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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022053119
(43)【公開日】2022-04-05
(54)【発明の名称】フェイスシールド
(51)【国際特許分類】
   A41D 13/11 20060101AFI20220329BHJP
   A41D 13/12 20060101ALI20220329BHJP
   A62B 18/02 20060101ALI20220329BHJP
【FI】
A41D13/11 L
A41D13/11 Z
A41D13/12 118
A62B18/02 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020159752
(22)【出願日】2020-09-24
(71)【出願人】
【識別番号】504002300
【氏名又は名称】信越ファインテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112335
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 英介
(74)【代理人】
【識別番号】100101144
【弁理士】
【氏名又は名称】神田 正義
(74)【代理人】
【識別番号】100101694
【弁理士】
【氏名又は名称】宮尾 明茂
(74)【代理人】
【識別番号】100124774
【弁理士】
【氏名又は名称】馬場 信幸
(72)【発明者】
【氏名】小濱 芳郎
(72)【発明者】
【氏名】西川 倫
【テーマコード(参考)】
2E185
3B011
【Fターム(参考)】
2E185AA06
2E185BA08
2E185BA13
2E185CC45
3B011AA00
3B011AB09
3B011AC04
3B011AC08
3B011AC14
3B011AC18
3B011AC22
(57)【要約】
【課題】 眩しさで装着者にグレアが生じたり、装着者の視認に支障を来すのを防ぐことができ、しかも、樹脂シートの光透過性を確保できるフェイスシールドを提供する。
【解決手段】 フェイスシールド用バンド10に、光透過性の樹脂フィルム40を取り付けたフェイスシールドであり、フェイスシールド用バンド10を、装着者1の頭部2に巻き付けられる第一のバンド20と、第一のバンド20に取り付けられて装着者1の額3側に湾曲して位置する略円弧形の第二のバンド30とから形成し、第一、第二のバンド20・30間に空隙31を形成し、第一のバンド20の一部を左右一対の支持規制片23に形成し、一対の支持規制片23を曲げ形成して第二のバンド30に接触させることにより、第二のバンド30の半径Rを80mm以上とし、樹脂フィルム40を、第二のバンド30に取り付けて装着者1の少なくとも顔面4を被覆する。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フェイスシールド用バンドに、光透過性の樹脂シートを取り付けたフェイスシールドであって、
フェイスシールド用バンドは、装着者の頭部に巻き付けられる第一のバンドと、この第一のバンドに取り付けられて装着者の額側に位置する第二のバンドとを含み、第一、第二のバンドの間に空隙を形成し、第一のバンドの一部を複数の支持規制片に形成し、この複数の支持規制片を曲げ形成して第二のバンドに接触させることにより、第二のバンドの半径Rを80以上とし、
樹脂シートは、フェイスシールド用バンドの第二のバンドに取り付けられて装着者の少なくとも顔面を覆うことを特徴とするフェイスシールド。
【請求項2】
第一のバンドの一部を切り欠いて複数の支持規制片を形成し、この複数の支持規制片を平面略三角形に折り曲げ形成して湾曲した第二のバンドの両端部付近に接触させる請求項1記載のフェイスシールド。
【請求項3】
第一のバンドの両側部を複数の支持規制片に形成し、この複数の支持規制片を平面略U字形に折り曲げ形成して湾曲した第二のバンドの両端部付近に接触させる請求項1記載のフェイスシールド。
【請求項4】
第一のバンドに、第二のバンドの両端部を支持具を介し揺動可能に支持させ、第一のバンドの一部を切り欠いて複数のガイド溝孔を形成し、第二のバンドの両端部に、第一のバンドの複数のガイド溝孔に嵌め通されるガイド具を取り付けた請求項1、2、又は3記載のフェイスシールド。
