられたバルーンと、
前記円筒形チューブの手元側に設けられるハブと、
前記ハブと前記バルーンとの間に形成され、バルーン拡張流体を前記バルーンに注入するためのバルーン拡張流体用ルーメンと、
を備えたことを特徴とするガイディングカテーテル。
【請求項2】
前記バルーンは、少なくとも1.5cm以上の長さであることを特徴とする請求項1に記載のガイディングカテーテル。
【請求項3】
前記バルーンは、湾曲されている部位に設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載のガイディングカテーテル。
【請求項4】
前記バルーンは、湾曲されている部位のルーメン内で外周側に設けられていることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載のガイディングカテーテル。
【請求項5】
前記バルーンの先端は、前記円筒形チューブの外部に設けられており、かつ前記バルーン拡張流体用ルーメンが前記円筒形チューブの外部に設けられていることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載のガイディングカテーテル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガイディングカテーテルに関する。
【背景技術】
【0002】
血管等の管腔内を治療する際に、ガイディングカテーテルが用いられることがある。例えば、PTCA(経皮的冠動脈形成術)では、ガイディングカテーテルを使用して、バルーンカテーテルを治療部位まで誘導したり、ステントを留置する際のガイドとして使用したりしている。
【0003】
治療時において、挿入されるバルーンカテーテルなどの治療用カテーテルが一つであれば問題がないが、マイクロカテーテル、貫通カテーテルやバルーンカテーテルを交換して使用したり、バルーンのサイズが異なる複数のバルーンカテーテルを交換して使用したり等、複数のカテーテルを交換して使用する場合もある。この場合に、ガイディングカテーテルから最初のカテーテルを抜去して、別のカテーテルをガイディングカテーテルに挿入しなければならない。しかしながら、既に挿入してあるカテーテルをガイディングカテーテルから抜去する際に、ガイドワイヤを固定しておく手段がないため、カテーテルを抜去するときにガイドワイヤも引きずってしまい位置がずれてしまう可能性があった。
【0004】
かかる点を解決するものとして、交換を補助するためのデバイスが種々提案されている。例えば、ガイディングカテーテル内に挿入される挿入部分を含み可撓性を有する軸部と、上記挿入部分の一端と接続され、上記ガイディングカテーテル内に挿入された医療用具を上記ガイディングカテーテルに対して固定する固定部と、上記軸部の基端側を覆うように当該軸部に設けられた基端側大径部と、を備える補助デバイスであって、上記補助デバイスの軸方向の長さを変更することなく、上記挿入部分の長さを調整する長さ調整機構を備え、上記長さ調整機構は、上記基端側大径部、又は、上記軸部の一部によって構成されていることを特徴とする補助デバイスが提案されている(特許文献1)。
【0005】
かかる補助デバイスは、以下のようにして使用される。まず、補助デバイスをガイディングカテーテルに挿入し、ガイディングカテーテル内を送出口に向けて前進させる。その後、補助デバイスのバルーンを拡張させることでガイドワイヤをガイディングカテーテルの内周面に固定する。そして、ガイドワイヤを固定した状態で、カテーテルをガイディングカテーテルから抜去する。カテーテルの抜去が終了すると、補助デバイスのバルーンを収縮させて、補助デバイスをガイディングカテーテルから抜去する。このように特許文献1にかかる補助デバイスによれば、血管等に配置されたガイディングカテーテル内にカテーテルと共に挿入されているガイドワイヤを、ガイディングカテーテルに補助デバイスで固定することにより、カテーテルのみをガイディングカテーテルから抜去することが容易となる。
【0006】
