(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022053558
(43)【公開日】2022-04-06
(54)【発明の名称】フィルムコンデンサ、及び、フィルムコンデンサ用の外装ケース
(51)【国際特許分類】
H01G 4/32 20060101AFI20220330BHJP
H01G 4/224 20060101ALI20220330BHJP
【FI】
H01G4/32 540
H01G4/32 301F
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2019023560
(22)【出願日】2019-02-13
(71)【出願人】
【識別番号】390022460
【氏名又は名称】株式会社指月電機製作所
(71)【出願人】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】特許業務法人 安富国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】阪本 拓也
(72)【発明者】
【氏名】市川 智道
【テーマコード(参考)】
5E082
【Fターム(参考)】
5E082EE07
5E082HH03
5E082HH28
(57)【要約】
【課題】耐湿性の低下を抑制することができる、樹脂製の外装ケースを備えたフィルムコンデンサを提供すること。
【解決手段】樹脂フィルムの表面に金属層が設けられた金属化フィルムを備えるコンデンサ素子と、上記コンデンサ素子を内部に収納する樹脂製の外装ケースと、上記コンデンサ素子と上記外装ケースとの間に充填された充填樹脂と、を備えるフィルムコンデンサであって、上記外装ケースは、その外面に、外面凸部と、上記外面凸部を上記外装ケースの内方側に位置させる外面凹部とを備えるとともに、上記外面凸部に対向する内面の周囲に、該内面から突出する内面凸部を備える、フィルムコンデンサ。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂フィルムの表面に金属層が設けられた金属化フィルムを備えるコンデンサ素子と、
前記コンデンサ素子を内部に収納する樹脂製の外装ケースと、
前記コンデンサ素子と前記外装ケースとの間に充填された充填樹脂と、を備えるフィルムコンデンサであって、
前記外装ケースは、その外面に、外面凸部と、前記外面凸部を前記外装ケースの内方側に位置させる外面凹部とを備えるとともに、前記外面凸部に対向する内面の周囲に、該内面から突出する内面凸部を備える、フィルムコンデンサ。
【請求項2】
前記外装ケースにおいて、前記外面凹部の最小厚みt2は、前記内面凸部より側方の厚みt1と同等以上である、請求項1に記載のフィルムコンデンサ。
【請求項3】
前記外装ケースにおいて、前記外面凹部に対向する内面は、前記内面凸部より側方の内面よりも、前記コンデンサ素子側に位置する、請求項2に記載のフィルムコンデンサ。
【請求項4】
前記外装ケースにおいて、前記外面凸部の外面は、前記内面凸部より側方の外面よりも、前記外装ケースの内方側に位置する、請求項1~3のいずれか1項に記載のフィルムコンデンサ。
【請求項5】
前記外装ケースは、液晶ポリマーを含む樹脂組成物から構成されている、請求項1~4のいずれか1項に記載のフィルムコンデンサ。
【請求項6】
前記樹脂フィルムは、硬化性樹脂を主成分として含む、請求項1~5のいずれか1項に記載のフィルムコンデンサ。
【請求項7】
前記内面凸部は、前記コンデンサ素子の外面に接触している、請求項1~6のいずれか1項に記載のフィルムコンデンサ。
【請求項8】
前記内面凸部は、前記コンデンサ素子の外面に沿った平坦状に形成されている、請求項7に記載のフィルムコンデンサ。
【請求項9】
前記外装ケースは、開口部を有する筒状であり、前記開口部に対向しつつ前記コンデンサ素子が当接する底部と、前記底部から前記開口部側に突出する側壁部とを備え、
前記底部には、前記コンデンサ素子側に突出する第1位置決め凸部が設けられ、
前記内面凸部は、前記第1位置決め凸部である、請求項7又は8に記載のフィルムコンデンサ。
【請求項10】
前記内面凸部は、前記底部の一部であって、中央位置に設けられている、請求項9に記載のフィルムコンデンサ。
【請求項11】
前記側壁部には、前記コンデンサ素子側に突出するとともに前記コンデンサ素子を介して対向する第2位置決め凸部及び第3位置決め凸部が設けられている、請求項9又は10に記載のフィルムコンデンサ。
【請求項12】
前記外装ケースは、開口部を有する筒状であり、前記開口部に対向しつつ前記コンデンサ素子が当接する底部と、前記底部から前記開口部側に突出する側壁部とを備え、
前記底部には、前記コンデンサ素子側に突出する第1位置決め凸部が設けられ、
前記側壁部には、前記コンデンサ素子側に突出するとともに前記コンデンサ素子を介して対向する第2位置決め凸部及び第3位置決め凸部が設けられ、
前記内面凸部は、前記第2位置決め凸部及び前記第3位置決め凸部のいずれか1つである、請求項7又は8に記載のフィルムコンデンサ。
【請求項13】
前記硬化性樹脂は、ウレタン結合及びユリア結合の少なくとも一方を有する、請求項6に記載のフィルムコンデンサ。
【請求項14】
前記硬化性樹脂は、第1有機材料と第2有機材料との硬化物からなり、
前記第1有機材料がポリオール、前記第2有機材料がイソシアネート化合物である、請求項6又は13に記載のフィルムコンデンサ。
【請求項15】
前記樹脂フィルムは、イソシアネート基及び水酸基の少なくとも一方を含む、請求項6、13及び14のいずれか1項に記載のフィルムコンデンサ。
【請求項16】
樹脂フィルムの表面に金属層が設けられた金属化フィルムを備えるコンデンサ素子を内部に収納するための、フィルムコンデンサ用の外装ケースであって、
前記外装ケースは、樹脂製であり、その外面に、外面凸部と、前記外面凸部を前記外装ケースの内方側に位置させる外面凹部とを備えるとともに、前記外面凸部に対向する内面の周囲に、該内面から突出する内面凸部を備える、フィルムコンデンサ用の外装ケース。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィルムコンデンサ、及び、フィルムコンデンサ用の外装ケースに関する。
【背景技術】
【0002】
