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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022053134
(43)【公開日】2022-04-05
(54)【発明の名称】車両用駆動装置
(51)【国際特許分類】
   H02K 16/00 20060101AFI20220329BHJP
【FI】
H02K16/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020159773
(22)【出願日】2020-09-24
(71)【出願人】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(74)【代理人】
【識別番号】110002871
【氏名又は名称】特許業務法人坂本国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 良太
(72)【発明者】
【氏名】津田 哲平
(57)【要約】
【課題】軸方向に直角な方向に視て互いに重複するように配置された複数のロータを備える車両用駆動装置において、複数のロータの配置の自由度を高める。
【解決手段】回転電機1と、遊星歯車機構2とを含み、回転電機1は、軸方向に直角な方向に視て互いに重複するように配置された複数のロータ20を含み、遊星歯車機構2は、複数のロータ20の回転軸A11、A12に連結される、車両用駆動装置100が開示される。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転電機と、
遊星歯車機構とを含み、
前記回転電機は、軸方向に直角な方向に視て互いに重複するように配置された複数のロータを含み、
前記遊星歯車機構は、前記複数のロータの回転軸に連結される、車両用駆動装置。
【請求項2】
前記回転電機は、前記複数のロータのそれぞれを収容する複数のロータ空間部を有するステータを含み、
前記ステータは、軸方向に視て、前記複数のロータのうちの、周方向に隣り合う少なくとも2つのロータの間に、ケースとの締結部を有する、請求項1に記載の車両用駆動装置。
【請求項3】
前記複数のロータは、
軸方向の第1側から前記遊星歯車機構の第1要素に連結される第1ロータと、
軸方向の前記第1側とは逆の第2側から前記遊星歯車機構の第2要素に連結される第2ロータとを含む、請求項1又は2に記載の車両用駆動装置。
【請求項4】
前記第1ロータは、永久磁石式モータとかご型誘導モータのうちのいずれか一方であり、前記第2ロータは、永久磁石式モータとかご型誘導モータのうちのいずれか他方である、請求項3に記載の車両用駆動装置。
【請求項5】
前記第1ロータは、軸方向に視て、前記遊星歯車機構の出力軸から第1距離だけ離れた位置に前記回転軸を有し、
前記第2ロータは、軸方向に視て、前記遊星歯車機構の中心軸から、前記第1距離とは異なる第2距離だけ離れた位置に前記回転軸を有する、請求項3又は4に記載の車両用駆動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車両用駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
軸方向に直角な方向に視て互いに重複するように配置された複数のロータを備え、隣接するロータ同士の間にステータが配置されている回転電機を備える技術が知られている。この回転電機を備える駆動装置は、軸方向の一方側に、複数のロータのそれぞれにより回転されかつ周方向で隣接する同士が噛み合う第1駆動ギヤと、軸方向の他方側に、複数のロータの一部により回転される第2駆動ギヤとを含み、第2駆動ギヤに噛み合う出力ギヤを介して回転電機の回転トルクが取り出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-200416号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記のような従来技術では、複数のロータのそれぞれにより回転される第1駆動ギヤは、周方向で隣接する同士が噛み合う態様で設けられるので、かかる第1駆動ギヤの配置に起因して複数のロータの配置の自由度が低いという問題がある。
【0005】
そこで、1つの側面では、本開示は、軸方向に直角な方向に視て互いに重複するように配置された複数のロータを備える車両用駆動装置において、複数のロータの配置の自由度を高めることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
1つの側面では、回転電機と、
遊星歯車機構とを含み、
前記回転電機は、軸方向に直角な方向に視て互いに重複するように配置された複数のロータを含み、
