(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022053344
(43)【公開日】2022-04-05
(54)【発明の名称】廃水処理方法
(51)【国際特許分類】
C02F 1/56 20060101AFI20220329BHJP
【FI】
C02F1/56 F
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020160136
(22)【出願日】2020-09-24
(71)【出願人】
【識別番号】000154727
【氏名又は名称】株式会社片山化学工業研究所
(71)【出願人】
【識別番号】505112048
【氏名又は名称】ナルコジャパン合同会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】特許業務法人 安富国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】加藤 雅敏
【テーマコード(参考)】
4D015
【Fターム(参考)】
4D015BA05
4D015BA06
4D015BA09
4D015BA19
4D015BB09
4D015BB12
4D015BB14
4D015CA06
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4D015DA15
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4D015DB15
4D015DB18
4D015DB19
4D015DB24
4D015DB25
4D015DC06
4D015DC07
4D015DC08
4D015EA32
4D015EA33
4D015FA02
4D015FA12
4D015FA16
(57)【要約】
【課題】油分と、懸濁物質及び/又は油分結合懸濁物質とを含む廃水を、水と、浮上分離される油分と、油含有率の低い懸濁物質とに分離する廃水処理方法を提供する。
【解決手段】油分と、懸濁物質及び/又は油分結合懸濁物質とを含む廃水中の油分濃度及び懸濁物質濃度を低減する廃水処理方法であって、上記油分及び/又は上記懸濁物質が生じる工程、並びに、上記油分、上記懸濁物質及び/又は上記油分結合懸濁物質を含む廃水を有する工程に供給される供給水の少なくとも1カ所に、油分離剤を添加する工程を有し、上記油分離剤は、両性高分子化合物及び/又はカチオン性高分子化合物であり、上記供給水の油分濃度が5ppm以下であり、懸濁物質濃度が20ppm以下であることを特徴とする廃水処理方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
油分と、懸濁物質及び/又は油分結合懸濁物質とを含む廃水中の油分濃度及び懸濁物質濃度を低減する廃水処理方法であって、
前記油分及び/又は前記懸濁物質が生じる工程、並びに、前記油分、前記懸濁物質及び/又は前記油分結合懸濁物質を含む廃水を有する工程に供給される供給水の少なくとも1カ所に、油分離剤を添加する工程を有し、
前記油分離剤は、両性高分子化合物及び/又はカチオン性高分子化合物であり、
前記供給水の油分濃度が5ppm以下であり、懸濁物質濃度が20ppm以下である
ことを特徴とする廃水処理方法。
【請求項2】
製鉄工業における連続鋳造設備又は圧延設備における直接冷却水系で使用される請求項1に記載の廃水処理方法。
【請求項3】
供給水として、請求項1又は2に記載の廃水処理方法から得られた処理水を使用する廃水処理方法。
【請求項4】
廃水から分離された油分及び/又は懸濁物質を再利用するために使用される請求項1、2又は3に記載の廃水処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、廃水中の油分濃度及び懸濁物質濃度を低減する廃水処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
シリコン製造加工工場、セラミックス製造加工工場、金属製造加工工場、金属精錬工場等の加工・精錬工場では、切削加工や製造工程において水と切削油や潤滑油等とが多用されている。また、これらの加工・精錬工場では、油分と、切削加工や製造工程で生じる粉塵(例えば、石炭粉、鉱石粉、無機化合物粉、金属粉が単独あるいは複数種類で混じりあった粉塵)とを含む工程水や廃水が発生する。そのため、これらの設備では油分が付着又は結合した粉塵(水中では油分が付着又は結合した懸濁物質)と、油分等とを含む工程水や廃水の水処理が、廃棄やリサイクルの際の技術課題となることが多い。このような技術課題の解決のためには、工程水や廃水中の油分と懸濁粒子に付着又は結合する油分とを分離浮上させ、懸濁粒子を沈降させることにより、清澄な水と浮上する形で分離される油分と油含有率の低い懸濁物質とに分離する水処理方法が必要となる。
