(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022053172
(43)【公開日】2022-04-05
(54)【発明の名称】回転電機
(51)【国際特許分類】
H02K 11/30 20160101AFI20220329BHJP
B60K 1/00 20060101ALI20220329BHJP
H02K 9/19 20060101ALI20220329BHJP
【FI】
H02K11/30
B60K1/00
H02K9/19 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020159836
(22)【出願日】2020-09-24
(71)【出願人】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(74)【代理人】
【識別番号】110002871
【氏名又は名称】特許業務法人坂本国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】堀田 豊
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 良太
(72)【発明者】
【氏名】津田 哲平
【テーマコード(参考)】
3D235
5H609
5H611
【Fターム(参考)】
3D235AA01
3D235BB18
3D235CC12
3D235CC13
3D235CC16
5H609BB03
5H609BB11
5H609BB18
5H609PP02
5H609PP07
5H609PP09
5H609PP16
5H609PP17
5H609QQ04
5H609QQ05
5H609QQ09
5H609RR01
5H609RR37
5H609RR67
5H611AA00
5H611BB06
5H611TT06
5H611UA01
5H611UB01
(57)【要約】
【課題】平滑コンデンサの効率的な配置を実現する。
【解決手段】平滑コンデンサCを介して電源Vaに電気的に接続されかつ出力軸まわりに回転トルクを発生させる回転電機1であって、ロータ20と、ステータ10と、ケース2とを含み、軸方向に視て出力軸に重なる筒状の空間部(110)に、平滑コンデンサCが配置される、回転電機が開示される。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
平滑コンデンサを介して電源に電気的に接続されかつ出力軸まわりに回転トルクを発生させる回転電機であって、
ロータと、
ステータと、
ケースとを含み、
軸方向に視て前記出力軸に重なる筒状の空間部に、前記平滑コンデンサが配置される、回転電機。
【請求項2】
前記ロータは、前記出力軸まわりに回転する中空のロータシャフトを含み、
前記ケースは、前記ロータシャフト内に配置される部材を含み、
前記筒状の空間部は、前記部材により形成される、請求項1に記載の回転電機。
【請求項3】
前記ロータシャフトの内周面と前記部材の外周面との間に油路が形成される、請求項2に記載の回転電機。
【請求項4】
前記部材に冷却水路が形成される、請求項3に記載の回転電機。
【請求項5】
前記ロータは、複数設けられ、
複数の前記ロータに連結され、前記出力軸まわりに回転する回転部材を含み、
前記ステータは、複数の前記ロータに共通に設けられ、
前記筒状の空間部は、前記ステータにより形成される、請求項1に記載の回転電機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、回転電機に関する。
【背景技術】
【0002】
回転電機を収容する室とインバータモジュールを収容する室とをケースにより形成し、かつ、当該2つの室をケースの側壁部で仕切り、回転電機とインバータモジュールとを電気的に接続する配線部を、出力ギヤと回転電機の外径差によって生じるデッドスペースを利用して配置する技術が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記のような従来技術では、回転電機を収容する室とインバータモジュールを収容する室とが、ケースの側壁部で仕切られているので、ケース全体が大型化しやすく、また、配線部の搭載性が悪く、配線の配索経路の確保も難しい。なお、インバータモジュールは、パワーモジュールや平滑コンデンサ等を含んでなり、比較的大きな搭載スペースを必要とする。
【0005】
そこで、1つの側面では、本開示は、平滑コンデンサの効率的な配置を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
1つの側面では、平滑コンデンサを介して電源に電気的に接続されかつ出力軸まわりに回転トルクを発生させる回転電機であって、
ロータと、
ステータと、
ケースとを含み、
軸方向に視て前記出力軸に重なる筒状の空間部に、前記平滑コンデンサが配置される、回転電機が提供される。
【発明の効果】
【0007】
1つの側面では、本発明によれば、平滑コンデンサの効率的な配置を実現することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施例1による回転電機の要部断面を示す断面図である。
【
図3】本実施例による回転電機に係る配線部の説明図である。
【
図4】比較例による回転電機に係る配線部の説明図である。
【
図5】車両用駆動装置の冷却構造に関する全体構成を概略的に示す図である。
【
