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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022053176
(43)【公開日】2022-04-05
(54)【発明の名称】流体殺菌装置
(51)【国際特許分類】
   C02F 1/32 20060101AFI20220329BHJP
【FI】
C02F1/32
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020159844
(22)【出願日】2020-09-24
(71)【出願人】
【識別番号】000003757
【氏名又は名称】東芝ライテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100146592
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100157901
【弁理士】
【氏名又は名称】白井 達哲
(74)【代理人】
【識別番号】100176751
【弁理士】
【氏名又は名称】星野 耕平
(72)【発明者】
【氏名】飯田 誠也
(72)【発明者】
【氏名】加藤 剛雄
(72)【発明者】
【氏名】櫻井 公人
(72)【発明者】
【氏名】藤岡 純
【テーマコード(参考)】
4D037
【Fターム(参考)】
4D037AA01
4D037AA06
4D037AB03
4D037BA18
4D037BB05
(57)【要約】
【課題】異物の除去を図ることができる流体殺菌装置を提供することである。
【解決手段】実施形態に係る流体殺菌装置は、筒部と;前記筒部の一方の端部に設けられた供給ヘッドと;前記筒部の他方の端部に設けられた排出ヘッドと;前記排出ヘッドに設けられ、一方の面が、前記排出ヘッドに設けられた流路に露出する窓と;前記窓に対向し、紫外線を照射する発光素子を有する光源と;複数の気泡を生成し、前記複数の気泡を含む流体を、前記供給ヘッドに流入させる気泡生成部と;を具備している。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒部と;
前記筒部の一方の端部に設けられた供給ヘッドと;
前記筒部の他方の端部に設けられた排出ヘッドと;
前記排出ヘッドに設けられ、一方の面が、前記排出ヘッドに設けられた流路に露出する窓と;
前記窓に対向し、紫外線を照射する発光素子を有する光源と;
複数の気泡を生成し、前記複数の気泡を含む流体を、前記供給ヘッドに流入させる気泡生成部と;
を具備した流体殺菌装置。
【請求項2】
前記筒部の中心軸と、鉛直方向との間の角度が、0°以上、30°以下である請求項1記載の流体殺菌装置。
【請求項3】
前記供給ヘッドに接続された第1の配管と;
一方の端部が、第1の開閉弁を介して、前記第1の配管に接続され、他方の端部が、第2の開閉弁を介して、前記一方の端部の接続位置よりも上流側の位置において前記第1の配管に接続された第2の配管と;
前記第2の配管の一方の端部の接続位置と、前記第2の配管の他方の端部の接続位置と、の間の位置において、前記第1の配管に接続された第3の開閉弁と;
をさらに具備し、
前記気泡生成部は、前記第2の配管に接続されている請求項1または2に記載の流体殺菌装置。
【請求項4】
前記複数の気泡は、ミリバルブ、マイクロバルブ、およびナノバルブの少なくともいずれかを含む請求項1~3のいずれか1つに記載の流体殺菌装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、流体殺菌装置に関する。
【背景技術】
【0002】
水などの流体に紫外線を照射して、流体を殺菌する流体殺菌装置がある。例えば、流体が流れる筒部と、筒部の端部に設けられ、筒部の内部に紫外線を照射する光源と、を備えた流体殺菌装置が提案されている。この場合、光源から照射された紫外線の一部は、筒部の内部を流れる流体に直接照射される。また、光源から照射され、筒部の内側面に入射した紫外線は、筒部の内部で反射を繰り返しながら伝搬していく。
【0003】
