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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022053425
(43)【公開日】2022-04-05
(54)【発明の名称】環境試験器の補強構造
(51)【国際特許分類】
   G01N 17/00 20060101AFI20220329BHJP
   E06B 5/00 20060101ALI20220329BHJP
   E06B 7/04 20060101ALI20220329BHJP
【FI】
G01N17/00
E06B5/00 Z
E06B7/04
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020160260
(22)【出願日】2020-09-24
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2021-06-30
(71)【出願人】
【識別番号】596034931
【氏名又は名称】エタックエンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083183
【弁理士】
【氏名又は名称】西 良久
(72)【発明者】
【氏名】下重 高史
【テーマコード(参考)】
2E036
2E239
2G050
【Fターム(参考)】
2E036JA02
2E036JC03
2E036KA03
2E036NA05
2E036QA02
2E036QB01
2E239AC02
2G050BA10
2G050EA01
2G050EA02
2G050EA04
2G050EC02
(57)【要約】      (修正有)
【課題】環境試験器の槽内で爆発等の圧力上昇が発生した場合に被害の拡大を最小に抑えるための補強構造を提供する。
【解決手段】環境試験器の扉に爆発等の圧力上昇時に脱落しないようにハンドルを設けると共に、恒温槽1に設けた爆発放散口の上部に、回転軸12を中心に略対向して重さまたは長さの異なる一対の羽を設け、上記一対の羽のバランスが揃うように錘または付勢手段を設けた回転遮蔽板11で放散口を塞いでなり、正常時には、一対の羽で放散口を塞ぎ、爆発等の圧力上昇時には一対の羽が回転して放散口を開き、圧力の上昇が収まった後には前記錘または付勢手段で一対の羽が放散口を塞ぐように復帰するようにしたことを特徴とする環境試験器の補強構造。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
環境試験器の扉に圧力上昇時に脱落しないようにハンドルを設けると共に、恒温槽に設けた爆発放散口の上部に、回転軸を中心に略対向して重さまたは長さの異なる一対の羽を設け、上記一対の羽のバランスが揃うように錘または付勢手段を設けたを設けた回転遮蔽板で放散口を塞いでなり、
圧力が非上昇時には、一対の羽で放散口を塞ぎ、圧力上昇時には一対の羽が回転して放散口を開き、圧力上昇後には前記錘または付勢手段で一対の羽が放散口を塞ぐように復帰するようにしたことを特徴とする環境試験器の補強構造。
【請求項2】
ハンドルが、回転ハンドルと、締付固定用のネジ部と、ハンドル開閉時に扉回転方向と逆方向に倒れるシャフト軸部と、環境試験器の扉側に前記ハンドルとネジ部を固定するためにシャフト軸の径より少し大きい溝があるプレート部と、該プレート部にシャフト部を通す溝部と、該溝部の先端側に形成されたシャフトの抜止め機構部と、前記シャフト軸部の基端を枢着すると共に前記扉の本体との強度を確保するベース金具部とからなっていることを特徴とする請求項1に記載の環境試験器の補強構造。
【請求項3】
ハンドルが設けられる扉の裏面に設けられたパッキンが衝合する槽の外周に金属製の枠が形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の環境試験器の補強構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、環境試験器の槽内で爆発等による圧力上昇が発生した場合に被害の拡大を最小に抑えるための補強構造に関する。
【背景技術】
【0002】
