(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022053701
(43)【公開日】2022-04-06
(54)【発明の名称】イオン注入装置およびパーティクル検出方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/265 20060101AFI20220330BHJP
H01J 37/317 20060101ALI20220330BHJP
【FI】
H01L21/265 T
H01J37/317 Z
H01L21/265 603B
H01L21/265 603C
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020160485
(22)【出願日】2020-09-25
(71)【出願人】
【識別番号】000183196
【氏名又は名称】住友重機械イオンテクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(74)【代理人】
【識別番号】100116274
【弁理士】
【氏名又は名称】富所 輝観夫
(72)【発明者】
【氏名】二宮 亜紀
(72)【発明者】
【氏名】八木田 貴典
(72)【発明者】
【氏名】森田 剛夫
(72)【発明者】
【氏名】広瀬 サユミ
【テーマコード(参考)】
5C034
【Fターム(参考)】
5C034CD10
(57)【要約】
【課題】イオンビームとともに輸送されるパーティクルの検出精度を高める。
【解決手段】イオン注入装置10は、イオンビームを輸送するビームライン装置14と、イオンビームをウェハWに照射する注入処理がなされる注入処理室16と、ビームライン装置14内および注入処理室16内の少なくとも一方においてイオンビームの輸送方向と交差する方向に照明光Lを照射する照明装置64と、照明光Lが通過する空間を撮像して撮像画像を生成する撮像装置66と、撮像画像に基づいて照明光Lを散乱させるパーティクルを検出する制御装置60と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
イオンビームを輸送するビームライン装置と、
前記イオンビームをウェハに照射する注入処理がなされる注入処理室と、
前記ビームライン装置内および前記注入処理室内の少なくとも一方において前記イオンビームの輸送方向と交差する方向に照明光を照射する照明装置と、
前記照明光が通過する空間を撮像した撮像画像を生成する撮像装置と、
前記撮像画像に基づいて前記照明光を散乱させるパーティクルを検出する制御装置と、を備えることを特徴とするイオン注入装置。
【請求項2】
前記制御装置は、前記ビームライン装置の動作状態に応じて、前記パーティクルの検出条件を変更することを特徴とする請求項1に記載のイオン注入装置。
【請求項3】
前記制御装置は、前記イオンビームのビーム電流量に応じて、前記パーティクルの検出条件を変更することを特徴とする請求項1または2に記載のイオン注入装置。
【請求項4】
前記制御装置は、前記ビームライン装置内における前記イオンビームの輸送状態に応じて、前記パーティクルの検出条件を変更することを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載のイオン注入装置。
【請求項5】
前記制御装置は、前記ビームライン装置内および前記注入処理室内の少なくとも一方の内部圧力の変化に応じて、前記パーティクルの検出条件を変更することを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載のイオン注入装置。
【請求項6】
前記ビームライン装置は、前記イオンビームに電場を印加するため複数の電極を備え、
前記照明光は、前記複数の電極の間を通過するように照射され、
前記撮像装置は、前記複数の電極の間の空間を撮像することを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載のイオン注入装置。
【請求項7】
前記制御装置は、前記複数の電極に印加される電圧値に応じて、前記パーティクルの検出条件を変更することを特徴とする請求項6に記載のイオン注入装置。
【請求項8】
前記照明光は、前記ウェハの表面近傍に向けて照射され、
前記撮像装置は、前記撮像装置の画角に前記ウェハの表面が含まれないように配置されることを特徴とする請求項1から7のいずれか一項に記載のイオン注入装置。
【請求項9】
前記注入処理室は、前記イオンビームの輸送方向に対する前記ウェハのチルト角を調整するためのチルト角調整機構を備え、
前記照明装置は、前記ウェハのチルト角に応じて前記照明光の通過位置が調整可能となるよう構成され、
前記撮像装置は、前記ウェハのチルト角に応じて前記撮像装置の画角が調整可能となるよう構成されることを特徴とする請求項1から8のいずれか一項に記載のイオン注入装置。
【請求項10】
前記照明光は、前記イオンビームと交差するようにシート状またはボックス状に照射されることを特徴とする請求項1から9のいずれか一項に記載のイオン注入装置。
【請求項11】
前記照明光は、時間的に連続して照射され、前記撮像装置は、異なるタイミングに撮像される複数の撮像画像を生成することを特徴とする請求項1から10のいずれか一項に記載のイオン注入装置。
【請求項12】
前記制御装置は、前記撮像画像を複数の微小領域に分割し、前記複数の微小領域のそれぞれに含まれる複数の画素の輝度値を合計または平均することにより微小領域の輝度値を算出し、前記微小領域の輝度値に基づいて前記微小領域ごとに前記パーティクルの有無を検出することを特徴とする請求項1から11のいずれか一項に記載のイオン注入装置。
【請求項13】
前記制御装置は、閾値を超える輝度値を有する微小領域を特定し、前記撮像画像における前記特定された微小領域の分布に基づいて前記微小領域ごとに前記パーティクルの有無を検出することを特徴とする請求項12に記載のイオン注入装置。
【請求項14】
