(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022053509
(43)【公開日】2022-04-05
(54)【発明の名称】カメラシステム
(51)【国際特許分類】
B60S 1/62 20060101AFI20220329BHJP
B60R 1/22 20220101ALI20220329BHJP
H04N 5/225 20060101ALI20220329BHJP
【FI】
B60S1/62 110A
B60R1/22
H04N5/225 430
【審査請求】有
【請求項の数】23
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021150063
(22)【出願日】2021-09-15
(31)【優先権主張番号】10 2020 124 959.4
(32)【優先日】2020-09-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(71)【出願人】
【識別番号】500020380
【氏名又は名称】メクラ・ラング・ゲーエムベーハー・ウント・コー・カーゲー
【氏名又は名称原語表記】MEKRA Lang GmbH & Co. KG
(74)【代理人】
【識別番号】110001380
【氏名又は名称】特許業務法人東京国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ヴェルナー・ラング
(72)【発明者】
【氏名】ステファン・セントマイヤー
【テーマコード(参考)】
3D225
5C122
【Fターム(参考)】
3D225AA02
3D225AA11
3D225AB01
3D225AB02
3D225AC07
3D225AC09
3D225AD22
5C122DA03
5C122DA11
5C122DA14
5C122EA02
5C122EA47
5C122FB03
5C122GE05
5C122GE07
5C122GE11
5C122HA84
(57)【要約】
【課題】本発明の目的は、あらゆる環境条件中に、および/または、異なる環境条件の間で急速に変化している間に、光学素子から水滴を確実に除去すること。
【解決手段】車両Fのためのカメラシステム100は、車両環境をキャプチャするためのカメラ10と保護要素40とを備える。カメラ10は、光入射部分EBを有する光学素子11と、光学素子11を支持する保持具とを備える。保護要素40は、光学素子11および保持具に別個に位置付けられ、少なくとも光学素子11の光入射部分EB上に配置される。保護要素40Fは、光入射部分EBの使用部分NBを露出する観察開口部41を備える。光学素子11と保護要素40との間に、使用部分NB上に位置する水滴Tをキャプチャするための少なくとも1つの間隙42が存在する。観察開口部41から遠位に、排水開口部43が設けられる。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両(F)のためのカメラシステム(100)であって、
車両環境をキャプチャし、光入射部分(EB)を有する光学素子(11)、および、前記光学素子(11)を支持する保持具(13)を有するカメラ(10)と、
少なくとも前記光学素子(11)の前記光入射部分(EB)を介して前記光学素子(11)および前記保持具(13)と別個に位置付けられ、前記光入射部分(EB)の使用部分(NB)を露出させる観察開口部(41,41A,41B,41C,41D,41E)を有する保護要素(40,40A,40B,40C,40D,40E,40F)と、
を備え、
前記使用部分(NB)上に位置する水滴(T)をキャプチャするための少なくとも1つの間隙(42,42A,42B,42C,42D,42E)が、前記光学素子(11)と前記保護要素(40,40A,40B、40C,40D,40E,40F)との間に存在し、
排水開口部(43,43A,43B,43C,43D,43E)が、前記観察開口部(41,41A,41B,41C,41D,41E)から遠位に設けられている、カメラシステム(100)。
【請求項2】
前記間隙(42,42A,42B,42C,42D,42E)は、前記水滴(T)を受け入れることによって毛細管現象を展開するように寸法決めされている、請求項1に記載のカメラシステム(100)。
【請求項3】
前記光学素子(11)は、疎水性コーティングを有する、請求項1または2に記載のカメラシステム(100)。
【請求項4】
前記間隙(42,42A,42B,42C,42D,42E)は、前記間隙の延伸範囲に沿って変化する断面を有する、請求項1から3のいずれか一項に記載のカメラシステム(100)。
【請求項5】
前記間隙(42,42A,42B,42C,42D,42E)は、前記光学素子(11)の前記光入射部分(EB)に面する前記保護要素(40,40A,40B,40C,40D,40E,40F)の少なくとも1つの表面内に設けられる内側ノッチ(49)によって形成される、請求項1から4のいずれか一項に記載のカメラシステム(100)。
【請求項6】
前記内側ノッチ(49)は、前記光入射部分(EB)の外側に向かって半径方向に延在する、請求項5に記載のカメラシステム(100)。
【請求項7】
前記内側ノッチ(49)は、前記光入射部分(EB)の外側に向かってらせん状に延在する、請求項5に記載のカメラシステム(100)。
【請求項8】
前記内側ノッチ(49)は、前記保護要素(40,40A,40B,40C,40D,40E,40F)の前記観察開口部(41)の周りにほぼ同心円状に延在する、請求項5に記載のカメラシステム(100)。
【請求項9】
前記内側ノッチ(49)は、前記水滴(T)の流動方向に対して横方向に、前記光入射部分(EB)の外側方向に向かって変化する断面を有する、請求項5から8のいずれかに記載のカメラシステム(100)。
【請求項10】
前記内側ノッチ(49)は、前記観察開口部(41)から前記排水開口部(43)へのチャネルを形成する、請求項5から9のいずれか一項に記載のカメラシステム(100)。
【請求項11】
前記間隙(42,42A,42B,42C,42D,42E)は、前記光学素子(11)に面する前記保護要素(40,40A,40B,40C,40D,40E,40F)の表面が、前記光学素子(11)の前記光入射部分(EB)から離間されるように形成される、請求項1から4のいずれか一項に記載のカメラシステム(100)。
【請求項12】
前記光学素子(11)に面する前記保護要素(40,40A,40B,40C,40D,40E,40F)の表面は、前記保護要素(40,40A,40B,40C,40D,40E,40F)の、前記光学素子(11)からの規定の距離を提供するための少なくとも1つのリブ(47)を有する、請求項1から11のいずれか一項に記載のカメラシステム(100)。
【請求項13】
