(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022053129
(43)【公開日】2022-04-05
(54)【発明の名称】樹脂複合体製造方法および樹脂複合体製造装置
(51)【国際特許分類】
B29C 43/34 20060101AFI20220329BHJP
B32B 5/24 20060101ALI20220329BHJP
B29C 43/36 20060101ALI20220329BHJP
B29C 43/20 20060101ALI20220329BHJP
B29C 70/16 20060101ALI20220329BHJP
B29C 70/42 20060101ALI20220329BHJP
B29K 105/08 20060101ALN20220329BHJP
B29L 9/00 20060101ALN20220329BHJP
【FI】
B29C43/34
B32B5/24 101
B29C43/36
B29C43/20
B29C70/16
B29C70/42
B29K105:08
B29L9:00
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020159767
(22)【出願日】2020-09-24
(71)【出願人】
【識別番号】000002440
【氏名又は名称】積水化成品工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002734
【氏名又は名称】特許業務法人藤本パートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】福永 洋一郎
(72)【発明者】
【氏名】平塚 翔一
(72)【発明者】
【氏名】大槻 真基
【テーマコード(参考)】
4F100
4F202
4F204
4F205
【Fターム(参考)】
4F100AD11A
4F100AD11C
4F100AG00A
4F100AG00C
4F100AK01A
4F100AK01B
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4F100JL01
4F202AD08
4F202AD16
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4F202AJ12
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4F205HB01
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4F205HC04
4F205HK03
4F205HK04
4F205HK31
4F205HT12
4F205HT26
(57)【要約】
【課題】外観美麗な樹脂複合体を製造すること。
【解決手段】
樹脂複合体の形状に対応した成形空間を有する成形型と、被成形物が収容されている前記成形型を熱プレスするプレス機本体とを備え、前記成形型が雄型と雌型とを備えた熱プレス装置を用い、前記樹脂発泡体の表面上に前記繊維強化樹脂材が重なった状態の前記被成形物を前記成形型で熱プレスし、該熱プレスによって前記繊維強化樹脂材に含まれている前記樹脂を熱溶融させ、該熱溶融させた前記樹脂によって前記繊維強化樹脂材と前記樹脂発泡体とを接着させる熱プレス工程を実施し、前記熱プレス工程では、前記雄型と前記雌型との間に隙間を設け、前記成形型の周囲の空間と前記成形空間とが前記隙間を通じて連通した状態で前記熱プレスを実施する樹脂複合体製造方法を提供する。
【選択図】
図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂と繊維とを含むシート状の繊維強化樹脂材で構成された繊維強化樹脂層と、樹脂発泡体で構成された芯材とを備え、該芯材が前記繊維強化樹脂層で覆われている樹脂複合体を製造する樹脂複合体製造方法であって、
前記樹脂複合体の形状に対応した成形空間を有する成形型と、被成形物が収容されている前記成形型を熱プレスするプレス機本体とを備え、前記成形型が雄型と雌型とを備えた熱プレス装置を用い、
前記樹脂発泡体の表面上に前記繊維強化樹脂材が重なった状態の前記被成形物を前記成形型で熱プレスし、該熱プレスによって前記繊維強化樹脂材に含まれている前記樹脂を熱溶融させ、該熱溶融させた前記樹脂によって前記繊維強化樹脂材と前記樹脂発泡体とを接着させる熱プレス工程を実施し、
前記熱プレス工程では、前記雄型と前記雌型との間に隙間を設け、前記成形型の周囲の空間と前記成形空間とが前記隙間を通じて連通した状態で前記熱プレスを実施する樹脂複合体製造方法。
【請求項2】
前記雄型と前記雌型とには前記熱プレス工程で前記被成形物の賦形に用いられる成形面が備えられ、
前記熱プレス工程の前に前記雄型の前記成形面と前記雌型の前記成形面との少なくとも一方に前記繊維強化樹脂材を密着させ、
該繊維強化樹脂材が前記成形面に密着している前記成形型を用いて前記熱プレス工程を実施する請求項1記載の樹脂複合体製造方法。
【請求項3】
前記プレス機本体が前記成形型を間に挟んで加圧するとともに前記成形型に熱を伝えて加熱するための一対の熱板を有し、
前記熱プレス工程では、
被成形物が前記成形空間に収容されている前記成形型を前記熱板の間にセットする第1の操作と、該第1の操作で前記熱板の間にセットされた前記成形型を前記熱板で加圧するとともに加熱する第2の操作とを実施し、
前記第1の操作では加熱された状態の前記熱板の間に前記成形型をセットし、