前記制御装置は、前記微小領域ごとに定められる前記パーティクルの検出条件を用いて前記微小領域ごとに前記パーティクルの有無を検出することを特徴とする請求項12または13に記載のイオン注入装置。
【請求項15】
前記制御装置は、前記撮像装置が異なるタイミングに撮像する複数の撮像画像における前記微小領域の輝度値の平均および標準偏差に基づいて、前記微小領域ごとに前記パーティクルの検出条件を決定することを特徴とする請求項14に記載のイオン注入装置。
【請求項16】
前記制御装置は、前記微小領域ごとのパーティクルの有無の検出結果に基づいて、前記撮像装置が撮像する空間に存在するパーティクルの量を推定することを特徴とする請求項12から15のいずれか一項に記載のイオン注入装置。
【請求項17】
前記制御装置は、前記ビームライン装置が特定の動作状態である場合に前記撮像装置が異なるタイミングに撮像する複数の撮像画像に基づいて、前記ビームライン装置が前記特定の動作状態である場合に用いられる前記パーティクルの検出条件を決定することを特徴とする請求項1から16のいずれか一項に記載のイオン注入装置。
【請求項18】
前記制御装置は、前記撮像画像に前記パーティクルが含まれるか否かを判定し、前記パーティクルが含まれないと判定した撮像画像に基づいて、前記パーティクルの検出条件を更新することを特徴とする請求項1から17のいずれか一項に記載のイオン注入装置。
【請求項19】
前記制御装置は、前記撮像画像に基づいて前記パーティクルの挙動を解析し、前記パーティクルの挙動の解析結果に基づいて、前記パーティクルの大きさを推定することを特徴とする請求項1から18のいずれか一項に記載のイオン注入装置。
【請求項20】
イオンビームの輸送方向と交差する方向に照明光を照射することと、
前記照明光が通過する空間を撮像した撮像画像を生成することと、
前記撮像画像に基づいて前記照明光を散乱させるパーティクルを検出することと、を備えることを特徴とするパーティクル検出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、イオン注入装置およびパーティクル検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体製造工程では、半導体の導電性を変化させる目的、半導体の結晶構造を変化させる目的などのために、半導体ウェハにイオンを注入する工程(イオン注入工程ともいう)が標準的に実施されている。イオン注入工程では、注入対象の半導体ウェハに向けて延びるビームラインに沿ってイオンビームを輸送するイオン注入装置が用いられる。
【0003】
イオンビームが輸送される真空チャンバ内では、様々な要因によりパーティクル(汚染粒子)が生じることがある。イオンビームとともにパーティクルがウェハに向けて輸送されてしまうと、半導体ウェハへのイオン注入処理にパーティクルが影響を及ぼすおそれがある。そこで、ビームラインに向けてレーザ光を照射し、汚染粒子による散乱光の強度を測定して汚染粒子のフラックスを測定する装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
イオンビームが輸送される真空チャンバ内では、真空チャンバ内の残留ガスとイオンビームの相互作用による発光現象が生じることがあり、散乱光を利用したパーティクルの検出精度に影響を及ぼすことがある。
【0006】
本発明のある態様の例示的な目的のひとつは、イオンビームとともに輸送されるパーティクルの検出精度を高める技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のある態様のイオン注入装置は、イオンビームを輸送するビームライン装置と、イオンビームをウェハに照射する注入処理がなされる注入処理室と、ビームライン装置内および注入処理室内の少なくとも一方においてイオンビームの輸送方向と交差する方向に照明光を照射する照明装置と、照明光が通過する空間を撮像した撮像画像を生成する撮像装置と、撮像画像に基づいて照明光を散乱させるパーティクルを検出する制御装置と、を備える。
【0008】
本発明の別の態様は、パーティクル検出方法である。この方法は、イオンビームの輸送方向と交差する方向に照明光を照射することと、照明光が通過する空間を撮像した撮像画像を生成することと、撮像画像に基づいて照明光を散乱させるパーティクルを検出することと、を備える。
【0009】
なお、以上の構成要素の任意の組み合わせや本発明の構成要素や表現を、方法、装置、システムなどの間で相互に置換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0010】
本発明のある態様によれば、イオンビームとともに輸送されるパーティクルの検出精度を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】実施の形態に係るイオン注入装置の概略構成を示す上面図である。
【
図2】
図1のイオン注入装置の概略構成を示す側面図である。
【
図3】ウェハの表面近傍を測定対象とするパーティクル測定装置の配置例を模式的に示す正面図である。
【
図4】ウェハの表面近傍を測定対象とするパーティクル測定装置の配置例を模式的に示す上面図である。
【
図5】ウェハの表面近傍を測定対象とするパーティクル測定装置の変形例を模式的に示す正面図である。
【
図6】ウェハの表面近傍を測定対象とするパーティクル測定装置の変形例を模式的に示す正面図である。
【
図7】実施の形態に係る制御装置の機能構成を概略的に示す図である。
【
図8】パーティクルの検出領域を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照しながら、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を適宜省略する。また、以下に述べる構成は例示であり、本発明の範囲を何ら限定するものではない。
【0013】
図1は、実施の形態に係るイオン注入装置10を概略的に示す上面図であり、
