(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022053641
(43)【公開日】2022-04-06
(54)【発明の名称】手動操作式商品搬出機構を備えた自動販売機
(51)【国際特許分類】
G07F 9/00 20060101AFI20220330BHJP
G07F 11/00 20060101ALI20220330BHJP
【FI】
G07F9/00 109F
G07F11/00 A
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020160386
(22)【出願日】2020-09-25
(71)【出願人】
【識別番号】509277006
【氏名又は名称】株式会社ライズ・アップ
(74)【代理人】
【識別番号】100098936
【弁理士】
【氏名又は名称】吉川 晃司
(74)【代理人】
【識別番号】100098888
【弁理士】
【氏名又は名称】吉川 明子
(72)【発明者】
【氏名】松本 富士男
【テーマコード(参考)】
3E044
3E046
【Fターム(参考)】
3E044AA01
3E044FB07
3E046BA03
3E046EA08
3E046EB01
3E046EB05
3E046FA03
(57)【要約】
【課題】既存の自動販売機側に曲げや穴開け等の加工をせずに容易に取付けることができ、結果的に加工による故障のリスクも無くすことに成功した、新規且つ有用な手動操作式商品搬出機構の提供。
【解決手段】リンク部材15に中継金具37を固定し、その貫通孔45にワイヤー47を通す。モータ7の駆動によりリンク部材15が上動する場合には、中継金具37の貫通孔45からワイヤー47が遊嵌された状態となっているので、ワイヤー47はその上動には殆ど引き摺られず、貫通孔45からワイヤー47が飛び出す方向に摺動することになる。しかも、露出部分47aは短くなっているので、上動限界にきても、中継金具37と密着巻きスプリング51との間で膨らまず、貫通孔45から小さく飛び出すだけで済む。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の後面に設けられ、駆動源から動力を得て上下方向に移動するリンク部材と、前記リンク部材の上動により商品収容通路から退避するストッパとを備えた自動販売機において、
前記リンク部材に対して固定され、ワイヤー挿通可能な貫通孔を有する中継金具と、前記貫通孔に通され、一端側が前記中継金具と前記基板の間の内側ではなく、前記中継金具の外側に引き出されたワイヤーと、前記ワイヤーの一端側に形成され、前記ワイヤーを前記貫通孔から抜け落ち不能とする端子部と、前記ワイヤーを逆U字状に曲げて他端側を下方に垂下させるガイド手段とを有し、
前記駆動源だけでなく前記ワイヤーの他端側の引下げでも前記リンク部材が上動する商品搬出機構を備えたことを特徴とする手動操作式商品搬出機構を備えた自動販売機。
【請求項2】
請求項1に記載した手動操作式商品搬出機構を備えた自動販売機において、
中継金具はリンク部材と両面テープを介した重ね合わせにより接合されていることを特徴とする自動販売機。
【請求項3】
請求項1または2に記載した手動操作式商品搬出機構を備えた自動販売機において、
中継金具には左右両側にそれぞれ係止爪が連設されており、リンク部材を前記係止爪で左右両側から抱き込んでいることを特徴とする自動販売機。
【請求項4】
請求項1から3のいずれかに記載した手動操作式商品搬出機構を備えた自動販売機において、
中継金具のリンク部材に対する重ね合わせ部分には、重ね合わせ面側に前記リンク部材の穴に係合する位置合わせ用凸部が設けられていることを特徴とする自動販売機。
【請求項5】
請求項4に記載した手動操作式商品搬出機構を備えた自動販売機において、
中継金具の位置決め用凸部は絞り加工により形成されており、前記中継金具の重ね合わせ面と反対側の表面に視認用凹部が形成されていることを特徴とする自動販売機。
【請求項6】
請求項1から5のいずれかに記載した手動操作式商品搬出機構を備えた自動販売機において、
駆動源はモータになっており、前記モータから動力を得た持上げ片がリンク部材を持ち上げて上動させることを特徴とする自動販売機。
【請求項7】
請求項6に記載した手動操作式商品搬出機構を備えた自動販売機において、
