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特開2022-53696光学装置、反射光の検出方法及び反射率の算出方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022053696
(43)【公開日】2022-04-06
(54)【発明の名称】光学装置、反射光の検出方法及び反射率の算出方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/55 20140101AFI20220330BHJP
【FI】
G01N21/55
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020160474
(22)【出願日】2020-09-25
(71)【出願人】
【識別番号】000219738
【氏名又は名称】東海光学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099047
【弁理士】
【氏名又は名称】柴田 淳一
(72)【発明者】
【氏名】東海林 秀典
(72)【発明者】
【氏名】熊谷 直也
【テーマコード(参考)】
2G059
【Fターム(参考)】
2G059AA02
2G059BB08
2G059EE02
2G059GG01
2G059GG02
2G059JJ13
2G059KK01
2G059KK02
2G059MM01
2G059MM04
2G059NN10
(57)【要約】
【課題】被測定物の表面で反射した反射光のみを検出手段に容易に導くことができる光学装置、反射光の検出方法及び反射率の算出方法を提供すること。
【解決手段】透光性を有する被測定物Wに光を照射して被測定物Wの表面の反射光の情報を取得する反射率測定装置1は、被測定物Wに光を照射するLED装置11と、連続的な位置の変位によって被測定物Wで反射した反射光を任意の方向に反射させるミラー13と、受光した光を検出するPDユニット19と、を備えている。この反射率測定装置1においてミラー13を回転変位さることで反射光の光路の角度を変化させ、被測定物Wの表面で反射した反射光をPDユニット19に導いて検出させるようにした。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
透光性を有する被測定物に光を照射して前記被測定物の表面の反射光の情報を取得する光学装置において、
前記被測定物に光を照射する光源と、
連続的な位置の変位によって前記被測定物で反射した反射光を任意の方向に反射させるミラーと、
受光した光を検出する検出手段と、を備え、
前記ミラーを変位させることで反射光の光路の角度を変化させ、前記被測定物の表面で反射した反射光を前記検出手段に導いて検出させるようにしたことを特徴とする光学装置。
【請求項2】
前記ミラーの変位動作は回転であることを特徴とする請求項1に記載の光学装置。
【請求項3】
前記反射光情報に基づいて前記被測定物の表面の反射率を測定する演算手段を備えていることを特徴とする請求項1又は2に記載の光学装置。
【請求項4】
前記検出手段は光を波長毎に分光し、波長毎に光を検出することを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の光学装置。
【請求項5】
透光性を有する被測定物に光を照射して前記被測定物の表面の反射光を検出する反射光の検出方法であって、
前記被測定物で反射した反射光を連続的な位置変位が可能なミラーに導き、前記ミラーを変位させることで反射光の光路の角度を変化させ、前記被測定物の表面で反射した反射光を前記検出手段に導いて検出させるようにしたことを特徴とする反射光の検出方法。
【請求項6】
前記ミラーの変位動作は回転であることを特徴とする請求項5に記載の反射光の検出方法。
【請求項7】
請求項6の反射光の測定方法において、前記検出手段に検出された反射光に基づいて前記被測定物の表面の反射率を算出するようにした反射率の算出方法。
【請求項8】
前記ミラーの回転に伴って変化する前記検出手段によって検出される反射光特性は、前記被測定物の表面の反射光の第1のピークと、前記被測定物の裏面の反射光である第2のピークを有し、前記ミラーの回転方向によって前記検出手段が検出したピークが前記第1のピーク又は前記第2のピークのいずれであるかを判断するようにしたことを特徴とする請求項7に記載の反射率の算出方法。
【請求項9】