図2は、イオン注入装置10の概略構成を示す側面図である。イオン注入装置10は、被処理物Wの表面にイオン注入処理を施すよう構成される。被処理物Wは、例えば基板であり、例えば半導体ウェハである。説明の便宜のため、本明細書において被処理物WをウェハWと呼ぶことがあるが、これは注入処理の対象を特定の物体に限定することを意図しない。
【0014】
イオン注入装置10は、ビームを一方向に往復走査させ、ウェハWを走査方向と直交する方向に往復運動させることによりウェハWの処理面全体にわたってイオンビームを照射するよう構成される。本書では説明の便宜上、設計上のビームラインAに沿って進むイオンビームの進行方向をz方向とし、z方向に垂直な面をxy面と定義する。イオンビームを被処理物Wに対し走査する場合において、ビームの走査方向をx方向とし、z方向及びx方向に垂直な方向をy方向とする。したがって、ビームの往復走査はx方向に行われ、ウェハWの往復運動はy方向に行われる。
【0015】
イオン注入装置10は、イオン生成装置12と、ビームライン装置14と、注入処理室16と、ウェハ搬送装置18とを備える。イオン生成装置12は、イオンビームをビームライン装置14に与えるよう構成される。ビームライン装置14は、イオン生成装置12から注入処理室16へイオンビームを輸送するよう構成される。注入処理室16には、注入対象となるウェハWが収容され、ビームライン装置14から与えられるイオンビームをウェハWに照射する注入処理がなされる。ウェハ搬送装置18は、注入処理前の未処理ウェハを注入処理室16に搬入し、注入処理後の処理済ウェハを注入処理室16から搬出するよう構成される。
【0016】
イオン注入装置10は、イオン生成装置12、ビームライン装置14、注入処理室16およびウェハ搬送装置18に所望の真空環境を提供するための真空排気系(図示せず)を備える。真空排気系を動作させることで、ビームライン装置14および注入処理室16の少なくとも一方の内部圧力(真空度)が変化する。ビームライン装置14および注入処理室16の少なくとも一方の内部圧力は、ウェハ搬送装置18によるウェハ搬送や、ビームライン装置14または注入処理室16の内部へのガス導入によっても変化する。
【0017】
ビームライン装置14は、ビームラインAの上流側から順に、質量分析部20、ビームパーク装置24、ビーム整形部30、ビーム走査部32、ビーム平行化部34および角度エネルギーフィルタ(AEF;Angular Energy Filter)36を備える。なお、ビームラインAの上流とは、イオン生成装置12に近い側のことをいい、ビームラインAの下流とは注入処理室16(またはビームストッパ46)に近い側のことをいう。
【0018】
質量分析部20は、イオン生成装置12の下流に設けられ、イオン生成装置12から引き出されたイオンビームから必要なイオン種を質量分析により選択するよう構成される。質量分析部20は、質量分析磁石21と、質量分析レンズ22と、質量分析スリット23とを有する。
【0019】
質量分析磁石21は、イオン生成装置12から引き出されたイオンビームに磁場を印加し、イオンの質量電荷比M=m/q(mは質量、qは電荷)の値に応じて異なる経路でイオンビームを偏向させる。質量分析磁石21は、例えばイオンビームにy方向(
図1および
図2では-y方向)の磁場を印加してイオンビームをx方向に偏向させる。質量分析磁石21の磁場強度は、所望の質量電荷比Mを有するイオン種が質量分析スリット23を通過するように調整される。
【0020】
質量分析レンズ22は、質量分析磁石21の下流に設けられ、イオンビームに対する収束/発散力を調整するよう構成される。質量分析レンズ22は、質量分析スリット23を通過するイオンビームのビーム進行方向(z方向)の収束位置を調整し、質量分析部20の質量分解能M/dMを調整する。なお、質量分析レンズ22は必須の構成ではなく、質量分析部20に質量分析レンズ22が設けられなくてもよい。
【0021】
質量分析スリット23は、質量分析レンズ22の下流に設けられ、質量分析レンズ22から離れた位置に設けられる。質量分析スリット23は、質量分析磁石21によるビーム偏向方向(x方向)がスリット幅方向と一致するように構成され、x方向が相対的に短く、y方向が相対的に長い形状の開口23aを有する。
【0022】
質量分析スリット23は、質量分解能の調整のためにスリット幅が可変となるように構成されてもよい。質量分析スリット23は、スリット幅方向に移動可能な二枚の遮蔽体により構成され、二枚の遮蔽体の間隔を変化させることによりスリット幅が調整可能となるように構成されてもよい。質量分析スリット23は、スリット幅の異なる複数のスリットのいずれか一つに切り替えることによりスリット幅が可変となるよう構成されてもよい。
【0023】
ビームパーク装置24は、ビームラインAからイオンビームを一時的に退避し、下流の注入処理室16(またはウェハW)に向かうイオンビームを遮蔽するよう構成される。ビームパーク装置24は、ビームラインAの途中の任意の位置に配置することができるが、例えば、質量分析レンズ22と質量分析スリット23の間に配置できる。質量分析レンズ22と質量分析スリット23の間には一定の距離が必要であるため、その間にビームパーク装置24を配置することで、他の位置に配置する場合よりもビームラインAの長さを短くすることができ、イオン注入装置10の全体を小型化できる。
【0024】
ビームパーク装置24は、一対のパーク電極25(25a,25b)と、ビームダンプ26と、を備える。一対のパーク電極25a,25bは、ビームラインAを挟んで対向し、質量分析磁石21のビーム偏向方向(x方向)と直交する方向(y方向)に対向する。ビームダンプ26は、パーク電極25a,25bよりもビームラインAの下流側に設けられ、ビームラインAからパーク電極25a,25bの対向方向に離れて設けられる。
【0025】
