(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022053321
(43)【公開日】2022-04-05
(54)【発明の名称】酵母菌の培養液、当該培養液を含む皮膚外用剤、当該皮膚外用剤を含む皮膚化粧料及び上記培養液の製造方法
(51)【国際特許分類】
A61K 8/9728 20170101AFI20220329BHJP
A61K 8/9789 20170101ALI20220329BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20220329BHJP
A61Q 5/02 20060101ALI20220329BHJP
【FI】
A61K8/9728
A61K8/9789
A61Q19/00
A61Q5/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020160098
(22)【出願日】2020-09-24
(71)【出願人】
【識別番号】000240950
【氏名又は名称】片倉コープアグリ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】特許業務法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】谷口 正明
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 茜
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AA031
4C083AA032
4C083AA111
4C083AA112
4C083AA122
4C083AC022
4C083AC072
4C083AC102
4C083AC122
4C083AC172
4C083AC302
4C083AC352
4C083AC402
4C083AC422
4C083AC432
4C083AC442
4C083AC482
4C083AC532
4C083AC542
4C083AC642
4C083AC662
4C083AC692
4C083AC712
4C083AC892
4C083AC932
4C083AD042
4C083AD092
4C083AD352
4C083AD392
4C083AD512
4C083AD532
4C083AD642
4C083BB51
4C083CC03
4C083CC04
4C083CC05
4C083CC07
4C083CC23
4C083CC38
4C083DD23
4C083DD31
4C083DD33
4C083DD41
4C083EE06
4C083EE07
4C083EE11
4C083EE12
4C083FF01
4C083FF04
(57)【要約】
【課題】キメ改善効果や保湿効果といった皮膚の状態を維持・改善する。
【解決手段】白樺樹液を含む培地にて酵母菌を生育させた培養液により皮膚の状態を維持・改善する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
白樺樹液を含む培地にて酵母菌を生育させた培養液。
【請求項2】
上記白樺樹液がBetula platyphyllaから得られた樹液であることを特徴とする請求項1記載の培養液。
【請求項3】
酵母菌がガラクトミセス属に属する酵母、サッカロミコプシス属に属する酵母及びサッカロマイセス属に属する酵母からなる群から選ばれる1つの酵母又は当該群から選ばれる複数の酵母であることを特徴とする請求項1又は2記載の培養液。
【請求項4】
請求項1乃至3いずれか一項記載の培養液を含む皮膚外用剤。
【請求項5】
請求項1乃至3いずれか一項記載の培養液を含む皮膚化粧料。
【請求項6】
保湿性向上効果、キメ改善効果及びくすみ改善効果からなる群から選ばれる少なくとも1つの効果を示す請求項5記載の皮膚化粧料。
【請求項7】
白樺樹液を含む培地にて酵母菌を培養する工程中に白樺樹液中の低分子糖が酵母の栄養源として消費され、培養開始前と比較して白樺樹液中の低分子糖が低濃度となることを特徴とする培養液の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、皮膚外用剤や皮膚化粧料として使用できる酵母菌の培養液、当該培養液を含む皮膚外用剤、当該培養液を含む皮膚化粧料及び上記培養液の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
加齢(エイジング)ケアや加齢防止は、女性、男性を問わず関心が高い事項であり、化粧料や食料品等、それ専用の様々な商品が流通している。加齢とともに皮膚における皮脂や水分の量が減少すると、皮膚表面の角質層の保湿力が失われ、乾燥などによる小ジワや肌のかさつきが生じやすくなるといわれている。また、冷暖房の影響により、肌は一年中乾燥に晒されており、保湿効果やエイジングケア効果の高い皮膚外用剤や皮膚化粧料への関心が高まっている。
【0003】
従来、皮膚化粧料では、グリセリン等の多価アルコール類、ヒアルロン酸、セラミド、多糖類、酵母エキス、酵母培養液、ワセリン、ホホバオイルなどの保湿剤や油成分を配合することにより肌の保湿効果を高め、艶やかな肌にすることが多く試みられてきた。また皮膚外用剤においても、主薬以外の基剤として白色ワセリン、流動パラフィン、ミリスチン酸イソプロピル、ミツロウ、ラノリン、ステアリン酸等の油性成分が含まれている。皮膚外用剤における基剤は、主剤の薬効を高めるためだけではなく、皮膚の保護効果、保湿効果にも寄与している。
【0004】
具体的に、皮膚化粧料のなかでもエイジングケア化粧品については、加齢にともなう劣化した皮膚状態のシワ、くすみ、弛みなどの改善について、多方面の角度からアンチエイジング用の組成物が多数提案されている(特許文献1~6参照)。
【0005】
ところで、シラカンバ(白樺)は、東アジアの温帯北部が原産とされ、主として北海道などの冷涼で自然豊かな地域に多く生育しており、以下に記載の通り、これまでにも樹皮の抽出物や樹液の濾過物などが化粧品用の原料として提案されている。例えば特許文献7及び特許文献8には、白樺の樹皮を用いてエタノールなどの親水性溶媒で抽出された白樺エキスについて、老化に起因する動脈硬化や白内障の改善効果や美白効果を発揮する美白組成物が示されている。また特許文献9では、白樺樹液成分を含有するジェル微粒子を含む調合化粧料類が、特許文献10には白樺樹液を成分として含む入浴剤、足浴剤がそれぞれ提案されている。
【0006】
一方、酵母の培養液や培養した酵母から抽出したエキスを皮膚外用剤や皮膚化粧料に用いる事例については 、数多くの先行技術があり、一般消費者向けに数多くの配合製品が販売されている。例えば、特許文献11には、化粧料用の酵母抽出物であって、酵母をグルタミン酸、システイン及びグリシンの含有量の多い培地で培養し、菌体中の酵素或いはプロテアーゼで消化を行わずに多価アルコールで抽出した酵母抽出物が開示されている。特許文献12には、菌体内に亜鉛化合物を高濃度に蓄積した酵母菌体抽出液を利用することによるヒートショックプロテイン70産生誘導効果を有する組成物が開示されている。特許文献13には、ヒアルロン酸、ヒアルロン酸誘導体およびそれらの塩からなる群より選択されるヒアルロン酸類を含有する培地で酵母を培養した培養物及びそれを含む化粧料並びに皮膚外用物が開示されている。特許文献14には、保湿効果やキメ改善効果に優れ、しかも刺激感も少ない、ニコチンアミドモノヌクレオチド及び酵母菌を用いた発酵液が開示されている。
【0007】
酵母を培養する培養液には、基質としてグルコース又はその他の糖などの炭素源、酵母エキス、ペプトン、コーンスティープリカーなどの窒素源、カリウム、カルシウムなどのミネラルが含まれている。特許文献15及び16には、グルコース、スキムミルク及び酵母エキスを基質成分とした培地で酵母菌を培養した培養液の濃縮液又は乾燥物を皮膚用医薬剤又は化粧品として使用することが開示されている。また、特許文献17には、豆乳を基質成分として酵母で発酵させた豆乳発酵物を芽細胞増殖剤、表皮角化細胞増殖剤、コラーゲン産生促進剤、ヒアルロン酸産生促進剤及び化粧料として使用することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2019-203033号公報