前記保護要素(40,40E)の外側は、前記使用部分(NB)に位置する水滴(T)の前記間隙に向かう移動を促進するための、および/または、前記保護要素(40,40E)の外側に位置する水滴(T)の前記観察開口部(41A,41E)に向かう移動を妨げるための、空気の渦流を引き起こす幾何形状(15)を有する、請求項1から12のいずれか一項に記載のカメラシステム(100)。
【請求項14】
前記保護要素(40C)は、前記使用部分に位置する水滴(T)の前記間隙に向かう移動を促進するために、および/または、前記保護要素(40C)の外側に位置する水滴(T)の前記観察開口部(41)に向かう移動を妨げるために、前記光学素子(11)の前記光入射部分(EB)に媒体を与えるノズル(19)を有する、請求項1から13のいずれか一項に記載のカメラシステム(100)。
【請求項15】
前記保護要素(40B,40D)は、カメラハウジングまたはカメラ保持具の一部分である、請求項1から14のいずれか一項に記載のカメラシステム(100)。
【請求項16】
前記保護要素(40C)は、加熱要素(17)をさらに有する、請求項1から15のいずれか一項に記載のカメラシステム(100)。
【請求項17】
前記加熱要素(17)は、前記間隙(42C)内に配置されている、請求項16に記載のカメラシステム(100)。
【請求項18】
前記加熱要素(17)は、加熱フィルムである、請求項16または17に記載のカメラシステム(100)。
【請求項19】
前記保護要素(40,40A,40B,40C,40D,40E,40F)は、熱可塑性物質、熱硬化性プラスチック、エラストマー、金属材料またはそれらの組み合わせから形成される、請求項1から18のいずれか一項に記載のカメラシステム(100)。
【請求項20】
前記保護要素(40,40A,40B,40C,40D,40E,40F)は、60ショア未満のショア硬度を有する、請求項19に記載のカメラシステム(100)。
【請求項21】
前記観察開口部(41,41A,41B,41C,41D,41E)および前記間隙(42,42A,42B,42C,42D,42E)は、前記保護要素(40,40A,40B,40C,40D,40E,40F)によって前記使用部分(NB)をカバーし、前記間隙(42,42A,42B,42C,42D,42E)を閉じることなく、前記カメラ(100)を一定の範囲内で調整することが可能であるように、寸法決めされる、請求項1から20のいずれか一項に記載のカメラシステム(100)。
【請求項22】
前記保護要素(40,40A,40B,40C,40D,40E,40F)は、親水性コーティングを有する、請求項1から21のいずれか一項に記載のカメラシステム(100)。
【請求項23】
前記カメラシステム(100)は、ミラー交換システムの一部分である、請求項1から22のいずれか一項に記載のカメラシステム(100)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カメラシステムに関し、特に、保護要素を有する車両のためのカメラシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
動力車について、運転動作中に、車両の周りの、いわゆる視野を、運転者にとって見えるようにすることが、法令によって規定されている。いずれの視野を見えるようにしなければならないかは、動力車のタイプ、例えば、オートバイ、乗客を輸送するための動力車、物品を輸送するための動力車などに基づく。視野の可視性は、間接視のためのデバイスによって提供されなければならず、視野は、間接視のためのデバイスを使用することによって、常時、運転席に座る運転者によって見えなければならない。車両のタイプ、特に、運転者が直接的に見ることができる、車両の周りの領域に応じて、種々の法的規定が、間接視のためのデバイスを使用することによって、常時、一定の視野が持続的かつ確実に見えていることを必要とする。欧州において、運転者にとっていつでも確実に見えていなければならない視野は、UN/ECEの規則46に定義されている。さらなる関連基準および規則は、例えば、ISO5721、ISO5006、ISO16505、ISO14401およびEU167/2013を含む。法令によって要求される視野に加えて、多くの場合、車両の周りのさらなる領域、いわゆる視認領域が、間接視のためのデバイスによって見えるようになる。視認領域は、法令によって規定されている視野を含み得る。
【0003】
通常、視野の観察は、1つまたは複数のミラーを用いて可能である。しかしながら、ミラーにはいくつかの欠点がある。例えば、ミラーは運転者に、ミラーの、運転者と同じ側にある物体しか示さない。ミラーの背後に何らかの物体があった場合、これをこのミラーによって示すことはできない。加えて、平坦なガラスのみから作成されているミラーは、ミラーが運転者に非常に近い場合を除き、運転者に小さい領域を示す。ミラーが凸状に形成される場合、ミラーは像の歪みを生成する。大型の車両は一般的に、車両の外側の周りに取り付けられている6つ以上のミラーを有し、それらのほとんどは凸面で、歪んでおり、それによって、運転者がすべての関連するミラーに同時に注意を払うことが困難になっている。それにもかかわらず、すべてのミラーを以てしても、これらの車両の周りには、視認領域内の盲点、すなわち、視野が配置されていない領域が依然として存在する。
【0004】
最近、間接視のためのデバイスとしてのミラーに加えて、またはその代わりに、カメラシステムを間接視のためのデバイスとして使用することを考慮することがますます一般的になってきている。そのようなカメラシステムにおいて、画像が連続的にキャプチャ、検出または処理され、そうである場合、記憶される。画像センサデバイスを有する画像キャプチャユニットによってキャプチャされる(ビデオ)データは、例えば、供給ユニットを使用することによって送信され、任意選択的に、処理後、運転者のキャビン内に位置する再生デバイスに送信される。再生デバイスは、それぞれの法令によって規定されている視野または複数の視野、および、任意選択的に、車両の周りの領域の、潜在的な衝突の危険性、他の物体までの距離などのような、さらなる情報のビューを、視野が、運転者にとって常時、持続的に見えるように、再生する。同時に、ビューシステムが、改善された夜間視、より柔軟な構成の可能性、および、より低い歪みでより大きい視野を見る可能性を促進する。
【0005】
持続的に見えるとは、この文脈においては、視野へのビューが、時間的に中断しないように描写されること、すなわち、視野もしくはその部分が交互に見え隠れすることによって、または、視野を完全に見ることができないように他の表現を重ね合わせることによって中断されないことを意味する。したがって、それぞれの視野または視野は、ディスプレイデバイス上で連続的にリアルタイムに示され、または、見えるようにされる。これは、少なくとも、点火装置がオンにされ、および/または、好ましくは、例えば、対応する信号、例えばドア開放信号または点火スイッチ信号を受信するセンサに結合されているすべての車両条件にとって持続的に見えるものとして規定されている視野に当てはまる。
