(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022053488
(43)【公開日】2022-04-05
(54)【発明の名称】水素チャージ方法及び水素脆化特性評価方法
(51)【国際特許分類】
G01N 27/26 20060101AFI20220329BHJP
【FI】
G01N27/26 351B
G01N27/26 351G
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021127795
(22)【出願日】2021-08-03
(31)【優先権主張番号】P 2020160081
(32)【優先日】2020-09-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】591006298
【氏名又は名称】JFEテクノリサーチ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100165696
【弁理士】
【氏名又は名称】川原 敬祐
(72)【発明者】
【氏名】大熊 隆次
(72)【発明者】
【氏名】柳澤 高志
(72)【発明者】
【氏名】神 勇人
(72)【発明者】
【氏名】梶山 浩志
(72)【発明者】
【氏名】村瀬 正次
(72)【発明者】
【氏名】小森 務
(57)【要約】
【課題】常温から低温までの広い電解液温度範囲に適用可能であり、水との反応性が高い金属材料からなる試料であっても、試料表面を侵さずに水素チャージすることができる、簡易な電気化学的手法を用いた水素チャージ方法を提供する。
【解決手段】アルカリ金属イオンを含有するアルコールからなる電解液に金属試料を浸漬する工程と、前記電解液中で前記金属試料に電子が供給され、前記金属試料の表面から前記電子が抜ける電気回路を形成することで、前記金属試料の表面で水素を発生させて、前記金属試料に電気化学的に水素をチャージする工程と、を有する水素チャージ方法。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルカリ金属イオンを含有するアルコールからなる電解液に金属試料を浸漬する工程と、
前記電解液中で前記金属試料に電子が供給され、前記金属試料の表面から前記電子が抜ける電気回路を形成することで、前記金属試料の表面で水素を発生させて、前記金属試料に電気化学的に水素をチャージする工程と、
を有する水素チャージ方法。
【請求項2】
前記電解液に対極を浸漬し、
前記金属試料と前記対極とを外部電源に接続して、
作用極としての前記金属試料に対して前記対極よりも負の電圧を印加する
ことにより、前記電気回路を形成する、請求項1に記載の水素チャージ方法。
【請求項3】
前記金属試料と、前記金属試料よりも卑な金属とを接触させた状態で、これらを前記電解液に浸漬することにより、前記電気回路を形成する、請求項1に記載の水素チャージ方法。
【請求項4】
前記電解液の温度が0℃以下である、請求項1~3のいずれか一項に記載の水素チャージ方法。
【請求項5】
前記電解液が、さらにシアン化合物を含有する、請求項1~4のいずれか一項に記載の水素チャージ方法。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか一項に記載の水素チャージ方法によって水素がチャージされた前記金属試料に対して、水素脆化特性評価試験を行う水素脆化特性評価方法。
【請求項7】
前記水素脆化特性評価試験が、トレーサー水素分析法による試験である、請求項6に記載の水素脆化特性評価方法。
【請求項8】
前記水素脆化特性評価試験が、前記金属試料に、引張、圧縮、曲げ、せん断、及びねじりの一種以上の応力を負荷して行う物性試験である、請求項6に記載の水素脆化特性評価方法。
【請求項9】
前記水素脆化特性評価試験が、水素透過試験である、請求項6に記載の水素脆化特性評価方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水素脆化特性評価試験に供される金属試料への水素チャージ方法と、当該水素チャージ方法を含む水素脆化特性評価方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
鋼等の金属材料の開発において、水素により強度及び靭性が劣化する水素脆化が問題となっている。金属材料の水素脆化特性を評価する方法としては、当該金属材料からなる試料に水素をチャージし、この水素がチャージされた試料に対して、種々の手法による水素脆化特性評価試験を行う方法が開発されている。
【0003】