環境試験器の槽内において、ガス爆発等の圧力上昇が生じた際、槽内部の圧力を外部へ放出し、装置環境試験器の全壊を防止するため種々構造の爆発放散口がある。
爆発等の際、最大圧力が低い場合は放散口の開口面積は小さくできるが、ガス爆発等で最大圧力が高い場合、開口面積も大きくする必要がある。
環境試験器の場合、内部の温度・湿度を精密に制御するため、爆発放散口の断熱性が必要となる。
そこで、断熱構造を有する爆発放散口の場合、ガス爆発等時に於ける爆発放散口として破裂板式を装備した場合、圧力放散後に放散口が開口する為、例えば二次電池のように爆発後も燃焼を伴う現象が発生した場合に、外気が遮断できず、可燃性ガスと空気が混合し、爆発、燃焼を継続するおそれがある。
そこで、特開2016-176792の環境試験器では、複合型爆発放散口と、保護装置を有している。複合型爆発放散口は、破裂板式爆発放散口と、復帰型爆発放散口を有する。
複合型爆発放散口には、表裏面を貫通する小開口が形成されている。小開口の上部側の開口端には、開閉部材が設けられている。開閉部材は、ヒンジを中心として水平姿勢から、ストッパに当接する立姿勢の位置まで揺動する。ストッパには、開放検知手段が設けられている。小開口の上部側の開口端近傍には、封鎖検知手段が設けられている。
上記構成では、破裂板式爆発放散口と、復帰型爆発放散口をそれぞれ設ける必要があり、構造が複雑化するおそれがあった。
また、槽内で爆発等が発生した場合に、扉が容易に開かないようにするため、ネジ式ハンドルで開閉時にハンドルを倒す機構の場合、扉の回転方向に対し反対の回転方向のため、固定している溝からハンドルが逃げる方向に応力がかかることがある。
ハンドルの機構部については、引張り強度試験等でハンドルの脱落する応力値は容易に確認できるが、目的としている強度が確保できていない場合は、ハンドル及びシャフトを固定するプレートにおいてハンドルが滑って逃げハンドルが脱落して扉を保持することができない。
そこで、引張り試験の強度を上げるため、機構部品の大型化や、強度の強い材質へ変更したり、脱落しないように溝とハンドルの長さを長く取る方策を講じる必要があるが、装置が嵩張ったり煩雑化するという問題点がある。
【0003】
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2016-176792
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この発明が解決しようとする問題点は、環境試験器の槽内で爆発等の圧力上昇が発生した場合、爆発放散口の上部において、回転軸を中心に略対向する一対の羽を設けることで、爆発等の圧力上昇時には上昇する圧力を妨げずに放散口を開口し、圧力上昇が収まった放散後には放散口を遮蔽することができると共に、ハンドルが脱落せずに扉を保持することができるとようにした環境試験器の補強構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、環境試験器の恒温槽内で爆発等の圧力上昇が発生した場合、放散口の上部において、回転軸を中心に略対向する一対の羽を設けることで、圧力上昇時には上昇した圧力を妨げずに放散口を開口し、放散後には放散口を遮蔽することができるようにした一対の羽を有する回転遮蔽板を設け、圧力上昇による風圧が無くなると、復帰手段で放散口を塞ぐようにした環境試験器の補強構造に関する。
【発明の効果】
【0007】
本発明では、回転遮蔽板11は、通常の温度・湿度制御時は回転軸を中間にして、放散口を、幅広羽と錘等の付勢手段で付勢された幅狭羽とでバランスよく略水平に塞いで断熱性を保つ。
ガス爆発等の圧力上昇時においては、付勢手段の付勢力に抗して幅広羽と幅狭羽とが起立姿勢に回転して上昇圧力を放散することができる。
放散口が開口したあと、上昇圧力が下降して収まると、付勢手段の復帰力で幅広羽と幅狭羽とが再び略水平姿勢に回転し、放散口を塞ぐことで、外気の槽内への流入を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】恒温槽と放散口の関係を示す模式図である。
図2】爆発等の圧力上昇時の放散口の状態を示す説明図である。
図3】圧力上昇が下降し収まった後の放散口の状態を示す説明図である。
