(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022053226
(43)【公開日】2022-04-05
(54)【発明の名称】感染防止機構を有するヘルメット
(51)【国際特許分類】
A42B 3/28 20060101AFI20220329BHJP
【FI】
A42B3/28
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020159924
(22)【出願日】2020-09-24
(71)【出願人】
【識別番号】501487472
【氏名又は名称】金 彪
(71)【出願人】
【識別番号】592244789
【氏名又は名称】株式会社オージーケーカブト
(74)【代理人】
【識別番号】110003041
【氏名又は名称】特許業務法人安田岡本特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】金 彪
(72)【発明者】
【氏名】木村 弘紀
【テーマコード(参考)】
3B107
【Fターム(参考)】
3B107CA03
3B107DA04
3B107EA01
(57)【要約】
【課題】使用者が2次感染確実に防止しつつ、視界が良好な状態を維持可能であって、医療用顕微鏡を使う際にも障害とならないようなフェイスシールド、言い換えれば、感染防止機構を有するヘルメットを提供する。
【解決手段】本発明は、頭部を覆って保護する帽体2と、帽体2の上部に前後方向に設けられたエア貫通孔10と、エア貫通孔10の前端部に設けられたエア排出口13と、前記エア貫通孔10の内部、またはその手前に装着されるダクト内部にエアを供給可能な送風ファン11を備え、エア排出口13が帽体2の前部に下方を向くように配設されており、エア排出口13から排出されたエアが、当該帽体2を被った使用者Uの顔面の前方にエアカーテンEを形成し、形成されたエアカーテンEが細菌乃至はウイルスを含んだ飛沫Vを遮断可能とされている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
頭部を覆って保護する帽体と、前記帽体の上部に前後方向に設けられたエア貫通孔と、前記エア貫通孔の前端部に設けられたエア排出口と、前記エア貫通孔の内部、またはその手前に伸びるダクトの延長上に、空気を供給することを可能とする送風ファンを備え、
前記エア排出口が帽体の前部に下方を向くように配設されており、
前記エア排出口から排出されたエアが、当該帽体を被った使用者の顔面の前方にエアカーテンを形成し、形成されたエアカーテンが細菌乃至はウイルスを含んだ飛沫を遮断可能とされている
ことを特徴とする感染防止機構を有するヘルメット。
【請求項2】
前記送風ファンで供給されたエアは、当該送風ファンの出側に配備されたフィルタを通過した後に、エア貫通孔の内部に供給される構成とされていることを特徴とする請求項1に記載の感染防止機構を有するヘルメット。
【請求項3】
前記エア排出口には、排出されるエアの方向を可変とするルーバが設けられており、このルーバにより、排出されるエアの方向や厚さが調整可能とされていることを特徴とする請求項1又は2に記載の感染防止機構を有するヘルメット。
【請求項4】
エア貫通孔の長手方向中途部には、当該エア貫通孔内のエアを使用者の頭部へ誘導する誘導ルーバが設けられていることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の感染防止機構を有するヘルメット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療従事者などが着用して使用する物品であり、細菌やウイルスを含む飛沫が使用者の口腔、鼻腔、気道内に侵入することを防止することが可能な感染防止機構を有するヘルメットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、医療従事者が細菌やウイルスに感染している患者を診察したり、治療したりする際に、患者から医療従事者への感染(特に飛沫を通じた感染)が懸念されている。特に、2020年に入り世界的に流行している新型コロナウイルスによる感染症は、有効な治療薬やワクチンが存在しない状況下であり、医療従事者への2次感染を防ぐことはもっとも重要とされる事項の一つである。
【0003】
このような2次感染を防ぐ手立てとして、医療従事者や介護者の顔面の全部乃至は一部を覆う「フェイスシールド」と呼ばれるデバイス(物品)が使用されている。
例えば、特許文献1に開示されたデバイスは、フェイスシールド本体に透光部が形成されるとともに、複数のフェイスシールド連結部品が設けられる。使用者は、フェイスシールド本体をフェイスシールド連結部品によりマスクに連結することで、マスクを着用すると同時にフェイスシールド本体により眼部を覆い保護することができ、安全性を向上するものとなっている。