折り曲げにより基板側に寄ったリンク部材に対して、中継金具の上側への延出部分が間隔をあけて相対しており、前記延出部分に貫通孔が形成されていることを特徴とする自動販売機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は飲料缶等の商品の自動販売機に係り、特に震災等で電力の供給が停止した場合でも手動操作により商品を取出すことができる手動操作式商品搬出機構を備えた自動販売機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
通常、自動販売機内では、本体キャビネット内で上下方向に延びた商品収容通路に商品が一列に積み重なった状態で収容されており、待機中は商品収容通路にストッパが進行して商品の下方への移動は規制されているが、コインや紙幣が投入されると、当該ストッパが後退して商品の下方への移動が許容され、移動した商品が商品取出し口に搬出されるように構成されている。
このストッパは、電力を利用した駆動源により駆動されて後退動作するので、震災等の災害時に停電すると動作せず、自動販売機から商品を取出すことができなくなる。
【0003】
而して、最近では、自動販売機を備蓄倉庫として活用して、震災等の災害時に対応させることが提案されており、この提案に応えて、電力を供給できないときでも、手動操作によって自動販売機から商品を取出すことができる手動操作式商品搬出機構を備えた自動販売機が開発され、これが特許文献1に記載されている。
この従来の手動操作式商品搬出機構は、ピンによって回動自在に支持された移動変換カム、この移動変換カムを所定方向へ付勢するコイルばね、移動変換カムに連結されたワイヤー等から構成され、このワイヤーに連結された操作ノブを持ってワイヤーを前方に引くことにより、上記ストッパを後退させて商品を搬出させるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000-276638号公報
【特許文献2】実用新案登録第3191015号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、この従来の手動操作式商品搬出機構は構成する部品が多くコストが高いばかりか、自動販売機に取付ける作業が煩雑で手間がかかるという問題がある。また、ワイヤーが露出した状態で商品収容通路を横断しているので震災等で自動販売機が若干傾いただけでも商品に引掛かって取出し難くなる恐れがある。
また、自動販売機自体が高価なので、一時期は手動操作を利用して商品を取出しても、その後は再び通常の自動販売機として利用したい。
【0006】
それに応えて、本出願人は、先に、特許文献2で、部品点数が少なく、取付け作業も容易で、故障し難く災害時でも手動操作により確実に商品を取出すことができ、更に、手動操作により商品を取出した後にも、電気駆動式商品搬出機構を再び利用できるよう工夫された手動操作式商品搬出機構を提案した。
本発明は特許文献2で開示された利点をそのまま生かしつつ、更に工夫を凝らすことで、既存の自動販売機側に曲げや穴開け等の加工をせずに容易に取付けることができ、結果的に加工による故障のリスクも無くすことに成功した、新規且つ有用な手動操作式商品搬出機構を提供することを、その目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、請求項1の発明は、基板の後面に設けられ、駆動源から動力を得て上下方向に移動するリンク部材と、前記リンク部材の上動により商品収容通路から退避するストッパとを備えた自動販売機において、前記リンク部材に対して固定され、ワイヤー挿通可能な貫通孔を有する中継金具と、前記貫通孔に通され、一端側が前記中継金具と前記基板の間の内側ではなく、前記中継金具の外側に引き出されたワイヤーと、前記ワイヤーの一端側に形成され、前記ワイヤーを前記貫通孔から抜け落ち不能とする端子部と、前記ワイヤーを逆U字状に曲げて他端側を下方に垂下させるガイド手段とを有し、前記駆動源だけでなく前記ワイヤーの他端側の引下げでも前記リンク部材が上動する商品搬出機構を備えたことを特徴とする手動操作式商品搬出機構を備えた自動販売機である。
【0008】
請求項2の発明は、請求項1に記載した手動操作式商品搬出機構を備えた自動販売機において、中継金具はリンク部材と両面テープを介した重ね合わせにより接合されていることを特徴とする自動販売機である。
【0009】
請求項3の発明は、請求項1または2に記載した手動操作式商品搬出機構を備えた自動販売機において、中継金具には左右両側にそれぞれ係止爪が連設されており、リンク部材を前記係止爪で左右両側から抱き込んでいることを特徴とする自動販売機である。
【0010】
