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特開2022-53179リン酸三リチウム微粒子コロイド、リン酸三リチウム微粒子、リン酸三リチウム微粒子コロイドの製造方法およびリン酸三リチウム微粒子の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022053179
(43)【公開日】2022-04-05
(54)【発明の名称】リン酸三リチウム微粒子コロイド、リン酸三リチウム微粒子、リン酸三リチウム微粒子コロイドの製造方法およびリン酸三リチウム微粒子の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C01B 25/30 20060101AFI20220329BHJP
   H01M 10/0562 20100101ALN20220329BHJP
   H01M 10/052 20100101ALN20220329BHJP
   H01M 4/13 20100101ALN20220329BHJP
   H01M 4/36 20060101ALN20220329BHJP
   H01M 4/62 20060101ALN20220329BHJP
   H01M 4/58 20100101ALN20220329BHJP
【FI】
C01B25/30 B
H01M10/0562
H01M10/052
H01M4/13
H01M4/36 C
H01M4/62 Z
H01M4/58
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020159847
(22)【出願日】2020-09-24
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
2.Triton
(71)【出願人】
【識別番号】591020423
【氏名又は名称】株式会社新光化学工業所
(72)【発明者】
【氏名】甲田秀和
(72)【発明者】
【氏名】渡辺健一
(72)【発明者】
【氏名】山下史郎
(72)【発明者】
【氏名】小野寺 進
(72)【発明者】
【氏名】国上 溥
(72)【発明者】
【氏名】国上秀樹
【テーマコード(参考)】
5H029
5H050
【Fターム(参考)】
5H029AJ14
5H029AK01
5H029AM12
5H029CJ02
5H029EJ03
5H029HJ01
5H029HJ02
5H029HJ05
5H029HJ06
5H050AA19
5H050BA16
5H050BA17
5H050CA01
5H050DA09
5H050EA11
5H050FA04
5H050FA18
5H050GA02
5H050HA01
5H050HA02
5H050HA05
5H050HA06
(57)【要約】
【課題】 粒子径および形状の制御されたリン酸三リチウムナノ粒子を簡便、高生産性低コストのプロセスで製造する。
【解決手段】 発明者らは、反応原料の適切な選定、分散剤の適切な選定、マイクロ波連続加熱法の適用、アミン類の添加剤の適切な選定、反応原料の添加方法の適切な選定を行うことで、粒子径および形状の制御されたリン酸三リチウムナノ粒子の簡便で高濃度における液相合成法を確立した。本発明の技術により、多様な用途のあるリン酸三リチウムナノ粒子を安価に提供することが可能となった。

アミン類の添加剤の適切な選定、反応原料の添加方法、マイクロ波連加熱法の運用法を適切に選択することで粒子径の制御されたリン酸三リチウムナノ粒子
【選択図】 図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
平均粒子径が200nm以下であるリン酸三リチウム微粒子の合成方法において、一級アミンを有するアルカノールアミンまたはエーテルアミンを添加することを特徴とするリン酸三リチウム微粒子合成方法。
【請求項2】
請求項1に記載のリン酸三リチウム微粒子合成方法において、反応終了時の添加したアミン類のアミノ基の濃度が2.5M以下であることを特徴とするリン酸三リチウム微粒子合成方法。
【請求項3】
含リチウム原料と含リン酸原料を混合する工程を有するリン酸三リチウム微粒子の合成方法において、前記2種の原料を混合直前にマイクロ波照射により加熱し、連続的に合成することを特徴とするリン酸三リチウム微粒子合成方法。
【請求項4】
請求項1~3のいずれかに記載のリン酸三リチウム微粒子の合成方法において、粒子径の動的光散乱測定による個数分布の相対標準偏差が0.3以下であることを特徴とするリン酸三リチウム微粒子合成方法。
【請求項5】
請求項1~4のいずれかに記載のリン酸三リチウム微粒子合成方法において、ポリカルボン酸を分散剤または粒子径制御剤として添加していることを特徴とするリン酸三リチウム微粒子合成方法。
【請求項6】
請求項1~5のいずれかに記載のリン酸三リチウム微粒子合成方法において、反応終了時のリン酸三リチウム粒子の重量パーセント濃度が5%以上であることを特徴とするリン酸三リチウム微粒子合成方法。
【請求項7】
請求項1~5のいずれかに記載のリン酸三リチウム微粒子合成方法において、反応終了時のリン酸三リチウム粒子の重量パーセント濃度が8%以上であることを特徴とするリン酸三リチウム微粒子合成方法。
【請求項8】
アスペクト比が2~7の範囲にある粒子が全体の8割を占めることを特徴とする平均の長径が250nm以下のロッド状のリン酸三リチウム粒子。
【請求項9】
平均粒子径が200nm以下のリン酸三リチウムナノ粒子において、7nm以上45nm以下の空孔構造を有することを特徴とするリン酸三リチウムナノ粒子。
【請求項10】
平均粒子径が200nm以下のリン酸三リチウムナノ粒子において、その粒子輪郭の内部に凹構造のリン酸三リチウム表面を有することを特徴とするリン酸三リチウムナノ粒子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リン酸三リチウムの製造方法、粉砕方法によらない液相合成方法、およびその粒子径制御、リン酸三リチウム微粒子、リン酸三リチウム微粒子コロイドに関する。本出願において微粒子の粒子径とは、一次粒子径で、特に断らない限り、微粒子の平均粒子径は動的光散乱装置の個数分布またはTEM(透過電子顕微鏡)画像をもとにして算出することとする。また、粒子径のばらつきは、標準偏差または標準偏差を平均粒子径で除した相対標準偏差で表現する。
本出願におけるナノ粒子とは粒子径が1マイクロメートル以下の微粒子を指すこととする。本出願において高濃度とは重量パーセント濃度で5パーセント以上のものを指すこととする。
また、本出願において微粒子のアスペクト比とは、微粒子の顕微鏡像の輪郭をロッド状微粒子で近似した場合、「最大長径」/「最大長径に直行する幅」の比率を指すこととする。
【背景技術】
【0002】
