IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ジェイフィルム株式会社の特許一覧

特開2022-53375フィルム、共押出フィルム、包装体、および、袋体
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022053375
(43)【公開日】2022-04-05
(54)【発明の名称】フィルム、共押出フィルム、包装体、および、袋体
(51)【国際特許分類】
   B65D 81/34 20060101AFI20220329BHJP
   B32B 27/32 20060101ALI20220329BHJP
   B29C 48/21 20190101ALI20220329BHJP
   C08J 5/18 20060101ALI20220329BHJP
   C08L 23/08 20060101ALI20220329BHJP
【FI】
B65D81/34 V
B32B27/32 E
B29C48/21
C08J5/18 CES
C08L23/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020160178
(22)【出願日】2020-09-24
(71)【出願人】
【識別番号】591143951
【氏名又は名称】ジェイフィルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100129838
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 典輝
(74)【代理人】
【識別番号】100101203
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100104499
【弁理士】
【氏名又は名称】岸本 達人
(72)【発明者】
【氏名】池澤 泰憲
【テーマコード(参考)】
3E013
4F071
4F100
4F207
4J002
【Fターム(参考)】
3E013BA08
3E013BA15
3E013BB12
3E013BC14
3E013BE01
3E013BF26
4F071AA18
4F071AA19X
4F071AA21
4F071AA82
4F071AA82X
4F071AA88
4F071AA88X
4F071AF19Y
4F071AF30
4F071AH04
4F071BB06
4F071BC01
4F071BC02
4F071BC12
4F100AK03B
4F100AK06A
4F100AK09A
4F100AK63A
4F100AK65A
4F100AK68A
4F100AK71A
4F100BA01
4F100BA02
4F100BA10A
4F100BA10B
4F100EH20A
4F100EH20B
4F100GB16
4F100GB23
4F100JA06A
4F100JA13A
4F100JK06A
4F100JL12A
4F100JN01
4F100YY00A
4F207AA07
4F207AA08
4F207AA19
4F207AA21
4F207AG01
4F207AH54
4F207AR01
4F207AR17
4F207KA01
4F207KA17
4F207KB26
4F207KL88
4F207KM15
4F207KW21
4J002BB051
4J002BB053
4J002BB172
4J002GF00
4J002GG00
(57)【要約】
【課題】包装体に特別な形状や加工を設けず、フィルムの特性によって、電子レンジ加熱した際に、包装体から自然に蒸気が抜け(高温下での自然開封・開口性)、常温下では密封性とイージーピール性を兼備する包装体を形成し得るフィルムを提供する。
【解決手段】少なくともシール層を有するフィルムにおいて、該シール層の組成が、シール層全体を100質量%とした場合に、(a)低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、超低密度ポリエチレン、エチレン-(メタ)アクリル酸エステル共重合体、およびエチレン-酢酸ビニル共重合体の中から選ばれ、且つ密度900~950kg/mのポリエチレン系樹脂30~90質量%、(b)ポリブテン系樹脂5~40質量%、及び(c)密度900kg/m未満のエチレン-α-オレフィン共重合体5~30質量%を含むフィルム。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくともシール層を有するフィルムにおいて、該シール層の組成が、シール層全体を100質量%とした場合に、(a)低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、超低密度ポリエチレン、エチレン-(メタ)アクリル酸エステル共重合体、およびエチレン-酢酸ビニル共重合体の中から選ばれ、且つ密度900~950kg/mのポリエチレン系樹脂30~90質量%、(b)ポリブテン系樹脂5~40質量%、及び(c)密度900kg/m未満のエチレン-α-オレフィン共重合体5~30質量%を含むフィルム。
