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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022053332
(43)【公開日】2022-04-05
(54)【発明の名称】皮膚外用組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/81 20060101AFI20220329BHJP
   A61K 8/37 20060101ALI20220329BHJP
   A61Q 1/04 20060101ALI20220329BHJP
   A61K 8/34 20060101ALI20220329BHJP
   A61K 8/39 20060101ALI20220329BHJP
【FI】
A61K8/81
A61K8/37
A61Q1/04
A61K8/34
A61K8/39
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020160117
(22)【出願日】2020-09-24
(71)【出願人】
【識別番号】000113470
【氏名又は名称】ポーラ化成工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100137338
【弁理士】
【氏名又は名称】辻田 朋子
(74)【代理人】
【識別番号】100196313
【弁理士】
【氏名又は名称】村松 大輔
(72)【発明者】
【氏名】飯田 昌枝
(72)【発明者】
【氏名】十塚 幼子
(72)【発明者】
【氏名】藤井 美咲
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AC012
4C083AC122
4C083AC171
4C083AC172
4C083AC332
4C083AC372
4C083AC391
4C083AC392
4C083AC401
4C083AC402
4C083AC421
4C083AC422
4C083AC912
4C083AD021
4C083AD022
4C083AD041
4C083AD042
4C083AD151
4C083AD152
4C083BB21
4C083CC02
4C083CC13
4C083DD23
4C083EE01
4C083EE05
4C083EE06
(57)【要約】
【課題】本発明の解決しようとする課題は、ロングラスティング効果に優れ、塗布後の乾燥感が生じない化粧料を提供することにある。
【解決手段】(エチレン/プロピレン)コポリマーと、ポリヒドロキシ脂肪酸及び多価アルコールのエステル化合物並びに/又はイソステアリルグリセリルを含む皮膚外用組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(エチレン/プロピレン)コポリマーと、ポリヒドロキシ脂肪酸及び多価アルコールのエステル化合物並びに/又はイソステアリルグリセリルを含む皮膚外用組成物。
【請求項2】
前記エステル化合物が、ポリリシノレイン酸ポリグリセリルであることを特徴とする、請求項1に記載の皮膚外用組成物。
【請求項3】
前記エステル化合物が、ポリヒドロキシ脂肪酸とペンタエリスリトールのエステル化合物であることを特徴とする、請求項1に記載の皮膚外用組成物。
【請求項4】
前記エステル化合物が、ポリヒドロキシステアリン酸とポリエチレングリコールのエステル化合物であることを特徴とする、請求項1に記載の皮膚外用組成物。
【請求項5】
前記(エチレン/プロピレン)コポリマーの含有量と、前記エステル化合物及び/又は前記イソステアリルグリセリルの含有量との質量比が、10:1~1:20であることを特徴とする、請求項1~4の何れか一項に記載の皮膚外用組成物。
【請求項6】
単位構造として少なくとも下記化学式(1)で表される単位構造を有するシリコーン系油剤を含む、請求項1~5の何れか一項に記載の皮膚外用組成物。
化学式(1)
【化1】
【請求項7】
下記化学式(2)で表される単位構造及び/又は下記化学式(3)で表される単位構造を有するシリコーン系油剤を含む、請求項1~5の何れか一項に記載の皮膚外用組成物。
化学式(2)
【化2】
化学式(3)
【化3】
【請求項8】
前記シリコーン系油剤が、ジフェニルジメチコンであることを特徴とする、請求項6~8の何れか一項に記載の皮膚外用組成物。
【請求項9】
水添ポリイソブテンを含むことを特徴とする、請求項1~8の何れか一項に記載の皮膚外用組成物。
【請求項10】
色材を含有することを特徴とする、請求項1~9の何れか一項に記載の皮膚外用組成物。
【請求項11】
唇用化粧料である、請求項1~10の何れか一項に記載の皮膚外用組成物。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特定の炭化水素油剤及び脂肪酸エステルを含む皮膚外用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
口紅の化粧もちには大きく分けて、長時間、唇上に色やつやが残っているロングラスティング効果、及びコーヒーカップなどの食器や、ストローなどに口紅がつかない二次付着レス効果の2つの要素がある(非特許文献1)。従来、口紅の分野ではこの2つの観点から化粧もちを向上させる研究が行われてきた。
特に二次付着レス効果を向上させるために、肌への塗布後に、シリコーン系油剤が上層に、エステル油が下層に分離するような性質をもつ唇用化粧料が提案されている(例えば、特許文献1~5)。
【0003】