【特許文献2】特開2007-291102号公報
【特許文献3】特開2008-169196号公報
【特許文献4】特開2008-255020号公報
【特許文献5】特開2008-260721号公報
【特許文献6】特開2009-040690号公報
【特許文献7】特開平10-15244号公報
【特許文献8】特開2001-335498号公報
【特許文献9】特開2003-321323号公報
【特許文献10】特開2006-131546号公報
【特許文献11】特開2006-347988号公報
【特許文献12】特開2014-108945号公報
【特許文献13】特開2015-221756号公報
【特許文献14】特開2018-145167号公報
【特許文献15】特公昭61-43033号公報
【特許文献16】特公平3-48166号公報
【特許文献17】特開2017-155029号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、白樺樹液については皮膚外用剤や皮膚化粧料としての利用形態について保湿やキメ改善効果が十分とは言えなかった。また、白樺樹液を基質として含む培地にて酵母菌を培養するといった技術は知られておらず、酵母菌を培養した培養液について如何なる作用効果を奏するか全く不明であった。そこで、本発明は、当該実情に鑑み、白樺樹液を用いた酵母菌の培養液について如何に優れた効果を有するか明らかにすることで、当該優れた効果を有する酵母菌の培養液、当該培養液を含む皮膚外用剤、当該培養液を含む皮膚化粧料、当該培養液の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らが鋭意検討した結果、白樺樹液を含む培地で酵母菌を培養したところ、得られた培養液にはキメ改善効果や保湿効果といった皮膚の状態を維持・改善する作用効果があることを見いだし、本発明を完成するに至った。本発明は以下を包含する。
【0011】
(1)白樺樹液を含む培地にて酵母菌を生育させた培養液。
(2)上記白樺樹液がBetula platyphyllaから得られた樹液であることを特徴とする(1)記載の培養液。
(3)酵母菌がガラクトミセス属に属する酵母、サッカロミコプシス属に属する酵母及びサッカロマイセス属に属する酵母からなる群から選ばれる1つの酵母又は当該群から選ばれる複数の酵母であることを特徴とする(1)又は(2)記載の培養液。
(4)上記(1)乃至(3)いずれか記載の培養液を含む皮膚外用剤。
(5)上記(1)乃至(3)いずれか記載の培養液を含む皮膚化粧料。
(6)保湿性向上効果、キメ改善効果及びくすみ改善効果からなる群から選ばれる少なくとも1つの効果を示す(5)記載の皮膚化粧料。
(7)白樺樹液を含む培地にて酵母菌を培養する工程中に白樺樹液中の低分子糖が酵母の栄養源として消費され、培養開始前と比較して白樺樹液中の低分子糖が低濃度となることを特徴とする培養液の製造方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る培養液は、皮膚に対するキメ改善効果や保湿効果といった皮膚の状態を維持・改善することができる。特に、本発明に係る培養液は、酵母菌を培養していない白樺樹液と比較して、皮膚の状態を維持・改善する効果が極め優れている。
【0013】
本発明に係る皮膚外用剤及び皮膚化粧料は、当該培養液を含むため、キメ改善効果や保湿効果といった皮膚の状態を維持・改善することができる。さらに、本発明に係る培養液の製造方法は、キメ改善効果や保湿効果といった皮膚の状態を維持・改善できる培養液であって低分子糖が低濃度となった培養液を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】実施例1で作製した製造例1~4についてグルコース濃度を測定した結果を示す特性図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0016】
本発明を適用した培養液は、白樺樹液を含む培地で酵母菌を培養した培養液である。ここで、白樺樹液とは、白樺から採取した樹液を意味する。白樺とは、広義のシラカンバ(学名:Betula platyphylla、シノニム:Betula pendula var. platyphylla)、アメリカシラカンバ(学名:Betula papyrifera)、オウシュウシラカンバ(学名:Betula pendula、別名:シダレカンバ)、ヨーロッパシラカンバ(学名:Betula pubescens、別名:ヨーロッパダケカンバ)、シセンシラカンバ(学名:Betula szechuanica、シノニム:Betula pendula var. szechuanica)を挙げることができる。中でも、シラカンバ樹液としては、広義のシラカンバ(学名:Betula platyphylla)に分類されるシラカンバから採取された樹液が好ましい。広義のシラカンバ(学名:Betula platyphylla)に分類されるシラカンバとしては、コウアンシラカンバ(学名:Betula platyphylla var. platyphylla)、狭義のシラカンバ(学名:Betula platyphylla var. japonica)、キレハシラカンバ(学名:Betula platyphylla var. japonica f. laciniata)、エゾノシラカンバ(学名:Betula platyphylla var. kamtschatica)及びカラフトシラカンバ(学名:Betula platyphylla var. mandshurica)を挙げることができる。
【0017】
なお白樺樹液は、上述した白樺のうち一種類から採取した樹液でも良いし、複数種の白樺から採取した樹液を混合したものであってもよい。白樺樹液は、例えば、白樺樹木の幹に穴を穿けるか又は線状の切込みをいれて採取される。採取する樹液は、樹木の生息地や季節によって成分が異なる場合もある。例えば、採取する樹液は、約99%が水分であり、残りの固形分としてグルコース、フルクトース等の単糖類、ミネラル分としてカリウム、ナトリウム、カルシウム、マグネシウム、マンガン、鉄、亜鉛、リン、バリウム、ケイ素、ホウ素、ランタン、ストロンチウム、トリウム、アルミニウム、クロム等を含んでいる。また、白樺樹液は、その他の成分としてグルタミン酸、アスパラギン酸、バリン、イソロイシン、メチオニン、ロイシン、リジン、フェニルアラニン、グリシン、アラニン、スレオニン、アルギニン、シスチン・システイン、プロリン、セリン、チロシン、ヒスチジンなどのアミノ酸成分や、リンゴ酸、コハク酸などの有機酸、蛋白質、多糖類等を含んでいてもよい。
【0018】
白樺樹液を含む培地で培養する酵母菌は、特に限定されず、The Yeasts, Fifth Edition: A Taxonomic Study等に開示されえている酵母菌を使用することができる。一例として酵母菌としては、カンジダ(Candida)属、ガラクトミセス(Galactomyces)属、サッカロミコプシス (Saccharomycopsis)属、サッカロマイセス(Saccharomyces)属、ピキア(Pichia)属の酵母を挙げることができる。特に、白樺樹液を含む培地に対して1種類の酵母菌を培養しても良いが、複数の酵母菌を同時又は異時に使用して培養しても良い。
【0019】