第1パーク電極25aはビームラインAよりも重力方向上側に配置され、第2パーク電極25bはビームラインAよりも重力方向下側に配置される。ビームダンプ26は、ビームラインAよりも重力方向下側に離れた位置に設けられ、質量分析スリット23の開口23aの重力方向下側に配置される。ビームダンプ26は、例えば、質量分析スリット23の開口23aが形成されていない部分で構成される。ビームダンプ26は、質量分析スリット23とは別体として構成されてもよい。
【0026】
ビームパーク装置24は、一対のパーク電極25a,25bの間に印加される電場を利用してイオンビームを偏向させ、ビームラインAからイオンビームを退避させる。例えば、第1パーク電極25aの電位を基準として第2パーク電極25bに負電圧を印加することにより、イオンビームをビームラインAから重力方向下方に偏向させてビームダンプ26に入射させる。
図2において、ビームダンプ26に向かうイオンビームの軌跡を破線で示している。また、ビームパーク装置24は、一対のパーク電極25a,25bを同電位とすることにより、イオンビームをビームラインAに沿って下流側に通過させる。ビームパーク装置24は、イオンビームを下流側に通過させる第1モードと、イオンビームをビームダンプ26に入射させる第2モードとを切り替えて動作可能となるよう構成される。
【0027】
質量分析スリット23の下流にはインジェクタファラデーカップ28が設けられる。インジェクタファラデーカップ28は、インジェクタ駆動部29の動作によりビームラインAに出し入れ可能となるよう構成される。インジェクタ駆動部29は、インジェクタファラデーカップ28をビームラインAの延びる方向と直交する方向(例えばy方向)に移動させる。インジェクタファラデーカップ28は、
図2の破線で示すようにビームラインA上に配置された場合、下流側に向かうイオンビームを遮断する。一方、
図2の実線で示すように、インジェクタファラデーカップ28がビームラインA上から外された場合、下流側に向かうイオンビームの遮断が解除される。
【0028】
インジェクタファラデーカップ28は、質量分析部20により質量分析されたイオンビームのビーム電流を計測するよう構成される。インジェクタファラデーカップ28は、質量分析磁石21の磁場強度を変化させながらビーム電流を測定することにより、イオンビームの質量分析スペクトラムを計測できる。計測した質量分析スペクトラムを用いて、質量分析部20の質量分解能を算出することができる。
【0029】
ビーム整形部30は、収束/発散四重極レンズ(Qレンズ)などの収束/発散装置を備えており、質量分析部20を通過したイオンビームを所望の断面形状に整形するよう構成されている。ビーム整形部30は、例えば、電場式の三段四重極レンズ(トリプレットQレンズともいう)で構成され、三つの四重極レンズ30a,30b,30cを有する。ビーム整形部30は、三つのレンズ装置30a~30cを用いることにより、イオンビームの収束または発散をx方向およびy方向のそれぞれについて独立に調整しうる。ビーム整形部30は、磁場式のレンズ装置を含んでもよく、電場と磁場の双方を利用してビームを整形するレンズ装置を含んでもよい。
【0030】
ビーム走査部32は、ビームの往復走査を提供するよう構成され、整形されたイオンビームをx方向に走査するビーム偏向装置である。ビーム走査部32は、ビーム走査方向(x方向)に対向する走査電極対を有する。走査電極対は可変電圧電源(図示せず)に接続されており、走査電極対の間に印加される電圧を周期的に変化させることにより、電極間に生じる電界を変化させてイオンビームをさまざまな角度に偏向させる。その結果、イオンビームがx方向の走査範囲全体にわたって走査される。
図1において、矢印Xによりビームの走査方向及び走査範囲を例示し、走査範囲でのイオンビームの複数の軌跡を一点鎖線で示している。
【0031】
ビーム平行化部34は、走査されたイオンビームの進行方向を設計上のビームラインAの軌道と平行にするよう構成される。ビーム平行化部34は、y方向の中央部にイオンビームの通過スリットが設けられた円弧形状の複数の平行化レンズ電極を有する。平行化レンズ電極は、高圧電源(図示せず)に接続されており、電圧印加により生じる電界をイオンビームに作用させて、イオンビームの進行方向を平行に揃える。なお、ビーム平行化部34は他のビーム平行化装置で置き換えられてもよく、ビーム平行化装置は磁界を利用する磁石装置として構成されてもよい。
【0032】
ビーム平行化部34の下流には、イオンビームを加速または減速させるためのAD(Accel/Decel)コラム(図示せず)が設けられてもよい。
【0033】
角度エネルギーフィルタ(AEF)36は、イオンビームのエネルギーを分析し必要なエネルギーのイオンを下方に偏向して注入処理室16に導くよう構成されている。角度エネルギーフィルタ36は、電界偏向用のAEF電極対を有する。AEF電極対は、高圧電源(図示せず)に接続される。
図2において、上側のAEF電極に正電圧、下側のAEF電極に負電圧を印加させることにより、イオンビームを下方に偏向させる。なお、角度エネルギーフィルタ36は、磁界偏向用の磁石装置で構成されてもよく、電界偏向用のAEF電極対と磁界偏向用の磁石装置の組み合わせで構成されてもよい。
【0034】
このようにして、ビームライン装置14は、ウェハWに照射されるべきイオンビームを注入処理室16に供給する。
【0035】
注入処理室16は、ビームラインAの上流側から順に、エネルギースリット38、プラズマシャワー装置40、サイドカップ42、センターカップ44およびビームストッパ46を備える。注入処理室16は、
図2に示されるように、1枚又は複数枚のウェハWを保持するプラテン駆動装置50を備える。
【0036】
エネルギースリット38は、角度エネルギーフィルタ36の下流側に設けられ、角度エネルギーフィルタ36とともにウェハWに入射するイオンビームのエネルギー分析をする。エネルギースリット38は、ビーム走査方向(x方向)に横長のスリットで構成されるエネルギー制限スリット(EDS;Energy Defining Slit)である。エネルギースリット38は、所望のエネルギー値またはエネルギー範囲を持つイオンビームをウェハWに向けて通過させ、それ以外のイオンビームを遮蔽する。