特許文献1には、モノイソステアリン酸グリセリンとメチルフェニルシリコーンと水および/またはグリセリンとワックスを特定量含む唇用化粧料が記載されている。
特許文献2には、水添ポリイソブテン、メチルフェニルシリコーン、親油性界面活性剤及びワックスを特定量含む唇用化粧料が記載されている。
特許文献3には、ブロック型アルキレンオキシド誘導体、ジメチルジフェニルポリシロキサン、ジイソステアリン酸ジグリセリル及び/又はトリイソステアリン酸ジグリセリルを特定量含む唇用化粧料が記載されている。
【0004】
また、特許文献4には、多価アルコール変性シリコーン、常温液状のエステル油、着色剤、25℃における屈折率が1.47以上の油剤及び融点が35~45℃、常温で固体のトリグリセリルを含有することを特徴とする油性化粧料が開示されている。
そして、特許文献4には、当該油性化粧料を肌や口唇に塗布すると、皮膚の水分や、空気中の水分により、多価アルコール変性シリコーンと油剤が相分離して化粧膜にツヤを与え、多価アルコール変性シリコーンが水分により粘性が高まって化粧膜が強固になり、化粧持続性が向上することが記載されている(段落0006)。
【0005】
また、特許文献5には、水和膜形成能に優れ、化粧もちの良いイソステアリン酸ポリグリセリルとシリコーン系油剤を含む皮膚外用組成物が開示されている。
特許文献6には、水添ポリイソブテン及び特定の脂肪酸ポリグリセリンを含むことで、安定したゲル化状態を維持でき、二次付着レス効果に優れた皮膚外用組成物が開示されている。
【0006】
化粧料の二次付着レス効果を高める方法としては、揮発性油剤とシリコーン系油剤を共に配合する方法も提案されている。
特許文献7には、揮発性油分と組み合わせてシリコーン界面活性剤を配合した、二次付着レス効果を有するスティック化粧品が開示されている。
【0007】
また、油性唇用化粧料においては、組成物を柔らかくゲル化するため、デキストリン脂肪酸エステル(レオパール(登録商標))を加える方法が一般的であった(特許文献8)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】WO2010/113956号パンフレット
【特許文献2】特開2011-140481号公報
【特許文献3】特開2011-42610号公報
【特許文献4】特開2014-181218号公報
【特許文献5】特開2017-114786号公報
【特許文献6】特開2019-167325号公報
【特許文献7】特表平10-512299号公報
【特許文献8】特開2015-224243号公報
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】日本化粧品技術社会(2003).『化粧品辞典』、P137~138、丸善株式会社
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
従来の油剤の相分離を利用した化粧料は、二次付着レス効果が高いといった特徴を有する。しかしながら、組成物を固める際にデキストリン脂肪酸エステル等を用いるため、同時に高極性油剤を多量に配合しなければならず、組成物が肌から落ちやすく、ロングラスティング効果に劣るといった課題があった。
また、揮発性油剤及びシリコーン系油剤を配合する化粧料は、二次付着レス効果及びロングラスティング効果といった化粧もちに優れるが、塗布後に乾燥感が生じるといった課題があった。
【0011】
このような状況に鑑み、本発明は、ロングラスティング効果に優れ、塗布後の乾燥感が生じない皮膚外用組成物を提供することを課題とする。さらに、製剤の経時安定性を有する皮膚外用組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決する本発明は、(エチレン/プロピレン)コポリマーと、ポリヒドロキシ脂肪酸及び多価アルコールのエステル化合物並びに/又はイソステアリルグリセリルを含む皮膚外用組成物である。
本発明の皮膚外用組成物は、肌への化粧膜の密着性が向上し、ロングラスティング効果に優れる。
【0013】
本発明の好ましい形態では、前記エステル化合物が、ポリリシノレイン酸ポリグリセリルであることを特徴とする。
このようなエステル化合物を含むことで、ロングラスティング効果が向上する。
【0014】
本発明の好ましい形態では、前記エステル化合物が、ポリヒドロキシ脂肪酸とペンタエリスリトールのエステル化合物であることを特徴とする。
このようなエステル化合物を含むことで、ロングラスティング効果が向上する。
【0015】
本発明の好ましい形態では、前記エステル化合物が、ポリヒドロキシステアリン酸とポリエチレングリコールのエステル化合物であることを特徴とする。
このようなエステル化合物を含むことで、ロングラスティング効果が向上する。
【0016】
本発明の好ましい形態では、前記(エチレン/プロピレン)コポリマーの含有量と、前記エステル化合物及び/又は前記イソステアリルグリセリルの含有量との質量比が、10:1~1:20であることを特徴とする。
(エチレン/プロピレン)コポリマーとエステル化合物及び/又はイソステアリルグリセリルとの含有質量比が上記範囲である本発明の皮膚外用組成物は、特にロングラスティング効果に優れる。
【0017】
本発明の好ましい形態では、単位構造として少なくとも下記化学式(1)で表される単位構造を有するシリコーン系油剤を含む。
【0018】
化学式(1)
【化1】
【0019】
上記シリコーン油剤を含む本発明の皮膚外用組成物は、二次付着レス効果に優れる。
【0020】
本発明の好ましい形態では、下記化学式(2)で表される単位構造及び/又は下記化学式(3)で表される単位構造を有するシリコーン系油剤を含む。
【0021】
化学式(2)