前記遊星歯車機構は、前記複数のロータの回転軸に連結される、車両用駆動装置が提供される。
【発明の効果】
【0007】
1つの側面では、本発明によれば、軸方向に直角な方向に視て互いに重複するように配置された複数のロータを備える車両用駆動装置において、複数のロータの配置の自由度を高めることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】一実施例による回転電機を軸方向のX1側から示す斜視図である。
図2】回転電機を軸方向のX2側から示す斜視図である。
図3】回転電機を軸方向のX2側から示す平面図である。
図4A】ステータコアの単品状態を示す斜視図である。
図4B】ステータの単品状態を示す斜視図である。
図5】回転電機を含む車両用駆動装置のスケルトン図である。
図6A】回転電機を含む電気回路の一例の概略図である。
図6B】他の一例による電気回路の概略図である。
図7】本実施例の制御装置による回転電機の制御例を示す概略フローチャートである。
図8】車両用駆動装置における遊星歯車機構の速度線図である。
図9】本実施例による回転電機の、ケースへの取り付け態様を説明する概略図である。
図10】比較例による回転電機の、ケースへの取り付け態様を説明する概略図である。
図11】他の比較例による回転電機をX2側から示す斜視図である。
図12】低背化配置のための各ロータの配置を模式的に示す図である。
図13】4つのロータによる一のレイアウト例を説明する概略図である。
図13B図13のレイアウト例において向きを変化させた場合の概略図である。
図14】4つのロータによる他の一のレイアウト例を説明する概略図である。
図14B図14のレイアウト例において向きを変化させた場合の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照しながら各実施例について詳細に説明する。図面の寸法比率はあくまでも一例であり、これに限定されるものではなく、また、図面内の形状等は、説明の都合上、部分的に誇張している場合がある。また、図面では、見やすさのために、複数存在する同一属性の部位には、一部のみしか参照符号が付されていない場合がある。また、未説明のため、一部の図面で図示されている要素が、他の図面で図示されていない場合がある。また、2つの部材間に対して使用される用語「連結」は、動力が伝達可能な態様で当該2つの部材が接続される状態を表し、当該2つの部材間に他の部材が介在する接続態様を含む概念である。
【0010】
図1は、一実施例による回転電機1を軸方向の一方側から示す斜視図であり、図2は、回転電機1を軸方向の他方側から示す斜視図であり、図3は、回転電機1を軸方向の他方側から示す平面図である。図4Aは、ステータコア11の単品状態を示す斜視図であり、図4Bは、ステータ10の単品状態を示す斜視図である。
【0011】
以下の説明において、特に言及しない限り、軸方向とは、回転電機1の出力軸(第1軸A1)が延在する方向を指し、径方向とは、第1軸A1を中心とした径方向を指す。従って、径方向外側とは、第1軸A1から離れる側を指し、径方向内側とは、第1軸A1に向かう側を指す。また、周方向とは、第1軸A1まわりの回転方向に対応する。また、図1には、X方向と、X方向に沿ったX1側(第1側の一例)とX2側(第2側の一例)が定義されている。X方向は、軸方向に平行である。
【0012】
本実施例では、回転電機1は、ステータ10と、複数のロータ20とを含む。
【0013】
ステータ10は、図4A及び図4Bに示すように、ステータコア11と、コイル12とを含む。
【0014】
ステータコア11は、磁性体の積層鋼板からなる。ステータコア11は、複数のロータ20のそれぞれに共通であり、複数の筒状のロータ空間部113を有する。筒状のロータ空間部113は、ステータコア11を軸方向に貫通する態様で形成される。ロータ空間部113は、ロータ20ごとに設けられる。従って、ロータ空間部113の数は、ロータ20の数と同じであり、本実施例では、一例として、6つである。なお、他の実施例では、ロータ20の数(及びそれに伴いロータ空間部113の数)は、6つ以外の、2つ以上の任意の数であってよい。
【0015】
ステータコア11には、コイル12が巻回される複数のスロット112が形成される。複数のスロット112は、ロータ空間部113のそれぞれに対して、ロータ空間部113の内周面に形成される。
【0016】
ステータコア11は、更に、第1軸A1を含む中央部に、軸心空間部110を有する。軸心空間部110は、ステータコア11を軸方向に貫通する態様で形成される。軸心空間部110は、軸方向に視て、略円形の外形形状であるが、外形形状は任意である。軸心空間部110は、軸方向に視て、回転電機1の出力軸(第1軸A1)と重なる。軸心空間部110には、後述するサンギヤ軸231が挿通される。