【0037】
プラズマシャワー装置40は、エネルギースリット38の下流側に位置する。プラズマシャワー装置40は、イオンビームのビーム電流量に応じてイオンビームおよびウェハWの表面(ウェハ処理面)に低エネルギー電子を供給し、イオン注入で生じるウェハ処理面上の正電荷の蓄積によるチャージアップを抑制する。プラズマシャワー装置40は、例えば、イオンビームが通過するシャワーチューブと、シャワーチューブ内に電子を供給するプラズマ発生装置とを含む。
【0038】
サイドカップ42(42R,42L)は、ウェハWへのイオン注入処理中にイオンビームのビーム電流を測定するよう構成される。
図2に示されるように、サイドカップ42R,42Lは、ビームラインA上に配置されるウェハWに対して左右(x方向)にずれて配置されており、イオン注入時にウェハWに向かうイオンビームを遮らない位置に配置される。イオンビームは、ウェハWが位置する範囲を超えてx方向に走査されるため、イオン注入時においても走査されるビームの一部がサイドカップ42R、42Lに入射する。これにより、イオン注入処理中のビーム電流量がサイドカップ42R、42Lにより計測される。
【0039】
センターカップ44は、ウェハ処理面におけるビーム電流を測定するよう構成される。センターカップ44は、駆動部45の動作によりx方向に可動となるよう構成され、イオン注入時にウェハWが位置する注入位置から待避され、ウェハWが注入位置にないときに注入位置に挿入される。センターカップ44は、x方向に移動しながらビーム電流を測定することにより、x方向のビーム走査範囲の全体にわたってビーム電流を測定することができる。センターカップ44は、ビーム走査方向(x方向)の複数の位置におけるビーム電流を同時に計測可能となるように、複数のファラデーカップがx方向に並んでアレイ状に形成されてもよい。
【0040】
サイドカップ42およびセンターカップ44の少なくとも一つは、ビーム電流量を測定するための単一のファラデーカップを備えてもよいし、ビームの角度情報を測定するための角度計測器を備えてもよい。角度計測器は、例えば、スリットと、スリットからビーム進行方向(z方向)に離れて設けられる複数の電流検出部とを備える。角度計測器は、例えば、スリットを通過したビームをスリット幅方向に並べられる複数の電流検出部で計測することにより、スリット幅方向のビームの角度成分を測定できる。サイドカップ42およびセンターカップ44の少なくとも一つは、x方向の角度情報を測定可能な第1角度測定器と、y方向の角度情報を測定可能な第2角度測定器とを備えてもよい。
【0041】
プラテン駆動装置50は、ウェハ保持装置52と、往復運動機構54と、ツイスト角調整機構56と、チルト角調整機構58とを含む。ウェハ保持装置52は、ウェハWを保持するための静電チャック等を含む。往復運動機構54は、ビーム走査方向(x方向)と直交する往復運動方向(y方向)にウェハ保持装置52を往復運動させることにより、ウェハ保持装置52に保持されるウェハをy方向に往復運動させる。
図2において、矢印YによりウェハWの往復運動を例示する。
【0042】
ツイスト角調整機構56は、ウェハWの回転角を調整する機構であり、ウェハ処理面の法線を軸としてウェハWを回転させることにより、ウェハの外周部に設けられるアライメントマークと基準位置との間のツイスト角を調整する。ここで、ウェハのアライメントマークとは、ウェハの外周部に設けられるノッチやオリフラのことをいい、ウェハの結晶軸方向やウェハの周方向の角度位置の基準となるマークをいう。ツイスト角調整機構56は、ウェハ保持装置52と往復運動機構54の間に設けられ、ウェハ保持装置52とともに往復運動される。
【0043】
チルト角調整機構58は、ウェハWの傾きを調整する機構であり、ウェハ処理面に向かうイオンビームの進行方向とウェハ処理面の法線との間のチルト角を調整する。本実施の形態では、ウェハWの傾斜角のうち、x方向の軸を回転の中心軸とする角度をチルト角として調整する。チルト角調整機構58は、往復運動機構54と注入処理室16の内壁の間に設けられており、往復運動機構54を含むプラテン駆動装置50全体をR方向に回転させることでウェハWのチルト角を調整するように構成される。
【0044】
プラテン駆動装置50は、イオンビームがウェハWに照射される注入位置と、ウェハ搬送装置18との間でウェハWが搬入または搬出される搬送位置との間でウェハWが移動可能となるようにウェハWを保持する。
図2は、ウェハWが注入位置にある状態を示しており、プラテン駆動装置50は、ビームラインAとウェハWとが交差するようにウェハWを保持する。ウェハWの搬送位置は、ウェハ搬送装置18に設けられる搬送機構または搬送ロボットにより搬送口48を通じてウェハWが搬入または搬出される際のウェハ保持装置52の位置に対応する。
【0045】
ビームストッパ46は、ビームラインAの最下流に設けられ、例えば、注入処理室16の内壁に取り付けられる。ビームラインA上にウェハWが存在しない場合、イオンビームはビームストッパ46に入射する。ビームストッパ46は、注入処理室16とウェハ搬送装置18の間を接続する搬送口48の近くに位置しており、搬送口48よりも鉛直下方の位置に設けられる。
【0046】
イオン注入装置10は、制御装置60をさらに備える。制御装置60は、イオン注入装置10の動作全般を制御する。制御装置60は、ハードウェア的には、コンピュータのCPUやメモリをはじめとする素子や機械装置で実現され、ソフトウェア的にはコンピュータプログラム等によって実現される。制御装置60により提供される各種機能は、ハードウェアおよびソフトウェアの連携によって実現されうる。
【0047】
イオン注入装置10は、パーティクル測定装置62をさらに備える。パーティクル測定装置62は、ビームライン装置14および注入処理室16の少なくとも一方に設けられる。パーティクル測定装置62は、ビームラインAを通過するパーティクルや、ウェハWに向けて飛行するパーティクルを測定するよう構成される。パーティクル測定装置62は、特にイオンビームが通過する空間のパーティクルを測定し、イオンビームとともにウェハWに向けて輸送されるパーティクルを測定するよう構成される。