図4】放散口を閉じた状態の側面図である。
図5】同平面図である。
図6】脱落防止ハンドルの一例を示す側面図である。
図7】ハンドル構造の正面図である。
図8】(a)はプレート部の平面図、(b)は同側面図である。
図9】パッキンと金属枠の関係を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下にこの発明の好適実施例を爆発放散口を備えた環境試験器に適用した好適実施例について図面を参照しながら説明する。
【実施例0010】
{遮蔽型爆発放散口}
ガス爆発等の圧力上昇が生じた際、内部の圧力を外部へ放出し、装置の全壊を防止する必要がある。
断熱構造を有する爆発放散口の場合、従来の方式ではガス爆発等の場合に於ける爆発放散口として破裂版式の場合、圧力放散後に放散口が開口する為、例えば二次電池のように爆発後も燃焼を伴う現象が発生した場合に、外気が遮断できず、可燃性ガスと空気が混合し、爆発、燃焼を継続する場合が考えられる。
【0011】
そこで、本実施例の爆発放散口構造は、図1に示すように、下部に恒温槽1があり、該恒温槽1を囲むように左右に断熱層2A、2Bが形成される。
該恒温槽1の底面に底板3、上面に上蓋板4が形成されている。
該恒温槽1の上の中段の空間5は左右が放散口カバー6A、6Bで覆われており、中央に規制用バー7が設けられている。
上記空間5の上部には天井部網8で覆われている。
【0012】
該天井部網8の上部の空間9は、左右が遮蔽部カバー10A、10Bで囲まれており、上部に複数の回転遮蔽板11で放散口16の上面が塞がれている。
図示例では、上面の一方の端部(図中左端)で回転遮蔽板11の幅広羽13の回転を規制する規制板11aと、他方の端部(図中右端)で衝合する回転遮蔽板11の幅狭羽14の回転を規制する規制板11bが設けられおり、爆発等の圧力上昇時に回転遮蔽板11は一方向(図中反時計方向)にのみ回転しうるようになっている。
【0013】
回転遮蔽板11は、放散口16の上部において、回転軸12に一対の羽13、14を設けており(図5参照)、爆発等の圧力上昇時には上昇する風圧により、図2に示すように羽13、14が回転して略垂直に変位する。
爆圧がかからなくなった放散後には、回転遮蔽板11に設けた重り15により羽が略水平に回転変位し閉鎖する構造が用いられる。
これにより、一対の羽を回転させることで、通常、爆発等の圧力上昇時には圧力を妨げずに放散できる開口部と、圧力がかからない放散後には開口部を遮蔽する機構を用いている。
【0014】
爆発放散口構造は、図1に示すように、下部に恒温槽1があり、該恒温槽1を囲むように左右に断熱層2A、2Bが形成される。
該恒温槽1の底面に底板3、上面に上蓋板4が形成されている。
該恒温槽1の上の中段の空間5は左右が放散口カバー6A、6Bで覆われており、中央にシャフト7が設けられている。
上記空間5の上部には天井部網8で覆われている。
該天井部網8の上部の空間9は、左右が遮蔽部カバー10A、10Bで囲まれており、上部に複数の回転遮蔽板11で放散口上面が塞がれている。
【0015】
回転遮蔽板11は、回転軸12を中心に略180度間隔の延びる一対の羽が設けられており、一方の幅広羽13が長く延びて重く、他方の幅狭羽14が短く延びて軽くなっている。
そして、前記回転軸12には、幅狭羽14側に錘15が取り付けられており、回転軸12を中心に幅広羽13と幅狭羽14とのバランスがとれるようになっている。
【0016】
これにより、遮蔽位置では、幅広羽13と錘15で付勢された幅狭羽14とが略水平姿勢となり放散口を塞ぐ。
また、放散時には、槽内爆発等による力で幅広羽15が略垂直に回り、幅狭羽14が下向きに変位する。
その後、圧力上昇が収まると、前記錘15の付勢力により、幅広羽13と幅狭羽14とが略水平姿勢に戻り放散口を塞ぐことができる。
【0017】
上記構成からなっているので、回転遮蔽板11は、通常の温度・湿度制御時は回転軸12を中間にして、放散口を、幅広羽13と錘15で付勢されている幅狭羽14とでバランスよく略水平に塞いで密閉性を保つ(図1参照)。
ガス爆発等の圧力上昇時においては、錘15の付勢力に抗して幅広羽13と幅狭羽14とが起立姿勢に回転して圧力を放散することができる(図2参照)。