この様な流体殺菌装置は、例えば、海水や地下水などの処理にも用いることができる。ところが、海水や地下水などには、砂、微生物の死骸、無機塩などの異物が含まれている。そのため、流体殺菌装置をこの様な用途に用いると、異物が、流体殺菌装置の接液部分に付着して、殺菌効率が低下する場合がある。
【0004】
例えば、光源と流路との間に設けられた窓に異物が付着すると、光源から流体に向けて照射された紫外線の一部が遮光される。筒部の内側面に異物が付着すると、反射率が低下する。そのため、殺菌効率が低下することになる。
【0005】
この場合、流体殺菌装置を分解して異物を除去すると、手間と時間がかかり、また、流体殺菌装置の可動率も低くなる。
一般的な清掃手段には、スクレーパなどの掻き取り装置、超音波振動装置、薬剤を用いた清掃などがあるが、これらを流体殺菌装置に用いると新たな課題が生じる。
【0006】
例えば、スクレーパなどの掻き取り装置を流体殺菌装置の内部に設けると、掻き取り装置により紫外線が遮光されて、流体への紫外線の照射量が減少する。
超音波振動装置を流体殺菌装置に設けると、流体殺菌装置に設けられた要素が震動により破損したり、劣化したりするおそれがある。
薬剤を流体殺菌装置に供給すると、流体殺菌装置に設けられた要素が薬剤により腐食したり、劣化したりするおそれがある。また、環境負荷も大きくなるおそれがある。
そこで、異物の除去を図ることができる流体殺菌装置の開発が望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2018-69166号公報
【特許文献2】特開2017-051290号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明が解決しようとする課題は、異物の除去を図ることができる流体殺菌装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
実施形態に係る流体殺菌装置は、筒部と;前記筒部の一方の端部に設けられた供給ヘッドと;前記筒部の他方の端部に設けられた排出ヘッドと;前記排出ヘッドに設けられ、一方の面が、前記排出ヘッドに設けられた流路に露出する窓と;前記窓に対向し、紫外線を照射する発光素子を有する光源と;複数の気泡を生成し、前記複数の気泡を含む流体を、前記供給ヘッドに流入させる気泡生成部と;を具備している。
【発明の効果】
【0010】
本発明の実施形態によれば、異物の除去を図ることができる流体殺菌装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本実施の形態に係る流体殺菌装置を例示するための模式断面図である。
図2】比較例に係る流体殺菌装置を例示するための模式断面図である。
図3】他の実施形態に係る流体殺菌装置を例示するための模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照しつつ、実施の形態について例示をする。なお、各図面中、同様の構成要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
【0013】
図1は、本実施の形態に係る流体殺菌装置1を例示するための模式断面図である。
図1に示すように、流体殺菌装置1は、例えば、筒部2、反射部3、供給ヘッド4、排出ヘッド5、光源6、窓7、冷却部8、カバー9、および気泡生成部10を有する。
【0014】
筒部2は、筒状を呈し、両側の端部が開口している。筒部2は、例えば、円筒管とすることができる。筒部2の材料は、紫外線、および殺菌の対象となる流体301aに対する耐性があれば特に限定はない。筒部2の材料は、例えば、石英や、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)などのフッ素樹脂とすることができる。
【0015】
反射部3は、筒部2の外側面に設けることができる。筒部2が、石英などのように紫外線を透過する材料から形成される場合がある。光源6から照射された紫外線の一部が筒部2を透過して外部に漏れると、流体殺菌装置1の処理能力が低下する。筒部2の外側面に反射部3が設けられていれば、筒部2の外部に向かう紫外線を筒部2の内部に向けて反射させることができる。そのため、光源6から照射された紫外線の利用効率を向上させることができるので、発光素子61の数を少なくすることが可能となる。発光素子61の数が少なくなれば、光源6の小型化や低コスト化を図ることができる。