特に、酵母菌のうちガラクトミセス属酵母としては、例えば、ガラクトミセス・レースシィ(Galactomyces reessii)、ガラクトミセス・ゲオトリクム(Galactomyces geotrichum)、ガラクトミセス・カンディダス(Galactomyces candidus)、ガラクトミセス・シュードカンディダス(Galactomyces pseudocandidus)等を使用することが好ましい。また、酵母菌のうちサッカロミコプシス属酵母としては、例えば、サッカロミコプシス・カプサラリス(Saccharomycopsis capsularis)サッカロミコプシス・クラテジンシス(Saccharomycopsis crataegensis)、サッカロミコプシス・マランガ(Saccharomycopsis malanga)等を使用することが好ましい。さらに、酵母菌のうちサッカロマイセス属酵母としては、例えばサッカロマイセス・セルビジエ(Saccharomyces cerevisiae)、サッカロマイセス・バシラリス(Saccharomyces bacillaris)等を使用することが好ましい。また、サッカロマイセス属酵母は、一般的に使用されているビール酵母や、清酒酵母、ワイン酵母、パン酵母等を使用してもよい。これら例示列挙した酵母菌についても、1種を単独で使用してもよいし、2種以上の異なる酵母菌を組み合わせて使用してもよい。
【0020】
酵母菌の培地に含まれる白樺樹液は、任意の形態であってよく、例えば、搾液した原液を使用しても良いし、当該原液の粗濾過物でも良い。使用する白樺樹液としては、濾過によって混和物や不純物、非溶解性の固形分を除いたものであることが好ましい。さらに、白樺樹液としては、原液を水等の溶媒によって所定の倍率に希釈したものであっても良いし、所定の倍率に濃縮したものであっても良い。ただし、白樺樹液としては、希釈や濃縮を行わず採取された成分濃度のまま使用することが最も好ましい。
【0021】
また、白樺樹液は、酵母菌の培養の前に殺菌処理されることが好ましい。すなわち、白樺樹液を通常の酵母菌用培地に添加して使用する場合、当該培地に白樺樹液を添加する前に当該白樺樹液を殺菌処理しても良いし、白樺樹液を添加した培地自体を滅菌処理しても良い。白樺樹液又は白樺樹液を含む培地の殺菌処理は、加熱殺菌、フィルター除菌、紫外線殺菌、放射線殺菌、オゾン殺菌等の任意の方法で行うことができる。例えば、白樺樹液又は白樺樹液を含む培地は、65℃以上、例えば110~130℃又は120~130℃で加熱殺菌してもよく、一例では121℃で20分間処理することにより殺菌することができる。なお、加熱殺菌後は、少なくとも、酵母菌の培養に適した温度まで冷却した後に酵母培養に用いることが好ましい。
【0022】
白樺樹液を含む培地による酵母菌の培養は、当該培地に酵母菌を接種して培養することにより行うことができる。ここで、培地とは、白樺樹液のみの単独組成であっても良いし、通常の酵母用培地と白樺樹液とを含む混合組成であっても良い。通常の酵母用培地とは、酵母の培養に必要な成分(炭素源、窒素源等)を含む培地である。通常の酵母用培地には、培養に必要な窒素源として酵母エキス、ペプトン、カゼイン、大豆分解物、麦芽エキス、アミノ酸等から選ばれる成分が含まれている。また、通常の酵母用培地には、炭素源としてグルコース等及びナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩並びにマグネシウム塩等のミネラル成分が含まれている。なお、白樺樹液に酵母の培養に十分量の炭素源及び/又はミネラル成分が含まれる場合、白樺樹液と組み合わせて使用する酵母用培地は、通常の組成から炭素源及び/又はミネラル成分を除いた組成としても良い。特に、酵母菌の培養に適した培地としては、白樺樹液、酵母エキス、ペプトンを含有する。
【0023】
白樺樹液を含む培地による酵母菌の培養においては、培地に含まれる炭素源としての糖の量は、グルコース換算で0.05~5g/100ml、より好ましくはグルコース換算0.1~2g/100mlとすることが好ましい。ここで、白樺樹液にはグルコース、キシロースなどの糖成分が約1重量%程度含まれている。したがって、白樺樹液を希釈、濃縮することなくそのまま使用することができる。白樺樹液をそのまま使用することで、キメ改善効果や保湿効果といった皮膚の状態を維持・改善する効果を十分に発揮することができる。
【0024】
なお、白樺樹液は、所定の倍率に希釈や濃縮して使用してもよい。希釈や濃縮によって白樺樹液に含まれる炭素源やミネラル成分の濃度を所望の範囲に調節することができる。また、白樺樹液には、炭素源が所望の範囲となるようにグルコース等の糖を添加することも可能である。さらに、白樺樹液には、ミネラル成分についても同様に、所望の濃度となるように添加することができる。
【0025】
白樺樹液を含む培地にて酵母菌を培養する際、当該培地に対して酵母菌を直接添加(接種)してもよいが、酵母菌を前培養した前培養培地を添加することが好ましい。前培養培地を添加することで、本培養の培養時間を短縮することができ、且つ、コンタミネーションのリスクを低減することができる。なお、前培養に使用する培地は、本培養に使用する培地と同組成としても良いし、白樺樹液を含まない通常の酵母菌用培地を使用してもよい。特に、この前培養において、白樺樹液を含む培地を使用することで、酵母培養に必要な炭素源及びミネラル成分を賄うことが最も好ましい。
【0026】
前培養を行うことで、対数増殖期の酵母菌を保ちながら本培養に移行できるため、酵母菌の大量培養における製造効率を大幅に向上させることができる。酵母菌の培養条件は、酵母菌が増殖できる条件であれば特に限定されない。培養温度は、酵母菌が増殖できる温度であればよく、特に限定されないが、典型的には15~45℃、好ましくは25~40℃、例えば28~37℃とすることができる。培養時のpHは、酵母菌が増殖できるpHであればよく、特に限定されないが、3.0~8.0、好ましくは4.0~7.0、例えば5.0~7.0とすることができる。
【0027】
酵母菌は、好気的条件では糖を二酸化炭素に変換してエネルギー源とすることができ、この条件で良く生育、増殖することが知られている。一方で酸素の乏しい条件下では、増殖が緩やかとなりホモまたはヘテロ発酵によりアルコールと二酸化炭素又は有機酸などを生じる。特に、白樺樹液を含む培地において酵母菌を培養する際には好気的条件で培養することが好ましい。好気的条件で培養することによって、キメ改善効果や保湿効果といった皮膚の状態を維持・改善する効果を有する培養液を製造することができる。白樺樹液を含む培地において酵母菌を好気的に培養するには、通常の微生物培養にしようされる通気攪拌型の発酵槽を使用することができる。このとき通気量としては特に限定されないが、例えば0.01~5vvm、好ましくは0.1~2vvm、より好ましくは0.3~1.5vvmとすることができる。また、培地の攪拌速度は、特に限定されず、酵母菌の生育に適した条件を任意に設定することができる。
【0028】
また、酵母菌の培養に伴って有機酸などのpHを変動させる物質が産生される場合があり、pHの変動により酵母の増殖が阻害されることがある。例えば、酵母菌の培養に伴って有機酸が蓄積される場合、培地のpHが低下していくことから、pHを上記範囲内、好ましくはpH4.0~7.0、例えば5.0~7.0の範囲内に調整するようpH調整剤を添加するなどの方法により培養を継続することが好ましい。
【0029】
さらに、白樺樹液を含む培地において酵母菌を培養する時間は、特に限定されないが、例えば、5時間~1ヶ月、例えば1日~10日間又は1日~5日間、好ましくは1日~3日間とすることができる。
【0030】
以上のようにして、白樺樹液を含む培地にて酵母菌を培養し、培養液を製造することができる。得られた培養液は、キメ改善効果や保湿効果といった皮膚の状態を維持・改善するといった優れた特徴を有する。特に、得られた培養液は、キメ改善効果や保湿効果といった皮膚の状態を維持・改善する程度について、白樺樹液を単独で使用した場合と比較して極めて優れている。したがって、得られた培養液は、皮膚外用剤や皮膚化粧料として使用することができる。
【0031】
