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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022053162
(43)【公開日】2022-04-05
(54)【発明の名称】測位システムおよび測位方法
(51)【国際特許分類】
   G01S 19/14 20100101AFI20220329BHJP
   G01S 19/43 20100101ALI20220329BHJP
   G01S 19/41 20100101ALN20220329BHJP
【FI】
G01S19/14
G01S19/43
G01S19/41
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020159821
(22)【出願日】2020-09-24
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 第3回鉄道における準天頂衛星等システム活用検討会 開催日:令和1年12月25日 開催場所:中央合同庁舎3号館10階共用会議室A 第4回 鉄道における準天頂衛星等システム活用検討会 開催日:令和2年2月19日 開催場所:中央合同庁舎3号館1階共用会議室
(71)【出願人】
【識別番号】317005022
【氏名又は名称】独立行政法人自動車技術総合機構
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】特許業務法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山口 大助
(72)【発明者】
【氏名】工藤 希
(72)【発明者】
【氏名】竹内 俊裕
【テーマコード(参考)】
5J062
【Fターム(参考)】
5J062AA09
5J062BB01
5J062CC07
5J062DD24
5J062FF01
(57)【要約】
【課題】衛星による測位を行うシステムにおいて、異なる複数の測位手法を比較評価する。
【解決手段】衛星から送信された測位信号を受信するアンテナと、前記アンテナによって受信した測位信号を二つ以上に分配する分配器と、前記分配された測位信号を用いて、それぞれ異なる手法によって測位を行う複数の測位装置と、前記複数の測位装置間の測位誤差を取得する情報処理装置と、を含む、測位システム。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
衛星から送信された測位信号を受信するアンテナと、
前記アンテナによって受信した測位信号を二つ以上に分配する分配器と、
前記分配された測位信号を用いて、それぞれ異なる手法によって測位を行う複数の測位装置と、
前記複数の測位装置間の測位誤差を取得する情報処理装置と、
を含む、測位システム。
【請求項2】
前記複数の測位装置が取得した位置情報を、前記測位信号に含まれる時刻情報と関連付けてそれぞれ記憶する記憶装置をさらに含み、
前記情報処理装置は、同一の時刻情報が関連付いた位置情報同士を比較することで、前記複数の測位装置間の測位誤差を取得する、
請求項1に記載の測位システム。
【請求項3】
前記情報処理装置は、前記複数の測位装置間の測位誤差を時系列データとして記憶する、
請求項2に記載の測位システム。
【請求項4】
前記複数の測位装置は、第一の測位装置と、測位精度が前記第一の測位装置よりも低い、少なくとも二つの第二の測位装置と、を含み、
前記情報処理装置は、前記第一の測位装置が取得した位置情報と、前記第二の測位装置がそれぞれ取得した複数の位置情報のそれぞれとを比較する、
請求項1から3のいずれか1項に記載の測位システム。
【請求項5】
前記第一の測位装置は、リアルタイムキネマティック測位を行う測位装置である、
請求項4に記載の測位システム。
【請求項6】
前記複数の測位装置、および、前記情報処理装置が、同一の鉄道車両に搭載される、
請求項1から5のいずれか1項に記載の測位システム。
【請求項7】
衛星から送信された測位信号を受信するアンテナが、分配器を介して複数の測位装置に接続された測位システムが実行する方法であって、
前記複数の測位装置によって、それぞれ異なる手法によって測位を行う測位ステップと、
情報処理装置によって、前記複数の測位装置間の測位誤差を取得する誤差取得ステップと、
を含む、測位方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、衛星測位技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、列車の位置検出は、軌道回路を用いて、地上設備を主体に行われてきた。これに対し、路線データベース、速度発電機、トランスポンダ等を用いて、車上で位置検出を行い、検出した位置情報を無線によって伝送する技術が開発されている。かかる技術では、列車の位置を正確に検知することができるため、列車の速度をよりきめ細かく制御することが可能になる。また、踏切保安設備等の制御効率を向上させることができる。