【0017】
なお、軸心空間部110は、上述した複数のロータ空間部113とは径方向で連通しない態様で形成されてよい。複数のロータ空間部113は、軸心空間部110よりも径方向外側で、第1軸A1まわりに設けられる。複数のロータ空間部113は、第1軸A1まわりで回転対称となる態様で設けられてよい。なお、複数のロータ空間部113は、軸方向に交差する方向で互いに対して連通しない態様で形成されてよい。
【0018】
ステータコア11は、ケースCS(図9参照)との間の締結部119を有する。締結部119は、例えば軸方向の孔であり、ボルトBTが挿通される。この場合、ケースCSにボルトBTを締結することで、ステータコア11をケースCSに固定できる。
【0019】
一の締結部119は、好ましくは、複数のロータ空間部113のうちの、周方向で隣り合う2つのロータ空間部113の間に配置される。この場合、複数の締結部119のうちの、少なくとも1つが、周方向で隣り合う2つのロータ空間部113の間に配置されてもよい。あるいは、複数の締結部119のそれぞれは、周方向で隣り合う、対応する2つのロータ空間部113の間に、配置されてもよい。本実施例では、3つの締結部119が、周方向で隣り合う2つのロータ20間に配置される。この場合、例えば、ステータコア11は、軸方向に視て、複数のロータ20に外接する外接円よりも、径方向内側に締結部119を有してもよい。これにより、ステータコア11の径方向の小型化及びそれに伴う回転電機1の径方向の小型化を図ることができる。
【0020】
コイル12は、図4A及び図4Bに示すように、ステータコア11のスロット112に巻装される。従って、コイル12は、ロータ空間部113のそれぞれごとに設けられる。以下では、ロータ空間部113ごとに異なるコイル12を区別する場合、コイル12-1~12-6と表記する。コイル12-1~12-6のそれぞれは、3相コイルを形成してよい。ただし、変形例では、2つ以上のロータ空間部113に対して、共通のコイルが巻装されてもよい。例えば、軸まわりに対角に配置される2つのロータ空間部113ごとに、共通のコイルが巻装されてもよい。
【0021】
複数のロータ20のそれぞれは、複数のロータ空間部113のそれぞれに対応して設けられる。従って、複数のロータ20は、径方向に視て(すなわち、軸方向に直角な方向に視て)互いに重複するように配置される。
【0022】
ロータ20のそれぞれは、第1軸A1に対して平行に回転軸A11又はA12を有する。複数のロータ20の回転軸A11、A12は、第1軸A1を中心とした同心状に配置されてよい。あるいは、複数のロータ20の回転軸A11、A12は、第1軸A1を中心として同心状でない態様で配置されてもよい。
【0023】
複数のロータ20は、好ましくは、構成の異なる2種類以上のロータを含む。ここで、ロータの構成とは、当該ロータがステータ10と協動してモータとして機能した場合の特性に関連する構成である。すなわち、ロータの構成が異なる場合は、当該ロータがステータ10と協動してモータとして機能した場合の特性も異なる。また、構成の相違は、サイズの相違に起因した構成の相違を含む概念である。例えば、永久磁石式モータの場合、サイズが同じ場合でも、構成の相違は、例えば永久磁石の配列、磁極数等の相違により実現できる。
【0024】
本実施例では、一例として、複数のロータ20は、第1ロータ20Aと、第2ロータ20Bとを含む。第1ロータ20A及び第2ロータ20Bは、周方向で交互に配置される。ただし、変形例では、複数のロータ20は、3種類以上のロータを含んでよいし、1種類のみのロータを含んでよい。また、複数種類のロータを含む場合、当該複数種類のロータの周方向の配列は任意である。なお、以下では、第1ロータ20Aと第2ロータ20Bとを特に区別しない場合は、ロータ20という用語も依然として利用する。
【0025】
第1ロータ20Aは、永久磁石(図示せず)を備えることで、永久磁石式モータとしての特性を有する。なお、第1ロータ20Aは、外周面に永久磁石を備えてもよいし、外周面よりも内側に永久磁石を備えてもよい。
【0026】
第1ロータ20Aの回転軸A11には、図1に示すように、第1モータ出力ギヤ21が連結される。具体的には、第1ロータ20Aの回転軸A11は、X1側の端部に、第1モータ出力ギヤ21が連結される。第1モータ出力ギヤ21は、第1ロータ20Aの回転軸A11と一体的に回転するように、第1ロータ20Aの回転軸A11に連結される。第1モータ出力ギヤ21は、図5を参照して後述するように遊星歯車機構2に連結される。
【0027】
第2ロータ20Bは、ステータ10と協動して、かご型誘導モータとして機能する特性を有する。例えば、第2ロータ20Bは、外周面に溝が軸方向に対して斜めに延在する斜溝回転子の形態であってよい。