図6】一実施例(実施例2)による回転電機を軸方向の一方側から示す斜視図である。
【
図7】回転電機を軸方向の他方側から示す斜視図である。
【
図8】回転電機を軸方向の他方側から示す平面図である。
【
図9A】ステータコアの単品状態を示す斜視図である。
【
図10】回転電機を含む車両用駆動装置のスケルトン図である。
【
図11A】回転電機を含む電気回路の一例の概略図である。
【
図11B】他の一例による電気回路の概略図である。
【
図12】アウタロータ型の回転電機への適用例を説明する概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照しながら各実施例について詳細に説明する。図面の寸法比率はあくまでも一例であり、これに限定されるものではなく、また、図面内の形状等は、説明の都合上、部分的に誇張している場合がある。また、図面では、見易さのために、複数存在する同一属性の部位には、一部のみしか参照符号が付されていない場合がある。また、未説明のため、一部の図面で図示されている要素が、他の図面で図示されていない場合がある。また、2つの部材間に対して使用される用語「連結」は、動力が伝達可能な態様で当該2つの部材が接続される状態を表し、当該2つの部材間に他の部材が介在する接続態様を含む概念である。
【0010】
[実施例1]
図1は、一実施例(実施例1)による回転電機1Bの要部断面を示す断面図である。以下の説明において、特に言及しない限り、軸方向とは、回転電機1Bの出力軸(第1軸A1)が延在する方向を指し、径方向とは、第1軸A1を中心とした径方向を指す。従って、径方向外側とは、第1軸A1から離れる側を指し、径方向内側とは、第1軸A1に向かう側を指す。また、周方向とは、第1軸A1まわりの回転方向に対応する。また、
図6には、X方向と、X方向に沿ったX1側とX2側が定義されている。X方向は、軸方向に平行である。
【0011】
回転電機1Bは、インナロータ型であり、ロータ20Bの径方向外側にステータ10Bを備える。
【0012】
ロータ20Bは、中空のロータシャフト28を含む。ロータシャフト28は、第1軸A1まわりに回転する回転部材である。ロータシャフト28は、回転電機1Bの回転軸を形成する。ロータシャフト28は、軸方向両側が開口する。ロータシャフト28は、X2側で、入力部材3(
図1では図示せず、
図5参照)に連結される。
【0013】
ロータシャフト28は、ケース2Bに回転可能に支持される。ロータシャフト28は、X1側端部が拡径される。ロータシャフト28は、X1側端部では、径方向内側に配置されるベアリング14aを介してケース2Bの第1ケース部材291(後述)に回転可能に支持される。このように、ベアリング14aをロータシャフト28の径方向内側に配置する場合、ロータシャフト28内にケース2Bの第1ケース部材291(後述)を配置することに関連して組み付け性が良好となる。また、ロータシャフト28は、X2側端部では、径方向外側に配置されるベアリング14bを介して第2ケース部材292(一部だけ模式的に図示)に回転可能に支持される。
【0014】
ケース2Bは、回転電機1Bのロータ20B及びステータ10Bを収容する室SP1を形成する。ケース2Bは、第1ケース部材291と、第2ケース部材292とを含む。
【0015】
第1ケース部材291は、
図1に示すように、ロータシャフト28内に配置される部分を有する。すなわち、第1ケース部材291は、ロータシャフト28の中空内部に延在する部分を有する。なお、第1ケース部材291は、X1側端部が第2ケース部材292と結合されてよい。
【0016】
第1ケース部材291は、第2ケース部材292に固定される固定部材であるのに対して、ロータシャフト28は回転部材である。従って、ロータシャフト28内において第1ケース部材291の外周面と、ロータシャフト28の内周面との間には、径方向のクリアランスが設けられる。このようなクリアランスに起因して、第1ケース部材291の外周面まわりに形成される円環状の空間は、油路901として機能する。油路901の詳細は、後述する。
【0017】
第1ケース部材291は、X1側が開口しかつX2側が閉塞した筒状の部位を含み、筒状の軸心空間部110Bを形成する。軸心空間部110Bは、軸方向に視て、回転電機1Bの出力軸(第1軸A1)に重なる。軸心空間部110Bには、コンデンサモジュールCMが設けられる。コンデンサモジュールCMは、回転電機1Bを駆動するための電気回路の平滑コンデンサC(
図11Aに示す電気回路200等参照)を含んでなる。このようにして、本実施例では、ロータ20B内にコンデンサモジュールCMが収容される筒状の軸心空間部110Bが形成される。なお、第1ケース部材291の軸心空間部110BにコンデンサモジュールCMが配置された状態で、軸心空間部110BとコンデンサモジュールCMとの間には隙間が残されてもよいし、当該隙間が樹脂等で埋められてもよい。なお、軸心空間部110B内又はその近傍には、パワーモジュールPM(図示せず)が配置されてもよい。
【0018】
第1ケース部材291は、好ましくは、ロータシャフト28内に延在する部分に、冷却水路70が形成されてよい。冷却水路70は、例えば螺旋状に第1軸A1まわりに周回しつつ、軸方向に形成されてよい。冷却水路70内には、冷却水が循環される。なお、冷却水は、例えばLLC(Long Life Coolant)である。冷却水路70内を流れる冷却水は、コンデンサモジュールCMの平滑コンデンサCを冷却する機能を果たす。この目的のため、冷却水路70は、好ましくは、コンデンサモジュールCMの軸方向の延在範囲の全体にわたり形成されてよい。