【0006】
そのようなミラー交換システムについて、部分的に、カメラの描写特性、対物レンズの開口部による歪みなどに関する特定の要件に対処するために、複数の別個のレンズから構成される対物レンズまたはレンズ系の非常に特定的な構成を有するカメラが適用される。それによって、対物レンズのそのような構成は、多くの場合、最大限可能である対物レンズの開口部の一部分にしか使用されない、すなわち、対物レンズの構成は主に、使用される部分において、必要な特性を有し、例えば、境界部分など、他の部分においてはこれらの特性を有しないため、対物レンズによってキャプチャされる画像全体から部分画像が切り抜かれ、描写に使用される。
【0007】
一般的に、カメラシステムは、車両の周りの部分をキャプチャするために、車両の外側に取り付けられる。しかしながら、車両の外側に取り付けることによって、カメラシステムは、汚染または降水などの、環境による影響を受ける。特に、水滴、例えば、雨滴または霧もしく雪による降水が、カメラのレンズなどのカメラの光学素子、または、一般的に、カメラを外側に対して閉じる要素に堆積し、それによって、車両環境の、カメラによってキャプチャされる画像データを損なう可能性がある。特に、カメラレンズ上の水滴によって、車両環境内の物体または人が、異物によって部分的にまたは完全に隠れ、したがって、通常は運転者のキャビンに取り付けられている再生ユニット上で運転者に示されないかまたは満足に示されないということが起こり得る。この結果として、運転者は、物体または人を十分にまたはまったく認識できなくなる。それによって、運転者によって認識されない物体または人との衝突が生じ、したがって、場合によっては重大な事故が生じる可能性がある。
【0008】
したがって、従来技術から、空気ジェット、ワイピングアームなどのワイピング装置によって、または、回転レンズもしくはレンズの疎水性コーティングによって水滴を除去するカメラシステムが知られている。最後に、水滴がレンズに流れ込むのを妨げるために、レンズの周りにシリンダを配置することも知られている。
【0009】
しかしながら、従来技術のカメラシステムは、風向きまたは降水量の変化などの環境条件の変化によって、レンズ上の水滴を不十分にしか除去することができず、それによって、車両の運転者が十分に実現することができる車両環境の現実的な描写が可能でないという欠点を有する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
したがって、本発明の目的は、あらゆる環境条件中に、および/または、異なる環境条件の間で急速に変化している間に、光学素子から水滴を確実に除去することを可能にする、車両、特に商用車両のためのカメラシステムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述の目的は、請求項1の特徴を有する車両のためのカメラシステムによって解決される。好ましい実施形態が、従属請求項において与えられる。
【0012】
本発明は、光学素子の、車両環境の描写に関連する部分、すなわち、光学素子の使用部分においてのみ水滴を除去することに焦点を当てるという着想に基づく。車両環境の描写によって、通常、車両環境の、運転者が実際に関心のある車両環境の部分よりも大幅に大きい部分が、画像キャプチャユニットによってキャプチャされ、対応して示される。例えば、特定のレンズ構成またはレンズ形状に起因して、キャプチャされる車両環境の比較的小さい部分のみが、再生ユニット上で車両環境の描写に使用されるということが起こり得る。車両環境の残りの部分は再生ユニット上で運転者に示されない。したがって、描写されるべきでない車両環境の部分をキャプチャする光学素子の部分上に1つまたは複数の水滴が存在するか否か、または、さらに、描写のための光ビームが光学素子のこの部分に当たることができるか否かは、車両環境の確実で現実的な描写には関係ない。言い換えれば、描写されるべきでない車両環境の部分をキャプチャする光学素子の部分上の水滴は、それらがそこに存在し得る理由にかかわらず、決して再生ユニット上で描写されず、車両環境が光学素子のこの部分によってキャプチャされるか否かは関係ない。車両環境の示されるべきである部分、したがって、光学素子の使用部分を形成する部分をキャプチャする光学素子の部分において水滴を除去することは、そこにおいてのみ必要とされるが、信頼性は高い。
【0013】
一般的に、光学素子は、光路、すなわち、光が画像キャプチャユニットに入る位置と、光が画像センサに衝突する位置との間の、光源または車両環境から画像キャプチャユニットを通過するときに光によってカバーされる経路内に位置する、画像キャプチャユニットの素子である。言い換えれば、光学素子は、画像キャプチャユニットの最外部分まで延在し、したがって、車両の環境に向けられる画像キャプチャユニットの素子を形成する、画像キャプチャユニットの素子である。光学素子は、対応して、車両環境からの光ビームが衝突し、光がその中へと案内される光入射部分を有する。したがって、光入射部分は、光ビームが通過し、その結果として光ビームが光学的に案内される、光学素子の部分である。光学素子の使用部分は、光学素子の光入射部分の一部分である。例えば、光学素子は、対物レンズであり得る。光学素子は通常、カメラシステム内の保持具によって支持される。保持具は、光学素子を外側から包囲するスリーブ、または、対物レンズリングなど、光学素子を外側から把持するブラケットであってもよい。光学素子の形状および構造に応じて、保持具のさらなる構成が考えられる。
【0014】
光学素子の、車両環境の描写に関連する部分を、水滴の堆積から保護するために、本発明によるカメラシステムは、観察開口部を有する保護要素を有する。保護要素は、光学素子とは別個のものであり、提供される観察開口部が、光学素子の、車両環境の描写に関連する部分をブランクのままにするように、カメラシステム内に取り付けられた状態で光入射部分上に配置される構成要素であり、例えば、保護要素は蓋のような構成要素である。観察開口部は、保護要素の外側から保護要素の内側への連通を可能にする、保護要素内の開口部または凹状部である。好都合には、観察開口部は、取り付けられた状態で光学素子の光入射部分にあたる光ビームを、再生ユニット上での車両環境の描写に必要な程度まで低減する幾何形状を有する。光学素子の、描写に関連しない部分は隠され、結果、光ビームはこれらの隠れた部分を通って光学素子に入らない。それによって、観察ビューの幾何形状は好ましくは、光学素子の使用部分に適合される。保護要素の取り付けられた状態において、観察開口部は、光学素子の使用部分が車両環境に対して露出されるように構成される。したがって、光ビームは、それぞれ、観察開口部を介して光学素子の使用部分に当たり、または、入ることができる。同時に、光学素子に衝突する可能性がある水の量が、少なくとも横方向において、保護要素によって一部分が完全にカバーされ、使用部分が保護されるという点において、低減される。
