(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022053130
(43)【公開日】2022-04-05
(54)【発明の名称】潜熱蓄熱シート
(51)【国際特許分類】
F28D 20/02 20060101AFI20220329BHJP
C09K 5/06 20060101ALI20220329BHJP
F24D 11/00 20220101ALI20220329BHJP
B32B 17/04 20060101ALN20220329BHJP
B32B 5/28 20060101ALN20220329BHJP
【FI】
F28D20/02 Z
C09K5/06 Z
F24D11/00 Z
B32B17/04
B32B5/28
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020159769
(22)【出願日】2020-09-24
(71)【出願人】
【識別番号】510027179
【氏名又は名称】株式会社ワールドルーム ブリス
(72)【発明者】
【氏名】井上 敬治
【テーマコード(参考)】
3L071
4F100
【Fターム(参考)】
3L071CE02
3L071CF01
4F100AG00
4F100AG00A
4F100AK00
4F100AK00A
4F100BA01
4F100DG01
4F100DG01A
4F100DH01
4F100DH01A
4F100GB07
4F100JJ10
(57)【要約】
【課題】
使用場所や使用目的に応じた形状が簡単で安価にて製造でき、蓄熱放熱効率が高く、意匠性や汎用性がある潜熱蓄熱シートを提供する。
【解決手段】
潜熱蓄熱材(PMCD)を単層のガラス繊維状フィルターに空隙率が10%以下で含浸させ、前記含浸したガラス繊維フィルターを1日以上乾燥させた片面は凹凸状の表面であり、もう一方の片面は前記片面より前記潜熱蓄熱材(PMCD)を多く含んだ平滑な表面を成形され、さらに柔軟性と通気性を有した潜熱蓄熱シートにより課題が解決できた。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
潜熱蓄熱材(PMCD)を単層のガラス繊維状フィルターに空隙率が10%以下で含浸させ、
前記含浸したガラス繊維フィルターを1日以上乾燥させた片面は凹凸状の表面であり、
もう一方の片面は前記片面より前記潜熱蓄熱材(PMCD)を多く含んだ平滑な表面を成形され、
さらに柔軟性と通気性を有した潜熱蓄熱シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、次世代空調用潜熱蓄熱建材や保温保冷材に利用できる潜熱蓄熱シート。
【背景技術】
【0002】
住宅・建築の高気密・高断熱が進む中、太陽熱や地中熱などの再生可能エネルギーの有効活用や太陽光発電電力の蓄電などの省エネルギー技術の採用した自家消費する住宅が求められている。
【0003】
そのような状況の中、冷暖房空調季節には24時間換気システムを停止し、必要な場所と時間帯のみに冷暖房するのが一般的であり、太陽光発電電力は利用するも、太陽熱や地中熱の再生可能エネルギーや蓄電を利用した自家消費する住宅には至っていない。
【0004】
特許文献1の実施例は、蓄熱性ボード8mmにおいて、面積蓄熱量360kj/平方メートルが記載されている(蓄熱密度に換算すると45j/立方センチメートルとなる)。また、室内空間内に貼り付ける施工方法が一般的である。
【0005】
特許文献2の実施例は、蓄熱性シート4mmにおいて、蓄熱量170kj/平方メートルが記載されている(蓄熱密度に換算すると42.5j/立方センチメートルとなる)。さらに室内空間内に貼り付ける施工方法が一般的である。
【0006】
特許文献3の実施例は、多孔体の孔部に浸透した潜熱蓄熱物体は、連続気泡構造(平均孔径20um)であり、さらに空隙率30%以上あるスポンジ形状であると記載されている。さらに、熱輸送媒体を含む流体をパイプラインに流通される熱輸送である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003-155789号公報