【0019】
また、本実施例では、冷却水路70内を流れる冷却水は、油路901(第1ケース部材291の外周面まわりに形成される円環状の空間)を流れる油から熱を奪う機能(すなわち熱交換機能)をも果たす。
【0020】
第1ケース部材291は、好ましくは、ケース内油路91が形成されてよい。
図1に示す例では、ケース内油路91は、径方向外側から中心側へと径方向に延在し、ついで軸方向にX1側からX2側へと延在するように形成される。ケース内油路91は、更に、X2側の端部で径方向外側に延在し、第1ケース部材291の外周面で開口する。このようにして、ケース内油路91は、油路901(第1ケース部材291の外周面まわりに形成される円環状の空間)に連通する。
【0021】
また、第1ケース部材291は、X1側の端部(ベアリング14aよりもX1側)において、配線用の孔2911を有してよい。配線用の孔2911は、径方向に貫通し、回転電機1Bに係る配線部66Bの一部である配線666を通す。
【0022】
第2ケース部材292は、ステータ10Bの径方向外側の周壁部等を形成する。第2ケース部材292は、複数のピースにより形成されてもよい。
【0023】
ここで、
図2を参照して、油路901(第1ケース部材291の外周面まわりに形成される円環状の空間)について説明する。
図2は、
図1のQ1部の拡大図である。
図2には、油路901に係る油の流れが矢印R30~R33で模式的に示される。
【0024】
図2に示すように、ケース内油路91内を軸方向に流れる油(矢印R30参照)は、ケース内油路91のX2側端部で径方向の開口から、油路901へと吐出される(矢印R31参照)。油路901に導入された油は、軸方向に流れる(矢印R32参照)。この際、油は、ロータシャフト28の内周面281を介してロータコア27(及びロータコア27に設けられる永久磁石271)を冷却する。そして、油は、第1ケース部材291のX2側端部に到達すると、径方向内側へと向かって流れ(矢印R33)、その後、他の冷却対象部(例えばコイルエンド)等に供給される(図示せず)。
【0025】
本実施例では、
図2に示すように、ロータシャフト28の内周面281には、螺旋状にリブ282が形成される。この場合、回転電機1Bの駆動に伴うロータ20Bの回転時、螺旋状のリブ282が回転方向へと油を押し流すように作用する。すなわち、リブ282は、油のX2側へと軸方向に流れを促進する。なお、本実施例では、螺旋状のリブ282は、ロータシャフト28に形成されるが、これに代えて又は加えて、同様の螺旋状のリブが、第1ケース部材291の外周面に形成されてもよい。
【0026】
次に、
図3及び
図4を参照して、本実施例の効果について説明する。
【0027】
図3は、本実施例による回転電機1Bに係る配線部66Bの説明図であり、ケース2内の回転電機1Bの収容状態を概略的に示す。
図4は、比較例による回転電機1’に係る配線部66’の説明図であり、ケース2’内の回転電機1’の収容状態を概略的に示す。
図3(
図4も同様)は、回転電機1Bの第1軸A1に沿った方向に視た概略図であり、内部を透視で模式的に示している。
【0028】
比較例では、
図4に示すように、回転電機1’を収容する室SP1とインバータモジュールMJを収容する室SP3とをケース2’により形成し、かつ、当該2つの室SP1、SP3をケース2’の側壁部2A’で仕切る構成である。なお、インバータモジュールMJは、パワーモジュールPMや平滑コンデンサCを含む。この場合、回転電機1’を収容する室SP1とインバータモジュールMJを収容する室SP3とが、ケース2’の側壁部2A’で仕切られているので、ケース2’全体が大型化しやすい。また、配線部66’の搭載性が悪く、配線の配索経路の確保も難しい。具体的には、配線部66’は、回転電機1’からの各相の動力線(リード線)661’とインバータモジュールMJからの各相のバスバー662’とを電気的に接続するための端子台660’を必要とする。なお、端子台660’は、例えば樹脂モールド等により形成され、側壁部2A’に取り付けられる。このような端子台660’のためのスペースを、側壁部2A’と回転電機1’との間に確保する必要がある。
【0029】
これに対して、本実施例によれば、上述したように、コンデンサモジュールCMが、回転電機1Bの第1ケース部材291により形成される軸心空間部110B内に配置されるので、上述した比較例のように室SP3に平滑コンデンサCを配置する場合に比べて、ケース2の小型化を図ることができる。すなわち、ステータ10Bの軸心空間部110Bを有効に利用することで、コンデンサモジュールCMの配置スペースを別途確保する必要がなくなり、ケース2の小型化を図ることができる。
【0030】
また、本実施例によれば、上述したように、コンデンサモジュールCMが、回転電機1Bの第1ケース部材291により形成される軸心空間部110B内に配置されるので、
図3に模式的に示すように、パワーモジュールPMをステータ10Bの近傍に配置できる。例えば、パワーモジュールPMは、コイル12のリード側近傍に配置できる。これにより、回転電機1Bからの各相の動力線(図示せず)を、パワーモジュールPMに容易に電気的に接続できる。具体的には、比較例による端子台660’(