金属試料に水素をチャージする方法として、例えば特許文献1に記載されるように、作用極としての金属試料と対極とを電解液に浸漬し、金属試料に対して対極よりも負の電圧を印可して、金属試料に電気化学的に水素をチャージする方法がある。この方法では、電解液として、塩化ナトリウム(NaCl)水溶液、水酸化ナトリウム(NaOH)水溶液、硫酸(H2SO4)水溶液、塩酸(HCl)水溶液などの水溶液を用いていた。この方法では、電解液中の水素イオンが金属試料から電子を受けて、金属試料の表面で水素原子となり、一部の水素原子は互いに結合して水素分子となり金属試料表面から離脱するものの、残りの水素原子は金属試料の内部に侵入するものと考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
昨今、水素化社会の実現のため、水素ステーションの建設や燃料電池車の開発が進められている。それに伴い、ステーション内で使用される材料の開発として、低温で水素チャージ及び水素脆化特性評価試験を行うニーズが高まっている。また、一般的に、金属材料は常温よりも低温で水素脆化感受性が高いため、低温という、より過酷な環境下で水素チャージ及び水素脆化特性評価試験を行うニーズが高まっている。
【0006】
しかしながら、上記した従来の電気化学的な水素チャージ方法は、0℃以下では電解液中の水が凝固するため、0℃以下といった低温では水素チャージができず、すなわち、常温から低温までの広い電解液温度範囲に適用できないという問題がある。
【0007】
低温での水素脆化特性評価方法としては、電気化学的な手法ではなく、高圧水素ガス環境下で金属試料を冷却して金属試料に水素をチャージし、引き続き水素脆化特性評価試験を行う方法がある。しかしながら、この方法では、大掛かりな高圧水素設備が必要でコストが高い。また、水素チャージ後に設備内を高圧から大気圧に戻すのに1時間以上かかり、この間にチャージされた一部の水素が金属試料から脱離することから、評価の精度に疑問がある。このため、簡易な電気化学的な手法による低温での水素チャージ方法が求められている。
【0008】
また、上記した従来の電気化学的な水素チャージ方法に、マグネシウムやマグネシウム合金のように水との反応性が高い金属材料からなる試料を適用した場合、金属試料の表面が侵されつつ、当該表面で水素が発生することになる。しかしながら、このような腐食反応による水素チャージは、金属試料の表面状態が常に変化することになり、新生な金属表面が少なくなると、水素チャージ量が少なくなるおそれがある。これまでに、水との反応性が高い金属材料からなる試料であっても、試料表面を侵さずに水素チャージすることができる電気化学的な水素チャージ方法は、確立されていない。
【0009】
そこで本発明は、上記課題に鑑み、常温から低温までの広い電解液温度範囲に適用可能であり、水との反応性が高い金属材料からなる試料であっても、試料表面を侵さずに水素チャージすることができる、簡易な電気化学的手法を用いた水素チャージ方法と、当該水素チャージ方法を用いた水素脆化特性評価方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決すべく、本発明者らは、0℃以下の低温で凝固しない非水系溶媒を用いた水素チャージ方法を検討した。しかしながら、非水系溶媒には水素イオンが含まれないため、従来のメカニズムによる水素チャージは不可能である。そこで、本発明者らは、金属アルコキシド反応を水素チャージに適用するとの着想を得た。
[金属アルコキシド反応の例]
M(アルカリ金属) + C2H5OH → C2H5OM + 1/2H2
【0011】
そして、アルカリ金属イオンを含有するアルコールを電解液として用いて、金属試料表面で金属アルコキシド反応を発生させて、水素をチャージすることができないかを検討したところ、この手法により水素チャージが可能であることを見出した。この手法であれば、電解液が0℃以下で凝固することがないため、常温から低温までの広い電解液温度範囲に適用可能である。また、電解液が非水系であることから、水との反応性が高い金属材料からなる試料であっても、試料表面を侵さずに水素チャージすることができる。
【0012】
以上の知見に基づいて完成された本発明の要旨構成は以下のとおりである。
[1]アルカリ金属イオンを含有するアルコールからなる電解液に金属試料を浸漬する工程と、
前記電解液中で前記金属試料に電子が供給され、前記金属試料の表面から前記電子が抜ける電気回路を形成することで、前記金属試料の表面で水素を発生させて、前記金属試料に電気化学的に水素をチャージする工程と、
を有する水素チャージ方法。
【0013】
[2]前記電解液に対極を浸漬し、
前記金属試料と前記対極とを外部電源に接続して、
作用極としての前記金属試料に対して前記対極よりも負の電圧を印加する
ことにより、前記電気回路を形成する、上記[1]に記載の水素チャージ方法。
【0014】