【請求項5】
第二のバンドに粘着層を取付具により取り付け、粘着層の表面に樹脂シートを着脱自在に粘着するようにした請求項1ないし4のいずれかに記載のフェイスシールド。
【請求項6】
樹脂シートを2軸延伸ポリプロピレン樹脂シートとした請求項1ないし5のいずれかに記載のフェイスシールド。
【請求項7】
樹脂シートの厚さを60μm以上とした請求項1ないし6のいずれかに記載のフェイスシールド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療、介護、接客等の現場で使用されるフェイスシールドに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、医療現場や介護現場等において、湿性生体物質の飛沫が飛散する場合に、飛沫に含まれる病原体による曝露から眼部、鼻腔、口腔粘膜を防護するフェイスシールドが用いられている(特許文献1、2、3、4参照)。また、製造現場においても、防塵飛沫対策のため、フェイスシールドが利用されている。
【0003】
この種のフェイスシールドは、図示しないが、可撓性を有する横長の装飾板と、この装飾板の裏面に接着されるスポンジと、装着者の頭部に巻かれて装着者の額にスポンジを間接的に圧接する緊締ゴムバンドとを備え、装飾板の表面に、装着者の顔面を覆う透明の樹脂フィルムが接着されている。緊締ゴムバンドは、幅広の帯形に形成され、装飾板の左右両側の挿通孔に順次挿通されてスポンジを装飾板との間に挟持し、装着者の頭部の前方から後方に直接巻かれて両端部が緊締されることにより、装着者の額方向に向けてスポンジを圧接する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実用新案登録第3224635号公報
【特許文献2】特開2019‐85669号公報
【特許文献3】特開2014‐152432号公報
【特許文献4】特開2018‐158119号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来におけるフェイスシールドは、以上のように構成されているが、例えば部屋の天井に設置された照明の光線が装着者の頭上から入射して樹脂フィルムで反射すると、眩しさにより装着者にグレア(不快感のある眩しさ)が生じ、装着者の目視に支障を来すという問題が生じる。この問題を解消する方法としては、樹脂フィルムにエンボス加工等の防眩加工を施したり、防眩樹脂フィルムの採用があげられる。しかしながら、この方法の場合、樹脂フィルムの透明性が低下するので、装着者にグレアが生じるのを軽減することはできても、装着者の視認に支障を来すという問題を解消することは困難である。
【0006】
本発明は上記に鑑みなされたもので、眩しさにより装着者にグレアが生じたり、装着者の視認に支障を来すのを防ぐことができ、しかも、樹脂シートの光透過性を確保することのできるフェイスシールドを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明においては上記課題を解決するため、フェイスシールド用バンドに、光透過性の樹脂シートを取り付けたものであって、
フェイスシールド用バンドは、装着者の頭部に巻き付けられる第一のバンドと、この第一のバンドに取り付けられて装着者の額側に位置する第二のバンドとを含み、第一、第二のバンドの間に空隙を形成し、第一のバンドの一部を複数の支持規制片に形成し、この複数の支持規制片を曲げ形成して第二のバンドに接触させることにより、第二のバンドの半径Rを80以上とし、
樹脂シートは、フェイスシールド用バンドの第二のバンドに取り付けられて装着者の少なくとも顔面を覆うことを特徴としている。
【0008】
なお、第一のバンドの一部を切り欠いて複数の支持規制片を形成し、この複数の支持規制片を平面略三角形に折り曲げ形成して湾曲した第二のバンドの両端部付近に接触させることができる。
また、第一のバンドの両側部を複数の支持規制片に形成し、この複数の支持規制片を平面略U字形に折り曲げ形成して湾曲した第二のバンドの両端部付近に接触させることができる。
【0009】
また、第一のバンドに、第二のバンドの両端部を支持具を介し揺動可能に支持させ、第一のバンドの一部を切り欠いて複数のガイド溝孔を形成し、第二のバンドの両端部に、第一のバンドの複数のガイド溝孔に嵌め通されるガイド具を取り付けることもできる。
また、第二のバンドに粘着層を取付具により取り付け、粘着層の表面に樹脂シートを着脱自在に粘着することが可能である。