図4参照)のような端子台が不要となり、例えば、回転電機1Bからの動力線をパワーモジュールPMに直接的に電気的に接続することも可能である。また、回転電機1BとパワーモジュールPMとの間の、物理的な距離を比較例に比べて短くできるので、配線長を短くできる(これに伴い寄生インダクタンス等を低減できる)。これは、パワーモジュールPMとコンデンサモジュールCMの間の配線長(配線666を形成するバスバー661P、661Nの長さ)についても同様である。このようにして、本実施例によれば、配線部66Bを簡略化し、配索が容易となるとともに、電気的な特性も高めることが可能となる。
【0031】
また、本実施例によれば、上述したように、コンデンサモジュールCMと共にパワーモジュールPMをステータ10B内又はその近傍に配置できるので、ケース2は、比較例のケース2’とは異なり、インバータモジュールMJを配置するための室SP3を必要としない。すなわち、本実施例では、インバータモジュールMJの構成要素が室SP1に配置されるので、ケース2は、インバータモジュールMJを収容するための室SP3を有さなくて済む。これにより、ケース2の小型化を図ることができる。
【0032】
また、本実施例によれば、上述したように、コンデンサモジュールCMがケース2の室SP1内に配置されるので、コンデンサモジュールCMを電源Vaに電気的に接続するための端子部665を、
図3に模式的に示すように、ケース2の上部等に配置する簡易な構造を実現できる。なお、
図3に示す例では、端子部665は、高電位側のバスバー660P、661Pと低電位側のバスバー660N、661Nを介してコンデンサモジュールCMに電気的に接続されている。
【0033】
なお、本実施例において、制御装置500に係る基板501についても、
図1に示すように、ケース2の室SP1内に配置されてもよい。この場合、例えば、制御装置500に係る基板501は、パワーモジュールPMに軸方向に隣接する態様で配置されてもよいし、基板501にパワーモジュールPMが実装されてもよい。これにより、制御装置500とパワーモジュールPMとの間の電気的な接続についても、ケース2の室SP1内で実現できる。なお、制御装置500は、インバータINVを制御することで、回転電機1Bを制御する制御装置である。制御装置500は、例えばマイクロコンピュータ等を含んでなる。
【0034】
また、本実施例では、上述したように、ロータシャフト28が中空部材であるので、上述したような軸心空間部110Bを画成する第1ケース部材291を成立させやすい。また、ロータシャフト28が中空部材である点は、その軽量化や大径化(後述する油路901による冷却性能を高める観点からの大径化)の要請に応じるものであるので、軸心空間部110Bを形成するためにロータシャフト28の設計が有意な制約を受けることもない。従って、かかるロータシャフト28の中空内部を有効に利用してコンデンサモジュールCMを配置することで、ケース2Bの小型化を効率的に図ることができる。
【0035】
また、本実施例によれば、第1ケース部材291に冷却水路70が形成されるので、冷却水路70内を流れる冷却水によりコンデンサモジュールCMを冷却できる。なお、冷却水路70内を流れる冷却水は、パワーモジュールPM等の他の発熱部を冷却するためにも利用されてよい。
【0036】
また、本実施例によれば、径方向で第1ケース部材291とロータシャフト28との間の油路901を利用して、ロータコア27(及びロータコア27に設けられる永久磁石271)を冷却できる。特に本実施例によれば、油路901を流れる油は、冷却水路70を流れる冷却水により冷却されるので、冷却能力の高い油として機能できる。すなわち、ロータコア27(及びロータコア27に設けられる永久磁石271)を効果的に冷却できる。
【0037】
次に、
図5を参照して、車両用駆動装置100Bの冷却構造に関する全体構成について説明する。ここでは、車両用駆動装置100Bに含まれる回転電機として、実施例1による回転電機1Bを想定するが、後述する実施例2による回転電機1や、
図12を参照して後述する回転電機1Aにも適用可能である。
【0038】
図5は、車両用駆動装置100Bの冷却構造に関する全体構成を概略的に示す図である。なお、車両用駆動装置100Bは、回転電機1Bと、入力部材3と、カウンタギヤ機構4、差動歯車機構5等を含む。車両用駆動装置100Bの機構の詳細は、
図10を参照して後述する車両用駆動装置100と同様であってよい。
【0039】
ウォーターポンプ78は、供給側水路721、冷却水路70、排出側水路722をこの順で通過するように、冷却水を循環させる(矢印R120~矢印R122参照)。排出側水路722からの冷却水は、ラジエータ79により冷却される。なお、ラジエータ79は、空気(例えば車両の走行時に通過する空気)と冷却水との間で熱交換を実現するものであってよい。なお、ウォーターポンプ78やラジエータ79の位置は、任意であり、
図5に示す位置に限られない。例えば、ウォーターポンプ78は、ラジエータ79と冷却水路70の間に設けられてもよい。
【0040】
このようにして、
図5に示す例では、冷却水は、冷却水路70内にてコンデンサモジュールCMやパワーモジュールPMのような発熱素子の熱を奪いつつ、油路901内の油の熱を奪ってから、ラジエータ79にて冷却される。
【0041】
また、
図5に示す例では、油路901内の油は、ラジエータ79からの冷却水路70内の冷却水にて冷却されるので、各種冷却対象部位を適切に冷却できる。具体的には、オイルポンプ98から吐出される油は、ケース内油路91に供給される(矢印R109参照)。ケース内油路91に供給された油は、油路901に供給され(矢印R110参照)、冷却水路70内の冷却水により冷却される。このようにして冷却水路70により冷却された油路901内の油は、ロータシャフト28の内周面281を介してロータコア27及びそれに伴い永久磁石271を冷却できる。特に本実施例では、ロータシャフト28は、
