IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社日本触媒の特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022053239
(43)【公開日】2022-04-05
(54)【発明の名称】重合体粒子を含むゴム組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 9/00 20060101AFI20220329BHJP
   C08L 33/04 20060101ALI20220329BHJP
   C08F 220/10 20060101ALI20220329BHJP
   C08F 265/06 20060101ALI20220329BHJP
【FI】
C08L9/00
C08L33/04
C08F220/10
C08F265/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020159952
(22)【出願日】2020-09-24
(71)【出願人】
【識別番号】000004628
【氏名又は名称】株式会社日本触媒
(72)【発明者】
【氏名】柏原 宮人
(72)【発明者】
【氏名】松本 和明
【テーマコード(参考)】
4J002
4J026
4J100
【Fターム(参考)】
4J002AC081
4J002BG072
4J002FA082
4J026AA45
4J026BA07
4J026BA27
4J026BB03
4J026DA04
4J026DA07
4J026DA16
4J026DB04
4J026DB08
4J026DB16
4J026DB24
4J026FA07
4J100AB16Q
4J100AL29P
4J100FA20
(57)【要約】
【課題】良好な分散安定性や、良好な加工性を有し、良好な機械的強度のゴム材料を得ることが可能となる、ゴム組成物を提供する。
【解決手段】
重合体粒子と、ゴムとを含み、前記重合体粒子は、下記一般式(1)で表される構造単位と、多官能エチレン性不飽和単量体に由来する構造単位とを含む、ゴム組成物である。
(一般式(1)中、Rは、炭素数1~4のアルキル基、水素原子、アルカリ金属原子、またはアンモニウムを表す。)
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
重合体粒子と、ゴムとを含み、前記重合体粒子は、下記一般式(1)で表される構造単位と、多官能エチレン性不飽和単量体に由来する構造単位とを含む、ゴム組成物。
【化1】
(一般式(1)中、Rは、炭素数1~4のアルキル基、水素原子、アルカリ金属原子、またはアンモニウムを表す。)
【請求項2】
上記一般式1において、Rの少なくとも一部がアルカリ金属原子、またはアンモニウムである、請求項1に記載のゴム組成物。
【請求項3】
前記重合体粒子の体積平均粒子径が10nm~10μmである、請求項1または2に記載のゴム組成物。
【請求項4】
上記一般式(1)で表される構造単位を50質量%以上有する重合体粒子を含む、請求項1~3のいずれか1項に記載のゴム組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、重合体粒子を含むゴム組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ゴム組成物は工業用途に広く用いられている。例えば、自動車用の空気入りタイヤにおけるゴムには、機械的特性や耐摩耗性などを高める必要がある。それに対応する手段として、ゴム組成物に、補強材としてカーボンブラック、シリカ、重合体粒子などを用いる方法が知られている。(特許文献1)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第6241771号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のとおり、種々のゴムの改質方法が知られているが、補強材としてカーボンブラックを多量に配合したゴム組成物は粘度上昇による加工性の低下を招く等の問題があった。シリカ系充填剤は有機系ゴムに親和性がなく、また、重合体粒子を均一にかつ安定的に分散させることが難しいため、分散不良によりゴム材料の機械的強度が低下する課題があった。
【0005】