【化2】
【0022】
化学式(3)
【化3】
【0023】
上記シリコーン油剤を含む本発明の皮膚外用組成物は、二次付着レス効果に優れる。
【0024】
本発明の好ましい形態では、前記シリコーン系油剤が、ジフェニルジメチコンである。
ジフェニルジメチコンを含む本発明の皮膚外用組成物は、二次付着レス効果に優れる。
【0025】
本発明の好ましい形態では、水添ポリイソブテンを含む。
水添ポリイソブテンを含むことにより、良好な密着性を発揮するゲルを形成させることができる。
【0026】
本発明の好ましい形態では、色材を含有する。
本発明の皮膚外用組成物に含まれるポリヒドロキシ脂肪酸及び多価アルコールのエステル化合物、並びにイソステアリルグリセリルは、色材も抱え込むことができるため、色落ちが起こりにくい。
【0027】
本発明の皮膚外用組成物は、好ましくは唇用化粧料である。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、塗布後の乾燥感がなく、ロングラスティング効果に優れた皮膚外用組成物を提供することができる。さらに、経時安定性を有する皮膚外用組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明に用いられる成分における粘度は、20℃、1気圧において定法(例えば、B型粘度計(DIGITALVISMETRONVDA:芝浦システム株式会社製)を用いる測定)により得られる数値で表されるものとする。
【0030】
本発明の皮膚外用組成物は(エチレン/プロピレン)コポリマーと、ポリヒドロキシ脂肪酸と多価アルコールのエステル化合物(以下、単にエステル化合物ともいう)及び/又はイソステアリルグリセリルを必須の構成として含む。これらの成分を有することで、本発明の皮膚外用組成物は、肌への優れた密着性を発揮し、ロングラスティング効果に優れる。
【0031】
本発明で用いられる(エチレン/プロピレン)コポリマーは、低極性の炭化水素系油剤である。(エチレン/プロピレン)コポリマーを有することで、組成物の肌への密着性が高まり、ロングラスティング効果が向上する。さらに、(エチレン/プロピレン)コポリマーを有することで、組成物を適切な粘度でゲル化させ、塗布時の使用感に優れた組成物が得られる。
【0032】
(エチレン/プロピレン)コポリマーは、任意の溶媒と混合された混合物(以下、単に(エチレン/プロピレン)コポリマー混合物という)を用いることが好ましい。任意の溶媒としては、スクワラン、イソドデカン、水添ポリイソブテン等の油剤が挙げられ、中でもイソドデカンを用いることが好ましい。
また、(エチレン/プロピレン)コポリマー混合物の外観は、透明~半透明であることが好ましい。
【0033】
前記任意の溶媒の含有量は、(エチレン/プロピレン)コポリマー混合物に対し、好ましくは60~95質量%、より好ましくは70~95質量%である。
【0034】
(エチレン/プロピレン)コポリマーの含有量は、(エチレン/プロピレン)コポリマー混合物に対し、好ましくは5~40質量%、より好ましくは5~30質量%である。
なお、本発明において、単に「(エチレン/プロピレン)コポリマー」と記載する場合は、上記の溶媒を除いた当該コポリマー単体を示す。
【0035】
(エチレン/プロピレン)コポリマー混合物は、20℃における粘度が、好ましくは70,000~400,000mPa・sであり、より好ましくは150,000~380,000mPa・s、さらに好ましくは200,000~360,000mPa・sである。
【0036】
このような(エチレン/プロピレン)コポリマー混合物の市販品としては、The Innovation Company製の「Creagel(登録商標)Crystal ID」、「Creagel(登録商標)Crystal VS」、「Creagel(登録商標)Crystal DF5」等が挙げられる。
【0037】
(エチレン/プロピレン)コポリマーの含有量は、皮膚外用組成物全量に対し、好ましくは0.01~24質量%、より好ましくは0.025~10質量%、さらに好ましくは0.05~6質量%である
また、(エチレン/プロピレン)コポリマー混合物の状態で用いる場合、(エチレン/プロピレン)コポリマー混合物の含有量は、皮膚外用組成物全量に対し、好ましくは0.2~60質量%、より好ましくは0.5~50質量%、さらに好ましくは1~30質量%である。
(エチレン/プロピレン)コポリマーの含有量を上記の範囲内とすることで、ロングラスティング効果に特に優れた皮膚外用組成物を得ることができる。
【0038】
本発明に用いられるエステル化合物は、分子内に少なくとも一つのヒドロキシ基を有する脂肪酸の重合物(ポリヒドロキシ脂肪酸)と多価アルコールのエステルである。このようなエステル化合物を配合することで、本発明の皮膚外用組成物は、ロングラスティング効果に優れた組成物となる。
【0039】
エステル化合物を構成するポリヒドロキシ脂肪酸のヒドロキシ脂肪酸の重合度は、好ましくは3~20、より好ましくは3~10である。
【0040】
前記ヒドロキシ脂肪酸は、不飽和であっても飽和であっても良く、また、分岐鎖を有していても良い。前記ヒドロキシ脂肪酸の炭素数は、好ましくは12~24、より好ましくは16~20である。
また、前記ポリヒドロキシ脂肪酸における合計炭素数は好ましくは24~216、より好ましくは50~130である。
前記ヒドロキシ脂肪酸として、ヒドロキシステアリン酸、リシノレイン酸(リシノール酸)等が好ましく例示できる。
【0041】