【0028】
第2ロータ20Bの回転軸A12には、図2に示すように、第2モータ出力ギヤ22が設けられる。具体的には、第2ロータ20Bの回転軸A12は、X2側の端部に、第2モータ出力ギヤ22が連結される。第2モータ出力ギヤ22は、第2ロータ20Bの回転軸A12と一体的に回転するように、第2ロータ20Bの回転軸A12に連結される。
【0029】
第2モータ出力ギヤ22のそれぞれは、第1軸A1を中心として回転する第3モータ出力ギヤ23に径方向に噛み合う。第3モータ出力ギヤ23は、サンギヤ軸231と一体的に回転するように、サンギヤ軸231に連結される。第2モータ出力ギヤ22及び第3モータ出力ギヤ23は減速ギヤ(リダクションギヤ)を形成する。
【0030】
このような回転電機1は、実質的には、インナロータ型の複数の回転電機要素を複合的に含む構成となる。このような回転電機1は、任意の用途で利用できるが、例えば、図5に示すように、遊星歯車機構2に連結されることで、車両用駆動装置100の構成要素として好適である。
【0031】
図5は、回転電機1を含む車両用駆動装置100のスケルトン図である。なお、図5では、見やすさのために、複数のロータ20のうちの、一部の第1ロータ20Aが2重の省略線のX1側に示され、一部の第2ロータ20Bが同2重の省略線のX2側に示されている。
【0032】
図5に示す例では、車両用駆動装置100は、車輪Wの駆動源となる回転電機1と、回転電機1と車輪Wとを結ぶ動力伝達経路に設けられた駆動伝達機構7と、を備える。駆動伝達機構7は、遊星歯車機構2と、カウンタギヤ機構4と、差動歯車機構5と、左右の出力部材61、62と、を備える。
【0033】
遊星歯車機構2は、回転電機1のX1側に設けられる。遊星歯車機構2は、中心軸が第1軸A1と一致する。遊星歯車機構2は、サンギヤ2S(第2要素の一例)と、ピニオンギヤ2Pと、キャリア2CR(第1要素の一例)と、リングギヤ2Rとを含む。
【0034】
サンギヤ2Sは、サンギヤ軸231のX1側端部に連結される。サンギヤ2Sは、サンギヤ軸231と一体的に回転するように、サンギヤ軸231に連結される。
【0035】
ピニオンギヤ2Pは、第1軸A1まわりに公転しつつ自転可能となる態様で、径方向内側でサンギヤ2Sと噛み合い、かつ、径方向外側でリングギヤ2Rに噛み合う。
【0036】
キャリア2CRは、第1軸A1まわりに回転可能となる態様で、上述した各第1モータ出力ギヤ21と各ピニオンギヤ2Pに連結される。この場合、キャリア2CRは、入力ギヤ24により第1モータ出力ギヤ21と噛み合う。
【0037】
リングギヤ2Rは、第1軸A1まわりに回転可能となる態様で、径方向内側でピニオンギヤ2Pに噛み合い、径方向外側でカウンタギヤ機構4の第1カウンタギヤ42に噛み合う。リングギヤ2Rは、回転電機1からの回転トルク(駆動力)をカウンタギヤ機構4に伝達するギヤである。
【0038】
カウンタギヤ機構4は、動力伝達経路において、遊星歯車機構2と差動歯車機構5との間に配置される。カウンタギヤ機構4は、カウンタ軸41と、第1カウンタギヤ42と、第2カウンタギヤ43とを有する。
【0039】
カウンタ軸41は、第2軸A2まわりに回転する回転部材である。第2軸A2は、第1軸A1に平行に延在する。第1カウンタギヤ42は、カウンタギヤ機構4の入力要素である。第1カウンタギヤ42は、遊星歯車機構2のリングギヤ2Rと噛み合う。第1カウンタギヤ42は、カウンタ軸41と一体的に回転するように、カウンタ軸41に連結される。
【0040】
第2カウンタギヤ43は、カウンタギヤ機構4の出力要素である。本実施例では、一例として、第2カウンタギヤ43は、第1カウンタギヤ42よりも小径に形成される。第2カウンタギヤ43は、カウンタ軸41と一体的に回転するように、カウンタ軸41に連結される。
【0041】
差動歯車機構5は、その回転軸心としての第3軸A3上に配置される。第3軸A3は、第1軸A1に平行に延在する。差動歯車機構5は、回転電機1の側から伝達される駆動力を、左右の出力部材61、62に分配する。差動歯車機構5は、差動入力ギヤ51を備え、差動入力ギヤ51は、カウンタギヤ機構4の第2カウンタギヤ43と噛み合う。また、差動歯車機構5は、差動ケース52を備え、差動ケース52内には、ピニオンシャフトや、ピニオンギヤ、左右のサイドギヤ等が収容される。左右のサイドギヤは、それぞれ、左右の出力部材61、62と一体的に回転するように連結される。
【0042】
左右の出力部材61、62のそれぞれは、左右の車輪Wに駆動連結される。左右の出力部材61、62のそれぞれは、差動歯車機構5によって分配された駆動力を車輪Wに伝達する。
【0043】