【0003】
一方、コスト低減を目的として、列車の位置検出に衛星測位を利用する動きが見られる。衛星による測位を行う手法として、例えば、GPS衛星を利用した手法、準天頂衛星システムを利用した手法、リアルタイムキネマティックを利用した手法など様々なものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4162498号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
現在知られている複数の測位手法は、さまざまな測位精度を有している。さらに、衛星測位を鉄道に適用しようとした場合、路線の特性(例えば、地形や構造物等)に起因して、測位精度にばらつきが生じうる。よって、列車の位置検出を行うために衛星測位を導入しようとした場合、どのような測位手法が妥当であるかを事前に評価する必要がある。
【0006】
本発明は上記の課題を考慮してなされたものであり、衛星による測位を行うシステムにおいて、異なる複数の測位手法を比較評価する技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る測位システムは、
衛星から送信された測位信号を受信するアンテナと、前記アンテナによって受信した測位信号を二つ以上に分配する分配器と、前記分配された測位信号を用いて、それぞれ異なる手法によって測位を行う複数の測位装置と、前記複数の測位装置間の測位誤差を取得する情報処理装置と、を含むことを特徴とする。
【0008】
衛星から送信された測位信号を分配器によって二つ以上に分配し、複数の測位装置に並列に入力することで、各測位装置が、同一の測位信号を用いて測位を行うことが可能になる。測位信号には一般的に時刻情報が含まれているため、同時刻における位置情報同士を比較することが可能になる。すなわち、装置間の測位誤差を高精度で取得することが可能になる。
【0009】
また、測位システムは、前記複数の測位装置が取得した位置情報を、前記測位信号に含まれる時刻情報と関連付けてそれぞれ記憶する記憶装置をさらに含み、前記情報処理装置は、同一の時刻情報が関連付いた位置情報同士を比較することで、前記複数の測位装置間の測位誤差を取得することを特徴としてもよい。
【0010】
記憶された複数の測位結果を、時刻情報をキーとして突き合わせることで、正確な測位誤差を取得することができる。なお、測位装置間において、測位のタイミングが完全に同期していない場合、時刻情報を用いて位置情報の補間を行ってもよい。
【0011】
また、前記情報処理装置は、前記複数の測位装置間の測位誤差を時系列データとして記憶することを特徴としてもよい。
時系列形式で測位誤差を記憶することで、測位誤差の時間的推移を観察することが可能になる。
【0012】
また、前記複数の測位装置は、第一の測位装置と、測位精度が前記第一の測位装置よりも低い、少なくとも二つの第二の測位装置と、を含み、前記情報処理装置は、前記第一の測位装置が取得した位置情報と、前記第二の測位装置がそれぞれ取得した複数の位置情報のそれぞれとを比較することを特徴としてもよい。
【0013】
最も測位精度が高い測位装置と、相対的に測位精度が低い他の測位装置との間で測位誤差の評価を行うことで、取得した誤差を、絶対的な誤差(すなわち、真の座標との誤差)に近付けることができる。
【0014】
また、前記第一の測位装置は、リアルタイムキネマティック測位を行う測位装置であることを特徴としてもよい。
誤差の小さい衛星測位手法として知られているリアルタイムキネマティック(RTK)による測位結果を基準とすることで、より正確な評価をすることができる。
【0015】
また、前記複数の測位装置、および、前記情報処理装置が、同一の鉄道車両に搭載されることを特徴としてもよい。
かかる構成によると、測位誤差を算出するシステムを車上にて完結させることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、衛星による測位を行うシステムにおいて、異なる複数の測位手法を比較評価することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】実施形態に係る測位システムの全体構成図。
図2】測位システムに含まれる測位装置および評価装置の構成図。
図3】複数の測位装置間の測位誤差を説明する図。
図4】評価装置が実行する処理のフローチャート。
図5】評価装置が生成および記憶する測位データの例。