【0048】
パーティクル測定装置62は、照明光Lを照射する照明装置64と、照明光Lが通過する空間を撮像する撮像装置66とを備える。照明装置64は、ビームラインAに向けて照明光Lを照射する。撮像装置66は、照明光Lを散乱させるパーティクルを撮像して撮像画像を生成する。制御装置60は、撮像装置66によって生成される撮像画像を取得し、撮像画像に基づいてパーティクルを検出する。
【0049】
図示する例では、パーティクル測定装置62は、角度エネルギーフィルタ36を通過するパーティクルを測定するよう構成される。照明装置64は、角度エネルギーフィルタ36を構成する複数のAEF電極の間の空間に向けて照明光Lを照射する。照明光Lは、イオンビームの輸送方向(z方向)と交差する方向に照射され、複数のAEF電極の間(例えば、上側のAEF電極と下側のAEF電極の間)を通過するように照射される。撮像装置66は、角度エネルギーフィルタ36を構成する複数のAEF電極の間の空間のうち、照明光Lが照射される範囲の少なくとも一部を撮像する。撮像装置66の画角Vには、イオンビームと照明光Lが交差する空間が含まれる。
【0050】
照明装置64は、可視光である照明光Lを生成するよう構成される。照明装置64は、パルス光ではなく連続光の照明光Lを生成し、パーティクルの測定対象となる空間を時間的に連続して照明するよう構成される。照明装置64は、レーザ光源を含み、赤色や緑色などのレーザの照明光Lを生成するよう構成されてもよい。照明装置64は、LED光源を含み、レーザではない照明光Lを生成するよう構成されてもよい。
【0051】
照明装置64は、x方向に幅を有するシート状の照明光Lを生成し、例えば、レーザライトシートを生成するよう構成される。照明装置64は、イオンビームのx方向の走査範囲全体にわたるシート状の照明光Lを照射してもよい。照明装置64は、x方向に幅を有し、x方向と直交する方向(例えばy方向またはz方向)に厚みを有するボックス状の照明光Lを生成してもよい。照明装置64は、照明光Lの照射態様を切り替えできるよう構成されてもよく、例えば、シート状の照明光とボックス状の照明光を切り替えできるよう構成されてもよい。
【0052】
照明装置64は、ビームラインAからy方向(上側または下側)に離れた位置からビームラインAに向けて照明光Lを照射するよう配置される。照明装置64は、角度エネルギーフィルタ36の上流側、例えば、ビーム平行化部34と角度エネルギーフィルタ36の間に配置され、ビームラインAよりも上側からビームラインAの下方に向けて照明光Lを照射するよう配置される。なお、照明装置64は、ビームラインからx方向(左側または右側)に離れた位置からビームラインAに向けて照明光Lを照射するよう配置されてもよい。照明光Lは、例えば、ビームラインAに対して斜めに照射される。照明光Lは、ビームラインAと直交するように照射されてもよい。
【0053】
撮像装置66は、CCDやCMOSセンサなどの撮像素子を有し、パーティクルの測定対象となる空間を撮像した画像データを生成する。撮像装置66は、所定のフレームレート(例えば、毎秒30または60フレーム)で複数の画像を撮像することで動画像を生成するよう構成される。撮像装置66は、波長フィルタを有してもよく、照明光Lの波長を選択的に透過させるバンドパスフィルタを有してもよい。照明光Lの波長のみを撮像対象とすることで、照明光Lとは異なる光に起因するパーティクルの誤検出を防止できる。
【0054】
撮像装置66は、撮像装置66の撮像方向が照明光Lの照射方向およびイオンビームの輸送方向の双方と交差するように配置される。撮像装置66の撮像方向は、シート状の照明光Lが形成する平面と斜めに交差してもよいし、シート状の照明光Lが形成する平面と直交してもよい。撮像装置66は、シート状の照明光Lが形成する平面から離れた位置からシート状の照明光Lが照射される範囲の少なくとも一部を撮像するように配置される。撮像装置66は、角度エネルギーフィルタ36の下流側、例えば、角度エネルギーフィルタ36とエネルギースリット38の間に配置され、ビームラインAよりも上側からビームラインAの下方に向かう画角Vを有するよう配置される。なお、照明装置64は、角度エネルギーフィルタ36からx方向(左側または右側)に離れた位置からビームラインAに向けて照明光Lを照射するよう配置されてもよい。撮像装置66は、角度エネルギーフィルタ36からx方向(左側または右側)に離れた位置に配置され、ビームラインAに向けて+x方向(左側から右側)または-x方向(右側から左側)の画角Vを有するよう配置されてもよい。
【0055】
撮像装置66の画角Vは、イオンビームと照明光Lが交差する空間の少なくとも一部を含み、イオンビームと照明光Lが交差する空間の全体を含むことが好ましい。撮像装置66の画角Vは、イオンビームのx方向の走査範囲の少なくとも一部を含み、イオンビームのx方向の走査範囲全体を含んでもよい。撮像装置66の画角Vは、角度エネルギーフィルタ36の複数のAEF電極の間の空間の少なくとも一部を含み、上側のAEF電極から下側のAEF電極までのy方向の範囲の全体を含んでもよい。撮像装置66の画角Vは、イオンビームと照明光Lが交差しない空間を含んでもよい。
【0056】
パーティクル測定装置62は、複数の撮像装置66を備えてもよい。複数の撮像装置66は、シート状の照明光Lを異なる位置から撮像するよう配置されてもよい。複数の撮像装置66は、ステレオカメラとして構成されてもよく、シート状の照明光Lを異なる位置から撮像することでパーティクルの位置や挙動を立体的に把握できてもよい。複数の撮像装置66は、それぞれの画角Vが互いに重なるように配置されてもよい。複数の撮像装置66は、それぞれの画角Vが互いに重ならないように配置されてもよく、各撮像装置66が異なる位置または範囲のパーティクルを撮像するよう構成されてもよい。