よって、本発明は、良好な分散安定性と、良好な加工性とを有し、良好な機械的強度のゴム材料を得ることが可能となる、ゴム組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記目的を達成する為に種々検討を行ない、本発明に想到した。すなわち本開示のゴム組成物は、重合体粒子と、ゴムとを含み、前記重合体粒子は、下記一般式(1)で表される構造単位と、多官能エチレン性不飽和単量体に由来する構造単位とを含む、ゴム組成物である。
【0007】
【化1】
【0008】
(一般式(1)中、Rは、炭素数1~4のアルキル基、水素原子、アルカリ金属原子、またはアンモニウムを表す。)
【発明の効果】
【0009】
本開示のゴム組成物は、良好な分散安定性を有し、加工性に優れ、大きな破断応力や破断歪みを有するゴム材料を与えることが可能である。よって、本開示のゴム組成物は、例えば、タイヤ、さらには、接着剤や各種コーティング剤などに好適に用いることができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を詳細に説明する。
なお、以下において記載する本発明の個々の好ましい形態を2つ以上組み合わせたものもまた、本発明の好ましい形態である。
【0011】
[本開示の重合体粒子]
本開示の重合体粒子の構造単位は、後述する一般式(2)で示される単量体(以下、ヒドロキシメチルアクリル酸系単量体ともいう)の少なくとも1種と、多官能エチレン性不飽和単量体とが架橋した架橋構造を含む。
【0012】
本開示の重合体粒子の構造単位は、後述する一般式(1)で表される構造単位と、多官能エチレン性不飽和単量体に由来する構造単位とを含み、必要に応じてその他の単量体に由来する構造単位を有する。
【0013】
<一般式(1)で表される構造単位>
本開示の重合体粒子は、下記一般式(1)で表される構造単位を含む。
【0014】
【化2】
【0015】
(Rは、炭素数1~4のアルキル基、水素原子、アルカリ金属原子、またはアンモニウムを表す。)
上記Rで表される炭素数1~4のアルキル基は、炭素数1~2のアルキル基であることが好ましく、炭素数1のアルキル基(メチル基)であることがより好ましい。
【0016】
上記一般式(1)で表される構造単位は、下記一般式(2)で表される単量体が重合反応を経由することにより形成されても良いが、他の方法で形成されても良い。例えば、一般式(2)において、Rが炭素数1~4のアルキル基である単量体を重合し、加水分解をすることにより、上記一般式(1)においてRがアルカリ金属の構造単位やアンモニウムの構造単位を形成しても良い。
【0017】
【化3】
【0018】
(一般式(2)中、Rは、炭素数1~4のアルキル基、水素原子、アルカリ金属原子、またはアンモニウムを表す。)
なお、上記一般式(1)において、Rは、1種であってもよく、2種以上であっても良い。Rが2種以上の場合、2種以上の上記一般式(2)で表される単量体を重合して形成してもよく、Rが炭素数1~4のアルキル基である上記一般式(2)で表される単量体を重合した後に、エステル基を部分加水分解したり、2種以上の塩基性物質で加水分解することにより形成しても良い。
【0019】
上記Rがアンモニウムとは、NH4+に限られず、有機アンモニウムを含む意味であると定義される。有機アンモニウムとしては、テトラメチルアンモニウム、テトラブチルアンモニウムなどのテトラアルキルアンモニウムなどの4級アンモニウム;アミンをプロトン化することによって形成されるアンモニウム(1~3級アンモニウム)などが挙げられる。Rとしては、アンモニア又はアミンのプロトン化によって形成されるアンモニウムが好ましい。前記アミンとしては、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリブチルアミンなどのトリアルキルアミン(好ましくはトリC1-10アルキルアミン);ジエタノールアミン、トリエタノールアミンなどのヒドロキシアルキルアミン(好ましくはジ又はトリ(ヒドロキシC1-10アルキル)アミンなど)などが挙げられ、ヒドロキシアルキルアミンが好ましい。
【0020】