また、白樺樹液を含む培地にて酵母菌を培養して得られた培養液は、白樺樹液と比較してべたつき感が低減されている。したがって、この培養液を含む皮膚外用剤や皮膚化粧料は、キメ改善効果や保湿効果といった皮膚の状態を維持・改善でき、更にさっぱりとした使い心地に優れたものとなる。
【0032】
さらに、得られた培養液は、そのまま皮膚外用剤や皮膚化粧料として使用しても良いが、例えば濾過などの工程を経た後に皮膚外用剤や皮膚化粧料として使用しても良い。また、得られた培養液は、濾過工程に限定されず、例えば、濾過工程の前に菌体成分や菌体内に蓄積された成分を滲出させる工程を行うことが好ましい。この工程としては、特に限定されないが、例えば、プロテアーゼ、リパーゼ、アミラーゼ等の消化酵素を作用させることにより溶菌しても良いし、菌体を分離した後に酸により分解しても良いし、高速回転破砕、超音波破砕、凍結乾燥破砕など手段により酵母を物理的に破砕しても良いし、殺菌を兼ねて加熱しても良い。これらの工程により、酵母菌に含まれる有用成分を合理的に培養液中に抽出することができる。
【0033】
なお、上述したように、白樺樹液を含む培地にて酵母を培養して得られた培養液は、皮膚外用剤や皮膚化粧料としてそのまま使用できるが、上述した各種の工程を経た培養液もまた皮膚外用剤や皮膚化粧料として使用できる。したがって、本明細書において、「培養液」という用語には、白樺樹液を含む培地にて酵母を培養して得られた培養液の他に、当該培養液を濾過した後の溶液や、上述した各種工程を経た後の溶液、当該溶液を濾過した溶液、その他、遠心分離、活性炭や珪藻土などの濾過助剤による脱臭・脱色、又はこれらの組み合わせにより1つ以上の処理を行った溶液も含まれる。また、本明細書において、「培養液」には、これらの溶液に対して濃縮、希釈、乾燥、又は精密濾過したもの、或いは遠心分離等により精製したものも含まれる。精製方法は特に限定されないが、例えば、遠心濾過やメンブレンフィルター等のフィルターを使用して濾過する方法が挙げられる。
【0034】
特に、上述のように、白樺樹液を含む培地にて酵母を培養して得られた培養液を高温条件で加熱し、酵母菌体内から有用成分を培養液中に滲出させることが好ましい。より具体的には、得られた培養液を121℃の条件で20分以上加熱処理した上で、得られた抽出物を遠心分離や濾過(例えば、精密濾過)またはその両方を行うことにより、夾雑物、菌体及び不溶物等を除去された濾過液を得ることができる。有用成分の滲出は、加熱菌体分解の他に、高圧ホモジナイザー、超音波ホモジナイザー、高速回転型ホモジナイザーなどによる細胞破砕によっても良く、これらの複数の方式を組み合わせても良い。また、菌体細胞壁などの固形分は、濾過、例えばフィルターで濾過することにより、夾雑物及び不溶物等と共に除去してもよい。
【0035】
得られた培養液の濾過は、任意の方法により行うことができる。例えば、濾過は、夾雑物、菌体及び/又は不溶物等の除去に適したフィルター又は他の濾過デバイスを用いて行うことができる。フィルター又は他の濾過デバイスを用いた濾過としては、例えば遠心濾過、加圧濾過、吸引濾過等を挙げることができる。培養液を濾過するために用いるフィルターは、特に限定されないが、例えばメンブレンフィルター、グラスファイバーフィルター、セルロースフィルター、焼結フィルター等を挙げることができる。これらのうち1種類のフィルターを用いて濾過しても良いが、2種以上のフィルターを組み合わせて濾過することもできる。より具体的に、精密濾過フィルターを使用する場合、典型的には1μm未満、好ましくは0.5μm以下、より好ましくは0.1μm~0.5μm又は0.2μm~0.5μm、例えば0.45μm、0.22μm、又は0.1μmの孔径を有するフィルターを使用することができる。また、珪藻土濾過やプレフィルターによる濾過後に、精密濾過フィルターによる濾過を行ってもよい。
【0036】
得られた培養液の希釈や濃縮は、任意の希釈法、濃縮法により行うことができる。希釈する場合、例えば水又は他の任意の溶媒を用いることができる。培養液の濃縮法としては、例えば、加熱蒸発濃縮法、凍結濃縮法、限外濾過法、透析法、クロマトグラフィー法等により行うことができる。
【0037】
得られた培養液の殺菌・除菌方法は、任意の殺菌又は除菌方法を適用することができる。殺菌除菌方法としては、例えば、加熱殺菌、フィルター除菌、紫外線殺菌、放射線殺菌、オゾン殺菌等の方法を挙げることができる。
【0038】
得られた培養液を乾燥して乾燥物とする場合は、任意の乾燥法を適用することができる。培養液の乾燥方法としては、例えば、真空凍結乾燥物などの凍結乾燥法、スプレードライ法などの熱乾燥法を挙げることができる
得られた培養液の脱臭・脱色は、任意の脱臭処理及び/又は脱色処理方法により行うことができる。脱臭処理及び/又は脱色処理方法としては、例えば、培養液を活性炭に通過させ、臭気成分や着促成分を活性炭に吸着させる方法を挙げることができる。
【0039】
なお、得られた培養液に対してウィンタリング(脱ろう)処理を実施してもよい。すなわち、得られた培養液を冷却し、低温で固まる成分(ろう分)を析出させ、濾過等の手段により固液分離することでろう分を除去することができる。
【0040】
ここで、皮膚外用剤とは、人又は動物の疾病の診断、治療又は予防に有効な成分(主薬)を含む医薬品又は当該医薬品に使用される基剤を意味する。皮膚外用剤は、例えば、日本における「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」に規定される医薬品及び医薬部外品を含む意味である。一方、皮膚化粧料とは、医薬品や医薬部外品に分類されない、人の皮膚に使用される化粧品を意味する。皮膚外用剤は、日本における「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」に規定されるヒトの皮膚に使用される化粧品を含む意味である。
【0041】
皮膚外用剤は、任意の剤型であってよく、例えば、軟膏剤、貼付剤、パップ剤、リニメント剤、ローション剤、クリーム剤、エキス剤、流エキス剤、チンキ剤、エリキシル剤、シロップ剤、リモナーデ剤、芳香水剤、液剤、懸濁化剤、乳剤、薬用入浴剤、薬用シャンプー、エアゾール剤、散剤、顆粒剤、錠剤、カプセル剤等が挙げられる。
【0042】
また、皮膚外用剤及び皮膚化粧料は、溶液状、懸濁液状、乳化状、粉末状、ペースト状、ムース状、又はジェル状などの任意の形態の組成物であってよい。特に、皮膚化粧料は、好ましくは、皮膚に接触して使用され得る任意の形態であってよく、具体的には、例えば、化粧水、乳液、美容液、一般クリーム(フェイスクリーム、ハンドクリーム、ボディクリーム等)、洗顔料(クレンジングクリーム等)、パック、髭剃り用クリーム、日焼けクリーム、日焼け止めクリーム、日焼け止めローション、日焼けローション、化粧石鹸、ファンデーション、おしろい、パウダー、口紅、リップクリーム、アイライナー、アイクリーム、アイシャドウ、マスカラ、入浴剤(浴用剤)、シャンプー、ヘアリンス、ヘアトリートメント、ヘアパック、スカルプケア剤、ボディリンス、ボディジェル、染毛料、頭髪用化粧品等が挙げられる。化粧水、乳液、美容液、フェイスクリーム、洗顔料等が特に好ましい。
【0043】
さらに皮膚外用剤及び皮膚化粧料において、上述した培養液は、任意の形態で配合することができ、例えば、そのままの状態で他の成分と単に混合してもよいし、ゲル状、粉末状、顆粒状、又はカプセル封入体等の形態で配合することができる。
【0044】
皮膚化粧料は、上述した培養液に加えて、化粧料において許容される添加剤、及び必要に応じて他の活性成分等を含むことができる。そのような添加剤や他の活性成分等は、用途及び形態に適したものを任意に選択して用いることができる。皮膚化粧料は、任意の化粧料製造方法に従って、例えば、原料を混合、攪拌、成形、充填等することにより、製造することができる。
【0045】