請求項4の発明は、請求項1から3のいずれかに記載した手動操作式商品搬出機構を備えた自動販売機において、中継金具のリンク部材に対する重ね合わせ部分には、重ね合わせ面側に前記リンク部材の穴に係合する位置合わせ用凸部が設けられていることを特徴とする自動販売機である。
【0011】
請求項5の発明は、請求項4に記載した手動操作式商品搬出機構を備えた自動販売機において、中継金具の位置決め用凸部は絞り加工により形成されており、前記中継金具の重ね合わせ面と反対側の表面に視認用凹部が形成されていることを特徴とする自動販売機である。
【0012】
請求項6の発明は、請求項1から5のいずれかに記載した手動操作式商品搬出機構を備えた自動販売機において、駆動源はモータになっており、前記モータから動力を得た持上げ片がリンク部材を持ち上げて上動させることを特徴とする自動販売機である。
【0013】
請求項7の発明は、請求項6に記載した手動操作式商品搬出機構を備えた自動販売機において、折り曲げにより基板側に寄ったリンク部材に対して、中継金具の上側への延出部分が間隔をあけて相対しており、前記延出部分に貫通孔が形成されていることを特徴とする自動販売機である。
【発明の効果】
【0014】
本発明の手動操作式商品搬出機構を備えた自動販売機によれば、更に手動操作式商品搬出機構が改善されて、取付け作業もより容易で、故障し難く、手動操作により商品を取出した後にも、電気駆動式商品搬出機構を再びより確実に利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1(1)】本発明の実施の形態に係る手動操作式商品搬出機構を備えた自動販売機の商品搬出機構の概略的な後面図である。
【
図1(2)】本発明の実施の形態に係る手動操作式商品搬出機構を備えた自動販売機の商品搬出機構の概略的な側断面図である。
【
図2】
図1の手動操作式商品搬出機構の要部の斜視図である。
【
図4】
図2の中継金具の固定状態を示す側面図である。
【
図5】
図1の電気駆動式商品搬出機構のストッパ側の商品取出し状態を示す側断面図である。
【
図6】
図5におけるモータ駆動による商品取出し状態を示す斜視図である。
【
図7】
図5における手動による商品取出し状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の実施の形態に係る手動操作式商品搬出機構を備えた自動販売機1を図面にしたがって説明する。
この自動販売機1は、既存の自動販売機に後付けで部品を取り付けて手動操作式商品搬出機構を備えさせたものである。
ボックス状の本体キャビネットに商品収容通路が左右前後方向に複数設けられており、各商品収容通路には商品、この実施の形態では飲料缶Cが横倒され、上下方向に一列に積み重ねられて収容されている。この商品収容通路の上方が飲料缶Cの商品補充部になっており、商品収容通路の下端には商品搬出シュートが連設されている。
本体キャビネットの左側縁部には内扉と外扉とが回動自在に連結されており、商品収容通路から商品搬出シュートを介して搬出された飲料缶Cは内扉の下部に形成された開口を通って、外扉の商品取出口に搬出される。
【0017】
この自動販売機1には、上記搬出を実現するために、
図1に示すように、電気駆動式商品搬出機構が備えられている。
符号3は縦長矩形状の基板であり、商品収容通路の後面側の下部に配置されて、その前面は商品収容通路を構成する壁部の一部となっている。この基板3の下部には大きな開口部5が形成されている。
この基板3の後面の上部に駆動源としてのモータ7が取り付けられている。このモータ7にはモータ駆動により回動する持上げ片9が設けられている。
【0018】
基板3の開口部5には2本のリンク軸11、13が互いに平行に横方向に架設されており、リンク軸11、13はいずれも上下方向に移動可能になっている。
符号15はリンク部材を示し、このリンク部材15は全体として縦長の薄板状をしており、基板3の後面側に配置されている。このリンク部材15の下部の左右両側縁には、一対の屈曲片が上下に2組連設されている。これらの屈曲片はリンク部材15に対してほぼ垂直に開口部5側に向かって突出するように屈曲しており、それぞれの屈曲片には挿通孔が形成されている。上側の一対の挿通孔にはリンク軸11が通され、下側の挿通孔にはリンク軸13が通されて、リンク部材15の上下動にリンク軸11、13が連動するようになっている。
【0019】
リンク部材15の上部は二箇所折り曲げられてL形になっており、二箇所の折り曲げ部の間に水平な段差部15aが形成されている。