フィルムコンデンサは、例えば、樹脂フィルムの表面に金属蒸着膜が設けられた金属化フィルムが巻回又は積層されてなるコンデンサ素子を外装ケースに収納した後、該ケースに樹脂を充填し、これを硬化させることにより作製される。
【0003】
このようなフィルムコンデンサを高温高湿環境下で使用する場合、コンデンサ素子に水分が浸入すると、金属蒸着膜の導電性が失われてしまい、静電容量が低下するという問題が発生する。したがって、フィルムコンデンサには、耐湿性の向上が求められている。
【0004】
特許文献1には、金属化フィルム同士又は金属化フィルムと非金属化フィルムとを組み合わせて巻回又は積層したコンデンサ素子を、開口部を有するコンデンサケースに収納し、上記コンデンサ素子と上記コンデンサケースとの隙間及び上記コンデンサ素子の上記開口部側空間とに樹脂充填し、上記コンデンサ素子周囲を樹脂充填したコンデンサが開示されている。一実施形態において、コンデンサ素子は、一対の金属化ポリプロピレンフィルム(PP)を巻回しており、フィルム幅方向の両端にメタリコンを形成し、外部接続用の銅で形成したリード端子を接続し、ポリブチレンテレフタレート(PBT)で成形したコンデンサケースに収納し、さらにエポキシ樹脂である熱硬化性の合成樹脂を充填し、コンデンサ素子を外気より遮断している。
【0005】
上記実施形態では、コンデンサケースの開口部と対向する底部にリブを設けることで、コンデンサ素子の周囲の合成樹脂の厚みを確保することが記載されている。特許文献1によれば、コンデンサ素子の周囲の合成樹脂の厚みを確保することにより、外部からコンデンサ素子への水分の浸入を抑制することができるとされている。
【0006】
特許文献2には、樹脂製の外装ケースが合成樹脂の射出成形によって一体的に形成されることが開示されており、その合成樹脂として、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PBT(ポリブチレンテレフタレート)やPPS(ポリフェニレンサルファイド)などが用いられることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第4356302号公報
【特許文献2】特開2018-026425号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1に記載のコンデンサでは、外部からの水分の浸入を抑えるために、コンデンサ素子の周囲の合成樹脂の厚みを略均等に確保する構造としている。
【0009】
しかしながら、特許文献2に記載されているような射出成形により作製された樹脂製の外装ケースとフィルムコンデンサの耐湿性との関係については、これまで検討されていない。
【0010】
樹脂製の外装ケースを射出成形により作製する場合、射出成形機のノズルから射出された溶融樹脂が、スプールからランナーを経て、ゲートを通過して、金型内のキャビティに充填される。通常は、複数のキャビティがランナーで結ばれ、複数個を同時に成形できるようになっている。樹脂が冷却により固化された後、金型が開放される。スプール、ゲート及びゲートで固化した樹脂も、それぞれスプール、ランナー及びゲートと呼ばれる。
【0011】
図1は、射出成形後に金型を開放して得られた成形品の一例を模式的に示す斜視図である。
図1に示す成形品100は、外装ケース200に加えて、スプール110、ランナー120及びゲート130を備えている。スプール110、ランナー120及びゲート130は不要であるため、ゲート130近傍でランナー120を切り離すことにより、外装ケース200が完成する。
【0012】
上記のように射出成形により樹脂製の外装ケースを作製する際、樹脂の切断面となる外装ケースの外面には、樹脂の注入口となるゲートの跡として、他の部分よりも飛び出した凸部が形成される。そこで、樹脂の切断面が外部に突出しないように、外装ケースの外面上の凸部の周囲に凹部を形成することが行われている。
【0013】
しかしながら、外面上に凸部及び凹部を有する外装ケースにコンデンサ素子が収納されたフィルムコンデンサでは、耐湿性が充分でないという問題があることが判明した。
【0014】
本発明は、上記の問題を解決するためになされたものであり、耐湿性の低下を抑制することができる、樹脂製の外装ケースを備えたフィルムコンデンサを提供することを目的とする。本発明はまた、該フィルムコンデンサ用の外装ケースを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明者らは、外装ケースの外面上の凸部の周囲に凹部を形成した場合、凹部を形成した分だけ他の部分よりも外装ケースの厚みが薄くなってしまうため、その部分から水分が浸入しやすくなり、フィルムコンデンサの耐湿性が低下することを突き止め、本発明を完成させた。
【0016】
本発明のフィルムコンデンサは、樹脂フィルムの表面に金属層が設けられた金属化フィルムを備えるコンデンサ素子と、上記コンデンサ素子を内部に収納する樹脂製の外装ケースと、上記コンデンサ素子と上記外装ケースとの間に充填された充填樹脂と、を備えるフィルムコンデンサであって、上記外装ケースは、その外面に、外面凸部と、上記外面凸部を上記外装ケースの内方側に位置させる外面凹部とを備えるとともに、上記外面凸部に対向する内面の周囲に、該内面から突出する内面凸部を備える。
【0017】
本発明のフィルムコンデンサ用の外装ケースは、樹脂フィルムの表面に金属層が設けられた金属化フィルムを備えるコンデンサ素子を内部に収納するための、フィルムコンデンサ用の外装ケースであって、上記外装ケースは、樹脂製であり、その外面に、外面凸部と、上記外面凸部を上記外装ケースの内方側に位置させる外面凹部とを備えるとともに、上記外面凸部に対向する内面の周囲に、該内面から突出する内面凸部を備える。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、耐湿性の低下を抑制することができる、樹脂製の外装ケースを備えたフィルムコンデンサを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】
図1は、射出成形後に金型を開放して得られた成形品の一例を模式的に示す斜視図である。
【
図2】
図2は、本発明の一実施形態に係るフィルムコンデンサを模式的に示す斜視図である。
【
図3】
図3は、
図2に示すフィルムコンデンサの分解斜視図である。
【
図4】
図4(a)及び
図4(b)は、