【特許文献2】特開2003-306672号公報
【特許文献3】特開2018-100326号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1の実施例は、8mm蓄熱性ボードは柔軟性や通気性が無いという問題があった。
【0009】
特許文献2の実施例は、4mm蓄熱性シートは熱伝導率0.01~0.1kcal/m・hr.・degの特殊な支持体であり、柔軟性や通気性が無いという問題があった。
【0010】
上記のように従来の蓄熱ボードや蓄熱シートは実用的な蓄熱性能を保持する為に、蓄熱ボードやシートを積層する必要性が求められた。また、厚みを薄くするために特殊なシートの必要性があった。
【0011】
特許文献3の実施例では、熱輸送媒体は多孔体(スポンジ形状)に潜熱蓄熱物質の含有量を調整する必要性があり、さらに誘導体を利用した浸透(含浸)方法であり、さらに流体中に混入させて熱輸送する活用方法に限られる問題がある。
【0012】
そこで、本発明は、使用場所や使用目的に応じた形状が簡単で安価にて製造でき、蓄熱放熱効率が高く、生活暮らしに安価で利用できる潜熱蓄熱シートを提供することを課題とした。
【0013】
上記の課題に着目したものであり、潜熱蓄熱材(PMCD)を単層のガラス繊維状フィルターに空隙率が10%以下で含浸させ、前記含浸したガラス繊維フィルターを1日以上乾燥させた片面は凹凸状の表面であり、もう片面は前記片面より前記潜熱蓄熱材(PMCD)を多く含んだ平滑な表面を成形され、さらに柔軟性と通気性を有し、熱交換率が高い潜熱蓄熱シートである。
【発明の効果】
【0014】
本発明は特許文献1~3と比較して、単層のガラス繊維状フィルターに、潜熱蓄熱材/相転移物質(PMCD)を常温にて含浸し、1日以上乾燥するシンプル工程で成形することができて、さらに柔軟性があることにより施工や加工が簡単であり、さらに片面は凹凸な表面もう一方の片面は平滑な表面を成形され、さらに通気性をもたせることにより熱効率が高くなり、さらに用途目的に応じた厚さや形状などに容易に選択できる潜熱蓄熱シートである。
【0015】
本発明の効果は、太陽熱や地中熱の再生エネルギーと、冷暖房器具からの創生エネルギーを年間通して、蓄熱・放熱を繰り返す次世代省エネ型空調用に利用できる潜熱蓄熱シートである。
【0016】
又、1日以上時間をかけて乾燥したことにより、柔軟性と通気性ある潜熱蓄熱シートは、保温保冷材として活用できる。
【0017】
前記保温保冷材の活用例として、靴の中敷き・ベットパットの中敷き・カーペットの中敷き・椅子(車シート)の中敷きなどに利用することで、前記各種中敷きは、冬は保温効果を発揮し、夏は保冷効果を発揮する。
【0018】
さらに、バッグの中敷きや発泡スチロール箱の中敷きに利用することで、輸送中の保温保冷材にも活用できる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の潜熱蓄熱シートは、潜熱蓄熱材(PMCD)を単層のガラス繊維状フィルターに空隙率が10%以下で含浸させ、前記含浸したガラス繊維フィルターを1日以上乾燥させた片面は凹凸状の表面、もう一方の片面は前記片面より前記潜熱蓄熱材(PMCD)を多く含んだ平滑な表面を成形され、さらに柔軟性と通気性を有し、熱交換率が高い潜熱蓄熱シートである。
【0020】
以下、本発明の実施形態に基づいて説明する。
【0021】
本発明に採用した潜熱蓄熱材/相転移物質(PMCD)は、相転移点付近で融解・凝固し、多量の熱エネルギーを吸収・放出する作用を有する潜熱蓄熱材(高粘度液状/メラミンカプセル有効成分30% 入目15kg)から成り立ち、目的の温度範囲に相転移点を設定した相転移物質を有し、含浸する単層ガラス繊維状フィルターの厚さにより熱エネルギーを増やせる。
(三木理研工業株式会社製品資料による)
【0022】