しかしながら、前述した補助デバイスは、処置用のカテーテルと別に補助デバイスをガイディングカテーテル内に挿入する必要があり手間である上、ガイディングカテーテルのルーメンに余裕がなくなり、他の処置用カテーテル等の処置が困難になるという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、かかる問題点を解決するためになされたものであり、ガイディングカテーテルを使用した治療において、別の補助デバイスを使用することなく、ガイドワイヤ等をガイディングカテーテル内に固定することができ、容易にガイディングカテーテル内に挿入されたカテーテルを抜去し、かつ交換することができるガイディングカテーテルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上述の目的を達成するために以下の手段を採った。
【0010】
本発明にかかるガイディングカテーテルは、
内部にルーメンを有する円筒形チューブと、
前記円筒形チューブ内に設けられたバルーンと、
円筒形チューブの手元側に設けられるハブと、
前記ハブと前記バルーンとの間に形成され、バルーン拡張流体を前記バルーンに注入するためのバルーン拡張流体用ルーメンと、
を備えたことを特徴とする。
【0011】
本発明にかかるガイディングカテーテルによれば、ガイディングカテーテルのルーメン内に拡張可能なバルーンを備えているので、内部のバルーンを拡張させることによってガイドワイヤをガイディングカテーテル内に固定することができる。すなわち、他の補助具を使用することなく、ガイドワイヤをガイディングカテーテル内に固定することができる。
【0012】
本発明にかかるガイディングカテーテルにおいて、前記バルーンは、少なくとも1.5cm以上の長さであることを特徴とするものであってもよい。
【0013】
バルーンの長さを少なくとも1.5cm以上と長い範囲にバルーンを配置することで、バルーンの拡張具合に応じて、バルーンが存在する範囲においてガイディングカテーテルのルーメンの大きさを小さく調整することできる。そのため、ガイドワイヤ、オーバーザワイヤカテーテル、貫通用カテーテル又はラピッドエクステンションカテーテル等のカテーテル(以下「カテーテル等」という。)を押し込んだ際に、カテーテル等がガイディングカテーテル内で撓んだり、湾曲したりする可能性を低減することができ、プッシャビリティ性を向上させることができる。
【0014】
また、本発明にかかるガイディングカテーテルにおいて、
前記バルーンは、湾曲されている部位に設けられていることを特徴とするものであってもよい。
【0015】
ガイドワイヤを固定する場合にガイディングカテーテル内でのズレを防止するには、湾曲されている部位を固定することが効果的であり、また、カテーテル等のプッシャビリティ性を向上させるためには、湾曲部におけるルーメンの大きさを小さくすることで大きな効果を得ることができる。また、湾曲部にバルーンがあるとカテーテル等の操作性が良くなるという効果をも有する。
【0016】
さらに、本発明にかかるガイディングカテーテルにおいて、前記バルーンは、湾曲されている部位のルーメン内で外周側に設けられていることを特徴とするものであってもよい。
【0017】
湾曲部において、外周側にバルーンを設けることによって、カテーテル等はガイディングカテーテルの内周面側に押し付けられるので、カテーテル等が引っ張られた場合であっても、カテーテル等がバルーンに押し付けられるのではなく、カテーテル等はガイディングカテーテルの内周面側に押し付けられるのでバルーンの収縮による影響を受けず、遊びのないプッシャビリティ性に優れたガイディングカテーテルとすることができる。
【0018】
さらに、本発明にかかるガイディングカテーテルにおいて、前記バルーンの先端は、前記円筒形チューブの外部に設けられており、かつ前記バルーン拡張流体用ルーメンが前記円筒形チューブの外部に設けられていることを特徴とするものであってもよい。
【0019】
かかる構成採用することによって、ガイディングカテーテル内面に凹凸が少なく、挿入時の抵抗を低減することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明にかかるガイディングカテーテルによれば、ガイディングカテーテルを使用した治療において、別の補助デバイスを使用することなく、ガイドワイヤ等をガイディングカテーテル内に固定することができ、容易にガイディングカテーテル内に挿入されたカテーテルを交換することができる。また、ガイディングカテーテルのルーメンの直径を小さくすることができるので、カテーテル等の撓みを抑えることができ、カテーテル等のプッシャビリティ性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】