エステル化合物を構成する多価アルコールは、単量体であってもよいし、重合体を形成していても良いが、重合体を形成していることがより好ましい。多価アルコールの価数は、好ましくは1~10、さらに好ましくは2~6である。このような多価アルコールとして、例えば、糖アルコール、糖アルコールの単量体又は重合体が好ましく、具体的にはグリセリン、ポリグリセリン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリプロピレングリコール(PPG)、エチレングリコール、プロプレングリコール等が好ましく例示できる。
また、ポリグリセリンの重合度は、好ましくは1~10であり、より好ましくは2~8であり、さらに好ましくは3~6である。ポリエチレングリコール重合度は、好ましくは3~150、より好ましくは8~100、さらに好ましくは10~60である。
【0042】
本発明の皮膚外用組成物は、エステル化合物として、ポリリシノレイン酸ポリグリセリルを使用することが好ましい。ポリリシノレイン酸ポリグリセリルとして、好ましくはポリリシノレイン酸ポリグリセリル-3、ポリリシノレイン酸ポリグリセリル-5、ポリリシノレイン酸ポリグリセリル-6、ポリリシノレイン酸ポリグリセリル-10、ポリリシノレイン酸ポリグリセリル-4を例示することができ、より好ましくはポリリシノレイン酸ポリグリセリル-5を例示することができる。ポリリシノレイン酸ポリグリセリル-5の市販品としては、太陽化学製の「サンソフト(登録商標)No.818R-C」などが挙げられる。
【0043】
本発明の皮膚外用組成物は、エステル化合物として、ポリヒドロキシ脂肪酸とペンタエリスリトールのエステル化合物を使用することが好ましい。
【0044】
ポリヒドロキシ脂肪酸を構成するヒドロキシ脂肪酸としては、ヒドロキシステアリン酸、ヒドロキシラウリン酸、ヒドロキシミリスチン酸、ヒドロキシパルミチン酸等が挙げられ、中でもヒドロキシステアリン酸であることが好ましい。
ペンタエリスリトールはモノペンタエリスリトールであっても、複数のペンタエリスリトールが縮合していても良く、例えば、モノペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール等が挙げられ、中でもモノペンタエリスリトール又はジペンタエリスリトールであることが好ましい。
また、ペンタエリスリトール及びこの縮合体とエステル結合するポリヒドロキシ脂肪酸基の個数は特に限定されず、モノ、ジ、トリ、ペンタ、ヘキサ等の何れの個数であっても良い。
【0045】
ポリヒドロキシ脂肪酸とペンタエリスリトールのエステル化合物として、モノポリヒドロキシステアリン酸ペンタエリスリチル、ジポリヒドロキシステアリン酸ペンタエリスリチル、トリポリヒドロキシステアリン酸ペンタエリスリチル、テトラポリヒドロキシステアリン酸ペンタエリスリチル、モノポリヒドロキシステアリン酸ジペンタエリスリチル、ジポリヒドロキシステアリン酸ジペンタエリスリチル、トリポリヒドロキシステアリン酸ジペンタエリスリチル、テトラポリヒドロキシステアリン酸ジペンタエリスリチル、ペンタポリヒドロキシステアリン酸ジペンタエリスリチル、ヘキサヒドロキシステアリン酸ジペンタエリスリチルなどを例示することができ、特に好ましくはトリポリヒドロキシステアリン酸ジペンタエリスリチルを例示することができる。トリポリヒドロキシステアリン酸ジペンタエリスリチルの市販品としては、日清オイリオ社製の「サラコス(登録商標)WO-6」などが挙げられる。
【0046】
本発明の皮膚外用組成物は、エステル化合物として、ポリヒドロキシステアリン酸とポリエチレングリコールのエステル化合物を使用することが好ましい。このようなエステル化合物としては、ジポリヒドロキシステアリン酸PEG-30を使用することが好ましい。
ジポリヒドロキシステアリン酸PEG-30の市販品としては、クローダジャパン株式会社製の「シスロール DPHS」などが挙げられる。
【0047】
前記エステル化合物の含有量は、皮膚外用組成物全量に対し、好ましくは0.1~15質量%、より好ましくは0.5~10質量%、さらに好ましくは、1~7質量%である。
【0048】
(エチレン/プロピレン)コポリマーと前記エステル化合物の含有質量比は、好ましくは10:1~1:20、より好ましくは10:1~1:10、さらに好ましくは10:1~1:5である。
【0049】
また、本発明の皮膚外用組成物の一形態では、(エチレン/プロピレン)コポリマーと共に、イソステアリルグリセリルを含む。
イソステアリルグリセリルの市販品としては、ペネトール(登録商標)GE‐IS(花王株式会社製)等が挙げられる。
【0050】
イソステアリルグリセリルの含有量は、皮膚外用組成物全量に対し、好ましくは0.1~15質量%、より好ましくは0.5~10質量%、さらに好ましくは、1~7質量%である。
【0051】
(エチレン/プロピレン)コポリマーとイソステアリルグリセリルの含有質量比は、好ましくは10:1~1:20、より好ましくは10:1~1:10、さらに好ましくは10:1~1:5である。
【0052】
本発明の皮膚外用組成物は、下記化学式(1)で表される単位構造を有するシリコーン系油剤を用いることが好ましい。
【0053】
化学式(1)
【化4】
【0054】
また、本発明の皮膚外用組成物は、下記化学式(2)で表される単位構造及び/又は下記化学式(3)で表される単位構造を有するシリコーン系油剤を含むことが好ましい。
【0055】
化学式(2)
【化5】
【0056】
化学式(3)
【化6】
【0057】
このようなシリコーン系油剤として、ジフェニルメチルシロキシフェニルメチコン/フェニルシルセスキオキサンクロスポリマー、ジフェニルジメチコン、トリメチルシロキシフェニルジメチコン、ジメチコン等を好ましく例示することができ、特に好ましくはジフェニルジメチコン、トリメチルシロキシフェニルジメチコンを例示することができる。
