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  • 特開-車両用空調装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022053109
(43)【公開日】2022-04-05
(54)【発明の名称】車両用空調装置
(51)【国際特許分類】
   B60H 3/00 20060101AFI20220329BHJP
【FI】
B60H3/00 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020159731
(22)【出願日】2020-09-24
(71)【出願人】
【識別番号】000141901
【氏名又は名称】株式会社ケーヒン
(74)【代理人】
【識別番号】100077665
【弁理士】
【氏名又は名称】千葉 剛宏
(74)【代理人】
【識別番号】100116676
【弁理士】
【氏名又は名称】宮寺 利幸
(74)【代理人】
【識別番号】100191134
【弁理士】
【氏名又は名称】千馬 隆之
(74)【代理人】
【識別番号】100136548
【弁理士】
【氏名又は名称】仲宗根 康晴
(74)【代理人】
【識別番号】100136641
【弁理士】
【氏名又は名称】坂井 志郎
(74)【代理人】
【識別番号】100180448
【弁理士】
【氏名又は名称】関口 亨祐
(72)【発明者】
【氏名】松山 真大
【テーマコード(参考)】
3L211
【Fターム(参考)】
3L211BA09
3L211DA74
(57)【要約】
【課題】車室内に送風する空気の悪臭を一層抑制することができる車両用空調装置を提供する。
【解決手段】車両用空調装置10は、エバポレータ14と、ヒータコア16と、ヒータコア16が配置された加熱流路30と、加熱流路30を迂回するバイパス流路32と、加熱流路30の空気とバイパス流路32の空気とが混合される混合流路34と、を有する。また車両用空調装置10は、加熱流路30においてヒータコア16の下流から加熱流路30と混合流路34の境界までの範囲に配置された脱臭用の第1光触媒51と、混合流路34に配置された脱臭用の第2光触媒53と、を備える。ヒータコア16を通過した空気は、第1光触媒51及び第2光触媒53を経由して車室内へと送風される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
送風機から送風された空気を冷却する冷却用熱交換器と、
前記空気を加熱する加熱用熱交換器と、
前記冷却用熱交換器の下流において、前記加熱用熱交換器が配置された加熱流路と、
前記冷却用熱交換器の下流において、前記加熱流路を迂回して前記空気が流通可能なバイパス流路と、
前記加熱流路を流通した前記空気及び前記バイパス流路を流通した前記空気が混合される混合部と、を有し、
前記混合部を通過した空気を車室内へ送風する車両用空調装置であって、
前記加熱流路において前記加熱用熱交換器の下流から前記加熱流路と前記混合部の境界までの範囲に配置された脱臭用の第1光触媒と、
前記混合部に配置された脱臭用の第2光触媒と、を備え、
前記加熱用熱交換器を通過した空気は、前記第1光触媒及び前記第2光触媒を経由して前記車室内へと送風される
車両用空調装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気を冷却する冷却用熱交換器と、空気を加熱する加熱用熱交換器とを備える車両用空調装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、車室内に対して悪臭を含む空気の送風を抑制するために、脱臭フィルタを備えた車両用空調装置が開示されている。特許文献1に開示の車両用空調装置は、光触媒を担持した脱臭フィルタ(光触媒フィルタ)と、光触媒フィルタに光を照射する光源とを送風機の上流側に備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-171081号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、車両用空調装置は、送風機の下流側においても悪臭が生じるおそれがある。例えば、冷却用熱交換器の冷却時に発生する凝縮水により、冷却用熱交換器よりも下流側の部品にはカビやバクテリア等が繁殖することがある。そして、カビやバクテリア等に起因して生じる物質が悪臭の原因となる。