【0004】
非特許文献1に開示されたデバイスは、顔の全面を透明のプラスチックシートで覆うものであり、患者から発せられる飛沫を可及的に遮断可能なものとなっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実用新案登録第3227242号公報
【非特許文献1】フェイスシールド 簡易式(https://item.rakuten.co.jp/marbeine/qh20041702-50pcs/)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、特許文献1や非特許文献1のフェイスシールドは、使用者の顔面の全部乃至は一部を覆うものであり、シールドの内面が使用者の息や汗により曇ってしまい、視界が妨げられる虞があった。また、シールドの前面には、細菌やウイルスを含む飛沫が付着している可能性が大であり、フェイスシールドを繰り返し使用する際には、当該デバイスの洗浄・消毒を確実に行う必要があった。
【0007】
また、昨今の手術では、医療用顕微鏡を用いた作業が多く、従来のデバイスを着用した医師が医療用顕微鏡を覗き込むにあたり、シールド(プラスチック板)が邪魔になるといった不都合も生じていた。
そこで、本発明は、上記問題点に鑑み、使用者が2次感染確実に防止しつつ、視界が良好な状態を維持可能であって、医療用顕微鏡を使う際にも障害とならないようなフェイスシールド、言い換えれば、感染防止機構を有するヘルメットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するため、本発明においては以下の技術的手段を講じた。
本発明にかかる感染防止機構を有するヘルメットは、頭部を覆って保護する帽体と、前記帽体の上部に前後方向に設けられたエア貫通孔と、前記エア貫通孔の前端部に設けられたエア排出口と、前記エア貫通孔の内部、またはその手前に伸びるダクトの延長上に、空気を供給することを可能とする送風ファンを備え、前記エア排出口が帽体の前部に下方を向くように配設されており、前記エア排出口から排出されたエアが、当該帽体を被った使用者の顔面の前方にエアカーテンを形成し、形成されたエアカーテンが細菌乃至はウイルスを含んだ飛沫を遮断可能とされていることを特徴とする。
【0009】
好ましくは、前記送風ファンで供給されたエアは、当該送風ファンの出側に配備されたフィルタを通過した後に、エア貫通孔の内部に供給される構成とされているとよい。
好ましくは、前記エア排出口には、排出されるエアの方向を可変とするルーバが設けられており、このルーバにより、排出されるエアの方向や厚さが調整可能とされているとよい。
【0010】
好ましくは、エア貫通孔の長手方向中途部には、当該エア貫通孔内のエアを使用者の頭部側へ誘導する誘導ルーバが設けられているとよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、使用者が2次感染を確実に防止しつつ、視界が良好な状態を維持可能であって、医療用顕微鏡を使う際にも障害とならないようなフェイスシールド、言い換えれば、感染防止に有効なエアスクリーン・ヘルメットを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明にかかる感染防止機構を有するヘルメットの内部構造を示した側面図である。
【
図2】本発明にかかる感染防止機構を有するヘルメットの外観を示す前方斜視図である。
【
図3】本発明にかかる感染防止機構を有するヘルメットの外観を示す側面図である。
【
図4】本発明にかかる感染防止機構を有するヘルメットの外観を示す斜視図である(ベンチレーションなし)。
【
図5】本発明にかかる感染防止機構を有するヘルメットの外観を示す後方斜視図である。
【
図7】本発明にかかる感染防止機構を有するヘルメットの機能を増大させることができるデバイスを模式的に示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明にかかる本発明の感染防止機構を有するヘルメット1(以下、単にヘルメット1と呼ぶこともある)の実施形態を、図を参照して説明する。
なお、以下に説明する実施形態は、本発明を具体化した一例であって、その具体例をもって本発明の構成を限定するものではない。本実施形態における図面に関しては、見やすくするため、構成部品の一部を省略したりして描いている。
【0014】
また、ヘルメット1の前後方向について、図の紙面左側を前側とし、紙面左側を後側とする。ヘルメット1の左右方向について、
図1の紙面奥側を右側とし、紙面手前側を左側とする。これはヘルメット1を着用した使用者Uから見た方向と一致する。