【0016】
反射部3は、紫外線の反射率が高い材料から形成される。反射部3の材料は、例えば、アルミニウム、アルミニウム合金、二酸化ケイ素などである。反射部3は、板状を呈し、筒部2の外側面に取り付けることができる。また、スパッタリング法や蒸着法などの成膜法を用いて、筒部2の外側面に膜状の反射部3を形成することもできる。
【0017】
また、反射部3が筒部2の外側面に設けられる場合を例示したが、反射部3が筒部2の内側面に設けられていてもよい。ただし、反射部3と流体301a(例えば、水)が接触することで腐食などが生じたり、反射部3の材料が溶け出したりする場合には、筒部2の外側面に反射部3を設けることが好ましい。
【0018】
また、反射部3は省くこともできる。例えば、筒部2が、紫外線を反射する材料(例えば、白色の無機材料や白色の樹脂)から形成される場合には、反射部3を省くことができる。
【0019】
供給ヘッド4は、筒部2の一方の端部に設けられている。供給ヘッド4は、例えば、円柱状を呈し、一方の端面と他方の端面との間を貫通する孔4aを有する。孔4aの一方の開口は、筒部2の内部空間とつながっている。孔4aの他方の開口は、供給口4a1となる。供給ヘッド4(供給口4a1)は、配管200を介して、気泡生成部10(本体部11)と接続されている。配管200は、図1に示すように屈曲していてもよいし、湾曲していてもよいし、直線状であってもよい。なお、配管200を省くこともできる。配管200が省かれる場合には、供給ヘッド4(供給口4a1)は、気泡生成部10(本体部11)と直接接続することができる。
【0020】
また、孔4aの内壁には、Oリングなどのシール部材4bを設けることができる。シール部材4bは、供給ヘッド4と筒部2との間が液密となるように封止する。また、フィルタや整流板などを孔4aの内部に設けることもできる。
【0021】
供給ヘッド4の材料は、流体301aと紫外線に対する耐性があれば特に限定がない。供給ヘッド4の材料は、例えば、ステンレスなどの金属とすることができる。
【0022】
排出ヘッド5は、筒部2の他方の端部に設けられている。排出ヘッド5は、例えば、円柱状を呈し、孔5aおよび孔5dを有する。孔5aの一方の開口は、筒部2の内部空間とつながっている。孔5aの他方の開口は、排出ヘッド5の側面に設けられた排出口5a1となる。排出口5a1には、配管202を介して、タンクや洗浄装置などを接続することができる。
【0023】
また、孔5aの内壁には、Oリングなどのシール部材5bを設けることができる。シール部材5bは、排出ヘッド5と筒部2との間が液密となるように封止する。
排出ヘッド5の材料は、殺菌済みの流体301bと紫外線に対する耐性があれば特に限定がない。排出ヘッド5の材料は、例えば、ステンレスなどの金属とすることができる。
【0024】
また、孔5aは屈曲した流路となっている。孔5aは、排出ヘッド5の筒部2側の端面に略平行な流路5a2と、排出ヘッド5の軸方向に延びる流路5a3とを有する。
【0025】
流路5a2は、排出ヘッド5の筒部2側の端面に開口している。また、流路5a2の内壁には、窓7が露出している。流路5a2は、例えば、円板状の空間である。
流路5a3の一方の端部は、流路5a2の周縁近傍に接続されている。流路5a3の他方の端部には、排出口5a1が接続されている。流路5a3は、例えば、円筒状の空間である。
【0026】
孔5aがこの様に屈曲した流路となっていれば、流路5a2の内部を流れる流体301aの流速を遅くすることができる。そのため、窓7が露出する領域における流体301aの滞留時間を長くできるので、殺菌効果の向上を図ることができる。
【0027】
なお、流路5a2に照射された紫外線の一部は、筒部2の内部空間に照射される。また、筒部2の内部空間に照射された紫外線の一部は、反射部3により反射される。そのため、筒部2の内部空間においても流体301aの殺菌が行われる。
孔5dは、排出ヘッド5の、筒部2側とは反対側の端面と、流路5a2とに開口している。
【0028】
光源6は、排出ヘッド5に着脱自在に設けられている。