図6】位置情報の補間を説明する図。
図7】評価装置が生成および記憶する測位誤差データの例。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の具体的な実施形態について図面に基づいて説明する。各実施形態に記載されているハードウェア構成、モジュール構成、機能構成等は、特に記載がない限りは、発明の技術的範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
【0019】
図1は、実施形態に係る測位システムの概略構成図である。本実施形態に係る測位システムは、全世界測位衛星システム(Global Navigation Satellite System)を利用して測位を行うシステムである。具体的には、測位衛星から送信された信号(以下、測位信号と称する)を受信するアンテナ10と、分配器20と、複数の測位装置100A~Dと、評
価装置200と、を含んで構成される。これらの構成要素は、同一の鉄道車両(車両1)に搭載される。
【0020】
アンテナ10は、測位衛星(以下、GNSS衛星とも称する)から送信された測位信号を受信するアンテナである。アンテナ10は、例えば、鉄道車両の屋根上など、GNSS衛星が見通せる場所に設置されることが好ましい。
分配器20は、アンテナ10が受信した測位信号を分配するユニットである。分配器20によって分配された測位信号は、測位装置100A~Dにそれぞれ入力される。分配器20は、測位信号を増幅する増幅器(ブースター)を含んでいてもよい。
【0021】
本実施形態に係る測位装置100A~D(以下、測位装置100と総称する)は、それぞれ異なる測位手法によって衛星測位を行う装置である。
衛星による測位は、例えば、GPS(Global Positioning System)、準天頂衛星(Quasi-Zenith Satellite System)、GLONASS(Global Navigation Satellite System)、Galileo、BDS(BeiDou Navigation Satellite System)など、異なる国によって運営されている衛星を利用して行うことができる。
さらに、衛星単独による測位結果に、補助的な情報を加えることで、測位精度を向上させるシステムがある。このようなシステムに、例えば、準天頂衛星が提供するサブメータ級測位補強サービスやセンチメータ級測位補強サービス、ディファレンシャルGPS、携帯電話回線やインターネットを利用したネットワーク型RTK(リアルタイムキネマティック)などがある。
本発明における、異なる測位手法とは、このような複数のシステムを利用した手法を含む。
【0022】
測位装置100A~Dは、このような異なる測位手法のうち評価したい測位手法をそれぞれ用いて、測位(位置情報の取得)を行う。本実施形態では、測位装置100A~Dは、以下のような手法を利用してそれぞれ測位を行う。
測位装置100A:GNSSによる単独測位
測位装置100B:準天頂衛星システムによる、サブメータ級測位補強サービス(SLAS)を利用した測位
測位装置100C:準天頂衛星システムによる、センチメータ級測位補強サービス(CLAS)を利用した測位
測位装置100D:ネットワーク型RTKによる搬送波測位
なお、本実施形態では、上記4種類の手法を例示するが、評価対象として任意の測位手法を選択することも可能である。
【0023】
以下、それぞれの測位手法について説明する。
測位装置100Aは、GNSSによる単独測位を行う。当該手法では、複数のGNSS衛星から送信された信号を受信した時刻を利用して、自装置の位置を演算する。単独測位では、最大で約10メートル程度の誤差が発生する可能性がある。
【0024】
測位装置100Bは、GNSSによる測位結果に加え、準天頂衛星を介して受信した補強信号を利用して、測位装置の位置を演算する。
本手法では、座標が既知であるサブメータ基準局が衛星測位を行い、本来の位置との差分を演算することで、補強信号を生成する。補強信号は、準天頂衛星を経由し、アンテナ10を介して測位装置100Bに送信され、測位装置100Bが、補強信号を利用して、単独測位の結果を補正する。本手法は、サブメータ級測位補強サービス(SLAS)を利用した測位手法である。SLASを利用した本手法は、ディファレンシャル測位の一つである。
なお、環境的要因などによって補強信号を利用できない場合、測位装置100Bは、単
独測位による測位結果を出力する。
SLASを利用すると、測位誤差を最小で1~2メートル程度にまで抑えることができる。
【0025】
測位装置100Cは、測位装置100Bと同様に、準天頂衛星を介して受信した補強信号を利用して位置の演算を行うが、その手法が異なる。