【0010】
また、樹脂シートを2軸延伸ポリプロピレン樹脂シートとすることが可能である。
さらに、樹脂シートの厚さを60μm以上とすることが可能である。
【0011】
ここで、特許請求の範囲におけるフェイスシールド用バンドの第一、第二のバンドには、必要に応じ、バネ性等を付与することができる。第二のバンドは、半径Rが80以上であれば、半円弧形に湾曲していても良いし、一部曲がっていても、全体としてフラットと認められる略フラットでも良い。樹脂シートは、縦長でも良いし、横長でも良く、防曇性を付与することができる。
【0012】
樹脂シートには、樹脂シートの他、樹脂フィルムが含まれる。樹脂シートは、タック性を有する各種のシートやゴム素材等により取り付けることができる。また、粘着層としては、シリコーンシート等からなるシリコーン層が好ましい。平面略U字形には、少なくとも平面U字形の他、類似の形が含まれ、両側辺の長さが同じでも良いし、相違しても良い。さらに、本発明に係るフェイスシールドは、医療、介護、家庭、散歩、教育現場、小売店、歯科、実験、製造、接客、剪定、農作業、料理等の現場で使用することが可能である。
【0013】
本発明によれば、第二のバンドの半径Rを80以上に設定して弧を大きくし、光線の反射率を変化させてフェイスシールドの装着者にグレアが生じるのを抑制するので、装着者の目の負担を軽減することができる。また、樹脂シートに防眩加工を施したり、防眩樹脂シートを採用する必要が少ない。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、眩しさにより装着者にグレアが生じたり、装着者の視認に支障を来すのを防ぐことができるという効果がある。また、装着者の少なくとも顔面を覆う樹脂シートの光透過性を確保することができる。
【0015】
請求項2記載の発明によれば、第一のバンドに別体の支持規制片を取り付けるのではなく、第一のバンドの一部を切り欠いて複数の支持規制片とするので、第一のバンドの構成の簡素化や製造コストの削減を図ることができる。
請求項3記載の発明によれば、第一のバンドの両側部を複数の支持規制片とするので、第一のバンドの一部をU字形等に複数切り欠く必要がなく、その結果、第一のバンドの製造作業が容易になる。
【0016】
請求項4記載の発明によれば、第二のバンドを複数のガイド溝孔を用いて前部方向から後部方向に揺動させれば、例え装着者が下方を向いても、樹脂シートが装着者の首部や胸部に接触することが少ないので、普段の作業効率と同様の作業効率で作業することができる。
【0017】
請求項5記載の発明によれば、第二のバンドに粘着層が取り付けられるので、樹脂シートの材質や光透過性にかかわらず、樹脂シートを適切に粘着することができる。また、粘着剤無しの汎用の樹脂シートをも適切に粘着することが可能となる。また、粘着層に樹脂シートの任意の箇所を微調整しながら粘着することができるので、装着者の眼鏡やマスク等の有無にかかわらず、装着者の顔面を有効に保護することが可能となる。また、粘着層を専用の取付具により取り付けるので、粘着層の脱落を招くことが少ない。また、取付具を抜いて第二のバンドから粘着層を取り外せば、粘着層を他の第二のバンドに取り付けて再利用することができる。
【0018】
請求項6記載の発明によれば、樹脂シートとして、2軸延伸ポリプロピレン樹脂シートを用いるので、優れた印刷性、光沢性、衝撃性、耐水性、耐熱性、透明性、防湿性を有する樹脂シートを得ることが可能となる。また、環境に良い樹脂シートを提供することもできる。
請求項7記載の発明によれば、樹脂シートの厚さを60μm以上とするので、樹脂シートに強度や剛性を付与し、樹脂シートに装着者の少なくとも顔面を有効に保護させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明に係るフェイスシールドの実施形態における使用状態を模式的に示す斜視説明図である。
図2】本発明に係るフェイスシールドの実施形態を模式的に示す斜視説明図である。
図3】本発明に係るフェイスシールドの実施形態におけるフェイスシールド用バンドの粘着層に樹脂フィルムを粘着する前の状態を模式的に示す斜視説明図である。
図4】本発明に係るフェイスシールドの実施形態における第二のバンドが上方に引き上げられた状態を模式的に示す側面説明図である。
図5】本発明に係るフェイスシールドの実施形態を模式的に示す平面説明図である。