【請求項2】
25℃条件での剥離強度が5.0~25.0N/15mm幅、および80℃条件での剥離強度が0.4~2.0N/15mm幅である請求項1に記載のフィルム。
【請求項3】
前記(c)エチレン-α-オレフィン共重合体がエチレン-ブテン共重合体である、請求項1または2に記載のフィルム。
【請求項4】
前記(a)ポリエチレン系樹脂のメルトフローレート(MFR)が0.5~20g/10分であり、前記(b)ポリブテン系樹脂のメルトフローレート(MFR)が0.5~10g/10分であり、前記(c)エチレン-α-オレフィン共重合体のメルトフローレート(MFR)が0.1~25g/10分である請求項1~3のいずれか1項に記載のフィルム。
【請求項5】
請求項1~3のいずれか1項に記載のフィルムの前記シール層に隣接してポリオレフィン系樹脂層を有する共押出フィルム。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載のフィルムを用いてなる包装体。
【請求項7】
請求項1~5のいずれか1項に記載のフィルムのシール層同士を対向させてヒートシールさせた袋体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィルム、共押出フィルム、包装体、および、袋体に関する。
【背景技術】
【0002】
調理の簡易化や時間短縮、個食化が進み、原材料や調理済み食品を包装体に収容したまま電子レンジで加温調理することが増加している。食品等の内容物を包装体に収容したまま電子レンジで加温すると、内容物の水分の蒸気により包装体が膨らみ、破裂してしまう。
【0003】
食品等の内容物を包装体に収容したまま電子レンジで加温した場合において、包装体の破裂を防ぐ従来の方法としては、以下が挙げられる。
(1)予め使用者が包装体に切れ込みを入れたり、小孔をあけたりしてから電子レンジにかけるよう、注意指示をつける。
(2)特許文献1~3に記載のように、包装体に蒸気が抜ける通気孔やシール部分を設ける。
(3)特許文献4に記載のように、孔開け加工等の加工を施さずに、密封したまま電子レンジでの加熱を行うことのできる包装フィルムとして、シール層にポリエチレンとポリスチレン、ポリプロピレン等を配合したインフレーションフィルムを用いて、フィルムの流れ方向と垂直方向の剥離強度差を利用する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第06/107048号公報
【特許文献2】特開平10-211972号公報
【特許文献3】特開2010-111440号公報
【特許文献4】特開2002-321326号公報
【特許文献5】特開2002-146343号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記(1)の方法では、切れ込み等を入れる手間がかかる、また、これらの処理をせずに電子レンジにかけて、包装体が破裂し火傷を負う危険があるといった問題がある。
上記(2)の方法では、包装体を作製するための専用の製造部品や製造工程を必要とするなど、製造コストがかかる。
上記(3)の方法では、開口する方向に選択性を持たせる効果は期待されるが、高温下での自然開口を促進する効果は付与されていない。
また、一般的なイージーピール性を有するシーラントフィルムである特許文献5では、ヒートシール性とイージーピール性を両立するフィルムとして、ポリエチレンとポリブテンとを混合してシーラント層としているが、該シーラントフィルムでは電子レンジ加熱下で自然開封は起きない。
【0006】
上記実状を鑑み、本発明は、包装体に特別な形状や加工を設けず、フィルムの特性によって、電子レンジ加熱した際に、包装体から自然に蒸気が抜け(高温下での自然開封・開口性)、常温下では密封性とイージーピール性を兼備する包装体を形成し得るフィルムを提供することを課題とする。
なお、「イージーピール性」とは、易開封性、易剥離性と同義であり、包装体をハサミ等の用具を用いずに手で軽い力で綺麗に開けられることをいう。
また、「自然開封・開口性」とは、人が開けずとも包装体が(内圧で膨らんで)自然に開くことをいう。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは鋭意検討した結果、包装体を構成するフィルムのシール層を、所定の3成分により構成することで、上記課題を解決できることを見出し、以下の本発明を完成するに至った。