【0003】
一般的に、油分と油分の付着又は結合した粉塵(水中では油の付着又は結合した懸濁物質)とを含む廃水や工程水は、アルミや鉄を含む無機薬品や高分子凝集剤で処理され、スラッジとしてシックナーや加圧浮上装置において沈降させたり浮上させたりして分離される。また、工程水や廃水中の懸濁物質は油と結合して含油スラッジとなっている場合が多いが、油分と結合している懸濁物質を油と懸濁物質とに分離処理することは困難であるため、一般的には、含油スラッジとして沈降分離あるいは浮上分離させることにより処理されている。
【0004】
また、製鉄所のような金属製造工程では、溶融した鉄を鋳造する工程や高温の半製品を圧延する工程があり、冷却のための水が循環している。これらの冷却水は高温の鋼材にスプレーされた後、下部の樋に集められてスケールピットや横流沈殿池に送られ、有機系凝集剤や無機系凝集剤で処理され、得られた処理水は冷却後、直接冷却水として再使用されている。
特許文献1~4では、このような直接冷却水系の廃水処理として、直接冷却水に含まれる粒径が50μm以上の金属粉や油分等の粗大な懸濁物質(粗大SS)と粒径が50μmに満たない微細な懸濁物質(微細SS)とを同一の処理で凝集・凝結・沈降させ、同時に除去する技術を開示している。これらの直接冷却水の処理方法では、粗大SSと微細SSとを含む廃水に特定のポリマーを添加し、スケールピットで油を含む懸濁物質を凝集・凝結・沈降させ、水中から油分等を含む縣濁物質を除去することにより、清澄な処理水を得ようとするものである。
【0005】
上記の油分等を含む粗大SSと微細SSとを同一処理で凝集・凝結・沈降させる処理方法を用いると、スケールピット等に蓄積するスラッジは油分を含有する。ここで、油分を含まないスケール類は、製造工程等において再利用される有用な資源となる。このため、スケールピットに蓄積するスラッジが油分を含有する場合、スラッジを再利用するには油分を分離する必要がある。
【0006】
含油スラッジから油分を分離する方法としては、例えば、含油スラッジに抽出剤として有機溶剤を混合し強撹拌することにより、含油スラッジから有機溶剤に油分を抽出する方法がある(特許文献5参照)。しかし、含油スラッジには水分が含まれているため、このような処理では、安定化したエマルションが形成される。このような安定化したエマルションを破壊(解乳化)するには、多重円盤型の遠心分離機が必要となり、設備投資費用が高額化するという問題がある(特許文献6及び7参照)。
【0007】
さらに、含油スラッジは、製鉄所における沈殿池や濃縮槽等の槽に一時的に貯留され、廃棄のために処理される際や製鉄原料のために処理される際には処理施設に運搬される。しかし、含油スラッジは含水率が高く、流動しやすいものが多いため、運搬時に含油スラッジ、及び、含油スラッジに含まれる油分が流出することが懸念される。そのため、含油スラッジは、油分を含有しないスラッジ等、そのまま製鉄原料として利用されるスラッジと比べて、運搬の際の運搬量や乾燥等の制限を受けることになる。そこで、含油スラッジを運搬しやすい形態にすることも必要とされている(特許文献8)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第6068112号公報
【特許文献2】特許第6374157号公報
【特許文献3】特許第6374352号公報
【特許文献4】特許第6374351号公報
【特許文献5】特開2015-132011号公報
【特許文献6】特開平3-238059号公報
【特許文献7】特開2005-349371号公報
【特許文献8】特開2019-98327号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
シリコン製造加工工場、セラミックス製造加工工場、金属製造加工工場、金属精錬工場等の加工・精錬工場で取り扱われる水(工程水や廃水)は、上述の通り、油分と、切削加工や製造工程で生じる粉塵(例えば、石炭粉、鉱石粉、無機化合物粉、金属粉が単独あるいは複数種類で混じりあった粉塵)とを含み、水中では、油分と上記粉塵(水中では懸濁物質)とが分離及び/又は結合した状態で存在している。このような油分と、懸濁物質及び/又は油分結合懸濁物質とを含む廃水を、清浄な水と、浮上分離される油分と、油含有率の低い懸濁物質とに分離することできれば、効果的な廃水処理方法を実現することができる。また、上記のような油分と、懸濁物質及び/又は油分結合物質とを含む廃水を、冷却水として再利用するような設備において、特に効果的な廃水処理方法を実現することができる。
【0010】
さらに上記のような水処理方法によると、処理後に得られる懸濁物質中の油含有率が低い為、含油スラッジとして廃棄される産業廃棄物が減少し、含油廃水処理設備に与える設備負荷と処理コストとを大幅に削減できる。そして、回収される懸濁物質(沈殿スラッジ、沈降スラッジともいう。)の油含有率が低減すると、該沈殿スラッジを原料等としてリサイクルが可能となる。さらに、同時に回収される浮上油分についても燃料として再利用することが可能となる。