【0015】
保護要素は、光学素子と保護要素との間に少なくとも1つの間隙が存在するように、光学素子上に配置される。間隙は、使用部分の縁部から排水開口部まで延在する。排水開口部は、使用部分に対して遠位に配置され、車両環境に向かって開いている。使用部分において遠位とは、本発明においては、排水開口部が使用部分に対して相当の距離を有し、好ましくは間隙の端部に配置されることを意味する。これは、使用部分に向かって開いていない。
【0016】
排水開口部は、保護要素の内側と外側との間の連通を構成する、保護要素内に設けられた空孔またはノッチであり得る。代替的に、排水開口部はまた、保護要素が、観察開口部から遠位にあるその端部において少なくとも部分的に保持具に達せず、したがって、保持具と保護要素との間に、水がそこを通って車両環境へと流れることができる隙間を提供するように形成することもできる。したがって、排水開口部は、間隙と車両環境との間の連通を構成する。それによって、光学素子の使用部分上に位置する水滴は、間隙へと流れることができ、排水開口部を通って車両環境に向かって出ることができる。使用部分は、光入射部分全体の内の比較的小さい部分であるため、水滴は多くの場合、使用部分の縁部にあるかまたはそのすぐ近く、したがって、間隙の近くにあり、それによって、そこに容易に流れることができる。間隙に近接していない、すなわち、むしろ使用部分の中心にある水滴は、光学素子の凸状湾曲、運転動作中の振動、空気流またはそれらの組み合わせによって使用部分の縁部へと付勢され得、その後、間隙へと流れることができる。水滴は、間隙に入ると、排水開口部に向かって流れ、排水開口部において、保護要素から放出される。排水開口部は使用部分に対して遠位に配置されるため、間隙を通じて放出される水滴が再び使用部分に到達し、そこに留まることによって車両環境へのビューを妨げるかまたは損なうことが回避される。
【0017】
保護要素は、車両環境を照明し、したがって、そのキャプチャを改善するための照明デバイスを有してもよい。照明デバイスは、例えば、赤外光であってもよい。
【0018】
さらに、保護要素は、光学素子に対して正しい位置に取り付けるための規定のコーディングを有してもよい。コーディングは、光学素子の保持具の長手方向に延在するノッチであってもよく、このノッチに、保護要素にある対応する突起が係合し、保護要素を回転しないように半径方向において固定する。代替的に、保護要素および光学素子の保持具は各々、色分けされた識別マークを有してもよく、これらのマークは、互いに対する正しい配置において、カメラシステムの技師またはユーザに、保護要素が光学素子に対して適切な位置に配置されていることを示す。そのため、保護要素および光学素子の取り付けられた状態において、観察開口部が、光学素子の光入射部分の使用部分の上方/上に正確に配置されること、および、車両環境が使用部分を介して確実にキャプチャされ得ることが保証される。
【0019】
保護要素は、ねじ山によって保持具もしくは光学素子にねじ込むことができ、または、保持具もしくは光学素子にクランプ締めすることができる。原則的に、カメラにおける保護要素の固定モードは、保護要素の構成に依存し、保護要素が別個の構成要素であるか、または、カメラハウジングもしくはカメラ保持具の一部であるかに依存する。
【0020】
保護要素は、2部品または複数部品で形成されてもよい。例えば、保護要素は、光学素子の光入射部分の上方/上に配置されるカバープレートからなることができ、カバープレートに(例えば、ねじ山によって)接続されるリングから構成することができ、リングは、光学素子または保持具を周方向において包囲する。
【0021】
保護要素には、親水性コーティングを施すことができる。親水性コーティングとは、水の間隙への進入を改善する鉱物粒子によるナノコーティングなどの、水を引き込むコーティングを意味する。
【0022】
好ましくは、間隙は、水滴を受け入れることによって毛細管現象を展開するように寸法決めされる。毛細管現象とは、一般的に、流体が、毛細管、すなわち、例えば、十分に小さい管、間隙または固体内の空洞との接触によって、重力に反して毛細管へと流れて、毛細管を上向きに上る挙動を意味する。これらの効果は、流体の表面張力、および、流体の固体表面(例えば、ガラス)との界面張力によって、それ自体によって引き起こされる。したがって、目下、間隙は毛細管を形成するように構成されている。水滴が間隙の開口部と接触することによって、水滴は、毛細管現象によって間隙に引き込まれ、すなわち、毛細管現象によって吸引効果が生成され、それによって、滴が間隙に引きずり込まれる。毛細管現象を達成するために、間隙は、例えば、除去されるべき滴のサイズに応じて寸法決めされ得る。例えば、0.5mmよりも小さい滴が、車両環境の描写を阻害しないと考えられることがあり得る。したがって、間隙は、少なくとも、0.5mm以上の滴に対して毛細管現象を引き起こすように構成される。
【0023】
好ましい実施形態によれば、光学素子は、車両環境をキャプチャするのに十分な光透過率を有する疎水性コーティングを有する。疎水性コーティングとは、光学素子の適切な表面処理によって提供/被着されるか、または、適切な材料によって形成される撥水加工コーティングを意味する。撥水加工コーティングには、使用部分の縁部に位置せず、したがって、間隙のすぐ近くにない水滴が、車両運転中の車両振動、空気流またはそれらの組み合わせによって使用部分の縁部に容易に滑り込むことができるという利点がある。さらに、毛細管現象は、流体に対する接触角が増大され、水滴が間隙へと流れる傾向がある点において、疎水性コーティングによって増強される。接触角とは、水滴と、光学素子の使用部分の表面との間の角度を意味する。接触角が小さいと、水滴は使用部分上で相対的に平坦であり、一方、接触角が大きいと、水滴はその滴形状を相当に維持し、したがって、水滴と使用部分との間に存在する接触面がより小さい。代替的に、疎水性であり、したがって撥水性である表面は、一定の粗度または粒度を与えることによって達成することもできる。さらに、光学素子の疎水性コーティングは、光学素子を水に対して保護する。疎水性コーティングを与えることによって、間隙は、疎水性コーティング、したがって、所定の滴形状に応じて寸法決めされる。代替的にまたは付加的に、間隙はまた、第1の光学素子の湾曲に基づいて寸法決めされてもよい。
【0024】
