(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022053227
(43)【公開日】2022-04-05
(54)【発明の名称】電子機器用ディスプレイパネル
(51)【国際特許分類】
H05B 33/02 20060101AFI20220329BHJP
H01L 51/50 20060101ALI20220329BHJP
H01L 27/32 20060101ALI20220329BHJP
G09F 9/00 20060101ALI20220329BHJP
G09F 9/30 20060101ALI20220329BHJP
【FI】
H05B33/02
H05B33/14 A
H01L27/32
G09F9/00 304
G09F9/00 346A
G09F9/30 365
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020159927
(22)【出願日】2020-09-24
(71)【出願人】
【識別番号】505205731
【氏名又は名称】レノボ・シンガポール・プライベート・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100169764
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100175824
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100206081
【弁理士】
【氏名又は名称】片岡 央
(72)【発明者】
【氏名】土橋 守幸
(72)【発明者】
【氏名】肖 利民
【テーマコード(参考)】
3K107
5C094
5G435
【Fターム(参考)】
3K107AA01
3K107BB01
3K107CC24
3K107DD13
3K107DD15
3K107DD18
3K107EE58
3K107EE62
3K107FF15
5C094AA33
5C094BA27
5C094DA09
5C094DA12
5C094FA01
5C094FA02
5C094FB12
5G435AA12
5G435BB05
5G435EE37
5G435GG44
5G435HH12
5G435HH20
(57)【要約】
【課題】ドライバチップが生じる熱によりOLEDが劣化することを抑制可能な電子機器用ディスプレイパネルを提供する。
【解決手段】電子機器用ディスプレイパネルは、基板および画像表示領域を有するOLEDと、メタルシートおよびグラファイトシートが積層されたコンビネーションシートと、前記基板に実装されたドライバチップと、を備え、前記コンビネーションシートは前記基板に固定され、前記基板の厚さ方向から見て、前記ドライバチップと重なる位置に前記メタルシートおよび前記グラファイトシートが配されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板および画像表示領域を有するOLEDと、
メタルシートおよびグラファイトシートが積層されたコンビネーションシートと、
前記基板に実装されたドライバチップと、を備え、
前記コンビネーションシートは前記基板に固定され、
前記基板の厚さ方向から見て、前記ドライバチップと重なる位置に前記メタルシートおよび前記グラファイトシートが配されている、電子機器用ディスプレイパネル。
【請求項2】
前記グラファイトシートが前記メタルシートよりも前記基板に近い位置に配されている、請求項1に記載の電子機器用ディスプレイパネル。
【請求項3】
前記グラファイトシートが、前記OLEDの全体を覆っている、請求項1または2に記載の電子機器用ディスプレイパネル。
【請求項4】
前記コンビネーションシートの全体に前記メタルシートおよび前記グラファイトシートが配されている、請求項1から3のいずれか1項に記載の電子機器用ディスプレイパネル。
【請求項5】
前記コンビネーションシートの一部に前記グラファイトシートが配されていない、請求項1から3のいずれか1項に記載の電子機器用ディスプレイパネル。
【請求項6】
前記メタルシートは銅により形成されている、請求項1から5のいずれか1項に記載の電子機器用ディスプレイパネル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器用ディスプレイパネルに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、OLED(Organic Light Emitting Diode)を採用した電子機器用のディスプレイパネルが開示されている。OLEDは駆動用集積回路(ドライバチップ)により駆動される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
OLEDには有機化合物が含まれ、熱が加えられることで劣化が促進される。ドライバチップは発熱源であるため、ドライバチップが生じる熱によりOLEDが劣化するという課題がある。特に、ディスプレイパネルの小型化等のためにドライバチップとOLEDとの間の距離を確保できない場合に、上記課題が顕著になる。