【0011】
また、多くの工場では、油分と懸濁物質とを含む廃水や工程水は再利用されることが少ないが、製鉄所のような特殊な金属製造工程では、溶融した鉄を鋳造する工程や高温の半製品を圧延する工程があり、冷却のための水が循環している。これらの直接系循環冷却水は高温の鋼材にスプレーされ下部の樋に集められてスケールピットや横流沈殿池に送られ、ろ過設備や冷却塔を経て処理されている。しかし、従来の処理方法では、無機化合物、金属又は金属酸化物粒子と油分とが結合すると、これらを分離することは困難であり、有効な分離方法の開発が望まれている。また、従来の処理方法によると、循環回収される水中に油分が残留することが多く、廃水処理におけるCODの問題があった。そのため、無機化合物等と油との分離、及び、処理後の水中における油分の低減が必要とされている。
【0012】
本発明の目的は、油分と、懸濁物質及び/又は油分結合懸濁物質とを含む廃水を、水と、浮上分離される油分と、油含有率の低い懸濁物質とに分離する廃水処理方法を提供することである。
また本発明の目的は、油分と懸濁物質及び/又は油分結合懸濁物質とを含む廃水の再利用方法、油分と懸濁物質及び/又は油分結合懸濁物質とを含む廃水における油分及び/又は懸濁物質の再利用方法を提供することでもある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、油分と、懸濁物質及び/又は油分結合懸濁物質とを含む廃水を処理するためには、油分及び/又は懸濁物質が生じる工程に供給される供給水に特定の油分離剤を予め添加しておくことにより、油分と、懸濁物質及び/又は油分結合懸濁物質とを含む廃水の処理において、効果的に廃水中の油分濃度及び懸濁物質濃度を低減できることを見出し、本発明を完成させた。
【0014】
すなわち、本発明は、油分と、懸濁物質及び/又は油分結合懸濁物質とを含む廃水中の油分濃度及び懸濁物質濃度を低減する廃水処理方法であって、上記油分及び/又は上記懸濁物質が生じる工程、並びに、上記油分、上記懸濁物質及び/又は上記油分結合懸濁物質を含む廃水を有する工程に供給される供給水の少なくとも1カ所に、油分離剤を添加する工程を有し、上記油分離剤は、両性高分子化合物及び/又はカチオン性高分子化合物であり、上記供給水の油分濃度が5ppm以下であり、懸濁物質濃度が20ppm以下であることを特徴とする廃水処理方法である。
本発明の廃水処理方法は、製鉄工業における連続鋳造設備又は圧延設備における直接冷却水系で使用されることが好ましい。
また、本発明の廃水処理方法は、供給水として、上記廃水処理方法から得られた処理水を使用することが好ましい。
また、本発明の廃水処理方法は、廃水から分離された油分及び/又は懸濁物質を再利用するために使用されることが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によると、油分と、懸濁物質及び/又は油分結合懸濁物質とを含む廃水を、水と、浮上分離される油分と、油含有率の低い懸濁物質とに分離する廃水処理方法を提供することができる。
また本発明によると、油分と懸濁物質及び/又は油分結合懸濁物質とを含む廃水の再利用方法、油分と懸濁物質及び/又は油分結合懸濁物質とを含む廃水における油分及び/又は懸濁物質の再利用方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の廃水処理方法を、連続鋳造工程の直接冷却水系に適用した場合の好適な一例を示す模式図である。
【
図2】本発明の廃水処理方法を、圧延工程の直接冷却水系に適用した場合の好適な一例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を詳細に説明するが、本発明は以下の説明に限定されるものではない。
【0018】
本発明は、油分と、懸濁物質及び/又は油分結合懸濁物質とを含む廃水中の油分濃度及び懸濁物質濃度を低減する廃水処理方法であって、上記油分及び/又は上記懸濁物質が生じる工程に供給される供給水に、油分離剤を添加する工程を有し、上記油分離剤は、両性高分子化合物及び/又はカチオン性高分子化合物であり、上記供給水の油分濃度が5ppm以下であり、懸濁物質濃度が20ppm以下であることを特徴とする廃水処理方法である。
【0019】
本発明者らは、上述の従来技術の課題について検討し、設備投資費用等の高額化を招くことなく、容易な方法で、より効果的に、油分と懸濁物質及び/又は油分結合懸濁物質とを含む廃水を、水と、浮上分離される油分と、油含有率の低い懸濁物質とに分離する廃水処理方法について検討した。そして、本課題を達成するためには、次の3つの技術が重要であることを見出した。