[3]前記金属試料と、前記金属試料よりも卑な金属とを接触させた状態で、これらを前記電解液に浸漬することにより、前記電気回路を形成する、上記[1]に記載の水素チャージ方法。
【0015】
[4]前記電解液の温度が0℃以下である、上記[1]~[3]のいずれか一項に記載の水素チャージ方法。
【0016】
[5]前記電解液が、さらにシアン化合物を含有する、上記[1]~[4]のいずれか一項に記載の水素チャージ方法。
【0017】
[6]上記[1]~[5]のいずれか一項に記載の水素チャージ方法によって水素がチャージされた前記金属試料に対して、水素脆化特性評価試験を行う水素脆化特性評価方法。
【0018】
[7]前記水素脆化特性評価試験が、トレーサー水素分析法による試験である、上記[6]に記載の水素脆化特性評価方法。
【0019】
[8]前記水素脆化特性評価試験が、前記金属試料に、引張、圧縮、曲げ、せん断、及びねじりの一種以上の応力を負荷して行う物性試験である、上記[6]に記載の水素脆化特性評価方法。
【0020】
[9]前記水素脆化特性評価試験が、水素透過試験である、上記[6]に記載の水素脆化特性評価方法。
【発明の効果】
【0021】
本発明の水素チャージ方法と、当該水素チャージ方法を用いた水素脆化特性評価方法は、簡易な電気化学的手法による水素チャージを含み、常温から低温までの広い電解液温度範囲に適用可能であり、水との反応性が高い金属材料からなる試料であっても、試料表面を侵さずに水素チャージすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明の第一の実施形態による水素チャージ方法を実施可能な電気化学セルの模式的断面図である。
【
図2】実施例1における昇温脱離分析の結果を示すグラフである。
【
図3】実施例2における昇温脱離分析の結果を示すグラフである。
【
図4】本発明の第二の実施形態による水素チャージ方法を実施可能な電気化学セルの模式的断面図である。
【
図5】実施例3における昇温脱離分析の結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
(水素チャージ方法)
本発明の水素チャージ方法は、アルカリ金属イオンを含有するアルコールからなる電解液に金属試料を浸漬する工程と、前記電解液中で前記金属試料に電子が供給され、前記金属試料の表面から前記電子が抜ける電気回路を形成することで、前記金属試料の表面で水素を発生させて、前記金属試料に電気化学的に水素をチャージする(侵入させる)工程と、を有する。
【0024】
前記電気回路を形成する方法として、以下の二つを挙げることができる。第一に、前記電解液に対極を浸漬し、前記金属試料と前記対極とを外部電源に接続して、作用極としての前記金属試料に対して前記対極よりも負の電圧を印加することにより、前記電気回路を形成することができる。すなわち、本発明の第一の実施形態による水素チャージ方法は、作用極としての前記金属試料と前記対極とを前記電解液に浸漬する工程と、前記金属試料に対して前記対極よりも負の電圧を印可して、前記金属試料に電気化学的に水素をチャージする工程と、を有する。
【0025】
第二に、前記金属試料と、前記金属試料よりも卑な金属とを接触させた状態で、これらを前記電解液に浸漬することにより、前記電気回路を形成することができる。すなわち、本発明の第二の実施形態による水素チャージ方法は、前記金属試料と前記金属試料よりも卑な金属とを接触させた状態で、これらを前記電解液に浸漬して、前記金属試料に電気化学的に水素をチャージする工程を有する。これは、金属試料とこれよりも卑な金属との異種金属接触腐食を利用した水素チャージ方法である。
【0026】
[金属試料]
本発明の水素チャージ方法に供する金属試料を構成する材料は、特に限定されず、種々の鋼材や、マグネシウム及びマグネシウム合金など、任意の金属材料とすることができる。金属試料の形状及びサイズは、特に限定されない。金属試料の形状は、例えば、板状であってもよいし、円柱状であってもよい。なお、効率的な水素チャージの観点から、金属試料の表面は洗浄し、汚れ及び酸化皮膜等は除去しておくことが好ましい。
【0027】
[第一の実施形態における対極、参照極]
対極の材料は、特に限定されず、例えば白金とすることができる。対極の形状も、特に限定されず、例えば、線状、棒状、又は板状とすることができる。また、必要に応じて、参照極を電解液に浸漬してもよい。参照極には、低温で使用可能な非水系参照極、例えば銀塩化銀電極を用いることができる。参照極を用いることによって、電位制御でも水素をチャージすることが可能となる。参照極に銀塩化銀電極を用いる場合は、参照極の内封液に塩化リチウム含有のエタノールを用いることが好ましい。水素チャージを電位制御で行う場合には、外部電源にポテンショスタットを用いることができる。一方、水素チャージを電流制御で行う場合には、外部電源にガルバノスタットを用いることができ、参照極は省略することができる。