前記第2の操作を該第1の操作に連続して実施することで前記繊維強化樹脂材に含まれている前記樹脂が熱溶融状態になる前に前記被成形物を加圧する請求項1又は2記載の樹脂複合体製造方法。
【請求項4】
前記熱プレスによって加熱された前記成形型を加熱された状態のまま前記熱プレス装置から取出す型取出し工程を前記熱プレス工程の後に実施し、
該型取出し工程で前記熱プレス装置から取出された前記成形型を冷却する型冷却工程をさらに実施し、
該冷却工程後に前記樹脂複合体を前記成形型から取出す請求項1乃至3の何れか1項に記載の樹脂複合体製造方法。
【請求項5】
前記雄型と前記雌型との内の一方にはガイドピンが設けられ、他方には該ガイドピンが挿入されるガイドホールが備えられており、
前記ガイドピンと前記ガイドホールとによって前記雄型と前記雌型との相対位置を位置決め可能な前記成形型を用いて前記樹脂複合体を作製する請求項1乃至4の何れか1項に記載の樹脂複合体製造方法。
【請求項6】
前記雄型と前記雌型とには前記熱プレスで前記被成形物の賦形に用いられる成形面が備えられ、
前記雄型と前記雌型とのそれぞれには、前記成形面以外の部分で前記熱プレスに際して互いに対向した配置となる対向面がさらに備えられ、
前記雄型と前記雌型との少なくとも一方の前記対向面には周囲よりも突出した突出部が設けられており、
前記雄型と前記雌型とが該突出部の先端部を対向する相手の前記対向面に当接させることによって前記隙間が形成される前記成形型を用いて前記樹脂複合体を作製する請求項1乃至5の何れか記載の樹脂複合体製造方法。
【請求項7】
前記雌型には底部が前記成形空間となる凹部が形成され、前記雄型には前記凹部に突入する凸部が形成されており、
該凸部が形成されている箇所に肉抜部を有する前記雄型が備えられた前記成形型を用いて前記樹脂複合体を作製する請求項1乃至6の何れか記載の樹脂複合体製造方法。
【請求項8】
2W/mK以上130W/mK以下の熱伝導率を有し、且つ、1以上3以下の比重を有する素材で構成されている前記成形型を用いて前記樹脂複合体を作製する請求項1乃至7の何れか記載の樹脂複合体製造方法。
【請求項9】
樹脂と繊維とを含むシート状の繊維強化樹脂材で構成された繊維強化樹脂層と、樹脂発泡体で構成された芯材とを備え、該芯材が前記繊維強化樹脂層で覆われている樹脂複合体を製造するための樹脂複合体製造装置であって、
前記樹脂発泡体の表面上に前記繊維強化樹脂材が重なった状態の被成形物を熱プレスし、該熱プレスによって前記繊維強化樹脂材に含まれている前記樹脂を熱溶融させ、該熱溶融させた前記樹脂によって前記繊維強化樹脂材と前記樹脂発泡体とを接着させるための熱プレス装置を有し、
該熱プレス装置が、前記樹脂複合体の形状に対応した成形空間を有する成形型と、前記被成形物が収容されている前記成形型を熱プレスするプレス機本体とを有し、
前記成形型が雄型と雌型とを有しており、
前記成形型は、閉型時に前記雄型と前記雌型との間に隙間が形成され、且つ、周囲の空間と前記成形空間とが前記隙間を通じて連通した状態となるように構成されている樹脂複合体製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂複合体製造方法および樹脂複合体製造装置に関し、より詳しくは、樹脂発泡体で構成された芯材と、樹脂と繊維とを含むシート状の繊維強化樹脂材で構成された繊維強化樹脂層とを備えた樹脂複合体を製造するための製造方法とその装置とに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、樹脂発泡体で構成された芯材と、樹脂と繊維とを含むシート状の繊維強化樹脂材で構成された繊維強化樹脂層とを備え、前記芯材が前記繊維強化樹脂層で覆われている樹脂複合体は、外殻となる繊維強化樹脂層が高い強度を有し、コアとなる芯材が軽量であるために優れた軽量性と強度との両立が求められる用途などにおいて広く利用されている。
【0003】
この種の樹脂複合体の製造方法としては、樹脂発泡体の表面に繊維強化樹脂材を仮接着するなどして被成形物を作製し、該被成形物を熱プレスする方法(下記特許文献1 段落0060等参照)が知られている。
このような方法で樹脂複合体を作製する場合、雄型と雌型とが一組となった成形型と、該成形型を加熱するとともに加圧するプレス機本体とを備えた熱プレス装置が用いられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
成形型を利用した製造方法で得られる樹脂複合体には、成形型の形状がより精細に反映された美麗な外観を呈することが望まれるものの従来の製造方法ではそのような樹脂複合体が必ずしも得られるとは限らず、表面に意図していない凹凸が生じたりボイド(小気泡)のようなものが表層部に生じたりする場合があり、改善が求められている。
そこで本発明は、上記のような要望を満足させ得る樹脂複合体製造方法とそのような樹脂複合体を製造するのに適した樹脂複合体製造装置を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、成形型の形状が樹脂複合体の外観に十分反映されない理由に関して鋭意検討し、熱プレス前における成形空間からの排気が不十分なことがその一因になっていることを見出し、且つ、排気が容易な成形型を用いることで上記課題を解決し得ることを見出して本発明を完成させるに至った。
【0007】
上記課題を解決するために本発明は、
樹脂と繊維とを含むシート状の繊維強化樹脂材で構成された繊維強化樹脂層と、樹脂発泡体で構成された芯材とを備え、該芯材が前記繊維強化樹脂層で覆われている樹脂複合体を製造する樹脂複合体製造方法であって、