本開示の重合体粒子は、上記一般式(1)で表される構造単位を、20質量%以上含むことが好ましく、30質量%以上含むことがより好ましく、50質量%以上含むことがさらに好ましく、70質量%以上含むことがよりさらに好ましく、80質量%以上含むことが特に好ましく、90質量%以上含むことが最も好ましい。一方、本開示の重合体粒子は、上記一般式(1)で表される構造単位を、99.99質量%以下含むことが好ましく、99.9質量%以下含むことがより好ましく、99質量%以下含むことがさらに好ましく、97質量%以下含むことが特に好ましく、95質量%以下含むことが最も好ましい。上記範囲で含むことにより、本開示のゴム組成物の示す、分散安定性、加工性、機械的特性が向上する傾向にある。
【0021】
本開示の重合体粒子は、多層構造を有していてもよく、例えばコア部とその表面に設けられたシェル部で構成されるコアシェル粒子であってもよい。本開示の重合体粒子が多層構造を有する場合には、最外殻の層における組成が上記範囲であることが好ましい。
【0022】
<多官能エチレン性不飽和単量体に由来する構造単位>
本開示において、多官能エチレン性不飽和単量体に由来する構造単位とは、多官能エチレン性不飽和単量体の、少なくとも一つの炭素炭素二重結合が炭素炭素単結合に置き換わった構造単位を表す。例えば、ジビニルベンゼン、CH=CH-C-CH=CH、であれば、ジビニルベンゼン由来の構造単位は、例えば-CH-CH-C-CH-CH-、で表すことができる。多官能エチレン性不飽和単量体由来の構造単位は、例えば、多官能エチレン性不飽和単量体をラジカル重合することにより形成することができる。なお、多官能エチレン性不飽和単量体由来の構造単位は、多官能エチレン性不飽和単量体の炭素炭素二重結合が炭素炭素単結合に置き換わった構造と同じ構造であればよく、多官能エチレン性不飽和単量体が重合することにより形成された構造単位に限定されず、例えば重合後の後反応により形成された構造単位であってもよい。
【0023】
本開示の重合体粒子は、多官能エチレン性不飽和単量体に由来する構造単位を1種または2種以上含んでいても良い。
【0024】
本開示において、多官能エチレン性不飽和単量体としては、エチレン性の炭素炭素二重結合を2または3以上含む化合物であれば、特に制限されないが、例えば、CH=CH-基、CH=CH-O-基、CH=CH-CH-O-基、CH=C(CH)-CH-O-基、CH=CH-CH-CH-O-基、CH=C(CH)-CH-CH-O-基、CH=CH-CO-O-基、CH=C(CH)-CO-O-基、CH=CH-CO-NH-基、から選択される1種または2種以上のエチレン性の炭素炭素二重結合を2または3以上含む化合物が例示される。
【0025】
本開示において、多官能エチレン性不飽和単量体としては、分子量が50以上、1000以下であることが好ましく、100以上、400以下であることがより好ましい。
【0026】
また、上記多官能エチレン性不飽和単量体としては、ジビニルベンゼン;1,3-ブタジエン;トリビニルベンゼン;ジビニルナフタレン;トリビニルシクロヘキサン;ジビニルエーテル;ジアリルエーテル;多価メタクリル酸エステル、N、N’-メチレンビスアクリルアミド等が例示される。ジアリルエーテルとしては、例えば、ジエチレングリコールジアリルエーテル、ジプロピレングリコールジアリルエーテル、ジブチレングリコールジアリルエーテル等のジアルキレングリコールジアリルエーテル;ポリエチレングリコールジアリルエーテル、ポリプロピレングリコールジアリルエーテル、ポリブチレングリコールジアリルエーテル等のポリアルキレングリコールジアリルエーテルが挙げられる。また、多価メタクリル酸エステルとしては、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、1,3-ブタンジオールジメタクリレート、1,4-ブタンジオールジメタクリレート、1,6-ヘキサンジオールジメタクリレート、1,9-ノナンジオールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、ジプロピレングリコールジメタクリレート、ポリプロピレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、ペンタエリトリトールトリメタクリレート、ペンタエリトリトールテトラメタクリレート、ジペンタエリトリトールヘキサメタクリレート、メタクリル変性ポリジメチルシロキサンなどが挙げられる。
【0027】
