(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022053382
(43)【公開日】2022-04-05
(54)【発明の名称】凝集沈殿装置の遠隔監視システム
(51)【国際特許分類】
B01D 21/30 20060101AFI20220329BHJP
B01D 21/01 20060101ALI20220329BHJP
C02F 1/52 20060101ALI20220329BHJP
C02F 1/56 20060101ALI20220329BHJP
【FI】
B01D21/30 A
B01D21/01 C
C02F1/52 Z
C02F1/56 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020160188
(22)【出願日】2020-09-24
(71)【出願人】
【識別番号】320006771
【氏名又は名称】樋口 進也
(74)【代理人】
【識別番号】100101340
【弁理士】
【氏名又は名称】丸山 英一
(74)【代理人】
【識別番号】100205730
【弁理士】
【氏名又は名称】丸山 重輝
(74)【代理人】
【識別番号】100213551
【弁理士】
【氏名又は名称】丸山 智貴
(72)【発明者】
【氏名】樋口 進也
【テーマコード(参考)】
4D015
【Fターム(参考)】
4D015BA21
4D015DA04
4D015DB01
4D015EA03
4D015EA12
4D015EA32
(57)【要約】
【課題】処理されて排出される排水状況をリアルタイムで監視し処理状況を可視化すると共に、収集した凝集沈殿装置の運転データを活用し利用者に水処理の運転技術を向上させ利用者の利益を確保することができる凝集沈殿装置の遠隔監視システムの提供。
【解決手段】処理対象液を供給し凝集剤を添加して処理された処理液を外部に排出する凝集沈殿装置2と、凝集沈殿装置2の稼動情報を生成する解析サーバ4と、凝集沈殿装置2の状態を監視する監視装置5とが電気通信回線を介して接続され、凝集沈殿装置2は各種データを取得し解析サーバ4に送信し、解析サーバ4は受信した各種データを解析することにより凝集沈殿装置2の稼動情報を生成して監視装置5に送信し、監視装置5は受信した稼動情報に基づき凝集沈殿装置2の状態をリアルタイムで監視すると共に稼動情報を蓄積することによって稼動情報を利用した運転技術を向上させる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
タンクを備え、該タンクに処理対象液を供給し、凝集剤を添加して処理された処理液を外部に排出する少なくとも1台の凝集沈殿装置と、受信したデータを、解析することによって、前記凝集沈殿装置の稼動情報を生成する解析サーバと、前記稼動情報を受信して、前記凝集沈殿装置の状態を監視する監視装置とが電気通信回線を介して接続され、
前記凝集沈殿装置は、前記処理対象液、前記凝集剤、及び前記処理液の各種データを取得し、取得した各種データを、解析サーバに送信し、
前記解析サーバは、受信した各種データを、解析することにより、前記凝集沈殿装置の稼動情報を生成して、前記監視装置に送信し、
前記監視装置は、受信した前記稼動情報に基づき、前記凝集沈殿装置の状態をリアルタイムで監視すると共に、前記稼動情報を蓄積することによって、前記稼動情報を利用した運転技術を向上させることを特徴とする凝集沈殿装置の遠隔監視システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、凝集沈殿装置の遠隔監視システムに関し、詳しくは、凝集沈殿装置により処理されて排出される排水状況をリアルタイムで監視し、処理状況を可視化すると共に、収集した凝集沈殿装置の運転データを活用し、利用者に水処理の運転技術を向上させ、利用者の利益を確保することができる凝集沈殿装置の遠隔監視システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、水処理システムでは、測定データをデータベースに蓄積し、該測定データを用いて、ウェブ上に表示する表示手段を有し、さらに測定値及び計算値を用いて報告書を作成するような技術が知られている。
【0003】