リン酸三リチウムは全固体電池の薄膜型電解質、全固体電池の硫黄系電解質への添加剤、全固体電池の正極活物質のコーティング材、全固体電池の負極のコーティング材、非水系リチウムイオン電池正極活物質の原料、非水系リチウムイオン電池正極活物質への添加剤、ガスセンサ材料、触媒等の用途があり、産業への応用が期待される材料である。
【0003】
リン酸三リチウムは全固体電池の各部材において有用な効果があることが知られている。全固体電池の薄膜型電解質は通常スパッタで製膜するが、印刷または塗布法への切り替えが量産化とコストダウンの観点から期待されている。全固体電池の硫黄系電解質へリン酸三リチウムを添加することで硫黄系電解質のガラス構造を変化させ高いリチウムイオン伝導度を達成することができる。全固体電池の抵抗は電解質のバルク抵抗のみではなく、電極活物質との界面抵抗も非常に大きいと考えられており、電極活物質をリン酸三リチウム等の酸化物系電解質でコーティングすると界面抵抗が低減すると考えられている。加えて、正極材をリン酸三リチウムでコーティングすることで、正極から電解質へのコバルト等の正極構成金属の拡散の抑制や、電解質から正極への硫黄の拡散を抑制することにより耐久性を増大することができる。さらに、負極活物質をリン酸三リチウムでコーティングすることで負極からのデンドライト抑制の効果があることも知られている。電極活物質のコーティングはパルスレーザーデポジション等が用いられているが、粒子径数十ナノメートルのリン酸三リチウム粒子が低コストで量産に適したコーティング材料になるのではないかと期待されている。これらの全固体電池の部材としてリン酸三リチウムが機能を発揮する場合、粒子径と形状が非常に重要な要素であると考えられている。
【0004】
リン酸三リチウムは、リン酸鉄リチウム(LiFePO4)、リン酸コバルトリチウム(LiCoPO4)、リン酸マンガンリチウム(LiMnPO4)等の非水系リチウムイオン電池の正極活物質の原料にすることもできる。近年、これらの正極活物質の粒子サイズや空隙構造、カーボン等の導電補助材料との複合化構造が電池の性能と耐久性に大きく関わっているとされている。これらの複合構造を制御するためには、リン酸三リチウムの粒子径を制御し、それを土台にして鉄、コバルト、マンガン等の金属やカーボン等の導電材を複合化する方法が提案されている。また、非水系リチウムイオン電池の正極材の表面または内部にリン酸三リチウムを添加することで、正極、負極活物質表面への保護被膜の形成や副生するフッ酸の不活性化、等の様々な効果が生じるとされている。リン酸三リチウムがこれらの効果を発揮するためには、その形状が重要であり、加えて電解質や活物質と接触する表面積と粒子径が重要であると考えられている。
【0005】
リン酸三リチウムは二酸化炭素や二酸化硫黄等の物質を検知するガスセンサや、プロピレンオキシドとアリルアルコールの異性化反応の触媒等にも用いられ、これらの用途においてもセンサの感度や触媒活性に関してはリン酸三リチウムの粒子径が重要である。
【0006】
リン酸三リチウムは以上のように多くの有用な用途があるが、その粒子径制御についてはあまり多くのことが知られていない。リチウム塩とリン酸の混合、または炭酸リチウムとリン酸塩を混合して焼成することでリン酸三リチウムは容易に合成することができ、それを粉砕処理することでミクロンサイズの粒子は容易に得ることができる。しかし、1μm以下のリン酸三リチウムの調製法については定番の方法が確立されていない。希薄溶液条件下でのリチウム塩とリン酸の混合や、粒子径の小さいビーズを用いた湿式粉砕等で少量のリン酸三リチウムナノ粒子を得ることはできるが、粒子径のそろったものを低コストで簡便、かつ大量に得る方法は未だに明らかになっていない。加えて、リン酸三リチウム粒子の形状も目的とされる用途に応じて調整されるべきであるが、その粒子形状制御方法についてもあまりよくわかっていない。
【0007】
リン酸三リチウムを製造するうえで難しいのは、リチウムを陽イオン、リン酸を陰イオンとする塩はpH等の変動に伴って、化学組成がLi3PO4からLi2HPO4まで変化することができ、リン酸とリチウムの比率が変動してしまう点、ピロリン酸リチウム(Li4P2O7)等のリン酸縮合物が混入した場合除去しづらい点、水和物が複数種類ある点、水分散液がアルカリ性で大気中の二酸化炭素を吸収し炭酸リチウムが不純物として混入しがちな点等がある。しかし、とりわけリチウム塩とリン酸またはリン酸塩を混合して塩を形成する反応は、反応速度が非常に速く、高濃度のリン酸三リチウムナノ粒子を合成しようとしても粗大粒子が生成しやすく粒子径制御及び形状制御が難しい点等がリン酸三リチウムナノ粒子の大量合成を阻む困難だと考えられる。加えて、工業材料として目的物以外の不純物を除去しなければならない場合、精製工程が必要になり、ろ過、遠心分離、廃液処理等の工程と費用がコスト高の原因となってしまう。
【0008】
特許文献1には10nm以上100nm以下のリン酸三リチウムが正極活物質であるコバルト酸リチウムの表面に分散していることが電池における優れた高温特性およびサイクル特性に重要であることが記載されているものの、リン酸三リチウムの合成方法については記載がない。
【0009】
特許文献2にはマイクロ波連続加熱法を用いた単体担持触媒の連続合成法について記載されているが、リン酸三リチウムにそれを適用することは記載されてなく、示唆すらされていない。
【0010】
非特許文献1では水酸化リチウム水溶液とリン酸水溶液を混合することで一次粒子径が数十nmのリン酸三リチウムが得られているが、それらは凝集体を形成して数100nmの二次粒子を形成している。凝集体であっても表面積はある程度増大するので特定の用途にはこの調製法でも有用である。また、粒子サイズが大きくなるので沈降、ろ過、遠心分離等が行いやすくなるという利点もある。しかし、分散している一次粒子が必要な用途にはこの方法は適用できない。
【0011】
他に様々な方法が提案されているが、いずれの方法も安定な品質で高い生産性でリン酸三リチウムナノ粒子を粒子径及び形状を制御して製造することが困難であるというのが現状である。とりわけ、100nm以下の粒子を得ようとした場合、反応の進行が速すぎることによる凝集体の生成と引き続く精製と廃液処理におけるコストが問題になってくる。
【0012】
発明者らは加熱したリチウム原料とリン酸原料を素早く連続的に混合する反応形式を採用することで添加物を不要とし、精製の必要のないリン酸三リチウムナノ粒子の調製法を見出した。また、ある特定のアミン類と特定の高分子分散剤を用いることでリン酸三リチウムの粒子径及び形状を制御することを可能にし、上記の問題点を解決した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特許第6101583号公報
【特許文献2】特開2019-84491号公報
【非特許文献】
【0014】
【非特許文献3】Chemical Communications 2010年 46号6795-6797