【0008】
第1の本発明は、少なくともシール層を有するフィルムにおいて、該シール層の組成が、シール層全体を100質量%とした場合に、(a)低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、超低密度ポリエチレン、エチレン-(メタ)アクリル酸エステル共重合体、およびエチレン-酢酸ビニル共重合体の中から選ばれ、且つ密度900~950kg/mのポリエチレン系樹脂30~90質量%、(b)ポリブテン系樹脂5~40質量%、及び(c)密度900kg/m未満のエチレン-α-オレフィン共重合体5~30質量%を含むフィルムである。
【0009】
第1の本発明のフィルムにおいて、25℃条件での剥離強度が5.0~25.0N/15mm幅、および80℃条件での剥離強度が0.4~2.0N/15mm幅であることが好ましい。
【0010】
第1の本発明のフィルムにおいて、前記(c)エチレン-α-オレフィン共重合体がエチレン-ブテン共重合体であることが好ましい。
【0011】
第1の本発明のフィルムにおいて、前記(a)ポリエチレン系樹脂のメルトフローレート(MFR)が0.5~20g/10分であり、前記(b)ポリブテン系樹脂のメルトフローレート(MFR)が0.5~10g/10分であり、前記(c)エチレン-α-オレフィン共重合体のメルトフローレート(MFR)が0.1~25g/10分であることが好ましい。
【0012】
第2の本発明は、第1の本発明のフィルムの前記シール層に隣接してポリオレフィン系樹脂層を有する共押出フィルムである。
【0013】
第3の本発明は、第1の本発明のフィルムまたは第2の本発明の共押出フィルムを用いてなる包装体である。
【0014】
第4の本発明は、第1の本発明のフィルムまたは第2の本発明の共押出フィルムのシール層同士を対向させてヒートシールさせた袋体である。
【発明の効果】
【0015】
本発明のフィルムを用いることで、包装体に特別な形状や加工を設けず、フィルムの特性によって、電子レンジ加熱した際に、包装体から自然に蒸気が抜け(高温下での自然開封・開口性)、常温下では密封性とイージーピール性を兼備する包装体を形成することができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態の一例としての本発明のフィルムについて説明する。ただし、本発明の範囲が以下に説明する実施形態に限定されるものではない。
【0017】
<フィルム>
本発明のフィルムは、少なくともシール層を有するフィルムであり、シール層は、シール層全体を100質量%とした場合に、(a)ポリエチレン系樹脂30~90質量%、(b)ポリブテン系樹脂5~40質量%、及び(c)エチレン-α-オレフィン共重合体5~30質量%を含んでいる。
【0018】
((a)ポリエチレン系樹脂)
本フィルムのシール層を構成する(a)ポリエチレン系樹脂は、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、超低密度ポリエチレン(ULDPE)、エチレン-(メタ)アクリル酸エステル共重合体(EMA、EMMAなど)、及びエチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)の中から選ばれる1種以上を用いることができるが、中でも低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)が成形時のフィッシュアイが少ないことから好ましい。
【0019】
・MFR
(a)ポリエチレン系樹脂のメルトフローレート(MFR)は0.5~20g/10分が好ましく、2.0~15g/10分がさらに好ましく、4.0~10g/10分が特に好ましい。この範囲であれば成形加工性が良好であり、フィルム、シートなどの作製が容易である。
【0020】
・融点
(a)ポリエチレン系樹脂の融点は、90~140℃が好ましく、100~130℃がより好ましい。融点が140℃を超える場合は満足なフィルム製膜性、二次成形が得られない。一方、耐熱性の観点から融点は90℃以上であることが好ましい。
【0021】
・密度
(a)ポリエチレン系樹脂の密度は900~950kg/mであり、900~940kg/mが好ましい。密度950kg/mを超える場合は、他の成分との分散構造を満足に形成せず、十分なイージーピール性が発現されない。一方、汎用性の観点から密度900kg/m以上であることが好ましい。900kg/m以上とすることで、低い温度でのヒートシールができる。
【0022】
本発明のフィルムにおいて、各種性状の測定方法は以下の通りである。
MFRは、JIS K7210-1:2014法に基づき、試験温度190℃、荷重2.16kgの条件で測定する。