前記樹脂複合体の形状に対応した成形空間を有する成形型と、被成形物が収容されている前記成形型を熱プレスするプレス機本体とを備え、前記成形型が雄型と雌型とを備えた熱プレス装置を用い、
前記樹脂発泡体の表面上に前記繊維強化樹脂材が重なった状態の前記被成形物を前記成形型で熱プレスし、該熱プレスによって前記繊維強化樹脂材に含まれている前記樹脂を熱溶融させ、該熱溶融させた前記樹脂によって前記繊維強化樹脂材と前記樹脂発泡体とを接着させる熱プレス工程を実施し、
前記熱プレス工程では、前記雄型と前記雌型との間に隙間を設け、前記成形型の周囲の空間と前記成形空間とが前記隙間を通じて連通した状態で前記熱プレスを実施する樹脂複合体製造方法、を提供する。
【0008】
上記課題を解決するために本発明は、
樹脂と繊維とを含むシート状の繊維強化樹脂材で構成された繊維強化樹脂層と、樹脂発泡体で構成された芯材とを備え、該芯材が前記繊維強化樹脂層で覆われている樹脂複合体を製造するための樹脂複合体製造装置であって、
前記樹脂発泡体の表面上に前記繊維強化樹脂材が重なった状態の被成形物を熱プレスし、該熱プレスによって前記繊維強化樹脂材に含まれている前記樹脂を熱溶融させ、該熱溶融させた前記樹脂によって前記繊維強化樹脂材と前記樹脂発泡体とを接着させるための熱プレス装置を有し、
該熱プレス装置が、前記樹脂複合体の形状に対応した成形空間を有する成形型と、前記被成形物が収容されている前記成形型を熱プレスするプレス機本体とを有し、
前記成形型が雄型と雌型とを有しており、
前記成形型は、閉型時に前記雄型と前記雌型との間に隙間が形成され、且つ、周囲の空間と前記成形空間とが前記隙間を通じて連通した状態となるように構成されている樹脂複合体製造装置、を提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば成形型内での気体の残留による凹凸やボイドなどの欠陥が樹脂複合体の表面に形成されることを抑制することができ、外観美麗な樹脂複合体が提供され得る。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図2】樹脂複合体の概略断面図(
図1のII-II線矢視断面図)。
【
図3】樹脂複合体の芯材を構成するために用いられる樹脂発泡体を示した概略斜視図。
【
図4】樹脂複合体の繊維強化樹脂層(第1繊維強化樹脂層)を構成するために用いられる繊維強化樹脂材(第1繊維強化樹脂材)を示した概略平面図。
【
図5】樹脂複合体の繊維強化樹脂層(第2繊維強化樹脂層)を構成するために用いられる繊維強化樹脂材(第2繊維強化樹脂材)を示した概略平面図。
【
図6】樹脂複合体の製造に用いられる製造設備の一例を示した概略正面図。
【
図7】樹脂複合体製造方法の手順の一例を示した概略図。
【
図8】樹脂複合体の製造に用いられる成形型の一例を示した概略斜視図。
【
図9】樹脂複合体の製造に用いられる成形型の一例を示した一部切欠き斜視断面図。
【
図10】熱プレス工程が行われている状態での成形型の様子を示した概略図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に本発明の実施の形態について図を参照しつつ説明する。
まず、樹脂複合体について説明する。
図1は、本発明の製造方法によって作製される樹脂複合体の一態様を例示した概略斜視図である。
なお、以下においては、
図1における横方向(矢印Xの方向)を“横方向”、“幅方向”、又は、“左右方向”と称し、奥行き方向(矢印Yの方向)を“縦方向”、“長さ方向”、又は、“前後方向”と称する場合がある。
また、以下においては、この横方向Xと奥行き方向Yとに平行する平面に沿った方向を“水平方向”と称し、前記平面に対して直交する方向(矢印Zの方向)を“厚み方向”、“上下方向”、“高さ方向”又は“垂直方向”などと称する場合がある。
【0012】
図1とその断面図(
図1のII-II線矢視断面図)である
図2に示すように、本実施形態で作製される樹脂複合体Aは、逆四角錐台(逆切頭四角錐)形状を有する本体部Axと、該本体部Axの上部の外周縁に沿って立設された鍔部Ayとを備えている。
前記鍔部Ayは、前記本体部Axの側面Ax1を上方に延長したような形状を有しており、上方に向けて外広がりとなる矩形環状となっている。
【0013】
本実施形態で作製される樹脂複合体Aは、芯材A1と、該芯材A1の表面に積層された繊維強化樹脂層A2とを有している。
より詳しくは、本実施形態の樹脂複合体Aは、
図3に示すような樹脂発泡体A1’で構成された芯材A1と、樹脂と繊維とを含むシート状の繊維強化樹脂材A2’(
図4、
図5)で構成された繊維強化樹脂層A2とを備えている。
本実施形態で作製される樹脂複合体Aは、前記本体部Axよりも一回り小さな形状を有する芯材A1と、該芯材A1に上側から積層されている第1繊維強化樹脂層A21と、前記芯材A1に下側から積層されている第2繊維強化樹脂層A22とを備えている。
【0014】
本実施形態で作製される樹脂複合体Aでは、前記芯材A1が前記本体部Axにしか設けられておらず、前記鍔部Ayには、前記芯材A1が設けられていない。
外周縁部を構成する前記鍔部Ayにおいて前記第1繊維強化樹脂層A21と前記第2繊維強化樹脂層A22とが直接積層されている本実施形態の樹脂複合体Aは、上下2層の繊維強化樹脂層A2によって外周縁部で封がされて内部に前記芯材A1が密封されたような状態になっている。
【0015】
本実施形態の前記芯材A1を構成する樹脂発泡体A1’は、材質や構造などが特に限定されない。
前記樹脂発泡体A1’は、ビーズ発泡成形体であっても、押出発泡法によって作製されたシートやボードであってもよい。