図6】本発明に係るフェイスシールドの実施形態における第一のバンドを示す正面説明図である。
図7】本発明に係るフェイスシールドの実施形態における第二のバンドを示す正面説明図である。
図8】本発明に係るフェイスシールドの第2の実施形態を模式的に示す平面説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照して本発明の好ましい実施の形態を説明すると、本実施形態におけるフェイスシールドは、図1ないし図7に示すように、フェイスシールド用バンド10に、光透過性の樹脂フィルム40を取り付けたシールドであり、フェイスシールド用バンド10を形成する第二のバンド30を曲げてその半径Rを80mm以上とすることにより、眩しさで装着者1にグレアが生じるのを抑制し、国連サミットで採択されたSDGs(持続可能な開発目標)の達成に貢献する。
【0021】
フェイスシールド用バンド10は、装着者1の頭部2に略リング形に巻き付けられる第一のバンド20と、この第一のバンド20に取り付けられて装着者1の額3側に湾曲して位置する平面略円弧形の第二のバンド30とを備え、この第二のバンド30に、装着者1の顔面4を覆う樹脂フィルム40が取り付けられる。
【0022】
フェイスシールド用バンド10の第一、第二のバンド20・30は、例えば射出成形法、プレス成形法、樹脂フィルムの打ち抜き加工法等により製造される。これら第一、第二のバンド20・30の材料としては、特に限定されるものではないが、例えば耐久性等に優れるポリプロピレン(PP)樹脂、ポリエステル(PEs)樹脂、ナイロン(PA)樹脂、ポリスチレン(PS)樹脂、ABS樹脂、ポリカーボネート(PC)樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂、又はこれらの組み合わせ等があげられる。これらの中では、製造時にクラックが生じにくいポリプロピレン樹脂が最適である。
【0023】
第一のバンド20は、図6に示すように、四隅部が面取りされた細長い帯形に形成され、その長手方向の中央両端部に複数のサイズ調整孔21が横一列に並べて穿孔されて各サイズ調整孔21が丸孔に形成されており、両端部の選択された複数のサイズ調整孔21が重ねられ、接続用の取付ピン22に着脱自在に嵌挿されることにより、装着者1の頭部2に嵌合される。取付ピン22は、例えば所定の樹脂(ポリスチレン樹脂等)含有の成形材料により略画鋲形に成形され、円板部から伸びる軸部の先端部が茸形に膨出形成されており、軸部がサイズ調整孔21を貫通する。
【0024】
第一のバンド20の中央部付近は、図2ないし図6に示すように、細長い横U字形に複数打ち抜かれることにより、隣接する一対の支持規制片23が起伏可能に形成され、各支持規制片23が細長い紙片形に形成されてその先端部に取付ピン22用の固定孔24が円形に穿孔されており、支持規制片23が隣接する他の支持規制片23から離隔するよう折り返して曲げられる。このような支持規制片23は、やや湾曲した平面略三角形に折り曲げ形成され、先端部が折り返されて第一のバンド20に取付ピン22で着脱自在に固定されることにより、第二のバンド30方向に突出してその両端部付近に斜辺部が接触し、第二のバンド30を大きく広く湾曲させてその円弧形状を安定させるよう機能する。
【0025】
第一のバンド20におけるサイズ調整孔21と支持規制片23の末端部との間には図6に示すように、第二のバンド30用のガイド溝孔25がそれぞれ円弧形に切り欠かれ、各ガイド溝孔25がサイズ調整孔21方向から支持規制片23の末端部方向に上昇しながら湾曲する。各ガイド溝孔25の近傍には、第二のバンド30用の支持孔26が円形に穿孔される。
【0026】
第二のバンド30は、図2図3図5図7に示すように、四隅部が面取りされた帯形に形成され、第一のバンド20よりもやや短く形成されており、第一のバンド20と対向してその表面との間に平面略三日月形の空隙31を形成する。この第二のバンド30は、長手方向の両端部下方に丸い支持孔32が穿孔され、この支持孔32を貫通した略画鋲形の支持ピン33が第一のバンド20の支持孔26に着脱自在に嵌挿されることにより、第一のバンド20に揺動可能に支持される。支持ピン33は、取付ピン22同様、例えば所定の樹脂(ポリスチレン樹脂等)含有の成形材料により成形され、円板部から伸びる軸部の先端部が茸形に膨出形成されており、軸部が支持孔32・26を貫通する。
【0027】