融点は、JIS K7121:2012法に基づき測定する。
密度は、JIS K7112:1999法に基づき測定する。
【0023】
((b)ポリブテン系樹脂)
上記(b)ポリブテン系樹脂は、1-ブテンの単独重合体および1-ブテンと他のα-オレフィンとの共重合体から選択される。上記α-オレフィンとしては、炭素数2、3、または、5~10のα-オレフィンであることが好ましく、例えば、エチレン、プロピレン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-デセン、3-メチル-1-ブテン、3-メチル-1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、4-メチル-1-ヘキセン、4,4-ジメチル-1-ヘキセンプロピレン、が挙げられ、好ましくはエチレン、プロピレン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、1-オクテンが挙げられ、より好ましくはエチレン、プロピレンが挙げられる。
【0024】
(b)ポリブテン系樹脂として具体的には、1-ブテンの単独重合体、エチレン/1-ブテン共重合体、プロピレン/1-ブテン共重合体またはエチレン/プロピレン/1-ブテン共重合体が好ましい。上記の共重合体としては、ランダム共重合体が好ましい。(b)ポリブテン系樹脂には、必要に応じて、本発明の効果が損なわれない範囲で他のコモノマーが少量共重合されていてもよい。
【0025】
(b)ポリブテン系樹脂の1-ブテン含量は、通常90~100モル%、好ましくは95~100モル%、より好ましくは98~100モル%であり、α-オレフィン含量は、0~10モル%、好ましくは0~5モル%、より好ましくは0~2モル%である。
【0026】
・密度
(b)ポリブテン系樹脂の密度は、好ましくは900~930kg/mであり、より好ましくは910~920kg/mである。ポリブテン系樹脂の密度が低すぎる場合には、フィルムのブロッキングが発生しやすくなる。また密度が高すぎる場合には、フィルムがカールしてハンドリング性が低下する。
【0027】
・融点
(b)ポリブテン系樹脂の融点は、50~135℃であることが好ましく、70~125℃であることがより好ましい。この融点が50℃未満である場合には、開封の際の剥離面の外観に劣ることとなる。融点が135℃を超える場合には、開封強度が過度に高くなる場合がある。また、(b)ポリブテン系樹脂の融点が低すぎる場合には、フィルムのブロッキングが発生し易くなる場合がある。一方、(b)ポリブテン系樹脂の融点が高過ぎる場合には、ヒートシール開始温度が高くなる。
【0028】
・MFR
(b)ポリブテン系樹脂のMFR(190℃)は、製膜性を考慮すると、0.5~10g/10分であることが好ましく、1.0~5.0g/10分であることがより好ましい。このMFRが0.5g/10分未満である場合、包装体の剥離強度が過度に高くなる。一方、MFRが10g/10分を超える場合には、開封の際の剥離面の外観に劣る。また、(b)ポリブテン系樹脂のMFRが低過ぎる場合には、溶融時の粘度が高いことからフィルムの生産において、押出機内の樹脂圧力が上昇し生産性が著しく悪くなり、一方、(b)ポリブテン系樹脂のMFRが高過ぎる場合には、フィルムのブロッキングが発生しやすくなる。
【0029】
((c)エチレン-α-オレフィン共重合体)
(c)エチレン-α-オレフィン共重合体は、エチレンと炭素数3~20のα-オレフィンとの共重合体であることが好ましい。炭素数3~20のα-オレフィンとしては、具体的には、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-デセン、1-ドデセン、1-テトラデセン、1-ヘキサデセン、1-エイコセン等が挙げられる。これらの中では、プロピレン、1-ブテン、1-ヘキセン、1-オクテンが好ましく、特に1-ブテンが好ましく用いられる。
(c)エチレン-α-オレフィン共重合体は、ランダム共重合体であることが好ましく、共重合体中におけるエチレンに由来する構成単位の割合は、50質量%以上であることが好ましい。
【0030】
(c)エチレン-α-オレフィン共重合体は、触媒存在下、各モノマーを共重合することにより製造される。具体的には、(c)エチレン-α-オレフィン共重合体は、オレフィンの重合触媒として、チーグラー触媒、フィリップス触媒、メタロセン触媒等の触媒を使用して、気相法、溶液法、高圧法、スラリー法等のプロセスで、エチレンと、プロピレン、1-ブテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、1-オクテン等のα-オレフィンとを共重合させて、製造することができる。