光源6は、例えば、発光素子61、基板62、およびホルダ63を有する。
発光素子61は、基板62に設けられ、窓7に向けて紫外線を照射する。すなわち、光源6は、窓7に対向し、紫外線を照射する発光素子61を有する。発光素子61は、少なくとも1つ設けることができる。発光素子61が複数設けられる場合には、複数の発光素子61を直列接続することができる。発光素子61は、紫外線を発生させる素子であれば特に限定はない。発光素子61は、例えば、発光ダイオードやレーザダイオードなどとすることができる。
【0029】
発光素子61から照射される紫外線のピーク波長は、殺菌効果があれば特に限定はない。ただし、ピーク波長が260nm~280nmであれば、殺菌効果を向上させることができる。そのため、ピーク波長が260nm~280nmの紫外線を照射可能な発光素子61とすることが好ましい。
【0030】
基板62は、板状を呈し、ホルダ63の窓7側の面に設けられている。基板62の一方の面には、配線パターンを設けることができる。基板62の材料は、紫外線に対する耐性を有するものとすることが好ましい。基板62の材料は、例えば、酸化アルミニウムなどのセラミックスとすることができる。基板62は、金属板の表面を無機材料で覆ったもの(メタルコア基板)とすることもできる。基板62の材料がセラミックスなどであったり、基板62がメタルコア基板であったりすれば、紫外線に対する耐性と高い放熱性を得ることができる。
【0031】
ホルダ63は、排出ヘッド5に着脱自在に設けることができる。発光素子61は放電ランプなどに比べて長寿命ではあるが、点灯時間が長くなれば発光効率が低下する。また、発光素子61が故障して不灯になることも考えられる。ホルダ63が排出ヘッド5に着脱自在に設けられていれば、発光素子61の交換を容易とすることができる。
【0032】
ホルダ63は、例えば、フランジ63aと凸部63bを有する。フランジ63aと凸部63bは一体に形成することができる。
フランジ63aは、板状を呈し、排出ヘッド5の、筒部2側とは反対側の端面に取り付けられる。フランジ63aは、例えば、ネジなどの締結部材を用いて排出ヘッド5に取り付けられる。
【0033】
凸部63bは、フランジ63aの、筒部2側の面に設けられている。凸部63bの、筒部2側の端面には、発光素子61が実装された基板62を設けることができる。凸部63bは、排出ヘッド5に対する発光素子61の位置を決める機能を有する。例えば、凸部63bの側面を、排出ヘッド5の孔5dの内壁に接触させることができる。この様にすれば、排出ヘッド5に対する発光素子61の位置を決めることができる。
【0034】
また、排出ヘッド5の孔5dと流路5a2は、窓7により仕切られているので、流路5a2に流体301aがある状態でも、光源6の着脱が可能となる。そのため、メンテナンス性の向上を図ることができる。
【0035】
また、ホルダ63は、発光素子61において発生した熱を外部に放出する機能を有する。そのため、ホルダ63は、熱伝導率の高い材料から形成することが好ましい。ホルダ63は、例えば、アルミニウム、銅、ステンレスなどの金属から形成することができる。また、ホルダ63の、発光素子61側とは反対側の端面や、側面などに放熱フィンを設けることもできる。
【0036】
窓7は、板状を呈し、排出ヘッド5の孔5dの内壁に液密となるように設けられている。すなわち、窓7は、排出ヘッド5に設けられ、一方の面が、排出ヘッド5に設けられた流路5a2に露出している。窓7と発光素子61との間には空間5d1を設けることができる。窓7は、紫外線を透過させることができ、且つ、紫外線と流体301aに対する耐性を有する材料から形成される。窓7は、例えば、石英や、紫外線を透過するフッ素樹脂などから形成される。
【0037】
また、窓7の、発光素子61側の面には、反射防止膜を設けることもできる。反射防止膜が設けられていれば、発光素子61から照射された紫外線が窓7により反射されて、流体301aに照射され難くなるのを抑制することができる。すなわち、発光素子61から照射された紫外線の利用効率を向上させることができる。
【0038】