図1等に示すように、ロータコア27と結合する大径部が比較的大きい外径であるので、永久磁石271と内周面281との間の径方向の距離が短くなりやすい。このため、永久磁石271がロータコア27における比較的径方向外側に配置される場合でも、ロータコア27を効率的に冷却できる。
【0042】
また、このようにして冷却水路70内の冷却水により冷却された油路901内の油は、ロータ20の回転時の遠心力等によって、ロータシャフト28に形成される径方向の油孔(図示せず)を介してコイルエンド12A、12Bに向けて径方向内側から供給されてよい(矢印R111参照)。これにより、コイルエンド12A、12Bを径方向内側から効果的に冷却できる。
【0043】
コイルエンド12A、12B等の冷却に供された油は、重力により油溜め部80に溜まる(矢印R112参照)。そして、油溜め部80内の油は、オイルポンプ98によりストレーナ99等を介して(矢印R113参照)、再び、油路901等に向けて吐出される。このようして油は、油路901内で冷却水路70の冷却水により冷却されながら循環し、各種冷却対象部位を適切に冷却できる。なお、オイルポンプ98は、機械式であってもよいし、電動式であってもよい。
【0044】
このように、本実施例によれば、油路901内の油を、ロータシャフト28内に延在する冷却水路70により冷却できる。これにより、ロータシャフト28内から油を供給する構成において、ロータシャフト28内に供給された油の温度をロータシャフト28内で下げることができる。従って、ロータシャフト28内に供給された油によりコイルエンド12A、12Bを径方向内側から効果的に冷却できる。また、油路901内において冷却水路70により冷却された油は、ロータシャフト28の内周面281を介してロータコア27及び永久磁石271を径方向内側から冷却できる。従って、本実施例によれば、ロータシャフト28内に供給された油により回転電機1B全体を効率的に冷却できる。
【0045】
また、本実施例によれば、油路901内の油を、ロータシャフト28内に延在する冷却水路70により冷却できるので、油路901に供給される油を冷却するためのオイルクーラを省略又は簡略化できる。例えば、
図5にて点線で示すようなオイルクーラ73を省略できる。なお、
図5にて点線で示すオイルクーラ73は、ラジエータ79を通った後の冷却水を利用して、油路901に供給される油を冷却する。なお、オイルクーラ73が設けられる変形例では、オイルクーラ73は、図示とは異なる位置に設けられてもよい。
【0046】
また、本実施例によれば、冷却水路70に供給される冷却水は、パワーモジュールPM(図示せず)の冷却に供される冷却水と共通化できるので、これらを別個独立に循環させる場合に比べて、簡易な構成を実現できる。すなわち、一のウォーターポンプ78を利用して、ステータ10B、パワーモジュールPM、及び平滑コンデンサCを冷却水により冷却できる。ただし、変形例では、冷却水路70に供給される冷却水は、パワーモジュールPMの冷却に供される冷却水とは異なってもよい。
【0047】
なお、
図5に示す例では、油路901には、オイルポンプ98により吐出された油がケース内油路91を介して供給されるが、これに限られない。例えば、入力部材3に、油路901に連通する油路が形成されてもよい。この場合、オイルポンプ98により吐出された油は、当該油路を介して油路901に供給されてよい。
【0048】
また、
図5に示す例では、ケース内油路91は、油路901にのみ連通するが、他の油路や油孔に連通してもよい。例えば、ケース2には、コイルエンド12A、12Bに対して径方向に対向する油孔が形成されてもよく、この場合、ケース内油路91は、当該油孔に連通してもよい。この場合、コイルエンド12A、12Bに対して径方向外側から油を供給(滴下)できるので、コイルエンド12A、12Bに対する冷却能力を効果的に高めることができる。
【0049】
また、
図5に示す例では、ステータコア11の外周面に径方向に当接する第2ケース部材292に、ケース内水路が形成されてもよい。この場合、ケース内水路は、冷却水路70に連通してよい。かかる構成によれば、ケース内水路72を通る冷却水により径方向外側からステータコア11及びそれに伴いコイル12を冷却できる。この場合、ケース内水路72は、第1軸A1まわりを周回する態様で、ステータコア11まわりに形成されてもよい。
【0050】
なお、本実施例による回転電機1Bでは、一のステータ10Bは、一のロータ20Bに対して設けられるが、後述する実施例2のように、一の共通のステータ10に複数のロータ20を対応付ける構成であってもよい。この場合、第1ケース部材291は、ロータ20ごとに設けられてもよい。
【0051】
[実施例2]
図6は、一実施例(実施例2)による回転電機1を軸方向の一方側から示す斜視図であり、
図7は、回転電機1を軸方向の他方側から示す斜視図であり、
図8は、回転電機1を軸方向の他方側から示す平面図である。
図9Aは、ステータコア11の単品状態を示す斜視図であり、
図9Bは、ステータ10の単品状態を示す斜視図である。
【0052】
本実施例では、回転電機1は、ステータ10と、複数のロータ20とを含む。
【0053】
ステータ10は、
図9A及び
図9Bに示すように、ステータコア11と、コイル12とを含む。
【0054】