反射率のわかっている参照物について同様に前記前記検出手段で反射光を検出して取得し、前記被測定物と前記参照物の反射光に基づいて前記被測定物の表面の反射率を算出するようにしたことを特徴とする請求項7又は8に記載の反射率の算出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透光性を有する被測定物に光を照射し、前記被測定物の表面の反射光の情報を取得するための光学装置、反射光の検出方法及び反射率の算出方法等に関するものである。
【背景技術】
【0002】
物体表面の反射率を測定する場合、光源部から放射された測定光のうち被測定物で反射された反射光を検出部で検出することで反射率を測定する。最初に、あらかじめ反射率が理論的に判明している参照物表面に測定光を照射し、その反射光を検出して光量を記録する。次に、被測定物表面に測定光を照射して、その反射光を検出して光量を記録する。そして、被測定物の反射光量を参照物の反射光量で除算することで反射率を求めることが一般的に行われている。
しかし、被測定物が透光性を有する場合、図6に示すように被測定物の表面のみならず裏面の反射光をも検出してしまうため、被測定物表面のみの反射率を測定しにくい場合がある。特に被測定物の表裏間の厚みがごく薄い場合には反射光を受光する検出装置の受光部が表裏面の2種類の光を区別できずに受光してしまうという課題が生じる。このような課題を解決するために、例えば特許文献1の技術がある。特許文献1に開示されている反射率測定装置では基端開口部4aから先端開口部4bに至るにしたがって次第に内径および外径が小さくなるように形成された筒状体(絞り手段4)を用いるようにしている。このような先細りの通路を設けることで特許文献1の第1図に示すように、裏面の界面で反射した反射光が筒状体の外方に向かうため筒状体内への侵入を遮断することができるというものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平3-172728号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
もっとも、この特許文献1のように被測定物の厚みがごく薄い場合でなければ、表面の反射光だけを検出装置の受光部に導くことで表面の反射率のみを測定することができる。しかし、被測定物の厚みは一定ではないので、測定のたびに厚みが異なると反射光を検出装置に導く際の高さや位置の調整が面倒である。また、間違って裏面側の光路を検出装置に導いてしまう可能性もある。そのようなことがないようにするには常に同じ厚さの被測定物を用意しなければならずそれもまた面倒である。
本発明は、これらのような問題点に鑑み、被測定物の表面で反射した反射光のみを検出手段に容易に導くことができる光学装置、反射光の検出方法及び反射率の算出方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために第1の手段では、透光性を有する被測定物に光を照射して前記被測定物の表面の反射光の情報を取得する光学装置において、前記被測定物に光を照射する光源と、連続的な位置の変位によって前記被測定物で反射した反射光を任意の方向に反射させるミラーと、受光した光を検出する検出手段と、を備え、前記ミラーを変位させることで反射光の光路の角度を変化させ、前記被測定物の表面で反射した反射光を前記検出手段に導いて検出させるようにした。
これによって、ミラーの向きを調整することで選択的に被測定物の表面で反射した反射光だけを検出手段で検出させることができる。
「被測定物」の形状は反射率等の計算のしやすさや、光路が検出手段に向かうように表裏面が平行な板状体であることがよい。
「光源」は、例えばレーザー光を発生させるレーザー装置、LED(light emitting diode)、ハロゲンランプ等を使用することがよい。LEDやハロゲンランプ等のように光が拡散する光源を使用する場合には、光源から平行光が出射されるように光学系を配置することがよい。
「ミラー」は可動で例えば手動で変位させるような構成でもよく、例えばモーターのような駆動部を有するものでもよい。MEMSミラーを使用してもよい。ミラーに反射した光を検出手段に導く必要があるため、ミラーは変位しても光源からの光を反射した被測定物の反射光を検出手段に反射させられる位置にある必要がある。
「検出手段」は、PD(photo diode)、ホトマル、分光器等を用いることができる。特に、検出手段の受光部に入射角依存性がある場合には、積分球を用いて、可動式ミラーの反射光を積分球に入射させ、その積分球の出射光を検出部に入射させるようにしてもよい。
「光学装置」は、例えば反射率測定装置である。反射光の情報として例えば被測定物の反射光の光量や光の強度を取得したり、検出するだけの装置でもよい。