【0028】
[第二の実施形態における異種金属]
第二の実施形態において用いる異種金属は、金属試料より卑な金属であれば特に限定されない。ここで、「金属試料よりも卑な金属」とは、金属試料よりも腐食電位が低い金属を意味する。異種金属としては、金属試料との電位差を大きくする観点から、例えば、Mg、Al等を好適に用いることができる。ただし、異種金属としてMgを用いる場合には、金属試料としてマグネシウム及びマグネシウム合金は不適格であり、Mgよりも貴な金属である鋼材などを好適に用いることができる。異種金属の形状及びサイズは、特に限定されない。異種金属の形状は、例えば、板状であってもよいし、ペレットのような粒状であってもよいが、表面積を確保する観点から、ペレットのような粒状であることが好ましい。
【0029】
[電解液]
本実施形態では、電解液が、アルカリ金属イオンを含有するアルコールからなることが肝要である。このような電解液は、アルカリ金属イオンを含有する電解質をアルコールに溶解させて得ることができる。第一の実施形態では、このような電解液を用いて、金属試料に対して前記対極よりも負の電圧を印可することによって、金属試料表面で金属アルコキシド反応を発生させて、水素をチャージすることができる。第二の実施形態では、このような電解液に金属試料と異種金属とを接触させた状態で浸漬することにより、異種金属接触腐食によって金属試料表面で金属アルコキシド反応を発生させて、水素をチャージすることができる。
【0030】
酢酸カリウム(CH3COOK)を溶解したエタノール(C2H5OH)を電解質とした場合を例として、第一の実施形態及び第二の実施形態における水素チャージの推定メカニズムを以下に説明する。
【0031】
[[第一の実施形態の場合]]
まず、酢酸カリウムは、電解液中で以下のとおり電離している。
CH3COOK → CH3COO- + K+
そして、金属試料の表面から抜ける電子が電解質中に供給されることで、金属試料表面では、以下の反応が生じる。
C2H5OH + e- → C2H5O- + 1/2H2 (水素発生)
K+ + C2H5O- → C2H5OK (アルコキシド生成)
すなわち、
K+ + C2H5OH + e- →C2H5OK + 1/2H2
の金属アルコキシド反応によって、金属試料表面にて水素が発生する。
なお、金属試料に対して、E=-3V vs. SHE以下の低電位を付与した場合には、金属試料表面で以下の態様の金属アルコキシド反応が生じる可能性もある。
K+ + e- → K (カリウム析出)
K + C2H5OH → C2H5OK + 1/2H2 (水素発生)
この場合でも、
K+ + C2H5OH + e- →C2H5OK + 1/2H2
の金属アルコキシド反応によって、金属試料表面にて水素が発生する。
なお、対極側では、電解液中の酢酸イオンが電子を引き抜かれて、以下のコルベ電解反応を生じる。
2CH3COO- - 2e- → C2H6(エタン) + 2CO2
このようにして生じた水素(H2)の一部が、乖離して水素原子として金属試料内に侵入するものと考えられる。
【0032】
[[第二の実施形態の場合]]
例えば、金属試料を鉄(Fe)とし、異種金属をマグネシウム(Mg)とした場合について説明する。この場合、異種金属腐食電位差により、Mgの腐食が促進されることで、金属試料に電子が供給される。
酢酸カリウムは、電解液中で以下のとおり電離している。
CH3COOK → CH3COO- + K+
そして、金属試料の表面から抜ける電子が電解質中に供給されることで、金属試料表面では、以下の反応が生じる。
C2H5OH + e- → C2H5O- + 1/2H2 (水素発生)
K+ + C2H5O- → C2H5OK (アルコキシド生成)
すなわち、
K+ + C2H5OH + e- →C2H5OK + 1/2H2
の金属アルコキシド反応によって、金属試料表面にて水素が発生する。
本実施形態の場合、金属試料と異種金属との電位差は、両者の腐食電位の差になるため、カリウムが析出するほどの電位差となることはない。
なお、異種金属側では、以下の反応が生じる。
Mg → Mg2+ + 2e-
Mg2+ + 2CH3COO- → (CH3COO)2Mg
Mg + 2C2H5OH → (C2H5O)2Mg + H2
【0033】
本発明によれば、電解液が0℃以下で凝固することがないため、常温から低温までの広い電解液温度範囲に適用可能である。また、電解液が非水系であることから、水との反応性が高い金属材料からなる試料であっても、試料表面を侵さずに水素チャージすることができる。
【0034】