又本発明に採用した単層ガラス繊維状フィルターは、厚さ2~10mmの業務用エアコンや換気扇などの防汚や空気清浄用に活用するものであり、材質はポリエステル、ビニロン、難燃剤、リンチッソ系化合物の材質からなる難燃性材である。
(新北九州工業株式会社製エコフ厚資料による)
【0023】
本発明の形態は、潜熱蓄熱材/相転移物質(PMCD)を単層ガラス繊維状フィルターに空隙率10%以下に含浸させており、前記含浸した単層のガラス繊維フィルターを1日以上乾燥させた片面は凹凸状の表面を形成し、もう一方の片面は前記片面より前記潜熱蓄熱材(PMCD)を多く含んだ平滑な表面を成形しことを特徴とする潜熱蓄熱シートである。
【0024】
さらに、前記含浸した潜熱蓄熱シートは、柔軟性,通気性や蓄熱量を変えること無く、さらに容易に曲げ加工や切断加工が可能となる。
【0025】
又、前記含浸した潜熱蓄熱シートの成形過程において、円筒形や四角形・三角形などの使用目的の形状に変更することができる蓄熱蓄熱シートである。
【0026】
又、潜熱蓄熱材(PMCD)をレンガタイル調の大きさに加工した単層のガラス繊維状フィルターに含浸することにより、凹凸のレンガタイル形状潜熱蓄熱シートが成形でき、さらに前記レンガ形状蓄熱蓄熱シートの表面をエイジング加工することにより、汎用性が拡大する。
【0027】
本発明の前記潜熱蓄熱シートの仕様一例として,単層のガラス繊維状フィルター厚さ4ミリを選択し、潜熱蓄熱材(PMCD)25℃を空隙率10%で含浸した潜熱蓄熱シートは2ミリ厚になり、前記潜熱蓄熱シートの性能データは、203kj/平方メートル・110kj/キログラム(建材試験センター解析による)であり、次世代蓄熱建材としても登録された。
【0028】
次に、前記特許文献1~3と本発明との性能評価と特徴を表1に示す。
【0029】
【0030】
表1から、本発明は、特許文献1~3に比較して、常温で含浸し、乾燥するローコストな成形過程で、単層材の極薄厚で最大の蓄熱密度を有する顕著な効果を示唆されている。
【0031】
本発明の活用方法は、再生エネルギー熱と空調機による冷暖房熱を保温や蓄熱するための利用し、さらに建物室内の床や壁などの冷暖房熱を蓄熱や放熱する次世代省エネ型空調システムに利用することができる。
【0032】
従来では前記太陽熱を取込むダクト管内で5~8℃の熱損失が生じるのが一般的であるが、前記太陽熱を取込む断熱ダクト内部に、パイプ形状又はシート状の潜熱蓄熱シートを施工することにより、ダクト管内を保温材に利用でき、太陽熱を蓄熱し、さらに太陽熱が薄れた時間帯には放熱するため、持続した太陽熱を取入れることが可能となる。
【0033】
さらに、太陽熱と空調機からの冷暖房空調熱は、送風手段に利用するダクトやチャンバー部材から熱損失が生じるが、ダクト、チャンバー、顕熱蓄熱材の内部に潜熱蓄熱シートを施工することにより、前記太陽熱と空調熱とを蓄熱又は放熱を繰り返しながら室内に吹出されため、前記熱損失を軽減し、建物内を空調する電力が大幅に削減できる。
【0034】
前記の潜熱蓄熱シート25℃と顕熱蓄熱材のW蓄熱材を施工した実施例では、次の効果が確認できた。
暖房22℃設定のエアコン5馬力で全館空調運転した結果、am7時頃に室外機停止後、送風運転になり、pm4時頃の各場所の吹出す温度は室内機後の潜熱蓄熱装置内:22℃・室内の1F吹出し給気:25℃・室内温度は22℃である。
場所:広島県福山市内・建物:在来工法65坪・Ua値:0.4・日時:2019‐01‐16・外気平均温度:8℃
【0035】
前記の実例結果、室外機の暖房運転が停止後、送風運転において8時間以上の経過後においても、室温22℃を保持していることは、従来にない顕著な効果を得ることができた。
【0036】
さらに、前記実施例から、太陽光発電(PV)を利用して、日中に全館空調システムを運転することにより、室内を全館空調すると同時に、前記空調した熱(+再生可能エネルギー熱)を潜熱顕熱蓄熱材に蓄熱し、前記蓄熱を利用して深夜に全館空調することが可能となり、さらにヒートショックや熱中症の予防対策にもなり、基本的には太陽光発電(PV)のみで全館空調する自家消費型次世代省エネ蓄熱システムが実現できる。