これらの用語の定義は以下の手段でも同様である。
【0006】
また、第2の手段として、前記ミラーの変位動作は回転であるようにした。
ミラーを回転させて変位させることは、反射光の光路の角度の変化を客観的に取得しやすく、また、角度制御もしやすいためよい。但し、回転の場合には光源を始原とする光路が反射によって検出手段に向かわない可能性がある。そのため、ミラーの回転軸は光路と直交する関係にあることがよい。ミラーの回転位置に対する角度の関係は回転軸の回転位置や回転量で決定することができ、目盛りによる目視でもよく、例えばポテンショメータやロータリーエンコーダのような測定装置を使用してもよい。ミラーは回転において連続的に光路の角度を変化させて、被測定物の表面の反射光と裏面の反射光を検出手段に導くことが可能である。
また、第3の手段として、前記反射光情報に基づいて前記被測定物の表面の反射率を測定する演算手段を備えているようにした。
これによって光学装置によって反射率を得ることができ、人が被測定物の表面の反射率を計算しなくともよくなる。つまり、検出手段で検出した反射光情報に基づいて人が被測定物の表面の反射率を計算してもよい。演算手段は、論理演算や四則演算などの演算をおこなう演算装置であり、例えばCPUに組み込まれて制御装置を構成してもよく、あるいはそのような制御装置を搭載したコンピュータ装置であってもよい。
また、第4の手段として、前記検出手段は光を波長毎に分光し、波長毎に光を検出するようにした。
検出手段が分光した波長を検出することでより精密な波長毎の反射率を測定することが可能となる。例えば分光器によって波長毎に検出することができる。
【0007】
また、第5の手段として、透光性を有する被測定物に光を照射して前記被測定物の表面の反射光を検出する反射光の検出方法であって、前記被測定物で反射した反射光を連続的な位置変位が可能なミラーに導き、前記ミラーを変位させることで反射光の光路の角度を変化させ、前記被測定物の表面で反射した反射光を前記検出手段に導いて検出させるようにした。
これによって、ミラーの向きを調整して選択的に被測定物の表面で反射した反射光だけを検出手段に導くことができ、被測定物の裏面で反射した反射光を検出手段が受光しないようにすることができる。
また、第6の手段として、前記ミラーの変位動作は回転であるようにした。
第2の手段と同様の理由である。
【0008】
また、第7の手段として、反射光の測定方法において、前記検出手段に検出された反射光に基づいて前記被測定物の表面の反射率を算出するようにした。
第3の手段と同様の理由である。
また、第8の手段として、前記ミラーの回転に伴って変化する前記検出手段によって検出される反射光特性は、前記被測定物の表面の反射光の第1のピークと、前記被測定物の裏面の反射光である第2のピークを有し、前記ミラーの回転方向によって前記検出手段が検出したピークが前記第1のピーク又は前記第2のピークのいずれであるかを判断するようにした。
ミラーの回転に伴って検出手段は表裏面に反射した反射光の第1のピークと第2のピークの2つのピークを有する反射光特性を検出する。このとき第2のピークの有無にかかわらず第1のピークと判断することができればその反射光の情報を使用して反射率を算出することができる。第8の手段ではそれが可能である。
例えば実施の形態に示すように、表裏面が平行である被測定物に斜め方向から光を照射した場合に、表裏面に反射した反射光は反射光の進行方向に配置されたミラーに対して図4に示すように、表面側の反射光の反射位置は裏面側の反射光の反射位置に対して上方位置(被測定物から遠い位置)となる。そのため、図4において光源側に傾斜したミラーを時計回り方向に回転させていって先に得たピークは表面の反射光となる。
ミラーの回転方向がいずれであっても、回転方向に応じて2つの反射光のピークのどちらが表面側の反射光であるかわかることとなる。そのため、ミラーの回転方向に応じて表面側の反射光のピークを判断することができる。
また、第9の手段として、反射率のわかっている参照物について同様に前記前記検出手段で反射光を検出して取得し、前記被測定物と前記参照物の反射光に基づいて前記被測定物の表面の反射率を算出するようにした。これによって、反射率を正確に算出することができる。参照物は測定のリファレンスとするための反射率のわかっている透明体であり、例えば石英やBK7等である。
上述した第1~第9の手段の各発明は、任意に組み合わせることができる。特に、第1の手段の構成を備えて、第2~第9の手段の各発明の少なくともいずれか1つの構成との組み合わせを備えると良い。第1~第9の手段の各発明の任意の構成要素を抽出し、他の構成要素と組み合わせてもよい。