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明の解決すべき課題の一つは、従来の方法では得ることが困難であった粒子径が制御されたリン酸三リチウムナノ粒子の合成、精製を短時間で行うことである。
【0016】
本発明の解決すべき課題の一つは、従来の方法では得ることが困難であった結晶形状が制御されたリン酸三リチウムナノ粒子の合成、精製を短時間で行うことである。
【0017】
本発明の解決すべき課題の一つは、従来の方法では大きなコスト要因となっていた、リン酸三リチウムナノ粒子製造における、精製工程と廃液処理のコストを大幅に低減できる製造方法を確立することである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明者らはマイクロ波連続法を利用し、原料の混合方法、使用する高分子分散剤を工夫することで、従来の大きなコスト要因であった精製工程を不要とするリン酸三リチウムナノ粒子の液相合成方法を開発した。
【0019】
また、本発明者らは検討を重ね、適切な添加剤、適切な原料添加様式、適切な高分子分散剤を設定すれば、粒子形状が制御されており、かつ粒子径のばらつきが比較的少ない高濃度のリン酸三リチウムナノ粒子の液相合成法を、迅速に、高い生産性で達成できることを見出した。
【0020】
本発明者らが明らかにした安価で簡便であり、粒子径と形状が制御されたリン酸三リチウムナノ粒子の合成法により、全固体電池、非水系リチウムイオン電池、ガスセンサ、触媒等の各種応用分野において、粒子径や形状によるリン酸三リチウムナノ粒子の最適な使い分けも可能になると考えられ、各種応用分野における製品の性能改善や問題解決の手段となることが期待される。
【0021】
課題を解決するために成された本発明の実施の形態例としての第1の発明(以下、発明1という)は、「平均粒子径が200nm以下であるリン酸三リチウム微粒子の合成方法において、一級アミンを有するアルカノールアミンまたはエーテルアミンを添加することを特徴とするリン酸三リチウム微粒子合成方法」である。
【0022】
発明1を展開して成された本発明の実施の形態例としての第2の発明(以下、発明2という)は、「発明1に記載のリン酸三リチウム微粒子合成方法において、反応終了時の添加したアミン類のアミノ基の濃度が2.5M以下であることを特徴とするリン酸三リチウム微粒子合成方法」である。
【0023】
課題を解決するために成された本発明の実施の形態例としての第3の発明(以下、発明3という)は、「含リチウム原料と含リン酸原料を混合する工程を有するリン酸三リチウム微粒子の合成方法において、前記2種の原料を混合直前にマイクロ波照射により加熱し、連続的に合成することを特徴とするリン酸三リチウム微粒子合成方法」である。
【0024】
発明1~3を展開して成された本発明の実施の形態例としての第4の発明(以下、発明4という)は、「発明1~3のいずれかに記載のリン酸三リチウム微粒子の合成方法において、粒子径の動的光散乱測定による個数分布の相対標準偏差が0.3以下であることを特徴とするリン酸三リチウム微粒子合成方法」である。
【0025】
発明1~4を展開して成された本発明の実施の形態例としての第5の発明(以下、発明5という)は、「発明1~4のいずれかに記載のリン酸三リチウム微粒子合成方法において、ポリカルボン酸を分散剤または粒子径制御剤として添加していることを特徴とするリン酸三リチウム微粒子合成方法」である。
【0026】
発明1~5を展開して成された本発明の実施の形態例としての第6の発明(以下、発明6という)は、「発明1~5のいずれかに記載のリン酸三リチウム微粒子合成方法において、反応終了時のリン酸三リチウム粒子の重量パーセント濃度が5%以上であることを特徴とするリン酸三リチウム微粒子合成方法」である。
【0027】
発明1~6を展開して成された本発明の実施の形態例としての第7の発明(以下、発明7という)は、「発明1~5のいずれかに記載のリン酸三リチウム微粒子合成方法において、反応終了時のリン酸三リチウム粒子の重量パーセント濃度が8%以上であることを特徴とするリン酸三リチウム微粒子合成方法」である。
【0028】
課題を解決するために成された本発明の実施の形態例としての第8の発明(発明8という)は、「アスペクト比が2~7の範囲にある粒子が全体の8割を占めることを特徴とする平均の長径が250nm以下のロッド状のリン酸三リチウム粒子」である。
【0029】
課題を解決するために成された本発明の実施の形態例としての第9の発明(発明9という)は、「平均粒子径が200nm以下のリン酸三リチウムナノ粒子において、7nm以上45nm以下の空孔構造を有することを特徴とするリン酸三リチウムナノ粒子」である。
【0030】
課題を解決するために成された本発明の実施の形態例としての第10の発明(発明10という)は、「平均粒子径が200nm以下のリン酸三リチウムナノ粒子において、その粒子輪郭の内部に凹構造のリン酸三リチウム表面を有することを特徴とするリン酸三リチウムナノ粒子」である。
【発明の効果】
【0031】
本発明で見出された方法により、各種産業において多彩な用途のあるリン酸三リチウムナノ粒子,微粒子の粒子径、形状が制御された簡便で安価な合成法が確立され、全固体電池、非水系電解質リチウムイオン電池、ガスセンサ、触媒等への新たな応用が期待される。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】マイクロ波連続加熱法を用いてリチウム原料を加熱した液にリン酸原料を混合する装置の構成例を示す模式図である。液を混合するところにミキサーを設ける事もできる。
図2】マイクロ波連続加熱法を用いてリチウム原料とリン酸原料を混合直前に加熱するための構成例を示す模式図である。
図3】実施例1で合成されたリン酸三リチウムの動的光散乱による粒子径の個数分布を示すグラフである。
図4】実施例1で合成されたリン酸三リチウムの透過電子顕微鏡による撮影画像である。
図5】実施例4で合成されたリン酸三リチウムの透過電子顕微鏡による撮影画像である。
図6】実施例5で合成されたリン酸三リチウムの透過電子顕微鏡による撮影画像である。
図7】実施例6で合成されたリン酸三リチウムの透過電子顕微鏡による撮影画像である。
【符号の説明】
【0033】
1:導波管
2a:一部が二重になっている反応管の外管
2b:一部が二重になっている反応管の内管
3:リチウム含有原料が送液ポンプから二重反応管の外管に流入する様子を示す図。
4:リン酸含有原料が送液ポンプから二重反応管の内管に流入する様子を示す図。
5:マグネトロン
6:マグネトロンから照射され、TE01モードで導波管を通って伝達されるマイクロ波の流れを模式的に表現したもの。
7:二重管外管を通ってマイクロ波加熱されたリチウム含有原料と二重管内管を通ってマイクロ波加熱されたリン酸含有原料が混合、反応する様子を示す図。
8:生成したリン酸三リチウム分散液が反応管から流出する様子を示す図。
9:キャビティー
10:リチウム含有原料
11:リン酸含有原料
12:pH調整剤
13:実施例1で合成されたリン酸三リチウムナノ粒子