【0058】
前記シリコーン系油剤を含有する本発明の皮膚外用組成物は、肌への塗布後に水添ポリイソブテン及び特定脂肪酸ポリグリセリンを含む肌に密着する層と、シリコーン系油剤を含む表層に分離する。そのため、経時で被膜表面につやを有する化粧もちの良い皮膚外用組成物を提供することができる。
【0059】
前記シリコーン系油剤としては、25℃で液体であるIOB値0.1以下の油剤、また、25℃における平均溶解性パラメーターが7.0(J/cm)1/2未満の油剤、そして、カルボキシル基、リン酸基、アミノ基などの極性基を有さない油剤が好ましい。
【0060】
前記シリコーン系油剤の粘度は、20℃において、好ましくは60000mpa・s以下、より好ましくは2000mpa・s以下である。
【0061】
このようなシリコーン系油剤としては、PH-1560(ジフェニルメチルシロキシフェニルメチコン/フェニルシルセスキオキサンクロスポリマー、東レ・ダウコーニング社)、シリコーンKF54(ジフェニルジメチコン、信越シリコーン社)、シリコーンKF54HV(ジフェニルジメチコン、信越シリコーン社)、PDM1000(トリメチルシロキシフェニルジメチコン、旭化成ワッカーシリコーン社)、シリコーンKF96-10(ジメチコン、信越シリコーン社)などの市販品を用いても良い。
【0062】
本発明において前記シリコーン系油剤の含有量は、好ましくは1~65質量%、より好ましくは10~60質量%、さらに好ましくは10~40質量%、特に好ましくは15~40質量%である。
前記シリコーン系油剤の含有量を前記範囲とすることによって、優れた二次付着レス効果を有する皮膚外用組成物を得ることができる。
【0063】
(エチレン/プロピレン)コポリマーと前記シリコーン系油剤の含有質量比は、好ましくは2:1~1:100、より好ましくは1:1~1:50、さらに好ましくは1:2~1:25である。
【0064】
前記エステル化合物と前記シリコーン系油剤の含有質量比は、好ましくは10:1~1:40、より好ましくは5:1~1:30、さらに好ましくは1:1~1:20である。
【0065】
イソステアリルグリセリルと前記シリコーン系油剤の含有質量比は、好ましくは10:1~1:40、より好ましくは5:1~1:30、さらに好ましくは1:1~1:20である。
【0066】
本発明の皮膚外用組成物は、水添ポリイソブテンを配合することが好ましい。
本発明においてはどのような重合度の水添ポリイソブテンでも用いることができるが、20℃における粘度が、好ましくは10000mpa・s以上、より好ましくは50000mpa・s以上、さらに好ましくは100000mpa・s以上、さらに好ましくは120000mpa・s以上、さらに好ましくは130000mpa・s以上の高粘度の水添ポリイソブテン(以下、高粘性水添ポリイソブテンともいう)を使用することが好ましい。
【0067】
高粘性水添ポリイソブテンの粘度の上限は特に限定されないが、20℃における粘度が、好ましくは2000000mpa・s以下、より好ましくは1800000mpa・s以下、さらに好ましくは1400000mpa以下、さらに好ましくは1200000mpa・s以下である。
【0068】
上述した粘度の範囲の高粘性水添ポリイソブテンを用いることで、良好な密着性を発揮するゲルを形成させることができ、化粧もちに優れた皮膚外用組成物を提供することができる。
【0069】
高粘性水添ポリイソブテンの含有量は、皮膚外用組成物全量に対し、好ましくは0.01~40質量%、より好ましくは0.1~30質量%、さらに好ましくは1~20質量%である。
【0070】
また、高粘性水添ポリイソブテンに加え、これよりも低粘度の水添ポリイソブテン(以下、低粘性水添ポリイソブテンともいう)及びイソドデカンから選ばれる低粘性揮発性油剤(以下、単に低粘性揮発性油剤ともいう)を併せて含有させることが好ましい。
低粘性水添ポリイソブテンの粘度の上限は特に限定されないが、20℃における粘度が、好ましくは1000mpa・s以下、より好ましくは500mpa・s以下、さらに好ましくは200mpa・s以下、さらに好ましくは100mpa・s以下である。
【0071】
低粘性水添ポリイソブテンの粘度の下限は、20℃において、好ましくは10mpa・s以上、より好ましくは20mpa・s以上、さらに好ましくは50mpa・s以上、さらに好ましくは60mpa・s以上、さらに好ましくは70mpa・s以上である。
【0072】
上述した粘度の範囲の低粘性水添ポリイソブテン及び/又はイソドデカンを高粘性水添ポリイソブテンと組み合わせて含有することによって分離を防ぐことができ、経時安定性に優れた皮膚外用組成物を提供することができる。
【0073】
低粘性水添ポリイソブテン及びイソドデカンから選ばれる低粘性揮発性油剤の含有量は、皮膚外用組成物全量に対し、好ましくは1~50質量%、より好ましくは3~40質量%、さらに好ましくは5~35質量%である。
【0074】
高粘性水添ポリイソブテンと、前記低粘性揮発性油剤の含有質量比は、好ましくは10:1~1:20、より好ましくは5:1~1:10、さらに好ましくは2:1~1:5である。
【0075】
(エチレン/プロピレン)コポリマーと、高粘性ポリイソブテン及び前記低粘性揮発性油剤の合計量の含有質量比は、好ましくは10:1~1:80、より好ましくは5:1~1:4、さらに好ましくは1:1~1:20である。
【0076】
前記エステル化合物と、高粘性ポリイソブテン及び低粘性揮発性油剤の合計量の含有質量比は、好ましくは10:1~1:40、より好ましくは5:1~1:30、さらに好ましくは1:1~1:20である。