このようにして回転電機1は、複数のロータ20の回転トルクを、第2カウンタギヤ43及び第3モータ出力ギヤ23からなる減速ギヤ、及び、遊星歯車機構2を介して、駆動伝達機構7に伝達する。
【0044】
図6Aは、回転電機1を含む電気回路200の一例の概略図であり、図6Bは、他の一例による、回転電機1を含む電気回路200Aの概略図である。図6A及び図6Bには、制御装置500についても併せて示される。図6A及び図6Bにおいて、制御装置500に対応付けられた点線矢印は、情報(データ)のやり取りを表す。
【0045】
回転電機1は、制御装置500によるインバータINVの制御を介して駆動される。図6Aに示す電気回路200では、回転電機1は、複数のロータ空間部113に対応付けて設けられるコイル12-1~12-6に、共通のインバータINVを介して電気的に接続される。なお、インバータINVは、例えば、相ごとに、電源Vaの高電位側と低電位側とにスイッチング素子(例えばMOSFET:Metal-Oxide-Semiconductor Field Effect TransistorやIGBT:Insulated Gate Bipolar Transistor)を備え、各スイッチング素子は、所望の回転トルクが発生するようにPWM(Pulse Width Modulation)駆動されてよい。なお、電源Vaは、例えば比較的定格電圧の高いバッテリであり、例えばリチウムイオンバッテリや燃料電池等であってよい。
【0046】
なお、図6Aに示す電気回路200では、複数のロータ20に対して共通のインバータINVが利用されるが、図6Bに示す他の例の電気回路200Aでは、複数のロータ20に対して個別のインバータINVが利用される。この場合、各インバータINVは、互いに並列に、電源Vaの高電位側と低電位側の間に電気的に接続される。この場合、コイル12-1~12-6のそれぞれに対して独立に通電を行うことができる。
【0047】
本実施例では、図6Aに示す電気回路200や図6Bに示す電気回路200Aのように、電源Vaの高電位側と低電位側の間には、インバータINVに対して並列に、平滑コンデンサCが電気的に接続される。なお、図6Bに示す電気回路200Aでは、平滑コンデンサCは共用であるが、平滑コンデンサCについても、インバータINVと同様に、コイル12-1~12-6のそれぞれごとに、互いに並列に、電源Vaの高電位側と低電位側の間に電気的に接続されてもよい。
【0048】
次に、図7から図8を参照して、本実施例による回転電機1の好ましい制御例について説明する。なお、以下の説明において、「所定」とは、本制御よりも前(例えば工場出荷前)に規定されている態様を指す。
【0049】
図7は、本実施例の制御装置500による回転電機1の制御例を示す概略フローチャートである。図8は、車両用駆動装置100における遊星歯車機構2の速度線図である。なお、図8では、縦軸は回転電機1の回転数を表す。
【0050】
ステップS700では、制御装置500は、第1モードで回転電機1を駆動中であるか否かを判定する。第1モードは、図8の線図「MD1」に示すように、サンギヤ2S及びキャリア2CRが共に正方向に回転するモードである。この場合、キャリア2CRが正方向に回転する(すなわち第1ロータ20Aが回転する)ので、逆起電力が発生する。判定結果が“YES”の場合、ステップS702に進み、それ以外の場合は、ステップS706に進む。
【0051】
ステップS702では、制御装置500は、逆起電力が所定閾値以上であるか否かを判定する。逆起電力が所定閾値以上であるか否かは、例えば、平滑コンデンサCの両端電圧が所定電圧以上であるか否かに基づいて、検出されてもよいし、第1ロータ20Aの回転数が所定回転数以上であるか否かに基づいて、検出されてもよい。判定結果が“YES”の場合、ステップS704に進み、それ以外の場合は、動作モードを第1モードに維持したままステップS710に進む。
【0052】
ステップS704では、制御装置500は、動作モードを第2モードにセットする。第2モードは、図8の線図「MD2」に示すように、キャリア2CRの回転数が0になるようにサンギヤ2Sが逆回転するモードである。この場合、キャリア2CRが回転しない(すなわち第1ロータ20Aが回転しない)ので、逆起電力が発生しない。
【0053】
ステップS706では、制御装置500は、第1モードへの復帰条件が成立したか否かを判定する。第1モードへの復帰条件は、任意であり、例えば逆起電力が所定閾値よりも有意に低下するような状況下で満たされてよい。判定結果が“YES”の場合、ステップS708に進み、それ以外の場合は、動作モードを第2モードに維持したままステップS710に進む。
【0054】
ステップS708では、制御装置500は、動作モードを第1モードにセットする。
【0055】