【0005】
本発明は、上記の車両用空調装置の技術に関連するものであり、車室内に送風する空気の悪臭を一層抑制することができる車両用空調装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記の目的を達成するために、本発明の一態様は、送付機から送風された空気を冷却する冷却用熱交換器と、前記空気を加熱する加熱用熱交換器と、前記冷却用熱交換器の下流において、前記加熱用熱交換器が配置された加熱流路と、前記冷却用熱交換器の下流において、前記加熱流路を迂回して前記空気が流通可能なバイパス流路と、前記加熱流路を流通した前記空気及び前記バイパス流路を流通した前記空気が混合される混合部と、を有し、前記混合部を通過した空気を車室内へ送風する車両用空調装置であって、前記加熱流路において前記加熱用熱交換器の下流から前記加熱流路と前記混合部の境界までの範囲に配置された脱臭用の第1光触媒と、前記混合部に配置された脱臭用の第2光触媒と、を備え、前記加熱用熱交換器を通過した空気は、前記第1光触媒及び前記第2光触媒を経由して前記車室内へと送風される。
【発明の効果】
【0007】
上記の車両用空調装置は、車室内に供給する空気の悪臭を一層抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の一実施形態に係る車両用空調装置の主要構成箇所を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明について好適な実施形態を挙げ、添付の図面を参照して詳細に説明する。
【0010】
本発明の一実施形態に係る車両用空調装置10は、図1に示すように、空気の流路を内部に有したケース12を備える。また、車両用空調装置10は、空気を冷却するエバポレータ14(冷却用熱交換器)と、空気を加熱するヒータコア16(加熱用熱交換器)と、空気の流通状態を切り替えるドア機構18と、をケース12内に備える。
【0011】
ケース12は、空気の流路を構成する空間を内部に形成するために、矢印A方向(車両の前後方向)且つ矢印B方向(車両の上下方向)に適宜の厚みを持っている。
【0012】
さらに、車両用空調装置10は、図1中のケース12の断面箇所と異なる位置(車幅方向の隣接位置:図1中の紙面奥側)に送風機20を有する。送風機20は、ケース12内に設けられ車幅方向に延在する供給孔22を通して、外部又は車室内から取り込んだ空気を、図1中のケース12の断面箇所まで送風する。送風機20が送風した空気は、エバポレータ14に対向する供給孔22の通過口22aまで流通すると、ケース12の内部形状に基づき矢印A1側(車両の前方)から矢印A2側(車両の後方)に向かうようにガイドされる。
【0013】
エバポレータ14は、送風機20の送風下にエバポレータ14を通過する空気と、ケース12の外部から供給される図示しない冷媒との間で熱交換を行うことで空気を冷却する。エバポレータ14は、ケース12内において供給孔22の連通箇所(エバポレータ14よりも上流の空間)全域を塞ぐように設置される。
【0014】
ドア機構18は、上記のエバポレータ14よりも空気の流通方向下流側に配置されている。またヒータコア16は、ドア機構18にて開閉がなされる一方の箇所(後記の第1分岐口18a)よりも空気の流通方向下流側に配置されている。
【0015】
ドア機構18は、ケース12内を移動可能なエアミックスドア24と、エアミックスドア24を移動させる機構部26とを備える。エアミックスドア24は、大きな曲率半径で湾曲した断面円弧状の板体に構成され、上下方向(矢印B方向)且つ円弧状にスライド自在に設けられる。エアミックスドア24は、エバポレータ14を臨む内周面に沿ってラックギア24aを有する。
【0016】
機構部26は、ケース12に軸支されたピニオンギア26aと、ピニオンギア26aを回転させる図示しないアクチュエータとを有する。アクチュエータは、車両用空調装置10の制御部(不図示)の指令下にピニオンギア26aを回転させる。このピニオンギア26aの回転により、エアミックスドア24は、ヒータコア16に対向する第1分岐口18aと、ヒータコア16に対して非対向となる第2分岐口18bとの間を移動し、適宜の位置に配置される。
【0017】