【発明の効果】
【0009】
上記発明では、ミラーの向きを調整することで選択的に被測定物の表面で反射した反射光だけを検出手段で検出させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施の形態の反射率測定装置の斜視図。
図2】同じ実施の形態の反射率測定装置の概要を説明する模式図。
図3】同じ実施の形態の反射率測定装置の電気的構成を説明するブロック図。
図4】同じ実施の形態の反射率測定装置において、ミラーを回動させた際のミラーの位置(角度)に応じた分光器の取得する反射光の受光特性を説明する説明図。
図5】(a)は回動軸が回動初期位置にある状態を説明する説明図、(b)は回動軸が最大回動位置にある状態を説明する説明図。
図6】従来の透光性を有する被測定物において表面のみならず被測定物の裏面の反射光をも検出部が検出してしまうことを説明する説明図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の具体的な実施の形態と実施例について図面に基づいて説明する。
図1に基づいてまず反射率測定装置1の外観概要を説明する。反射率測定装置1は直方体形状の筐体2を備えている。筐体2の内面は黒色に着色されている。筐体2の前面には被測定物Wを出し入れするための扉3がヒンジ4を回動中心として外方に開くように取り付けられている。筐体2の前面であって扉3の側方にはダイヤル6が設けられている。ダイヤル6周囲にはダイヤル6の初期位置と最大回動位置を示す第1のマークm1、第2のマークm2が設けられている。ダイヤル6には第1のマークm1、第2のマークm2と照合して回動量を確認するためのパイロットマーク7が形成されている。
筐体2の上面には液晶パネルからなる表示部8が配設されている。表示部8に隣接する位置には複数のボタン形状のスイッチ9、10A、10Bが配設されている。メインスイッチ9Aは反射率測定装置1の起動のためのスイッチであり、この入力によって内部の電気的構成部材に電源を投入させる。第1のスイッチ10Aは一回目の反射光検出ルーチンにおいて被測定物Wの光量を取得するルーチンを開始するための入力部である。第2のスイッチ10Bは二回目の反射光検出ルーチンにおいて被測定物の光量を取得するルーチンを開始し、取得した一回目の測定の被測定物Wの光量と二回目の測定の被測定物Wの光量に基づいて反射率を算出するための入力部である。
【0012】
次に図2に基づいて反射率測定装置1の筐体2内部の光学系の構成の概要を説明する。尚、図示では光学系を構成する部材についての概要のみを説明し支持構造等の発明とは直接関係ない部材についての説明は省略する。
筐体2内にの上部位置には光源としてのLED装置11が配設されている。LED装置11は被測定物Wをセットする斜め下方に配置されたラック12に対してLED光が斜めに入射するように支持されている。LED光は、ラック12上に載置される表裏面(反射面)が平行な被測定物Wを想定した際に入射角度が45度以上となるように入射される。反射面で反射した反射光が向かう方向にはLED光の光束に対して直交する反射面を有するミラー13が配設されている。ミラー13はLED光の光束に直交しラック12上面に対して水平となる回動軸14に支持されている。回動軸14はダイヤル6の中心軸に一致し、ダイヤル6の回動動作に同期して回動する。回動軸14の回動に同期してミラー13は回転する。回動軸14には回動量を検出するロータリーエンコーダ15が取着されている。
図5(a)(b)に示すように、回動軸14の側面には当接ピン16が突設されている。筐体2側の回動軸14に隣接する位置であって当接ピン16に干渉する位置には第1のドグ17と第2のドグ18が配設されている。第1のドグ17と第2のドグ18は回動軸14の周方向において間隔を開けて配設されている。当接ピン16は回動軸14の回動に伴ってこの第1のドグ17と第2のドグ18間を往復動する。つまり、回動軸14は一定の回動範囲に規制されることとなる。当接ピン16が図5(a)のように第1のドグ17に当接した状態が回動初期位置となり、図5(b)のように第2のドグ18に当接した状態が回動の最大回動位置となる。当接ピン16が第1のドグ17に当接した状態でパイロットマーク7は第1のマークm1と照合され、第2のドグ18に当接した状態でパイロットマーク7は第2のマークm2と照合される。
ミラー13に入射する反射光の入射角に対応する反射角方向であってLED装置11の斜め上方向には検出手段としてのフォトダイオードと電子部品がプリントされたプリント基板で構成されたPDユニット19が配設されている。PDユニット19の受光部はミラー13の反射面を指向する。
