(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022053563
(43)【公開日】2022-04-06
(54)【発明の名称】経皮的全内視鏡用ケージ挿入補助器具
(51)【国際特許分類】
A61B 17/90 20060101AFI20220330BHJP
【FI】
A61B17/90
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020160269
(22)【出願日】2020-09-25
(71)【出願人】
【識別番号】505273648
【氏名又は名称】中村 周
(72)【発明者】
【氏名】中村 周
【テーマコード(参考)】
4C160
【Fターム(参考)】
4C160LL12
4C160LL69
(57)【要約】
【課題】経皮的全内視鏡の外筒に挿入することができる細長い器具でありながら剛性も確保した構造で,さらに神経を確実に保護しながらケージをKambin三角を経由して椎体間に挿入することを補助する器具であること.
【解決手段】当発明の器具はその断面形状がL字形でその一辺の外面が部分円形状となって外方に肥厚しており,手元側には滑り止め用に加工された連続凹凸面がある.その二本が「」字型配列で組み合わされた器具で外筒よりも大きくて様々な大きさのケージに対応できる.
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
腰椎椎体間固定術においてケージを挿入する際の補助を目的とする器具で,経皮的全内視鏡用の外筒に挿入可能な細長い器具で,その断面形状がL字形でその一辺の外面が部分円形状となって外方に肥厚しており,
当器具の手元側の外面には滑り止め用に加工された連続凹凸面があり,
それともう一つ,同様の形状の器具を長軸回りに180度回旋させて配置させたものを一対として使用し,ケージを囲むことができることを特徴とするケージ挿入補助器具.
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は経皮的全内視鏡を用いた腰椎椎体間固定手術において使用する,ケージの挿入を補助する器具に関するものである.
【背景技術】
【0002】
低侵襲脊椎手術において脊椎用経皮的全内視鏡を用いる方法がある.この経皮的全内視鏡900とは
図1,
図2のように体内に挿入する部分である本体部分901は外径約6mm弱から7mm弱程の細長い円柱で,そのなかに鏡筒902と光源路903と潅流水路904と作業用内腔905が一体となって構成されているものである.皮膚切開部Sから体内に外径7mmから8mm程の円筒形の外筒906を挿入し,その中に本体部分901を挿入して,外部から潅流水路904へ水を潅流して対象を洗い流しながら,接続されたカメラからの画像をモニターに写して鏡視し,作業用内腔905に挿入した鉗子やドリル907等の器具にて椎骨L等に対して操作する.
【0003】
腰椎すべり症や腰椎椎間板変性症に対して行われている腰椎椎体間固定術とは,
図3のように,一般的には椎体間骨移植と後方スクリュー固定を行う手術である.椎体間骨移植は,椎体間IBの椎間板の大部分を切除してその空間にケージ910という箱形状のスペーサー(
図4)を挿入し,そのケージには移植用の骨組織を充填しており,さらにケージ周囲にも骨移植を行うものである.ケージを挿入する目的は,椎間板を除去した椎体間IBの間隙がつぶれないようにしてそこに移植された骨組織が圧壊されることを防ぐことと,椎体間を安定化させて骨癒合に有利な状況にすることである.後方スクリュー固定とは,背面から椎体Bに挿入したスクリュー911と,それに付属させるバー912などにて隣接する椎体同士を不動化するものである.腰椎椎体間固定術により椎体間は骨癒合して症状が緩和される.
【0004】
椎体間骨移植は,従来は神経の後方にある椎骨Lを切除して,頭尾側の椎体Bと神経Nで囲まれた部位であるKambin三角と呼ばれる部位(
図8参照)を露出してから,そこを経由して椎間板切除やケージ挿入を行っていた.この神経周囲の操作は神経傷害や血腫による術後合併症を引き起こし,また手術侵襲が大きくなるという問題があった.そこで経皮的全内視鏡を用いることにより,器具が小径であるため,大きな骨切除を行わなくてもKambinの三角に安全に到達でき,椎間板を切除できる.しかし,その後ケージを挿入する段階で問題がある.一般的に用いられているケージは外筒よりも大きいため,外筒を通してケージを挿入することができない.外筒を抜去してからケージを挿入することは,ケージが神経に当たり傷害させる危険がある.そこで経皮的に安全にケージを挿入することを可能にするため,経皮的椎体間固定術PELIF法を開発した.当器具はPELIF法で使用するケージ挿入補助器具の一形態である.
【0005】
ケージの大きさは様々なものがあり,患者により適正な大きさも変わるが,なるべく大きなサイズのケージを挿入することが望ましい.一方,椎体間は狭くなっている場合が多い.ケージを挿入する際にはハンマーで打ちこんで狭小化している椎体間を広げるようにしながら打ち込まれるためケージ挿入補助器具には強い力がかかる.塑性変形が起きないような剛性も必要である.