基板3の開口部5には上側の口縁が後側に向かって垂直に立ち上がった壁縁5aが形成されている。この壁縁5aに上記した段差部15aが載るような位置関係になっており、リンク部材15の上側は基板3側に寄った状態になっている。
リンク部材15は段差部15aより上側では二股に分かれ、後面側から見て右側は二箇所折り曲げられてL形になっているが、上記した段差部15aとは異なり先端面は基板3から間隔をあけて離れて平行になっている。二箇所の折り曲げ部の間に形成された水平な受け部15bが、上記したモータ7の持上げ片9が回動すると持ち上げられるようになっている。左側は基板3を切り欠いて後側に突出させたガイド片5b、5bに左右両側外方からガイドされている。
【0020】
また、リンク部材15の二股に分かれた左側縁に連設された掛止片と、開口部5の壁縁5aの一部を切り欠いて形成された掛止片との間に、スプリング17の両端ループが通されて架け渡されており、このスプリング17の作用によりリンク部材15は下方に弾性的に付勢されている。
上記した構成により、モータ停止時には、リンク軸11、13は、スプリング17の下方への弾性付勢力により下方の待機位置にあり、モータ7が駆動すると、スプリング17の付勢に抗して、持上げ片9がリンク部材15の受け部15bを持ち上げることでリンク部材15がリンク軸11、13を伴いながら上動する。そして、モータ7が停止すると、スプリング17の付勢により、弾性的に復元されて、リンク軸11、13は下方の待機位置に戻る。
【0021】
基板3の後面の左上の角隅部から左端側にかけて、モータ7に接続された電力供給用のコード7aを下方に引き出すためのガイド通路3aが仕切りを利用して形成されており、コード7aは、このガイド通路3aを通されて基板3の下端から外に引き出されている。
【0022】
符号19は下側支持リンクを示す。この下側支持リンク19は、リンク軸13の下側で横方向に架設された支持軸21に回動自在に支持されている。この下側支持リンク19は、リンク軸13に係合する係合凹部が上側に設けられており、待機状態では係合して退避方向への回動が規制される。下側支持リンク19の上端部では横方向にカム軸が貫通している。
下側ストッパ23は載置プレート25に固定されている。この下側ストッパ23は、リンク軸11、13の間で横方向に架設された支持軸27に回動自在に支持されている。下側ストッパ23には、下側支持リンク19側のカム軸が通るカム溝が設けられており、退避については下側支持リンク19の回動規制に依存している。また、下側ストッパ23は支持軸27に巻装されたスプリング29により商品収容通路に突出進行する方向に付勢されている。
【0023】
符号31は上側支持リンクを示す。この上側支持リンク31は、リンク軸11と支持軸27の間で横方向に架設された支持軸33に回動自在に支持されている。この上側支持リンク31は、リンク軸11に係合する係合凹部が設けられている。待機状態ではリンク軸11が上側支持リンク31の係合凹部の奥側で係合して、上側支持リンク31が基板3側に重ね合った退避状態になっている。
符号35は上側ストッパを示し、この上側ストッパ35は基板3に対して回動自在になっている。上側支持リンク31がリンク軸11の上動により商品収容通路に突出した場合には、上側ストッパ35が持上げ支持される。
【0024】
上記した各部の構成・動作により、待機時には、モータ7が停止してリンク軸11、13は下方の位置にあり、上側ストッパ35は後方に退避して、飲料缶Cには干渉せず、下側ストッパ23は前方の突出位置にあって、その上に載った飲料缶Cの自重に抗してその下方への移動を規制する。
そして、取出し時には、モータ7が駆動しリンク部材15がスプリング17の弾性付勢力に抗して上動して、リンク軸11、13を引き上げる。リンク軸11の上動により、上側ストッパ35は前方の商品収容通路に回動突出し、最下段の飲料缶Cとその上の飲料缶Cとの間に入り込んで、その上の飲料缶Cの下方への移動を規制する。一方、リンク軸13の上動により、下側ストッパ23はフリーの状態になり、その上に載った飲料缶Cの自重に負けて回動退避する。そして、その飲料缶Cは下方に落下移動して搬出される。
【0025】
その飲料缶Cの搬出が終了すると、モータ7が再び停止するので、リンク部材15は下動して下方の位置に戻り、再び待機状態になる。すなわち、下側ストッパ23は前方に再び突出しその位置で維持されると共に、上側ストッパ35が後退して、その上に載っていた飲料缶Cが下側ストッパ23まで落下してその上に載って次の取出しを待つ状態となる。
このようにして、飲料缶Cは下段側から1つずつ搬出される。
【0026】