本開示の重合体粒子は、上記多官能エチレン性不飽和単量体に由来する構造単位を、0.01質量%以上含むことが好ましく、0.1質量%以上含むことがより好ましく、0.5質量%以上含むことがさらに好ましく、2質量%以上含むことがよりさらに好ましく、5質量%以上含むことが特に好ましい。一方、本開示の重合体粒子は、上記多官能エチレン性不飽和単量体に由来する構造単位を、70質量%以下含むことが好ましく、50質量%以下含むことがより好ましく、30質量%以下含むことがさらに好ましく、20質量%以下含むことが特に好ましく、10質量%以下含むことが最も好ましい。上記範囲で含むことにより、本開示のゴム組成物の示す、分散安定性、加工性、機械的特性が向上する傾向にある。
【0028】
本開示の重合体粒子に含まれる上記多官能エチレン性不飽和単量体に由来する構造単位100質量%中、二官能不飽和単量体に由来する構造単位の割合は、50質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であることがより好ましく、90質量%以上であることがさらに好ましく、95質量%以上であることが特に好ましく、100質量%であることが最も好ましい。
【0029】
本開示の重合体粒子が多層構造を有する場合には、最外殻の層における組成が上記範囲であることが好ましい。
【0030】
<その他の単量体に由来する構造単位>
本開示の重合体粒子は、上記一般式(1)で表される構造単位、多官能エチレン性不飽和単量体に由来する構造単位以外の単量体に由来する構造単位(以下、「その他の単量体に由来する構造単位」ともいう)を1種または2種以上含んでいても良い。すなわち、上記一般式(2)で表される単量体、多官能エチレン性不飽和単量体以外の単量体(以下、「その他の単量体」といもいう)に由来する構造単位を1種または2種以上含んでいても良い。
【0031】
その他の単量体としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル系モノマー;スチレン、α-メチルスチレン、p-メチルスチレン、tert-ブチルスチレン、クロロスチレン、ビニルトルエンなどのスチレン系単量体;(メタ)アクリル酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、イタコン酸、無水マレイン酸などのカルボキシル基含有単量体;ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリ(メトキシエトキシ)シラン、γ-(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、2-スチリルエチルトリメトキシシラン、ビニルトリクロロシラン、γ-(メタ)アクリロイルオキシプロピルヒドロキシシラン、γ-(メタ)アクリロイルオキシプロピルメチルヒドロキシシランなどのシラン基含有単量体;2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等の水酸基含有単量体;(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N-ビニルピロリドン、(メタ)アクリロニトリル等の窒素原子含有単量体;エチレングリコールメトキシ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールメトキシ(メタ)アクリレートなどのオキソ基含有単量体;トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート、オクタフルオロペンチル(メタ)アクリレートなどのフッ素原子含有単量体;グリシジル(メタ)アクリレートなどのエポキシ基含有単量体;2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-(メタ)アクリレート等の光安定化単量体;ベンゾトリアゾール系紫外線吸収性単量体、ベンゾフェノン系紫外線吸収性単量体などの紫外線吸収性単量体などが例示される。
本開示の重合体粒子における、その他の単量体に由来する構造単位の含有量は、75質量%以下であることが好ましく、65質量%以下であることがより好ましく、50質量%以下であることがさらに好ましく、30質量%以下であることが好ましく、20質量%以下であることがより好ましく、10質量%以下であることがさらに好ましく、5質量%以下であることが特に好ましく、2質量%以下であることが最も好ましい。
上記範囲であることにより、本開示のゴム組成物の示す、分散安定性、加工性、機械的特性が向上する傾向にある。