具体的には、座標が既知である電子基準点が受信したデータを解析し、管制局が、軌道誤差、時計誤差、電離層による誤差といった誤差要因を推定して補強信号を生成する。また、補強信号を利用して、測位装置100Cが、衛星から送信された電波の波数(整数値バイアス)および複数の波の位相差を算出することで、位置情報を求める。本手法は、センチメータ級測位補強サービス(CLAS)を利用した測位手法である。
CLASを利用した測位手法では、演算によってFloat解とFix解を求めることができる。Float解とは、整数値バイアスに近似値を用いて求めた解であり、Fix解は、誤差が収束し、特定された整数値バイアスを用いて求めた解である。
なお、環境的要因などによって、補強信号を利用できない場合や、Fix解が求まらない場合、測位装置100Cは、Float解または単独測位による測位結果を出力する。
CLASを利用すると、測位誤差を最小で数センチメートル程度にまで抑えることができる。
【0026】
測位装置100Dは、RTK(リアルタイムキネマティック)手法を用いて位置情報の演算を行う。RTKは、座標が既知である基準局と、移動する測位装置が同時に測位を行い、基準点で観測したデータ等を、移動する測位装置に無線等によって送信し、このデータに基づいて、移動する測位装置が観測したデータを補正の上、移動する測位装置の位置情報を確定する手法である。
衛星から受信する測位信号は、電離層遅延や軌道誤差など様々な誤差を含むが、基準局と移動局が同じ電波を観測することで、誤差が相殺できる。また、基準局の座標が既知であるため、移動局の座標を正確に求めることができる。
RTKでは、演算によってFloat解とFix解を求めることができる。Float解とは、整数値バイアスに近似値を用いて求めた解であり、Fix解は、誤差が収束し、特定された整数値バイアスを用いて求めた解である。
なお、環境的要因などによって、Fix解が求まらない場合、移動する測位装置は、Float解による測位結果を出力する。また、搬送波測位が行えない場合、移動する測位装置は、ディファレンシャル測位または単独測位による測位結果を出力する。
RTKを利用すると、測位誤差を最小でセンチメートル以下にまで抑えることができる。なお、RTKが高精度を維持するためには、基準局と移動する測位装置との距離が10km程度以下である必要がある。これを超える場合も引き続き高精度を維持するためには、ネットワークを用いて測位装置とサーバ装置が通信する形態を採用する必要がある。これをネットワーク型RTKと称する。
【0027】
評価装置200は、測位装置100A~Dが出力した測位結果(位置情報)を収集し、蓄積する装置である。また、評価装置200は、蓄積したデータに基づいて、複数の測位装置について、測位誤差を評価する。なお、本発明において、測位誤差とは、基準となる座標(例えば、緯度・経度)と、評価対象である座標(同)との間の相対距離であるものとする。
【0028】
図2は、本実施形態に係る測位システムの構成要素を詳細に示した図である。ここではまず、測位装置100について説明する。
【0029】
測位装置100は、前述したように、所定の測位手法を利用して測位を行う装置である。測位装置100は、専用のハードウェアによって構成されてもよいし、ハードウェアと
ソフトウェアの組み合わせによって構成されてもよい。
測位装置100は、信号取得部101、制御部102、入出力部103、およびネットワーク通信部104を有して構成される。なお、ネットワーク通信部104は、測位手法によっては用いられない場合があるため、点線で図示している。
【0030】
信号取得部101は、アンテナ10および分配器20を介して搬送された測位信号を取得するインタフェースである。
【0031】
制御部102は、演算装置、主記憶装置、補助記憶装置をパッケージ化したワンチップマイクロコンピュータである。なお本実施形態では、制御部としてワンチップマイコンを利用するが、制御部102に相当する手段を、汎用のコンピュータにより構成することもできる。すなわち、制御部102は、CPUやGPU等のプロセッサ、RAMやROM等の主記憶装置、EPROM、ハードディスクドライブ、リムーバブルメディア等の補助記憶装置を有するコンピュータとして構成することもできる。補助記憶装置には、オペレーティングシステム(OS)、各種プログラム、各種テーブル等が格納され、そこに格納されたプログラムを主記憶装置の作業領域にロードして実行し、プログラムの実行を通じて各構成部等が制御されることによって、後述するような、所定の目的に合致した各機能を実現することができる。ただし、一部または全部の機能はASICやFPGAのようなハードウェア回路によって実現されてもよい。
【0032】
制御部102は、機能モジュールである測位部1021を有して構成される。当該機能モジュールは、記憶されたプログラムをCPUによって実行することで実現してもよい。