一つ目は廃水中の油分を浮上分離する技術、二つ目は廃水中の懸濁物質を沈降分離する技術、そして三つ目は油分結合懸濁物質(含油スラッジ)を油分と懸濁物質とに分離する技術である。
上記一つ目の技術及び二つ目の技術については、従来から、油分の浮上分離及び懸濁物質の沈降分離には、有機化合物からなる油分離剤、凝結剤や凝集剤が有効であることが示されてきた。しかし、同じ油分離剤を使用して充分な油分の浮上分離効果及び充分な懸濁物質の沈降分離効果が得られる技術は開示されていなかった。なお、従来から、廃水中の油分の浮上分離及び懸濁物質の沈降分離のために、カチオン系高分子化合物、カチオンアニオンの両性の高分子化合物が用いられているが、単純にこれらの薬剤を廃水に添加するのみでは、油分の浮上分離効果及び懸濁物質の沈降分離効果が充分ではなかった。
そして三つ目の油分結合懸濁物質(含油スラッジ)を油分と懸濁物質とに分離する技術は、安価で実用的な解決手段が提案されていない。
【0020】
本発明者は、これらの問題を解決するためさらに検討し、まったく新しい油分離剤の添加方法及び使用方法を開発し、この添加方法及び使用方法に適合する油分離剤を見出すことにより、本発明を完成させた。
従来、油分離剤は油や懸濁物質等が存在する含油廃水や含油工程水に添加されてきたが、本発明者は、特定の油分離剤を、油分及び/又は懸濁物質が生じる工程、並びに、上記油分、上記懸濁物質及び/又は上記油分結合懸濁物質を含む廃水を有する工程の少なくとも1カ所に供給される供給水であって、油分濃度が5ppm以下であり、懸濁物質濃度が20ppm以下である清澄な供給水に添加することにより、油分の懸濁物質への付着又は結合を防止できることを見出した。そして、上記三つ目の油分結合懸濁物質(含油スラッジ)を油分と懸濁物質とに分離する技術については、廃水中で油分と懸濁物質とが付着又は結合し、油分結合懸濁物質になることを防止することで、分離が困難な油分結合懸濁物質の発生を抑制し、廃水中で油分と懸濁物質とを分離状態で維持することにより達成した。なお、上記特定の油分離剤は、両性高分子化合物及び/又はカチオン性高分子化合物である。
【0021】
本発明における油分離剤は、両性高分子化合物及び/又はカチオン性高分子化合物であれば特に限定されるものではない。
両性高分子化合物としては、例えば、トリアルキルアミンとアクリル酸の共重合物及びジアリルジメチルアンモニウムクロライドとアクリル酸の共重合物が挙げられ、これらからなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。
また、上記カチオン性高分子化合物としては、例えば、アルキルアミン・エピクロルヒドリン縮合物、ポリエチレンイミン、アルキレンジクロライド・ポリアルキレンポリアミン縮合物、ジシアンジクロライド・ポリアルキレンポリアミン縮合物、ポリジメチルアミノエチルメタクリレート、ポリジアリルジメチルアンモニウムクロライド、アクリルアミドとジアリルジメチルアンモニウムクロライドの共重合物、アクリルアミドと4級アンモニウム塩を含むアクリロイルオキシエチル化合物の共重合物等が挙げられ、これらからなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。
特に懸濁物質の沈降と油分離には、両性高分子化合物であるトリアルキルアミンとアクリル酸の共重合物及びジアリルジメチルアンモニウムクロライドとアクリル酸の共重合物からなる群より選択される少なくとも1種、及び/又は、カチオン性高分子化合物であるポリジアリルジメチルアンモニウムクロライド、アクリルアミドとジアリルジメチルアンモニウムクロライドの共重合物及びアクリルアミドと4級アンモニウム塩を含むアクリロイルオキシエチル化合物の共重合物からなる群より選択される少なくとも1種を用いることが好ましい。
【0022】
本発明における油分離剤は、両性高分子化合物及び/又はカチオン性高分子化合物として、上述の構造単位から得られる共重合物や縮合物を用いることが好ましい。また、上記構造単位から誘導される共重合体や縮合物の重量平均分子量が、30万~1500万であることが好ましい。重量平均分子量が上記範囲内よりも小さ過ぎると充分な懸濁物質の沈降分離効果が得られず、一方、大き過ぎるとその粘度が上昇し、使用し難くなる可能性があるためである。なお、上記構造単位から誘導される共重合体や縮合物の重量平均分子量は、40万~1000万であることがより好ましい。
【0023】
本発明の廃水処理方法における油分離剤の添加量は、供給水に油分離剤を添加した後に混入する油分と懸濁物質との量により決定されてもよいが、0.05~5ppmの範囲で添加されることが好ましく、0.5~3ppmの範囲で添加されることがより好ましい。
【0024】