ステータコア11は、磁性体の積層鋼板からなる。ステータコア11は、複数のロータ20のそれぞれに共通であり、
図9Bに示すように、複数の筒状のロータ空間部113を有する。筒状のロータ空間部113は、ステータコア11を軸方向に貫通する態様で形成される。ロータ空間部113は、ロータ20ごとに設けられる。従って、ロータ空間部113の数は、ロータ20の数と同じであり、本実施例では、一例として、6つである。なお、他の実施例では、ロータ20の数(及びそれに伴いロータ空間部113の数)は、6つ以外の、2つ以上の任意の数であってよい。
【0055】
ステータコア11は、ケース2(
図3参照)との間の締結部119を有する。締結部119は、例えば軸方向の孔であり、ボルトBTが挿通される。この場合、ケース2にボルトBTを締結することで、ステータコア11をケース2に固定できる。
【0056】
ステータコア11は、好ましくは、軸方向に視て、周方向で隣り合う2つのロータ20間に締結部119を有する。本実施例では、3つの締結部119が、周方向で隣り合う2つのロータ20間に設定される。これにより、ステータコア11の径方向の小型化及びそれに伴う回転電機1の径方向の小型化を図ることができる。
【0057】
ステータコア11には、
図9Aに示すように、コイル12が巻回される複数のスロット112が形成される。複数のスロット112は、ロータ空間部113のそれぞれに対して、ロータ空間部113の内周面に形成される。
【0058】
ステータコア11は、更に、第1軸A1を含む中央部に、軸心空間部110を有する。軸心空間部110は、ステータコア11を軸方向に貫通する態様で形成される。軸心空間部110は、軸方向に視て、略円形の外形形状であるが、外形形状は任意である。軸心空間部110は、軸方向に視て、回転電機1の出力軸(第1軸A1)と重なる。
【0059】
軸心空間部110には、
図6から
図8に示すように、コンデンサモジュールCMが配置される。コンデンサモジュールCMは、回転電機1を駆動するための電気回路(
図11Aに示す電気回路200等参照)を形成する。
【0060】
なお、軸心空間部110は、上述した複数のロータ空間部113とは径方向で連通しない態様で形成されてよい。複数のロータ空間部113は、軸心空間部110よりも径方向外側で、第1軸A1まわりに設けられる。複数のロータ空間部113は、第1軸A1まわりで回転対称となる態様で設けられてよい。なお、複数のロータ空間部113は、軸方向に交差する方向で互いに対して連通しない態様で形成されてよい。
【0061】
コイル12は、
図9A及び
図9Bに示すように、ステータコア11のスロット112に巻装される。従って、コイル12は、ロータ空間部113のそれぞれごとに設けられる。以下では、ロータ空間部113ごとに異なるコイル12を区別する場合、コイル12-1~12-6と表記する。コイル12-1~12-6のそれぞれは、3相を有してよい。ただし、変形例では、2つ以上のロータ空間部113に対して、共通のコイルが巻装されてもよい。例えば、軸まわりに対角に配置される2つのロータ空間部113ごとに、共通のコイルが巻装されてもよい。
【0062】
複数のロータ20のそれぞれは、複数のロータ空間部113のそれぞれに対応して設けられる。従って、複数のロータ20は、径方向に視て(すなわち、軸方向に直角な方向に視て)互いに重複するように配置される。
【0063】
ロータ20のそれぞれは、第1軸A1に対して平行に回転軸A11を有する。複数のロータ20の回転軸A11は、第1軸A1を中心とした同心状に配置されてもよいし、異なる距離だけ径方向に離れて配置されてもよい。
【0064】
ロータ20のそれぞれの回転軸A11には、
図7及び
図8に示すように、第1モータ出力ギヤ21が連結される。第1モータ出力ギヤ21は、回転軸A11と一体的に回転するように、回転軸A11に連結される。第1モータ出力ギヤ21は、例えばヘリカルギヤの形態であってよい。第1モータ出力ギヤ21のそれぞれは、第1軸A1を中心として回転する第2モータ出力ギヤ22に径方向に噛み合う。第1モータ出力ギヤ21及び第2モータ出力ギヤ22は減速ギヤ(リダクションギヤ)を形成する。第2モータ出力ギヤ22は、入力部材3の入力軸31(
図7に一部だけ図示)(
図10参照)と一体的に回転するように、入力部材3の入力軸31に連結される。
【0065】
このような回転電機1は、実質的には、インナロータ型の複数の回転電機要素を複合的に含む構成となる。このような回転電機1は、任意の用途で利用できるが、例えば、
図10に示すように、車両用駆動装置100の構成要素として好適である。
【0066】
図10は、回転電機1を含む車両用駆動装置100のスケルトン図である。
【0067】
図10に示す例では、車両用駆動装置100は、車輪の駆動源となる回転電機1と、回転電機1と車輪Wとを結ぶ動力伝達経路に設けられた駆動伝達機構7と、を備える。駆動伝達機構7は、入力部材3と、カウンタギヤ機構4と、差動歯車機構5と、左右の出力部材61、62と、を備える。
【0068】
入力部材3は、入力軸31と、入力ギヤ32とを有する。入力軸31は、第1軸A1まわりに回転する回転部材である。入力ギヤ32は、回転電機1からの回転トルク(駆動力)をカウンタギヤ機構4に伝達するギヤである。入力ギヤ32は、入力部材3の入力軸31と一体的に回転するように、入力部材3の入力軸31に連結される。なお、入力ギヤ32は、入力軸31に連結される上述した第2モータ出力ギヤ22と一体的に回転される。
【0069】