上記の含有比とすることで、ロングラスティング効果に優れると共に、伸びの良さ等の使用感に優れた皮膚外用組成物を得ることができる。
【0077】
イソステアリルグリセリルと、高粘性ポリイソブテン及び低粘性揮発性油剤の合計量の含有質量比は、好ましくは10:1~1:40、より好ましくは5:1~1:30、さらに好ましくは1:1~1:20である。
上記の含有比とすることで、ロングラスティング効果に優れると共に、伸びの良さ等の使用感に優れた皮膚外用組成物を得ることができる。
【0078】
本発明の皮膚外用組成物は、色材を含有する実施の形態とすることが特に好ましい。
本発明における色材の含有量は、皮膚外用組成物全量に対し、好ましくは0.1~15質量%である。
【0079】
本発明に含有させる色材としては、化粧料に通常用いられる色材であれば特に制限なく、粉末状でもレーキ状でもよく、無機顔料、有機顔料、パール顔料のいずれでもよい。特に限定されないが、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化セリウム、硫酸バリウム等の白色無機顔料、酸化鉄、カーボンブラック、チタン・酸化チタン焼結物、酸化クロム、水酸化クロム、紺青、群青、チタン酸リチウムコバルト、マンガンバイオレット等の有色無機顔料、タルク、白雲母、金雲母、紅雲母、黒雲母、合成雲母、絹雲母(セリサイト)、合成セリサイト、二酸化珪素、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、酸化アンチモン、ケイ酸アルミニウム、メタケイ酸アルミニウムマグネシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸バリウム、ケイ酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸バリウム、ハイドロタルサイト、ヒドロキシアパタイト、窒化ホウ素等の白色体質粉体、酸化チタン被覆雲母、酸化チタン被覆オキシ塩化ビスマス、酸化鉄雲母チタン、紺青処理雲母チタン、カルミン処理雲母チタン、酸化チタン被覆合成金雲母、酸化チタン被覆ガラス末、酸化チタン・酸化鉄被覆ガラス末、オキシ塩化ビスマス、魚鱗箔、ポリエチレンテレフタレート・アルミニウム・エポキシ積層末、ポリエチレンテレフタレート・ポリオレフィン積層フィルム末、ポリエチレンテレフタレート・ポリメチルメタクリレート積層フィルム末等の光輝性粉体、赤色201号、赤色202号、赤色205号、赤色226号、赤色228号、橙色203号、橙色204号、青色404号、黄色401号等の有機顔料粉体、赤色223号、赤色218号、橙色201号等の染料、赤色3号、赤色104号、赤色106号、橙色205号、黄色4号、黄色5号、緑色3号、青色1号等のジルコニウム、バリウム又はアルミニウムレーキ等の有機顔料粉体、化粧料に通常用いられる粉体に有機又は無機顔料を被覆した複合粉体、アルミニウム粉、金粉、銀粉等の金属粉体、微粒子酸化チタン被覆雲母チタン、微粒子酸化亜鉛被覆雲母チタン、硫酸バリウム被覆雲母チタン、酸化チタン含有二酸化珪素、酸化亜鉛含有二酸化珪素等の複合粉体等が挙げられ、これらは1種又は2種以上、または複合化して用いることができる。また、フッ素化合物、シリコーン系化合物、金属石ケン、界面活性剤、レシチン、アミノ酸、油剤、炭化水素等を用いた公知の方法により表面処理したものを用いても良い。
【0080】
本発明の皮膚外用組成物は、本発明の効果を損ねない限度において、通常使用される任意成分を含有することもできる。この様な任意成分としては、例えば、オレイン酸、イソステアリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、ウンデシレン酸等の高級脂肪酸類;セチルアルコール、ステアリルアルコール、イソステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、ミリスチルアルコール、セトステアリルアルコール等の高級アルコール等;イソオクタン酸セチル、ミリスチン酸イソプロピル、イソステアリン酸ヘキシルデシル、アジピン酸ジイソプロピル、セバチン酸ジ-2-エチルヘキシル、乳酸セチル、ジ-2-エチルヘキサン酸エチレングリコール、ジ-2-ヘプチルウンデカン酸グリセリン、トリ-2-エチルヘキサン酸グリセリン、テトラ-2-エチルヘキサン酸ペンタンエリトリット等の合成エステル油類等の油剤類;脂肪酸セッケン(ラウリン酸ナトリウム、パルミチン酸ナトリウム等、ラウリル硫酸カリウム、アルキル硫酸トリエタノールアミンエーテル等のアニオン界面活性剤類;塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化ベンザルコニウム、ラウリルアミンオキサイド等のカチオン界面活性剤類;イミダゾリン系両性界面活性剤(2-ココイル-2-イミダゾリニウムヒドロキサイド-1-カルボキシエチロキシ2ナトリウム塩等)、ベタイン系界面活性剤(アルキルベタイン、アミドベタイン、スルホベタイン等、アシルメチルタウリン等の両性界面活性剤類;ソルビタン脂肪酸エステル類(ソルビタンモノステアレート、セスキオレイン酸ソルビタン等 、グリセリン脂肪酸類(モノステアリン酸グリセリン等)、プロピレングリコール脂肪酸エステル類(モノステアリン酸プロピレングリコール等)、硬化ヒマシ油誘導体、グリセリンアルキルエーテル、POEソルビタン脂肪酸エステル類( POEソルビタンモノオレエート、モノステアリン酸ポリオキエチレンソルビタン等)、POEソルビット脂肪酸エステル類(POE-ソルビットモノラウレート等 