【0033】
測位部1021は、信号取得部101が取得した測位信号に基づいて、測位を実施、すなわち、自装置に対応する位置情報(座標)を演算ないし取得する。
【0034】
測位装置100が、GNSS衛星による単独測位を行うものである場合、測位部1021は、複数の衛星から受信した測位信号の伝播時間を用いて位置情報を算出する。
【0035】
また、測位装置100が、SLAS,CLAS,RTKを利用するものである場合、測位部1021は、外部装置から取得した情報に基づいて、単独測位によって得られた測位結果を補正、あるいは、当該測位結果を外部装置に送信して補正結果を取得する。
【0036】
測位装置100が、SLASを利用するものである場合、測位部1021は、基準局から準天頂衛星経由で送信された補強信号に含まれる誤差情報を用いて、単独測位によって得られた測位結果を補正する。なお、SLASが利用できない場合、単独測位による位置情報が算出される。
【0037】
測位装置100が、CLASを利用するものである場合、測位部1021は、管制局から準天頂衛星経由で送信された補強信号を利用して、整数値バイアスおよび複数の波の位相差を求めることで、位置情報を算出する。Fix解が取得できない場合、測位部1021は、Float解を出力する。CLASが利用できない場合、測位部1021は、単独測位によって位置情報を算出する。
【0038】
また、測位装置100が、ネットワーク型RTKを利用するものである場合、測位部1021は、サーバ装置(図中の補正サーバ300)に、位置情報を送信し、当該サーバ装置から、演算によって得られた位置情報を受信し出力する。なお、サーバ装置が搬送波測位を行えない場合、測位部1021は、サーバ装置から、ディファレンシャル測位を利用した位置情報を受信し出力する。また、サーバ装置がFix解を取得できない場合、測位部1021は、サーバ装置からFloat解による位置情報を受信し出力する。
なお、ネットワーク型RTKでは、サーバ装置が、測位装置の位置情報を確定させる形態と、サーバ装置が、位置情報を補正するためのデータ(補正データ)を生成し、測位装置が当該補正データに基づいて位置情報を補正する形態が存在する。本実施形態では、前者を採用しているが、いずれの形態を採用してもよい。
【0039】
測位部1021は、評価装置200から受信した測位リクエストに応答して測位を実行し、その結果を評価装置200に送信する。
【0040】
入出力部103は、測位部1021が取得した位置情報を出力するインタフェースである。評価装置200がパーソナルコンピュータである場合、入出力部103は、例えば、USBインタフェース等であってもよい。
【0041】
ネットワーク通信部104は、ネットワーク型RTKにおいて利用されるサーバ装置(以下、補正サーバ300)と通信を行うための通信インタフェースである。ネットワーク通信部104は、例えば、携帯電話回線、インターネット等を介して補正サーバ300と通信を行う。ネットワーク通信部104は、測位装置100Dのみに実装される。
【0042】
補正サーバ300は、前述したサーバ装置であり、基準点および測位装置100Dから受信した情報に基づいて、整数値バイアスおよび複数の波の位相差を算出し、測位装置100Dの座標を算出する装置である。
【0043】
次に、評価装置200について説明する。
評価装置200は、複数の測位装置100から測位結果を取得し、それぞれの誤差を評価するコンピュータである。
【0044】
評価装置200は、汎用のコンピュータにより構成することができる。すなわち、評価装置200は、CPUやGPU等のプロセッサ、RAMやROM等の主記憶装置、EPROM、ハードディスクドライブ、リムーバブルメディア等の補助記憶装置を有するコンピュータとして構成することができる。なお、リムーバブルメディアは、例えば、USBメモリ、あるいは、CDやDVDのようなディスク記録媒体であってもよい。補助記憶装置には、オペレーティングシステム(OS)、各種プログラム、各種テーブル等が格納され、そこに格納されたプログラムを主記憶装置の作業領域にロードして実行し、プログラムの実行を通じて各構成部等が制御されることによって、後述するような、所定の目的に合致した各機能を実現することができる。ただし、一部または全部の機能はASICやFPGAのようなハードウェア回路によって実現されてもよい。
【0045】
制御部201は、評価装置200が行う制御を司るユニットである。制御部201は、CPUなどの演算処理装置によって実現することができる。
制御部201は、データ収集部2011と、誤差取得部2012の2つの機能モジュールを有して構成される。各機能モジュールは、記憶されたプログラムをCPUによって実行することで実現してもよい。