皮膚外用剤は、上述した培養液をキメ改善効果や保湿効果といった皮膚の状態を維持・改善する主剤として含む組成物とすることができる。或いは、皮膚外用剤は、所定の薬効成分(主剤)を含むとともに、上述した培養液をキメ改善効果や保湿効果といった皮膚の状態を維持・改善する基剤として含む組成物とすることもできる。皮膚外用剤は、上述した培養液、製薬上許容される添加剤及び必要に応じて他の活性成分等を含むことができる。そのような添加剤や他の活性成分等は、医薬の用途及び形態に適したものを任意に選択して用いることができる。本発明に係る医薬は、任意の医薬製造方法に従って、原料を混合、攪拌、成形、充填等することにより、製造することができる。
【0046】
皮膚外用剤及び皮膚化粧料は、担体(固体又は液体担体)、賦形剤、界面活性剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、矯臭剤、溶解補助剤、懸濁剤、コーティング剤、pH調整剤、着色料、香料、矯味剤、清涼剤、安定化剤、増泡剤、保存剤、緩衝剤等の製剤用の添加剤を1つ以上含んでもよい。
【0047】
皮膚外用剤及び皮膚化粧料は、例えば以下の任意の群から任意に選択される1つ又は2つ以上の成分を含んでもよい。コラーゲン、コラーゲン加水分解物、ゼラチン、ゼラチン加水分解物、エラスチン、エラスチン加水分解物、ラクトフェリン、ケラチン、ケラチン加水分解物、カゼイン、アルブミン、ローヤルゼリー由来タンパク加水分解物、ハチミツ由来タンパク加水分解物等のタンパク質及びタンパク質の加水分解物から選ばれる任意の成分を含むことができる。ヒアルロン酸ナトリウム及びヒアルロン酸誘導体、キサンタンガム、カラギーナン、グアーガム、アルギン酸及びその塩、ペクチン、コンドロイチン硫酸及びその塩、水溶性キチン、キトサン誘導体及びその塩、プルラン、デオキシリボ核酸、アラビアゴム、トラガントゴム等の天然高分子及びそれらの誘導体から選ばれる任意の成分を含むことができる。ホオズキ、ラカンカ、ナツメ、ハト麦、甘草、杜仲、ショウガ、ウドなどの生薬から選ばれる任意の成分を含むことができる。海藻末、海藻エキス、及び海藻由来の多糖類から選ばれる任意の成分を含むことができる。プラセンタエキス等の動物由来物から選ばれる任意の成分を含むことができる。炭酸水や温泉水、マイクロナノバブル水、精製水、蒸留水等の水から選ばれる任意の成分を含むことができる。カルボキシビニルポリマー及びその塩、ポリアクリル酸及びその塩、カルボキシメチルセルロース及びその塩等の酸性ポリマー、ポリビニルアルコール、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン、ニトロセルロースポリビニルメチルエーテル等の中性ポリマーから選ばれる任意の成分を含むことができる。カチオン化セルロース、ポリエチレンイミン、カチオン化グアーガム等のカチオン性ポリマーから選ばれる任意の成分を含むことができる。エタノール、イソプロピルアルコール等の低級アルコール類から選ばれる任意の成分を含むことができる。パラアミノ安息香酸系紫外線吸収剤、サリチル酸系紫外線吸収剤、桂皮酸系紫外線吸収剤、アントラニエール酸系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤等の紫外線吸収剤から選ばれる任意の成分を含むことができる。グリチルリチン酸及びその塩類、グアイアズレン及びその誘導体、アラントイン等の抗炎症剤から選ばれる任意の成分を含むことができる。ステアリン酸エステル、ノルジヒドログアセレテン酸、ジブチルヒドロキシトルエン、ブチルヒドロキシアニソール、パラヒドロキシアニソール、没食子プロピル、セサモール、セサモリン、ゴシポール等の抗酸化剤から選ばれる任意の成分を含むことができる。パラ安息香酸メチル、パラ安息香酸エチル、パラ安息香酸プロピル、パラ安息香酸ブチル等のパラ安息香酸エステル類、ソルビン酸、デヒドロ酢酸、フェノキシエタノール、安息香酸等の防腐剤から選ばれる任意の成分を含むことができる。エデト酸、エデト酸二ナトリウム等のエデト酸及びその塩類、フィチン酸、ヒドロキシエタンジスルホン酸等の金属イオン封鎖剤から選ばれる任意の成分を含むことができる。グリセリン、1,3-ブチレングリコール、プロピレングリコール等の多価アルコール類から選ばれる任意の成分を含むことができる。L-アスパラギン酸、DL-アラニン、L-アルギニン、L-システイン、L-グルタミン酸、グリシン等のアミノ酸類及びその塩から選ばれる任意の成分を含むことができる。マルチトール、ソルビトール、キシロビオース、N-アセチル-D-グルコサミン、蜂蜜等の糖類から選ばれる任意の成分を含むことができる。アンモニア水、モノエタノールアミン、トリエタノールアミン、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどの塩基類から選ばれる任意の成分を含むことができる。流動パラフィン、スクワラン、ワセリン等の炭化水素類から選ばれる任意の成分を含むことができる。ヤシ油、月見草油、ホホバ油、ヒマシ油、硬化ヒマシ油等の油脂類から選ばれる任意の成分を含むことができる。ラウリン酸、ミリスチル酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘニン酸等の脂肪酸類から選ばれる任意の成分を含むことができる。ミリスチルアルコール、セタノール、セトステアリルアルコール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール等の高級アルコール類から選ばれる任意の成分を含むことができる。ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、オクタン酸セチル、トリオクタン酸グリセリン、ミリスチン酸オクチルドデシル、ステアリン酸オクチル、ステアリン酸ステアリル等のエステル類から選ばれる任意の成分を含むことができる。レシチン及びその誘導体等のリン脂質類から選ばれる任意の成分を含むことができる。ウシ骨髄脂やウシ脳脂質などの動植物由来脂質から選ばれる任意の成分を含むことができる。ラウリル硫酸アンモニウム、ラウリル硫酸エタノールアミン、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸トリエタノールアミンなどのアルキル硫酸塩から選ばれる任意の成分を含むことができる。ポリオキシエチレン(2EO)ラウリルエーテル硫酸トリエタノールアミン(なお、EOはエチレンオキサイド、EOの前の数値はエチレンオキサイドの付加モル数を示す;以下同様)、ポリオキシエチレン(3EO)アルキル(炭素数11~15のいずれか又は2種以上の混合物)エーテル硫酸ナトリウムなどのポリオキシエチレンアルキル硫酸塩から選ばれる任意の成分を含むことができる。ラウリルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ラウリルベンゼンスルホン酸トリエタノールアミンなどのアルキルベンゼンスルホン酸塩から選ばれる任意の成分を含むことができる。ポリオキシエチレン(3EO)トリデシルエーテル酢酸ナトリウムなどのポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩から選ばれる任意の成分を含むことができる。ヤシ油脂肪酸サルコシンナトリウム、ラウロイルサルコシントリエタノールアミン、ラウロイルメチル-L-グルタミン酸ナトリウム、ヤシ油脂肪酸-L-グルタミン酸ナトリウム、ヤシ油脂肪酸-L-グルタミン酸トリエタノールアミン、ヤシ油脂肪酸メチルタウリンナトリウム、ラウロイルメチルタウリンナトリウムなどのN-アシルアミノ酸塩、エーテル硫酸アルカンスルホン酸ナトリウム、硬化ヤシ油脂肪酸グリセリン硫酸ナトリウム、硬化ヤシ油脂肪酸グリセリン硫酸ナトリウム、ウンデシノイルアミドエチルスルホコハク酸二ナトリウム、オクチルフェノキシジエントキシエチルスルホン酸ナトリウム、オレイン酸アミノスルホコハク酸二ナトリウム、スルホコハク酸ジオクチルナトリウム、スルホコハク酸ジオクチルナトリウム、スルホコハク酸ラウリル二ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキル(炭素鎖12~15)エーテルリン酸(8~10EO)、ポリオキシエチレンオレイルエーテルリン酸ナトリウム、ポリオキシエチレンセチルエーテルリン酸ナトリウム、ポリオキシエチレンスルホコハク酸ラウリル二ナトリウム、ポリオキシエチレンラウリルエーテルリン酸ナトリウム、ラウリルスルホ酢酸ナトリウム、テトラデセンスルホン酸ナトリウムなどのアニオン性界面活性剤から選ばれる任意の成分を含むことができる。