前記樹脂発泡体A1’は、発泡剤を含んだ樹脂塊を発泡させた発泡ブロックなどであってもよい。
樹脂発泡体A1’は、上記のようなものに対して二次加工(例えば、切削加工やプレス成形加工など)が施されたものであってもよい。
【0016】
本実施形態における前記樹脂発泡体A1’は、種々の形状のものが簡便に得られることからビーズ発泡成形体であることが好ましい。
図3に示すように、本実施形態の前記樹脂発泡体A1’としては、複数の樹脂発泡粒子(A11,A12・・・)どうしが融着されているため高い発泡倍率でありながら優れた強度を発揮する点においてビーズ発泡成形体が採用されている。
【0017】
前記樹脂発泡体A1’を構成する樹脂は、特に限定されず、例えば、ポリカーボネート樹脂;ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリ乳酸樹脂などのポリエステル樹脂;GPPS、HIPS、ポリαメチルスチレン樹脂、スチレン-アクリロニトリル共重合体樹脂などのスチレン系樹脂;ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、COP、COCなどのオレフィン系樹脂、アクリル系樹脂などが挙げられる。
前記樹脂発泡体A1’を構成する樹脂は、ポリアミド樹脂(PA)、ポリエーテルイミド樹脂(PEI)、ポリエーテルスルホン樹脂(PESU)、ポリフェニルスルホン樹脂(PPSU)、ポリスルホン樹脂(PSU)などのエンジニアリングプラスチックであってもよい。
前記樹脂発泡体A1’は、単一の樹脂で構成されても2種以上の樹脂を含んでいてもよい。
【0018】
前記樹脂発泡体A1’は、高い強度を有する点において、ポリエチレンテレフタレート樹脂製であるか、又は、ポリカーボネート樹脂製であることが好ましい。
即ち、本実施形態の樹脂発泡体A1’は、ポリエチレンテレフタレート樹脂製のビーズ発泡成形体であるか、又は、ポリカーボネート樹脂製のビーズ発泡成形体であるかであることが特に好ましい。
【0019】
前記樹脂発泡体A1’としては、例えば、発泡倍率が2倍以上100倍以下のものを用いることができる。
前記樹脂発泡体A1’の発泡倍率は、3倍以上であることが好ましく、4倍以上であることがより好ましく、5倍以上であることがさらに好ましい。
前記樹脂発泡体A1’の発泡倍率は、50倍以下であることが好ましく、20倍以下であることがより好ましく、15倍以下であることがさらに好ましい。
前記繊維強化樹脂層A2が積層された後の前記芯材A1もこのような発泡倍率を有していることが好ましい。
即ち、前記芯材A1の発泡倍率は、2倍以上100倍以下とすることができ、3倍以上であることが好ましく、4倍以上であることがより好ましく、5倍以上であることがさらに好ましい。
前記芯材A1の発泡倍率は、50倍以下であることが好ましく、20倍以下であることがより好ましく、15倍以下であることがさらに好ましい。
尚、発泡倍率とは、前記樹脂発泡体A1’を構成する樹脂の非発泡状態での密度を前記樹脂発泡体A1’や前記芯材A1の見掛け密度で除して求めることができる。
【0020】
樹脂の非発泡状態での密度は、JIS K7112:1999「プラスチック-非発泡プラスチックの密度及び比重の測定方法」に記載のA法(水中置換法)によって求めることができる。
【0021】
樹脂発泡体A1’や前記芯材A1の見掛け密度は、JIS K7222:2005「発泡プラスチック及びゴム-見掛け密度の求め方」記載の方法で測定できる。
より詳しくは、前記樹脂発泡体A1’や前記芯材A1から、100cm3以上の試験片を材料の元のセル構造を変えない様に切断し、その質量を測定した上で、見掛け密度は、次式により算出される。
尚、試験片としては、原則的には、作製した後72時間以上経過した樹脂発泡体や樹脂複合体から切り出し、温度23±2℃、湿度50±5%の雰囲気下に16時間以上放置したものを用いる。
見掛け密度(kg/m3)=試験片質量(g)/試験片体積(mm3)×106
【0022】
前記芯材A1に積層される前記第1繊維強化樹脂層A21と前記第2繊維強化樹脂層A22とは、材質や厚みが共通していても異なっていてもよい。
本実施形態での前記第1繊維強化樹脂層A21は、
図4に示すような第1繊維強化樹脂材A21’で構成されており、前記第2繊維強化樹脂層A22は、
図5に示すような第2繊維強化樹脂材A22’で構成されている。
前記第1繊維強化樹脂材A21’と前記第2繊維強化樹脂材A22’とのそれぞれは、単層構造であっても積層構造を有していてもよい。
【0023】
前記第1繊維強化樹脂材A21’や前記第2繊維強化樹脂材A22’は、前記繊維が短繊維の状態で含まれていても連続繊維の状態で含まれていてもよい。
前記繊維は、紡績糸となって前記第1繊維強化樹脂材A21’や前記第2繊維強化樹脂材A22’に含まれていてもフィラメント糸となって前記第1繊維強化樹脂材A21’や前記第2繊維強化樹脂材A22’に含まれていてもよい。
前記繊維は、前記第1繊維強化樹脂材A21’や前記第2繊維強化樹脂材A22’において不織布や織布を構成していてもよい。
本実施形態における前記第1繊維強化樹脂材A21’や前記第2繊維強化樹脂材A22’は、前記繊維で構成された不織布や織布などの基材シートを有していることが好ましく、前記樹脂が該基材シートに含浸されていることが好ましい。
【0024】
前記基材シートが、織物である場合、織り方としては、例えば、平織、綾織、朱子織などのいずれでもよい。
前記基材シートは、連続繊維が一方向にのみ引き揃えられたものであってもよい。
即ち、前記第1繊維強化樹脂材A21’や前記第2繊維強化樹脂材A22’は、UD(Uni Direction)などと称されるものであってもよい。