14:実施例4で合成されたリン酸三リチウムナノ粒子
15:実施例5で合成されたリン酸三リチウムナノ粒子
16:実施例6で合成されたリン酸三リチウムナノ粒子
17:実施例6で合成されたリン酸三リチウムナノ粒子に存在する空孔構造
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、図面を参照して本発明に係る発明の実施の形態例について詳細に説明する。なお、説明に用いる各図は本発明の例を理解できる程度に各構成成分の寸法、形状、配置関係などを概略的に示してある。また、本発明の説明の都合上、部分的に拡大率を変えて図示する場合もあり、必ずしも実施例などの実物と相似形でない場合もある。また、各図において、同様の構成には同一番号を付して重複説明を省略する。さらに、以下の説明では、誤解が生じないと思われる範囲において、微粒子の製造方法の説明で微粒子や微粒子の製造装置の説明を兼ねる場合があり、また、その逆の場合もある。
【0035】
本発明では、リン酸三リチウム液相合成における原料、溶媒、分散剤、添加剤、反応温度、混合方法、連続合成方法等前記に関連する事項を検討した。以下、発明を実施するにあたり重要な要素である原料、溶媒、分散剤、添加剤、反応温度、混合方法、連続合成法等について順に説明する。
【0036】
リチウム原料としては水酸化リチウム、炭酸リチウム、塩化リチウム、臭化リチウム、硫酸リチウム、硝酸リチウム、酸化リチウム、過酸化リチウム、酢酸リチウム、クエン酸リチウム他有機酸リチウム等既知の原料を必要に応じて単独で、または混合物として用いることができる。これらのうちコスト的に好適なのは水酸化リチウムと炭酸リチウムであり、水系の溶媒に溶解しやすいという点、リン酸と反応して余分な対イオンを生じず水しか生じない点を考えれば水酸化リチウムがより好適な原料となる。
【0037】
リン酸原料としては、オルトリン酸、およびその縮合物であるピロリン酸、メタリン酸、ポリリン酸、五酸化リンを用いることができる。また、トリエチルリン酸、トリメチルリン酸等のモノ、ジ、トリリン酸エステル類も適切な条件で加水分解することで反応液中でリン酸を発生するため原料として利用することができる。また、アセチルリン酸等の、各種カルボン酸リン酸無水物も加水分解することでリン酸を生成するため原料として用いることができる。他に、亜リン酸、次亜リン酸、ホスフィン系化合物等、酸化反応を伴うことでリン酸に転化する化合物も原料として使用することができる。これらのリン酸原料のうち公知のものを必要に応じて単独で、または混合物として用いることができる。これらのうちコスト的に好適なのはオルトリン酸である。また、オルトリン酸原料は濃度が85%以上、75%以上というように明確でない場合もあるが、実際の検討、製造にはリンモリブデン酸比色法またはその他機器分析法で濃度を確定したオルトリン酸を用いた。
【0038】
溶媒としては水、アルコール類、グリコール系溶媒、アミノ基を有するアミノ系溶媒、ホルムアミドやアセトアミド等のアミド系溶媒、イオン液体、深共晶溶媒、その他プロトン系、非プロトン系極性溶媒を用いることができ、既知の溶媒を必要に応じて単独で、または混合して用いることができる。また、ギ酸アンモニウム、酢酸アンモニウム等の低融点溶融塩、およびその濃厚水溶液、尿素類やグアニジン塩類の濃厚水溶液等、イオン結合や水素結合を破壊しセラミックス類の溶解度を高める効果のある溶媒を必要に応じて使用することができる。原料塩の溶解性やコスト的に好適なのは水であるが、最終製品の用途に応じてその他の溶媒に置換した製品とすることもできる。
【0039】
リン酸三リチウムナノ粒子の液相合成法、および必要に応じてそれらと湿式粉砕法を組み合わせるにあたり、分散は非常に重要である。湿式の分散法としては既存の解砕法、分散機による分散法、超音波照射による分散法等を用いて粉砕、分散を行うことができる。また、合成時における粒子径制御、合成後の分散の維持においては分散剤の添加が凝集を防ぐうえで必要である。この目的には既知の分散剤、例えば、Disperbyk190、Disperbyk2015、Disperbyk194N、BYK154、ポリアクリル酸アンモニウム、ポリメタクリル酸アンモニウム、ポリマレイン酸、ポリヒドロキシカルボン酸、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルデキストリン、アルギン酸、マリアリムAKM-0531、マリアリムSC-0505K等のポリカルボン酸および関連化合物との共重合体、およびそれらの塩を用いることができる。マイテイ3000S,チューポールHP-8等のコンクリート用高性能AE減水剤、加えて高性能減水剤、AE剤、減水剤、AE減水剤等の化学混和剤のポリカルボン酸および関連化合物との共重合体、およびそれらの塩を用いることができる。プルロニック(登録商標)TR-704等のEO/PO共重合体、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、Tween20、TritonX-100、ポリビニルアルコール、スパン80等のノニオン系界面活性剤、ドデシル硫酸ナトリウム、アルキルベンゼンスルホン酸、リン酸モノドデシルナトリウム、リン酸オレイル等のアニオン系界面活性剤、ポリジアリルジメチルアンモニウムクロライド、ポリエチレンイミン、セチルトリメチルアンモニウムクロライド等のカチオン系界面活性剤を使用することができる。分散剤の添加量を多くするとリン酸三リチウムナノ粒子の分散は良くなるが、多すぎると最終製品の品質低下を引き起こす場合もあるので、なるべく少ない使用量で目的とする分散状態が得られる分散剤が望ましい。検討の結果、水溶媒の場合は高分子分散剤、とりわけポリカルボン酸系分散剤が合成時およびその後の分散の維持に好適であることがわかっている。また、分散剤のカルボキシル基に加えて、多糖類やビニルアルコール、ヒドロキシカルボン酸、ヒドロキシエーテル、ヒドロキシエステル基等の形で導入されたヒドロキシル基が分散剤の官能基に加わると粒子径の制御や分散の維持に効果的であることがわかっている。
【0040】
添加剤としてはpHを調整するための各種酸、アルカリ、緩衝剤、リチウムイオンとリン酸イオンの反応を遅延させるためのキレート剤、包接化合物等を使用することができ、必要に応じて既知のものを単独で、または混合して使用することができる。生産性を高めるためには高濃度で迅速にリン酸三リチウムナノ粒子を合成する必要があるが、これは粒子径や形状の制御とは相容れない条件である。そのため、高濃度原料下における反応においては粒子径および形状を制御するための添加剤はほぼ必須である。検討の結果、一級アミン類、とりわけモノエタノールアミン(2-アミノエタノール)、プロパノールアミン、メタノールアミン、トリスヒドロキシメチルアミノメタン等をはじめとするアルカノールアミン類、3-メトキシプロピルアミン、2-(2-アミノエトキシ)エタノール、ジェファーミン(登録商標)EDR-148等のエーテルアミン類、メチルアミン、エチルアミン、メチルエチルアミン、トリエチルアミン、エチレンジアミン等の比較的低分子のアルキルアミン類等が好適であった。また、これらの添加剤は最終製品には不要な場合が多く、合成後に除去しなければならない場合が多いため、リン酸三リチウムナノ粒子分散液から分離除去しやすいことも重要である。これらのアミン類を大量に添加すれば粒子径の小さいリン酸三リチウム微粒子を合成することは容易であるが、アミン類の原料コストおよび精製コストが増大するので望ましくない。よって、少量でも粒子径制御に有効にはたらくアミンを選定して使用することが重要である。検討の結果、モノエタノールアミン等のアミンであれば高濃度のリン酸三リチウムの合成においても2.5mоl/L以下で十分な効果を発揮することができる。