【0032】
本開示の重合体粒子が多層構造を有する場合には、最外殻の層における組成が上記範囲であることが好ましい。
【0033】
<本開示の重合体粒子の性状>
本開示の重合体粒子は、体積平均粒子径が10nm~10μmであることが好ましく、50nm~5μmであることがより好ましく、100nm~1μmであることがさらに好ましく、150~500nmであることが特に好ましい。
【0034】
本開示の重合体粒子は、ガラス転移温度が80℃以上であることが好ましく、100℃以上であることがより好ましく、150℃以上であることがさらに好ましい。
【0035】
[本開示の重合体粒子の製造方法]
本開示の重合体粒子は、特に限定されないが、式(2)で表されるヒドロキシメチルアクリル酸系単量体のうちRが炭素数1~4のアルキル基であるもの(以下、ヒドロキシメチルアクリル酸エステルという)と、多官能エチレン性不飽和単量体と(以下、これらをまとめて「原料単量体成分」という場合がある)を水系溶媒中で重合し、必要に応じ、部分的に又は完全に加水分解することにより製造することが好ましい。
重合方法としては、懸濁重合、乳化重合、分散重合等が挙げられる。中でも、乳化剤の存在下、上記原料単量体成分を反応溶媒に分散させて(ラジカル)重合反応を行う乳化重合が好ましく、具体的には、本発明の重合体粒子の製造方法としては、乳化剤の存在下、式(2)で示される単量体の少なくとも1種と、多官能エチレン性不飽和単量体とを水系溶媒に分散させて重合反応を行う乳化重合を含むことが好ましい。乳化重合は、1段階のみで行ってもよく多段階で行ってもよい。
【0036】
前記乳化剤としては、1種又は2種以上を用いることができ、非反応型界面活性剤であっても、ラジカル重合可能な基を構造中に有する反応型界面活性剤であってもよい。
非反応型界面活性剤には、アニオン性、ノニオン性の界面活性剤が包含される。アニオン性界面活性剤としては、脂肪酸塩、アルキル(アリル)スルホン酸塩、アルキル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキル(フェニル)エーテル硫酸塩等が挙げられ、ノニオン性界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキル(フェニル)エーテル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマー等が挙げられる。
反応型界面活性剤には、アニオン性、ノニオン性の界面活性剤が包含される。アニオン性反応型界面活性剤としては、エーテルサルフェート型反応型界面活性剤、リン酸エステル系反応型界面活性剤が挙げられるが、これに限定されない。
【0037】
乳化剤は、原料単量体成分の合計100質量部に対して、0.05質量部以上であることが好ましく、より好ましくは0.1質量部以上、さらに好ましくは0.3質量部以上であり、20質量部以下であることが好ましく、より好ましくは10質量部以下、さらに好ましくは5質量部以下、特に好ましくは3質量部以下である。
【0038】
本開示において、水系溶媒とは、水単独、または水と水混和性有機溶媒との混合溶媒が挙げられるが、水単独であることが好ましい。水系溶媒とは、典型的には、水の含有量が50体積%を超える溶媒を指す。水としては、イオン交換水(脱イオン水)、蒸留水、純水等を用いることができる。水混和性有機溶媒としては、水と均一に混合し得る有機溶剤(低級アルコール等)を用いることができる。重合体粒子中に有機溶媒が極力残存しないようにする観点から、水系溶媒の80体積%以上が水である水系溶媒が好ましく、水系溶媒の90体積%以上が水である水系溶媒がより好ましく、水系溶媒の95体積%以上が水である水系溶媒がさらに好ましく、実質的に水からなる水系溶媒(99.5体積%以上が水である水系溶媒)が特に好ましく、水単独であることが最も好ましい。
【0039】
原料単量体成分を重合する際には、例えば、重合開始剤、紫外線や放射線の照射、熱の印加等の手段が用いられ、重合開始剤を使用することが好ましく、原料単量体成分を効率よく反応させ、残存するモノマーを十分に低減させる観点から、酸化剤及び還元剤を組み合わせた重合開始剤(レドックス型重合開始剤)が好ましい。
【0040】