【0025】
本実施形態の前記繊維は、ガラス繊維、カーボン繊維、炭化ケイ素繊維、アルミナ繊維、チラノ繊維、玄武岩繊維、ステンレス繊維、スチール繊維などの無機繊維;アラミド繊維、ポリエチレン繊維、ポリパラフェニレンベンズオキサドール(PBO)繊維などの有機繊維;ボロン繊維などが挙げられる。
該繊維は、一種単独で用いられてもよく、二種以上が併用されてもよい。
本実施形態の前記第1繊維強化樹脂材A21’や前記第2繊維強化樹脂材A22’は、炭素繊維で構成された1又は2以上の基材シートと、ガラス繊維で構成された1又は2以上の基材シートとが積層された状態のものであってもよい。
【0026】
前記繊維とともに前記第1繊維強化樹脂材A21’や前記第2繊維強化樹脂材A22’に含まれる樹脂は、熱可塑性樹脂であっても熱硬化性樹脂であってもよい。
【0027】
熱硬化性樹脂としては、特に限定されず、例えば、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコン樹脂、マレイミド樹脂、ビニルエステル樹脂、シアン酸エステル樹脂、マレイミド樹脂とシアン酸エステル樹脂とを予備重合した樹脂などが挙げられる。
【0028】
前記熱可塑性樹脂としては、特に限定されず、例えば、ポリエステル樹脂、オレフィン系樹脂、ポリアミド樹脂(PA)、アクリル系樹脂などが挙げられる。
【0029】
前記第1繊維強化樹脂材A21’や前記第2繊維強化樹脂材A22’に含まれる樹脂は、一種単独である必要は無く、二種以上であってもよい。
前記第1繊維強化樹脂材A21’や前記第2繊維強化樹脂材A22’は、1種類以上の熱硬化性樹脂と1種類以上の熱可塑性樹脂とを含んでいてもよい。
【0030】
前記第1繊維強化樹脂材A21’や前記第2繊維強化樹脂材A22’には、耐熱性や強度に優れる点において熱硬化性樹脂が含まれていることが好ましく、エポキシ樹脂が含まれていることが好ましい。
【0031】
前記エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールフルオレン型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、環状脂肪族型エポキシ樹脂、長鎖脂肪族型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂などが挙げられる。
前記エポキシ樹脂としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールフルオレン型エポキシ樹脂が好ましい。
【0032】
前記第1繊維強化樹脂材A21’や前記第2繊維強化樹脂材A22’にエポキシ樹脂を含有させる場合、該エポキシ樹脂とともに硬化剤を含有させることが好ましい。
該硬化剤としては、特に限定されず、例えば、アミン系硬化剤、イミダゾール系硬化剤、フェノール樹脂系硬化剤、酸無水物系硬化剤などが挙げられる。
該硬化剤は、一種単独で前記第1繊維強化樹脂材A21’や前記第2繊維強化樹脂材A22’に含まれる必要は無く、二種以上が含まれていてもよい。
【0033】
前記第1繊維強化樹脂材A21’や前記第2繊維強化樹脂材A22’には、上記以外に各種添加剤が含まれていてもよい。
該添加剤としては、例えば、抗菌剤、滑剤、帯電防止剤、酸化防止剤、耐候剤、難燃剤、フィラー、顔料などが挙げられる。
【0034】
次いで、上記のような樹脂複合体Aを製造するための装置について説明する。
本実施形態においては、このような樹脂複合体Aを製造すべく、
図6に示したような熱プレス装置100を有する樹脂複合体製造装置が用いられる。
該熱プレス装置100は、
図7に示すように、前記樹脂発泡体A1’の表面上に前記繊維強化樹脂材A21’,A22’が重なった状態の被成形物XAを熱プレスして前記樹脂複合体Aを作製するために用いられる。
より詳しくは、熱プレス装置100は、前記樹脂発泡体A1’と前記繊維強化樹脂材A21’,A22’とを加熱状態とし、該繊維強化樹脂材A21’,A22’に含まれている前記樹脂を熱溶融させ、該熱溶融させた前記樹脂によって前記繊維強化樹脂材A21’,A22’と前記樹脂発泡体とを接着させて前記樹脂複合体Aを作製するために用いられる。
【0035】
前記熱プレス装置100には、前記樹脂複合体の形状に対応した成形空間を有する成形型20と、前記被成形物XAが収容されている前記成形型20を熱プレスするプレス機本体10とが備えられている。
【0036】
本実施形態のプレス機本体10は、板面が水平となるように配置とされた上部熱板11と、該上部熱板11の下方に板面が水平となるように配置とされた下部熱板12とを備え、前記上部熱板11と前記下部熱板12とが上下方向において板面を対向するように配されている。
前記下部熱板12が固定配置されているのに対して前記上部熱板11は、該上部熱板11の上方に設けられた油圧シリンダー13によって上下方向に移動可能となってプレス機本体10に備えられている。
また、上部熱板11と下部熱板12とのそれぞれは内部に過圧水蒸気や冷却水などの熱媒を流通させて温度調節可能となっている。
即ち、プレス機本体10は、前記上部熱板11と前記下部熱板12との間に配したものに対して加熱及び加圧が可能となっている。
【0037】
前記成形型20は、前記樹脂複合体Aの形状に対応した成形空間を有し、前記プレス機本体10に着脱自在に装着されている。
即ち、前記成形型20は、前記上部熱板11や前記下部熱板12に対して固定具などで固定されてはおらず、前記上部熱板11と前記下部熱板12とによって加圧されている状態から、該加圧が解除されただけで前記プレス機本体10から取出し可能となっている。