【0057】
照明装置64および撮像装置66の配置は上述したものに限られず、パーティクルの測定対象となる空間の位置や範囲に応じて任意の適切な配置とすることができる。パーティクル測定装置62は、ビームライン装置14および注入処理室16の少なくとも一方の任意の位置に配置されてもよい。パーティクル測定装置62は、注入処理室16にてイオンビームが照射されるウェハWの表面近傍をパーティクルの測定対象空間としてもよい。例えば、照明装置64は、ウェハWの表面近傍に照明光Lを照射するよう配置されてもよい。撮像装置66は、撮像装置66の画角VがウェハWの表面近傍の照明光Lが照射される範囲を含むように配置されてもよい。
【0058】
図3および
図4は、ウェハWの表面近傍を測定対象とするパーティクル測定装置62の配置例を模式的に示す図である。
図3は、ウェハWの表面をz方向に向かって見たときの正面図であり、
図4は、ウェハWの上方から-y方向に向かって見たときの上面図である。照明装置64は、シート状の照明光LがウェハWの表面に沿ってウェハWの表面と平行に照射されるよう配置されている。照明光Lは、ウェハWの表面と厳密に平行でなくてもよく、ウェハWの表面に対して斜めに照射されてもよい。照明光Lは、ウェハWの表面から所定範囲内(例えば10cm以内または1m以内)の空間に照射される。照明装置64は、ウェハWに入射するイオンビームBと照明光Lが交差するように照明光Lを照射する。
図3において、ウェハWにイオンビームBが入射する注入領域Cを破線の枠で示している。
【0059】
照明装置64は、プラテン駆動装置50に取り付けられており、チルト角調整機構58によってウェハWとともに矢印Rで示されるように回転可能となるよう構成される。照明装置64は、ウェハWのチルト角に応じて照明光Lの通過位置が調整可能であり、ウェハWのチルト角が変化する場合にウェハWのチルト角に追従して照明光Lの照射角度が可変となるよう構成される。図示する例では、ウェハWの左上側(+x方向および+y方向側)に照明装置64が配置されている。照明装置64は、ウェハWの左下側(+x方向および-y方向側)に配置されてもよい。照明装置64は、ウェハWのすぐ左側(+x方向側)に配置され、ウェハWと照明装置64のy方向の位置が一致してもよい。なお、プラテン駆動装置50がウェハWの右側(-x方向側)に配置される場合、照明装置64も、ウェハWの右側(-x方向側)に配置されてもよい。照明装置64は、往復運動機構54の可動範囲を避けて配置される。照明装置64は、ウェハWと照明装置64のx方向の位置が一致する位置を避けて、つまり、ウェハWの真上(+y方向側)や真下(-y方向側)を避けて配置される。
【0060】
撮像装置66は、照明光LとイオンビームBが交差する範囲が画角Vに含まれるように配置されている。撮像装置66は、ウェハWの表面が撮像装置66の画角Vに含まれないように配置されている。図示する例では、ウェハWの裏側(+z方向側)からウェハWの表面近傍を撮像するように撮像装置66が配置されている。図示する例では、ウェハWの右上側(-x方向および+y方向側)に撮像装置66が配置されている。撮像装置66は、ウェハWの右下側(-x方向および-y方向側)に配置されてもよい。撮像装置66は、ウェハWのすぐ右側(-x方向側)に配置され、ウェハWと撮像装置66のy方向の位置が一致してもよい。撮像装置66は、往復運動機構54の可動範囲を避けて配置される。撮像装置66は、ウェハWと撮像装置66のx方向の位置が一致する位置を避けて、つまり、ウェハWの真上(+y方向側)や真下(-y方向側)を避けて配置される。ウェハWの表面が画角Vに含まれないようにすることで、ウェハWの表面に形成される構造物が撮像されることによるパーティクルの誤検出を防止できる。
【0061】
図3および
図4に示される例では、撮像装置66は、プラテン駆動装置50に取り付けられておらず、画角VがウェハWのチルト角に応じて変化しないように構成されている。撮像装置66は、画角VがウェハWのチルト角に応じて調整可能となるよう構成されてもよい。
【0062】
図5および
図6は、ウェハの表面近傍を測定対象とするパーティクル測定装置の変形例を模式的に示す正面図である。
図5に示すパーティクル測定装置62aでは、撮像装置66aが照明装置64と同様にプラテン駆動装置50に取り付けられている。
図6に示すパーティクル測定装置62bでは、撮像装置66bがウェハWのチルト角に応じて画角Vを可変とする駆動機構68に取り付けられている。駆動機構68は、注入処理室16の内壁に取り付けられ、矢印Rbに示されるように回転可能となるよう構成される。駆動機構68は、例えば、矢印Rで示されるチルト角調整機構58の回転と連動して駆動可能となるよう構成される。駆動機構68は、ウェハ表面近傍でパーティクルの測定が必要となる場合に駆動してもよい。
【0063】
イオン注入装置10は、複数のパーティクル測定装置62を備えてもよい。複数のパーティクル測定装置62は、それぞれがビームラインAの異なる位置または範囲を測定対象空間としてもよい。例えば、第1パーティクル測定装置がビームライン装置14に設けられ、第2パーティクル測定装置が注入処理室16に設けられてもよい。複数のパーティクル測定装置62を設けることで、ビームラインAの複数の位置または範囲におけるパーティクルを測定することができる。例えば、複数の位置または範囲におけるパーティクルの測定結果を比較することで、パーティクルの発生源の特定に役立てることができる。
【0064】
パーティクル測定装置62の一部は、ビームライン装置14および注入処理室16を構成する真空チャンバの外に設けられてもよい。例えば、真空チャンバの壁に真空窓を設け、真空窓を通じて照明光Lを照射してもよいし、真空窓を通じて照明光Lの照射範囲を撮像してもよい。真空窓には、樹脂フィルムなどの交換容易なカバー部材が付加され、パーティクルの付着やイオンビームの照り返しなどの汚れに対する対策が施されてもよい。また、カバー部材が汚れてきた場合に装置の真空状態を維持したまま別のカバー部材に切替可能な構成としてもよい。これにより、カバー部材が汚れたとしても、装置の大気開放を伴う窓部材やカバー部材の交換作業が不要となるようにしてもよい。