塩化ステアリルジメチルアンモニウム、塩化ジ(ポリオキシエチレン)オレイルメチルアンモニウム、塩化ステアリルジメチルベンジルアンモニウム、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化トリ(ポリオキシエチレン)ステアリルアンモニウム、塩化ポリオキシプロピレンメチルジエチルアンモニウム、塩化ミリスチルジメチルベンジルアンモニウム、塩化ラウリルトリメチルアンモニウムなどのカチオン性界面活性剤から選ばれる任意の成分を含むことができる。2-アルキル-N-カルボキシメチル-N-ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン、ウンデシルヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタインナトリウム、ウンデシル-N-ヒドロキシエチル-N-カルボキシメチルイミダゾリニウムベタイン、ステアリルジヒドロキシエチルベタイン、ヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタイン、ヤシ油アルキル-N-カルボキシエチル-N-ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタインナトリウム、ヤシ油アルキル-N-カルボキシメトキシエチル-N-カルボキシメチルイミダゾリニウムジナトリウムラウリル硫酸、N-ヤシ油脂肪酸アシル-L-アルギニンエチル-DL-ピロリドンカルボン酸塩などの両性界面活性剤から選ばれる任意の成分を含むことができる。ポリオキシエチレンアルキル(炭素数12~14)エーテル(7EO)、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンオレイン酸グリセリン、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンセチルステアリルジエーテル、ポリオキシエチレンソルビトール・ラノリン(40EO)、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンデシルテトラデシルエーテル、ポリオキシエチレンラノリン、ポリオキシエチレンラノリンアルコール、ポリオキシプロピレンステアリルエーテル等のノニオン性界面活性剤から選ばれる任意の成分を含むことができる。イソステアリン酸ジエタノールアミド、ウンデシレン酸モノエタノールアミド、オレイン酸ジエタノールアミド、牛脂脂肪酸モノエタノールアミド、硬化牛脂脂肪酸ジエタノールアミド、ステアリン酸ジエタノールアミド、ステアリン酸ジエチルアミノエチルアミド、ステアリン酸モノエタノールアミド、ミリスチン酸ジエタノールアミド、ヤシ油脂肪酸ジエタノールアミド、ヤシ油脂肪酸エタノールアミド、ラウリン酸イソプロパノールアミド、ラウリン酸エタノールアミド、ラウリン酸ジエタノールアミド、ラノリン脂肪酸ジエタノールアミドなどの増粘剤から選ばれる任意の成分を含むことができる。鎖状又は環状メチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、ジメチルポリシロキサンポリエチレングリコール共重合体、ジメチルポリシロキサンポリプロピレン共重合体、アミノ変性シリコンオイル、第四級アンモニウム変性シリコンオイルなどのシリコンオイルから選ばれる任意の成分を含むことができる。チオグリコール酸及びその塩から選ばれる任意の成分を含むことができる。システアミン及びその塩から選ばれる任意の成分を含むことができる。過酸化水素、過硫酸塩、過ほう酸塩、過酸化尿素などの過酸化物から選ばれる任意の成分を含むことができる。臭素酸ナトリウム、臭素酸カリウムなどの臭素酸塩から選ばれる任意の成分を含むことができる。角質溶解剤、収斂剤、創傷治療剤、消臭・脱臭剤、抗アレルギー剤、血流促進剤、細胞賦活剤等の他の有効成分から選ばれる任意の成分を含むことができる。
【0048】
ところで、皮膚外用剤及び皮膚化粧料は、上述した培養液を含むため、キメ改善効果や保湿効果といった皮膚の状態を維持・改善することができる。ここで、皮膚の状態を維持・改善するとは、皮膚の保湿性を維持及び/又は改善すること、皮膚のキメを維持及び/又は改善すること、皮膚のくすみを防止及び/又は改善することを含む意味である。具体的に、キメ改善効果とは肌をキメ細やかな状態、すなわち肌表面の皮溝が浅く、皮丘の一つ一つが鮮明で小さく綺麗な三角形を示す状態に改善する効果である。また、くすみ防止効果とは、くすみ肌と称される周囲に比べ明度が低くなっている肌部分に作用し、くすみ肌の面積を狭くし、かつ明度の低下の度合いを軽減することである。
【0049】
皮膚外用剤及び皮膚化粧料は、乾燥肌、くすみ肌及びキメ荒れ肌の少なくとも一つの症状を有する対象への投与又は適用が特に有用である。このような対象とは、例えば、乾燥肌、くすみ肌及びキメ荒れ肌の少なくとも一つを生じやすい因子を有する対象を挙げることができる。乾燥肌、くすみ肌及びキメ荒れ肌の少なくとも一つを生じやすい因子としては、例えば、環境、生活習慣、食事習慣、遺伝的要因、体質、疾患、精神的・身体的ストレス、加齢等の対象を挙げることができる。これらの因子を有する対象に皮膚外用剤及び皮膚化粧料を適用することで、乾燥肌、くすみ肌及びキメ荒れ肌の少なくとも一つを改善し、健康上又は美容上の利益が期待できる。
【0050】
皮膚外用剤及び皮膚化粧料の投与量及び適用量は、対象の年齢、体重、適用/投与経路、剤型、投与回数等により異なり、当業者の裁量によって広範囲に変更することができる。具体的には、その適用量又は投与量は、特に限定されないが、有効成分である培養液の乾燥重量に換算して、例えば、0.001mg/回~10g/回とすることができる。皮膚外用剤及び皮膚化粧料は、限定するものではないが、例えば6~24時間間隔で繰り返し投与又は適用投与してもよい。
【実施例0051】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明の技術的範囲は以下の実施例に限定されるものではない。
【0052】
[実施例1]樹液酵母培養液及び対照品の調製
本実施例で使用する白樺樹液は全て北海道産で濃縮、希釈などの処理を行っていない原液を濾過したものを用いた。
【0053】
<製造例1>ガラクトミセス・レースシィ(Galactomyces reessii)
前培養の基質として北海道産の白樺樹液を用い、補助栄養成分として酵母エキス、ペプトンを加えた前培養培地を調製した(表1参照)。前培養培地をバッフル付きフラスコに入れシリコセンで蓋をして121℃で20分間殺菌を行った。殺菌後、前培養培地を30℃まで冷却し、ガラクトミセス・レースシィ(Galactomyces reessii)を1白金耳植菌した。本製造例1では、前培養培地を用いて30℃で48時間振とう前培養を行った。
【0054】
本培養に際して、目開き20μmのカートリッジフィルターを用いて粗濾過した白樺樹液(2000g)を微生物培養用の小型ジャーファーメンターに仕込み、121℃で20分間殺菌を行った。白樺樹液を30℃まで冷却した後、前培養培地50gを添加し、水酸化ナトリウム水溶液でpH6.0のpH調整を継続して行いながら、ガラクトミセス・レースシィを30℃で培養した。培養期間中、適宜サンプリングを行い、培養液中のグルコース濃度を酵素法(Fキットグルコース:(株)JKインターナショナル)を用いて測定した。培養液中のグルコース含量を
図1に示した。