開口したあと、爆圧がかからなくなると、錘15の復帰力で幅広羽13と幅狭羽14とが再び水平姿勢に回転して、放散口を塞ぐことで、外気の流入を防止することができる(図3参照)。
【0018】
前記羽13,14による遮蔽は完全密閉ではないが、例えば二次電池などの場合に継続して内部で燃焼した場合は、一酸化炭素や可燃性ガスが発生するため、それらの雰囲気で充満し、開口状態と比較して空気の量が減少するため、爆発等の圧力上昇の下限界に到達しづらくなる。
【0019】
また、遮蔽板11で外気の流入を防止する方策に、N2、C02などの不活性ガスを導入することで、内部の酸素濃度を低減し、燃焼、爆発等の圧力上昇を抑制することも上げられる。
また、二次電池の熱暴走時においては、爆発等の圧力上昇後も継続して熱分解反応が発生するため、可燃性ガスが発生することと、そのガスに引火して燃焼することがあるため開口した爆発放散口16から火炎の放出を防止するねらいもある。
【0020】
「脱落防止ハンドル構造」
扉Dのロック構造として、ハンドルのレバーを90度回すことで確実にチャンバーを閉じるワンタッチロック式レバーが用いられている。
爆発等の圧力上昇時に前記ハンドルのレバーが脱落しないように対策する必要がある。
【0021】
この脱落防止ハンドル構造20は、図6から図8に示すように、回転ハンドル21と、締付固定用のネジ部23と、ハンドル開閉時に扉回転方向と逆方向に倒れるシャフト軸部24と、該シャフト軸部24を保持する為のカラー部23と、環境試験器の扉D側に前記ハンドル21とネジ部23を固定するためにシャフト軸24の径より少し大きい溝26があるプレート部25と、前記シャフト軸部24を枢着すると共に前記扉Dの本体との強度を確保する為のベース金具部28とを有している。
【0022】
そして、ハンドル21及びシャフト軸部24を固定するプレート部25において、ハンドル21が滑って逃げた場合にプレート部25先端に抜止め機構部27が設けられている。
これにより、ハンドル21が滑った場合でもハンドル21が脱落せず扉Dを保持することができる。
【0023】
先端の抜止め機構部27については、本実施例では、一体型で切削された強度を確保できるものが用いられるが、ピン形状でプレート部25にネジ固定や溶接されたものなどを用いてもよく、上記ネジ部については、受け側のカラーに角ネジ加工を施工し、カラーの滑りを防止することが好ましい。
【0024】
環境試験器用扉パッキン
環境試験器において、槽内の温度・湿度を保持する為、扉Dのシール性を保持して気密性をあげるためにゴム、エラストマーなどのパッキン30を用いている(図9参照)。
【0025】
環境試験器内で爆発等の圧力上昇が発生した場合、扉Dの強度にもよるが扉Dが外側に逃げる方向に変位するが、パッキン30の縮みシロ以上に変位した場合、また、パッキン30自身が柔軟性があり柔らかく、内部の圧力を抑えるだけの保持力がない場合、槽内の気密性が下がり、内部で発生した爆発等の圧力上昇による火炎が扉周りから放出してしまう場合が考えられる。
【0026】
許容変位量がパッキン30の縮みシロ以内であれば気密性は保持されるため、火炎等の放出は抑えられる。
そこで、扉D裏面のパッキン30が当たる外周に金属製、図示例ではアルミ製の枠31を装備した。
【0027】
これにより、パッキン30が爆圧で内側から外側に開こうとする場合において扉D裏壁面ではない側面方向でも気密性を保持することができる。
本発明は、上記実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲で種々変更しうること勿論である。
【符号の説明】
【0028】
1 恒温槽
2A、2B 断熱層
3 底板
4 上蓋板
5 中段の空間
6A、6B 放散口カバー
7 規制用バー
8 天井部網
9 上部の空間
10A、10B 遮蔽部カバー
11 回転遮蔽板
12 回転軸
13 幅広羽
14 幅狭羽
15 錘
16 放散口
20 ハンドル構造
21 ハンドル
23 ネジ部
24 シャフト軸部
25 プレート部
26 溝
27 抜止め機構部
28 ベース金具部
29 枢軸
30 パッキン
31 金属製の枠
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9