そして、各種水処理設備からデータ収集した実測データが、試験での試験データに基づく指標と、同等の結果になるように、水処理を行う技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1は、冷却水処理の薬注制御及び監視を行う水処理制御監視装置であり、水処理制御の監視を行うことはできるが、エラー等の発生の原因を突き止める運転データの取得や、これらの取得された運転データを利用した、運転者の運転技術を向上させるような仕組みが構築されていなかった。
【0006】
そこで、本発明の課題は、凝集沈殿装置により処理されて排出される排水状況をリアルタイムで監視し、処理状況を可視化すると共に、収集した凝集沈殿装置の運転データを活用し、利用者に水処理の運転技術を向上させ、利用者の利益を確保することができる凝集沈殿装置の遠隔監視システムを提供することである。
【0007】
本発明の他の課題は、以下の記載により明らかとなる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題は、以下の各発明によって解決される。
【0009】
タンクを備え、該タンクに処理対象液を供給し、凝集剤を添加して処理された処理液を外部に排出する少なくとも1台の凝集沈殿装置と、受信したデータを、解析することによって、前記凝集沈殿装置の稼動情報を生成する解析サーバと、前記稼動情報を受信して、前記凝集沈殿装置の状態を監視する監視装置とが電気通信回線を介して接続され、
前記凝集沈殿装置は、前記処理対象液、前記凝集剤、及び前記処理液の各種データを取得し、取得した各種データを、解析サーバに送信し、
前記解析サーバは、受信した各種データを、解析することにより、前記凝集沈殿装置の稼動情報を生成して、前記監視装置に送信し、
前記監視装置は、受信した前記稼動情報に基づき、前記凝集沈殿装置の状態をリアルタイムで監視すると共に、前記稼動情報を蓄積することによって、前記稼動情報を利用した運転技術を向上させることを特徴とする凝集沈殿装置の遠隔監視システム。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、凝集沈殿装置により処理されて排出される排水状況をリアルタイムで監視し、処理状況を可視化すると共に、収集した凝集沈殿装置の運転データを活用し、利用者に水処理の運転技術を向上させ、利用者の利益を確保することができる凝集沈殿装置の遠隔監視システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明に係る凝集沈殿装置の監視システムの一例を示す概略図
【
図3】本発明に係る凝集沈殿装置の監視システムの処理フローの一例を示す図
【
図5】動作制御部のエラー項目の確認処理の一例を示すフロー図
【
図6】動作制御部のエラー項目の確認処理の一例を示すフロー図
【
図7】動作制御部のエラー項目の確認処理の一例を示すフロー図
【
図8】本発明に係る監視装置の全体監視画面の一例を示す図
【
図9】本発明に係る監視装置のエラー履歴画面の一例を示す図
【
図10】本発明に係る監視装置の履歴情報画面の一例を示す図
【
図11】本発明に係る監視装置のリアルタイム監視画面の一例を示す図
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について図面に基づいて説明する。
図1は、本発明に係る凝集沈殿装置の監視システムの一例を示す概略図であり、
図2は、凝集沈殿装置の一例を示す図である。
【0013】
図1において、監視システム1は、凝集沈殿装置2、凝集沈殿装置3、解析サーバ4、及び監視装置5が、電気通信回線6を介して接続されている。また、凝集沈殿装置は複数接続されていてもよいが、図示の例では2つ接続されている例が示されている。
【0014】
本発明の凝集沈殿装置の一例を
図2に基づいて説明する。
図2において、凝集沈殿装置2は、凝集沈殿装置本体20、動作制御部21、データ取得部22、データ送受信部23を備えている。凝集沈殿装置2と凝集沈殿装置3とは、同一の構成であるため、凝集沈殿装置3は、以後説明する凝集沈殿装置2の説明を援用し、その説明を省略する。
【0015】
凝集沈殿装置本体20は、給水ラインから、処理対象液を、給水ポンプを介してタンクに供給し、供給ラインから供給された処理対象液が所定のpHになるようにpH調整剤をタンクに供給すると共に、該タンクに凝集剤供給ラインから凝集剤を投入する。そして、凝集沈殿装置本体20は、タンクに設けられた撹拌機で撹拌して、凝集沈殿を行い、処理された処理水を、排水ポンプを介して排出する排水ラインを備えている。