図1に示すように、菌の増殖につれてグルコースが消費されて減少し、当初1200ppm存在したグルコースが培養終了時には20ppm以下となった。
【0055】
得られた培養液を121℃で30分間、加熱処理し菌体成分を抽出した後、室温まで冷却した。得られた酵母細胞壁などの固形分を含む溶液を、プレフィルター、続いて0.45μmメンブランスフィルターにて濾過して固形物を除去し、白樺樹液ガラクトミセス培養液を得た。
【0056】
<製造例2>サッカロミコプシス・カプサラリス(Saccharomycopsis capsularis)
本製造例2では、サッカロミコプシス・カプサラリス(Saccharomycopsis capsularis)を使用した以外は製造例1と同様にして、白樺樹液サッカロミコプシス培養液を得た。培養期間中のグルコースの消長についても実施例1と同様に測定した(
図1参照)。
【0057】
<製造例3>サッカロミセス・セレビジア(Saccharomyces cerevisiae)
本製造例3では、サッカロミセス・セレビジア(Saccharomyces cerevisiae)を使用した以外は製造例1と同様にして、白樺樹液サッカロミセス培養液を得た。培養期間中のグルコースの消長についても実施例1と同様に測定した(
図1参照)。
【0058】
<製造例4>複数の菌による培養
本製造例4では、ガラクトミセス・レースシィ(Galactomyces reessii)及びサッカロミセス・セレビジア(Saccharomyces cerevisiae)を使用した以外は製造例1と同様にして、白樺樹液液ガラクトミセス-サッカロミセス培養液を得た。培養期間中のグルコースの消長についても実施例1と同様に測定した(
図1参照)。また、製造例4では、得られた白樺樹液ガラクトミセス-サッカロミセス培養液を真空凍結乾燥して、白樺樹液ガラクトミセス-サッカロミセス培養液凍結乾燥粉末を得た。
【0059】
<比較例1>無培養白樺樹液
比較例1では、目開き20μmのカートリッジフィルターを用いて粗濾過した白樺樹液(2000g)を121℃で20分間殺菌を行った。殺菌した白樺樹液を室温まで冷却しプレフィルター、続いて0.45μmメンブランスフィルターにて濾過し白樺樹液滅菌濾過物を調製した。なお、同様に、この液のグルコース濃度を酵素法(Fキットグルコース:(株)JKインターナショナル)を用いて測定した。
【0060】
<比較例2>スキムミルク培地による酵母培養
比較例2では、前培養の基質としてスキムミルク培地を調製した(表1参照)。調製した前培養培地をバッフル付きフラスコに入れ、シリコセンで蓋をして121℃で20分間殺菌を行った。殺菌後、前培養培地を30℃まで冷却し、ガラクトミセス・レースシィ(Galactomyces reessii)を1白金耳植菌した。本比較例2では、この前培養培地を用いて30℃で48時間振とう培養を行った。
【0061】
本培養に際して、スキムミルク20gとグルコース及び酵母エキス各10gを精製水1960gに溶かした本培養培地を、微生物培養用の小型ジャーファーメンターに仕込み121℃で20分間殺菌を行った。本培養培地を30℃まで冷却した後、前培養培地50gを添加し、水酸化ナトリウム水溶液でpH6.0のpH調整を継続して行いながら、ガラクトミセス・レースシィを30℃で48時間培養した。得られたスキムミルクガラクトミセス培養液を121℃で30分間、加熱処理し菌体成分を抽出した後、室温まで冷却した。得られた酵母細胞壁などの固形分を含む溶液を、プレフィルター、続いて0.45μmメンブランスフィルターにて濾過し、固形物が除去されたスキムミルクガラクトミセス培養液を得た。
【0062】
<比較例3>豆乳培地による酵母培養
比較例3では、前培養の基質として豆乳培地を調製した(表1参照)。調製した前培養培地をバッフル付きフラスコに入れ、シリコセンで蓋をして121℃で20分間殺菌を行った。殺菌後、前培養培地を30℃まで冷却し、ガラクトミセス・レースシィ(Galactomyces reessii)を1白金耳植菌した。本比較例3では、この前培養培地を用いて30℃で48時間振とう培養を行った。
【0063】
本培養に際して、豆乳2000gを微生物培養用の小型ジャーファーメンターに仕込み121℃で20分間殺菌を行った。本培養培地を30℃まで冷却した後、前培養50gを添加し、水酸化ナトリウム水溶液でpH6.0のpH調整を継続して行いながら、ガラクトミセス・レースシィを30℃で48時間培養した。得られた豆乳ガラクトミセス培養液を121℃で30分間、加熱処理し菌体成分を抽出した後、室温まで冷却し、得られた酵母細胞壁などの固形分を含む溶液を、プレフィルター、続いて0.45μmメンブランスフィルターにて濾過し、固形物が除去された豆乳ガラクトミセス培養液を得た。
【0064】
【0065】
実施例2以下に実施例1で製造した各種培養液及び比較例の培養液を用いた評価試験方法および結果を示す。評価に供した試料の一覧を表2に示した。
【0066】
【0067】
[実施例2]角質水分量及び水分蒸散量による保湿性評価
表2に示した試料を用いて表3の組成のローションを作製し、40~50才代女性の被験者(10名)の前腕内側部に1日2回、4週間継続して塗布した。塗布前と塗布後2、4週間目の角質水分量をCorneometer(Courage+Khazaka社製)を用い、経皮水分蒸散量をTewameter (Courage + Khazaka electronic GmbH製)を用いてそれぞれ測定した結果を表4及び表5に示す。
【0068】
【0069】
【0070】
表4に示したように、角質水分量については、精製水を用いた比較例4に対し、試験区1~4及び対照区1~3において水分保持量の上昇がみられた。特に、基質成分として白樺樹液を使用して酵母菌を培養した試験区1~4のすべてにおいて、角質水分量保持効果が極めて優れており、酵母培養を伴わない白樺樹液(対照区1)、スキムミルクを基質とした培養液(対照区2)及び豆乳を基質とした培養液(対照区3)においても多少の保湿効果がみられたものの試験区1~4よりは劣る結果となった。また、酵母の種類で比較すると、ガラクトミセス・レースシィ菌の培養液(試験区1)及びサッカロミコプシスの培養液(試験区2)の2試験区で角質水分保持効果が高いことが確認された。
【0071】
【0072】
また、表5に示すように、水分蒸散量については、対照区2(精製水)において試験期間中に環境からの影響などにより水分蒸散量の増加が認められたが、その他の試験区および対照区では経皮水分蒸散抑制作用が確認された。特に、基質成分として白樺樹液を使用して酵母菌を培養した試験区1~4のすべてにおいて水分蒸散防止持効果が極めて優れていた。酵母培養を伴わない白樺樹液(対照区1)、スキムミルクを基質とした培養液(対照区2)及び豆乳を基質とした培養液(対照区3)においても多少の水分蒸散防止効果がみられたものの、試験区1~4よりは劣る結果となった。また、酵母の種類で比較すると、ガラクトミセス・レースシィ菌を選択した白樺樹液酵母培養液(試験区1)及びサッカロミコプシスを選択した白樺樹液酵母培養液(試験区2)の2試験区で水分保持蒸散防止効果が高いことが確認された。
【0073】
[実施例3]キメ改善試験1
表3に示す試料を40~50才代女性の被験者(10名)の前腕内側部に各試験区15mm×15mmの範囲をマーキングし、1日2回、4週間継続して塗布した。塗布前と塗布後のキメの状態をマイクロスコープ((株)キーエンス製)により撮影し比較を行った。画像を以下の3項目(皮溝の深浅、皮丘の形状、皮丘の大きさ)について下記の5段階の評点で評価を実施し、被験者10名の評点を平均した値を表6~8に示した。
【0074】
(1)皮溝の深浅
5 皮溝が大変浅い
4 皮溝がやや浅い
3 皮溝が通常程度
2 皮溝がやや深い
1 皮溝が大変深い
(2)皮丘の形状
5 すべてきれいな三角形である
4 ほぼ三角形である。
3 三角形以外の皮丘がやや目立つ
2 三角形以外の皮丘が目立つ
1 三角形以外の皮丘が大変目立つ
(3)皮丘の大きさ
5 とても小さく整っている