第二のバンド30の長手方向の両端部上方には、支持孔32に隣接するガイド孔34が円形に穿孔され、このガイド孔34を貫通した略画鋲形のガイドピン35が第一のバンド20のガイド溝孔25に嵌挿されることにより、第二のバンド30がガイド溝孔25に案内されながら前部方向から後部方向に0°~180°、例えば45°、60°、80°、又は90°円心揺動する(図4の矢印参照)。ガイドピン35は、取付ピン22や支持ピン33同様、例えば所定の樹脂(ポリスチレン樹脂等)含有の成形材料により成形され、円板部から伸びる軸部の先端部が茸形に膨出形成されており、軸部がガイド溝孔25を貫通する。
【0028】
第二のバンド30の表面中央部付近には図1ないし図4に示すように、交換可能な粘着層36が略画鋲形の取付ピン22により固定され、この粘着層36の粘着性の表面に樹脂フィルム40が粘着される。この粘着層36は、タック性(粘着性)の薄いゴム素材等からなり、横長のシート片に加工されて樹脂フィルム40の上部や上端部等に着脱自在に粘着する。
【0029】
粘着層36のゴム素材としては、例えば低硬度シリコーン、中硬度シリコーン、スチレン系熱可塑性エラストマー、オレフィン系エラストマー、合成ゴム等が使用されるが、強いタック性や粘着性を有するシリコーンシートが好ましく、低硬度シリコーンシートが最適である。ゴム素材が一般的な中硬度を有するシリコーン等の場合、コストや量産性の観点から、50°前後の硬度が良い。ゴム素材の表面は、必要に応じ、鏡面加工され、保護用の離型樹脂フィルムが剥離可能に粘着される。
【0030】
ゴム素材の具体例としては、サカセ化学工業株式会社や巴工業株式会社が製造・販売しているタックシートがあげられる。低硬度シリコーンの具体例としては、低硬度放熱シリコーンゴムシート(両面粘着)[信越化学工業株式会社製:製品名 TC‐50TXS]、超低硬度シリコーン(MSG)[サンシンエンタープライズ株式会社製:製品名]、MSG‐05[木野機工株式会社製:製品名]等が該当する。
【0031】
樹脂フィルム40は、図1図2に示すように、所定の大きさ(例えば、315mm×315mm、360mm×310mm、240mm×240mm等)を有する平面矩形の透明に形成され、第二のバンド30の粘着層36表面に着脱自在に粘着されることにより、平面弓なりに湾曲した状態で装着者1の顔面4、具体的には少なくとも額3から顎までの領域内に隙間を介し対向して被覆保護するよう機能する。
【0032】
係る樹脂フィルム40としては、特に限定されるものではないが、例えば2軸延伸ポリプロピレン(OPP)樹脂フィルム、無軸延伸ポリプロピレン(CPP)樹脂フィルム、ポリ塩化ビニル(PVC)樹脂フィルム、非晶性ポリエチレンテレフタレート(A‐PET)樹脂フィルム、ポリアリーレンエーテルケトン(PAEK)樹脂フィルム等があげられる。これらの中では、2軸延伸ポリプロピレン樹脂フィルムと無軸延伸ポリプロピレン樹脂フィルムが好ましく、印刷性、光沢性、衝撃性、耐水性、耐熱性、透明性、防湿性に優れ、環境に良い安価な2軸延伸ポリプロピレン樹脂フィルムが最適である。
【0033】
樹脂フィルム40の表裏両面のうち、少なくとも装着者1の顔面4に対向する裏面(片面)には、装着者1の吐息で曇ることのないよう防曇性や親水性が選択的に付与される。この場合には、樹脂フィルム40の成形時に成形材料に防曇フィラーが添加されたり、又は樹脂フィルム40に防曇剤や防曇フィルム等がコーティングされる。また、樹脂フィルム40の厚さは、40μm以上、好ましくは50μm以上150μm以下、より好ましくは60μm以上130μm以下、さらに好ましくは60μm以上100μm以下が良い。
【0034】
樹脂フィルム40は、生分解性タイプやバイオ系等の種類があるが、特に問うものではない。樹脂フィルム40が2軸延伸ポリプロピレン樹脂フィルムの場合、この2軸延伸ポリプロピレン樹脂フィルムの具体例として、信越ポリマー株式会社製、サン・トックス株式会社製、フタムラ化学株式会社製、三井化学東セロ株式会社製等が該当する。
【0035】
さて、第二のバンド30は第一のバンド20に大きく広く緩く弧を描きながら支持されるが、第二のバンド30の半径Rは、図1図5等に示すように、従来値よりも大きい80mm以上、好ましくは80mm以上90mm以下、より好ましくは83mm以上89mm以下、さらに好ましくは84mm以上88mm以下が良い。これは、第二のバンド30の半径Rが80mm未満の場合、例えば従来の65mmや70mm程度の値の場合には、外部からの光線が樹脂フィルム40に反射し、眩しさにより装着者1にグレアが生じるからである。