本実施形態においては、例えば、凝集沈殿装置20のタンクに供給する処理対象液を、タンク供給前に貯留しておく図示しない貯留槽を設け、該貯留槽にpH調整剤を供給してもよい。この場合、貯留槽にpH調整剤供給ラインが設けられていることが好ましい。これにより、タンクに供給される処理対象液は、確実に所定のpHになり、凝集沈殿装置本体20の動作を簡素化できる。
【0016】
動作制御部21は、予め記憶された処理対象液の性状に基づき、凝集剤の添加量を定めた制御情報に従って、処理対象液がタンクに供給されると、凝集剤を添加するように動作させることができる。凝集剤としては、ポリマー、PAC等が例示できる。
【0017】
また、動作制御部21は、タンクの供給量に基づく、処理時間を予め設定しておき、設定された処理時間、凝集沈殿処理を実行するように動作させることができる。
【0018】
更に、動作制御部21は、凝集剤の量を管理することができる。図示しない凝集剤貯留部の凝集剤の添加量が不足する場合には、凝集沈殿装置2を運転する運転員に凝集剤の供給を促すように図示しない表示部に表示することができる。
【0019】
また、動作制御部21は、図示しないタイマー等を用いて、所定時間で処理対象液の供給、処理液の排水を行ってもよい。
【0020】
動作制御部21では、凝集沈殿装置本体20が、凝集剤の添加量、添加タイミングを、記憶し、データ取得部22に取得させることができる。また、バッチ処理である場合には、1日当りのバッチ数と処理量との対応関係を記憶し、データ取得部22に取得させることができる。
【0021】
データ取得部22は、凝集沈殿装置本体20の各所に接続された各種センサにより、必要なデータを取得することができる。例えば、給水ラインの圧力、流量、pH、タンクの水位、凝集剤供給ラインの凝集剤の供給量、pH調整剤供給ラインのpH調整剤の供給量、排水ラインの流量、pHといった運転データを取得することができる。
【0022】
また、データ取得部22は、供給中に凝集剤、pH調整剤の供給が間に合わなかった場合にも、その旨のデータを取得することができる。
【0023】
また、データ取得部22は、動作制御部21による処理対象液の供給、処理液の排出が所定時間を超えたか否かのデータ、及び要した時間のデータを取得することができる。
【0024】
更に、データ取得部22は、動作制御部21の動作状況のデータを取得することができる。
【0025】
データ送受信部23は、データ取得部22で取得したデータを、クラウド上の解析サーバに送信する。
【0026】
動作制御部21は、設定されている各種エラー項目を、データ取得部22に取得させる。
【0027】
エラー項目としては、非常停止があり、凝集沈殿装置2には、設けられた非常停止ボタンが押された場合が該当する。
【0028】
次に、給水ポンプ、排水ポンプ、撹拌機を動作させるためのインバータに異常が発生した場合には、それぞれ給水ポンプ異常、排水ポンプ異常、タンク撹拌機異常がエラー項目となる。
【0029】
次に、供給ライン、排水ラインに設けられた流量計で計測した流量が所定の流量基準を満たさない場合には、それぞれ給水フロー異常、排水フロー異常がエラー項目となる。
【0030】
次に、凝集剤供給ライン、pH調整剤の供給ラインに設けられた流量計で計測した流量が所定の流量基準を満たさない場合には、それぞれ凝集剤フロー異常、pH調整剤フロー異常がエラー項目となる。
次に、供給ラインの圧力が所定の圧力基準を超えた場合には、給水ライン圧力異常がエラー項目となる。
【0031】
次に、タンクに供給される凝集剤、pH調整剤の投入が間に合わなかった場合、例えば、所定の時間内に投入処理ができなかった場合は、凝集剤投入失敗、pH調整剤投入失敗がエラー項目となる。
【0032】
また、動作制御部21は、エラー項目に限らず、警告項目も設定されている。エラーに選別されるものではないが、警告として発する、例えば、エラーの所定の基準は満たしているが、警告の所定の基準を満たさない場合に、設定される。これも上述したエラー項目と同様に、データ取得部22に取得させる。
【0033】