好ましくは、間隙は、その延伸範囲に沿って変化する断面を有する。それによって、特に、間隙が異なる直径またはサイズの水滴に対する毛細管現象を生成するため、毛細管現象を増大させることができる。例えば、間隙は、観察開口部の縁部において狭く、排水開口部に向かって拡大するように構成することができる。それによって、すべてのサイズおよび幾何形状の滴が間隙へと流れ、それによって、滴のサイズにかかわりなく、始まりの直後から毛細管現象が引き起こされることが保証される。しかしながら、間隙の断面がその延伸範囲に沿って、観察開口部からの距離が増大するにつれて低減することも考えられる。したがって、毛細管現象は使用部分上の相対的に大きい水滴のみに対して生成され、より小さい水滴は、毛細管現象を受けずに間隙へと流れる。しかしながら、水滴の移動方向における間隙の狭窄を増大させることによって、より小さい水滴に対しても毛細管現象が達成され、任意のサイズの水滴が確実に間隙を通じて排水開口部へと流れ、排水開口部において、水滴は車両環境に放出される。
【0025】
好ましくは、間隙は、光学素子の光入射部分に面する保護要素の少なくとも1つの表面内に設けられる少なくとも1つの内側ノッチによって形成される。内側ノッチは、少なくとも、光学素子の光入射部分に面する表面に対応し、したがって、光学素子の光入射部分に向けられている保護要素の内側に対応する保護要素の表面内の陥凹部である。しかしながら、内側ノッチはまた、さらに内向きにある保護要素の表面に沿って延在してもよい。2つ以上の内側ノッチがあるとき、それらの内側ノッチは、流動方向に対して横方向に延在する異なる断面(異なるサイズおよび/または形状)を有することができる。内側ノッチはまた、観察開口部の近くなど、保護要素の内面の一部分のみにおいて延在してもよい。
【0026】
内側ノッチは、有利には、半径方向において、光入射部分に向けられている保護要素の表面の外側へと延在する。代替的に、内側ノッチは、光入射部分の外側へとらせん状に延在してもよい。したがって、内側ノッチのらせん状の延伸範囲は、ビュー開口部の周りに延在する。さらに代替的に、内側ノッチは、保護要素の観察開口部の周りにほぼ同心円状に延在してもよい。
【0027】
代替的にまたは付加的に、内側ノッチは、光入射部分に向けられている保護要素の表面の外側への方向にある断面を有してもよく、断面は、滴の流動方向に対して横方向に変化する。例えば、内側ノッチは、保護要素の内側から保護要素の外側に向かって拡大するように構成することができる。代替的に、内側ノッチは、弧形状、三角形などの断面を有してもよい。また、滴の流動方向に対して横方向の光入射部分の外向きの方向において変化する断面には、毛細管現象がさらに改善され、複数の滴サイズに対して内側ノッチを使用することができるという利点がある。
【0028】
好ましい実施形態によれば、内側ノッチは、観察開口部から排水開口部へのチャネルを形成する。言い換えれば、内側ノッチは、観察開口部の縁部から排水開口部へと延在する。
【0029】
内側ノッチが水滴の放出に使用される実施形態の代わりに、間隙はまた、光学素子に面する保護要素の表面が光学素子の光入射部分から離間されるように形成することもできる。すなわち、保護要素は、全体的に、したがって、部分的にではなく、光入射部分に対して一定の距離に配置され、間隙は、半径方向において、保護要素全体に沿って延在する。
【0030】
保護要素の、光学素子からの規定の距離を保証するために、光学素子に面する保護要素の表面は、保持具および/または光学素子において保護要素を支持する少なくとも1つのリブを有する。2つのリブによって、内側ノッチを形成することができる。複数のリブがある場合、複数の内側ノッチを形成することができる。
【0031】
好ましくは、保護要素の外側は、空気の渦流を生成する幾何形状(例えば、少なくとも1つの外側ノッチ)を有する。空気の渦流は、使用部分に位置する水滴の間隙に向かう移動を促進することができ、および/または、保護要素の外側に位置する水滴の観察開口部に向かう移動を妨げることができる。例えば、外側の幾何形状は、観察開口部の周りに同心円状に配置されているか、または、半径方向において、保護要素の外側で観察開口部から外方に延在する少なくとも1つの外側ノッチ、リブまたはシームなどによって、水滴が、選択的に、観察開口部から外方に案内されるように、構成される。
【0032】
代替的にまたは付加的に、保護要素はノズルを有してもよく、ノズルは、光学素子の光入射部分に媒体を与え、したがって、使用部分に位置する水滴の間隙に向かう移動を促進し、および/または、保護要素の外側に位置する水滴の観察開口部に向かう移動を妨げる。ノズルは、光入射部分の使用部分に空気を与える空気ノズルであってもよい。これに関連して、空気ノズルは、間隙内など、保護要素の外側または保護要素の内側に配置されてもよい。代替的に、ノズルは、保護要素の外側または保護要素の近くに配置され、光入射部分の使用部分または保護要素の外側のいずれかに空気を与える空気ノズルであってもよい。さらに、代替的にまたは付加的に、空気ノズルは、少なくとも部分的に、間隙へと直接的に空気を吹き込み、したがって、付加的に、滴を間隙内へと付勢するように配置されてもよい。
【0033】
保護要素は光学素子および光学素子の保持具とは別個に設けられる蓋であってもよく、カメラハウジングまたはカメラ保持具の一部とすることもできる。例えば、保護要素は、カメラアームの一部分であってもよく、隆起部/バーによってこれに接続されてもよい。したがって、保護要素は、分離可能に構成され、交換可能であり、結果、例えば、光学素子の洗浄または保守管理もしくは修復のために、光学素子から取り外すことができる。
【0034】
カメラ、特に光学素子を除氷し、または、凝縮水を光学素子から除去するために、保護要素は、加熱要素をさらに有する。加熱要素は、好ましくは、加熱フォイルであるが、また、加熱ワイヤであってもよく、好ましくは、間隙内に配置される。一般的に、加熱要素は、例えば、挿入および成型によって加熱ワイヤを使用することによって、または、接着によって加熱フォイルを使用することによって、保護要素に直接的に固定することができる。しかしながら、間隙は、水滴を間隙からさらに確実に放出することができるように、加熱要素によって完全に閉じられなくてもよい。特に、加熱要素を設けることによって、保護要素が2つ以上の部品から構成されることが有利であり得る。これは、この構成によって、加熱要素の設置が容易になるためである。
【0035】
好ましい実施形態によれば、保護要素は、熱可塑性物質、熱硬化性プラスチック、エラストマーまたはそれらの組み合わせなどの、ポリマーから作成される。代替的に、保護要素はまた、金属材料から作成されてもよい。さらに、保護要素は好ましくは、不透明材料から製造されるが、また、透明材料から製造されてもよい。不透明材料には、車両環境から、使用部分に対応しない光学素子の光入射部分の部分へと光ビームが当たり得ないという利点がある。したがって、反射などの光学干渉が、画像センサ上の車両環境の描写を阻害し得ない。
【0036】
好ましい実施形態によれば、保護要素は、60ショア未満のショア硬度を有し、したがって、鋭利な縁部を有する構成要素(保護要素のリブなど)の材料の法的規定(例えば、UN/ECEの規則46)を満たす。
【0037】