ステップS710では、制御装置500は、今回周期の動作モード(第1動作モード又は第2動作モード)に応じて回転電機1を駆動する。
【0056】
このようにして図7に示す処理によれば、逆起電力が所定閾値を有意に超えないように、第1モードと第2モードを切り替えて、回転電機1を制御できる。なお、図7及び図8に示す例では、第2動作モードは、キャリア2CRの回転数が0になるようにサンギヤ2Sが逆回転するモードであるが、キャリア2CRの回転数が、比較的低い所定値以下に維持されるようにサンギヤ2Sが逆回転するモードであってもよい。
【0057】
ところで、本実施例では、上述したように、回転電機1は、第1ロータ20Aと第2ロータ20Bとを含み、第1ロータ20Aは、ステータ10と協動して永久磁石式モータとして機能でき、第2ロータ20Bは、ステータ10と協動してかご型誘導モータとして機能できる。
【0058】
永久磁石式モータとかご型誘導モータとは、特性等が異なる。例えば、永久磁石式モータは、比較的低い回転数で比較的高いトルクを発生できるが、逆起電力が発生する。他方、かご型誘導モータは、逆起電力が発生せず、比較的高い回転数で有利であるが、損失が比較的大きい。
【0059】
ここで、逆起電力により比較的高い逆起電圧が平滑コンデンサCの両端に発生すると、例えば平滑コンデンサCに電気的に接続されうる他のシステムに影響するおそれがある。
【0060】
この点、図7から図8に示す例では、第2ロータ20Bを備えることで、第1ロータ20Aの回転数を略ゼロに維持しつつ、回転電機1の回転トルクを発生させることが可能である。すなわち、逆起電力が所定閾値を有意に超えない態様で、回転電機1の回転トルクを発生させることが可能である。これにより、平滑コンデンサCに電気的に接続されうる他のシステムの耐圧を過剰に高めることなく、回転電機1を駆動させることができる。
【0061】
このようにして本実施例によれば、複数のロータ20の少なくとも一部が異なる構成を有することで、多様の特性を組み合わせた特性を有する回転電機1を実現できる。
【0062】
次に、図9以降を参照して、本実施例の更なる効果について説明する。
【0063】
図9は、本実施例による回転電機1の、ケースCSへの取り付け態様を説明する概略図である。図10は、比較例による回転電機1”の、ケースCSへの取り付け態様を説明する概略図である。図9及び図10では、軸方向に視たケースCSの外形とともに、軸方向に視た回転電機1及び回転電機1”の延在範囲がハッチング領域R1、R1”で示されている。また、図9及び図10には、上下方向に平行なY方向が図示されている。
【0064】
比較例による回転電機1”は、単一のロータ(図示せず)を備えるインナロータ型であり、ステータ(図示せず)の径方向外側には、径方向外側に突出する締結部119”が設けられる。この場合、締結部119”が、ロータよりも径方向外側に設定されるので、ケースCSにおける回転電機1”の占める領域R1”(軸方向に視た領域)が比較的大きくなる。
【0065】
これに対して、本実施例の回転電機1によれば、上述したように、共通のステータ10(図1等参照)を備え、当該ステータ10において、締結部119が周方向でロータ20間に配置されるので、ケースCSにおける回転電機1の占める領域R1(軸方向に視た領域)を、比較例に比べて有意に低減できる。また、締結部119の配置の自由度が高くなるので、比較例に比べて、締結部119に起因した搭載制約を低減できる。
【0066】
また、本実施例の回転電機1によれば、上述したように、ケースCSにおける回転電機1の占める領域R1(軸方向に視た領域)を低減できるので、回転電機1の低背化及びそれに伴うケースCSの低背化を図ることができる。例えば、図10に示す比較例では、上下で領域R1”に接する2つのラインL100”間の距離が比較的大きくなるのに対して、本実施例によれば、上下で領域R1に接する2つのラインL100間の距離を低減できる。
【0067】
図11は、他の比較例による回転電機1’をX2側から示す斜視図である。比較例による回転電機1’は、本実施例による回転電機1に対して、遊星歯車機構2に代えて、単独の減速ギヤ機構2’が接続される点が異なる。具体的には、各ロータ20は、X2側で第1駆動ギヤ21’に連結され、各第1駆動ギヤ21’は、第2駆動ギヤ22’に噛み合う。この場合、各第1駆動ギヤ21’と第2駆動ギヤ22’が減速ギヤ機構2’を形成する。
【0068】
このような比較例では、複数のロータ20のそれぞれにより回転される第1駆動ギヤ21’は、第1軸A1まわりに同心状に配置されるので、かかる第1駆動ギヤ21’の配置に起因して、複数のロータ20の配置の自由度が低下しやすいという問題がある。例えば、比較例では、複数のロータ20の一部を、図示した位置から径方向内側にオフセットさせることができない。