本開示の重合体粒子の加水分解は、例えば、水酸化ナトリウム水溶液、アンモニア水溶液、シクロヘキシルアミン水溶液等の塩基性水溶液を添加することで加水分解を行うことができる。さらに、加水分解液に適宜酸を添加することで、部分中和又は完全中和を行うことができる。加水分解及び中和を行うことで、式(1)のRに該当する基を水素原子、アルカリ金属原子、又はアンモニウムにできる。重合時、加水分解時、及び中和時に用いる酸や塩基の量を調整したり、Rが水素原子である単量体単位の割合を調整することで、重合体粒子のpH及び粒子表面の親水性を容易に調整することができるため、本開示のゴム組成物の示す、分散安定性、加工性、機械的特性を向上させることができる。
【0041】
[本開示のゴム組成物]
本開示のゴム組成物は、本開示の重合体粒子を含む。本開示のゴム組成物における本開示の重合体粒子の含有量は、2質量%以上であることが好ましく、5質量%以上であることがより好ましく、10質量%以上であることがさらに好ましい。また、本開示のゴム組成物における本開示の重合体粒子の含有量は、70質量%以下であることが好ましく、60質量%以下であることがより好ましく、50質量%以下であることがさらに好ましい。上記範囲で含むことにより、本開示のゴム組成物の示す、分散安定性、加工性、機械的特性が向上する傾向にある。
【0042】
本開示のゴム組成物のゴムとしては、例えば、エチレン-α-オレフィンエラストマー(EPDM、EPRなど)、クロロプレンゴム(CR)、クロロスルホン化ポリエチレンゴム(CSM)、水素添加アクリロニトリルゴム(H-NBR)、天然ゴム(NR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ブタジエンゴム(BR)、ニトリルゴム(NBR)、シリコーンゴム(Q)、フッ素ゴム(FKM)等が挙げられる。また、これらのうちの1種又は2種以上のブレンドゴムであっても良い
本開示のゴム組成物におけるゴムの含有量は、ゴム材料の生産性を向上させる観点から30質量%以上であることが好ましく、40質量%以上であることがより好ましく、50質量%以上であることがさらに好ましい。また、本開示のゴム組成物における上記ゴムの含有量は、取り扱い性を向上させる観点から、98質量%以下であることが好ましく、95質量%以下であることがより好ましく、90質量%以下であることがさらに好ましい。
【0043】
本開示のゴム組成物には樹脂を含んでいてもよく、例えばバインダー樹脂としては、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、シリコン樹脂、フッ素樹脂、ポリエステル樹脂等が挙げられる。
【0044】
本開示のゴム組成物は、加硫剤、加硫促進剤、老化防止剤、オゾン亀裂防止剤、耐熱性向上剤、可塑剤(軟化剤)、粘度調整剤、分子量調整剤、安定剤、加工助剤などのその他添加剤を含んでも良い。
【0045】
本開示のゴム組成物は、特に限定されないが、本開示の重合体粒子水分散体と、上記ゴムとを混合する工程を含み、製造することが好ましい。ゴム組成物は、上記混合する工程のほか、濃縮工程、希釈工程、濾過工程などの1または2以上の工程を含み、製造しても構わない。
【0046】
[本開示のゴム組成物の用途]
本発明のゴム組成物は、加硫してもよく、例えば、タイヤ用途を始め、防振ゴム、防舷材,ベルト、ホースなどに用いることが出来るが、その他の工業品として、接着剤、各種コーティング剤、繊維補強剤等の用途に使用してもよい。
【実施例0047】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「部」は「質量部」を、「%」は「質量%」を意味するものとする。
【0048】
<体積平均粒子径>
重合体粒子分散体をイオン交換水で希釈したものを光散乱粒度分布測定機(スペクトリス社製「Zetasizer Ultra」)を用いて測定して、動的光散乱法により微粒子の体積平均粒子径(nm)を求めた。
【0049】
<配合安定性試験>
実施例および比較例の試料の配合後の状態を目視で評価した。
(評価基準)
〇:分散性良好。
×:ゲル化、析出物あり。
【0050】
<成膜性試験>
(塗膜作成)
実施例および比較例にて調整したゴム組成物を乾燥後の膜厚が200μmとなるようにガラス板上に塗工し、室温で7日間乾燥させた後、形成された被膜を基材から剥離させた。
(評価基準)
得られた塗膜を以下の基準に基づいて、目視にて評価した。
〇:クラックや粒子のブリードアウトがなく、成膜性が良好。
×:クラックや粒子のブリードアウトがあり、成膜性が不良。