好ましくは、観察開口部および間隙は、保護要素によって使用部分を隠し、間隙を閉じることなく、カメラを一定の範囲内で調整することが可能であるように、寸法決めされる。これに関連して、観察開口部は、使用部分よりも大きくすることができ、間隙は、カメラの約10度などの一定の範囲内の回転にもかかわらず、保持具または光学素子が保護要素に近づくことによって閉じられないように、寸法決めすることができる。これは、保護要素がカメラハウジングの一部分であり、カメラを調整する結果として保護要素も調整されることにならない場合に特に有利であり、ただし、保護要素が光学素子および/または保持具に直接的に取り付けられる他の構成も有利であり得る。
【0038】
好ましくは、カメラシステムは、例えば、UN/ECEの規則46に定義されているような、ミラー交換システムの一部分である。
【0039】
本発明によるカメラシステムは、保護および水滴の除去に関連する光学素子の光入射部分の特定の部分、すなわち、使用部分のみに焦点を当てるため、本発明によるカメラシステムには、従来技術から知られているカメラシステムに鑑みて、一方では、原則的に、水滴がカメラの光学素子の相対的に小さい使用部分に落ち、ただし、他方では、それにもかかわらず、ここに堆積する水滴が迅速に除去されるという利点がある。水滴を迅速に除去することによって、豪雨中などの相対的に大量の水も管理することができる。保護要素は、さらに、石による傷または木枝による擦過傷などの機械的影響に対して、光学的影響、すなわち、望ましくない光の効果に対して、凍結に対して、および、UV放射線に対して、光入射部分のカバーされた部分を保護する。保護要素は、さらに、ノズル、照明および加熱要素などのさらなる補助構成要素を容易に組み込むことを促進する。最後に、保護要素は、観察開口部を光学素子の使用部分上に選択的に配置することによって、車両環境が描写されるのに無関係であるかまたはさらには不適切である光ビームが使用部分に影響を与えるのを防止することを可能にする。したがって、とりわけ、光の屈折または反射などの、画像描写への悪影響を防止することができる。
【0040】
以下において、本発明が、添付の図面を参照することによって、例示的に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【
図1】左右のカメラシステムを有する車両の平面図である。
【
図2】従来技術から知られているカメラシステムを有するビューシステムの概略図である。
【
図3】第1の状態にある第1の実施形態の本発明によるカメラシステムを有するビューシステムの概略図である。
【
図4】第2の状態にある
図3のビューシステムの概略図である。
【
図5】
図4の本発明によるカメラシステムの正面図である。
【
図6】第2の実施形態のカメラシステムの概略図である。
【
図7】第3の実施形態のカメラシステムの概略図である。
【
図8】第4の実施形態のカメラシステムの概略図である。
【
図9】第5の実施形態のカメラシステムの概略図である。
【
図10】取り付けられた状態にある第6の実施形態のカメラシステムの斜視図である。
【
図11】取り外された状態にある
図10のカメラシステムの斜視図である。
【
図12】加熱要素を有する
図10のカメラシステムの概略図である。
【
図14】加熱要素を有する
図8のカメラシステムの概略図である。
【
図15】空気ノズルを有する
図8のカメラシステムの概略図である。
【
図16】取り付けられた状態にある
図3のカメラシステムの斜視図である。
【
図17】取り外された状態にある
図16のカメラシステムの斜視図である。
【
図19】第1の実施形態の本発明による保護要素の平面図および断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0042】
図1は、ここではトラクタおよびセミトレーラ/トレーラを有するトラックである、商用車両Fの平面図を示す。カメラシステム100が、トラクタの左側および右側の各々に取り付けられている。カメラシステム100は、光学素子11の使用部分NBによって、車両Fの周りの環境をキャプチャする。
【0043】
図2は、従来技術から知られているビューシステムを概略的に示す。ビューシステムは、ECUなどの処理ユニット20と、モニタ、例えばTFT、LCDモニタなどの再生ユニット30とを有する。描写部分31が、再生ユニット30上に提示される。
【0044】
ビューシステムは、CMOSまたはCCD技術を用いたカメラなどのカメラ10を備えるカメラシステム100をさらに有する。カメラ10は、対物レンズなどの光学素子11と、保持具13とを有する。保持具13は、周方向において、光学素子11を支持する。光学素子11は、車両環境に向けられた表面12にある光入射部分EBを有し、光入射部分EBは、凸状に構成されている。光入射部分EBは、光学素子11の、車両環境の光ビームが光学素子11に入る部分である。光ビームの、光入射部分EBに入る部分が、画像センサ(図示省略)上に描写され、したがって、車両環境を画像センサ上に投影する。画像センサ上に描写されるか、または、画像センサの、運転者に対して表現される部分上に描写される、光ビームが衝突する光入射部分EBの部分は、光学素子11の使用部分NBと呼ばれる。
【0045】
図3は、本発明によるカメラシステム100を有するビューシステムを概略的に示す。
図2に示すビューシステムのように、
図3に示すビューシステムも、処理ユニット20および再生ユニット30を有する。
図3のカメラシステム100は、保護要素40をさらに設けられているという点において、
図2のカメラシステムとは異なっている。保護要素40は、光学素子11上に配置され、クランプジョイントを介して光学素子11または保持具(
図3には示さず)に固定される、ある種の蓋として構成される。保護要素40は、光学素子11の保持具13とは別個のものである、追加の構成要素である。特に、好ましくは、保護要素40は、光学素子11およびその保持具内のその構成を破壊することなく、カメラシステム100から取り外し可能である。言い換えれば、光学素子11、保持具13および画像センサは、カメラ10の機能のためにともに協働する必要がある持続的/不可分のユニットを形成し、一方、保護要素40は、光学素子11の使用部分NBを水の堆積に対して保護するために、または、光学素子11の使用部分NB上の可能性のある水の堆積を選択的に除去するために、カメラ10上に設けることができる、追加の構成要素である。それゆえ、保護要素40はまた、既存のカメラ10に据え付けることもできる。
【0046】
保護要素40は、光学素子11の光入射部分EBをカバーする側に、観察開口部41を有する。観察開口部41は、保護要素40の外側を保護要素40の内側と接続する、貫通開口部である。すなわち、観察開口部41は、保護要素40の陥凹開放部分である。観察開口部41のサイズおよび幾何形状は、使用部分NBのサイズおよび幾何形状にほぼ対応する。保護要素40の、観察開口部41に対して遠位に位置する端部において、空孔の形状の排水開口部43が、保護要素40内に設けられる。排水開口部43は、保護要素40の内側と保護要素40の外側との間の連通を構成する。保護要素40は、光学素子11と保護要素40との間に間隙42が存在するように、光学素子11から離間されている。