図1は、実施形態にかかるガイディングカテーテル100の模式図である。
【
図2】
図2は、実施形態にかかるガイディングカテーテル100の別実施形態を示す模式図である。
【
図3】
図3は、実施形態にかかるガイディングカテーテル100にバルーン20を取り付けた状態を示す断面図である。
【
図4】
図4は、実施形態にかかるガイディングカテーテル100にバルーン20を取り付けた状態の別実施形態を示す断面図である。
【
図5】
図5は、実施形態にかかるガイディングカテーテル100の使用方法を示す模式図である。
【
図6】
図6は、実施形態にかかるガイディングカテーテル100の使用方法を示す模式図である。
【
図7】
図7は、実施形態にかかるガイディングカテーテル100の使用方法を示す模式図である。
【
図8】
図8は、実施形態にかかるガイディングカテーテル100の使用方法を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
次に、本発明にかかるガイディングカテーテル100について、図を参照しつつ詳細に説明する。なお、以下に説明する実施の形態及び図面は、本発明の実施形態の一部を例示するものであり、これらの構成に限定する目的に使用されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において適宜変更することができる。
【0023】
(実施形態)
本発明にかかるガイディングカテーテル100は、主として、
図1に示すように、内部にルーメン51を有する円筒形チューブ50と、円筒形チューブ50内に設けられるバルーン20と、円筒形チューブ50の手元側に設けられるハブ90と、を備えている。
【0024】
円筒形チューブ50の素材としては、限定するものではないが、ポリウレタン、ポリアミド、ポリイミド、ポリエチレン、ポリプロピレン、塩化ビニール等が使用される。円筒形チューブ50の外径は、治療に使用される血管や治療方法によって異なるが、概ね1.0~5.0mmである。ルーメン51の内径は、好ましくは0.5~3.0mmである。
【0025】
円筒形チューブ50は、先端又は少なくとも先端から15cm以内の位置から近位側に向かって、ルーメン51内にバルーン20が設けられている。バルーン20の素材は、例えば、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン共重合体、ポリウレタン、ポリアミドエラストマー、ポリイミドエラストマー、シリコーンゴム、ウレタンゴムなどを使用することができる。もちろんこれらの素材に限定されるものではない。バルーン20は、円筒形チューブ50のルーメン51に対して、一定の母線に接合するように取り付けられるとともに、折り畳まれて配置されている。したがって、バルーン20がルーメン51の側面から完全に離れることは防止されている。バルーン20の長さは、少なくとも1.5cm以上、好ましくは、3.0cm以上、より好ましくは、5.0cm以上である。さらに、10.0cm、15.0cm、30.0cmであってもよい。バルーン20内部は、バルーン拡張流体用ルーメン60と連通されており、バルーン拡張流体用ルーメン60の反対側はハブ90と連結されている。
【0026】
バルーン20は、
図2に示すように、円筒形チューブ50のうち湾曲している部位をも含むように設けてもよい。湾曲している部位は、内部に挿入されているガイドワイヤ81やカテーテル80をハブ90側から引いたり、押したりすると、湾曲部のルーメン51内の内周側と外周側に移動することができるので、ルーメン51内で容易にガイドワイヤ81やカテーテル80が移動してしまう。そのため、湾曲している部位でガイドワイヤ81やカテーテル80を固定すれば、手元側でも遊びのない確実な固定を行うことができ、また、湾曲している部位でバルーン20を膨らませてルーメン51の内径を狭くすることで、より効果的にガイドワイヤ81やカテーテル80の軸方向以外の方向への移動を防止することができるため、ガイドワイヤ81やカテーテル80のプッシャビリティ性を向上させることができる。この際に、バルーン20は、