【0051】
<強度試験>
成膜性試験により得られた被膜を所定の形状(ダンベル2号)に切り出し、強度試験用の試験片とした。引張試験機〔(株)島津製作所製、商品名:オートグラフAG-Xplus〕を用いて、初期標線間距離60mm、引っ張り速度50mm/minの条件で引張試験を行ない、試験片の破断応力(N/mm2)および伸び(mm)を測定した。
【0052】
<強度向上指数>
以下の算出式に基づき、強度向上指数を算出した。
強度向上指数(N/m)=〔(試験片の破断応力)-(参考例の破断応力)〕×〔(試験片の伸び)-(参考例の伸び)〕
<評価>
以下の基準に基づいて、試験片の強度向上効果を評価した。
〇:強度向上指数が10以上
×:強度向上指数が10未満
[重合体粒子の合成]
<製造例A1>
攪拌機、温度計および冷却機を備えたステンレス製の反応釜に、脱イオン水832.0質量部およびアニオン性反応型界面活性剤アデカリアソープSR-20(有効成分100質量%、ADEKA社製)をイオン交換水で有効成分25.0質量%に希釈したもの(以下、「SR-20(有効成分25.0質量%)」という)を0.96質量部加え、内温を75℃まで昇温し、同温度に保った。他方、上記反応釜とは異なる容器で、2-ヒドロキシメチルメタクリル酸メチル(以下「RHMA」と称する)180.0質量部とジビニルベンゼン(新日鉄住金化学社製 以下「DVB810」と称する)20.0質量部を混合して、単量体組成物200.0質量部を調製した。
【0053】
上記反応釜内を窒素ガスで置換した後、上記単量体組成物40.0質量部、過酸化水素水(過酸化水素濃度1.28質量%)21.0質量部、およびL-アスコルビン酸水溶液(L-アスコルビン酸濃度1.90質量%)21.0質量部を上記反応釜内に添加して、初期重合反応を行った。次いで、上記単量体組成物の残部160.0質量部、過酸化水素水(過酸化水素濃度0.22質量%)479.0質量部、およびL-アスコルビン酸水溶液(L-アスコルビン酸濃度0.33質量%)479.0質量部とSR-20(有効成分25.0質量%)7.04質量部との混合組成物486.04質量部を、各々異なる投入口より反応釜へ4時間かけて均一に滴下した。滴下終了後、内温を85℃まで昇温し、同温度で2時間保持して熟成した後、反応溶液を冷却して、重合体粒子が分散した重合体粒子分散体を得た。前記で得られた重合体水分散体10質量部、及び塩基性水溶液として水酸化ナトリウム水溶液(濃度10.0質量%)3.0質量部を第1の反応釜に加え、25℃で終夜撹拌することにより、部分的に加水分解された重合体粒子(1)が分散した重合体粒子水分散体(1a)を得た。
【0054】
<製造例A2>
攪拌機、温度計及び冷却機を備えたステンレス製の第1の反応釜に、脱イオン水1378質量部、及びエーテルサルフェート型アンモニウム塩を主成分とするアニオン性反応性乳化剤アデカリアソープSR-20(有効成分10質量%)0.96質量部を加え、内温を75℃まで昇温し、同温度に保った。他方、第1の反応釜とは異なる第2の反応釜で、メチルメタクリレート(以下「MMA」と称する)50質量部とノルマルブチルアクリレート(以下「BA」と称する)50質量部を投入し、単量体組成物A 100質量部を調製した。さらに、第1の反応釜、第2の反応釜とは異なる第3の反応釜で、RHMA90質量部と、DVB810 10質量部とを混合して、単量体組成物B 100質量部を調製した。
【0055】
次に、第1の反応釜内を窒素ガスで置換した後、前記単量体組成物A100質量部、過酸化水素水(濃度3.35質量%)20質量部、及びL-アスコルビン酸水溶液(濃度5.0質量%)20質量部を第1の反応釜内に添加して、初期重合反応を行った。続いて、前記単量体組成物B100質量部、過酸化水素水(濃度0.83質量%)100質量部、及びL-アスコルビン酸水溶液(濃度1.25質量%)100質量部、SR-20(有効成分10質量%)7.04質量部とアンモニア水溶液(濃度28質量%)0.36質量部とイオン交換水92.6質量%との混合組成物100質量部を、各々異なる投入口より、第1の反応釜へ3時間かけて均一に滴下した。滴下終了後、第1の反応釜の内温を75℃に保持し、同温度で2時間保持して熟成した後、反応溶液を冷却して、重合体が分散した重合体水分散体を得た。前記で得られた重合体水分散体10質量部、及び塩基性水溶液として水酸化ナトリウム水溶液(濃度10.0質量%)1.1質量部を第1の反応釜に加え、25℃で終夜撹拌することにより、部分的に加水分解された重合体粒子(2)が分散した重合体粒子水分散体(2a)を得た。