【0069】
これに対して、本実施例によれば、上述したように、回転電機1は遊星歯車機構2が接続される。すなわち、回転電機1とカウンタギヤ機構4との間に遊星歯車機構2が設けられる。これにより、複数のロータ20の配置の自由度を高めることができる。具体的には、第1ロータ20Aは、図1から図3等に図示した位置から径方向内側にオフセットさせることや、図示した位置から径方向外側にオフセットさせることが可能である。すなわち、第1ロータ20Aは、X1側で、キャリア2CR(図5参照)と連結されるので、第3モータ出力ギヤ23の影響を直接的に受けることなく、配置できる。このようにして、本実施例によれば、遊星歯車機構2と回転電機1との間の接続を、回転電機1の軸方向両側から実現することで、第1軸A1まわりでの複数のロータ20の配置の自由度を高めることができる。
【0070】
従って、本実施例によれば、複数のロータ20の配置に基づいて、回転電機1の低背化及びそれに伴うケースCSの低背化を図ることができる。この場合、上述した締結部119の配置による効果とも相まって、回転電機1の低背化及びそれに伴うケースCSの低背化を効果的に図ることができる。
【0071】
また、本実施例によれば、上述したように低背化を図ることができることから、特殊なレイアウトに対しても適合しやすくなる。
【0072】
例えば、図12に示すような低背化配置を実現することも可能である。図12は、軸方向に視たときの、各ロータ20の配置を模式的に示す図である。なお、図12には、上下方向に平行なY方向が図示されている。ただし、変形例では、Y方向は、上下方向に対して傾斜してもよいし、水平面内に延在してもよい。これは、後出する図13及び図14も同様である。
【0073】
図12に示す回転電機1Aは、ステータ10Aに6つのロータ20が設けられ、6つのロータ20は、対角関係に位置する2つが対をなし、各対のロータは、それぞれ、軸方向に視て第1軸A1から距離d1、d2、d3だけ離れて配置される。6つのロータ20は、第1対のロータ20-1と、第2対のロータ20-2と、第3対のロータ20-3とを含み、ロータ20-1の回転軸A13-1と第1軸A1との間の距離d1(第1距離の一例)、ロータ20-2の回転軸A13-2と第1軸A1との間の距離d2、及び、ロータ20-3の回転軸A13-3と第1軸A1との間の距離d3(第2距離の一例)は、少なくとも1つが他の2つに対して異なる。この場合、上下方向に配置された第3対のロータ20-3に係る距離d3が最も短く、距離d1及び距離d2は略同じである。なお、第1対のロータ20-1を構成する2つのロータ20は、構成が同じであってよく、第2対のロータ20-2を構成する2つのロータ20は、構成が同じであってよく、第3対のロータ20-3を構成する2つのロータ20は、構成が同じであってよい。また、第1対のロータ20-1を構成する2つのロータ20と、第2対のロータ20-2を構成する2つのロータ20と、第3対のロータ20-3を構成する2つのロータ20とは、すべて同じ構成であってもよいし、少なくとも1対に係るロータが、他の2対に係るロータと異なる構成を有してもよい。
【0074】
このような図12に示す回転電機1Aによれば、距離d3を他の距離d1、d2よりも小さくし、かつ、距離d3に係る第3対のロータ20-3を上下方向に配置することで、上下方向に沿った効率的な低背化配置を実現できる。なお、上下方向以外の方向に沿った低背化配置を実現する場合は、当該方向に応じて、距離d3に係る第3対のロータ20-3を配置すればよい。
【0075】
次に、図13から図14Bを参照して、複数のロータ20の多様なレイアウト例について概説する。
【0076】
図13は、4つのロータ20による一のレイアウト例を説明する概略図である。
【0077】
図13に示す回転電機1Bは、ステータ10Bに4つのロータ20が設けられ、4つのロータ20は、対角関係に位置する2つが対をなし、対ごとに、第1軸A1から異なる距離に配置される。具体的には、4つのロータ20は、第1対のロータ20-4と、第2対のロータ20-5とを含み、ロータ20-4の回転軸A13-4と第1軸A1との間の距離d4(第1距離の一例)、ロータ20-5の回転軸A13-5と第1軸A1との間の距離d5(第2距離の一例)は、互いに対して異なる。この場合、上下方向に配置された第1対のロータ20-4に係る距離d4は、距離d5よりも短い。なお、第1対のロータ20-4を構成する2つのロータ20は、構成が同じであってよく、第2対のロータ20-5を構成する2つのロータ20は、構成が同じであってよい。また、第1対のロータ20-4を構成する2つのロータ20と、第2対のロータ20-5を構成する2つのロータ20とは、すべて同じ構成であってもよいし、互いに異なる構成(サイズ以外の構成)を有してもよい。