本発明の廃水処理方法は、上記油分離剤が、油分及び/又は懸濁物質が生じる工程、並びに、前記油分、前記懸濁物質及び/又は前記油分結合懸濁物質を含む廃水を有する工程に供給される供給水の少なくとも一箇所で、油分濃度が5ppm以下であり、懸濁物質濃度が20ppm以下の清澄な供給水に添加されるものであればよく、供給水に油分及び/又は懸濁物質が混入した後の廃水(油分及び/又は懸濁物質が混入した直接水とも表現し、以下単に直接水とも表現する。)に油分離剤が添加されるか否かは特に限定されない。なお、本発明の廃水処理方法は、油分離剤の使用量を抑制し、より高い分離効果を期待する観点から、油分及び/又は懸濁物質が生じる工程、並びに、前記油分、前記懸濁物質及び/又は前記油分結合懸濁物質を含む廃水を有する工程に供給される供給水の少なくとも一箇所で、油分濃度が5ppm以下であり、懸濁物質濃度が20ppm以下の清澄な供給水にのみ油分離剤が添加されることがより好ましい。
【0025】
また、本発明の廃水処理方法は、本発明の効果を奏する範囲内であれば、上記油分離剤の他に、他の薬剤を使用してもよい。他の薬剤としては、例えば、アニオン高分子やポリ塩化アルミや硫酸鉄のような無機系の凝結剤が挙げられる。これらの無機系の凝結剤は、油分及び/又は懸濁物質が生じる工程、並びに、前記油分、前記懸濁物質及び/又は前記油分結合懸濁物質を含む廃水を有する工程に供給される供給水の少なくとも一箇所で、油分濃度が5ppm以下であり、懸濁物質濃度が20ppm以下の供給水(以下、単に清澄な供給水ともいう。)に添加されてもよく、油分及び/又は懸濁物質が混入した後の廃水(直接水)に添加されてもよいが、薬剤使用量を抑制し、より高い分離効果を期待する観点から、油分濃度が5ppm以下であり、懸濁物質濃度が20ppm以下の清澄な上記供給水にのみ他の薬剤が添加されることがより好ましい。
【0026】
本発明の廃水処理方法において、上記油分離剤が、油分及び/又は懸濁物質が生じる工程、並びに、前記油分、前記懸濁物質及び/又は前記油分結合懸濁物質を含む廃水を有する工程に供給される供給水の少なくとも一箇所で、油分濃度が5ppm以下(好ましくは3ppm以下)であり、懸濁物質濃度が20ppm以下(好ましくは10ppm以下)の供給水(清澄な供給水)に添加される位置としては、例えば、
図1及び
図2中に示す薬品注入位置等が挙げられる。
図1及び
図2に示すような薬品注入位置において油分離剤を清澄な供給水に添加することにより、下流の工程で生じる油分と懸濁物質との付着又は結合を防止し、油分結合懸濁物質の生成を抑制し、廃水中の油分及び懸濁物質を分離した状態で維持することができる。
【0027】
本発明の廃水処理方法において、上記油分離剤は、油分及び/又は懸濁物質が生じる工程、並びに、前記油分、前記懸濁物質及び/又は前記油分結合懸濁物質を含む廃水を有する工程の少なくとも1カ所に供給される供給水で、油分濃度が5ppm以下(好ましくは3ppm以下)であり、懸濁物質濃度が20ppm以下(好ましくは10ppm以下)の供給水(清澄な供給水)が、プラント内に供給される前の効率的に分散混合される位置で添加されることが好ましい。例えば、プラントに送水される清澄な供給水の送水ラインや、スケールスルース又はスプレーへ送水される清澄な供給水の送水ラインに、薬注クイル又は加圧水と共に薬品を混合するタイプの薬注ノズルを用いて、上記油分離剤を注入する方法や、ミキサーを含む薬品の希釈混合ラインを用い、上記油分離剤を注入する方法には、油分離剤が供給水中に充分混合され本発明の効果がより有効に発揮される点で好ましい。そのため、上記油分離剤は、薬注クイル又は加圧水と共に薬品を混合するタイプの薬注ノズルを用いて添加されることが好ましく、また、供給水の送水ラインのなかでもミキサーを含む混合ラインに添加されることが好ましい。
【0028】
なお、本発明の廃水処理方法における供給水の水質は、油分濃度が5ppm以下であり、懸濁物質濃度が20ppm以下である。油分濃度及び懸濁物質濃度は本発明の属する分野における通常の方法を用いて測定することができ、特に限定されない。例えば、油分濃度は、JIS K 0101又はJIS K 0102に基づきN-ヘキサン抽出物質測定法によって測定することができ、また、懸濁物質濃度は、GFPろ過重量法、MFろ過重量法等により測定することができる。本発明の廃水処理方法における供給水の水質は、油分濃度が3ppm以下であることが好ましく、懸濁物質濃度が10ppm以下あることが好ましい。
【0029】
多くの工場では、油分と懸濁物質とを含む含油廃水や含油工程水は再利用されることが少ないが、製鉄所のような特殊な金属製造工程では、溶融した鉄を鋳造する工程や高温の半製品を圧延する工程があり、冷却のためのスプレー水が循環している。なお、
図1は、本発明の廃水処理方法を、連続鋳造工程の直接冷却水系に適用した場合の好適な一例を示す模式図である。また、
図2は、本発明の廃水処理方法を、圧延工程の直接冷却水系に適用した場合の好適な一例を示す模式図である。