【0041】
反応温度については、リン酸三リチウム生成速度は温度に伴い上昇する一方で、リン酸三リチウムの水への溶解度は温度上昇に伴ってやや上昇する傾向がある。また、リチウム原料とリン酸原料で酸塩基の中和反応による発熱が伴う場合はその温度上昇も考慮する必要がある。
【0042】
リチウム原料とリン酸原料の混合方法には、リチウム原料をリン酸原料溶液に滴下、またはその逆、リチウム原料とリン酸原料を同時に滴下、交互に繰り返し滴下、連続的に管路内で混合、等の方法がある。混合の方式に伴い、pHの変動、リン酸三リチウムナノ粒子の核形成と成長の様式も影響を受けるので、混合方法により生成する粒子も大きく変化する。また、混合における撹拌も重要であり、滴下した原料がなるべく素早く反応溶液中に均一に拡散するのが理想である。しかし、リチウム塩原料とリン酸の反応は非常に速い場合が多く、滴下した原料が溶液全体に均一に拡散する前に局所領域で反応が進行してしまう場合が多い。混合を均一化するには反応速度をなるべく遅らせることと撹拌を強くすることが必要である。検討の結果、反応速度をなるべく遅らせる順に原料を混合し、強い撹拌力で混合することが重要であることがわかっている。原料の混合に関連して重要なのが、リン酸一水素二リチウム等の不純物の成長であり、混合方法を誤るとこれらの不純物が最終製品に残存してしまう。
【0043】
液相合成方法においてはバッチ法と連続法があり、バッチ法はゆるやかに進行させる必要がある反応や結晶を核形成からゆっくりと成長させるタイプの反応に向いているが、バッチごとに生成物の回収や反応器の清掃が必要であり、スケールアップが困難な場合もあるという欠点がある。連続法は反応管内で素早く反応を完結させる必要があるものの、連続反応系を構築できれば自動化、無人化、品質管理等が簡便になるという利点がある。また、加熱や撹拌等のスケールアップに影響を与える因子がバッチ法ほど悪影響を与えづらいという利点もある。
【0044】
リン酸三リチウムの合成のために、水酸化リチウムとリン酸を常温においてバッチ法で混合するのはシンプルな方法であるが、分散効果の高いポリカルボン酸存在下であっても粗大粒子、凝集粒子が生成してしまい、ナノ粒子が主生成物にならない。そこで、本発明者らはマイクロ波連続法の適用を考えた。
【0045】
液相還元法における反応液の加熱手段として、特許文献2に記載された発明のように、反応液にマイクロ波を照射することが行われている。即ち、ここでは、半導体発振器とマイクロ波共鳴キャビティを用い、連続フロー系の反応管を電場の定在波の最も強度の高い位置に配置することで、均一性を損なうことのない急速加熱を行っている。これに狭く限定されないが、寸法と共鳴周波数を適合させたキャビティまたは導波管内において単独の電磁場のモードを発生させる方式であるシングルモード加熱方式が特に好ましく、マイクロ波加熱により反応が十分に促進され、短時間で完了させる場合には極めて有用である。加えて、バッチ法で問題となる加熱、反応の不均一も著しく改善できる。マイクロ波を使用せず、水浴、オイルバス、サンドバス、ヒートブロック等で反応管の外部から加熱する連続法もあり得るが、この場合は熱伝導が緩やかで時間がかかり、反応管の径が太くなるにしたがって加熱の不均一性もでてくる。このため、外部加熱による連続法では高濃度条件における均一性や反応の迅速性という要求を満たすことは難しくなってしまう。
【0046】
マイクロ波照射は、反応液に照射されるマイクロ波の周波数、反応液の材料、反応液を流通させる反応管の内径、反応管の材質などによって、照射の効果が変わってくる。マイクロ波の周波数は、日本の場合、電子レンジ(周波数帯2.4~2.5GHz)によく使われている周波数の他に、5.8GHz、0.9GHzなど、各種使われている。本発明の検討では2.45GHzの周波数を主として、その他に、これに狭く限定されないが、5.8GHz、0.9GHzなど他の周波数帯も用いた。また、担体と溶媒のマイクロ波吸収率に異なる周波数依存性がある場合、必要に応じて2種類の周波数のマイクロ波を反応液に照射することもできる。2種類の周波数のマイクロ波を重畳させることもできる。さらに、マイクロ波の漏れを極力低減させながら許容以外のマイクロ波も試みた。溶媒等被照射物のマイクロ波吸収特性を加味して、所定の範囲内でマイクロ波吸収特性をマイクロ波の周波数に対して概ねフラットになるようにすることも行い、粒子の粒径など特性の制御も行った。
【0047】
マイクロ波共振器として、2.45GHzの周波数を主とする場合、TE01モードで伝達される内径寸法109mm×55mmの方形導波管を用いた。マイクロ波発振源としては既知の半導体発振器やマグネトロン発振器を加熱に必要とされるパワーに応じて使用することができる。
【0048】
マイクロ波加熱による急速加熱はオイルバスやスチーム等を用いる通常加熱と比べて急速な加熱が可能であり、各種の有機合成、無機合成プロセスに利用されている。また、被加熱物の容積をある程度小さくすれば、電場のエネルギーを集中させて加熱速度をさらに高めるとともに、溶媒のみを均一に加熱することができるため、担体等の分散体への均一な表面処理や、ナノ粒子など核形成と成長のタイミングが重要な反応に適している。加えて、マイクロ波による加熱工程を、流路を用いた連続法により構成することで、ロット間のばらつき、生産性のトレードオフを解消することができた。バッチ法でマイクロ波加熱することもできるが、生産性を高めようと被加熱物の体積を大きくすると均一性が損なわれてロット内の品質にばらつきがでてしまう。それに対して、例えば、所定の径の反応管に液を流してそこにマイクロ波を照射するようなマイクロ波連続照射法では、常に同じ条件で合成産物が得られるので、自動化も容易である。さらに、トラブルが生じた場合でも流路を切り替えて不良品を分ければよいだけであり、バッチ法のようにタンク丸ごと無駄にするというような事態は生じない。
【0049】