図1に示すように、本発明のヘルメット1は、頭部がずれなく被ることができる大きさを有するものである。具体的には、本発明のヘルメット1は、頭部を覆う帽体2と、帽体2の内部に取り付けられ、ヘルメット1と使用者Uの頭部との装着感を良くするための緩衝部材3と、頭部の周囲を巻き回すようにした上でその長さを伸縮させ、緩衝部材3が装着された帽体2を頭部に安定して固定するアジャスタバンド4と、を有する。
【0015】
図1に示すように、帽体2は、頭部の大きさよりやや大きい椀型の筐体であり、少なくとも頭頂部を覆う部材である。すなわち、帽体2はハードシェルと呼ばれる硬質の筐体で構成される。例えば、この帽体2としては、ABS樹脂などのプラスチック製などが挙げられるが、この構成材料に限定されるものではない。
図3に示すように、帽体2の頂部には、孔部5(ベンチレーション)が設けられている。この孔部5は、頭部の熱を外部に放出して通風性を高めて、内部の蒸れを防止する。なお、
図4に示すように、孔部5が無い形態で構成されてもよい。
【0016】
本発明のヘルメット1は、医療用として用いられるため、帽体2はハードシェルの部位を取り外し可能且つ交換可能にすることが、細菌感染防止の観点から非常に好ましい。また、このハードシェルを使い捨て(ディスポーザブル)とすることは、更に好ましい。
帽体2の内側、言い換えれば、帽体2と使用者Uの間に配備される緩衝部材3は、布体
や発泡スチロールなどで形成されており、帽体2内の適切な位置に配設されるものとなっている。
【0017】
また、アジャスタバンド4は、帽体2の内部に連結されるものとなっており、アジャスタバンド4を頭部に鉢巻状に装着し、当該アジャスタバンド4の長さを伸縮させることで、アジャスタバンド4内の直径が可変となり、帽体2が使用者Uの頭部に確実に装着されるものとなる。アジャスタバンド4も可撓性を有するプラスチックなどの帯体で構成され、後部で帯体の端部同士が連結されるようになっている。その連結部には、ロードバイク用のベルメットなどで公知とされるダイヤルを回すことでアジャスタバンド4の長さを調整可能な長さ調整機構6がついており、アジャスタバンド4自体の長さが伸縮するものとなっている。
【0018】
さて、本発明のヘルメット1は、その上部であって、前部から後部かけて特徴がある。また、ヘルメット1と称しているが、使用者Uの頭部を外部からの衝撃から保護するものではない。ヘルメット1の前部から下方に向けてエアが吹き出し、エアカーテンEを形成し、このエアカーテンEにより、細菌やウイルスを含む飛沫Vなどを確実に遮断し、医療従事者などの使用者Uの2次感染を防止するものである。すなわち、ヘルメット1の前部から上部を経て後部にかけて「感染防止機構」が配備されたデバイスである。
【0019】
まず、
図1に示すように、本願にかかるヘルメット1の上部には、ヘルメット1後部から前部にかけて貫通状に設けられたエア貫通孔10が形成されている。このエア貫通孔10の基端側(後部側)には、貫通孔内に外部のエアを取り込むための送風ファン11が設けられている。この送風ファン11は、ヘルメット1の内部(
図1の例では側方後部)に配備されたイオンリチウム電池などで構成されたバッテリ12が配備されており、このバッテリ12の電力により送風ファン11が回転し、エア貫通孔10内にエアを取り込むことができるようになっている。
【0020】
なお、
図1や
図5に示す如く、送風ファン11は、ヘルメット1の後部に設けてもよいが、ヘルメット1の側部や頂部に設けても良く、個数も1個に限定されず複数個設置するようにしても良い。また送風ファンは、使用者の腰部に装着可能なものとして、ダクト・チューブでヘルメットに空気を送り込むものでもよい。
送風ファン11の出口(エア通気孔内)には、HEPAフィルタのような高性能のエアフィルタが配備されている。このフィルタにより、外部から供給されたエア内に存在する細菌やウイルスを確実に除去できる。
【0021】
HEPAフィルタを通過したエアは、エア貫通孔10内を前側へと流動し、エア貫通孔10内の先端側に設けられたエア排出口13から吹き出るようになっている。
図2~
図4に示す如く、エア排出口13は、ヘルメット1の前部側に噴出するエアが、ヘルメット1使用者Uの顔面の前面を通過するように設けられている。すなわち、エア排出口13から排出されるエアは、使用者Uの顔面の前に「エアカーテンE」を形成するようになっておる。このエアカーテンEにより、使用者Uの前面側から使用者Uの顔面(特に目や鼻、口はマスクをしているので感染の危険性は低減されている)に向けてやってくる飛沫Vなどを確実にシャットアウトすることが可能となる。
【0022】