【0036】
第二のバンド30の半径Rは、実験結果からすると、フェイスシールドの装着者1が子供の場合には、84mm以上85mm以下、好ましくは84.5mm程度が良い。これに対し、フェイスシールドの装着者1が成人の場合には、87mm以上88mm以下、好ましくは87.5mm程度が良い。
【0037】
上記構成において、フェイスシールドを組み立てて使用する場合には、先ず、用意した第一のバンド20の一対の支持規制片23を引き起こし、各支持規制片23を平面略三角形に折り曲げ形成し、この支持規制片23の先端部を第一のバンド20に取付ピン22で固定することにより、支持規制片23を第一のバンド20の表面側に突出させる。また、第二のバンド30の表面中央部付近に、粘着層36の両端部を脱落防止用の一対の取付ピン22により固定して粘着層36を積層する。
【0038】
次いで、第一、第二のバンド20・30の支持孔26・32を重ねてこれらに支持ピン33を取り付けるとともに、第二のバンド30のガイド孔34と第一のバンド20のガイド溝孔25とを重ねてこれらにガイドピン35を嵌挿し、第一のバンド20に第二のバンド30を揺動可能に支持させ、第一のバンド20における一対の支持規制片23を第二のバンド30の内面両端部付近に接触させる。
【0039】
こうして第一のバンド20に第二のバンド30を揺動可能に支持させたら、第二のバンド30の粘着層36に樹脂フィルム40の上部を着脱自在に粘着し、第一のバンド20を湾曲してその両端部の選択した複数のサイズ調整孔21を重ねてこれらに取付ピン22を嵌挿し、装着者1の頭部2に、リング形に湾曲した第一のバンド20を嵌合する。
【0040】
この際、第二のバンド30の表面に粘着層36が積層されているので、樹脂フィルム40の材質や透明性にかかわらず、樹脂フィルム40を適切に粘着することができる。また、粘着剤無しの樹脂フィルム40をも適切に粘着することができる。また、粘着層36に樹脂フィルム40の任意の箇所を上下左右に微調整しながら粘着することができるので、装着者1の眼鏡やマスクの有無にかかわらず、装着者1の顔面4を有効に保護することができる。
【0041】
そしてその後、装着者1の頭部2に対する第一のバンド20の嵌合具合を検討し、必要に応じ、第一のバンド20における複数のサイズ調整孔21を変更して取付ピン22を再度嵌挿すれば、フェイスシールドを組み立てて使用することができる。
【0042】
係るフェイスシールドにより、装着者1は、顔面4を病原体等から保護しながら作業等に従事することができる。この際、可動式の第二のバンド30を上方向に所定の角度で引き上げれば、例え装着者1が下方を向いても、樹脂フィルム40の下部が装着者1の首部や胸部に接触することがないので、普段の作業効率と同様の作業効率で作業したり、フェイスシールドを外すことなく安心して飲食することができる。また、樹脂フィルム40の湾曲により、樹脂フィルム40の強度が増大するので、樹脂フィルム40が風等に煽られて変形し、フェイスシールドの保護機能の低下を招くことが少ない。
【0043】
作業等が終了したら、フェイスシールド用バンド10における第二のバンド30の粘着層36から樹脂フィルム40を剥離して廃棄すれば良い。樹脂フィルム40を廃棄した後、再びフェイスシールド用バンド10を利用する場合には、第二のバンド30の粘着層36に新たに用意した樹脂フィルム40の上部を着脱自在に粘着した後、第一のバンド20や樹脂フィルム40の位置を微調整すれば、フェイスシールド用バンド10を再利用することができる。
【0044】
上記構成によれば、第二のバンド30の半径Rを80mm以上に設定して円弧を外側に広く拡大し、映り込み等を防止して装着者1にグレアが生じるのを防ぐので、装着者1の目に緊張と疲労が生じるのを軽減することができ、装着者1の視認に支障を来すという問題を解消することができる。また、樹脂フィルム40に防眩加工を施したり、防眩樹脂フィルム40を採用する必要がないので、樹脂フィルム40の透明性の低下を招くことがない。
【0045】
また、粘着層36が粘着作用を発揮するので、樹脂フィルム40の周縁部やその近傍等に専用の粘着層36を帯形に塗布して積層する必要がなく、樹脂フィルム40の製造の円滑化、迅速化、容易化、量産化が大いに期待できる。また、第一、第二のバンド20・30間の空隙31が空気用の流通路を区画し、空気の流通量が増大するので、フェイスシールド使用時における装着者1の息苦しさを解消することができる。また、樹脂フィルム40を使い捨てることができるので、汚染した樹脂フィルム40を消毒液で殺菌して使用する必要が全くなく、衛生的な問題を解消することが可能となる。