連続法での原料混合においても、連続法流路および反応管の内外より超音波を照射したりミキサ類を挿入したりするのが反応の均一性からは望ましい。超音波照射装置やミキサ類は、連続法流路および反応管に適した既知のものを状況に応じて使用することができる。具体的には流路内へのコンタミネーション及び流路内での閉塞が起きないような条件で、管外からのクランプ型、管内へのプローブ挿入型の超音波照射装置、スワール型、インライン型等の配管用ミキサ類、および連続型、インライン型の分散撹拌機等を適宜必要に応じて用いることができる。また、必要であればポンプおよび配管系の耐圧性能が許す範囲内で連続合成系の流路を加圧することもでき、既知の圧力タンクやニードルバルブ等を用いて加圧連続合成系を構築することもできる。加圧することにより溶媒や添加物、微量な水分の突沸や、溶存している気体の核形成を防ぐことができ、より均一な連続合成系を実現できる。加えて、加圧することで水熱合成の際の温度を上げることができ、高温高圧で結晶成長反応が制御しやすくなるタイプのセラミックス微粒子の合成の品質と生産性を上げることができる。
【0050】
マイクロ波連続加熱法においては、マイクロ波が均一加熱、急速加熱できる範囲においては反応管を太くしてスケールアップすることが可能である。バッチ法においてはスケールアップで大きなタンク等で反応を行う際は伝熱や撹拌等様々な検討項目があるが、マイクロ波連続法においては投入エネルギーと滞留時間を制御することで比較的簡単に生産量を増やすことができる。本発明者らは二つの原料液を混合直前に温度制御して加熱することでリン酸三リチウムの粒子径を制御できることを確かめたが、このような方法はバッチ法やマイクロ波加熱を用いない連続法では多量のエネルギーを用いるか冗長な構成になるであろう。混合直前の原料のみを急速に目的の温度まで制御された様式で加熱できマイクロ波連続法の特性が好適に活用されているといえる。
マイクロ波連続加熱法においては、反応管内でリチウム原料液とリン酸の原料液が混合された瞬間にリン酸リチウムが析出してくるので、反応管やチューブ管内での詰まりを防ぎ、液の流れを一定にする為に、反応温度の低下が品質に影響を与えない範囲内の流速の窒素等の気体を、原料液の一方、又は両方に導入する事ができる。
【0051】
以下、本発明を実施例及び比較例を参照しながら詳細に説明するが、本発明はこれに狭く限定されない。なお、X線回折および元素分析の結果、以下の実施例のリン酸三リチウムナノ粒子は、Li3PO4結晶であることが確認されている。
(実施例1)
【0052】
図1の構成の装置を用いて、符号10で表されるリチウム原料液に分散剤であるアクリル酸アンモニウム系共重合体(アロンA6114、東亜合成株式会社製)を添加した水溶液 を2.45GHzのマイクロ波で80℃に加熱し、符号9で表されるキャビティ出口直後に符号11で表されるリン酸溶液を混合するマイクロ波連続法による合成を行なった。リチウム原料液として3M水酸化リチウム水溶液、リン酸原料液として3Mリン酸を用いた。反応産物のリチウムとリン酸のモル比が3:1になるように原料送液ポンプの流速を調整した。符号12で示されるpH調整剤を、例えば、符号8で示される反応産物に添加することで反応産物のpHを調整した。
pHが少し低いとき、
りん酸三リチウムLi3PO4に、微量のりん酸一水素二リチウムLi2HPO4(副生物)
が生じてしまう。
発明者は、pH調整剤を加えて副生物を無くすことができた。
この時のpHは11であった。
【0053】
実施例1のマイクロ波連続加熱法合成の構成において、キャビティは円筒形のTM01シングルモード共振器を用いても良いし、方形のTE01シングルモード共振器を用いても良く、また、必要に応じてその他のモードやマルチモードを利用することができる。シングルモード加熱を行う場合、反応管の軸と電場の方向を一致させるような配置にし、効率の良い加熱を行う。マイクロ波発振器はマグネトロンを用いることもできるが、必要に応じて半導体発振器を用いることもできる。温度調整については各種温度計を用いて予備検討を行いマイクロ波出力を決定しておくこともできるし、インラインで温度を自動測定しマイクロ波出力にフィードバックをかけることもできる。前記のように、リチウム原料液とリン酸原料液の混合は必要に応じて各種ミキサを用いて効率良く混合できる。
(実施例2)
【0054】
実施例2では二重管を用いたマイクロ波連続加熱法を用いてリン酸三リチウムを合成するが、図2を用いて合成装置の構成を説明する。図2はマイクロ波連続加熱法の装置の構成の模式図である。図2は断面図であり、一部が二重になっている反応管内を流れる反応液と導波管内を伝わるマイクロ波の流れをわかりやすく示した図である。方形導波管のTE01モードを利用することで、やや太い反応管にも対応することができる場合がある。反応管の軸と符号1で表される導波管の内部の電場の方向を一致させるように配置することで、マイクロ波エネルギーにより反応管内部を流れる液体を効率よく加熱することができる。符号2a、2bは導波管を貫いて配置されている反応管を表している。加熱される反応原料液はこの内部を通って流され、その様子は符号3,4により模式的に表現されている。図2の場合、マイクロ波は符号5で表されるマグネトロンより照射され、マイクロ波が導波管内を伝わる様子が符号6により模式的に表現されている。マグネトロンと導波管は一つの加熱ユニットを形成しており、単独の加熱ユニットでは温度上昇が十分でない場合は、二段、三段と複数段の加熱ユニットを設置してマイクロ波の総出力と加熱性能を向上させることができる。二重管の外管2aを流れる反応液3と二重管の内管2bを流れる反応液4は、二重管を通過する際にマイクロ波により同時に加熱され、その後、混合され、反応してリン酸三リチウムを生じる。混合と反応が起こる様子を符号7で示している。そして符号8で表される生成産物は反応管を通って外部へ送液される。
【0055】
実施した検討のうちの一例を具体的に示す。内径16mmのPFA反応管を外管に、内径8mmのPFA反応管を内管に用い、ボアスルーコネクタを用いて二重管を構成する。外管にはリチウム原料液を、流速120ml/分で、内管にはリン酸原料を40ml/分で送液した。反応管は、内径寸法109mm×55mmの方形導波管におけるTE01モードの電場の山の部分に配置し、ネットワークアナライザ(アンリツ製、MS2024B)と整合ピンによって反射波が少なくなるようにインピーダンス整合をとった。マグネトロン(日立パワーソリューションズ製、2M130)により発生させた2.45GHz付近のマイクロ波を導波管に導入することで反応管内部を流れる液体の加熱を行った。反応原料液の温度は、波長2~6.8μmの赤外光を用いた放射温度計により導波管出口に配置した反応管内部の液体の温度を測定した。フッ素樹脂は2~6.8μmの赤外光の吸収が少ないため温度計測にこの波長を用いれば反応管表面でなく内部の温度を測定することができる。マイクロ波の出力と段数を調整し、混合直前の外管を流れるリチウム原料液と混合直前の内管を流れるリン酸原料液の温度が90℃付近になるように混合部位を調整した。リチウム原料とリン酸原料が混合する部位は、マイクロ波が過剰に照射されて過度に熱せられることがないようにした。図示していないが、混合部位に耐熱樹脂製のインラインミキサー等を設置して混合を促進することもできる。