図2に示すフィルムコンデンサを構成する外装ケースの一例を模式的に示す斜視図である。
【
図5】
図5は、外装ケースの外面凸部、外面凹部及び内面凸部の一例を模式的に示す拡大断面図である。
【
図6】
図6は、外装ケースの外面凸部、外面凹部及び内面凸部の別の一例を模式的に示す拡大断面図である。
【
図7】
図7(a)及び
図7(b)は、本発明のフィルムコンデンサの別の一例を模式的に示す断面図である。
【
図8】
図8(a)は、本発明のフィルムコンデンサを構成するコンデンサ素子の一例を模式的に示す斜視図であり、
図8(b)は、
図8(a)に示すコンデンサ素子のb-b線断面図である。
【
図9】
図9は、
図8(a)及び
図8(b)に示すコンデンサ素子を構成する金属化フィルムの巻回体の一例を模式的に示す斜視図である。
【
図10】
図10は、
図8(a)及び
図8(b)に示すコンデンサ素子を構成する金属化フィルムの巻回体の別の一例を模式的に示す斜視図である。
【
図11】
図11は、実施例1~4で用いた外装ケースの拡大断面図である。
【
図12】
図12は、比較例1で用いた外装ケースの拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明のフィルムコンデンサについて説明する。
しかしながら、本発明は、以下の構成に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲において適宜変更して適用することができる。
以下において記載する本発明の個々の望ましい構成を2つ以上組み合わせたものもまた本発明である。
【0021】
なお、以下において説明するフィルムコンデンサ用の外装ケースもまた、本発明の1つである。
【0022】
本発明のフィルムコンデンサは、金属化フィルムを備えるコンデンサ素子と、上記コンデンサ素子を内部に収納する樹脂製の外装ケースと、上記コンデンサ素子と上記外装ケースとの間に充填された充填樹脂と、を備える。
【0023】
本発明のフィルムコンデンサにおいて、上記外装ケースは、その外面に、外面凸部と、上記外面凸部を上記外装ケースの内方側に位置させる外面凹部とを備えるとともに、上記外面凸部に対向する内面の周囲に、該内面から突出する内面凸部を備えることを特徴としている。
【0024】
樹脂製の外装ケースの外面に設けられた外面凸部は、外装ケースを射出成形により作製する際に樹脂を注入するためのゲートの跡である。上述したように、外面凸部の周囲に外面凹部を設けることにより、外面凸部の不所望な突出を抑制することができる。さらに、外装ケースの内面のうち、外面凸部に対向する内面の周囲に内面凸部を設けることにより、外装ケースの厚みを確保することができる。したがって、外部からコンデンサ素子への水分の浸入を防ぐことができるため、フィルムコンデンサの耐湿性を向上させることができる。
【0025】
また、外装ケースの内面凸部は、後述するように、外装ケースの内部に配置されるコンデンサ素子の位置決めに利用することができる。
【0026】
図2は、本発明の一実施形態に係るフィルムコンデンサを模式的に示す斜視図である。
図3は、
図2に示すフィルムコンデンサの分解斜視図である。
図3は、コンデンサ素子が外装ケースに収納される前の状態を示している。
【0027】
図2に示すフィルムコンデンサ1は、コンデンサ素子10(
図3参照)と、コンデンサ素子10を内部に収納する樹脂製の外装ケース20と、コンデンサ素子10と外装ケース20との間に充填された充填樹脂30と、を備えている。
【0028】
図3に示すように、外装ケース20の内部には、直方体状の空間が形成されている。コンデンサ素子10は、外装ケース20の内面から離間しつつ、外装ケース20の内部の中央に配置されることが望ましい。コンデンサ素子10を保持するために、コンデンサ素子10の外面と外装ケース20の内面との間には、エポキシ樹脂などの充填樹脂30(
図2参照)が充填される。外装ケース20は、一端に開口部を有する有底筒状であり、充填樹脂30は、外装ケース20の内部において、外装ケース20の開口部からコンデンサ素子10までも充填されている。エポキシ樹脂は、加熱硬化させることで、外装ケース20とコンデンサ素子10を一体に接着固定することができる。
【0029】
図3において、コンデンサ素子10は、金属化フィルムの巻回体40と、巻回体40の両側方に形成された第1の外部電極41及び第2の外部電極42と、を備えている。第1の外部電極41には第1のリード端子51が電気的に接続され、第2の外部電極42には第2のリード端子52が電気的に接続されている。
図2に示すように、第1のリード端子51及び第2のリード端子52は、外装ケース20の内部から外部に向かって突出する。
【0030】
(外装ケース)
本発明のフィルムコンデンサを構成する外装ケースは、射出成形により製造される樹脂製のケースである。外装ケースの形状は、例えば、一端に開口部のある有底筒状である。
【0031】
図4(a)及び
図4(b)は、
図2に示すフィルムコンデンサを構成する外装ケースの一例を模式的に示す斜視図である。
図4(a)及び
図4(b)に示す外装ケース20は、一端に略長方形の開口部21を有し、開口部21に対向しつつ他端を封する底部22と、底部22から開口部21側に突出する4枚の側壁23、24、25及び26を備えた四角筒状の側壁部と、を備えた有底四角筒状である。なお、外装ケース20は、四角筒状の側壁部に代えて、円筒状の側壁部を備えた有底円筒状などの筒状であってもよい。
【0032】
図4(a)及び
図4(b)において、外装ケース20の側壁部は、第1の側壁23と、第1の側壁23と略同面積を有すると共に第1の側壁23の内面と対向するように離間して配置された第2の側壁24と、第1の側壁23の一方の側辺と第2の側壁24の一方の側辺とを連接すると共に第1の側壁23の面積より小面積を有する第3の側壁25と、第1の側壁23の他方の側辺と第2の側壁24の他方の側辺とを連接し、第3の側壁25と略同面積を有するとともに第3の側壁25の内面と対向するように離間して配置された第4の側壁26とを備える。
【0033】
図4(a)及び
図4(b)に示すように、外装ケース20の側部には、開口部21側の四辺において、凹部27が設けられていることが望ましい。凹部27は、開口部21側から底部22側に向かい、開口部21側の四辺に沿って伸びている。外装ケースの開口面に凹部を設けることにより、フィルムコンデンサを基板実装した際に、フィルムコンデンサ及び基板が密閉して内圧が上昇することを防止することができる。なお、外装ケースに凹部が設けられていなくてもよい。