、POEグリセリン脂肪酸エステル類(POE-グリセリンモノイソステアレート等)、POE脂肪酸エステル類(ポリエチレングリコールモノオレート、POEジステアレート等)、POEアルキルエーテル類(POE2-オクチルドデシルエーテル等)、POEアルキルフェニルエーテル類(POEノニルフェニルエーテル等)、プルロニック(登録商標)型類、POE・POPアルキルエーテル類(POE・POP2-デシルテトラデシルエーテル等)、テトロニック類、POEヒマシ油・硬化ヒマシ油誘導体(POEヒマシ油、POE硬化ヒマシ油等)、ショ糖脂肪酸エステル、アルキルグルコシド等の非イオン界面活性剤類;ポリエチレングリコール、グリセリン、エリスリトール、ソルビトール、キシリトール、マルチトール、プロピレングリコール、2,4-ヘキサンジオール等の多価アルコール類;ピロリドンカルボン酸ナトリウム、乳酸、乳酸ナトリウム等の保湿成分類;パラアミノ安息香酸系紫外線吸収剤;アントラニル酸系紫外線吸収剤;サリチル酸系紫外線吸収剤;桂皮酸系紫外線吸収剤;ベンゾフェノン系紫外線吸収剤;糖系紫外線吸収剤;2-(2'-ヒドロキシ-5'-t-オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、4-メトキシ-4'-t-ブチルジベンゾイルメタン等の紫外線吸収剤類;エタノール、イソプロパノール等の低級アルコール類フェノキシエタノール等の抗菌剤;アルギニン、グルタミン酸、水溶性ビタミン類等;アロエベラ、ウイッチヘーゼル、ハマメリス、キュウリ、レモン、ラベンダー、ローズ等の植物抽出液などが好ましく例示できる。
【0081】
本発明の皮膚外用組成物は、ゲル化剤としての多糖脂肪酸エステルの配合量が、皮膚外用組成物全量に対し、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下、さらに好ましくは配合しないことが好ましい。これにより、上記エステル化合物以外の極性油剤の配合を極力抑えることが好ましい。すなわち、上記エステル化合物以外の極性油剤の配合量としては、皮膚外用組成物全量に対し、50質量%以下が好ましく、40質量%以下がより好ましく、30質量%以下がより好ましい。このような極性油としては、トリ2-エチルヘキサン酸グリセリル、リンゴ酸ジイソステアリル、ジイソステアリン酸グリセリル、トリイソステアリン酸ジグリセリル、トリ(カプリル/カプリン)酸グリセリル、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、テトラ2-エチルヘキサン酸ペンタエリスリチル、セバシン酸ジエチルヘキシル、オクチルドデカノール、トリ2-エチルヘキサン酸トリメチロールプロパン、オキシステアリン酸オキシステアリル、テトラ(エチルヘキサン酸/安息香酸)ペンタエリスリチル、テトラオクタン酸ペンタエリスリチル、ヒマシ油、セバシン酸ジイソプロピル、テトラオクタン酸ペンタエリスリット、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、ダイマージリノール酸ジ(イソステアリル/フィトステリル)、ジイソステアリン酸ダイマージリノレイル、ダイマージリノール酸ダイマージリノレイル、(イソステアリン酸ポリグリセリル-2/ダイマージリノール酸)コポリマー、エチルヘキサン酸セチル等が挙げられる。
極性油剤を前記の配合量とすることで、本発明の皮膚外用組成物は優れたラスティング効果を発揮することができる。
【0082】
本発明から除くことが好ましいゲル化剤の多糖脂肪酸エステルとしては、パルミチン酸デキストリン、(パルミチン酸/エチルヘキサン酸)デキストリン、ミリスチン酸デキストリン、及びステアリン酸イヌリン等が例示できる。
【0083】
本発明の皮膚外用組成物は、下記に記載する特定の揮発性シリコーン系油剤を配合しない形態とすることが好ましい。
皮膚外用組成物の経時安定性を高める観点からは、シクロペンタシロキサンを配合しない形態が好ましい。
皮膚外用組成物の二次付着レス効果を高める観点からは、トリエチルヘキサノインを配合しない形態が好ましい。
上記の揮発性シリコーン系油剤を配合する場合は、皮膚外用組成物全量に対し、20質量%以下が好ましく、10質量%以下がより好ましく、5質量%以下がより好ましい。揮発性シリコーン系油剤の含有量を上記範囲内とすることで、本発明の皮膚外用組成物の経時安定性を高めることができる。
【0084】
本発明の皮膚外用組成物は、(エチレン/プロピレン)コポリマーと、ポリヒドロキシ脂肪酸と多価アルコールのエステル化合物及び/又はイソステアリルグリセリルに、任意の油剤、色材、及び粉体等を撹拌混合することで、製造することができる。すなわち、任意の溶媒と混合された(エチレン/プロピレン)コポリマー混合物に、前記エステル化合物及び/又はイソステアリルグリセリル、任意の油剤、色材、及び粉体を添加し、成分が均一に分散するまで撹拌混合することにより得ることができる。
【0085】
本発明の皮膚外用組成物は、唇用化粧料に応用することが好ましい。唇用化粧料としては、リップグロス、口紅(液状、固形状のもの双方を含む)、リップクリームを例示することができる。
本発明の唇用化粧料は、塗布後の乾燥感がなく、さらにロングラスティング効果、及び製剤の経時安定性に優れる。
【実施例0086】
<試験例1>リキッドタイプの口紅の評価
下記表1に示す油剤、色材、及び粉体を混合し、均一に分散するまで撹拌混合することで、実施例1~5及び比較例1~4のリキッドタイプの口紅を調製した。実施例及び比較例においては、エステル化合物としてポリリシノレイン酸ポリグリセリル-5又はトリポリヒドロキシステアリン酸ジペンタエリスリチルを用いた。
【0087】
【表1】
【0088】