また、窓7の筒部2側の面には、防汚膜を設けることもできる。後述するように、流体301aには異物が含まれている場合がある。異物が窓7に付着などすると、発光素子61から照射された紫外線が窓7を透過し難くなる。防汚膜が設けられていれば、異物が窓7に付着するのを抑制することができる。
【0039】
冷却部8は、例えば、ホルダ63の、発光素子61側とは反対側に設けることができる。冷却部8は、例えば、ホルダ63に空気を供給するファンなどである。ホルダ63に放熱フィンが設けられる場合には、冷却部8は、放熱フィンに空気を供給するファンとすることができる。また、冷却部8は、例えば、ホルダ63に設けられた流路に液体を供給するものとしてもよい。すなわち、冷却部8は、空冷式であってもよいし、液冷式であってもよい。
【0040】
なお、発光素子61の数や発熱量、流体301aの温度や流量などによっては冷却部8を省くこともできる。ただし、冷却部8が設けられていれば、発光素子61の数や印加電力などを増加させても、発光素子61の温度が最大ジャンクション温度を越え難くなる。
【0041】
また、冷却部8が設けられていれば、流体301aの温度が高くなったり、温度の高い流体301aの流量が増加したりしても、発光素子61の温度が最大ジャンクション温度を越え難くなる。そのため、対応可能な流体301aの範囲を広げることができる。
【0042】
カバー9は、筒状を呈し、内部の空間に、筒部2および反射部3を収納する。カバー9の材料は、ある程度の剛性を有するものであれば特に限定はない。カバー9の材料は、例えば、ステンレスなどの金属とすることができる。カバー9は、例えば、供給ヘッド4と排出ヘッド5に固定することができる。カバー9の固定方法には特に限定がない。例えば、カバー9の一方の端部を供給ヘッド4に設けられた溝の内部に設け、カバー9の他方の端部を排出ヘッド5に設けられた溝の内部に設けることができる。また、例えば、カバー9の両側の端部のそれぞれにフランジを設け、一方のフランジを供給ヘッド4にネジなどで固定し、他方のフランジを排出ヘッド5にネジなどで固定してもよい。
【0043】
ここで、流体殺菌装置1は、例えば、海水や地下水などの人工的に浄化されていない流体の処理にも用いることができる。ところが、人工的に浄化されていない流体には、砂、微生物の死骸、無機塩などの異物が含まれている。また、人工的に浄化された流体であっても、無機塩などが含まれている場合がある。異物を含む流体301aが流体殺菌装置1に供給されると、異物が、筒部2、供給ヘッド4、および排出ヘッド5の内壁や、窓7の筒部2側の面などに付着したり、析出したりする場合がある。
【0044】
前述したように、窓7の筒部2側の面に防汚膜を設ければ、異物が窓7に付着したり、析出したりするのを抑制することができる。しかしながら、海水や地下水などの人工的に浄化されていない流体の場合には、含まれている異物の量が多いので、防汚膜を設けても、異物が窓7に付着したり、析出したりする場合がある。
【0045】
そこで、本実施の形態に係る流体殺菌装置1には、気泡生成部10が設けられている。 気泡生成部10は、複数の気泡301cを生成し、複数の気泡301cを含む流体301aを、供給ヘッド4に流入させる。
【0046】
複数の気泡301cを含む流体301aが供給されれば、筒部2、供給ヘッド4、および排出ヘッド5の内壁や、窓7の面などに付着したり、析出したりした異物を除去することができる。例えば、気泡301cが、異物と、内壁や窓7の面などとの間に侵入することで、異物が剥離されると考えられる。また、侵入した複数の気泡301cが合体することでクサビの効果が発現し、異物が剥離されると考えられる。また、気泡301cが破裂した際に衝撃波が生じ、衝撃波により異物が剥離されると考えられる。また、これらの作用が複合的に生じることで、異物がさらに剥離され易くなると考えられる。
【0047】
この場合、気泡301cか小さくなれば、気泡301cが、異物と、内壁や窓7の面などとの間に侵入し易くなる。また、気泡301cと流体301aとの間には界面張力が働くので、気泡301cの内圧が高くなる。界面張力は、気泡301cの大きさに反比例するので、気泡301cか小さくなれば、気泡301cの内圧が高くなる。そのため、気泡301cか小さくなれば、気泡301cが破裂した際に大きな衝撃波を生じさせたり、流体301aの内部に存在できる時間を長くしたりすることができる。この場合、気泡301cが破裂した際に大きな衝撃波が生じれば、異物を剥離するのが容易となる。また、気泡301cが破裂した際にフリーラジカルが生成されて、殺菌作用が生じると考えられる。流体301aの内部に存在できる時間を長くすることができれば、下流に設けられた窓7などにも気泡301cを到達させることができる。