これらの工程では、高温の中間製品や鋼材に冷却水がスプレーされ下部の樋(スケールスルース)に油分、懸濁物質及び/又は油分結合懸濁物質を含む冷却水が集められ、スケールピットや横流沈殿池に送られ、ろ過設備や冷却塔を経て処理された後、再度冷却水として再利用されている。本発明の廃水処理方法によれば、油分と、懸濁物質及び/又は油分結合懸濁物質とを含む廃水を、水と、浮上分離される油分と、油含有率の低い懸濁物質とに効果的に分離できるため、このような連続鋳造設備または圧延設備の直接冷却水系の処理に好適に使用することができる。
【0030】
また、本発明の廃水処理方法によると、廃水中で油分と懸濁物質との付着又は結合を抑制し、廃水中で油分と懸濁物質とが分離した状態で維持されるため、上記スケールピットや横流沈殿池において、効率的に油分の浮上分離及び懸濁物質の沈降分離が達成される。そのため、本発明の廃水処理方法から得られる処理水中の油分濃度及び懸濁物質濃度が低く、続くろ過設備や冷却塔における処理負荷を大幅に削減することができる。
さらに、配管の閉塞や汚れの減少による操業効率の向上、ろ過器や横流沈殿等の水処理設備への負荷の低下による操業コスト低減と操業効率の向上等充分な効果が得られる。
よって、本発明の廃水処理方法は、製鉄工業における連続鋳造設備及び/又は圧延設備における直接冷却水系で使用されることが好ましい。
また、本発明の廃水処理方法は、設備負荷低減のために使用されることが好ましい。
【0031】
また、本発明の廃水処理方法によると、油分濃度及び懸濁物質濃度が低い処理水を得ることができるため、得られた処理水は、再度供給水として使用されることが好ましい。本発明の廃水処理方法が、該廃水処理方法により得られた処理水を再利用するものである場合、処理水中の油分濃度は5ppm以下であって懸濁物質濃度は20ppm以下であるが、処理水中の油分濃度が3ppm以下であって懸濁物質濃度が10ppm以下であることが好ましい。
【0032】
本発明の廃水処理方法は、油分及び/又は懸濁物質が生じる工程、並びに、上記油分、上記懸濁物質及び/又は上記油分結合懸濁物質を含む廃水(直接水)を有する工程に供給される供給水の少なくとも1カ所に、油分離剤を添加する工程を有する。本構成は、油分及び/又は懸濁物質が生じる工程に水を供給する供給ライン、並びに、油分、懸濁物質及び/又は油分結合懸濁物質を含む廃水を有する工程に水を供給する供給ラインの少なくとも1カ所に、油分離剤を添加する工程と言い換えることができる。さらに、供給水として、本発明の廃水処理方法により得られた処理水を使用する場合には、上記供給ラインを、処理水を供給する供給ラインと言い換えることができる。本明細書において、油分離剤が添加される上記供給ラインで輸送される供給水及び処理水は、油分濃度が5ppm以下であり、懸濁物質濃度が20ppm以下の供給水又は処理水である。
【0033】
また、本発明の廃水処理方法によれば、油分と、懸濁物質及び/又は油分結合懸濁物質とを含む廃水を、水と、浮上分離される油分と、油含有率の低い懸濁物質とに効果的に分離できるため、本発明の廃水処理方法により得られた水(処理水)、浮上分離される油分、油含有率の低い懸濁物質は、再び、供給水、原料又は燃料として再利用されることが好ましい。また、本発明の廃水処理方法は、廃水から分離された油分及び/又は懸濁物質を再利用するために使用されることが好ましい。油含有率の低い懸濁物質は、各工場の原料として再利用することが可能であり、リサイクル原料として他の工場で使用することも可能である。
【0034】
一態様として、本発明は、油分と、懸濁物質及び/又は油分結合懸濁物質とを含む廃水中の油分及び/又は懸濁物質を再利用する方法であって、上記油分及び/又は上記懸濁物質が生じる工程、並びに、前記油分、前記懸濁物質及び/又は前記油分結合懸濁物質を含む廃水を有する工程に供給される供給水の少なくとも1カ所に、油分離剤を添加する工程を有し、上記油分離剤は、両性高分子化合物及び/又はカチオン性高分子化合物であり、上記供給水の油分濃度が5ppm以下であり、懸濁物質濃度が20ppm以下であることを特徴とする再利用方法であってもよい。
本発明が再利用方法である場合、使用される油分離剤の好適な態様、油分離剤の好適な添加位置及び添加方法、供給水の水質の測定方法、その他使用される薬剤等に関する説明は、上述の本発明の廃水処理方法におけるものと同様である。
【0035】
本発明の廃水処理方法、及び、再利用方法によれば、油分と、懸濁物質及び/又は油分結合懸濁物質とを含む廃水を、水と、浮上分離される油分と、油含有率の低い懸濁物質とに効果的に分離できる。本発明において、含油率の低い懸濁物質とは、油の含有率が、1%以下の懸濁物質である。懸濁物質における油の含油率は、重量比率であり、ノルマルヘキサン抽出物としてJIS K 0101又はJIS K 0102に基づいて測定することができる。なお、廃水中の懸濁物質が沈降分離されたものをスラッジという。
【0036】
図1は、本発明の廃水処理方法を、連続鋳造工程の直接冷却水系に適用した場合の好適な一例を示す模式図である。