このようにして調製した実施例1~5及び比較例1~4のリキッドタイプの口紅について、以下の基準により製剤のロングラスティング効果、塗布後の乾燥感のなさ(乾燥耐性)、及び製剤の経時安定性について評価した。結果を表1に示す。
【0089】
(ロングラスティング効果)
腕に調製した口紅を塗布し、この塗布面を測色計(コニカミノルタ株式会社製 分光測色計CM-600d)を用い測定した(1)。(1)の塗布面に純水を適量噴霧した後、塗布面に対し均一に一定荷重をかけてティッシュオフした(2)。(2)の塗布面を測色した後、オリーブオイルを塗布し(2)と同一手順でティッシュオフし再度塗布面を測色した(3)。
(1)~(3)のデータから色差ΔEを算出するともに、熟練の複数名の評価者が目視にて相対評価したスコアを◎~×で表した。
◎・・・目視で色残りがはっきりとわかり、ΔEは4.0以下である。
〇・・・目視でやや色落ちが感じられ、ΔEは5.0~7.0である。
△・・・目視によりかなり色落ちが感じられ、ΔEは8.0以上である。
×・・・目視で色残りが確認できず、ΔEをとるまでもない。
(乾燥耐性)
唇に調製した口紅を塗布し、2時間後の乾燥感を、熟練の複数名の評価者が評価した。乾燥感を感じる市場品と比較するために、唇の半分には市場品を、更に半分には作製した口紅を塗布した。
◎・・・乾燥を全く感じず、唇への保護感があり、塗布した口紅もよく残っている。唇の外観も乾燥感を感じない。
〇・・・乾燥を感じず、唇への保護感はあるが、塗布した口紅は全体的に薄くなっている。唇の外観も乾燥感を感じない。
△・・・乾燥を感じにくく、塗布した口紅は唇の一部にのみ膜が残存し口紅が塗布されている感じは残るが、唇への保護感を感じない。唇の外観は乾燥感をやや感じる。
×・・・乾燥を感じ、唇への保護感が無く唇表面の皮膚が割れるような感覚があり、塗布した口紅は残っていない。また外観も乾燥感を感じる。
(製剤の経時安定性)
調製したリキッドタイプの口紅を熟練の複数名の評価者に観察させ、以下の基準で製剤の経時安定性を評価した。
◎・・・時間がたっても常に製剤の離しょうは見られない。
〇・・・時間がたつとやや製剤の離しょうが見られる。
△・・・時間がたつと製剤の離しょうが見られる。
×・・・調製直後から常に離しょうが見られる。
【0090】
表1の実施例1~5に示すとおり、(エチレン/プロピレン)コポリマーと、エステル化合物を組み合わせて用いることで、ロングラスティング効果、乾燥耐性、及び製剤の経時安定性に優れることがわかった。
【0091】
一方、(エチレン/プロピレン)コポリマー、エステル化合物の何れも配合せず、代わりにパルミチン酸デキストリン(多糖脂肪酸エステルからなるゲル化剤)と極性油剤を比較的多量に配合した比較例1は、ロングラスティング効果に優れるが、乾燥耐性及び製剤の経時安定性に劣っていた。
【0092】
比較例2は、実施例1の(エチレン/プロピレン)コポリマーに代えて、パルミチン酸デキストリンを配合した口紅である。実施例1と比較例2を比較したところ、比較例2は実施例1よりもロングラスティング効果及び製剤の経時安定性に劣る結果となった。
比較例2にさらにフェノール変性シリコーンを加えた比較例4は、より乾燥耐性、及び製剤の安定性に劣る結果となった。
【0093】
比較例3は、(エチレン/プロピレン)コポリマーを配合し、エステル化合物を配合しない口紅である。実施例1~5と比較例3を比較すると、(エチレン/プロピレン)コポリマーとエステル化合物を同時に配合することで、より優れたロングラスティング効果、乾燥耐性、及び製剤安定性を発揮することが明らかとなった。
【0094】
<試験例2>リキッドタイプの口紅の二次付着レス効果の評価
ロングラスティング効果を有するリキッドタイプの口紅について、さらに下記表2に示すシリコーン油剤を加え、二次付着レス効果について評価した。
すなわち、下記表2に示す組成に従い、試験例1と同様の手順で実施例6~10を調製した。得られたリキッドタイプの口紅について、下記の評価基準に従って二次付着レス効果を評価した。
【0095】
(二次付着レス効果)
ドクタープレート(2ML)を用いて、調製した口紅をバイオプレートに塗布した。室温下で一分間放置後、バイオプレートの塗布面に約500gのアクリル白板を載せ、口紅の色移りの度合いを目視にて評価した。
1・・・アクリル白板の全面に色移りが見られる。
2・・・アクリル白板の一部に色移りが見られる。
3・・・アクリル白板に色移りが見られないか、又は極わずかに色移りが見られる。
【0096】
【表2】
【0097】
表2に示す通り、ジフェニルジメチコン又はトリメチルシロキシフェニルジメチコンを含む実施例6~10は、優れた二次付着レス効果を示した。特に、ジフェニルジメチコン又はトリメチルシロキシフェニルジメチコンの含有量が30質量%以上である実施例3及び4は、特に優れた二次付着レス効果を示した。
一方、ジフェニルジメチコン又はトリメチルシロキシフェニルジメチコンの含有量が5質量%である実施例12、及びジフェニルジメチコンを含まない実施例13は、二次付着レス効果に劣ることが明らかとなった。
【0098】
また、実施例11より、ジフェニルジメチコン又はトリメチルシロキシフェニルジメチコンを含む形態であっても、多量のトリエチルヘキサノインを含む場合は、二次付着レス効果に劣ることが明らかとなった。
したがって、ジフェニルジメチコン又はトリメチルシロキシフェニルジメチコンを含み、トリエチルヘキサノインを極力含まないことが、二次付着レス効果の観点から好ましいことがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0099】
本発明の皮膚外用組成物は、唇用化粧料に応用することができる。