カウンタギヤ機構4は、動力伝達経路において、入力部材3と差動歯車機構5との間に配置される。カウンタギヤ機構4は、カウンタ軸41と、第1カウンタギヤ42と、第2カウンタギヤ43とを有する。
【0070】
カウンタ軸41は、第2軸A2まわりに回転する回転部材である。第2軸A2は、第1軸A1に平行に延在する。第1カウンタギヤ42は、カウンタギヤ機構4の入力要素である。第1カウンタギヤ42は、入力部材3の入力ギヤ32と噛み合う。第1カウンタギヤ42は、カウンタ軸41と一体的に回転するように、カウンタ軸41に連結される。
【0071】
第2カウンタギヤ43は、カウンタギヤ機構4の出力要素である。本実施例では、一例として、第2カウンタギヤ43は、第1カウンタギヤ42よりも小径に形成される。第2カウンタギヤ43は、カウンタ軸41と一体的に回転するように、カウンタ軸41に連結される。
【0072】
差動歯車機構5は、その回転軸心としての第3軸A3上に配置される。第3軸A3は、第1軸A1に平行に延在する。差動歯車機構5は、回転電機1の側から伝達される駆動力を、左右の出力部材61、62に分配する。差動歯車機構5は、差動入力ギヤ51を備え、差動入力ギヤ51は、カウンタギヤ機構4の第2カウンタギヤ43と噛み合う。また、差動歯車機構5は、差動ケース52を備え、差動ケース52内には、ピニオンシャフトや、ピニオンギヤ、左右のサイドギヤ等が収容される。左右のサイドギヤは、それぞれ、左右の出力部材61、62と一体的に回転するように連結される。
【0073】
左右の出力部材61、62のそれぞれは、左右の車輪Wに駆動連結される。左右の出力部材61、62のそれぞれは、差動歯車機構5によって分配された駆動力を車輪Wに伝達する。
【0074】
このようにして回転電機1は、複数のロータ20の回転トルクを、第1モータ出力ギヤ21及び第2モータ出力ギヤ22からなる減速ギヤを介して、駆動伝達機構7に伝達する。ただし、他の実施例では、第1モータ出力ギヤ21及び第2モータ出力ギヤ22からなる減速ギヤに代えて、他のギヤ機構(例えば遊星歯車機構)が利用されてもよい。また、回転電機1は、ホイールインモータとして、車輪内に配置されてもよい。この場合、車両用駆動装置100は、駆動伝達機構7を含まない構成であってよい。
【0075】
図11Aは、回転電機1を含む電気回路200の一例の概略図であり、
図11Bは、他の一例による、回転電機1を含む電気回路200Aの概略図である。
図11A及び
図11Bには、制御装置500についても併せて示される。
図11A及び
図11Bにおいて、制御装置500に対応付けられた点線矢印は、情報(信号、データ)のやり取りを表す。
【0076】
回転電機1は、制御装置500によるインバータINVの制御を介して駆動される。
図11Aに示す電気回路200では、回転電機1は、複数のロータ空間部113に対応付けて設けられるコイル12-1~12-6に、共通のインバータINVを介して電気的に接続される。なお、インバータINVは、例えば、相ごとに、電源Vaの高電位側と低電位側とにスイッチング素子(例えばMOSFET:Metal-Oxide-Semiconductor Field Effect TransistorやIGBT:Insulated Gate Bipolar Transistor)を備え、各スイッチング素子は、所望の回転トルクが発生するようにPWM(Pulse Width Modulation)駆動されてよい。なお、電源Vaは、例えば比較的定格電圧の高いバッテリであり、例えばリチウムイオンバッテリや燃料電池等であってよい。
【0077】
なお、
図11Aに示す電気回路200では、複数のロータ20に対して共通のインバータINVが利用されるが、
図11Bに示す他の例の電気回路200Aでは、複数のロータ20に対して個別のインバータINVが利用される。この場合、各インバータINVは、互いに並列に、電源Vaの高電位側と低電位側の間に電気的に接続される。この場合、コイル12-1~12-6のそれぞれに対して独立に通電を行うことができる。
【0078】
本実施例では、
図11Aに示す電気回路200や
図11Bに示す電気回路200Aのように、電源Vaの高電位側と低電位側の間には、インバータINVに対して並列に、平滑コンデンサCが電気的に接続される。なお、
図11Bに示す電気回路200Aでは、平滑コンデンサCは共用であるが、平滑コンデンサCについても、インバータINVと同様に、コイル12-1~12-6のそれぞれごとに、互いに並列に、電源Vaの高電位側と低電位側の間に電気的に接続されてもよい。
【0079】
平滑コンデンサCは、上述したコンデンサモジュールCMを形成する。すなわち、本実施例では、平滑コンデンサCは、コンデンサモジュールCMの一要素として、軸心空間部110内に設けられる。
【0080】
ここで、
図6から
図8を再度参照して、コンデンサモジュールCMについて更に説明する。
【0081】
コンデンサモジュールCMは、平滑コンデンサCを樹脂により封止(カバー)することで形成される。これにより、ステータ10の冷却に油が用いられる場合でも、当該油が平滑コンデンサCに直接的にかかることを防止できる。コンデンサモジュールCMは、ステータ10に支持されてよい。なお、ステータ10の軸心空間部110にコンデンサモジュールCMが配置された状態で、軸心空間部110とコンデンサモジュールCMとの間には隙間が残されてもよいし、当該隙間が樹脂等で埋められてもよい。なお、隙間が残される場合、当該隙間が油路として機能してもよい。