【0046】
データ収集部2011は、複数の測位装置100を用いて測位結果(位置情報)を収集する。具体的には、複数の測位装置100のそれぞれに対して測位リクエストを送信し、位置情報を含む応答を受信する。当該位置情報は、測位データとして、後述する記憶部202に記憶される。
誤差取得部2012は、収集された位置情報に基づいて、複数の測位装置100について測位誤差を算出する。具体的な方法については後述する。
【0047】
記憶部202は、主記憶装置と補助記憶装置を含んで構成される。主記憶装置は、制御
部201によって実行されるプログラムや、当該制御プログラムが利用するデータが展開されるメモリである。補助記憶装置は、制御部201において実行されるプログラムや、当該制御プログラムが利用するデータが記憶される装置である。
【0048】
入出力部203は、入出力部103と同様のインタフェースである。入出力部203は、例えば、各測位装置100と通信を行うためのUSBインタフェース等とすることができる。
【0049】
次に、評価装置200が実行する処理の概要について説明する。
図3(A)は、車両1が走行する経路と、当該経路上において複数の測位装置100が取得した位置情報(座標)を例示した図である。ここで、丸つき数字で表した点は、測位装置100A~Dによってそれぞれ得られた位置情報(座標)であるものとする。
ここで、複数の測位装置がそれぞれ取得した位置情報同士を比較するためには、測位を行った時刻を一致させる必要がある。
【0050】
本実施形態に係る測位システムは、単一のアンテナ10によって受信した測位信号を、分配器20を介して複数の測位装置100に入力しているため、符号401,402,403で示すように、同時刻に取得した位置情報同士を比較することができる。
【0051】
また、複数の測位装置が取得した位置情報が、真の座標に対してどの程度の誤差を有しているかを評価するためには、基準となる座標を決定する必要がある。基準となる座標は、真の座標により近いことが好ましい。そこで、本実施形態に係る測位システムは、測位装置100A~Dのうち、最も測位精度が高い装置が取得した位置情報を、誤差を比較するための基準として利用する。
【0052】
前述した測位装置100A~Dのうち、最も測位精度が高いものは、ネットワーク型RTK(リアルタイムキネマティック)測位を行う装置(測位装置100D)である。よって、図3(B)に示すように、測位装置100Dが取得した位置情報を基準として誤差を算出することで、真の座標に対する誤差に近い値を得ることができる。すなわち、測位誤差の評価をより高精度で行うことができる。
【0053】
次に、本実施形態に係る測位システムが実行する処理について、処理フローチャートである図4を参照して説明する。
まず、ステップS11で、評価装置200が、複数の測位装置100A~Dを用いて、測位を並列に実行する。測位装置100A~Dのそれぞれは、評価装置200から受信した測位リクエストに応答して測位を行い、その結果(測位を行った時刻、および、位置情報)を評価装置200に送信する。これらの情報は、評価装置200(データ収集部2011)によって受信され、測位データとして蓄積される。
図5は、評価装置200に記憶される測位データの例である。図示したように、測位データは、測位を実行した時刻、測位結果(緯度および経度)、および、測位を行った装置の識別子を含む。
【0054】
ステップS12では、データ収集部2011が、測位を終了する条件が満たされたかを判定する。測位を終了する条件が満たされた場合、処理はステップS13へ遷移する。測位を終了する条件が満たされていない場合、処理はステップS11へ遷移し、評価装置200が、周期的な測位を継続する。
【0055】
ステップS13~S15の処理は、蓄積された測位データに基づいて、誤差取得部2012が、複数の測位装置100の測位誤差を評価する処理である。
【0056】
まず、ステップS13で、基準となる時刻(基準時刻)を決定する。前述したように、異なる複数の測位装置によって得られた測位結果同士を比較する場合、測位結果を取得した時刻を一致させることが好ましい。本ステップでは、当該比較を行うための複数の基準時刻を決定する。
【0057】
基準時刻は、評価装置200が決定してもよい。例えば、測位開始時刻から測位終了時刻までの間において、複数の測位装置100に対して測位リクエストを発行した複数の時刻を、基準時刻とすることができる。
また、測位開始時刻から測位終了時刻までの時間を均等に分割し、それぞれに基準時刻を割り当ててもよい。例えば、100ミリ秒間隔で測位を行った場合、100ミリ秒ごとに基準時刻が設定される。
【0058】
ステップS14~S15の処理は、ステップS13にて決定された全ての基準時刻について実行される。