図1に示したように、連続鋳造装置1及び/又はスケールスルース2に供給される供給水は、スケールスルース2の内部を流動しながら、スケールピット3へと移動する。
図1に示した例では、油分離剤(薬品)が、連続鋳造装置1及びスケールスルース2に添加される供給水の少なくとも1カ所に添加されている。油分離剤が、連続鋳造装置1に供給される供給水に添加される場合、油分離剤は、供給水が連続鋳造装置1に供給される際のノズルで攪拌混合され、供給水中に充分拡散した状態で連続鋳造装置1に供給される。これにより、スケールスルース2において廃水中の油分及び懸濁物質の付着又は結合が抑制され、廃水中の油分及び懸濁物質が分離した状態でスケールピット3に送られる。また、油分離剤がスケールスルース2に供給される供給水に添加される場合、油分離剤は、供給水がスケールスルース2に供給される際のポンプやその道中の配管等で攪拌混合され、供給水中に充分拡散した状態でスケールスルース2に供給される。これにより、スケールスルース2において廃水中の油分及び懸濁物質の付着又は結合が抑制され、廃水中の油分及び懸濁物質が分離した状態でスケールピット3に送られる。スケールピット3内では、廃水中の油分及び懸濁物質の凝結・凝集したものが極めて速やかに分離され、油分は浮上分離され、懸濁物質は沈降分離する。そのため、スケールピット3内の中間層は清澄な処理水となる。なお、処理水をさらに横流沈殿池4に送り、更に油分と懸濁物質とを分離する工程を経てもよい。処理水は、ろ過機5及び冷却塔6を経て、直接冷却水として再びプラントへ給水される。
図2は、本発明の廃水処理方法を、圧延工程の直接冷却水系に適用した場合の好適な一例を示す模式図である。上述の
図1における説明は、
図1の連続鋳造装置1を
図2の圧延設備7に読み替えることにより、
図2の説明とすることができる。
【実施例0037】
以下、実施例を用いて本発明をさらに説明する。ただし、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0038】
<薬品の確認試験>
(実施例1及び2、並びに、比較例1~3)
本発明の効果を確認するためにガラスボトルによる注入順を変えた時の薬品の効果確認試験を行った。
試験手順は、清澄な水(大阪市水道水)300mlが入った500mlガラスボトルに表1に示す薬品(カチオン性高分子化合物、両性高分子化合物)(2ppm)と、懸濁物質として100μm以下の微粒子状の鉄と酸化鉄からなる混合物(1g)と、油分として潤滑油(0.5g)とを、表1に示す順序で添加した。そして、15秒間振とう攪拌を行い、15分間静置後、水中の懸濁物質濃度(SS(ppm))とノルマルヘキサン抽出油分(油分(ppm))と濁度(FTU)を、JIS K 0101又はJIS K 0102に基づいて測定した。(以下の試験でも同様。)なお、薬品、懸濁物質及び油分を下記表1に記載の順序で添加した際には、上記1種を添加した後に15秒間振とう攪拌を行い、その後次の添加物を添加した。なお、確認試験は全て常温(25℃)下で行われた。また、上記清澄な水(大阪市水道水)の油分濃度(油分(ppm))は、1ppm未満であり、懸濁物質濃度(SS(ppm))は、3ppm未満であった。
測定結果を下記表2に示す。なお、表2で示される測定結果は、n=3の平均値である。
【0039】
薬品は下記のものを使用した。
両性高分子化合物/ジアリルジメチルアンモニウムクロライドとアクリル酸との共重合物(重量平均分子量:250万、ナルコ8190(米国ナルコ社製))
カチオン性高分子化合物/アクリルアミドと4級アンモニウム塩を含むアクリロイルオキシエチル化合物との共重合物(タポリマー)(重量平均分子量:460万、フロクランSC-670((株)片山化学工業研究所製))
【0040】
【0041】
【0042】
表2の結果から、実施例1及び2の水中の懸濁物質濃度(SS(ppm))、ノルマルヘキサン抽出油分濃度(油分(ppm))及び濁度(FTU)は、薬品が添加されていない比較例1にかかる水中の懸濁物質濃度、ノルマルヘキサン抽出油分濃度及び濁度と比較し、いずれも充分に低い数値を示し、油分離剤である高分子化合物を、油分濃度及び懸濁物質濃度が低い清澄な水に、油分及び/又は懸濁物質が混入する前に添加することにより、効果的に水中の油分及び懸濁物質の結合を抑制し、さらに、油分及び懸濁物質を分離した状態で維持することができた。これにより、その後の油分の浮上分離及び懸濁物質の沈降分離が速やかに行われ、試験廃水中の油分濃度及び懸濁物質濃度を効果的に低減することができた。
一方、比較例2及び3にかかる水中の懸濁物質濃度、ノルマルヘキサン抽出油分濃度及び濁度は、薬品が添加されていない比較例1にかかる水中の懸濁物質濃度、ノルマルヘキサン抽出油分濃度及び濁度と比較し、いずれも低い数値を示したものの、充分に低い数値ではなかった。これは、油分離剤である高分子化合物を、油分及び懸濁物質が混入した後に添加したため、油分結合懸濁物質が生じ、その後の油分の浮上分離及び懸濁物質の沈降分離が速やかに行われず、試験廃水中の油分濃度及び懸濁物質濃度が充分に低減されなかったと考えられる。