【0013】
次に反射率測定装置1の電気的構成について説明する。
筐体2内部にはコントローラ21が配設されている。コントローラ21は公知のCPUやROM及びRAM等のメモリ、タイマ等から構成される演算装置であり制御装置である。ROM内には反射率算出プログラムや制御プログラム等がインストールされている。コントローラ21はPDユニット19の検出データに基づいて反射率を算出する。図2及び図3に示すように、コントローラ21にはLED装置11、PDユニット19、表示部8、スイッチ9、10A、10B、ロータリーエンコーダ15等が接続されている。
コントローラ21はLED装置11から照射されたLED光の光量を検出したPDユニット19の検出データに基づいて反射率を算出し、表示部8に表示させる。また、コントローラ21は前もって設定されたロータリーエンコーダ15の値に基づいてダイヤル6の回動初期位置と最大回動位置を認識する。また、コントローラ21はPDユニット19で得られる2つの受光量のピークについて、ダイヤル6の回動に伴って出現する最初のピークが被測定物Wの表面の反射によるものであると判断する。
【0014】
次に、コントローラ21によって実行される反射率測定装置1の制御の内容と反射率の算出手法の一例について作業者が行う測定作業とリンクして順を追って説明する。
(イ)作業者はまず、メインスイッチ9Aを入力する。これによって電源が投入される。まず、PDユニット19とコントローラ21が起動状態となり、その後LED装置11が入力されLED光の照射が開始される。LED光の照射開始前にPDユニット19の暗電流の影響を考慮して、コントローラ21はPDユニット19に消灯状態の光量Iを検出させ、これを反射率の計算のために記憶する。
(ロ)作業者は扉3を開けて一回目の測定を行う被測定物Wとしての参照物をラック12上に載置する。測定対象とする被測定物Wは薄すぎずPDユニット19で表裏の反射光を分別できる厚さを有しているものとする。参照物は反射率がわかっていて計算のリファレンスとなる透明体である。例えば石英やBK7等を使用する。そして、扉3を閉め第1のスイッチ10Aを入力する。これによってコントローラ21はロータリーエンコーダ15とPDユニット19からの出力を待機し、経時的に記憶する。
(ハ)次いで作業者はダイヤル6を回し、回動軸14とともにミラー13を回転変位させるようにする。コントローラ21はロータリーエンコーダ15の検出値に基づいて回動軸14の変位を判断する。また、コントローラ21はPDユニット19で測定した光量を経時的に記憶する。また、PDユニット19で測定した光量を経時的に表示部8に表示させる。PDユニット19で検出される光量とミラー13の回転による位置状態は図4に示すような関係となる。
作業者が回動初期位置にあるダイヤル6を回した際において(1)の回動のごく初期状態ではミラー13の反射面はまだPDユニット19方向に指向していないため、受光特性に示すようにPDユニット19の受光量は小さい。ダイヤル6を回していくと(2)の位置でミラー13の反射面は被測定物Wの表面の反射光がちょうどPDユニット19に受光される位置となるため受光量はピークを示す。そのまま、ダイヤル6を回していくとミラー13の反射面の角度が徐々に変位して被測定物Wの表面の反射光の位置はずれ(3)のように受光量は減少していく。更にダイヤル6を回していくと(4)の位置でミラー13の反射面は被測定物Wの裏面の反射光がちょうどPDユニット19に受光される位置となるため、再び受光量はピークを迎える。更にダイヤル6を回していくと被測定物Wの裏面の反射光の位置はずれ受光量は減少する。そして、最終的にダイヤル6は最大回動位置に至る。コントローラ21はダイヤル6が最大回動位置に到達した際のロータリーエンコーダ15の数値に基づいて一回目の測定が終了したと判断する。コントローラ21はPDユニット19の検出によって得られた2つのピークのうち、初めのピークを被測定物Wの表面の反射光のピークと判断する。
【0015】
(ニ)扉を開け、参照物を取り出し次の被測定物Wを入れる。この被測定物Wが反射率を算出したい検体となる。上記(ロ)に準じて、扉3を閉め第2のスイッチ10Bを入力する。作業者はダイヤル6を操作し、被測定物W(検体)に反射する反射光の光量をPDユニット19で測定する。(ハ)と同様に制御されコントローラ21は得られた2つのピークのうち、初めのピークを被測定物Wの表面の反射光のピークと判断する。コントローラ21はダイヤル6が最大回動位置に到達した際のロータリーエンコーダ15の数値に基づいて二回目の測定が終了したと判断し、続いて反射率の計算をする。