以上のとおり、動作制御部21では、各所において、所定の基準を予め図示しない記憶部に記憶させておき、実際のデータ取得部で取得したデータが所定の基準を満たさない場合には、設定されていたエラー項目、及び警告項目を、データ取得部22に取得させる。
【0034】
解析サーバ4は、凝集沈殿装置2から受信した取得データを解析処理する。取得データであるエラー履歴は、エラー項目と共に時系列、例えば10秒毎に解析される。具体的には、15時57分40秒~15時57分50秒の間にエラーが起きた場合には、15時57分40秒~15時57分50秒を1マスとして、エラー履歴画面に表示されるように解析する。詳細は、エラーが起きた時間と項目については、動作制御部21のエラー項目と共に、詳細なリアルタイム画面に表示すると共に、全体画面にエラーカウント数として表示するように解析される。警告項目もエラー項目と同様の解析がなされる。詳しくは後述する。
【0035】
また、解析サーバ4は、データ取得部22で取得したデータに基づき、凝集沈殿装置の稼動状態(稼動、停止等)、通信状況(接続、切断、遅延等)、動作モード(自動準備中、自動運転中、自動停止中、手動モード等)、タンクの状態(給水、排水、処理等)、処理液の平均濁度が所定の基準に応じた濁度(満たす場合にはOK、満たさない場合にはNG)等を解析する。
【0036】
解析サーバ4は、解析したデータを、稼動情報として、監視装置5に送信する。解析サーバ4としては、例えば、IaaS(Infrastructure as a Service)等のクラウドサービスを利用することができる。
【0037】
監視装置5は、データ送受信部50、表示部51、監視制御部52、データベース53を備えている。
【0038】
監視装置5は、データ送受信部50で、受信した稼動情報を、表示部51に表示された監視画面を介して可視し、凝集沈殿装置の監視を行うことができる。
【0039】
監視制御部52は、凝集沈殿装置2の状態を監視し、異常があった場合の指示を行う仕組みが構築されている。例えば、動作制御部21から凝集沈殿装置2の非常停止ボタンが押されたことによる非常停止信号が送信された場合、動作制御部21との通信リンクが確立されない場合等の凝集沈殿装置2の運転が正常に稼動していない状態であると判断された場合には、凝集沈殿装置の表示部に表示すると共に、運転管理者に連絡できる仕組みが構築されていることが好ましい。
【0040】
データベース53は、稼動情報が逐次格納され、検索可能に蓄積されると共に、動作制御部21で設定されたエラー項目、警告項目に応じた対処方法等、点検すべき部分等の対応関係が予め構築されていることが好ましい。これにより、後述する監視画面のお知らせ数等にエラーとその対処法などを知らせることができる。
【0041】
電気通信回線6は、例えばインターネット回線が例示できるが、公知の電気通信回線を利用することができる。
【0042】
本発明に係る凝集沈殿装置の監視システムの処理工程を、
図3~
図7に基づいて説明する。
【0043】
図3は、本発明に係る凝集沈殿装置の監視システムの処理フローの一例を示す図であり、
図4は、本発明の凝集沈殿処理の一例を示すフロー図である。
図5~
図7は、動作制御部のエラー項目の確認処理の一例を示すフロー図である。
【0044】
図3に示すように、まず、凝集沈殿装置により、凝集沈殿処理を行う(S1)。
凝集沈殿処理の一例を
図4に基づいて説明する。ここで、各種センサによる計測データの取得や動作制御部のエラー項目確認処理を、凝集沈殿処理中に実行することにより、後述する稼動情報として生成されるための運転データを取得する。
図5~
図7を参照して、エラー項目確認処理の一例を説明する。
【0045】
凝集沈殿処理に際して、例えば、原水が給水ラインを介して供給されると、給水ラインに設けられた、流量計、圧力計、pH計で運転データを取得する。また、供給ラインからタンクに供給する原水の供給量が設定された所定時間内に供給するように動作制御部が供給ラインの供給ポンプを動作させるようにしており、タンクへの原水供給が完了する時間を計測する。以降凝集沈殿処理の各処理工程において、運転データに基づく異常確認処理がなされる。
【0046】
以下、
図4に基づく凝集沈殿処理の説明をしたうえで、
図5~
図7に示すエラー項目確認処理の一例を説明する。
【0047】
図4に示すように、凝集沈殿処理は、まず、原水(処理対象液)を供給する(S11)。ここで、