【0038】
前記成形型20は、熱プレス前に前記プレス機本体10の熱板間に配置したり、熱プレス後に前記プレス機本体10から取出したりする操作を容易にする上において軽量性に優れることが好ましい。
従って、前記成形型20は、3以下の比重を有する素材で構成されていることが好ましい。
前記成形型20を構成する素材の比重は、2.9以下であることがより好ましく、2.8以下であることがさらに好ましい。
前記成形型20は、優れた強度を発揮させる上において一定以上の比重を有していることが好ましい。
前記成形型20を構成する素材の比重は、1.0以上であることが好ましく、1.2以上であることがより好ましく、1.5以上であることがさらに好ましい。
【0039】
本実施形態の前記成形型20では、後段において詳述するように、強度面などから考えて必要性が低い箇所での素材の削減が行われており、外表面から凹入した凹部や中空部などによる肉抜部が設けられて軽量化が図られている。
【0040】
前記成形型20は、熱伝導率に優れる素材で構成されていることが好ましい。
前記成形型20を構成する素材の熱伝導率は、2W/mK以上であることが好ましく、3W/mK以上であることがより好ましく、5W/mK以上であることがさらに好ましい。
前記成形型20は、過度に高熱伝導率な素材で構成すると却って均熱化し難くなる場合があり、前記上部熱板11や前記下部熱板12の温度変化が収容している被成形物XAに敏感に伝わってしまうため、均熱化の観点からは熱伝導率がある程度以下であることが好ましい。
前記成形型20を構成する素材の熱伝導率は、130W/mK以下であることが好ましく、100W/mK以下であることがより好ましく、80W/mK以下であることがさらに好ましい。
【0041】
前記成形型20を構成するのに好適な素材の具体例を挙げると、例えば、アルミニウムなどの軽金属やCFRP(炭素繊維強化プラスチック)やGFRP(ガラス繊維強化プラスチック)などの繊維強化樹脂材があげられる。
【0042】
前記成形型20を構成するアルミニウムは、A4043、A5052、A6061、A6063、A7075、A7N01などの展伸用合金であっても、AC2A、AC2B、AC4C、AC7A、AC8A、AC8B、AC8C、ADC12などの鋳造用合金であってもよい。
前記成形型20を構成する素材としては、例えば、マグネシウム合金などであってもよい。
【0043】
以下においては、
図8~
図10を参照しつつ、本実施形態において用いられる成形型20の一例について説明する。
本実施形態の前記成形型20は、上下方向に分割可能となっている。
即ち、前記成形型20は、上型と下型とを備えている。
前記成形型20の下型は、上方に向けて開口した凹部が設けられ、前記成形型20の上型は、前記下型の凹部に突入する凸部を下面側に備えている。
即ち、本実施形態においては、該上型が雄型20mで、前記下型が雌型20fとなっている。
【0044】
前記成形型20は、雄型20mと雌型20fとを閉型状態にした時に前記成形空間20vが内部に形成されるように構成されており、且つ、前記成形型20は、型締め時に前記雄型20mと前記雌型20fとの間に隙間20cが形成されて該成形型20の周囲の空間と前記成形空間20vとが前記隙間20cを通じて連通した状態となるように構成されている。
【0045】
前記成形型20は、雄型20mの凸部20mhを雌型20fの凹部20fhに挿入して閉型状態にした際に内部に前記成形空間20vを形成させるべく、前記雄型20mの凸部20mhの突出高さが前記雌型20fの凹部20fhの凹入深さよりも低くなっている。
また、前記成形型20は、製造する樹脂複合体Aの高さよりも前記凹部20fhが深くなるように形成されており、前記雌型20fの底部分において前記被成形物XAを熱プレスし得るように構成されている。
言い換えると、前記成形型20は、前記成形空間20vが前記凹部20fhの底部に形成されるように構成されている。
前記雌型20fは、前記凹部fhを画定する内壁面の内、前記凹部fhの底から樹脂複合体Aの高さまでの間が前記被成形物XAの賦形に用いられる成形面MPとなっており、該成形面MPよりも上方は、閉型時において前記雄型20mの下面と直接的に対向する対向面FP(被成形物XAに接しない非成形面)となっている。
【0046】
前記雄型20mについては、前記凸部20mhの基端部と、前記凸部mhの周囲の部分が閉型時において前記雌型20fの上面と直接的に対向する対向面FPとなっており、前記凸部20mhの突出方向先端部分における表面が前記被成形物XAの賦形に用いられる成形面MPとなっている。
【0047】
本実施形態の成形型20では、前記雌型20fの対向面FPに周囲よりも突出した突出部が設けられており、該突起部が前記凸部20mhの周囲の部分と対向する対向面に設けられた小突起20faによって構成されている。
【0048】
前記小突起20faは、前記凹部20fhの周りを周回する方向において等間隔となるように複数箇所に設けられている。
そして、本実施形態の成形型20は、閉型時において前記小突起20faの形成位置において前記雄型20mと前記雌型20fとが接するもののそれ以外の対向面FPでは小突起20faの高さに対応した隙間20cが形成されるようになっている。
本実施形態においては、この隙間20cが前記成形型20の周囲の空間と前記成形空間20vとを連通状態にさせる通気路として機能することで、熱プレスにおいて成形空間20vに存在している空気や熱プレスによって発生したガスなどを成形型20の外に前記隙間20cを通じて排気させることができる。