【0046】
また、粘着層36が低硬度シリコーンの場合、この低硬度シリコーンに塵埃が付着して汚れたとき、低硬度シリコーンの塵埃を水やアルコールで拭き取れば、低硬度シリコーンのタック性が回復するので、粘着層36の長期に亘る繰り返し使用が大いに期待できる。また、粘着層36が低硬度シリコーンの場合、低硬度シリコーンの表面に鏡面加工を施せば、樹脂フィルム40用の密着性の向上が大いに期待できる。また、樹脂フィルム40が安価な2軸延伸ポリプロピレン樹脂フィルムの場合、ランニングコストを低減し、生産性を大幅に向上させることが可能となる。さらに、多数の樹脂フィルム40を畳んだり、巻いたりして一度に輸送することができるので、収納や輸送の便宜を図ることが可能になる。
【0047】
次に、図8は本発明の第2の実施の形態を示すもので、この場合には、第一のバンド20の両側部を左右一対の支持規制片23に形成し、各支持規制片23を外側に変形した平面略U字形に折り曲げ形成して円弧形に湾曲した第二のバンド30の端部内面付近に接触させ、第二のバンド30を大きく広く湾曲させてその半径Rを80mm以上とするようにしている。
【0048】
第一のバンド20と各支持規制片23の短い内側側辺部とには、平面略U字形の支持規制片23の形を維持する取付ピン22が嵌挿される。また、第一のバンド20の両側部付近には、第二のバンド30用のガイド溝孔25がそれぞれ円弧形に切り欠かれ、各ガイド溝孔25の近傍には、第二のバンド30用の支持孔26が円形に穿孔される。その他の部分については、上記実施形態と同様であるので説明を省略する。
【0049】
本実施形態においても上記実施形態と同様の作用効果が期待でき、しかも、支持規制片23を内側ではなく、外側に平面略U字形に折り曲げ形成するので、第二のバンド30の円弧を拡大することができる。また、第一のバンド20の中央部付近を細長い横U字形に複数打ち抜く必要がないので、第一のバンド20の製造作業が容易になるのは明らかである。
【0050】
なお、上記実施形態では第一のバンド20を単に示したが、第一のバンド20の裏面(内面)にエンボス加工等を施し、装着者1の頭部2との接触面積を減らして衛生化に資するようにしても良い。また、上記実施形態では取付ピン22、支持ピン33、ガイドピン35を略画鋲形としたが、何らこれに限定されるものではない。例えば、相互に嵌合する一対のボタン形の取付具、支持具、ガイド具等を用いても良い。
【0051】
また、上記実施形態では第二のバンド30の表面に粘着層36を取付ピン22により交換可能に固定したが、交換の必要性等がなければ、粘着剤を塗布して乾燥硬化させることにより、粘着層36を積層形成し、取付ピン22を省略しても良い。この場合の粘着剤としては、天然ゴム系、イソプレンゴムやブタジエンゴム・スチレン・ブタジエンゴム・クロロプレンゴム・ニトリルゴム・ブチルゴム等の合成ゴム系、アクリル系の粘着剤が用いられる。粘着剤がアクリル系の場合には、弱粘着性、耐久性、耐熱性、耐湿性、耐候性、耐老化性等に優れ、粘着力のレンジが広く、しかも、紫外線劣化の減少が期待できる。
【0052】
また、上記実施形態の樹脂フィルム40には、透明性に支障を来さなければ、上記樹脂やフィラーの他、酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、可塑剤、滑剤、難燃剤、帯電防止剤、耐熱向上剤等を必要に応じて添加しても良い。さらに、フェイスシールドの組み立て順序は、適宜変更することができる。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明に係るフェイスシールドは、医療、介護、家庭、小売業、歯科、製造、接客、剪定、農作業等の分野で使用される。
【符号の説明】
【0054】
1 装着者
2 頭部
3 額
4 顔面
10 フェイスシールド用バンド
20 第一のバンド
22 取付ピン(取付具)
23 支持規制片
25 ガイド溝孔
26 支持孔
30 第二のバンド
31 空隙
32 支持孔
33 支持ピン(支持具)
35 ガイドピン(ガイド具)
36 粘着層
40 樹脂フィルム(樹脂シート)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8