(ホ)反射率の計算においては、コントローラ21は一回目に得られた最初のピークのピーク光量Iと二回目に得られた最初のピークのピーク光量Iと上記の消灯状態の光量Iに基づいて下記数1の式のように計算をする。コントローラ21は算出した数1の反射率Rの数値を表示部8に表示させる。その後メインスイッチ8を再度入力し、OFF状態とすることで処理は終了する。
【0016】
【数1】
【0017】
このような構成の反射率測定装置1においては、次のような効果が奏される。
(1)ミラー13の回転によって被測定物Wの表面の反射光と裏面の反射光を別々に、かつダイヤル6の回動によって常に決まった順で検出することができるため、表面の反射か裏面の反射かを取り違えることがない。
(2)被測定物の厚みが一定でなくとも、ミラー13を回転させれば常に表面の反射率と裏面の反射率を取得することができるため、被測定物Wに求められる厚さの条件が緩和される。また、被測定物Wの設置条件に厳密さがそれほど要求されないため、作業の効率が向上する。
【0018】
上記実施の形態は本発明の原理およびその概念を例示するための具体的な実施の形態として記載したにすぎない。つまり、本発明は上記の実施の形態に限定されるものではない。本発明は、例えば次のように変更した態様で具体化することも可能である。
・上記実施の形態では参照物と検体のそれぞれの光量を算出し、それらの数値に基づいて同じ反射率測定装置1内で反射率を計算するようにしていたが、例えば、参照物と検体のそれぞれ得られた光量を記憶させておき、手計算で反射率を算出するような算出装置で実現してもよい。また、参照物と検体のそれぞれ得られた光量を別のコンピュータ装置に送って反射率を計算するようにしてもよい。
・手計算で反射率を算出する場合に、ダイヤル6を回動させる際にダイヤル6の回転方向に基づいて1つめのピークが表面の反射光であるとわかるわけであるから、2つめのピークを表示部8に表示させなくともその値を作業者が記憶しておいて計算してもよい。手計算で反射率を算出する場合では可能である。
・ダイヤル6の回動は上記では時計回り方向に回動初期位置→最大回動位置という順であった。逆にダイヤル6の回動方向を反時計回り方向とすることもできる。その場合にはミラー13は上記とは逆に回転するため上記実施の形態の構成では2つめのピークが表面の反射光となる。
・上記実施の形態では最終的に表示部8に反射率Rの数値のみを表示させるようにしたが、反射率Rの表示の際に計算のベースとなった最初のピークのピーク光量Iと二回目に得られた最初のピークのピーク光量Iも表示させるようにしてもよい。
・上記実施の形態では検出手段としてPDユニット19を示したが、例えば分光器を使用して波長毎に反射率を算出するようにしてもよい。その場合には主要波長毎の反射率の数値を数字で示してもよく、例えば波長と反射率の特性グラフをモニター上に示してもよい。
・上記実施の形態の反射率測定装置1の光学系は単純化して示しているが、例えば反射光を効率よく分光させるために積分球を配置したり、ミラー13の前後にレンズを配置する等してもよい。
・上記ではダイヤル6によって回動させるようにしたが、特に回動軸14を外部から作業者が操作できる部材であれば形状は問わない。例えばレバー形状でもよい。また、手動でダイヤル6を操作して回動させたが、要はミラー13を回転させることができればよく、回動軸14を駆動手段(例えば、モータ装置)で回動させるようにしてもよい。駆動手段を人が回動させてもよく、コントローラ21で回動制御するようにしてもよい。
本願発明は上述した実施の形態に記載の構成に限定されない。上述した各実施の形態や変形例の構成要素は任意に選択して組み合わせて構成するとよい。また各実施の形態や変形例の任意の構成要素と、発明を解決するための手段に記載の任意の構成要素または発明を解決するための手段に記載の任意の構成要素を具体化した構成要素とは任意に組み合わせて構成するとよい。これらについても本願の補正または分割出願等において権利取得する意思を有する。
また、意匠出願への変更出願により、全体意匠または部分意匠について権利取得する意思を有する。図面は本装置の全体を実線で描画しているが、全体意匠のみならず当該装置の一部の部分に対して請求する部分意匠も包含した図面である。例えば当該装置の一部の部材を部分意匠とすることはもちろんのこと、部材と関係なく当該装置の一部の部分を部分意匠として包含した図面である。当該装置の一部の部分としては、装置の一部の部材としてもよいし、その部材の部分としてもよい。
【符号の説明】
【0019】
1…反射率測定装置、11…光源としてのLED装置、13…ミラー、19…検出手段としてのPDユニット、W…被測定物。
図1
図2
図3
図4
図5
図6