【0034】
図4(a)及び
図4(b)に示すように、外装ケース20の側壁部には、各側壁を連接する辺に沿って伸びるテーパー部28が設けられていることが望ましい。
図4(a)及び
図4(b)では、第1の側壁23及び第2の側壁24の底部22側の角部にテーパー部28が設けられている。また、第3の側壁25の底部22側の側辺と底部22とを連接する辺にもテーパー部が設けられ、第4の側壁26の底部22側の側辺と底部22とを連接する辺にもテーパー部が設けられている。なお、外装ケースの側壁部にテーパー部が設けられていなくてもよい。
【0035】
外装ケース20は、
図4(a)に示すように、その外面に、外面凸部61と外面凹部62とを備えるとともに、
図4(b)に示すように、外面凸部61に対向する内面の周囲に、該内面から突出する内面凸部63を備える。
図4(a)及び
図4(b)では、外面凸部61、外面凹部62及び内面凸部63は、外装ケース20の底部に設けられているが、外装ケース20の側壁部に設けられていてもよい。
【0036】
図5は、外装ケースの外面凸部、外面凹部及び内面凸部の一例を模式的に示す拡大断面図である。
外装ケースの外面Aには、外面凸部61と、外面凸部61を外装ケースの内方側(
図5では下側)に位置させる外面凹部62とが設けられている。外面凹部62は、外面凸部61を囲むように環状に設けられている(
図4(a)参照)。さらに、外面凸部61に対向する外装ケースの内面Bには、該内面Bから突出する内面凸部63が設けられている。内面凸部63は、外面凹部62の幅よりも大きくなるように、環状に設けられている(
図4(b)参照)。
【0037】
図6は、外装ケースの外面凸部、外面凹部及び内面凸部の別の一例を模式的に示す拡大断面図である。
図6では、外面凸部61及び外面凹部62は、
図5と同様であるが、内面凸部63aは、外面凹部62の幅よりも大きくなるように、柱状に設けられている。
【0038】
本発明のフィルムコンデンサにおいて、外装ケースの内面凸部は、
図4(b)及び
図5に示すように、外面凸部に対向する内面の周囲のみが突出していてもよいし、
図6に示すように、外面凸部に対向する内面及びその周囲が突出していてもよい。内面凸部の形状は、
図4(b)及び
図5に示す環状や、
図6に示す柱状に限定されるものではなく、外面凸部に対向する内面の周囲が突出した形状であれば特に限定されない。例えば、外面凸部の外縁の形状が円形の場合であっても、内面凸部の外縁の形状は円形に限定されず、楕円形等であってもよいし、四角形等の多角形であってもよい。
【0039】
また、外装ケースの内面凸部は、不連続に設けられていてもよい。例えば、環状又は柱状の内面凸部にスリットが設けられていてもよい。
【0040】
本発明のフィルムコンデンサにおいて、外装ケースの外面凸部及び外面凹部の形状は、特に限定されない。また、外装ケースの外面凸部、外面凹部及び内面凸部の位置も特に限定されない。例えば、外装ケースの外面凸部、外面凹部及び内面凸部は、外装ケースの底部以外の箇所に設けられていてもよい
【0041】
外装ケースにおいて、内面凸部より側方の厚み(
図5及び
図6中、t
1で示す長さ)は、0.5mm以上3mm以下であることが望ましい。なお、内面凸部より側方の厚みt
1は、外装ケースの厚みに相当する。
【0042】
外装ケースにおいて、外面凹部の最小厚み(
図5及び
図6中、t
2で示す長さ)は、内面凸部より側方の厚みt
1と同等以上であることが望ましい。
【0043】
外装ケースにおいて、外面凹部の幅(
図5及び
図6中、t
3で示す長さ)は、外面凸部の幅よりも大きい限り特に限定されないが、1mm以上10mm以下であることが望ましく、4mm以上7mm以下であることがより望ましい。
【0044】
外装ケースにおいて、内面凸部の幅(
図5及び
図6中、t
4で示す長さ)は、外面凹部の幅t
3と同等以上であることが望ましい。
【0045】
外装ケースにおいて、外面凹部に対向する内面は、内面凸部より側方の内面よりも、コンデンサ素子側に位置することが望ましい。
【0046】
外装ケースにおいて、外面凸部の外面は、内面凸部より側方の外面よりも、外装ケースの内方側に位置することが望ましい。
【0047】
本発明のフィルムコンデンサにおいて、内面凸部は、コンデンサ素子の外面に接触していてもよい。
この場合、内面凸部は、外装ケースの内部に配置されるコンデンサ素子の位置決めに利用することができる。
【0048】
内面凸部がコンデンサ素子の外面に接触している場合、内面凸部は、コンデンサ素子の外面に沿った平坦状に形成されていることが望ましい。
コンデンサ素子を外装ケースの内部で安定的に位置決めするためには、点接触よりも、線接触又は面接触が望ましい。また、プレス加工が行われたコンデンサ素子の外面形状は、安定した形状ではない。コンデンサ素子が種々の形状であっても外装ケースの内部で内面凸部に接触するためには、内面凸部の先端が点であるよりも平坦である方が望ましい。内面凸部が平坦状である場合、コンデンサ素子の位置決めを好適に行うことができる。
【0049】
外装ケースが、開口部を有する筒状であり、上記開口部に対向しつつ上記コンデンサ素子が当接する底部と、上記底部から上記開口部側に突出する側壁部とを備える場合、上記底部には、上記コンデンサ素子側に突出する第1位置決め凸部が設けられ、上記内面凸部は、上記第1位置決め凸部であることが望ましい。
フィルムコンデンサの製造においては、外装ケースの内部にコンデンサ素子を挿入した後、充填樹脂でモールドする。このとき、外装ケースの底部に内面凸部が設けられていると、内面凸部をコンデンサ素子の載置部として利用することができる。
【0050】
上記内面凸部は、上記底部の一部であって、中央位置に設けられていることが望ましい。
外装ケースの底部の多くに内面凸部が設けられていると、外装ケースの底部とコンデンサ素子との間に入り込む充填樹脂の量が少なくなる。そのため、外装ケースの底部の一部に内面凸部を設けることで、充填樹脂が入り込む余地を作ることができる。さらに、底部の中央位置に内面凸部を設けることで、コンデンサ素子を安定して底部に載置することができる。
【0051】