ケース12内においてエバポレータ14を通過した空気は、上記のエアミックスドア24の位置に基づき、ヒータコア16を通過する経路(図1中で太い実線で示す)と、ヒータコア16を通過しない経路(図1中で太い点線で示す)とを流通する。このため、ケース12内には、エバポレータ14の下流においてヒータコア16が配置された加熱流路30と、エバポレータ14の下流において加熱流路30を迂回して空気が流通可能なバイパス流路32と、加熱流路30を流通した空気及びバイパス流路32を流通した空気が混合される混合流路34(混合部)と、が設けられている。なお、本実施形態に係る車両用空調装置10は、エバポレータ14から加熱流路30のみに空気が流通する第1パターンと、エバポレータ14からバイパス流路32のみに空気が流通する第2パターンと、エバポレータ14から加熱流路30及びバイパス流路32の両方に空気が流通する第3パターンとに切り替え可能である。第1~第3パターンのいずれの空気も、最終的には混合流路34を流通する。
【0018】
加熱流路30は、第1分岐口18aを通って空気が流通するルートである。加熱流路30は、ケース12内において、矢印A2側且つ矢印B2側(下側)に向かう下降流路30aと、下降流路30aの矢印A2側において矢印B1側(上側)に向かう上昇流路30bと、上昇流路30bから矢印A1側に向かう折り返し流路30cとを有する。換言すれば、加熱流路30は、後方向に向かった空気が前方向に折り返すように形成される。ヒータコア16は、下降流路30aにおいて第1分岐口18aの近傍に設けられている。
【0019】
ヒータコア16は、エバポレータ14を通過した後の空気と、ケース12の外部から供給される図示しない冷媒との間で熱交換を行うことで空気を加熱する。ヒータコア16は、例えば、外部の内燃機関の冷媒回路と図示しない配管を介して接続され、冷媒回路の冷媒(温水)をヒータコア16内に循環させる構造を採り得る。
【0020】
一方、バイパス流路32は、第2分岐口18bを通って空気が流通するルートであり、本実施形態ではエバポレータ14から第2分岐口18bまでの範囲を言う。
【0021】
混合流路34は、第2分岐口18bよりも下流側の空間において、加熱流路30の折り返し流路30cが合流する箇所から、空気がケース12を抜けるまでの範囲を言う。具体的には、混合流路34は、第2分岐口18bの隣接箇所に、折り返し流路30cと対向する合流空間34aを有し、合流空間34aは、当該合流空間34aの矢印B1側に設けられた分流空間34bに連通している。そして、ケース12は、分流空間34b(合流空間34aよりも空気の流通方向下流側)に備えた分流機構36によって、合流空間34aを通過した後の空気を、複数の送風口40のうち目的の送風口40に導く。
【0022】
例えば、複数の送風口40としては、車室内における乗員の上半身付近へ空気を送風するベント送風口42、車室内のフロントウィンドウ付近へ空気を送風するデフロスタ送風口44、及び乗員の足元付近へ空気を送風するヒート送風口46があげられる。このため、分流空間34bは、矢印B1側に延在しベント送風口42に連通するベント通路43と、ベント通路43の矢印A1側に隣接するデフロスタ通路45と、矢印A2側且つ矢印B2側に延在するヒート通路47とを有する。
【0023】
また、分流機構36は、各送風口40への選択的な送風を切り替えるため、制御部によって開閉が制御される複数の切替ドアを有する。詳細には、分流機構36は、ベント通路43とデフロスタ通路45の境界に設けられるベント切替ドア38a、デフロスタ切替ドア38bと、ヒート通路47の入口に設けられるヒート切替ドア38cとを含んで構成される。
【0024】
そして、本実施形態に係る車両用空調装置10は、ケース12内のエバポレータ14よりも下流側に、脱臭用の第1フィルタ50及び第2フィルタ52を備えると共に、第1フィルタ50及び第2フィルタ52に光を照射する1つの光源54を備える。
【0025】
第1フィルタ50及び第2フィルタ52は、多数の金属線を編み込んだメッシュ状に形成され、且つ脱臭を行う光触媒を担持して構成される。以下、第1フィルタ50に担持される光触媒を第1光触媒51といい、第2フィルタ52に担持される光触媒を第2光触媒53という。第1光触媒51及び第2光触媒53は、酸化チタンや酸化亜鉛等の金属酸化物の粉末からなる。
【0026】
第1フィルタ50及び第2フィルタ52は、空気の流通方向に沿って適度な厚みを有する。第1フィルタ50及び第2フィルタ52の各外周部は、ケース12内に設けられた固定用壁部12aに対して気密に固定される。固定用壁部12aは、ケース12内の各流路を構成する壁部に設けられる。固定用壁部12aに支持された第1フィルタ50及び第2フィルタ52は、空気の流通方向に直交する平面形状に維持される。