【0056】
具体的な原料液組成としては、図2の符号3で表されるリチウム原料液として3M水酸化リチウム、8%アクリル酸アンモニウム系共重合体(アロンA6114、東亜合成株式会社製)水溶液を用い、リン酸原料としては3Mリン酸水溶液を用いた。
反応産物のリチウムとリン酸のモル比率が3:1になるように原料液濃度、二重管断面積、流速を調整することが重要である。必要に応じて符号8の生成したリン酸三リチウム微粒子分散液にpH調整や沈降精製のための添加剤を加えて混合することもできる。
本実施例における反応産物はやや過剰のアクリル酸アンモニウム系共重合体以外は不純物を含有しないため、用途によっては1回程度のろ過、遠心分離等の濃縮精製処理で最終製品とすることも可能となる。
(実施例3)
【0057】
リチウム原料とリン酸原料の混合直前の温度を60℃にした以外は実施例5と同様にマイクロ波連続法による合成を行った。
(比較例1)
【0058】
マイクロ波出力をゼロにした以外は実施例1と同様に連続法による合成を行った。
(比較例2)
【0059】
分散剤としてアクリル酸アンモニウム系共重合体の代わりにポリビニルピロリドンを使用した点以外は実施例1と同様にマイクロ波連続法による合成を行った。
【0060】
実施例1,2,3、比較例1、2のサンプルの動的光散乱による粒子径測定を行ったところ、実施例1は平均粒子径64.9nm、標準偏差17.6nmであり、実施例2においても概ね同様の結果となった。実施例3は平均粒子径123nm、標準偏差35.5nmという結果となった。比較例1、2は、粒子径50nm~200nmの領域に個数分布の小さなピークが存在するものの、数ミクロンの凝集体がリン酸三リチウムの体積の大部分を占め、ナノ粒子が主産物として得られていないことがわかった。図3に実施例1の動的光散乱の個数分布データを、図4にTEM(透過電子顕微鏡)画像を示す。
図3の光散乱データ取得の際には凝集体や粗大粒子は検出されず、ほぼ全ての原料がリン酸三リチウムナノ粒子となっていることがわかった。図4のTEM画像は粒子が凝集しているように見えるが、これはサンプル作製時の分散媒の蒸発に伴うものである。図4のTEM画像の符号13により示されるリン酸三リチウムナノ粒子に代表されるように、実施例1で生成したリン酸三リチウムの一次粒子の大部分は40~100nmの範囲の粒子径をもつことがわかる。これは図3の動的光散乱の結果とおおむね一致する。また、粒子の形状に特別な方向性は観察されず、平均的には球形に近い粒子が生成していることがわかった。
【0061】
これらのことから、適切な分散剤を選定し、加熱した原料液を迅速に混合することが重要であることがわかった。また、これらの条件が適切に選ばれていれば、混合直前の温度を変化させることで、比較的ばらつきを少なく保ちつつ平均粒子径を50nm~200nm程度の範囲で制御できることがわかった。
更に、マイクロ波連続法は、使用する分散剤の量をバッチ法に比べて少なくできることがわかった。
【0062】
前記のように、リチウムを陽イオン、りん酸を陰イオンとする塩は、化学組成が変化する。特にpHが大きく起因する。化学便覧に依れば、りん酸H3PO4の酸解離定数は、25℃において、1.83、6.43、11.46である。りん酸三リチウムを合成する場合、溶液のpHは10~12に調整する事が必要になる。pHは、粒子径にも依存する。
実際に水酸化リチウムとりん酸を3:1(モル比)で混合した場合、反応液のpHは10~11になるが、ポリカルボン酸系分散剤存在下では、添加するポリカルボン酸の量に依り、pH 5~9 に低下する。特に、ポリカルボン酸のアンモニウム塩の分散剤を使用して、マイクロ波で加熱した場合、アンモニアが蒸発し、pH の低下が大きくなる。ポリカルボン酸のナトリウム塩の場合でもpHは8~9に低下する。pHを10~11に調整する為に、水酸化リチウム溶液、アルカリ溶液、アミン等を添加する事ができるが、不純物を添加しないという点で水酸化リチウム溶液が好ましい。仕込み時に、水酸化リチウムの比率を高めて後添加の水酸化リチウム溶液の量を減らす事もできる。このように仕込み時の水酸化リチウムと後添加の水酸化リチウムの比率を変える事により、りん酸三リチウムの粒子径を制御する事ができることも明らかとなった。後添加のpH調整剤は、図1のようにチューブに導入することもできるし、反応液タンクに添加することもできる。又、りん酸溶液、酸溶液をpH調整剤として添加することもできるが、不純物を反応系に入れないという点で、りん酸溶液が好ましい。
(実施例4)
【0063】
反応原料液として開始溶液、添加液A、添加液Bを準備する。開始溶液は1%カルボキシメチルセルロースアンモニウム塩(DN-10L、株式会社ダイセル製)水溶液であり、添加液Aは3.57Mリン酸、4Mモノエタノールアミン水溶液であり、添加液Bは5M水酸化リチウム水溶液であり、常温で反応を進める。開始溶液120mlをフッ素樹脂製の反応容器に入れ、撹拌機で激しく撹拌する。激しく撹拌しているところに添加液A56mlを約5分かけて反応溶液に添加し、次いで、添加液B120mlを約5分かけて添加する。以降、「5分かけて添加液A56ml添加、5分かけて添加液B120ml添加」の工程を4回繰り返す。添加液Aは合計で56ml×5=280ml、添加液Bは120ml×5=600ml添加したことになる。すべての添加液を添加後、白濁したリン酸三リチウム分散液を回収した。反応産物に遠心分離処理を行い、上清を廃棄し、イオン交換水を加えてリン酸三リチウムを再分散させ、再度遠心処理を行う操作を繰り返し、モノエタノールアミンを除去した。計5回遠心分離処理を行い、リン酸三リチウム水分散液を得た。遠心分離処理中および最終的なリン酸三リチウム水分散液の分散と作業性を良好にするために少量の分散剤を添加しておくこともできる。
(実施例5)
【0064】
実施例1の開始溶液に3GS20083(竹本油脂株式会社製、チューポールHP-8のNaを含まない同等品)10ml、イオン交換水を110mlを混合したものを使用する点以外は実施例4と同様に添加液等を調製し、合成、精製を行った。
(実施例6)
【0065】
実施例4の開始溶液に8%ポリアクリル酸アンモニウム(DispexA40、BASF製)水溶液を使用する点以外は実施例4と同様に添加液等を調製し、合成、精製を行った。
(実施例7)
【0066】
添加液Aのモノエタノールアミン濃度を2.5Mにした以外は実施例6と同様に合成、精製を行った。
(実施例8)
【0067】
実施例4の開始溶液に8%ポリアクリル酸、ポリマレイン酸共重合体アンモニウム塩水溶液を使用する点以外は実施例4と同様に添加液等を調製し、合成、精製を行った。
(比較例3)
【0068】
添加液Aにモノエタノールアミンを加えず、3.57Mリン酸水溶液とし、実施例4と同様の条件で合成を行った。
(比較例4)
【0069】
実施例4と同様の開始溶液、添加液A、添加液Bを準備し、開始溶液120mlに添加液Bを600ml加え、その後添加液A280mlを25分かけて加えることで合成を行った。