【0047】
図3に示すように、水滴Tが、光学素子11の、車両環境に面する表面12上に位置する。具体的には、水滴Tは、部分的に光学素子11の使用部分NB上にある(第1の状態)ように、光学素子11の凸状の光入射部分EB上に配置される。この結果として、使用部分NBを通じて光学素子11に当たる光ビームが、水滴Tを画像センサ、したがって、すなわち再生ユニット30の描写部分31上に、ダークスポット32として描写する。
【0048】
図4において、
図3のカメラシステム100が示されている。
図3に示す第1の状態とは対称的に、
図4においては、水滴Tは間隙に流されており(第2の状態)、もはや画像センサ、したがって、もはや再生ユニット30の描写部分31上に描写されない。例えば、水滴Tは、空気流および/または車両Fの運転動作中の振動によって使用部分NBの外側に動かされる中で、間隙42内に到達し得る。水滴Tと、観察開口部41にある間隙42への入口との間に接触がある場合、水滴Tは間隙42に滑り込む。そこで、水滴は、空気流および/もしくは振動ならびに/または後続の水滴Tによって、保護要素40内で観察開口部41から外方に排水開口部43に向かって移動し、排水開口部43を通じて間隙42から車両環境へと放出される。このように、豪雨などの強い降水中に、間隙42、ならびに、保護要素40と光学素子11または保持具13との間の隙間が水で満たされ、さらなる水滴が放出され得ないという点において光学素子11の機能を阻害し、または、対応する天候条件によって、水が、間隙42、ならびに、保護要素40と光学素子11または保持具13との間の隙間で凍結し、保護要素40を損傷することが防止され得る。
【0049】
代替的にまたは付加的に、間隙42を適切に寸法決めすることによって、水滴Tはまた、間隙42の入口に接触すると直ちに、毛細管現象によって間隙42に引き込まれ得る。毛細管現象は水滴Tのサイズに対する間隙42のサイズに依存するため、間隙は、形状およびサイズが異なる、可能な限り多くの水滴を、光学素子の使用部分NBから確実に除去するために、その延伸範囲に沿って変化するか、または、水滴の流動方向に対して横方向に変化する断面を有することができる。毛細管現象を使用することには、使用部分NB上に位置する水滴Tが、毛細管現象が無い場合と比較してより高速に流れ去り、また、そうでなければ重力に起因して滴が動くことを可能にしない方向において流れることができるという利点がある。
【0050】
図5において、
図4のカメラシステムの正面図が示されている。
図5に示すように、保護要素40の観察開口部41の幾何形状およびサイズは、光路NBの幾何形状およびサイズにほぼ対応する。具体的には、観察開口部41は、使用部分NBよりもわずかに大きく、正則矩形である。しかしながら、使用部分NB、および、したがってまた、観察開口部41も、光学素子11および使用部分NBに対する要件に応じて、各々他の幾何形状およびサイズを採用してもよいことは理解されたい。
【0051】
図6~
図9は、本発明による保護要素40の異なる実施形態(第2~第5の実施形態)を示す。
【0052】
図6において、保護要素40Aの第2の実施形態が示されている。保護要素40の第1の実施形態とは対照的に、保護要素40Aは、光入射部分EBとは反対である外側に、周方向外側ノッチ15を有する。外側ノッチ15は、観察開口部41Aの周りに同心円状に設けられており、使用部分NB上に位置する水滴を、間隙42Eに向けて付勢するために、および/または、保護要素40Aの外側に位置する水滴Tが、使用部分NBへと流れるのを妨げるために、空気を旋回させる役割を果たす。保護要素40のように、保護要素40Aはまた、観察開口部41Aから遠位にある排水開口部を有する。
【0053】
図7において、保護要素40Bの第3の実施形態が示されている。
図7に示す保護要素40Bの実施形態において、保護要素40Bは、カメラハウジング(図示省略)の一部分である。この場合、水滴Tは排水開口部43Bを介して車両環境へと直接的に流れず、最初にカメラハウジングへと流れる。しかしながら、水滴Tを車両環境に選択的に放出するために、ここでは、カメラハウジングも、車両環境への連通を構成し、水滴の放出を保証する開口部を有する必要がある。
図7に示す保護要素40Bは、保護要素40および40Aに関連してすでに上述したような、観察開口部41Bおよび間隙42Bを有する。
【0054】
図8において、保護要素40Cの第4の実施形態が示されており、この実施形態は、排水開口部43Cが、保護要素40Cの内面にノッチを設けることによって形成されるという点において、
図6に示す第2の実施形態と異なる。さらに、保護要素40Cは、
図3に示すように、光学素子11または保持具13とクランプ締めされておらず、ねじ接続46によって光学素子11または保持具13に接続されている。
図8に示す保護要素40Cは、保護要素40、40Aおよび40Bに関連してすでに上述したような、観察開口部41Cおよび間隙42Cを有する。
【0055】
図9において、保護要素40Dの第5の実施形態が示されている。保護要素40、40A、40B、40Cの前述の実施形態とは対照的に、保護要素40Dは、カメラ保持具およびカメラハウジング、具体的にはカメラアーム(図示省略)の一部分である。これに関連して、保護要素は、ブリッジ/バー(図示省略)を介してカメラアームと接続される。
図7に示す実施形態と同様に、保護要素40Dによって、水滴は同じく、間隙42Dおよび排水開口部43Dを通過した後に車両環境へと直接的に放出されるのではなく、最初にカメラアームへと放出され、そこから、カメラアーム内の対応する開口部を介して車両環境へと放出される。
図9に示す保護要素40Bは、保護要素40、40A、40B、40Cに関連してすでに上述したような、観察開口部41Dを有する。
【0056】
特に、保護要素40B、40Dがカメラハウジングの一部分として形成される
図7および
図9に示す実施形態に関連して、観察開口部41Bおよび41Dが、使用部分NBよりもわずかに大きく構成されることが有利であり得る。これには、カメラ10によって(特に光学素子11または保持具13によって)間隙42B、42Dを閉じることなく、または、保護要素40B、40Dによって使用部分NBをカバーすることなく、観察開口部41B、41Dのサイズおよび幾何形状によって予め決定される一定の枠内でカメラ10を回転または調整することができるという利点がある。
【0057】
図10において、保護要素40Eの第6の実施形態が、取り付けられた状態で示されている。
図10に示す保護要素40Eは、主に、その外面上に同心円状に配置された複数の(