外装ケースの底部に第1位置決め凸部が設けられ、内面凸部が上記第1位置決め凸部である場合、上記側壁部には、上記コンデンサ素子側に突出するとともに上記コンデンサ素子を介して対向する第2位置決め凸部及び第3位置決め凸部が設けられていることが望ましい。
この場合、コンデンサ素子を3点で保持することにより、コンデンサ素子を外装ケースの内部で安定的に位置決めすることができる。
【0052】
外装ケースが、開口部を有する筒状であり、上記開口部に対向しつつ上記コンデンサ素子が当接する底部と、上記底部から上記開口部側に突出する側壁部とを備える場合、上記底部には、上記コンデンサ素子側に突出する第1位置決め凸部が設けられ、上記側壁部には、上記コンデンサ素子側に突出するとともに上記コンデンサ素子を介して対向する第2位置決め凸部及び第3位置決め凸部が設けられ、上記内面凸部は、上記第2位置決め凸部及び上記第3位置決め凸部のいずれか1つであってもよい。
このように、内面凸部を側壁部での位置決めに利用してもよい。この場合も、コンデンサ素子を3点で保持することにより、コンデンサ素子を外装ケースの内部で安定的に位置決めすることができる。
【0053】
図7(a)及び
図7(b)は、本発明のフィルムコンデンサの別の一例を模式的に示す断面図である。
図7(a)では、外装ケース20の底部に、コンデンサ素子10側に突出する第1位置決め凸部71が設けられている。
図7(b)では、外装ケース20の側壁部に、コンデンサ素子10側に突出するとともにコンデンサ素子10を介して対向する第2位置決め凸部72及び第3位置決め凸部73が設けられている。
上述したように、第1位置決め凸部71が内面凸部であってもよいし、第2位置決め凸部72及び第3位置決め凸部73のいずれか1つが内面凸部であってもよい。
【0054】
本発明のフィルムコンデンサにおいて、外装ケースは、樹脂組成物から構成されている。
【0055】
外装ケースを構成する樹脂組成物は、液晶ポリマー(LCP)を含んでいてもよいし、ポリフェニレンサルファイド(PPS)を含んでいてもよい。フィルムコンデンサの耐湿性を向上させる観点から、外装ケースは、LCPを含む樹脂組成物から構成されていることが望ましい。
【0056】
樹脂組成物に含まれるLCPとして、例えば、p-ヒドロキシ安息香酸と6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸基を骨格にもつLCPを使用することができる。また、p-ヒドロキシ安息香酸と6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸基以外にも、フェノール、フタル酸、エチレンテレフタレートなどの各種成分を用いて、重縮合体を形成したLCPを使用することができる。
また、LCPを分類する場合、I型、II型、III型といった分類方法もあるが、材料としては、上記構成要素から形成したLCPと同じ材料を意味する。
【0057】
樹脂組成物は、LCP又はPPSに加えて、無機充填材をさらに含むことが望ましい。
無機充填材の形態は特に限定されず、例えば、繊維状又は板状などの長手方向を有するものが挙げられる。これらの無機充填材は、2種以上を組み合わせて使用してもよい。したがって、樹脂組成物は、上記無機充填材として、繊維状の無機材料及び/又は板状の無機材料を含むことが望ましい。
【0058】
本明細書において、「繊維状」とは、充填材の長手方向長さと、長手方向に垂直な断面における断面径との関係が、長手方向長さ÷断面径≧5(すなわちアスペクト比が5:1以上)である状態を意味する。ここで、断面径は、断面の外周上において最長となる2点間距離とする。断面径が長手方向で異なる場合、断面径が最大となる箇所で測定を行う。
また、「板状」とは、投影面積が最大となる面の断面径と、この断面に対して垂直方向における最大高さの関係が、断面径÷高さ≧3である状態を意味する。
【0059】
無機充填材は、少なくともその一部が外装ケースの側部の各側壁において、ケース底側から開口部に向かって配向している部分と、隣り合う側壁に向かって配向している部分とを有し、外装ケースの内部において分散していることが望ましい。
【0060】
無機充填材は、少なくとも直径5μm以上、長さ50μm以上のサイズを有するものであることが望ましい。特に、無機充填材は、凝集することなく、外装ケース全体に分散していることが望ましい。
【0061】
無機充填材として、具体的には、繊維状のガラスフィラーや板状のタルク又はマイカなどの材料を使用することができる。特に、無機充填材は、ガラスフィラーを主成分として含むことが望ましい。
【0062】
(充填樹脂)
本発明のフィルムコンデンサにおいて、充填樹脂は、コンデンサ素子と外装ケースとの間に充填される。
【0063】
充填樹脂としては、必要な機能に応じた樹脂を適宜選択することができる。例えば、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ウレタン樹脂などを使用することができる。エポキシ樹脂の硬化剤には、アミン硬化剤、イミダゾール硬化剤を使用してもよい。また、充填樹脂には、樹脂のみを使用してもよいが、強度の向上を目的として、補強剤を添加してもよい。補強剤には、シリカ、アルミナなどを用いることができる。
【0064】
コンデンサ素子と外装ケースとの間に充填樹脂を充填することにより、コンデンサ素子を外気から遮断することができる。そのため、透湿性が低い樹脂を適宜選択し、外装ケースの開口部における樹脂を厚くすることが望ましい。
外装ケースの開口部における樹脂の厚みは、コンデンサ全体の体積(体格)が許容される範囲で充分な厚みを持たせることが望ましく、具体的には、2mm以上であることが望ましく、4mm以上であることがより望ましい。特に、外装ケースの内部において、コンデンサ素子が外装ケースの開口部よりも底面側に位置するように配置することで、コンデンサ素子に対して外装ケースの開口部側の樹脂の厚みを、底面側の樹脂の厚みよりも厚くすることがより望ましい。
また、充填樹脂の高さと外装ケースの高さとの関係は、外装ケースの開口部における樹脂をできる限り厚くするとともに、外装ケースの内部側の位置まででもよいし、すりきれ一杯程度でもよいし、表面張力でやや溢れていてもよい。
【0065】
(コンデンサ素子)
本発明のフィルムコンデンサにおいて、コンデンサ素子は、例えば断面長円状の柱状であり、その中心軸方向の両端に、例えば金属溶射(メタリコン)で形成した外部電極が設けられる。
【0066】