図5に基づき、原水の給水フロー異常の確認処理をする。
【0048】
図5に示すように、原水が供給され(S11)、流量計で流量が計測され、流量計からの流量データを動作制御部が、取得する(S110)。
【0049】
次いで、計測された流量データが、所定の設定値の流量に到っているか否かを判断する(S111)。
【0050】
所定の設定値の流量に到っている場合には(S111のYES)、給水フロー異常が確認されていないため、原水フロー異常の確認処理を終了する。一方で、所定の設定値の流量に到っていない場合には(S111のNO)、給水フロー異常が確認されるため、給水フロー異常というエラー項目が発生した旨を、給水の流量異常が起こった時間と共に、データ取得部に取得させる(S112)。
【0051】
これにより、給水フロー異常の確認処理が終了する。給水された段階で、各種センサの計測データから、給水ライン圧力異常の確認処理、給水時間超過の確認処理もほぼ同時に行うことができる。また、給水ラインで、流量計が所定時間、一切流量計で計測できなかった場合には、流量計の故障、又は、給水ポンプの異常の確認処理を行うようにしてもよい。これらは、エラー項目が、動作制御部で確認された段階で、運転員等に知らせるようにしてもよい。
【0052】
次いで、タンクに供給された処理対象液(原水)が、所定のpHになるように、pH調整剤を供給する(S12)。所定の基準を予め設定しておき、タンクに供給された処理対象液が、所定のpHになるまで供給することが好ましい。ここで、
図6に基づいて、pH調整剤フロー異常確認処理を説明する。
【0053】
図6に示すように、pH調整剤が供給され(S12)、pH調整剤ラインの流量計で流量が計測され、流量計からの流量データを動作制御部が取得する(S120)。
【0054】
次いで、計測された流量データが、所定の設定値の流量に到っているか否かを判断する(S121)。
【0055】
所定の設定値の流量に到っている場合には(S121のYES)、pH調整剤フロー異常が確認されていないため、pH調整剤フロー異常の確認処理を終了する。一方で、所定の設定値の流量に到っていない場合には(S121のNO)、pH調整剤フロー異常が確認されるため、pH調整剤フロー異常のエラー項目が発生した旨を、pH調整剤の流量異常が起こった時間と共に、データ取得部に取得させる(S122)。pH調整剤の供給量については、予め処理対象液(原水)のpHが所定の設定値になる供給量を算出して、供給させるようにすることが好ましい。
【0056】
次に、pH調整された原水に、凝集剤を供給する(S13)。ここで、
図7に基づいて、凝集剤フロー異常確認処理を説明する。
【0057】
図7に示すように、凝集剤が供給され(S13)、凝集剤ラインの流量計で流量が計測され、流量計からの流量データを動作制御部が取得する(S130)。
【0058】
次いで、計測された流量データが、所定の設定値の流量に到っているか否かを判断する(S131)。
【0059】
所定の設定値の流量に到っている場合には(S131のYES)、凝集剤フロー異常が確認されていないため、凝集剤フロー異常の確認処理を終了する。一方で、所定の設定値の流量に到っていない場合には(S131のNO)、凝集剤フロー異常が確認されるため、凝集剤フロー異常のエラー項目が発生した旨を、凝集剤の流量異常が起こった時間と共に、データ取得部に取得させる(S132)。
【0060】
これにより、凝集剤フロー異常の確認処理が終了する。凝集剤が供給された段階でも、原水の給水が供給された段階と同様に、各種センサの計測データに基づき、エラー項目に基づく確認処理が実行される。また、原水の給水中に凝集剤を投入する場合には、凝集剤の投入が間に合わなかった否かのエラー項目を設定し、確認処理を行うこともできる。この場合、投入の失敗か否かは、物理的なバルブの制御エラー、設定された時間内の凝集剤の供給の有無等の項目を設定し、各種エラー項目の確認処理を実施することができる。これらは、エラー項目が、動作制御部で確認された段階で、運転員等に知らせるようにしてもよい。
【0061】
次いで、撹拌機により、原水と凝集剤を撹拌する(S14)。そして、所定時間経過すると、凝集反応が起こり、フロックが形成され、フロックが沈殿し、処理液を生成する。
【0062】