【0005】
本発明はこのような事情を考慮してなされ、ドライバチップが生じる熱によりOLEDが劣化することを抑制可能な電子機器用ディスプレイパネルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の一態様に係る電子機器用ディスプレイパネルは、基板および画像表示領域を有するOLEDと、メタルシートおよびグラファイトシートが積層されたコンビネーションシートと、前記基板に実装されたドライバチップと、を備え、前記コンビネーションシートは前記基板に固定され、前記基板の厚さ方向から見て、前記ドライバチップと重なる位置に前記メタルシートおよび前記グラファイトシートが配されている。
【0007】
ここで、前記グラファイトシートが前記メタルシートよりも前記基板に近い位置に配されていてもよい。
【0008】
また、前記グラファイトシートが、前記OLEDの全体を覆っていてもよい。
【0009】
また、前記コンビネーションシートの全体に前記メタルシートおよび前記グラファイトシートが配されていてもよい。
【0010】
また、前記コンビネーションシートの一部に前記グラファイトシートが配されていなくてもよい。
【0011】
また、前記メタルシートは銅により形成されていてもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明の上記態様によれば、ドライバチップが生じる熱によりOLEDが劣化することを抑制可能な電子機器用ディスプレイパネルを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本実施形態に係るディスプレイパネルを備えた電子機器の一例を示す図である。
【
図2】本実施形態に係るディスプレイパネルを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本実施形態のディスプレイパネルおよび前記ディスプレイパネルを備えた電子機器について、図面に基づいて説明する。
図1に示す電子機器1は、クラムシェル型(ノート型)のPC(パーソナルコンピュータ)である。電子機器1は、第1筐体1a、第2筐体1b、およびヒンジ機構1cを備えている。第1筐体1aと第2筐体1bとは、ヒンジ機構1cを中心として相対的に回動可能となっている。第1筐体1aには、ディスプレイパネル10(電子機器用ディスプレイパネル)が設けられている。第2筐体1bには、キーボード、マザーボード等が設けられている。なお、クラムシェル型のPC以外の電子機器(例えばデスクトップ型PC、タブレット型PC、スマートフォン、ゲーム機等)に、本実施形態のディスプレイパネル10を用いてもよい。
【0015】
図2および
図3に示すように、ディスプレイパネル10は、コンビネーションシート11と、OLED12(Organic Light Emitting Diode)と、複数のドライバチップ13と、複数の第1接続基板14と、中継基板15と、第2接続基板16と、を備える。ディスプレイパネル10が備えるドライバチップ13および第1接続基板14の数は、それぞれ1つであってもよい。
【0016】
(方向定義)
本実施形態では、OLED12が有する基板12aの厚さ方向を、単に厚さ方向Zといい、図面ではZ軸により表す。厚さ方向Zに直交する一方向を第1方向Xといい、図面ではX軸により表す。厚さ方向Zおよび第1方向Xの双方に直交する方向を第2方向Yといい、図面ではY軸により表す。すなわち、OLED12は第1方向Xおよび第2方向Yに延在している。
【0017】
図4に示すように、コンビネーションシート11は、少なくともメタルシート11a(メタル層)およびグラファイトシート11c(グラファイト層)を含んでいる。
グラファイトシート11cは、グラファイト(黒鉛化された炭素)を含んでいる。グラファイトシート11cの厚みは、適宜変更可能であるが、例えば30μm程度である。グラファイトは熱伝導率が極めて高いため、グラファイトシート11cは熱を拡散させる部材として好適である。
【0018】
メタルシート11aの厚みは、例えば30μm程度である。メタルシート11aを形成する金属としては、銅、アルミニウム等を採用できる。銅およびアルミニウムは熱伝導率が大きいため、メタルシート11aとしてこれらを採用することでコンビネーションシート11の放熱性能を高めることができる。また、銅は薄く(例えば30μm程度)しても皺が生じにくいため、メタルシート11aとして銅を採用することでコンビネーションシート11を製造しやすいという利点が得られる。メタルシート11aをアース回路に接続してもよい。この場合、メタルシート11aによって放射ノイズを遮断したり、静電破壊(ESD:Electro-Static Discharge)を抑制したりすることも可能である。
【0019】
図4に示すように、メタルシート11aとグラファイトシート11cとの間には第1接着層11bが配されている。第1接着層11bにより、メタルシート11aとグラファイトシート11cとが接着固定されている。また、グラファイトシート11cとOLED12との間には第2接着層11dが配されている。第2接着層11dにより、コンビネーションシート11がOLED12に接着固定されている。