【0048】
例えば、気泡301cは、直径が1mm以上のミリバルブとすることができる。この場合、気泡301cは、直径が10μm以上、50μm以下のマイクロバルブとすることが好ましい。また、気泡301cは、直径が1μm以下のナノバルブ(ファインバルブ、ウルトラファインバブルなどとも称される)とすることがより好ましい。
なお、複数の気泡301cは、ミリバルブ、マイクロバルブ、およびナノバルブの少なくともいずれかを含んでいればよい。
【0049】
図1に示すように、気泡生成部10は、例えば、本体部11、およびガス供給部12を有する。
本体部11は、供給されたガスから複数の気泡301cを生成し、本体部11に流入した流体301aに含ませる。複数の気泡301cを含む流体301aは、本体部11から排出されて、供給ヘッド4に流入する。供給ヘッド4に流入した複数の気泡301cを含む流体301aは、筒部2を介して、窓7および排出ヘッド5に供給される。この場合、流路5a2の内部に供給された流体301aは、窓7に当たり、窓7の面に沿って、窓7の周縁側に流れる。この際、窓7を介して照射された紫外線により、流体301aが殺菌される。殺菌済みの流体301bは、流路5a3を介して排出口5a1から排出される。 また、前述した気泡301cの作用により異物が除去され、除去された異物が排出口5a1から排出される。
【0050】
マイクロバルブやナノバルブは、例えば、高速旋回流や急激な圧力変化を生じさせることで大きな気泡を粉砕したり、微細な孔からガスを噴出させたり、障害物により大きな気泡をせん断したりすることで生成することができる。また、マイクロバルブやナノバルブは、ガスを溶解させた流体301aの圧力を急減させたり、温度を上昇させたり、超音波振動を加えたりして生成することもできる。なお、マイクロバルブやナノバルブの生成を行う要素には既知の技術を適用することができる。
【0051】
ガス供給部12は、本体部11、または本体部11に流入する流体301aにガスを供給する。なお、例えば、本体部11が、急激な圧力変化により気泡301cを生成するものである場合には、ベンチュリ効果により雰囲気中の空気が本体部11の内部に引き込まれる。そのため、この様な場合には、ガス供給部12を省くことができる。
また、本体部11とガス供給部12の間に開閉弁13を設けることもできる。
【0052】
ガス供給部12により供給されるガスは、例えば、空気とすることができる。供給されるガスが空気であれば、流体殺菌装置1が設置される雰囲気中のガスを供給すればよいので、コストの低減を図ることができる。供給されるガスが空気の場合には、ガス供給部12は、例えば、ポンプやブロアなどとすることができる。
【0053】
また、気泡301cに含まれるガスの成分を適宜選択することで、異物を分解させたり、異物を溶解させて剥離し易くしたり、殺菌効果を生じさせたりすることもできる。例えば、供給されるガスをオゾンとすれば、有機物を含む異物を分解したり、有機物を含む異物を溶解させて剥離し易くしたり、殺菌効果を生じさせたりすることができる。供給されるガスは、例えば、流体301aと化学反応して、流体301aの成分を水素化するものであってもよい。供給されるガスが特定のガスである場合には、ガス供給部12は、例えば、特定のガスを発生させる装置(例えば、オゾン発生装置)や、特定のガスが収納された圧力ボンベなどとすることができる。
【0054】
次に、流体殺菌装置1の取り付け姿勢について説明する。
図2は、比較例に係る流体殺菌装置101を例示するための模式断面図である。
図2に示すように、流体殺菌装置101は、前述した流体殺菌装置1と同様に、筒部2、反射部3、供給ヘッド4、排出ヘッド5、光源6、窓7、冷却部8、カバー9、および気泡生成部10を有する。
ただし、流体殺菌装置101の場合には、筒部2が、上下方向(重力方向)と直交する方向(水平方向)に延びている。