ここで、処理液のpHを計測し、所定のpHでなかった場合には、再度、pH調整剤を供給することが好ましい。このときのpH調整剤の供給ラインは、上述した供給ラインを用いても良いし、別途処理液用の供給ラインを用いてもよい。そして、pHの値に応じて、酸性であれば、アルカリ性の調整剤を供給し、アルカリ性であれば酸性の調整剤を供給することが好ましい。
【0063】
次いで、pHが排水基準を満たしている処理液を排出する(S15)。処理液にpH調整剤を供給しない場合には、処理対象液を貯留する貯留槽に戻しても良い。本実施形態においては、(処理液)排水フロー異常の確認処理も、給水フロー異常の確認処理と同様に行うことができる。
これにより、
図4に示す凝集沈殿処理が終了する。
【0064】
図4に示す凝集沈殿処理が終了すると、
図3に示すように、凝集沈殿処理中に取得した運転データを、解析サーバ4に送信し、取得した運転データを解析する(S2)。
【0065】
次いで、解析サーバ4は、運転データを解析し、稼動情報を生成する(S3)。稼動情報は、監視装置5に送信される。
【0066】
次いで、監視装置5は、稼動情報を、監視画面に表示し(S4)、凝集沈殿装置の稼動状態をリアルタイムで監視する。
【0067】
以下、監視装置5の表示部51に表示された監視画面の一例を
図8~
図11に基づいて説明する。
【0068】
図8は、監視画面の全体監視画面の一例を示す図である。
図8において、凝集沈殿装置2と凝集沈殿装置3の状態を監視している。
凝集沈殿装置2と、凝集沈殿装置3は、各々別の利用者に利用されており、各々の装置において、所望のデータが取得され、稼動情報として取得される。
【0069】
図示の例において、凝集沈殿装置2の稼動状態は、「稼動」となっている。この稼動状態は、「稼動」、「停止」といった凝集沈殿装置2の状態が、項目として表示される。そして、稼動状態の右側には、稼働時間が表示されており、凝集沈殿装置2の稼動時間を表示する。そして、稼働時間の背景に示されたグラフは、稼動時間における稼動度グラフが表示される。稼動度は、凝集沈殿装置2の停止と停止の間に稼動していた割合が時系列で表示される。
【0070】
凝集沈殿装置2の稼動状態の下方は、通信状況が示されており、図示の例では、「接続」となっている。この通信状況は、「接続」、「切断」、「遅延」といった項目が表示されている。この通信状況は、監視装置5と、凝集沈殿装置2との通信状況である。通信状況の右側には、接続時間が表示されており、凝集沈殿装置2との接続時間を表示する。そして、接続時間の背景に示されたグラフは、接続時間における接続状況が表示されている。
【0071】
稼働時間、接続時間の右側には、エラー数、警告数、お知らせ数の項目のボタンが表示されている。エラー数は、動作制御部21において、データ取得部22に取得されたエラー項目の数が累積されて表示される。警告数については、警告項目の数が累積されて表示される。
【0072】
お知らせ数は、上述した監視装置5のデータベース53に予め蓄積されたエラー項目、警告項目に対する対処法等の対応策を知らせた数が対応し、これらは、定期的、不定期問わず、必要に応じて運転者、本システムの利用者にお知らせするように機能させることができ、お知らせを行った数を表示している。
これらのボタンを押すと、エラー数、警告数については、エラー履歴画面に移動し、お知らせ数については、図示しないお知らせ画面に移動する。
【0073】
図9は、エラー履歴画面の一例を示す図である。
図9において、エラー項目が、エラー項目A~Lが列挙されている。エラー項目A~Lは、動作制御部21で設定されていたエラー項目、及び警告項目が起こった時間に沿って示されている。各項目が発生した場合には、その旨が時間に応じて記録される。これによって、過去のエラー、警告があった時間とその内容を確認することができる。
【0074】
図9に示された上方に示された「全体監視画面に戻る」ボタンを押すことによって、
図8に示す全体監視画面に戻ることができる。
【0075】
図8に示す全体監視画面に戻って、エラー数、警告数、お知らせ数の項目の右側には、履歴情報画面、リアルタイム監視画面に移行するボタンが表示されており、履歴情報画面ボタンを押すことにより、
図10に示す画面に移行する。
【0076】
図10には、履歴情報画面の一例を示す図が示されている。
図10において、稼動履歴、通信履歴、動作モード、運転状況、原水(処理対象液)pH、排水(処理液)pHの運転履歴が表示される。
【0077】