【0020】
上記の通り、本実施形態のコンビネーションシート11は、メタルシート11a、第1接着層11b、グラファイトシート11c、および第2接着層11dがこの順に積層された構造を有する。ただし、コンビネーションシート11の各層が積層される順番は変更可能である。また、メタルシート11aおよびグラファイトシート11cを積層してOLED12に固定することができれば、第1接着層11bおよび第2接着層11dは無くてもよい。
【0021】
図2に示すように、OLED12は、厚さ方向Zから見て、第2方向Yよりも第1方向Xに長い長方形状である。ただし、OLED12の形状は適宜変更してもよい。OLED12は、基板12aおよび画像表示領域12bを有している。基板12aは透明であり、バックプレートあるいはバックフィルムとも呼ばれる。基板12aは、樹脂であってもよいし、ガラスであってもよい。基板12aを、例えばポリイミドなどの可撓性を有する樹脂で形成した場合、OLED12に可撓性を持たせることができる。基板12aには所定の回路パターンが形成されている。画像表示領域12bは、基板12a上に部分的に配されている。つまり、基板12aは画像表示領域12bが配されていない部位を有する。基板12aのうち、画像表示領域12bが配されていない部位に、複数のドライバチップ13が実装されている。このように、OLED12の基板12aに直接ドライバチップ13が実装された構造を、COP(Chip On Panel)ともいう。
【0022】
図2に示すように、複数のドライバチップ13は、第1方向Xに並べて配されている。ドライバチップ13は、画像表示領域12bを制御して所定の画像を表示させる。ドライバチップ13は、例えばIC(Integrated Circuit)である。ドライバチップ13は、第1接続基板14により、中継基板15に接続される。第1接続基板14は、ドライバチップ13の数および配置に合わせて、第1方向Xに並べて配されている。複数の第1接続基板14の各回路は、中継基板15により集約されて、1つの第2接続基板16へと電気的に接続される。
【0023】
第2接続基板16はコネクタ16aを有している。コネクタ16aを、例えば第2筐体1bのマザーボードに接続することで、ドライバチップ13とマザーボードとを電気的に接続できる。第1接続基板14および第2接続基板16は、例えばFPC(Flexible printed Circuit)であり、曲げ変形可能である。第2接続基板16をヒンジ機構1cの内部に通すことで、第1筐体1aと第2筐体1bとが相対回転しても電子機器1の機能を維持することができる。なお、ドライバチップ13とマザーボードとを接続するための構造は適宜変更可能である。
【0024】
OLED12の画像表示領域12bには、電極層、有機EL層、および封止部材等が含まれる。電極層は、例えば薄膜トランジスタ(Thin Film Transistor:TFT)層であり、複数のスイッチング素子を有する。有機EL層には、有機化合物により形成された複数の画素が含まれる。封止部材は電極層および有機EL層を封止する。封止部材の内部は、例えば真空状態である。画像表示領域12bは、有機EL層に含まれる各画素に電流を流して発光させ、所定の画像を表示するように構成されている。
【0025】
図3に示すように、OLED12の裏側にコンビネーションシート11が設けられている。OLED12の表側には、OCA17(Optical Clear Adhesive)およびカバーフィルム18が設けられる。なお、「OLED12の裏側」とは基板12aが配置された側であり、「OLED12の表側」とは画像表示領域12bが配置された側である。使用者は、カバーフィルム18およびOCA17を通して、画像表示領域12bに表示された画像を視認することができる。
【0026】
カバーフィルム18は、OCA17によって、OLED12に接着固定される。OCA17は、透明かつ接着性を有している。OCA17としては、例えばシリコーン系粘着剤を採用できる。カバーフィルム18は例えばガラスである。カバーフィルム18とOLED12との間に、タッチセンサ層が設けられてもよい。この場合、ディスプレイパネル10をタッチパネルとして用いることができる。また、カバーフィルム18とOLED12との間に偏光板などが設けられてもよい。
【0027】
ここで、OLED12の基板12aに実装されるドライバチップ13は熱源である。このため、有機EL層を有する画像表示領域12bとドライバチップ13とは離して配置することが好ましい。ドライバチップ13が発する熱により、有機EL層の劣化が進行するためである。しかしながら、近年ではディスプレイパネル10または電子機器1を小型化するため、ドライバチップ13と画像表示領域12bとの間の隙間を微小(例えば2mm程度)な大きさとすることが求められる。このような位置関係であっても有機EL層に熱が加えられることを抑制するため、本実施形態ではグラファイトシート11cおよびメタルシート11aが積層されたコンビネーションシート11を、熱拡散部材として採用している。