【0031】
・MFR
(c)エチレン-α-オレフィン共重合体のMFR(190℃)は、0.1~25g/10分であることが好ましく、下限は1.0g/10分以上がより好ましい。上限は10g/10分以下がより好ましく、4.0g/10分未満が更に好ましく、2.0g/10分未満が特に好ましい。このMFRが0.1g/10分未満である場合、(a)ポリエチレン系樹脂と(b)ポリブテン系樹脂の分散に影響し、例えばフィルム流れ方向(MD)と幅方向(TD)とで分散粒子形状が顕著に異なり両方向の剥離強度(ヒートシール強度)の差異が大きくなりやすい。一方、MFRが25g/10分を超える場合には、ヒートシール時に溶融部の流動性が上がり過ぎ、高温下での自然開封・開口性を悪化させる懸念がある。
【0032】
・密度、融点
低密度の(c)エチレン-α-オレフィン共重合体は融点が低く、(c)成分を添加することによってシール層の耐熱性が下がり、高温下での層凝集力が低下して、自然開口が生じる。
密度は、900kg/m未満であり、890kg/m未満であることが好ましい。また、融点は、50~80℃が好ましく、60~70℃がより好ましい。融点が低すぎる場合は、押出成形時の取り扱いが難しくなり、高すぎる場合は高温下での自然開封・開口性を悪化させる懸念がある。
【0033】
(シール層における各成分の含有量)
(a)ポリエチレン系樹脂と(b)ポリブテン系樹脂と(c)エチレン-α-オレフィン共重合体の組成比は、シール層全体を100質量%とした場合に、(30~90):(5~40):(5~30)の範囲が好ましく、(35~80):(10~40):(10~25)の範囲がより好ましい。(b)ポリブテン系樹脂の比率が範囲から外れると、ヒートシール強度が極端に強すぎたり、逆に弱すぎたりしてしまう懸念がある。また(c)エチレン-α-オレフィン共重合体の比率が範囲から外れると、自然開封・開口効果が不十分になったり、ヒートシール性が損なわれたりする懸念がある。
【0034】
<共押出フィルム>
上記した本発明のフィルムは、ポリオレフィン系樹脂層をシール層に隣接して有する共押出フィルムとすることができる。以下、ポリオレフィン系樹脂層を「隣接層」と称する。
【0035】
(隣接層)
隣接層に用いるポリオレフィン系樹脂は、特に限定されないが、上述のシール層を構成する(a)ポリエチレン系樹脂または(b)ポリブテン系樹脂を用いると、シール層と隣接層との層間密着力を高めることができ好ましい。中でも、低密度ポリエチレン(LDPE)、エチレンとαオレフィンとの共重合体からなる直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)が共押出フィルム製膜性の観点から好ましい。例えば、インフレーション法により共押出フィルムを成形する場合に、バブルが安定し、任意のブローアップを行いやすい。
【0036】
また、隣接層のポリオレフィン系樹脂には、変性された接着性樹脂を用いることができる。例えば不飽和カルボン酸またはその誘導体で変性されたポリオレフィン系樹脂が好適に用いられる。かかる不飽和カルボン酸としては、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、イタコン酸、シトラコン酸等を用いることができる。また、不飽和カルボン酸の誘導体としては、上記の不飽和カルボン酸のエステルや無水物等を用いることができ、例えば、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、メタクリル酸ブチル、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、アクリルアミド、メタクリルアミド、アクリル酸ナトリウム等を挙げることができる。その他、酢酸ビニル等も用いることができる。隣接層を接着性樹脂で構成すると、隣接層のシール層側と逆側に他の層を有する場合に、フィルム各層間の密着性を向上させることができる。
【0037】
(他の層)
本発明の共押出フィルムは、少なくともシール層と、該シール層に隣接して上述の隣接層を有すればよいが、該隣接層のシール層側とは反対側に、さらに他の層を有していてもよい。
他の層を構成する樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合体鹸化物や芳香族ポリアミドに代表されるガスバリア性樹脂、ポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミド6,66共重合体等のポリアミド系樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂、粘着性樹脂等をフィルム要求機能に応じて用いることができる。またその他の層は複数設けてもよい。