【0055】
この様にしても、複数の気泡301cを含む流体301aを、供給ヘッド4に供給することができる。そのため、前述した異物の除去を行うことができる。
ところが、ガスの比重は、流体301aの比重に比べて小さいので、気泡301cに浮力が発生する。そのため、図2に示すように、複数の気泡301cの分布が流体301aの流路の上方(重力方向の上側)に偏り易くなる。このことは、異物の除去に偏りが生じることを意味する。例えば、内壁や窓7の上側の領域に付着した異物は除去できるが、内壁や窓7の下側の領域に付着した異物は除去がし難くなる。
【0056】
これに対し、図1に例示をした流体殺菌装置1の場合には、筒部2が、上下方向(重力方向)に延びている。そのため、流体301aの流路において、複数の気泡301cの分布に偏りが生じるのを抑制することができる。その結果、異物の除去に偏りが生じるのを抑制することができるので、内壁や窓7に付着した異物をほぼ均一に除去することができる。
この場合、筒部2の中心軸と、重力方向(鉛直方向)との間の角度が、0°以上、30°以下であれば、内壁や窓7に付着した異物をほぼ均一に除去することができる。
【0057】
図3は、他の実施形態に係る流体殺菌装置1aを例示するための模式断面図である。
図3に示すように、流体殺菌装置1aは、前述した流体殺菌装置1と同様に、筒部2、反射部3、供給ヘッド4、排出ヘッド5、光源6、窓7、冷却部8、カバー9、および気泡生成部10を有する。また、供給ヘッド4に接続された配管200(第1の配管の一例に相当する)を有する。
ただし、流体殺菌装置1aの場合には、配管201がさらに設けられている。配管201の一方の端部は、開閉弁14(第1の開閉弁の一例に相当する)を介して、配管200に接続されている。配管201の他方の端部は、開閉弁15(第2の開閉弁の一例に相当する)を介して、配管201の一方の端部の接続位置よりも上流側の位置において配管200に接続されている。気泡生成部10(本体部11)は、配管201に接続されている。配管200には、開閉弁16(第3の開閉弁の一例に相当する)が接続されている。開閉弁16は、配管201の一方の端部の接続位置と、配管201の他方の端部の接続位置との間の位置において、配管200に接続されている。
【0058】
複数の気泡301cを含む流体301aを、供給ヘッド4に供給する場合には、開閉弁16を閉じ、開閉弁14、15を開く。また、気泡生成部10による気泡301cの生成を開始させる。すると、流体301aが、開閉弁15を介して配管201の内部に流入し、気泡生成部10により生成された複数の気泡301cを含む流体301aが、開閉弁14と配管200を介して供給ヘッド4に流入する。
【0059】
複数の気泡301cを含まない流体301aを、供給ヘッド4に供給する場合には、開閉弁16を開き、開閉弁14、15を閉じれば良い。また、気泡生成部10による気泡301cの生成を停止させる。
【0060】
この様にすれば、異物の除去を行う場合には、複数の気泡301cを含む流体301aを供給し、異物の除去を行わない場合には、複数の気泡301cを含まない流体301aを供給することができる。
また、気泡生成部10のメンテナンスを行う場合にも、複数の気泡301cを含まない流体301aを供給することができる。そのため、気泡生成部10のメンテナンス中であっても、流体殺菌装置1aを使用することができるので、流体殺菌装置1aの可動率を向上させることができる。
【0061】
以上、本発明のいくつかの実施形態を例示したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更などを行うことができる。これら実施形態やその変形例は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。また、前述の各実施形態は、相互に組み合わせて実施することができる。
【符号の説明】
【0062】
1 流体殺菌装置、1a 流体殺菌装置、2 筒部、4 供給ヘッド、5 排出ヘッド、6 光源、7 窓、10 気泡生成部、11 本体部、12 ガス供給部、14~16 開閉弁、61 発光素子、200 配管、201 配管、301a 流体、301b 流体、301c 気泡
図1
図2
図3