【0056】
<製造例A3>
単量体組成物AをMMA50質量部とBA50質量部から、MMA25質量部とBA25質量部に、単量体組成物BをRHMA90質量部とDVB810 10質量部から、RHMA135質量部とDVB810 15質量部に、水酸化ナトリウム水溶液を1.1質量部から1.7質量部に変更した以外は製造例A2と同様にして、部分的に加水分解された重合体粒子(3)が分散した重合体粒子水分散体(3a)を得た。
【0057】
<製造例A4>
単量体組成物AをMMA50質量部とBA50質量部から、MMA75質量部とBA75質量部に、単量体組成物BをRHMA90質量部とDVB810 10質量部から、RHMA45質量部とDVB810 5質量部に、水酸化ナトリウム水溶液を1.1質量部から0.56質量部に変更した以外は製造例A2と同様にして、部分的に加水分解された重合体粒子(4)が分散した重合体粒子水分散体(4a)を得た。
【0058】
<製造例A5>
単量体組成物AをMMA50質量部とBA50質量部から、MMA75質量部とBA25質量部に変更した以外は製造例A2と同様にして、部分的に加水分解された重合体粒子(5)が分散した重合体粒子水分散体(5a)を得た。
【0059】
<製造例A6>
単量体組成物AをMMA50質量部とBA50質量部から、MMA49質量部とBA49質量部とDVB810 2質量部に変更した以外は製造例A2と同様にして、部分的に加水分解された重合体粒子(6)が分散した重合体粒子水分散体(6a)を得た。
【0060】
<製造例A7>
所望の粒子径となるように乳化剤の配合量を適宜調整した以外は製造例A6と同様にして、部分的に加水分解された重合体粒子(7)が分散した重合体粒子水分散体(7a)を得た。
【0061】
<製造例B1>
攪拌機、温度計および冷却機を備えたステンレス製の反応釜に、脱イオン水832.0質量部とドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム水溶液(有効成分6.5質量%、以下「DBSNa(有効成分6.5質量%)」と称する)0.92質量部とを加え、内温を75℃まで昇温し、同温度に保った。他方、上記反応釜とは異なる容器で、MMA180.0質量部とDVB810 20.0質量部を混合して、単量体組成物200.0質量部を調製した。次に、上記反応釜内を窒素ガスで置換した後、上記単量体組成物40.0質量部、過酸化水素水(過酸化水素濃度1.28質量%)21.0質量部、及びL-アスコルビン酸水溶液(L-アスコルビン酸濃度1.90質量%)21.0質量部を上記反応釜内に添加して、初期重合反応を行った。続いて、上記単量体組成物の残部160.0質量部、過酸化水素水(過酸化水素濃度0.22質量%)479.0質量部、及びL-アスコルビン酸水溶液(L-アスコルビン酸濃度0.33質量%)479.0質量部とDBSNa(有効成分6.5質量%)6.77質量部との混合組成物485.77質量部を、各々異なる投入口より反応釜へ4時間かけて均一に滴下した。滴下終了後、内温を85℃まで昇温し、同温度で2時間保持して熟成した後、反応溶液を冷却して、架橋微粒子(8)が分散した架橋微粒子分散体(8a)を得た。
【0062】
[実施例1]
<ゴム組成物の調製>
ゴムバインダー〔スチレンブタジエンゴムラテックス(日本A&L社製、品番;SR-152)〕80質量部にイオン交換水30質量部と重合体粒子水分散体(1a)30質量部を添加し、ホモミキサーで回転数1500rpmにて5分間攪拌した後、消泡剤〔サンノプコ(株)製、商品名SNデフォーマー777〕0.4質量部を添加した。さらに増粘剤〔(株)ADEKA製、商品名:アデカノールUH-420〕の15%水溶液を当該混合物に0.8質量部添加しその状態で20分間攪拌後、300メッシュ金網で濾過することにより、ゴム組成物を調製した。
【0063】
[実施例2~8、比較例1]
ゴム組成物の調製において、配合する重合体粒子水分散体の種類を表1に記載のものに変更する以外は、実施例1と同様にして調製した。
【0064】
【表1】
【0065】

表1に示したとおり、本開示のゴム組成物は、良好な分散安定性と、良好な加工性とを有し、本開示のゴム組成物から得られるゴム材料は、良好な機械的強度を示すことが明らかとなった。