【0082】
なお、コンデンサモジュールCMの樹脂部は、平滑コンデンサCを冷却するために冷却水路を内部に有してもよい。
【0083】
図6から
図8に示す例では、コンデンサモジュールCMのX方向X1側(第1モータ出力ギヤ21等が配置されている側とは逆側)には、パワーモジュールPMが設けられる。パワーモジュールPMは、上述したスイッチング素子を含み、インバータINVを形成する。
【0084】
本実施例によっても、軸心空間部110にコンデンサモジュールCMを配置することで、上述した実施例1と同様の効果を得ることができる。
【0085】
特に、本実施例では、上述したように、複数のロータ20が第1軸A1まわりに配置されるので、軸心空間部110を形成しやすい。また、本実施例では、軸心空間部110には、第1軸A1まわりに回転する軸部材が通されないため、軸心空間部110がデッドスペースになりやすい。従って、かかる軸心空間部110を有効に利用することで、ケース2の小型化を効率的に図ることができる。
【0086】
また、上述したように、コンデンサモジュールCMが、回転電機1のステータ10の軸心空間部110内に配置されるので、
図6から
図8に示すように、パワーモジュールPMをステータ10の近傍に配置できる。例えば、パワーモジュールPMは、コイル12のリード側近傍に配置できる。これにより、回転電機1からの各相の動力線661(
図9B参照)を、パワーモジュールPMに容易に電気的に接続できる。具体的には、比較例による端子台660’(
図4参照)のような端子台が不要となり、例えば、回転電機1からの動力線661をパワーモジュールPMに直接的に電気的に接続することも可能である。また、回転電機1とパワーモジュールPMとの間の、物理的な距離を比較例に比べて短くできるので、配線長を短くできる(これに伴い寄生インダクタンス等を低減できる)。これは、パワーモジュールPMとコンデンサモジュールCMの間の配線長についても同様である。このようにして、本実施例によれば、回転電機1に係る配線部(
図3の配線部66B参照)を簡略化し、配索が容易となるとともに、電気的な特性も高めることが可能となる。
【0087】
なお、上述した実施例では、回転電機1は、径方向に視て互いに完全に重なる態様で複数のロータ20を備えているが、これに限られない。例えば、回転電機1は、径方向に視て、互いに部分的に重なる態様で複数のロータ20を備えてもよい。
【0088】
また、上述した実施例では、回転電機1は、複数のロータ20を備えているが、これに限られない。例えば、
図12に模式的な断面図で示すようなアウタロータ型の回転電機1Aに適用されてもよい。この場合、回転電機1Aのステータ10Aに、軸心空間部110Aが形成され、軸心空間部110AにコンデンサモジュールCMが配置されてよい。この場合も、軸心空間部110Aは、上述した回転電機1の軸心空間部110と同様、第1軸A1(回転電機1Aの出力軸)に対して軸方向に視て重なる筒状の空間部となる。このようなアウタロータ型の回転電機1Aの場合でも、軸心空間部110AにコンデンサモジュールCMを配置することで、上述した回転電機1と同様の効果を得ることができる。なお、アウタロータ型の回転電機1Aの場合も、パワーモジュールPM等は、上述した回転電機1と同様の態様で配置されてよい。なお、
図12には、制御装置500に係る基板501が断面視で概略的に示されている。また、
図12では、ロータ20Aは、回転部材201とともに第1軸A1まわりに回転し、ロータ20Aの回転トルクは、回転部材201を介して入力軸31Aに伝達される。なお、
図12では、ケース2Aは、回転電機1Aを収容する室SP1とともに、駆動伝達機構7を収容する室SP2を形成する。
【0089】
特に、
図12に示す例では、回転電機1Aは、アウタロータ型であり、軸心空間部110Aを形成しやすい。また、本実施例では、軸心空間部110Aには、第1軸A1まわりに回転する軸部材(例えば回転部材201に対応する軸部材)が通されないため、軸心空間部110Aがデッドスペースになりやすい。従って、かかる軸心空間部110Aを有効に利用することで、ケース2Aの小型化を効率的に図ることができる。
【0090】
以上、各実施例について詳述したが、特定の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された範囲内において、種々の変形及び変更が可能である。また、前述した実施例の構成要素を全部又は複数を組み合わせることも可能である。また、各実施形態の効果のうちの、従属項に係る効果は、上位概念(独立項)とは区別した付加的効果である。
【0091】
例えば、上述した実施例2(その変形例も同様、以下同じ)では、ステータ10は、複数のロータ20に共通であるが、これに限られない。すなわち、ステータ10は、複数のロータ20のそれぞれに対して設けられてもよいし、複数のロータ20の一部の複数に対して共通に設けられてもよい。この場合、軸心空間部110は、複数のステータにより協動して形成されてもよい。
【符号の説明】
【0092】
C・・・平滑コンデンサ、Va・・・電源、7・・・駆動伝達機構、1、1A、1B・・・回転電機、10、10A、10B・・・ステータ、20、20A、20B・・・ロータ、28・・・ロータシャフト、22・・・第2モータ出力ギヤ(回転部材)、81・・・内周面、2、2A、2B・・・ケース、110、110A、110B・・・軸心空間部(筒状の空間部)、A1・・・第1軸(出力軸)、70・・・冷却水路、901・・・油路、A11・・・回転軸