図8(a)は、本発明のフィルムコンデンサを構成するコンデンサ素子の一例を模式的に示す斜視図であり、
図8(b)は、
図8(a)に示すコンデンサ素子のb-b線断面図である。
図8(a)及び
図8(b)に示すコンデンサ素子10は、第1の金属化フィルム11と第2の金属化フィルム12とが積層された状態で巻回された金属化フィルムの巻回体40と、巻回体40の両端部に接続された第1の外部電極41及び第2の外部電極42と、を備えている。
図8(b)に示すように、第1の金属化フィルム11は、第1の樹脂フィルム13と、第1の樹脂フィルム13の表面に設けられた第1の金属層(対向電極)15とを備え、第2の金属化フィルム12は、第2の樹脂フィルム14と、第2の樹脂フィルム14の表面に設けられた第2の金属層(対向電極)16とを備えている。
【0067】
図8(b)に示すように、第1の金属層15及び第2の金属層16は、第1の樹脂フィルム13又は第2の樹脂フィルム14を挟んで互いに対向している。さらに、第1の金属層15は、第1の外部電極41と電気的に接続されており、第2の金属層16は、第2の外部電極42と電気的に接続されている。
【0068】
第1の樹脂フィルム13及び第2の樹脂フィルム14は、それぞれ異なる構成を有していてもよいが、同一の構成を有していることが望ましい。
【0069】
第1の金属層15は、第1の樹脂フィルム13の一方の面において一方側縁にまで届くが、他方側縁にまで届かないように形成される。他方、第2の金属層16は、第2の樹脂フィルム14の一方の面において一方側縁にまで届かないが、他方側縁にまで届くように形成される。第1の金属層15及び第2の金属層16は、例えばアルミニウム層などから構成される。
【0070】
図9は、
図8(a)及び
図8(b)に示すコンデンサ素子を構成する金属化フィルムの巻回体の一例を模式的に示す斜視図である。
図8(b)及び
図9に示すように、第1の金属層15における第1の樹脂フィルム13の側縁にまで届いている側の端部、及び、第2の金属層16における第2の樹脂フィルム14の側縁にまで届いている側の端部がともに積層されたフィルムから露出するように、第1の樹脂フィルム13と第2の樹脂フィルム14とが互いに幅方向(
図8(b)では左右方向)にずらされて積層される。
図9に示すように、第1の樹脂フィルム13及び第2の樹脂フィルム14が積層された状態で巻回されることによって巻回体40となり、第1の金属層15及び第2の金属層16が端部で露出した状態を保持して、積み重なった状態とされる。
【0071】
図8(b)及び
図9では、第2の樹脂フィルム14が第1の樹脂フィルム13の外側になるように、かつ、第1の樹脂フィルム13及び第2の樹脂フィルム14の各々について、第1の金属層15及び第2の金属層16の各々が内方に向くように巻回されている。
【0072】
第1の外部電極41及び第2の外部電極42は、上述のようにして得られた金属化フィルムの巻回体40の各端面上に、例えば亜鉛などを溶射することによって形成される。第1の外部電極41は、第1の金属層15の露出端部と接触し、それによって第1の金属層15と電気的に接続される。他方、第2の外部電極42は、第2の金属層16の露出端部と接触し、それによって第2の金属層16と電気的に接続される。
【0073】
本発明のフィルムコンデンサにおいて、コンデンサ素子を構成する樹脂フィルムは、硬化性樹脂を主成分として含んでいてもよいし、熱可塑性樹脂を主成分として含んでいてもよい。フィルムコンデンサの耐湿性を向上させる観点から、樹脂フィルムは、硬化性樹脂を主成分として含むことが望ましい。
【0074】
本明細書において、「樹脂フィルムの主成分」とは、存在割合(重量%)が最も大きい成分を意味し、望ましくは、存在割合が50重量%を超える成分を意味する。したがって、樹脂フィルムは、主成分以外の成分として、例えば、シリコーン樹脂等の添加剤や、後述する第1有機材料及び第2有機材料等の出発材料の未硬化部分を含んでもよい。
【0075】
硬化性樹脂は、熱硬化性樹脂であってもよいし、光硬化性樹脂であってもよい。
本明細書において、熱硬化性樹脂とは、熱で硬化し得る樹脂を意味しており、硬化方法を限定するものではない。したがって、熱で硬化し得る樹脂である限り、熱以外の方法(例えば、光、電子ビームなど)で硬化した樹脂も熱硬化性樹脂に含まれる。また、材料によっては材料自体が持つ反応性によって反応が開始する場合があり、必ずしも外部から熱又は光等を与えずに硬化が進むものについても熱硬化性樹脂とする。光硬化性樹脂についても同様であり、硬化方法を限定するものではない。
【0076】
硬化性樹脂は、ウレタン結合及びユリア結合の少なくとも一方を有していてもよいし、有していなくてもよい。このような樹脂としては、例えば、ウレタン結合を有するウレタン樹脂、ユリア結合を有するユリア樹脂等が挙げられる。また、ウレタン結合及びユリア結合の両方を有する樹脂であってもよい。
なお、ウレタン結合及び/又はユリア結合の存在は、フーリエ変換赤外分光光度計(FT-IR)を用いて確認することができる。
【0077】
硬化性樹脂は、第1有機材料と第2有機材料との硬化物からなることが望ましい。例えば、第1有機材料が有する水酸基(OH基)と第2有機材料が有するイソシアネート基(NCO基)とが反応して得られる硬化物等が挙げられる。
【0078】
上記の反応によって硬化物を得る場合、出発材料の未硬化部分がフィルム中に残留してもよい。例えば、樹脂フィルムは、イソシアネート基(NCO基)及び水酸基(OH基)の少なくとも一方を含んでもよい。この場合、樹脂フィルムは、イソシアネート基及び水酸基のいずれか一方を含んでもよいし、イソシアネート基及び水酸基の両方を含んでもよい。
なお、イソシアネート基及び/又は水酸基の存在は、フーリエ変換赤外分光光度計(FT-IR)を用いて確認することができる。
【0079】
第1有機材料は、分子内に複数の水酸基(OH基)を有するポリオールであることが望ましい。ポリオールとしては、例えば、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリビニルアセタール等が挙げられる。第1有機材料として、2種以上の有機材料を併用してもよい。
【0080】
第2有機材料は、分子内に複数の官能基を有する、イソシアネート化合物、エポキシ樹脂又はメラミン樹脂であることが望ましい。第2有機材料として、2種以上の有機材料を併用してもよい。第2有機材料の中では、イソシアネート化合物が望ましい。