図6(a)(b)に示すように、エア排出口13は、左右に細長いものになっており、ルーバ14のようにエア噴出角度(特に前後方向の噴出角度)を可変とするためのルーバ14がついている。特に、使用者Uの顔面の側方までエアカーテンEを発現させるために、
図6(b)のように、エア排出口13の左右両側が後方へ向けて伸びるような形(側方延設排出口19)とされているものも考えられる。
【0023】
図1に示す如く、エア排出口13には、排出されるエアの方向を可変とするルーバ14が配備されており、
図6に示すように、このルーバ14の角度を変更するためのルーバ角度調整レバー15が、エア排出口13の近傍に設けられるものとなっている。
以上述べたようなヘルメット1を使用者U(特に医療従事者)が着用し、送風ファン11を作動させることで、顔面の前方にエアカーテンEを形成することにより、患者からの細菌やウイルスを含有した飛沫Vを確実にシャットアウトすることができ、使用者Uの2次感染を防ぐことが可能となる。また、ウイルス等を含有するエアを送風ファン11が吸
い込んだとしても、送風ファン11の出口に配備されたフィルタにより、ウイルスは確実に除去されるようになるため、エア排出口13から排出されるエア、言い換えればエアカーテンEは正常なものとなる。
【0024】
加えて、プラスチック製のシールド板のように硬質なシールド部材を用いておらず、空気によりシールドを形成するようにしているため、このヘルメット1を着用した使用者U(医師)が手術において医療用顕微鏡を覗き込むにあたり、シールドが邪魔になるといった不都合は生じない。
ところで、以上述べた感染防止機構を有するヘルメット1には、清浄な空気からなるエアカーテンEを形成する以外に様々な工夫がなされている。
【0025】
例えば、
図1に示すように、送風ファン11の出口近傍且つエア貫通孔10の長手方向中途部にもルーバ16(誘導ルーバ16、言い換えればエア流通邪魔板)が設置されている。このルーバ16は、送風ファン11によるエアの一部を、使用者Uの頭部側へ向け送風する(風光を変える)役目を担っており、向きを変えられたエアは、使用者Uの頭部を冷却する作用を奏することになる。また、
図2,
図3に示すように帽体2の一部(側部)に孔部5が形成されているため、帽体2内に空気がこもり使用者Uの頭部が蒸れたりすることを防ぐことができる。
【0026】
これまで述べたヘルメット1によるエアカーテンEを作動をより良いものとするため、エア排出口13に対面する側(エア排出口13の下側)に、エア吸入装置17を設けることは好ましい。
例えば、
図7に示すように、使用者Uの上着の両側(脇の下)にチューブ上の配管を設け、この配管の出側(
図7でいうと下側)に送風ファン11を設け、この配管の入側(
図7でいうと上側)から、エアカーテンEのエアを強制的に吸入し、使用者Uの後方に排出するようにしてもよい。このようにすることで、潤滑な空気循環を実現できるとともに、エアカーテンEが下方まで確実に伸びるものとなり、感染防止に資するものとなる。
【0027】
以上述べたように、頭部を覆って保護する帽体2と、帽体2の上部に設けられたエア貫通孔10と、エア貫通孔10の前端部に設けられたエア排出口13と、エア貫通孔10の内部にエアを供給可能な送風ファン11を備え、エア排出口13が帽体2の前部に下方を向くように配設されており、エア排出口13から排出されたエアが、当該帽体2を被った使用者Uの顔面の前方にエアカーテンEを形成し、形成されたエアカーテンEが細菌乃至はウイルスを含んだ飛沫Vを遮断可能とされている本発明の感染防止機構を有するヘルメット1によれば、使用者Uが2次感染確実に防止しつつ、視界が良好な状態を維持可能であって、医療用顕微鏡を使う際にも障害とならないようなフェイスシールドを実現することができる。
【0028】
なお、今回開示された実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。
特に、今回開示された実施形態において、明示されていない事項、例えば、作動条件や操作条件、構成物の寸法、重量などは、当業者が通常実施する範囲を逸脱するものではなく、通常の当業者であれば、容易に想定することが可能な事項を採用している。
【0029】
本発明のヘルメット1に備えられるエア排出口13の大きさや送風ファン11の大きさ、出力などについては、適宜変更が可能であり、感染防止を実現できるエアカーテンEを形成できるものであれば、どのようなものであっても良い。
【符号の説明】
【0030】
1 ヘルメット
2 帽体
3 緩衝部材
4 アジャスタバンド
5 孔部
6 長さ調整機構
10 エア貫通孔
11 送風ファン
12 バッテリ
13 エア排出口
14 ルーバ
15 ルーバ角度調整レバー
16 ルーバ(誘導ルーバ)
17 エア吸入装置
18 フィルタ
19 側方延設排出口
E エアカーテン
U 使用者
V 飛沫