次に、自動販売機1の手動操作式商品搬出機構について説明する。
手動操作式商品搬出機構は、上記した電気駆動式商品搬出機構の構成部材を一部借りて構成されているが、中継金具37の利用が特徴になっている。
図2に示すように、リンク部材15は開口部5を跨いで基板3の上部まで延びており、この開口部5に係る部分に中継金具37が後側から重ね合わされて固定されている。
図3に示すように、中継金具37は、薄板を打ち抜き、曲げ加工を施して成形されたものになっており、固定部37aは固定したときに表面となる板面側から見ると、全体としては縦長長方形で左角隅部が欠落した形状になっている。この長方形部分の幅方向中間部には、絞り加工が施されて、表面には視認用凹部39aが形成され、反対側の重ね合わせ面には位置合わせ用凸部39bが形成されている。
【0027】
固定部37aの重ね合わせ面には、位置合わせ用凸部39b及びその近傍を除いて、両面テープ41の一方の粘着面が貼着されており、この両面テープ41の他方の粘着面がリンク部材15に貼着されて接合されている。
固定部37aの左右両側にはそれぞれ係止爪43a、43bが連設されている。これらの係止爪43a、43bは重ね合わされたリンク部材15を左右両側から抱き込んで係止している。係止爪43aと係止爪43bは固定部37aのほぼ対角線上に位置している。
【0028】
固定部37aの上側には、縦長長方形の取付部37bが同じ平面上に連なっている。この取付部37bは、固定部37aよりも左右方向の寸法が短くなっており、固定部37aの左右両縁よりも内側に寄った位置から上方に連なっている。取付部37bは固定部37aよりも上下の寸法が長くなっており、その上端側に貫通孔45が形成されている。
【0029】
リンク部材15は、段差部15aの下側では、左右方向の寸法が同じ長方形状になって上下方向に延びている部分があり、その部分に中継金具37の固定部37aが後側から重ね合わされ、両面テープ41を介して接合される。更に、
図4に示すように、係止爪43a、43bは左右両側から曲がってリンク部材15を抱き込んだ状態になって係止されている。なお、係止爪43a、43bで係止する箇所は、基板3の開口部5に当たるので、工具を差し込んで曲げ易い。
リンク部材15には穴15cが形成されており、この穴15cを目標として視認用凹部39aを合わせながら、中継金具37を重ね合わせると、位置合わせ用凸部39bが穴15cに入り込んで係合する。従って、リンク部材15に対して所定の位置に中継金具37を容易に固定することができる。
【0030】
両面テープ41の貼着により中継金具37はリンク部材15に対して高い耐せん断力を有するので、中継金具37が上方に引き上げられると、リンク部材15も追従して上動する。
また、中継金具37の引き上げには後述するようにワイヤーを使用するため、左右に振れる方向に力が掛かる可能性があるが、係止爪43a、43bによる抱き込み係止により、左右への振れが防止され、両面テープ41の振れによる剥がれが阻止される。
【0031】
中継金具37の取付部37bは、リンク部材15の段差部15aより上側に延出した部分になっており、基板3側に寄ったリンク部材15側と間隔をあけて相対している。左右にスプリング17と受け部15bが配置されているが、貫通孔45の貫通方向は開放されており、前記間隔分だけ基板3との間に空間が確保されている。なお、受け部15b側とは当接しているが、この当接は取付部37bの姿勢維持に役立っている。
この貫通孔45に細長いワイヤー47が挿通されており、その一端部が貫通孔45を通り抜けて後側に引き出されている。この一端部にはカシメ玉49が端子部として取り付けられている。ワイヤー47は貫通孔45に余裕を持って通されているが、カシメ玉49は貫通孔45を通り抜けできない。
【0032】
ワイヤー47の他端側は取付部37bとリンク部材15の間から上方に向かって引き出されており、そこからは長い密着巻きスプリング51に摺動可能に挿通されている。モータ7は取付部37bの上側ではなく、右側に位置しており、取付部37bの先端をガイド通路3a近くまでもってこられるので、ワイヤー47の露出部分47aの長さが短くなっている。
密着巻きスプリング51は、基板3のガイド通路3aにコード7aと共に通されて下方に向けてガイドされている。ガイド通路3a内では、密着巻きスプリング51が動ける余裕がある。
密着巻きスプリング51はガイド通路3aから下方に抜け出ている。
【0033】
ワイヤー47は、上記したように這い廻された密着巻きスプリング51をガイド手段とし、その中を逆U字状に曲げられながら通り、基板3の下方で密着巻きスプリング51から引き出され、垂下されている。