アルカリ金属イオンを含有する電解質は、アルコールに溶解してアルカリ金属イオンを生じるものである限り特に限定されず、例えば、酢酸カリウム(CH3COOK)、塩化リチウム(LiCl)、酢酸リチウム(CH3COOLi)、酢酸ルビジウム(CH3COORb)等を挙げることができ、これらのうち一種以上を用いることができる。
【0035】
第一及び第二の実施形態で用いるアルコールは、アルカリ金属と反応して金属アルコキシド反応を起こすことができ、かつ、低温で凝固しない(具体的には融点が-70℃以下の)ものであれば、特に限定されない。例えば、炭素数が10以下、より好ましくは6以下の直鎖又は分岐の低級アルコールを用いることができ、より具体的には、エタノール、メタノール、1-プロパノール、2-プロパノール等を挙げることができ、これらの一種以上を用いることができる。
【0036】
アルカリイオン金属を含有する電解質の、アルコールに対しての濃度は、電解質の溶解度以下であり、水素チャージ時の電流及び電圧の安定性がよい濃度範囲が好ましい。例えば、酢酸カリウムとエタノールの場合、酢酸カリウムの濃度はエタノールに対して0.3質量%以上14質量%以下とすることが好ましい。14質量%以下であれば、エタノールに溶けなくなった不溶の酢酸カリウムが存在せず、水素チャージ時の電位又は電流が確実に安定する。0.3質量%以上であれば、電気抵抗が増加することがなく、電流又は電圧が確実に安定する。この濃度範囲において、電位一定の条件下で電流を増加させたい場合には、溶液抵抗を下げる目的で、電解質濃度をより増加させたほうが好ましい。
【0037】
水素チャージ量を多くする観点から、電解液は、さらに添加剤としてシアン化合物(シアンイオンを含む化合物)を含有することが好ましい。この添加剤としては、チオシアン酸アンモニウム(NH4SCN)、チオシアン酸カリウム(KSCN)等を挙げることができ、これらの一種以上を用いることができる。当該添加剤の濃度は、水素チャージ効果を高める観点から、0~5g/Lの範囲であることが好ましい。
【0038】
電解液の温度は特に限定されず、常温とすることもできるが、0℃以下であることが好ましく、-20℃以下であることがより好ましい。本実施形態では、電解液が非水系であるため、このような低温の電解液を用いて、電気化学的な水素チャージが可能である。他方で、使用するアルコールの融点を考慮して、電解液の温度は-70℃以上であることが好ましい。
【0039】
[第一の実施形態による水素チャージ工程]
電気化学セルを組み立てた後、電解液には脱水剤を添加し、スターラーで電解液を所定時間撹拌することにより、脱水処理を行うことが好ましい。また、電解液に乾燥窒素を通気し、脱酸素処理を行うことがより好ましい。脱水処理及び脱酸素処理後、水素チャージ中は、セル内上部の空間(電解液の上部の空間)に乾燥窒素を通気させておくことが好ましい。
【0040】
水素チャージ環境の(雰囲気)温度は、特に限定されず、常温とすることもできるが、0℃以下であることが好ましく、-20℃以下であることがより好ましい。本実施形態では、電解液が非水系であるため、このような低温の環境であっても、電気化学的な水素チャージが可能である。他方で、使用するアルコールの融点を考慮して、水素チャージ環境の(雰囲気)温度は-70℃以上であることが好ましい。
【0041】
水素チャージの手法は、ポテンショスタットを用いる電位制御でもよいし、ガルバノスタットを用いる電流制御でもよい。水素チャージ後、外部電源を切って、金属試料を電解液から取り出す。設定する電位及び電流は、電解液中の酸素濃度、電解液中の水分濃度、及び電解液温度に依存する。脱水処理、脱酸素処理のいずれかの処理を室温で24時間以上行った場合、又は、脱水処理及び脱酸素処理を、室温で合計24時間以上行った場合には、印可する電位は、カソード分極曲線で、酸素及び水素の還元反応が終了する電位以下が好ましく、-1.3V vs. Ag/AgCl以下が好ましい。-1.3V vs. Ag/AgClより大きい場合、電解液中の酸素還元を伴う水素反応が起き、水素侵入量のコントロールが難しいためである。同様に、電流制御の場合、電流密度は0.01mA/cm2以上が好ましい。0.01mA/cm2未満の場合、電解液中の酸素及び水素の還元を伴う水素反応が起き、水素侵入量のコントロールが難しいからである。
【0042】
[第二の実施形態による水素チャージ工程]
容器内に電解液を収容した後、電解液には脱水剤を添加し、スターラーで電解液を所定時間撹拌することにより、脱水処理を行うことが好ましい。また、電解液に乾燥窒素を通気し、脱酸素処理を行うことがより好ましい。
【0043】
水素チャージ環境の(雰囲気)温度は、特に限定されず、常温とすることもできるが、0℃以下であることが好ましく、-20℃以下であることがより好ましい。本実施形態では、電解液が非水系であるため、このような低温の環境であっても、電気化学的な水素チャージが可能である。他方で、使用するアルコールの融点を考慮して、水素チャージ環境の(雰囲気)温度は-70℃以上であることが好ましい。