【0028】
グラファイトシート11cおよびメタルシート11aは、必ずしもコンビネーションシート11の全体にわたって積層されていなくてもよい。例えば、コンビネーションシート11の一部に、グラファイトシート11cが積層されていない領域があってもよい。ただし、厚さ方向Zから見て、少なくとも1つのドライバチップ13と重なる位置にメタルシート11aおよびグラファイトシート11cの両方が配されていることが好ましい。
【0029】
以上説明したように、本実施形態のディスプレイパネル10は、基板12aおよび画像表示領域12bを有するOLED12と、メタルシート11aおよびグラファイトシート11cが積層されたコンビネーションシート11と、基板12aに実装されたドライバチップ13と、を備え、コンビネーションシート11は基板12aに固定され、基板12aの厚さ方向Zから見て、ドライバチップ13と重なる位置にメタルシート11aおよびグラファイトシート11cが配されている。
【0030】
この構成によれば、高い熱伝導率を有するグラファイトシート11cによってドライバチップ13の熱を拡散させることで、ドライバチップ13の周辺が局所的に高温になることを抑制できる。したがって、ドライバチップ13の周辺のOLED12に含まれる有機EL層が熱により劣化することを抑制できる。また、グラファイトシート11cに比べて放射ノイズ遮断に有利なメタルシート11aによって、中継基板15等の回路基板からの放射ノイズがOLED12に到達することをメタルシート11aによって遮断したり、メタルシート11aをESD(electro-static discharge)の抑制部材として使用することもできる。つまり、熱に起因するOLED12の劣化の抑制および放射ノイズの遮断を、コンビネーションシート11により実現できる。コンビネーションシート11は極めて薄く(例えば100μm程度)形成できるため、ディスプレイパネル10または電子機器1の厚みも薄くすることができる。さらに、コンビネーションシート11は不透明であるため、OLED12が表示する画像を使用者が視認しやすくするための遮光部材としてコンビネーションシート11を使用できる。
【0031】
また、
図4に示すように、グラファイトシート11cがメタルシート11aよりも基板12aに近い位置に配されていてもよい。この場合、ドライバチップ13から生じた熱が、基板12aを介してグラファイトシート11cに伝わりやすくなる。グラファイトシート11cはメタルシート11aよりも熱伝導率が大きい。したがって、グラファイトシート11cに熱が伝わりやすくすることで、より効率的にドライバチップ13の熱を拡散させることができる。
【0032】
また、グラファイトシート11cが、OLED12の全体を覆っていてもよい。この場合、ドライバチップ13から生じた熱だけでなく、OLED12から生じた熱も、グラファイトシート11cによって拡散させることができる。したがって、OLED12が局所的に高熱になることを抑制できる。
【0033】
また、コンビネーションシート11の全体に、メタルシート11aおよびグラファイトシート11cが配されてもよい。この場合、予めコンビネーションシート11を作成しておき、そのコンビネーションシート11をOLED12に接着固定するといった製造方法を採用できる。この製造方法によれば、OLED12に対してグラファイトシート11cおよびメタルシート11aを順次積層する場合と比較して、ディスプレイパネル10の品質を容易に安定させることができる。
【0034】
また、コンビネーションシート11の一部にグラファイトシート11cが配されていなくてもよい。例えば、局所的に高温になりやすいドライバチップ13の周辺にのみグラファイトシート11cを配することで、放熱性を確保しつつ製造コストを低減してもよい。
【0035】
また、メタルシート11aが銅により形成されていてもよい。この場合、放熱性を確保しつつ、メタルシート11aに皺が生じにくくすることができる。
【0036】
なお、本発明の技術的範囲は前記実施形態に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【0037】
例えば、ディスプレイパネル10は第1接続基板14、中継基板15、第2接続基板16を備えていなくてもよい。
あるいは、ディスプレイパネル10が上記実施形態において説明されていない構成要素を備えてもよい。
【0038】
その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、上記した実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、上記した実施形態や変形例を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0039】
1…電子機器 10…ディスプレイパネル 11…コンビネーションシート 11a…メタルシート 11c…グラファイトシート 12a…基板 12b…画像表示領域 13…ドライバチップ