ワイヤー47の他端部にもカシメ玉53が端子部として取り付けられている。カシメ玉53と密着巻きスプリング51との間では、ワイヤー47が摘み部55の孔に摺動可能に通されており、カシメ玉53は摘み部55の孔を通り抜けできない。
密着巻きスプリング51から引き出されて垂下したワイヤー47は、商品収容通路の下端より、下方に出ている。
【0034】
次に、モータ駆動時の手動操作式商品搬出機構の状態を説明する。
図1に示す待機時には、リンク部材15が下方の待機位置にあり、ワイヤー47の露出部分47aは緊張せず弛んではいるが、露出部分47aの長さが短いので湾曲度合いは小さくなっている。
図5に示す取出し時には、リンク部材15が上動する。
図6に示すモータ7の駆動によりリンク部材15が上動する場合には、中継金具37の貫通孔45に対してワイヤー47が遊嵌された状態となっているので、ワイヤー47はその上動には殆ど引き摺られず、貫通孔45をワイヤー47が飛び出す方向に摺動することになる。しかも、露出部分47aは短くなっているので、上動限界にきても、中継金具37と密着巻きスプリング51との間で膨らまず、貫通孔45から小さく飛び出すだけで済む。大きく膨らんだり飛び出したりすると、基板3上のスプリング17に絡む等の干渉を起こす恐れがあるが、上記した工夫によりその恐れが解消されている。更に、貫通孔45と基板3との間には空間があるので、ワイヤー47が基板3上を擦ることもない。従って、
図1に示す待機姿勢にスムーズに戻り、その後のモータ駆動には悪影響を及ぼさない。
【0035】
次に、手動操作式商品搬出機構の動作を説明する。
自動販売機1の外扉を開けると、本体キャビネット内で摘み部55が商品収容通路の下方から露出しているので、それを指で摘まんで下方に引き下げると、ワイヤー47は、密着巻きスプリング51の間を摺動して下げられる。
それにより、
図7に示すように、ワイヤー47が緊張して中継金具37を介してリンク部材15が上動する。すなわち、
図5に示す取出し時の状態になり、電気駆動式商品搬出機構と同様にして飲料缶Cが取り出される。
摘み部55を手から離せば、リンク部材15はスプリング17の弾性付勢力により下降して待機時の下方位置に戻る。したがって、手動操作により商品を取出した後にも、再び電気駆動による商品取出しが可能となっている。
なお、待機姿勢に戻る際には、ワイヤー47に勢いが付くので、貫通孔45より飛び出そうとするが、露出部分47aが短いので、小さく飛び出すだけで済む。
【0036】
上記したように、手動操作式商品搬出機構は、手動操作により商品を取出した後にも、再びモータ駆動による商品取出しが可能となっている。
また、中継金具37を利用して、そこに貫通孔45を設けているので、自動販売機1側に曲げや穴開け等の加工をせず、この加工に伴う故障のリスクを回避できる。
更に、モータ7の駆動タイプでは、モータ7の配置関係から、ワイヤー47の露出部分47aを短くして、膨らみや飛び出しを抑えることができ、中継金具37の利用を更に効果的なものにできる。
【0037】
以上、本発明の実施の形態について詳述してきたが、具体的構成は、この実施の形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における設計の変更などがあっても発明に含まれる。
例えば、駆動源はモータに限定されず、ソレノイドでも上記したワイヤーと中継金具とリンク部材との連絡関係が確保されるのであればよい。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明の自動販売機によれば、電気駆動式商品搬出機構を備えた既存の自動販売機に後付けで手動操作式商品搬出機構を備えさせることができる。
【符号の説明】
【0039】
1…自動販売機(既存)
3…基板 3a…ガイド通路 5…開口部 5a…壁縁
5b…ガイド片 7…モータ 7a…コード 9…持上げ片
11…リンク軸 13…リンク軸 15…リンク部材 15a…段差部
15b…受け部 15c…穴 17…スプリング 19…下側支持リンク
21…支持軸 23…下側ストッパ 25…載置プレート 27…支持軸
29…スプリング 31…上側支持リンク 33…支持軸 35…上側ストッパ
37…中継金具 37a…固定部 37b…取付部 39a…視認用凹部
39b…位置合わせ用凸部 41…両面テープ
43a、43b…係止爪 45…貫通孔 47…ワイヤー
47a…露出部分 49…カシメ玉 51…密着巻きスプリング
53…カシメ玉 55…摘み部
C…飲料缶