【0044】
水素チャージの手法は、金属試料と異種金属とを接触させた状態で電解液に浸漬するのみでよい。異種金属接触腐食によって金属試料表面で金属アルコキシド反応を発生させて、水素をチャージすることができる。本実施形態では、外部電源を使用せず、浸漬のみの簡易な方法で水素チャージを行うことができる。
【0045】
[洗浄・保管]
水素チャージ後は、金属試料表面を研磨する、又は、水分を一定濃度含有するエタノール溶液で金属試料を洗浄する工程を行い、その後、アセトンにて金属試料を洗浄する工程を行うことが好ましい。水分を含有するエタノール溶液で金属試料を洗浄することで、水分と反応性が高いアルカリ金属残渣を除去することができる。アセトン洗浄後は、金属試料を不織布で軽く拭き取り、液体窒素に保管する。例えば、試験片の厚さが0.5mm以下といった、水素チャージ後の水素抜けが多い場合や、低温チャージの場合においては、水素チャージ後は、電解液と同じ温度の、水分を一定濃度含有するエタノール溶液で金属試料を洗浄し、その後、電解液と同じ温度の低温のアセトンにて金属試料を洗浄することがより好ましい。
【0046】
(水素脆化特性評価方法)
本発明の一実施形態による水素脆化特性評価方法は、上記した本実施形態による水素チャージ方法によって水素がチャージされた金属試料に対して、水素脆化特性評価試験を行うことを特徴とする。
【0047】
水素脆化特性評価試験を行う際の(雰囲気)温度は、特に限定されず、常温とすることもできるが、低温で水素脆化特性評価試験を行うニーズを満たす観点から、0℃以下であることが好ましく、-20℃以下であることがより好ましい。他方で、電解液の融点を考慮して、水素脆化特性評価試験を行う際の(雰囲気)温度は-70℃以上であることが好ましい。
【0048】
水素脆化特性評価試験は、公知の又は任意の試験方法であればよく、特に限定されないが、(i)トレーサー水素分析法による試験、(ii)金属試料に、曲げ、圧縮、引張及びねじりの一種以上の応力を負荷して行う物性試験、及び(iii)水素透過試験のうち一つ以上を行うことができる。
【0049】
[トレーサー水素分析法]
トレーサー水素分析法とは、金属試料中の転位、空孔、粒界などの格子欠陥に水素をチャージし、そのチャージされた水素を昇温脱離分析装置により分析し、得られるプロファイルによって、金属試料中の格子欠陥プロファイルを把握する手法である。昇温脱離分析装置としては、検出系が質量分析計であるTDS(Thermal Desorption Spectrometry)と、検出系がガスクロマトグラフィ装置であるTDA(Thermal Desorption Analysis)とを挙げることができる。TDS又はTDAによる、金属試料に含まれる水素濃度の測定条件は、特に限定されないが、昇温速度50~100℃/hで、金属試料を-100~-50℃の開始温度から、200~300℃の終了温度まで加熱しつつ、放出された水素量を測定することができる。
【0050】
本実施形態をトレーサー水素分析法に適用した場合、以下の効果を得ることができる。低温で水素チャージすることができ、また、高圧水素ガスによる水素チャージ法と比べて、水素チャージ後に短時間で液体窒素に保管することができる。このため、水素チャージ後に金属試料から水素が拡散することを抑制することができ、その結果、精度の高い水素濃度の測定が可能であり、ひいては、水素脆化特性評価を高精度に行うことができる。特に、トレーサー水素分析法では、ピーク温度がトラップエネルギーと比例するように(すなわち熱拡散律速となるように)、金属試料を厚さ0.5mm以下といった薄片とすることが好ましい。ただし、金属試料が薄い場合、水素チャージ後に水素が拡散しやすいため、本実施形態によって水素の拡散を抑制できる効果は顕著である。
【0051】
[応力負荷物性試験]
金属試料に、引張、圧縮、曲げ、せん断、及びねじりの一種以上の応力を負荷する。金属試料に対する応力の負荷は、上述の方法によって金属試料に水素をチャージした後に行ってもよいし、水素をチャージしながら行ってもよい。金属試料に負荷する応力の種類については、特に制限されず、引張応力、圧縮応力、曲げ応力、せん断応力、ねじり応力のいずれであってもよい。これらの応力は、さらに静的応力及び動的応力のどちらであってもよい。そして、例えば、金属試料に破断が生じた際の応力を測定することによって、金属試料の水素脆化特性を直接的に評価することが可能である。
【0052】