【0043】
<実機による確認試験>
(実施例3~5、並びに、比較例4及び5)
某製鉄会社の圧延工場の直接冷却水ラインにおいて実機による確認試験を実施した。評価試験前は、圧延工場から排出される、直接冷却水の懸濁物質濃度(SS)や含有油分が上昇傾向にあり、スケールピットや横流沈殿池で沈降したスラッジ(スケール、懸濁物質)をコスト改善の目的で再利用する必要性が生じていた。
実機による確認試験では、表3に示す薬品(カチオン性高分子化合物、両性高分子化合物)を表3に示す添加濃度及び添加位置に加え、横流沈殿池出口における処理水の水質、及び、横流沈殿池における沈殿スラッジの含有油分を測定した。なお、確認試験を行った期間は1カ月であり、各試験開始から1週間ごとに処理水及び沈殿スラッジに対し測定を行った。下記表3に示す懸濁物質濃度(SS(ppm))、油分濃度(油分(ppm))及び沈殿スラッジ油分含油率(%)は、各試験開始から合計4回測定した測定結果の平均値である。また、実施例における薬品を添加した清澄な処理水の油分濃度(油分(ppm))は0.7~1.5であり、懸濁物質濃度(SS(ppm))は、3~5であった。
測定結果を表3に示す。
【0044】
薬品は下記のものを使用した。
カチオン性高分子化合物/アルキルアミン・エピクロルヒドリン縮合物(重量平均分子量:900万)
両性高分子化合物/トリアルキルアミンとアクリル酸の共重合物(重量平均分子量:300万、ナルコ2495(米国ナルコ社製))
カチオン性高分子化合物/アクリルアミドと4級アンモニウム塩を含むアクリロイルオキシエチル化合物の共重合物(タポリマー)(重量平均分子量:460万、フロクランSC-670((株)片山化学工業研究所製))
カチオン性高分子化合物/ポリジアリルジメチルアンモニウムクロライド(重量平均分子量:50万、ナルコ8103Plus(米国ナルコ社製))
【0045】
【0046】
上記表3の結果から、従来の廃水処理に係る比較例4(カチオン性高分子化合物のスケールピット入り口への添加)では横流沈殿池出口の処理水における懸濁物質濃度(SS(ppm))もノルマルヘキサン抽出油分濃度(油分(ppm))も高い値を示しており、工場の環境規制上の基準及び再利用の基準を満たすものではなかった。
また、比較例5(両性高分子化合物のスケールスルースへの添加)では、プラント下部の直接水が落ちる樋(スケールスルース)に薬品(両性高分子化合物)を添加した。横流沈殿池出口の処理水の懸濁物質濃度(SS(ppm)とノルマルヘキサン抽出油分濃度(油分(ppm))の平均値は従来の廃水処理(比較例4)と比較すると改善しているものの、その効果は不充分なものであった。
実施例3では、薬品(両性高分子化合物)を油と懸濁物質とが生じる工程に供給される供給水(具体的には、スプレー水ラインの清澄な処理水供給ライン)に添加した。横流沈殿池出口の処理水の懸濁物質濃度(SS(ppm)とルマルヘキサン抽出油分濃度(油分(ppm))の平均値は比較例4及び比較例5における数値と比較して著しく低下しており、廃水規制にも充分対応できるものであった。そして、このような直接冷却水系の懸濁物質濃度(SS(ppm)とルマルヘキサン抽出油分濃度(油分(ppm))の低減は、実施例4及び実施例5で使用した油分離剤(カチオン性高分子化合物)のスケールスルースに入る前の清澄な処理水供給ラインへの添加においても同等の優れた効果を確認した。
【0047】
また、横流沈殿池で採取された沈殿スラッジの油分(%)は、比較例4の現状のカチオン性高分子化合物による処理では5%以上と高い値でリサイクルには適さないものであった。また、比較例5では、スケールスルースの油分と懸濁物質とを含有した直接水に薬品(両性高分子化合物)を注入し、沈殿スラッジの油分が2%程度まで低下した。
一方、薬品を、スプレー水ラインの清澄な処理水供給ラインに添加した実施例3、スケールスルースに入る前の清澄な処理水供給ラインに添加した実施例4及び5では、沈殿スラッジの油分が1%未満まで低下しており、リサイクル利用可能な程度に沈殿スラッジ中の油分濃度が充分に低下していた。
【0048】
なお、実施例3~5における処理では、清澄な処理水供給ラインに薬品を添加したため、製品の厚板に薬品が直接かかることになったが、製品に対して汚れや腐食等の問題も生じなかった。
【0049】
以上の結果から明らかなように、本発明の廃水処理方法により、処理水の油分濃度及び懸濁物質濃度は、充分に低減され、廃水規制対応や水の再利用が可能となることを確認した。そして沈殿スラッジの油分についても充分に低いレベルで抑えられるために沈殿スラッジの原料としてのリサイクルも可能であることを確認した。