図2に示すように、湾曲されている部位のルーメン51内で外周側に接合部を設けることが好ましい。円筒形チューブ50のルーメン51の内周側にバルーン20を設けると、ガイドワイヤ81やカテーテル80を外周側に向かってバルーン20で押さえ付けることになる。この場合、ガイドワイヤ81やカテーテル80を手元側から引いた場合、バルーン20を凹ませる方向に力が加わるので、バルーン20が縮むことによって、多少、ガイドワイヤ81やカテーテル80の操作に遊びが発生してしまうが、外周側にバルーン20を設けることで、バルーン20を拡張させた場合に、ガイドワイヤ81やカテーテル80を湾曲部の内周側、すなわちルーメン51内壁そのものに押さえ付けることになるので、ガイドワイヤ81やカテーテル80を引いたりした場合に遊びの発生が小さく、ズレが発生する可能性を低減することができる。
【0027】
なお、バルーン20を円筒形チューブ50のルーメン51に取り付ける場合には、
図3に示すように、バルーン20の先端、バルーン20及びバルーン拡張流体用ルーメン60のすべてを円筒形チューブ50のルーメン51の内周面に取り付けてもよいし、
図4に示すように、バルーン20の先端21及びバルーン拡張流体用ルーメン60を円筒形チューブ50の外部に設けた二重管構造にしてもよい。
【0028】
ハブ90は、
図1に示すように、バルーン拡張流体用ルーメン60と連通するサイドポート91を備えており、バルーン拡張流体用ルーメン60を介してバルーン拡張流体をバルーン20に送り込むことによって、バルーン20をルーメン51内で膨らませて、ガイドワイヤ81やカテーテル80をルーメン51内壁に押圧して固定する。バルーン20は、バルーン拡張流体が充填されることで接合されている側と反対側の内壁面に向かって拡張し、バルーン20とルーメン内壁とで挟持してガイドワイヤ81やカテーテル80を固定する。
【0029】
こうして作製されたガイディングカテーテル100は、以下のようにして使用される。使用済みのカテーテル80をガイディングカテーテル100から抜き出し、別のカテーテルに交換する方法について説明する。まず、
図5に示すように、使用済みのカテーテル80の遠位端を、
図6に示すように、ガイディングカテーテル100の内部に設けられたバルーン20よりも手元側に位置するように抜き出す。この際に、ガイドワイヤ81は手元側で抑えて移動しないように保持する。そして、ハブ90から拡張流体を送出し、
図7に示すように、バルーン20を拡張させる。これにより、ガイドワイヤ81を円筒形チューブ50のルーメン51内に固定する。ガイドワイヤ81が確実に固定されたのを確認したら、
図8に示すように、カテーテル80をガイディングカテーテル100から完全に抜き出す。こうして、使用済みのカテーテル80は完全に抜去される。次に、同じガイドワイヤ81を利用して、別の治療用カテーテルをバルーン20の近傍まで挿入する。バルーン20近傍まで到達したら、バルーン20のバルーン拡張流体を排出する。そして、ガイドワイヤ81に沿って別の治療用カテーテルの先端を目的部位まで案内する。こうして治療用カテーテルの交換がなされることになる。
【0030】
このように、本実施形態では、カテーテル80とは別個の補助デバイスをガイディングカテーテル100内に挿入することがないので、迅速かつ容易に別の治療用カテーテルを交換することができる。また、別個の補助デバイスをガイディングカテーテル100内に挿入することがないので、ルーメン51に余裕があり、カテーテル80又は治療用カテーテルの操作を容易にすることができる。
【0031】
また、本発明にかかるガイディングカテーテル100は、ガイドワイヤ81やカテーテルを挿入する際に、バルーン20を拡張することによって、ルーメン51の内径を狭くすることができる。これにより、ガイドワイヤ81やオーバーザワイヤカテーテルの撓みを抑えることができ、ガイドワイヤ81やオーバーザワイヤカテーテルのプッシャビリティ性を向上させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明は、経皮的冠動脈形成術において、バルーンカテーテルを治療部位まで誘導したり、ステントを留置する際のガイドとして使用したりするガイディングカテーテルとして産業上利用することができる。
【符号の説明】
【0033】
100…ガイディングカテーテル、20…バルーン、21…先端、50…円筒形チューブ、51…ルーメン、60…バルーン拡張流体用ルーメン、80…カテーテル、81…ガイドワイヤ、90…ハブ、91…サイドポート