(比較例5)
【0070】
実施例4と同様の開始溶液、添加液A、添加液Bを準備し、開始溶液120mlに添加液Aを280ml加え、その後添加液B600mlを25分かけて加えることで合成を行った。
(比較例6)
【0071】
カルボキシメチルセルロースの代わりに平均分子量2000のポリエチレングリコールを用いた点以外は実施例4と同様の条件で合成を行った。
(比較例7)
【0072】
添加液Aのモノエタノールアミンの代わりに等しいモル濃度のアンモニアを用いた点以外は実施例4と同様の条件で合成を行った。
【0073】
図5、6、7にそれぞれ実施例4,5,6のTEM画像を示す。図5より実施例4では符号14で示すようなロッド状の粒子が観察され、その平均サイズは幅約47nm、長さ約143nmであった。図6より実施例5では符号15で示すようなロッド状の粒子が観察され、その平均サイズは幅約27nm、長さ約88nmであった。図7より実施例6では符号16で示すようなロッド状の粒子が観察され、その平均サイズは幅約32nm、長さ約188nmであった。また、TEM画像上は粒子が集合し凝集しているように見えるが、動的光散乱の結果では実施例4,5,6ともに粗大粒子は観察されておらず、溶液中では一次粒子が分散していると考えられる。実施例4,5,6はモノエタノールアミンを加えて常温で反応をさせている点が特徴的であり、さらにリチウム原料とリン酸原料を交互に添加することで高濃度でも粗大粒子のないリン酸三リチウムナノ粒子を得ることができた。少量の分散剤の存在下でもモノエタノールアミンを添加することでリン酸イオンとリチウムイオンの迅速な反応と粗大粒子の成長を効果的に抑制していることがわかった。
【0074】
実施例4,5,6のロッド状のリン酸三リチウムナノ粒子のアスペクト比は、それぞれ約3.0、3.4、6.0であった。実施例4,5,6は分散剤の種類以外はほぼ同等の条件で合成を行ったが、モノエタノールアミンを添加しリチウム原料とリン酸原料を交互に添加することで細長いロッド状のナノ粒子が生成する傾向があり、アスペクト比は分散剤の種類により微調整できるということがわかった。また、実施例7では幅約40nm、長さ約234nmの粒子が観察され、モノエタノールアミンの添加量を減らすと粒子径が増大する傾向にあることもわかった。これより、モノエタノールアミンの添加量と分散剤を適切に選択することにより、リン酸三リチウム粒子のサイズとアスペクト比をある程度制御できることがあきらかとなった。サイズとアスペクト比の制御は電極活物質のコーティングやガスセンサ、触媒の構造形成において非常に重要であり、性能の上昇に直接的に効く可能性がある。
【0075】
比較例3、6、7は、粒子径50nm~200nmの領域に個数分布の小さなピークが存在するものの、数ミクロンの凝集体がリン酸三リチウムの体積の大部分を占め、ナノ粒子が主産物として得られていないことがわかった。比較例4,5では粒子径50~200の領域にナノ粒子が生成するものの、少量の粗大粒子が混入する場合があることがわかった。これらのことから、用いる分散剤、添加剤の種類、原料の添加順序等が重要であることがわかった。比較例7と実施例4を比較すると、アミン類は反応制御に効果的ではあるものの、アンモニアでは粒子径制御や粗大粒子抑制には劇的な効果が無いことがわかった。この他、様々な化学構造の添加剤物質を試験したところ、一級アミノ基と水酸基をもつ物質がリン酸三リチウムナノ粒子合成制御に有効であることがわかった。
【0076】
図7より、実施例6ではロッド状の粒子の内部に符号17で示されるような空孔構造が顕著に存在し、実施例8においても同様な構造が観察された。このような構造はリン酸三リチウム粒子のミクロな表面積を増大させており、リチウムイオンの放出と吸蔵の効率を高める効果等が期待される。また、この構造は分散剤のカルボキシル基の密度が増大すると顕著になる傾向があることがわかった。加えて、この空孔構造は7nm~45nm程度のサイズであり、このサイズの範囲において空孔側からリン酸三リチウム側に向かって常に凸の構造になっていることが特徴的である。一般的に、10nm以下の微小一次粒子が多数凝集して二次粒子を構成するタイプの粒子においては凹構造になっている空孔構造は金属、セラミックス等多種類のナノ粒子において広く知られている。微粒子は表面エネルギーをなるべく小さくしようとする傾向があるので、凹構造の空孔はそれほど珍しくはない。しかし、本発明で得られた凸構造の空孔構造は空孔内壁表面のリン酸三リチウムが凹構造の表面をもつことを意味しており、これは通常の凸構造のリン酸三リチウムの表面とは異なる性質を示す可能性がある。
【0077】
粒子輪郭の外表面が凹構造をもつナノ粒子は存在が知られているが、粒子輪郭の内部に凸構造の空孔とともに凹構造の表面をもつナノ粒子の存在はあまり知られていない。また、インバースオパール型のフォトニック結晶等では凹構造の表面が知られているが、空孔サイズは100nm以上であり、鋳型の配列と除去など複雑な合成工程が必要である。本発明では7nm~45nm程度の空孔サイズが、粒子径が200nm以下程度のナノ粒子で実現できたことが特徴的である。ナノ粒子はバルクやミクロン粒子と異なり、被覆したい表面を小さい粗さでコーティングしたり、多孔質体の細部まで浸透していくことができるという利点がある。これより、バッテリー、ガスセンサ、触媒等の分野で、粒子内部に曲率半径の小さい凹構造の表面をもつリン酸三リチウムナノ粒子によるコーティングが可能になる。応用分野と目的に応じて「空孔があること」と「内部に凹構造の表面があること」の利用価値は様々に異なってくると思われるが、リン酸三リチウムで機能性の表面を形成するうえで非常に大きな進展である。
【0078】
以上のように、本発明のリン酸三リチウム合成法は、マイクロ波加熱連続法を効果的に使用することで、又は添加剤を選定することで反応産物を高い生産性で得ることができるようになった。また、本発明で明らかとなったリン酸三リチウムナノ粒子合成法は粒子径,形状の制御の改善にも有用であることがわかった。
【0079】
以上、図を参照しながら、実施例、比較例を加えて本発明を説明したが、本発明はこれに狭く限定されるものではなく、本発明の技術思想に基づき多くのバリエーションを可能とするものである。例えば、マイクロ波としては、本発明ではシングルモードマイクロ波照射に関して多く説明したが、本発明はこれに限定されず、マルチモードマイクロ波照射を利用することも含み、マイクロ波照射に関しては、被照射体に当てるマイクロ波の強度分布域に関しても、また、その当て方に関しても、被照射体への当てる目的によって決められるものである。
【産業上の利用可能性】
【0080】
本発明における粒子径の制御されたリン酸三リチウムナノ粒子の合成法は全固体電池、非水系リチウムイオン電池、ガスセンサ、触媒等に利用できる。
図1
図2
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図4
図5
図6
図7