【0081】
イソシアネート化合物としては、例えば、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)及びトリレンジイソシアネート(TDI)等の芳香族ポリイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)等の脂肪族ポリイソシアネート等が挙げられる。これらのポリイソシアネートの変性体、例えば、カルボジイミド又はウレタン等を有する変性体であってもよい。
【0082】
エポキシ樹脂としては、エポキシ環を有する樹脂であれば特に限定されず、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビフェニル骨格エポキシ樹脂、シクロペンタジエン骨格エポキシ樹脂、ナフタレン骨格エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0083】
メラミン樹脂としては、構造の中心にトリアジン環、その周辺にアミノ基3個を有する有機窒素化合物であれば特に限定されず、例えば、アルキル化メラミン樹脂等が挙げられる。その他、メラミンの変性体であってもよい。
【0084】
本発明のフィルムコンデンサにおいて、コンデンサ素子を構成する樹脂フィルムは、望ましくは、第1有機材料及び第2有機材料を含む樹脂溶液をフィルム状に成形し、次いで、熱処理して硬化させることによって得られる。
【0085】
本発明のフィルムコンデンサにおいて、コンデンサ素子を構成する樹脂フィルムは、蒸着重合膜を主成分として含んでいてもよい。蒸着重合膜は、ウレタン結合及びユリア結合の少なくとも一方を有していてもよいし、有していなくてもよい。
なお、蒸着重合膜は、蒸着重合法により成膜されたものを指し、基本的には硬化性樹脂に含まれる。
【0086】
本発明のフィルムコンデンサにおいて、コンデンサ素子を構成する樹脂フィルムは、熱可塑性樹脂を主成分として含んでいてもよい。熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリプロピレン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルイミド、ポリアリルアリレート等が挙げられる。
【0087】
本発明のフィルムコンデンサにおいて、コンデンサ素子を構成する樹脂フィルムは、他の機能を付加するための添加剤を含むこともできる。例えば、レベリング剤を添加することで平滑性を付与することができる。添加剤は、水酸基及び/又はイソシアネート基と反応する官能基を有し、硬化物の架橋構造の一部を形成する材料であることがより望ましい。このような材料としては、例えば、エポキシ基、シラノール基及びカルボキシル基からなる群より選択される少なくとも1種の官能基を有する樹脂等が挙げられる。
【0088】
本発明のフィルムコンデンサにおいて、コンデンサ素子を構成する樹脂フィルムの厚みは特に限定されないが、5μm以下であることが望ましく、3.5μm未満であることがより望ましく、3.4μm以下であることがさらに望ましい。また、樹脂フィルムの厚みは、0.5μm以上であることが望ましい。
なお、樹脂フィルムの厚みは、光学式膜厚計を用いて測定することができる。
【0089】
本発明のフィルムコンデンサにおいて、コンデンサ素子を構成する金属層に含まれる金属の種類は特に限定されないが、金属層は、アルミニウム(Al)、チタン(Ti)、亜鉛(Zn)、マグネシウム(Mg)、スズ(Sn)及びニッケル(Ni)からなる群より選ばれるいずれか1種を含むことが望ましい。
【0090】
本発明のフィルムコンデンサにおいて、コンデンサ素子を構成する金属層の厚みは特に限定されないが、金属層の破損を抑制する観点から、金属層の厚みは、5nm以上、40nm以下であることが望ましい。
なお、金属層の厚みは、金属化フィルムを厚み方向に切断した断面を、電界放出型走査電子顕微鏡(FE-SEM)等の電子顕微鏡を用いて観察することにより特定することができる。
【0091】
図10は、
図8(a)及び
図8(b)に示すコンデンサ素子を構成する金属化フィルムの巻回体の別の一例を模式的に示す斜視図である。
本発明のフィルムコンデンサにおいて、コンデンサ素子が金属化フィルムの巻回体から構成される場合、
図10に示す金属化フィルムの巻回体40aのように、断面形状が楕円又は長円のような扁平形状にプレスされ、よりコンパクトな形状とされることが望ましい。
この場合、外装ケース内部のデッドスペースを減らすことにより、外装ケースを小型化することができるため、フィルムコンデンサ全体を小型化することができる。
【0092】
本発明のフィルムコンデンサにおいて、コンデンサ素子が金属化フィルムの巻回体から構成される場合、コンデンサ素子は、円柱状の巻回軸を備えていてもよい。巻回軸は、巻回状態の金属化フィルムの中心軸線上に配置されるものであり、金属化フィルムを巻回する際の巻軸となるものである。
【0093】
本発明のフィルムコンデンサにおいては、コンデンサ容量に応じてコンデンサ素子のサイズや形状が決まることから、種々のサイズのコンデンサ素子を使用することができる。
例えば、コンデンサ容量が1μF以上、150μF以下であれば、コンデンサ素子のサイズは、断面長円形状において、長円方向の長さが15mm以上65mm以下、短円方向の長さが2mm以上50mm以下、長手方向(断面の奥手前方向であって外部電極を含む)の長さが10mm以上50mm以下であることが望ましい。
この場合、外装ケースの外形は、底部の長辺が16mm以上73mm以下、底部の短辺が3mm以上58mm以下であり、外装ケースの高さが10.5mm以上50.5mm以下であることが望ましい。また、外装ケースの厚みは、0.5mm以上3mm以下であることが望ましい。
【0094】
本発明のフィルムコンデンサにおいて、コンデンサ素子の体積は、外装ケースの内容積に対して30%以上、85%以下であることが望ましい。コンデンサ素子の体積が外装ケースの内容積に対して85%を超えると、充填樹脂によって外装ケース及びコンデンサ素子を固定することが困難となる。一方、コンデンサ素子の体積が外装ケースの内容積に対して30%未満であると、コンデンサ素子に対して外装ケースが大きくなりすぎて、フィルムコンデンサが大型になる。
【0095】