そのため本実施形態においては、気体の残留による凹凸やボイドなどの欠陥が樹脂複合体Aの表面に形成されにくくなる。
【0049】
前記隙間20cは、過度に広いと溶融した樹脂を漏出させる要因ともなり得ることから、その広さ(対向面FPの間の距離W)が0.03mm以上0.2mm以下の範囲内となるように形成されることが好ましい。
前記隙間20cでの対向面FPの間の距離Wは、0.04mm以上であることがより好ましく、0.05mm以上であることがさらに好ましい。
前記距離は、0.06mm以上であっても、0.07mm以上であってもよい。
前記距離は、0.19mm以下であることがより好ましく、0.18mm以下であることがさらに好ましい。
前記距離は、0.17mm以下であっても、0.16mm以下であってもよい。
【0050】
前述のように本実施形態では繊維強化樹脂材A2’に含まれる樹脂として熱硬化性樹脂が好適に用いられ得る。
熱硬化性樹脂は加熱されて一旦は熱溶融された状態になり得るものの硬化反応の進行によって粘度を大きく上昇させることができ、前記隙間20cからの漏出が抑制される点においても好適である。
【0051】
尚、前記隙間20cは、前記雌型20fに前記小突起20faを設ける方法以外にも形成させ得る。
即ち、前記成形型20は、前記雄型20mと前記雌型20fとには前記熱プレスで前記被成形物XAの賦形に用いられる成形面MPが備えられ、前記雄型20mと前記雌型20fとのそれぞれには、前記成形面MP以外の部分で前記熱プレスに際して互いに対向した配置となる対向面FPがさらに備えられ、前記雄型20mと前記雌型20fとの少なくとも一方の前記対向面FPに周囲よりも突出した突出部が設けられ、前記雄型20mと前記雌型20fとが該突出部の先端部を対向する相手の前記対向面FPに当接させることによって前記隙間20cが形成されるように構成されていれば、必ずしも前記小突起20faを設けるには及ばない。
【0052】
本実施形態の成形型20には、前記閉型状態での前記凸部20mhと前記凹部20fhとの相対位置を規制して前記隙間20cが局所的に広くなったり狭くなったりしないように前記雄型20mと前記雌型20fとの相対的な位置決めを行なうためのガイド機構が設けられており、前記雄型20mに向けて突出したガイドピンGPが前記雌型20fに設けられているとともに前記雄型20mにはガイドピンGPが挿入されるガイドホールGHが設けられている。
該ガイドホールGHと前記ガイドピンGPとの間のクリアランスは、ガイドピンGPの基端側の方が先端側に比べて狭くなっていることが好ましい。
このガイドピンGPの基端側のクリアランス((ガイドピンの直径-ガイドホールの直径)/2)は、前記隙間20cの距離W未満であることが好ましい。
該クリアランスは前記距離Wの0.8倍以下であることがより好ましく、0.6倍以下であることがさらに好ましい。
【0053】
本実施形態においては、前記雌型20fにガイドピンGPを設けているが、ガイドピンGPは雄型20mに設けてもよい。
即ち、前記雄型20mと前記雌型20fとの内の一方にはガイドピンGPが設けられ、他方には該ガイドピンGPが挿入されるガイドホールGHが備えられており、前記ガイドピンGPと前記ガイドホールGHとによって前記雄型20mと前記雌型20fとの相対位置が閉型状態において位置決め可能となっていれば上記のような効果が発揮され得る。
【0054】
本実施形態の成形型20には前述のように肉抜部が形成されて軽量化が図られている。
本実施形態においては、前記凸部20mhが形成されている箇所に肉抜部が設けられている。
本実施形態においては、前記雄型20mの上面より凹入した凹条20mrが前記凸部20mhの背面側に形成されており、複数の凹条20mrによって肉抜部が構成されている。
【0055】
尚、肉抜部は凹条20mrによって形成されなくても凸部20mhの内部を中空構造とすることによっても形成可能である。
即ち、前記雌型20fには底部が前記成形空間20vとなる凹部20fhが形成され、前記雄型20mには前記凹部20fhに突入する凸部20mhが形成されており、該凸部20mhが形成されている箇所に肉抜部を有することで上記のような効果が発揮され得る。
【0056】
本実施形態においては、このような成形型20を複数用意して樹脂複合体Aを作製することが好ましい。
このような好ましい態様での樹脂複合体製造方法について以下に説明する。
【0057】
これまで説明しているように、本実施形態の樹脂複合体製造方法は、樹脂と繊維とを含むシート状の繊維強化樹脂材で構成された繊維強化樹脂層A2と、樹脂発泡体で構成された芯材A1とを備え、該芯材A1が前記繊維強化樹脂層A2で覆われている樹脂複合体Aを製造するための方法である。
そして、本実施形態においては前記樹脂複合体Aの形状に対応した成形空間20vを有する成形型20と、前記被成形物XAが収容されている前記成形型20を熱プレスするプレス機本体10とを備え、前記成形型20が雄型20mと雌型20fとを備えた熱プレス装置100を用いる。
【0058】
本実施形態の樹脂複合体製造方法では、前記樹脂発泡体A1’の表面上に前記繊維強化樹脂材A21’,A22’が重なった状態の被成形物XAを前記成形型20で熱プレスし、該熱プレスによって前記繊維強化樹脂材A21’,A22’に含まれている前記樹脂を熱溶融させ、該熱溶融させた前記樹脂によって前記繊維強化樹脂材A21’,A22’と前記樹脂発泡体A1’とを接着させる熱プレス工程を実施する。
【0059】
本実施形態における熱プレス工程は、