【0038】
(その他の成分)
本発明のフィルムおよび共押出フィルムの各層は、その特性を阻害しない範囲であれば、適宜、添加剤を含有することができる。例えば、着色剤、無機充填剤、有機充填剤、紫外線吸収剤、光安定剤、熱安定剤、酸化防止剤、滑剤、耐ブロッキング剤、加水分解防止剤、可塑剤、難燃剤、帯電防止剤、防曇剤などを挙げることができる。これらの添加剤の添加量は特に限定されるものではなく、本発明の所望とする物性を阻害することのない範囲において適宜決定することができる。
【0039】
<フィルムおよび共押出フィルムの製造方法>
本発明のフィルムおよび共押出フィルムの製造方法は、特に限定されず、公知のTダイ法やインフレーション法などにより製造することができる。また、本発明の共押出フィルムの製造方法では、公知のフィードブロック方式、マルチマニホールド方式、或いはそれらの組み合わせを用いることができる。また、その他の層は、熱ラミネート法や押出ラミネート法で形成することもできる。
本発明のフィルムまたは共押出フィルムは、無延伸でもよく、一軸延伸、同時二軸延伸、逐次二軸延伸でもよい。
また、本発明のフィルムまたは共押出フィルムは必要に応じて、コロナ処理、印刷、コーティング、蒸着などの表面処理や表面加工を行うこともできる。
【0040】
本発明のフィルム(単層フィルム)の厚みは、5~30μmが好ましい。
本発明の共押出フィルムの場合は、ヒートシール性と、糸引き、膜引きのない良好な凝集剥離性(イージーピール性)との両立、透明性の点から、シール層の厚みは1~10μmが好ましく、2~8μmがより好ましく、3~5μmが更に好ましい。隣接層、他の層を含めた共押出フィルムの総厚は、フィルム強度、ハンドリング性、二次加工性の点から、2~50μmが好ましく、下限は3μm以上がより好ましく、5μm以上が更に好ましい。上限は40μm以下がより好ましく、30μm以下が更に好ましい。
フィルムの厚み、および、共押出しフィルムの総厚や各層厚は、触針式厚み計、フィルム断面観察から計測できる。
【0041】
<フィルムおよび共押出フィルムの特性>
本発明のフィルムまたは共押出フィルム(以下、これらをまとめて、「本フィルム」という場合がある。)は、以下の特性を有することが好ましい。
【0042】
(ヒートシール密封性、易開封性)
本フィルムは、常温下、好ましくは設定温度120~200℃で、より好ましくは設定温度140~180℃で、本フィルムのシール層同士を対面させてヒートシールした(以下、「面々シール」と呼称することがある)場合に、十分なヒートシール密封性と、凝集破壊タイプの易開封性とを有することが好ましい。
評価方法は、例えば、本フィルムのシール面同士を対面させて合わせ、シール温度140~180℃、シール幅5mm、シール圧0.2MPa、シール時間1秒の条件で、ヒートシールし評価用サンプルを作製する。
ヒートシール密着性と易開封性の測定は、ヒートシールしたサンプルを15mm幅の短冊状にカットして試験片を作製し、JIS Z0238:1998に基づき、室温(25℃)下でヒートシール部を中央にし、剥離角度180度、引張速度300mm/分の条件で引張試験を行い、剥離強度(単位:N/15mm幅、「ヒートシール強度」とも称する)を測定する。
【0043】
剥離強度の下限は5.0N/15mm幅以上が好ましく、7.0N/15mm幅以上がより好ましく、10.0N/15mm幅以上が更に好ましい。上限は25.0N/15mm幅以下が好ましく、20.0N/15mm幅以下がより好ましく、18.0N/15mm幅以下が更に好ましい。係る範囲の剥離強度を有していれば、十分な強度で密着しており、また、手で容易に剥離開封できる。また、本フィルムは、シール層内部が凝集破壊して剥離開封でき、糸引きや膜引きが起きずに易剥離すること、剥離後の両剥離面に樹脂が不定形に残る毛羽立ちや樹脂千切れが生じずに美麗な剥離外観になることがより好ましい。
【0044】
(高温下の自然開封・開口性)
本フィルムを用いて作製した包装体は、水分を含む内容物を包装したままの状態で、電子レンジなどの加熱処理を行った際に、水蒸気により包装体の内圧が高まり、本フィルムのヒートシール部においてシール層内の凝集破壊が起きて自然に開封し、蒸気が解放されることが好ましい。
その指標として、80℃の温度雰囲気下で測定する剥離強度を用いる。評価用サンプル、試験片等の、雰囲気温度以外の測定条件は、上述のヒートシール密封性、易開封性における条件と同じである。
本フィルムの面々シールにおける80℃の温度雰囲気下で測定した剥離強度の上限は、2.0N/15mm幅以下が好ましく、1.8N/15mm幅以下がより好ましい。2.0N/15mm幅を超えると開口時に破裂音がしたり、場合によっては中身が飛び出したりしてしまう恐れがある。下限は特に制限はないが0.4N/15mm幅以上が好ましく、0.5N/15mm幅以上がより好ましい。