本発明のフィルムコンデンサにおいて、外装ケースの内面とコンデンサ素子の外面との離間距離は、1mm以上、5mm以下であることが望ましく、1mm以上、2mm以下であることがより望ましい。
【0096】
(リード端子)
本発明のフィルムコンデンサにおいて、リード端子は、外装ケースの内部に充填された充填樹脂から外部に向かって突出する。
【0097】
リード端子がコンデンサ素子の外部電極と電気的に接続されている部分は、外部電極の小領域に設けられることから、リード端子に負荷がかかると、外部電極からリード端子が分離してしまうおそれがある。そこで、外装ケースの内部においては、コンデンサ素子の外部電極とリード端子の外部に充填樹脂が位置し、両者を密着固定する。これにより、リード端子の突出部に負荷がかかっても、充填樹脂によってリード端子と外部電極との接続が補強され、両者の分離を抑制することができる。
【0098】
外部電極とリード端子との接続位置は、外部電極の中央部でもよいし、特許第4733566号の
図1に記載されているように開口部に近い電極端部であってもよい。
【0099】
(その他の実施形態)
図2では、単一の外装ケースに単一のコンデンサ素子が収納されている例を示したが、例えば、特開2012-69840号公報に記載されているように、単一の外装ケースに複数のコンデンサ素子が収納されていてもよい。
【0100】
また、これまでは、第1の金属化フィルムと第2の金属化フィルムとが積層された状態で巻回された巻回型フィルムコンデンサを用いて説明したが、第1の金属化フィルムと第2の金属化フィルムとが積層された積層型フィルムコンデンサであってもよい。積層型フィルムコンデンサなどのフィルムコンデンサであっても、上述した本発明の作用及び効果が得られる。
【実施例0101】
以下、本発明のフィルムコンデンサをより具体的に開示した実施例を示す。なお、本発明は、これらの実施例のみに限定されるものではない。
【0102】
図11は、実施例1~4で用いた外装ケースの拡大断面図である。一方、
図12は、比較例1で用いた外装ケースの拡大断面図である。
【0103】
(実施例1)
熱可塑性樹脂であるポリプロピレン(PP)フィルムからなる誘電体樹脂フィルムを準備した。この誘電体樹脂フィルムにアルミニウムを蒸着して電極とした金属化フィルムを巻回することでコンデンサ素子を得た。得られたコンデンサ素子を用いて、コンデンサ試料を作製した。外装ケースには、
図11に示す形状を有するPPS製のケースを用いた。
図11中、ケース厚みに相当するt
1の寸法を1mm、外面凹部の最小厚みt
2の寸法を1mmとした。
【0104】
(比較例1)
熱可塑性樹脂であるPPフィルムからなる誘電体樹脂フィルムを準備した。この誘電体樹脂フィルムにアルミニウムを蒸着して電極とした金属化フィルムを巻回することでコンデンサ素子を得た。得られたコンデンサ素子を用いて、コンデンサ試料を作製した。外装ケースには、
図12に示す形状を有するPPS製のケースを用いた。
図12中、ケース厚みに相当するt
1の寸法を1mm、外面凹部の最小厚みt
2の寸法を0.5mmとした。
【0105】
実施例1及び比較例1で作製したコンデンサ試料について、85℃85%RH雰囲気下、電圧300V印加の条件で耐湿負荷試験を実施したときの容量低下率を測定した。
静電容量の低下率が初期値に対して5%になる時間を測定し、1500時間以上のものを○(良)、1500時間未満のものを×(不良)と評価した。結果を表1に示す。
【0106】
【0107】
実施例1と比較例1の比較から、外装ケースにおいて、外面凸部に対向する内面の周囲に内面凸部を設けることにより、フィルムコンデンサの耐湿性が向上している。外装ケースにおいては、外面凹部の最小厚みt2を、内面凸部より側方の厚みt1と同等以上にすることが望ましいと考えられる。
【0108】
(実施例2)
ポリビニルアセタールとポリイソシアネートの混合物を硬化させた熱硬化性樹脂からなる誘電体樹脂フィルムを準備した。この誘電体樹脂フィルムにアルミニウムを蒸着して電極とした金属化フィルムを巻回することでコンデンサ素子を得た。得られたコンデンサ素子を用いて、コンデンサ試料を作製した。外装ケースには、
図11に示す形状を有するPPS製のケースを用いた。
図11中、ケース厚みに相当するt
1の寸法を1mm、外面凹部の最小厚みt
2の寸法を1mmとした。
【0109】
実施例2で作製したコンデンサ試料についても、上記耐湿負荷試験を実施した。結果を表2に示す。
【0110】
【0111】
実施例1と実施例2の比較から、コンデンサ素子を構成する樹脂フィルムの材料として熱硬化性樹脂を用いることにより、熱可塑性樹脂に比べて、フィルムコンデンサの耐湿性が向上している。
【0112】
(実施例3)
ポリビニルアセタールとポリイソシアネートの混合物を硬化させた熱硬化性樹脂からなる誘電体樹脂フィルムを準備した。この誘電体樹脂フィルムにアルミニウムを蒸着して電極とした金属化フィルムを巻回することでコンデンサ素子を得た。得られたコンデンサ素子を用いて、コンデンサ試料を作製した。外装ケースには、
図11に示す形状を有するLCP製のケースを用いた。
図11中、ケース厚みに相当するt
1の寸法を1mm、外面凹部の最小厚みt
2の寸法を1mmとした。
【0113】
実施例3で作製したコンデンサ試料についても、上記耐湿負荷試験を実施した。結果を表3に示す。
【0114】
【0115】
実施例2と実施例3の比較から、外装ケースの材料としてLCPを用いることにより、PPSに比べて、フィルムコンデンサの耐湿性が向上している。
【0116】
(実施例4)
ポリビニルアセタールとポリイソシアネートの混合物を硬化させた熱硬化性樹脂からなる誘電体樹脂フィルムを準備した。この誘電体樹脂フィルムにアルミニウムを蒸着して電極とした金属化フィルムを巻回することでコンデンサ素子を得た。得られたコンデンサ素子を用いて、コンデンサ試料を作製した。外装ケースには、
図11に示す形状を有するLCP製のケースを用いた。
図11中、ケース厚みに相当するt
1の寸法を0.5mm、外面凹部の最小厚みt
2の寸法を0.5mmとした。
【0117】
実施例4で作製したコンデンサ試料についても、上記耐湿負荷試験を実施した。結果を表4に示す。
【0118】
【0119】
実施例4の結果から、コンデンサ素子を構成する樹脂フィルムの材料が熱硬化性樹脂、外装ケースの材料がLCPである場合には、外装ケースの厚みが0.5mmであってもフィルムコンデンサの耐湿性が担保されている。