【0078】
このような図13に示す回転電機1Bによれば、距離d4を他の距離d5よりも小さくし、かつ、距離d4に係る第3対のロータ20-3を上下方向に配置することで、上下方向に沿った低背化配置を実現できる。なお、上下方向以外の方向に沿った低背化配置を実現する場合は、当該方向に応じて、距離d4に係る第1対のロータ20-4を配置すればよい。
【0079】
あるいは、図13Bに示すように、軸方向に視て回転軸A13-4と回転軸A13-5とを結ぶ直線が上下方向に対して直角になるような向きで回転電機1Bを配置することで、上下方向に沿った更なる低背化配置を実現してもよい。
【0080】
図14は、4つのロータ20による他の一のレイアウト例を説明する概略図である。
【0081】
図14に示す回転電機1Cは、ステータ10Cに4つのロータ20が設けられ、4つのロータ20は、対角関係に位置する2つが対をなし、対ごとに、第1軸A1から異なる距離に配置される。具体的には、4つのロータ20は、第1対のロータ20-6と、第2対のロータ20-7とを含み、ロータ20-6の回転軸A13-6と第1軸A1との間の距離d6(第1距離の一例)、ロータ20-7の回転軸A13-7と第1軸A1との間の距離d7(第2距離の一例)は、互いに対して異なる。図14の場合、上下方向に配置された第1対のロータ20-6に係る距離d6は、距離d7よりも長いが、短くてもよい。なお、第1対のロータ20-6を構成する2つのロータ20は、構成が同じであってよく、第2対のロータ20-7を構成する2つのロータ20は、構成が同じであってよい。また、第1対のロータ20-6を構成する2つのロータ20と、第2対のロータ20-7を構成する2つのロータ20とは、サイズ(径)が異なる以外は、すべて同じ構成であってもよいし、異なる構成を有してもよい。
【0082】
このような図14に示す回転電機1Cによれば、サイズの異なる複数のロータ20を組み合わせて第1軸A1まわりに配置できる。なお、図14に示す回転電機1Cにおいて、上下方向で低背化配置を実現する場合は、図14Bに示すような向きで回転電機1Cを配置することで低背化配置を実現してもよい。
【0083】
なお、ここでは、図13から図14Bを参照して、4つのロータ20について説明したが、他の数の場合も同様に多様なレイアウトが可能である。また、図13から図14Bに示す例では、周方向でロータ20間に配置される締結部119が一例として2か所示されているが、締結部119の数は任意である。
【0084】
以上、各実施例について詳述したが、特定の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された範囲内において、種々の変形及び変更が可能である。また、前述した実施例の構成要素を全部又は複数を組み合わせることも可能である。また、各実施形態の効果のうちの、従属項に係る効果は、上位概念(独立項)とは区別した付加的効果である。
【0085】
例えば、上述した実施例(その変形例も同様、以下同じ)では、第1ロータ20Aが回転電機1のX1側から遊星歯車機構2のキャリア2CRに連結され、第2ロータ20Bが回転電機1のX2側から遊星歯車機構2のサンギヤ2Sに連結されるが、これに限られない。例えば、第2ロータ20Bが回転電機1のX1側から遊星歯車機構2のキャリア2CRに連結され、第1ロータ20Aが回転電機1のX2側から遊星歯車機構2のサンギヤ2Sに連結されてもよい。また、第1ロータ20Aが、回転電機1のX1側から、遊星歯車機構2の、キャリア2CR以外の要素に連結されてもよいし、第2ロータ20Bが、回転電機1のX2側から、遊星歯車機構2の、サンギヤ2S以外の要素に連結されてもよい。
また、上述した実施例では、遊星歯車機構2は、回転電機1のX1側に設けられるが、回転電機1のX2側に設けられてもよい。
【0086】
また、上述した実施例では、ステータ10は、複数のロータ20に共通であるが、これに限られない。すなわち、ステータ10は、複数のロータ20のそれぞれに対して設けられてもよいし、複数のロータ20の一部の複数に対して共通に設けられてもよい。
【符号の説明】
【0087】
1、1A、1B、1C・・・回転電機、2・・・遊星歯車機構、2S・・・サンギヤ(第2要素)、2CR・・・キャリア(第1要素)、20・・・ロータ、20A・・・第1ロータ、20B・・・第2ロータ、A11、A12、A13・・・回転軸、100・・・車両用駆動装置、CS・・・ケース
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5
図6A
図6B
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図13B
図14
図14B