【0045】
(透明性)
本フィルムの透明性は、内容物の視認性、美観性、意匠性等の観点から、ヘーズ25%以下が好ましく、20%以下がより好ましく、15%以下が更に好ましい。下限は特に限定されず、値がより小さいと透明性が良好であり好ましい。
ヘーズは、JIS K7136:2000に基づき測定される。
【0046】
<包装体、袋体>
本発明のフィルムおよび共押出フィルムは、良好なヒートシール性、易剥離性(イージーピール性)を有するので、収容物に応じた形状でヒートシールし包装体を為すことができる。特に、本フィルムは、電子レンジで調理加熱し自然開口する用途に適するので、合掌状にセンターシールされる袋体やパウチ等の包装体用に好適である。
また、本発明のフィルムおよび共押出フィルムから構成される蓋材と、ポリプロピレン系樹脂から構成される底材とをヒートシールした包装体にも使用することができる。共押出フィルムを用いる場合は、シール層側を、被着体(例えば、底材)側にして、底材とヒートシールして、包装体が作製される。
また、本発明のフィルムおよび共押出フィルムは、他のプラスチックフィルム及びシート、金属箔、紙などと、例えばドライラミネート等の公知の方法で積層し、包装材料とすることもでき、それらを用いて包装体、袋体を作製できる。
【0047】
<包装体、袋体の用途>
本発明の包装体および袋体は、水分を含む内容物を包装した形態において、電子レンジなどの加熱処理を行った際に、水蒸気により包装体または袋体の内圧が高まり、本発明のフィルムのヒートシール部においてシール層内の凝集破壊が起きて自然に開封・開口し、蒸気が解放される。すなわち、本発明の包装体および袋体は、食品等を包装体に収容したまま電子レンジ等の加熱処理を施す用途に好適である。
【実施例0048】
以下の実施例および比較例によって本発明を更に詳細に説明するが、本発明は下記の実施例等によって制限を受けるものではない。
【0049】
<実施例1~5、比較例1>
隣接層に密度925kg/mの低密度ポリエチレンを用い、シール層に表1に示す樹脂組成物を用い、2種2層(隣接層25μm厚/シール層5μm厚)の共押出フィルム(総厚30μm)を、押出温度175℃で空冷インフレーション共押出フィルム製膜機を用いて作製した。以下の評価方法に従って面々シールの剥離強度とヘーズを測定し、表1に纏めた。
【0050】
<シール層の成分、物性>
シール層成分の略号は次の通りである。
(a)-1; 低密度ポリエチレン MFR9.0g/10分(190℃) 密度904kg/m
(a)-2; 低密度ポリエチレン MFR4.0g/10分(190℃) 密度918kg/m
(b)-1; ホモポリブテン MFR2.0g/10分(190℃) 密度915kg/m
(c)-1; エチレン-ブテン共重合体 MFR3.6g/10分(190℃) 密度885kg/m
(c)-2; エチレン-ブテン共重合体 MFR1.2g/10分(190℃) 密度885kg/m
【0051】
<評価方法>
(面々シールの剥離強度)
作製した共押出フィルムのシール層面同士を対面させて合わせ、シール温度140~180℃、シール幅5mm、シール圧0.2MPa、シール時間1秒の条件で、ヒートシールし評価用サンプルを作製した。ヒートシールは、シール温度140℃、160℃、および、180℃の三種類で実施し、それぞれについて以下の剥離強度を測定した。
・25℃での面々シールの剥離強度(N/15mm幅)
上記でヒートシールしたサンプルを15mm幅の短冊状にカットして試験片を作製し、JIS Z0238:1998に基づき、室温(25℃)下でヒートシール部を中央にし、剥離角度180度、引張速度300mm/分の条件で引張試験を行い、剥離強度(単位:N/15mm幅、「ヒートシール強度」とも称する)を測定した。
・80℃での面々シールの剥離強度(N/15mm幅)
上記の引っ張り試験を80℃で実施した以外は、同様の方法により、剥離強度を測定した。
【0052】
(ヘーズ)
ヘーズは、JIS K7136:2000に基づき測定した。
【0053】
【表1】
【0054】
実施例1~5は、良好なヒートシール密封性、易開封性、および高温下の自然開封性を示した。更に、ヘーズも低く視認性が得られた。
比較例1は、ヒートシール密封性、易開封性は良好であったが、高温下の自然開封性は不十分であり、電子レンジの加温により破袋の恐れが危ぶまれた。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明のフィルムおよび共押出フィルムは、水分を含む内容物を収容したまま電子レンジにて加熱する用途の包装体または袋体を作製する用途として、好適に利用可能である。