【0027】
第1フィルタ50は、光源54の光が照射された第1光触媒51により、加熱流路30を流通する空気の脱臭、殺菌、除菌等を行う。例えば、第1光触媒51は、空気中の酸素や水分子と酸化還元反応を起こすことで酸化分解力の高い物質を生成し、これらの物質が空気中の臭いの原因物質(例えば、カビやバクテリアから生じた物質)と反応することで脱臭を行う。
【0028】
本実施形態に係る第1フィルタ50は、加熱流路30と混合流路34の境界に配置されている。すなわち、第1フィルタ50の一方面は、加熱流路30の折り返し流路30cを臨み、当該折り返し流路30c全体を覆っている一方で、第1フィルタ50の他方面は、混合流路34の合流空間34aを臨んでいる。加熱流路30と混合流路34の境界の流路断面積は、折り返し流路30cの途中位置の流路断面積よりも小さく設定されており、この境界に設置された第1フィルタ50は、加熱流路30から混合流路34に流出する空気全体を通過させる。
【0029】
なお、第1フィルタ50の配置位置は、加熱流路30と混合流路34の境界に限定されず、ヒータコア16の下流の加熱流路30と混合流路34の境界までの範囲であればよい。例えば、第1フィルタ50は、下降流路30aや上昇流路30bの途中位置に配置されてもよい。
【0030】
第2フィルタ52も、第1フィルタ50と同様の原理で空気の脱臭、殺菌、除菌等を行う。この第2フィルタ52は、混合流路34において合流空間34aと分流空間34bの境界に配置される。なお、第2フィルタ52も、合流空間34aと分流空間34bの境界に限定されず、分流空間34bの途中位置に配置されてもよい。第2フィルタ52の平面面積(混合流路34の流路断面積)は、第1フィルタ50の平面面積よりも大きく形成されている。これにより、加熱流路30を通過した空気(温風)と、バイパス流路32を通過した空気(冷風)との混合空気が、合流空間34aにおいて乱流とならずに第2フィルタ52を安定的に通過することができる。
【0031】
第1フィルタ50及び第2フィルタ52の光源54に対向する面は、その全面が光源54の照射範囲に入るように構成されている。このため、第1フィルタ50の厚み方向に直交する面方向と、第2フィルタ52の厚み方向に直交する面方向との間の角度は、略70°~110°程度の範囲に設定される。
【0032】
光源54は、第1光触媒51及び第2光触媒53を活性化させる光(紫外線等)を照射し、光触媒の酸化分解、殺菌作用を発揮させるものである。この光源54としては、LEDランプ、水銀灯、陰極管(CFL)、ブラックライト、冷陰極管(CCFL)、キセノン外面電極ランプ等があげられる。光源54は、棒状に形成され、合流空間34aを車幅方向(図1中の紙面に直交する方向)に沿って延在している。なお、光源54の形状は、特に限定されず、球状やリング状等に形成されてもよい。
【0033】
また、光源54は、合流空間34aに1つ設けられるだけでなく、複数設けられてもよい。この場合、光源54は、第1光触媒51に向けて光を照射するものと、第2光触媒53に向けて光を照射するものと、が別々であってもよい。光源54の設置位置も特に限定されず、例えば、第1フィルタ50よりも上流側の加熱流路30に一の光源54を備え、第2フィルタ52よりも下流側の混合流路34に他の光源54を備えていてもよい。
【0034】
本実施形態に係る車両用空調装置10は、基本的には以上のように構成されるものであり、以下その動作について説明する。
【0035】
車両用空調装置10は、送風機20を回転駆動することにより、供給孔22を通じてエバポレータ14に空気を送風する。この空気は、エバポレータ14の通過時に、エバポレータ14との熱交換によって冷却される。また車両用空調装置10は、図示しない制御部によりドア機構18のアクチュエータを駆動して、エアミックスドア24を適宜の位置に配置する。
【0036】
第1分岐口18aの開放状態において、エバポレータ14を通過した空気は、下流側の加熱流路30に流通し、ヒータコア16との熱交換によって加熱される。加熱された空気は、加熱流路30の下降流路30a、上昇流路30b、折り返し流路30cを順次通過する。
【0037】