本実施形態を応力負荷物性試験に適用した場合、以下の効果を得ることができる。低温で水素チャージすることができ、また、高圧水素ガスによる水素チャージ法と比べて、水素チャージ後に短時間で液体窒素に保管することができる。このため、水素チャージ後に金属試料から水素が拡散することを抑制することができ、その結果、精度の高い水素濃度の測定が可能であり、ひいては、水素脆化特性評価を高精度に行うことができる。
【0053】
[水素透過試験]
水素透過試験とは、板状の金属試料の片面から水素をチャージし、金属試料の内部を透過して、他面から放出される水素を検出する手法である。金属試料の片面への水素チャージ方法として、本実施形態の水素チャージ方法を適用することができる。水素検出側については、透過してきた水素を電気化学的に測定してもよいし、ガスクロマトグラフ等を用いてガスとして評価してもよい。ただし、本実施形態の水素チャージ方法を0℃以下の低温で行う場合には、ガスクロマトグラフ等を用いて水素を検出する。水素透過試験では、金属試料中への水素の侵入速度及び拡散速度を評価することができる。
【0054】
本実施形態を水素透過試験に適用した場合、以下の効果を得ることができる。低温で水素チャージ及び水素透過試験を行うことによって、水素の拡散係数を精度よくプロットすることができる。
【実施例0055】
(実施例1)
図1に示す電気化学セルを用いて、金属試料(1)への水素チャージ試験を行った。金属試料は、質量%で、C:0.35%、Si:0.21%、Mn:0.80%、P:0.12%、S:0.13%、Cu:0.01%、Ni:0.01%、Cr:1.04%、及びMo:0.18%を含み、残部がFe及び不可避的不純物である成分組成を有する低合金鋼SCM435H(JIS G 4053(2008))であり、その寸法及び形状は、長さ20mm、幅10mm、厚さ2mmの薄板状である。この金属試料をステンレスワイヤー(8)にスポット溶接した。対極は、白金(Pt)ワイヤー(7)である。電解液(2)は、酢酸カリウム30gをエタノール(無水)270gに溶解した液体である。電解液は冷凍庫で冷却し、液温-40℃にて一日以上保管した。
【0056】
雰囲気温度-40℃の冷凍庫内に設置したセパラブルフラスコ(5)に電解液を収容した。セパラブルフラスコの蓋(6)には、白金ワイヤー(7)、ステンレスワイヤー(8)、及び熱電対(9)が固定されるとともに、電解液に乾燥窒素を通気するためのガス導入用ガラス管(10)及びガス排出用ガラス管(11)を設けた。脱水剤(4)としてのモレキュラーシーブ3Aの粉末24gを入れたお茶パックを電解液に入れた。電解液の温度は、熱電対(9)にて常時測定し、-40℃に管理した。そして、スターラー(3)で電解液を攪拌し、さらにガス導入用ガラス管(10)から乾燥窒素を電解液内に導入しつつ、ガス排出用ガラス管(11)から排気することで、24時間の脱水処理及び脱酸素処理を行った。その後、スターラーを止め、水素チャージ試験を行った。水素チャージ試験は、作用極としての金属試料と対極としての白金ワイヤーとを外部電源(ガルバノスタット)に接続し、定電流制御にて金属試料に対して対極よりも負の電圧を印可して、金属試料に電気化学的に水素をチャージした。水素チャージ時間は24時間とした。電流密度は、-0.5mA/cm2と-1.0mA/cm2の2条件とした。なお、水素チャージ中は、ガス導入用ガラス管(10)の先端を電解液より上部に位置させて、セル内の上部空間に乾燥窒素を通気した。
【0057】
水素チャージ試験後、金属試料を電解液から取り出し、予め-40℃に冷やしていた低温60%エタノール水溶液を含ませた脱脂綿で表面を拭き、さらに同液体で2分間攪拌洗浄を行い、さらに低温(-40℃)アセトンに浸漬して、1分間攪拌洗浄した。その後、キムワイプで金属試料を少し拭き取り、液体窒素にすぐさま保管した。金属試料を電解液から取り出してから、液体窒素に入れるまでの時間は、約4分間であり、常温で放置しなかった。
【0058】
その後、液体窒素から金属試料を取り出し、金属試料に充填された水素濃度の測定を行った。具体的には、凍結されたままの金属試料をTDA(株式会社ジェイ・サイエンス・ラボ製 JTF-20AL)に入れ、金属試料を昇温速度100℃/hで-100℃から200℃まで加熱しつつ、放出された水素量を測定した。この水素分析の結果を
図2に示す。この結果は、酢酸カリウムをエタノールに溶解した電解液を用いることによって、電解液及び水素チャージ環境の温度を0℃以下の低温としても、金属試料に水素チャージすることができたことを示している。また、電流密度が上昇するにつれ、水素チャージ量が増加することを示している。なお、グラフ内の数値(単位:ppm)は水素量を示す。
【0059】
(実施例2)