ステップS14では、各測位装置が取得した位置情報について、測位誤差を算出する。本ステップでは、測位装置100Dが取得した位置情報、すなわち、最も精度が高い位置情報を基準として、他の測位装置100A~Cが取得した位置情報との相対誤差を算出する。
これにより、「測位装置100Aと100D」、「測位装置100Bと100D」、「測位装置100Cと100D」の3つのペアについて、測位誤差が算出される。
【0059】
なお、位置情報同士の誤差を算出する場合、測位を行った時刻が同一である(すなわち、測位を行った時刻が基準時刻と一致する)データ同士を比較する必要がある。しかし、測位に要する時間は装置ごとに異なるため、必ずしも基準時刻と一致する測位データが得られるとは限らない。この場合、基準時刻と前後して得られた測位データを利用して、位置情報の補間を行ってもよい。
例えば、図6に示すように、基準時刻において測位が行われていなかった場合、基準時刻と前後する2つの時刻(測位時刻1および測位時刻2)においてそれぞれ取得された位置情報(緯度,経度)および(緯度,経度)を用いて、基準時刻における位置情報(緯度,経度)を推定してもよい。位置情報の推定は、例えば、線形補間によって行うことができる。
【0060】
次に、ステップS15で、取得した誤差を記録する。具体的には、図7に示すように、基準時刻ごとに、各測位装置が取得した位置情報と、ステップS14で算出した、装置間の相対誤差を、測位誤差データとして記録する。
ステップS14~S15の処理を、全ての基準時刻について繰り返すことで、複数の測位装置間における誤差の推移を取得することができる。誤差の推移は、例えば、横軸に時刻、縦軸に誤差(距離)をとったグラフや散布図によって出力されてもよい。
【0061】
以上説明したように、本実施形態に係る測位システムでは、時刻情報をキーとして、複数の測位装置が取得した位置情報の誤差をデータ化する。かかる構成によると、測位誤差の時間的推移を観察することが可能になり、複数の測位手法のそれぞれについて評価を行うことが可能になる。さらに、複数の測位装置のうち、最も精度が高い装置が出力した位置情報を基準として誤差を算出するため、真の誤差(真の座標に対する誤差)により近い結果を得ることができる。
【0062】
なお、測位誤差データには、誤差の評価に利用できる他の情報を付加させてもよい。例えば、本実施形態のように、測位システムが鉄道車両に搭載されたものである場合、図7に示した符号801のように、列車の走行位置(キロ程)を示す情報を付加してもよい。また、測位結果に影響する要素が沿線に存在する場合、符号802のように、当該要素に
関する情報を付加してもよい。かかる構成によると、例えば、建造物、トンネル、地形など、路線に特有な要素を考慮して測位手法の評価を行うことが可能になる。
【0063】
(変形例)
本開示において説明した処理や手段は、技術的な矛盾が生じない限りにおいて、自由に組み合わせて実施することができる。
例えば、実施形態の説明では、評価装置200を1台としたが、評価装置200は複数台であってもよい。例えば、評価装置200と、複数の測位装置100からなるグループを複数形成し、各グループにおいて、測位誤差をそれぞれ算出するようにしてもよい。
【0064】
また、1つの装置が行うものとして説明した処理が、複数の装置によって分担して実行されてもよい。あるいは、異なる装置が行うものとして説明した処理が、1つの装置によって実行されても構わない。コンピュータシステムにおいて、各機能をどのようなハードウェア構成(サーバ構成)によって実現するかは柔軟に変更可能である。
【0065】
本発明は、上記の実施形態で説明した機能を実装したコンピュータプログラムをコンピュータに供給し、当該コンピュータが有する1つ以上のプロセッサがプログラムを読み出して実行することによっても実現可能である。このようなコンピュータプログラムは、コンピュータのシステムバスに接続可能な非一時的なコンピュータ可読記憶媒体によってコンピュータに提供されてもよいし、ネットワークを介してコンピュータに提供されてもよい。非一時的なコンピュータ可読記憶媒体は、例えば、磁気ディスク(フロッピー(登録商標)ディスク、ハードディスクドライブ(HDD)等)、光ディスク(CD-ROM、DVDディスク・ブルーレイディスク等)など任意のタイプのディスク、読み込み専用メモリ(ROM)、ランダムアクセスメモリ(RAM)、EPROM、EEPROM、磁気カード、フラッシュメモリ、光学式カード、電子的命令を格納するために適した任意のタイプの媒体を含む。
【符号の説明】
【0066】
10・・・アンテナ
20・・・分配器
100・・・測位装置
200・・・評価装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7