そして、加熱された空気は、折り返し流路30cと混合流路34の合流空間34aの境界に設けられた第1フィルタ50を通過する。車両用空調装置10は、光源54から第1フィルタ50に光を照射することで、第1光触媒51を活性化させている。従って、加熱された空気は、第1フィルタ50を流通する際に脱臭される。
【0038】
また第1フィルタ50を通過した空気は、混合流路34の合流空間34aに移動した後、合流空間34aから下流側の分流空間34bに向かう。この際、空気は、合流空間34aと分流空間34bとの境界に設けられた第2フィルタ52を通過する。車両用空調装置10は、光源54から第2フィルタ52に光を照射することで、第2光触媒53を活性化させている。従って、加熱された空気は、第2フィルタ52を流通する際に脱臭される。第2フィルタ52を通過した後の空気は、切替ドア(ベント切替ドア38a、デフロスタ切替ドア38b、ヒート切替ドア38c)の開放に基づき適宜の通路(ベント通路43、デフロスタ通路45、ヒート通路47)に流通し、同通路に連通する送風口40からケース12の外部に流出し、車室内へと送風される。
【0039】
一方、第2分岐口18bの開放状態において、エバポレータ14を通過した空気は、下流側のバイパス流路32に流通し、バイパス流路32から混合流路34の合流空間34aに移動する。そして、この空気は、光源54から光が照射された第2フィルタ52のみを通過する。これにより、エバポレータ14で冷却された空気は、第2光触媒53により脱臭される。
【0040】
すなわち、加熱流路30においてヒータコア16を通過した空気は、第1光触媒51及び第2光触媒53を経由して車室内へと送風される一方で、エバポレータ14からバイパス流路32を通過した空気は、第2光触媒53のみを経由して車室内へ送風される。これにより、車両用空調装置10は、送風機20よりも下流側において空気の脱臭を効果的に行うことができる。
【0041】
特に、加熱流路30を通過した空気は、バイパス流路32を通過した空気よりも強い悪臭となる可能性があるが、車両用空調装置10は、加熱流路30を通過した空気が、光触媒を2回通過するために、より確実に脱臭することができる。また、光触媒は、温度の上昇に伴い活性化が進むことで、より強い脱臭性能を発揮することが可能である。そのため、第1フィルタ50は、ヒータコア16で加熱された空気により一層活性化して、空気の脱臭を行うことができる。
【0042】
なお、本発明は、上記の実施形態に限定されず、発明の要旨に沿って種々の改変が可能である。例えば、ケース12内の加熱流路30、バイパス流路32、混合流路34の形状は、上記実施形態に限定されず、任意に設計してよい。
【0043】
上記の実施形態から把握し得る技術的思想及び効果について、以下に記載する。
【0044】
本発明の一態様は、送風機20から送風された空気を冷却する冷却用熱交換器(エバポレータ14)と、空気を加熱する加熱用熱交換器(ヒータコア16)と、冷却用熱交換器の下流において、加熱用熱交換器が配置された加熱流路30と、冷却用熱交換器の下流において、加熱流路30を迂回して空気が流通可能なバイパス流路32と、加熱流路30を流通した空気及びバイパス流路32を流通した空気が混合される混合部(混合流路34)と、を有し、混合部を通過した空気を車室内へ送風する車両用空調装置10であって、加熱流路30において加熱用熱交換器の下流から加熱流路30と混合部の境界までの範囲に配置された脱臭用の第1光触媒51と、混合部に配置された脱臭用の第2光触媒53と、を備え、加熱用熱交換器を通過した空気は、第1光触媒51及び第2光触媒53を経由して車室内へと送風される。
【0045】
上記によれば、車両用空調装置10は、エバポレータ14よりも下流側に設けた第1光触媒51及び第2光触媒53により、車室内に送風する空気の悪臭を一層抑制することができる。すなわち、熱交換器(エバポレータ14、ヒータコア16)は、微細なフィンの集合体であるため、臭いの原因(カビやバクテリア等)が付着(繁殖)し易いが、第1光触媒51及び第2光触媒53は、この熱交換器に起因する悪臭を良好に脱臭することができる。特に、エバポレータ14から加熱流路30を流通する空気は、第1光触媒51と第2光触媒53の両方を通過するので、より効果的に脱臭される。
【符号の説明】
【0046】
10…車両用空調装置 14…エバポレータ(冷却用熱交換器)
16…ヒータコア(加熱用熱交換器) 20…送風機
30…加熱流路 32…バイパス流路
34…混合流路(混合部) 50…第1フィルタ
51…第1光触媒 52…第2フィルタ
53…第2光触媒 54…光源
図1