図1と同様の電気化学セルを用いて、金属試料への水素チャージ試験を行った。金属試料は、質量%で、C:0.39%、Si:1.47%、Mn:1.50%、P:0.014%、O:0.0006%、及びN:0.0008%を含み、残部がFe及び不可避的不純物である成分組成を有する低合金TRIP鋼であり、その寸法及び形状は、長さ30mm、幅10mm、厚さ1.2mmの薄板状である。金属表面は#2400番であらかじめ研磨した。この金属試料をステンレスワイヤーにスポット溶接した。対極は、白金(Pt)ワイヤーである。電解液は、酢酸カリウム30gをエタノール(無水)270gに溶解し、さらにチオシアン酸アンモニウム(NH
4SCN)を0g、0.5g、1.0g、及び3.0gの4条件で添加した液体である。
【0060】
常温(25℃)雰囲気内に設置したセパラブルフラスコに常温(25℃)の電解液を収容した。脱水剤としてのモレキュラーシーブ3Aの粉末24gを入れたお茶パックを電解液に入れた。そして、スターラーで電解液を攪拌し、さらに乾燥窒素をセル内上部空間に通気することで、24時間の脱水処理を行った。脱水処理後、スターラーを止め、セル内の上部空間への乾燥窒素の通気は継続しつつ、水素チャージ試験を行った。水素チャージ試験は、作用極としての金属試料と対極としての白金ワイヤーとを外部直流電源に接続し、電圧4.0Vの定電圧制御にて金属試料に対して対極よりも負の電圧を印可して、金属試料に電気化学的に水素をチャージした。水素チャージ時間は24時間とした。
【0061】
水素チャージ試験後、金属試料を電解液から取り出し、表面を耐水研磨紙#400番で研磨し、アセトン洗浄を行い、その後、液体窒素に保管した。金属試料を電解液から取り出してから、液体窒素に入れるまでの時間は、約5分間とした。
【0062】
その後、液体窒素から金属試料を取り出し、金属試料に充填された水素濃度の測定を行った。具体的には、凍結されたままの金属試料をTDA(株式会社ジェイ・サイエンス・ラボ製 JTF-20AL)に入れ、金属試料を昇温速度100℃/hで-100℃から300℃まで加熱しつつ、放出された水素量を測定した。この水素分析の結果を
図3に示す。この結果は、酢酸カリウムをエタノールに溶解した電解液を用いる水素チャージは、電解液及び水素チャージ環境の温度が常温の場合にも適用できることを示している。また、この結果は、チオシアン酸アンモニウムの添加量が多いほど、水素チャージ量が多くなることを示している。なお、グラフ内の数値(単位:ppm)は水素量を示す。
【0063】
(実施例3)
図4に示す電気化学セルを用いて、金属試料(21)への水素チャージ試験を行った。金属試料は、質量%で、C:0.35%、Si:0.21%、Mn:0.80%、P:0.12%、S:0.13%、Cu:0.01%、Ni:0.01%、Cr:1.04%、及びMo:0.18%を含み、残部がFe及び不可避的不純物である成分組成を有する低合金鋼SCM435H(JIS G 4053(2008))であり、その寸法及び形状は、長さ20mm、幅10mm、厚さ2mmの薄板状である。また、この金属試料よりも卑な金属としてMgを選択し、純度99.95%、直径5mmφのMgペレット(22)を100g用意した。電解液(23)は、酢酸カリウム30gをエタノール(無水)270gに溶解し、さらにチオシアン酸アンモニウム(NH
4SCN)を2g添加した液体である。電解液(23)はビーカー(24)に収容した状態で、雰囲気温度-40℃の冷凍庫で冷却し、液温-40℃にて一日保管した。その後、引き続き雰囲気温度-40℃の冷凍庫内で、金属試料(21)とMgペレット(22)とを接触させた状態で、これらを電解に浸漬し、そのまま一週間放置した。なお、電解液に対する脱水処理及び脱酸素処理は行わなかった。
【0064】
その後、金属試料を電解液から取り出し、予め-40℃に冷やしていた低温60%エタノール水溶液で1分間攪拌洗浄を行い、さらに低温(-40℃)アセトンに浸漬して、1分間攪拌洗浄した。その後、キムワイプで金属試料を少し拭き取り、液体窒素にすぐさま保管した。金属試料を電解液から取り出してから、液体窒素に入れるまでの時間は、約2分間であり、常温で放置しなかった。
【0065】
その後、液体窒素から金属試料を取り出し、金属試料に充填された水素濃度の測定を行った。具体的には、凍結されたままの金属試料をTDA(株式会社ジェイ・サイエンス・ラボ製 JTF-20AL)に入れ、金属試料を昇温速度100℃/hで-100℃から200℃まで加熱しつつ、放出された水素量を測定した。この水素分析の結果を
図5に示す。この結果は、酢酸カリウムをエタノールに溶解した電解液中で金属試料とMgペレットとの異種金属接触腐食を生じさせることによって、外部電源を用いることなく、金属試料に水素チャージすることができたことを示している。
本発明による水素チャージ方法は、トレーサー水素分析法による試験、金属試料に、曲げ、圧縮、引張及びねじりの一種以上の応力を負荷して行う物性試験、並びに水素透過試験などの種々の水素脆化特性評価方法に適用できる。