図10では3つの)外側ノッチ15が設けられており、その周に沿ってばねシャックル47が設けられている点において、前述の保護要素40、40A、40B、40Cおよび40Dと異なる。
図6の実施形態に関連してすでに説明したように、外側ノッチ15は、使用部分NB上に位置する水滴Tを、間隙42Eに向けて付勢するために、および/または、保護要素40Eの外側に位置する水滴Tが、使用部分NBへと流れるのを妨げるために、空気を旋回させる役割を果たす。
図10に示すように、観察開口部41Eは、ほぼ矩形に構成され、保護要素40Eに対して中心をずらして、または、偏心して配置されている。
【0058】
ばねシャックル47は、保護要素40Eの周に沿って保護要素40Eの遠位縁部から観察開口部41Eへとほぼ垂直に突出する、小さい金属板である。それらの弾性構成に起因して、ばねシャックルは、光学素子11における保護要素40Eの単純ではあるが確実でもある取り付けを可能にする。
【0059】
図11は、
図10に示す保護要素40Eの実施形態を、取り外された状態で示す。
図11に示すように、対物レンズリング14が光学素子11の周りに取り付けられており、対物レンズリング14は、光学素子の中心に向かって上向きに傾斜している表面を有し、結果、光学素子11の光入射部分EBと対物レンズリング14との間には谷が存在する。この谷は、水滴Tがそこに巻き込まれる可能性があるため、保護要素40Eおよび間隙42Eを提供しなければ不利である。しかしながら、保護要素40Eおよび間隙42Eを提供することによって、水滴Tはこの場合も、間隙42Eおよび排水開口部43Eを介して確実に運び去ることができる。
【0060】
図12および
図13は、
図11の保護要素40Eを示す。間隙42E内で、加熱要素17が保護要素40Eと光学素子11との間に導入される。加熱要素17は、
図13に示すようなリング形状の要素であり、2本のケーブルを介して電気によってエネルギーを与えられ、したがって、加熱される。例えば、加熱要素17は加熱ワイヤである。代替的に、加熱要素17はまた、加熱フォイルであってもよく、これは、好ましくは、保護要素40Eの内側に接合され、これによって、間隙42Eが形成される。加熱要素17はカメラ、特に光学素子を除氷し、または、蒸発によって凝縮水を光学素子から除去する役割を果たす。
【0061】
図14は、間隙42C内の加熱要素を有する
図8の保護要素40Cを示す。
【0062】
図15は、保護要素40の外面に取り付けられている、空気ノズル19を有する
図8の保護要素40Cの実施形態を示す。空気ノズル19は、使用部分NBに空気を吹き込み、したがって、場合によって運転中にそこに位置する水滴Tを、使用部分NBの縁部分に向かって、すなわち、保護要素40Cおよび間隙42Cに向かって選択的に付勢するように構成されている。代替的に、空気ノズルはまた、保護要素40Cの外側の水滴Tが、使用部分NBに達するのを妨げるように構成することもできる。また、2つ以上の空気ノズルが提供されてもよく、および/または、空気ノズルは、加熱要素17と組み合わされてもよい。
【0063】
図16および
図17は、光学素子上で一定の距離を置いて配置されている蓋として構成されている保護要素40Fを有する、本発明によるカメラシステムを示す。保護要素40Fは、外側ノッチを有し、これは、光入射部分の反対の外側で半径方向に延在し、外側ノッチは、保護要素40Fの外側の水滴Tが使用部分NBに達するのを妨げる。むしろ、保護要素40Fの外側の水滴Tは、運転動作中の車両の振動および/または空気流によって外側ノッチへと付勢され、そこで、半径方向において保護要素の外周へと案内される。
図16および
図17に示す実施形態では、外側ノッチ15はリングに与えられる隆起部およびリブによって形成され、隆起部またはリブは、半径方向内向きの方向に突出し、したがって、リブ間のチャネルを形成し、この中に、使用部分NB上の水滴Tも入ることができる。保護要素40Fと光学素子11との間の間隙なしに、
図16および
図17に示す実施形態を提供することも考えられ、結果、使用部分NB上の水滴Tはもっぱら外側ノッチ15を介して放出され得る。
【0064】
図18は、保護要素40Gが光学素子11の保持具13Gに一体化されている、すなわち、好ましくは単一の構成要素として形成されているカメラシステムを示す。特に、この場合、光学素子11の表面上に位置する水滴Tを放出するための間隙は、毛細管現象を使用するように構成することができる。
【0065】
図19は、第1の実施形態の保護要素40の詳細な平面図および断面図を示す。
図19に示すように、外側ノッチ15は、保護要素40上に、保護要素40の中心の周りに同心円状に配置される円として形成され、光学素子11と保護要素40との間の間隙42は、観察開口部41に隣接する部分から、光入射部分の外周に向かって縮小/狭窄する。
【0066】
図20は、保護要素40の異なる図を示す。特に、
図20は、保護要素40の底面斜視図および直に下から見た図を示しており、これらは、間隙42が、保護要素40の外周へと半径方向に延在し、したがって、水滴Tを放出するためのチャネルを形成する複数の内側ノッチ49によって形成されることを示している。
図20に示す実施形態によれば、内側ノッチは、リブ47を保護要素40の内面に取り付けることによって形成される。最後に、
図20から、排水開口部43を、保護要素40の縁部に溝として配置することができることがさらに分かる。
【0067】
原則として、間隙に入る水が、間隙内に注目すべき量だけ蓄積する前に蒸発によって除去されるほどわずかなものであることが保証される限り、排水開口部のないカメラシステムを提供することも考えられる。
【0068】
本明細書および/または特許請求の範囲に開示されているすべての特徴は、元の開示の目的のために、ならびに、実施形態および/または特許請求の範囲内の特徴の組成とは無関係に特許請求される発明を制限する目的のために、別個にかつ互いから独立して開示されるように意図されていることは明示的に述べておく。すべての値範囲またはエンティティのグループの指示は、特に値範囲の制限として、元の開示の目的のために、および、特許請求される発明を制限する目的のために、すべての可能な中間値または中間エンティティを開示することは明示的に述べておく。
【符号の説明】
【0069】
100…カメラシステム
10…カメラ
11…光学素子
12…車両環境に面する表面
13,13G…保持具
15…外側ノッチ
17…加熱要素
19…空気ノズル
20…処理ユニット
30…再生ユニット
31…描写部分
32…水滴Tのダークスポット
40,40A,40B,40C,40D,40E,40F,40G…保護要素
41,41A,41B,41C,41D,41E…観察開口部
42,42A,42B,42C,42D,42E…間隙
43,43A,43B,43C,43D,43E…排水開口部
46…ねじ接続
47…リブ
49…内側ノッチ
F…車両
EB…光入射部分
NB…使用部分
T…水滴
【外国語明細書】