図7(ハ)に示すように、成形型20をプレス機本体10の上部熱板11と下部熱板12との間に挟んで上部熱板11と下部熱板12とで雄型20mと雌型20fとが接近する方向(前記凹部20fhに前記凸部20mhが進入する方向)に成形型20を加圧するとともに該成形型20を上部熱板11と下部熱板12とによって加熱する形で行われる。
そして、前記熱プレス工程では、前記雄型20mと前記雌型20fとの間に隙間20cを設け、前記成形型20の周囲の空間と前記成形空間20vとが前記隙間20cを通じて連通した状態で前記熱プレスが実施される。
そのことにより、前述の通り、熱プレス工程での成形型20からの排気が良好となり、気体の残留によって樹脂複合体Aに凹凸やボイドなどの欠陥ができることが抑制される。
【0060】
このような効果をより顕著に発揮させる上において、前記熱プレス工程の前に前記雄型20mの前記成形面MPと前記雌型20fの前記成形面MPとの少なくとも一方に前記繊維強化樹脂材を密着させ、該繊維強化樹脂材が前記成形面に密着している前記成形型20を用いて前記熱プレス工程を実施することが好ましい。
前記熱プレス工程は、予め、前記雄型20mの前記成形面MPと前記雌型20fの前記成形面MPとの両方又は一方に前記繊維強化樹脂材を密着させた後に行われることが好ましい。
前記成形面MPへの繊維強化樹脂材の密着は、例えば、プレス、オートクレーブ装置などによって実施可能である。
【0061】
本実施形態では芯材A1の一面側と、該一面側とは反対面となる他面側とから繊維強化樹脂層A2が積層され、外周部において繊維強化樹脂層A2どうしが積層された鍔部Ayが形成された樹脂複合体Aを作製する。
そのため、樹脂複合体Aと同様の状態となった被成形物を予め作製した上でこれを成形型20に収容させるようにすると該被成形物の内部に空気が閉じ込められた状態になり易いが、上記のようにして成形面MPに繊維強化樹脂材を密着させておいて成形型20を閉型状態にする際に内部で被成形物が形成されるようにすると空気の閉じ込めが生じ難くなる。
【0062】
前記熱プレス工程では、被成形物XAが前記成形空間20vに収容されている前記成形型20を前記上部熱板11と前記下部熱板12との間にセットする第1の操作と、該第1の操作で前記熱板の間にセットされた前記成形型20を前記熱板で加圧するとともに加熱する第2の操作とを実施し、前記第1の操作では加熱された状態の前記熱板の間に前記成形型をセットし、前記第2の操作を該第1の操作に連続して実施することで前記繊維強化樹脂材に含まれている前記樹脂が熱溶融状態になる前に前記被成形物を加圧することが好ましい。
このことにより成形型20内に気体が残留することを抑制することができる。
【0063】
本実施形態では、前記熱プレスによって加熱された前記成形型20を加熱された状態のまま前記プレス機本体10から取出す型取出し工程を前記熱プレス工程の後に実施し、該型取出し工程で前記プレス機本体10から取出された前記成形型20を冷却する型冷却工程をさらに実施し、該冷却工程後に前記樹脂複合体Aを前記成形型20から取出すことが好ましい。
このことにより、熱板の温度を大きく上げ下げすることをしなくてもよくなり、熱板の温度を所定温度に保ち続けることができる。
即ち、このような好ましい態様によれば、熱板の温度が低下するまでの待ち時間や、一旦冷却された熱板の温度が所定の温度に上昇するまでの待ち時間を削減することができる。
【0064】
上記のような効果は、複数の成形型20用いることでより顕著に発揮され得る。
この点に関して説明すると、本実施形態では、
図7(イ)に示すように、第1の成形型201と第2の成形型202とを含む複数の成形型20が用いられ得る。
【0065】
本実施形態では、
図7(ハ)(ニ)に示すように、前記第1の成形型201で前記熱プレス工程を実施した後に、前記上部熱板11と前記下部熱板12とによる加圧を解除して熱プレス工程で加熱されたままの状態になっている前記第1の成形型201を前記プレス機本体10から取出し、前記第2の成形型202を前記第1の成形型201に代えて前記プレス機本体10に装着し、該第2の成形型202を使って再び前記熱プレス工程が実施される。
即ち、本実施形態においては、熱プレス工程と型取出し工程とが交互に繰り返され、次々と樹脂複合体Aが作製される。
【0066】
本実施形態においては、前記第1の成形型201及び前記第2の成形型202が何れも軽量で熱伝導性に優れた素材で構成されているため、前記型取出し工程が素早く行えるとともに前記熱プレス工程での前記被成形物XAの加熱も素早く行われることになる。
従って、本実施形態においては樹脂複合体Aを外観美麗なものにし得るだけでなく効率良く樹脂複合体Aを製造することができる。
【0067】
第1の成形型201の冷却に時間を要するなどしてしまって、第1の成形型201から樹脂複合体Aを取り出して新たな被成形物XAがセットされるまでの時間が1回の熱プレス工程の期間中に確保し難しいようであれば、さらに第3の成形型203を用いてもよい。
【0068】
本実施形態の樹脂複合体製造方法においては、このようにして作製された樹脂複合体Aに対し、バリ取り加工、穴開け加工、塗装などを行う後工程をさらに実施してもよい。
【0069】
本実施形態の樹脂複合体の製造装置や樹脂複合体の製造方法は、あくまで例示的なものであり、本発明は上記例示に何等限定されるものではない。
【符号の説明】
【0070】
A 樹脂複合体
A1 芯材
A1’ 樹脂発泡体
A2 繊維強化樹脂層
A2’ 繊維強化樹脂材
FP 対向面
GH ガイドホール
GP ガイドピン
MP 成形面
XA 被成形物
10 プレス機本体
11 上部熱板
12 下部熱板
20 成形型
20c 隙間
20m 雄型
20f 雌型
20v 成形空間
100 熱プレス装置