4 やや小さい
3 中程度の大きさである
2 やや大きい
1 大変大きい
【0075】
【0076】
【0077】
【0078】
表6~8に示すように、精製水を用いた比較例4に対し、試験区1~4及び対照区1~3においてキメ肌改善効果が確認された。特に、基質成分として白樺樹液を使用して酵母菌を培養した試験区1~4のすべてにおいて、キメ肌改善効果が極めて優れていた。酵母培養を伴わない白樺樹液(対照区1)、スキムミルクを基質とした培養液(対照区2)及び豆乳を基質とした培養液(対照区3)においても多少のキメ肌改善効果がみられたものの、試験区1~4よりは劣る結果となった。酵母の種類で比較すると、ガラクトミセス・レースシィ菌を選択した白樺樹液酵母培養液(試験区1)でキメ肌改善効果が高いことが確認された。
【0079】
[実施例4]べたつき評価試験1
本実施例4では、実施例2における連続塗布試験期間の2週目において、各試験区についてローション塗布前及び塗布後15分間乾燥した後の塗布部位のべたつきについて、皮膚摩擦力評価装置Frictiometer FR700(Courage+Khazaka社製)により測定し比較を行った。塗布前の摩擦力値を100とした時の塗布後の値を求め、被験者10名の平均値をとり表9に示した。
【0080】
【0081】
表9に示すように、対照区1においては、含まれる糖分に起因するべたつきがあり、摩擦力も非常に高い値を示した。すなわち、白樺樹液そのものはべたつき感を与えることが明らかとなった。また、対照区2~3のスキムミルク、豆乳を基質とした酵母培養液も対照区1程ではないが高い摩擦力を示しべたつき性を示した。これらと比較して、基質成分として白樺樹液を使用して酵母菌を培養した試験区1~4では、対照区4の精製水に近い値となっており、べたつき感を与えることなく優れた使用感であることが示された。
【0082】
[実施例5]キメ改善試験2
本実施例5では、表10に示す試料を40~50才代女性の被験者(10名)の左右の頬に1日2回、4週間継続して塗布した。右頬を試験区、左頬を対照区として、塗布前と塗布後のキメの状態を皮膚画像解析装置(VISIA TM Evolution, Canfield社製)を用いて測定し、キメ評価を数値化した結果を表11に示した。
【0083】
【0084】
【0085】
表11に示すように、本実施例における検討でも、基質成分として白樺樹液を使用してガラクトミセスを培養した試験区1は、白樺樹液そのものを使用した対照区よりもキメ改善効果が高いことが確認された。
【0086】
[実施例6]くすみ改善試験
本実施例6では、実施例5の試験と並行して、試験区と対照区でのくすみ改善効果を測定した。くすみの評価は測色装置である色彩色差計(コニカミノルタ製)を用い、L*a*b*表色系における明度指数L*値を求め解析した。塗布前と4週間連続塗布後の結果を表12に示した(表中、L*値は被験者(10名)平均値である)。
【0087】
【0088】
表12に示すように、基質成分として白樺樹液を使用してガラクトミセスを培養した試験区1は、白樺樹液そのものを使用した対照区よりもくすみ改善効果が高いことが確認された。
【0089】
[実施例7]べたつき評価試験2(官能試験)
本実施例7では、実施例5及び6の試験中にべたつき感について官能試験を行った。具体的には、試験の開始後1週間から4週間まで毎週下記5段階の評点で評価を実施した。被験者10名の評点を平均した結果を表13に示した。
肌のべたつき評価
5:さっぱり
4:ややさっぱり
3:普通
2:ややべたつく
1:べたつく
【0090】
【0091】
表13に示すように、基質成分として白樺樹液を使用してガラクトミセスを培養した試験区は、全期間を通じてさっぱりとした感触を与える結果となり、白樺樹液そのものを使用した対照区は樹液中の糖分の影響でべたついた感触を与える結果となった。
【0092】
[実施例8]化粧水の製造例
本実施例8では、表14の処方に従い、成分(1)~(11)を80℃で攪拌し、溶解後に室温まで冷却することにより、化粧水(白樺樹液酵母培養液配合化粧水)を製造した。また、製造例1で調製した酵母培養白樺樹液を添加しないこと以外は全く同様にして対照化粧水を比較例1の通り製造した。得られた化粧水はいずれも清澄であり、40℃、相対湿度(RH)75%の条件下において3ヶ月間白濁を生じることもなく安定であった。
【0093】
【0094】
これらの化粧水について、40~50才代女性の被験者(10名)による官能試験を行った。4項目(肌のしっとりさ、肌の滑らかさ、肌のべたつき、感覚刺激)について下記5段階の評点で評価を実施した。被験者(10名)の評点の平均値を表15に示した。
【0095】
(1) 肌のしっとりさ
5:しっとりする
4:ややしっとりする
3:普通
2:ややかさつく
1:かさつく
(2) 肌の滑らかさ
5:滑らか
4:やや滑らか
3:普通
2:ややざらつく
1:ざらつく
(3) 肌のべたつき
5:さっぱり
4:ややさっぱり
3:普通
2:ややべたつく
1:べたつく
(4) 感覚刺激
5:特に刺激を感じない。
4:やや刺激を感じるが気にならない。
3:ピリピリ感、ホテリ感、チクチク感、カユミ等の刺激をやや感じるが許容可。
2:ピリピリ感、ホテリ感、チクチク感、カユミ等の刺激が強い。
1:ピリピリ感、ホテリ感、チクチク感、カユミ等の刺激が非常に強い。
0:刺激が強く、試験継続は不可
【0096】
【0097】
表15に示すように、から明らかなように、基質成分として白樺樹液を使用してガラクトミセスを培養した培養液を配合した化粧水は、対照化粧水1及び2より優れた保湿性を示し、べたつきが抑えられる効果を示した。
【0098】
[実施例9]クリーム剤の製造
本実施例9では、表16に示す処方に従い、成分(1)~(7)を80℃で混合攪拌して得られた混合物に、別途、成分(8)~(11)を80℃で混合攪拌して得られた混合物を加え、ホモジナイズし、攪拌しながら室温まで冷却し、クリーム剤を製造した。
【0099】
得られたクリーム剤は使用中にべたつかず、肌をしっとりとさせるものであった。
【0100】
【0101】
[実施例10]ボディジェル剤の製造
実施例10では、表17の処方に従い、成分(1)~(7)を攪拌し、溶解してボディジェル剤を製造した。得られたボディジェル剤は肌をしっとりとさせ、刺激の無い製剤であった。
【0102】
【0103】
[実施例11]シャンプーの製造
実施例11では、表18の処方に従い、成分(1)と(2)を加熱溶解し、60℃に加温した成分(3)、(4)を添加して攪拌した。ここに成分(5)~(8)を添加して攪拌した。ここに成分(9)をpH5.5~6.0となるように添加し、さらに、成分(11)及び(12)を成分(10)に溶解したものを添加した。全量(100%)となるまで成分(13)を添加し、シャンプーを製造した。
【0104】
得られたシャンプーを用いて洗髪したところ髪の感触が滑らかとなり、髪に潤いを与えることができた。
【0105】
【0106】
[実施例12]クレンジングクリームの製造
実施例12では、表19の処方に従い、攪拌して全成分を均一に混合することにより、クレンジング組成物を得た。得られたクレンジングクリームは洗浄性が良好でさっぱりとした使用後感を与えるものであった。
【0107】
【0108】
[実施例13]リンス剤の製造
実施例13では、表20の処方に従い、攪拌して全成分を均一に混合することにより、リンス組成物を得た。得られたリンスは、髪や地肌にしっとりとした使用後感を与えるものであった。
【0109】
【0110】
[実施例14]乳液の製造
実施例14では、表21の処方に従い、攪拌して全成分を均一に混合することにより、乳液組成物を得た。得られた乳液は、肌にしっとりとした潤い感を与えるものであった。
【0111】
【0112】
[実施例15]マスクの製造
実施例15では、表22に示す組成からなる皮膚外用料を不織布に含浸させたマスクを作製した。作製したマスクで15分間顔面を覆い、使用後に適度な潤いと張り感を与えるものであった。
【0113】