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】論文表題「経皮的腰椎椎体間固定術(PELIF)の成績」 掲載雑誌名Journal of Spine Research 8巻7号 Page1317-1320.2017
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ケージ挿入補助器具において,経皮的全内視鏡の外筒に挿入することができる細長い器具でありながら剛性も確保した構造で,さらに神経を確実に保護しながらケージをKambin三角を経由して椎体間に挿入できる器具であること.外筒よりも大きく様々な大きさのケージに対応できること.
【課題を解決するための手段】
【0009】
当発明のケージ挿入補助器具100,110は,経皮的全内視鏡用の外筒に挿入可能な細長い器具で,その断面形状がL字形でその一辺の外面が部分円形状となって外方に肥厚している.ケージ挿入補助器具の手元側Pの外面には滑り止め用に加工された連続凹凸面がある.このケージ挿入補助器具(大)100と同型でやや小サイズのもの(小)110とペアとなって,「」字型に配置されて使用される.
【0010】
手術は,外筒906を腰部の後外側からKambin三角を経由して椎体間IBに挿入し,経皮的全内視鏡をその中に挿入して椎間板を切除した後,
図5のように,外筒内に当ケージ挿入補助器具100,110の大小ペアを「」の字型の配列で挿入し,その先が椎体間IB内にあるように棒で押しとどめながら外筒を抜去する.
図7のように,当ケージ挿入補助器具(大)の外面を頭外側に向けておき,その内面の二辺にケージ910の頭外側の二辺を当てる.ケージ挿入補助器具(小)の方は同様にその対面でケージに当てておく.当ケージ挿入補助器具を手で把持し,ケージを押し棒にて押し込む.ケージは当ケージ挿入補助器具の内面を滑りながら椎体間に導かれ挿入される.
【発明の効果】
【0011】
図8のように,神経Nはケージ挿入部であるKambin三角の頭外側を走行しており,当ケージ挿入補助器具100がケージ910の頭外側の角をカバーして神経を隔てているため,ケージ挿入時にケージの角による神経への擦過損傷を避けることができる.そして,ケージは大きいサイズでも「」字型配列の器具に囲まれて外れることなく椎体間に導かれるため様々なケージサイズに対応できる.
【0012】
その他に,ケージ挿入補助器具に求められる条件は,
図8のように,椎体間IBの頭尾側はほぼ平面であり,ケージ挿入補助器具の頭側面と尾側面の外面は平面である必要がある.そして,
図4のように,ケージはほぼ四角柱形状であることにより,ケージ挿入補助器具の内面はL字形状でケージの角をカバーしてフィットする必要がある.さらに,経皮的全内視鏡用の外筒に挿入可能なことはケージ挿入補助器具の安全な挿入のために必要である.そして,L字の頭側と外側の二辺はなるべく長くて神経を余裕をもってカバーできる方が望ましいが,一方で剛性を確保するためにはなるべく厚さがあることが望ましい.以上の条件を満たすために上記の形状が最良である.
【0013】
ケージを押し棒にて打ち込む際には,ケージとともにケージ挿入補助器具も引きずられて椎間に押し込まれるとケージ挿入補助器具を抜去できなくなってしまうが,ケージ挿入補助器具の手元側P外面の連続凹凸面により握った手との摩擦が増えてケージ挿入補助器具は引き込まれにくくなる.
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】脊椎後方進入手術時の経皮的全内視鏡の一部と外筒.
【
図5】ケージ挿入補助器具の大小組み合わせて外筒内挿入時の背面図.
【
図7】ケージ挿入時のケージ挿入補助器具との背面図.
【
図8】ケージ挿入時の腰椎と周囲組織の図(挿入方向の後方から見た図).
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の実施形態を
図5~9を用いて説明する.ケージ挿入補助器具(大)100は,経皮的全内視鏡用の外筒906に挿入可能な細長い器具で,全長は200mm程で,その断面形状がL字形でその二辺の長さはそれぞれ約4mmと約5mm程で,二辺のうち短い方の一辺の外面が部分円形状となって外方に肥厚している.
上記と同型だが,断面の二辺が少し短く,全長は同じのケージ挿入補助器具(小)110をペアとする.
当ケージ挿入補助器具100,110の手元側Pの外面には滑り止め用に加工された連続凹凸面がある.当ケージ挿入補助器具の手元側に穴101(
図9では隠れて見えない),111があり,当ケージ挿入補助器具を抜去する時にはフック121のある抜去用器具120にてその穴101,111に引っかけてハンマーで打って抜去する.
【符号の説明】
【0016】
S 皮膚切開部
L 椎骨背側部
B 椎体
IB 椎体間
CE 頭側
CA 尾側
ME 内側
LA 外側
D 先端側
P 手元側
N 神経