図示の例において、稼動履歴について説明する。
稼動履歴は、稼動状態を時系列で記録したグラフである。動作モードは、凝集沈殿装置が、自動準備中、つまり自動運転になる前に、各種装置の起動確認中である場合の時間である。起動確認時間が遅くなれば、自動準備中の時間が長くなる。つまり、各種装置の起動時間が経年劣化等により長くなることになるので、この情報により、各種装置の交換時期等の目安となる。自動運転中は、準備が終わって、処理運転が行われることを示している。
【0078】
次に、動作モードについて説明する。
自動停止中は、エラーが起こった場合に、自動的に停止している場合の時間である。この時間が長い場合には、エラー項目の時間と併せて、データを参照することで、エラーとその停止時間の対応関係を確認することができる。ここで、自動モードと手動モードは切り替えが可能な凝集沈殿装置である場合に、切り替えて、手動で操作を行っている場合には、手動モードとして表示され、その時間が記録される。手動モードから自動運転に移行する場合には、手動モードで運転準備を行い、自動運転に切り替えるようにすることもでき、この場合の履歴が記録される。
【0079】
次に、通信履歴について説明する。
通信履歴は、過去から現在における監視装置と、凝集沈殿装置との通信状況が時系列に沿って表示されている。通信状況としては、例えば、通信量等で表示することができる。
【0080】
次に、運転状況について説明する。
運転状況は、処理量と時間との関係を示すことができ、処理された量に応じてグラフが変動する。
【0081】
次に、原水(処理対象液)pHについて説明する。
原水pHは、給水ラインからタンクに投入される処理対象液のpHを計測したpH計のデータが時系列に沿って表示される。
【0082】
次に、排水(処理液)pHについて説明する。
排水pHは、タンクから、排水ラインを介して排出された処理液のpH計のデータに沿って、例えば、pH6.5未満は、「酸性」、pH6.5~7.5は、「中性」、pH7.5より大きい場合は、「アルカリ性」と表示することができる。
【0083】
図10に示された上方に示された「全体監視画面に戻る」ボタンを押すことによって、
図8に示す全体監視画面に戻ることができる。
【0084】
図9に示すエラー履歴画面に示されたエラー履歴情報、及び、
図10に示す履歴情報画面に示された各種履歴情報に基づく凝集沈殿装置の運転データを活用することによって、運転者にエラー項目に対応する解決案を提示し、運転技術を向上させると共に、警告の段階で、エラーにならないような情報をお知らせ等で提示することによって、運転を継続させて、本システムの利用者の利益を確保することができる。
【0085】
本システムは、稼動状態、動作モード、通信状態、又は運転状況の履歴として記録される運転履歴、濁度、排水(処理液)pH、又は原水(処理対象液)のpHの取得データの履歴、及び凝集剤やpH調整剤の投入量、投入タイミングのパラメータ履歴を記録することによって、運転管理による状況を適宜監視することができる。
【0086】
図8に示す全体監視画面に戻って、リアルタイム監視画面に移行するボタンを押すことにより、
図11に示す画面に移行する。
【0087】
図11には、リアルタイム監視画面の一例を示す図が示されている。
図11において、稼動状態、接続状況、動作モード、タンク状況、濁度、排水pHの各種項目、タンクの現在の水量ゲージ、供給ライン、排水ラインの流量グラフ、濁度履歴、エラー項目表示といった凝集沈殿装置の状態を把握するための画面が示されている。
【0088】
これらは、上述した動作制御部21の動作による動作状態、及び各種センサから取得した取得データを、解析サーバ4で解析された結果が表示される。これにより、個別の凝集沈殿装置の現在の状態を逐次監視することによって、水処理状況、装置の状態、薬剤の状態等を把握することができる。
【0089】
したがって、複数の利用者、それぞれの処理設備に設けられた凝集沈殿装置の個別の状態を取得でき、複数の凝集沈殿装置の状態を把握することができる。
【符号の説明】
【0090】
1:監視システム
2:凝集沈殿装置
20:凝集沈殿装置本体
21:動作制御部
22:データ取得部
23:データ送受信部
3:凝集沈殿装置
4:解析サーバ
5:監視装置
50:データ送受信部
51:表示部
52:監視制御部
53:データベース
6:電気通信回線