【0065】
パーティクル測定装置62は、照明光Lを照射するためのミラーやレンズなどの追加の光学素子を含んでもよいし、照明光Lの照射範囲を撮像するためのミラーやレンズなどの追加の光学素子を含んでもよい。これらの光学素子の位置や向きを可変とすることで、パーティクルの測定対象となる空間の位置や範囲が可変となるよう構成されてもよい。例えば、ウェハWのチルト角に応じて光学素子の位置や向きが可変となるように構成されてもよい。
【0066】
図7は、実施の形態にかかる制御装置60の機能構成を模式的に示す機能ブロック図である。制御装置60は、注入制御部70と、パーティクル解析部72と、記憶部74とを含む。注入制御部70は、注入レシピに基づいてイオン注入装置10の動作を制御する。パーティクル解析部72は、照明装置64の動作を制御し、撮像装置66によって生成される撮像画像に基づいて測定対象空間のパーティクルを解析する。記憶部74は、制御装置60の動作に必要な各種データを記憶する。
【0067】
注入制御部70は、記憶部74に記憶される注入レシピを取得し、注入レシピに基づいてイオンビームを生成する。注入レシピには、イオン種、ビームエネルギー、ビーム電流、ビームサイズ、ウェハチルト角、ウェハツイスト角、平均ドーズ量といった注入パラメータのセットが定められている。注入レシピには、不均一注入を実施するための注入パラメータが定められてもよい。注入レシピには、不均一注入のための二次元ドーズ量分布が定められてもよいし、ビームスキャン速度やウェハ移動速度を可変制御するための補正ファイルが定められてもよい。
【0068】
注入制御部70は、イオン注入装置10を構成する各種機器の動作パラメータを調整することで、取得した注入レシピに定められる所望の注入パラメータが実現されるようにする。注入制御部70は、イオン生成装置12のガス種や引出電圧、質量分析部20の磁場強度などを調整することでイオンビームのイオン種を制御する。注入制御部70は、イオン生成装置12の引出電圧、ビーム平行化部34の印加電圧、ADコラムの印加電圧、角度エネルギーフィルタ36の印加電圧などを調整することでイオンビームのビームエネルギーを制御する。注入制御部70は、イオン生成装置12のガス量、アーク電流、アーク電圧、ソースマグネット電流といった各種パラメータや、質量分析スリット23の開口幅などを調整することでイオンビームのビーム電流を制御する。注入制御部70は、ビーム整形部30に含まれる収束/発散装置の動作パラメータなどを調整することにより、ウェハ処理面に入射するイオンビームのビームサイズを制御する。注入制御部70は、ツイスト角調整機構56およびチルト角調整機構58を動作させることで所望のウェハチルト角およびウェハツイスト角が実現されるようにする。注入制御部70は、ビームライン装置14および注入処理室16の内部圧力(真空度)が所望の値となるように真空排気系の動作を制御する。注入制御部70は、ウェハ搬送装置18を動作させてウェハWの搬入および搬出を制御する。
【0069】
注入制御部70は、注入工程においてウェハWに注入されるドーズ量またはドーズ量分布を制御する。不均一注入を実施する場合、注入制御部70は、取得した注入レシピに基づいて、ビームスキャン速度およびウェハ移動速度を可変制御する。注入制御部70は、ビーム走査部32に指令する走査電圧パラメータを制御することでビームスキャン速度を可変制御し、往復運動機構54に指令する速度パラメータを制御することでウェハ移動速度を可変制御する。注入制御部70は、相対的に高ドーズ量とする箇所においてビームスキャン速度が遅くなるように走査電圧の時間変化率dV/dtを小さくし、相対的に低ドーズ量とする箇所においてビームスキャン速度が速くなるように走査電圧の時間変化率dV/dtを大きくする。注入制御部70は、相対的に高ドーズ量とする箇所においてウェハ移動速度を遅くし、相対的に低ドーズ量とする箇所においてウェハ移動速度を速くする。
【0070】
パーティクル解析部72は、画像解析部76、条件管理部77およびモニタ部78を含む。画像解析部76は、撮像装置66によって生成される撮像画像に基づいてパーティクルを検出し、パーティクルの量、速度、大きさなどを解析する。条件管理部77は、画像解析部76が用いるパーティクルの解析条件を管理する。モニタ部78は、パーティクルの発生状況をモニタして異常の有無を診断する。
【0071】
画像解析部76は、撮像装置66が撮像した画像データを取得し、画像データの各々の画素の輝度値に基づいてパーティクルを検出する。画像解析部76は、例えば、所定の閾値を超える輝度値の画素についてパーティクルが含まれると判定し、所定の閾値未満の輝度値の画素についてパーティクルが含まれないと判定する。画像解析部76は、輝度値の時間的な変化量に基づいてパーティクルを検出してもよい。画像解析部76は、撮像装置66によって生成される撮像画像からパーティクルが含まれない場合の背景画像を差し引いた差分画像を生成し、差分画像の輝度値に基づいてパーティクルを検出してもよい。パーティクルが含まれない場合の背景画像は、例えば撮像装置66によって生成される撮像画像に基づいて生成され、記憶部74に記憶される。
【0072】
画像解析部76は、撮像画像の画素ごとにパーティクルを検出するのではなく、撮像画像に含まれる微小領域ごとにパーティクルを検出してもよい。パーティクルの検出単位となる微小領域は、複数の画素を含むように設定され、例えば、5×5の画素を含むように設定される。画像解析部76は、撮像画像を複数の微小領域に分割し、微小領域を構成する複数の画素の輝度値を合計または平均することで、微小領域ごとに輝度の合計値または平均値を算出する。画像解析部76は、例えば、微小領域ごとの輝度の合計値または平均値が所定の閾値を超える場合、微小領域にパーティクルが含まれると判定する。画像解析部76は、撮像画像から背景画像を差し引いた差分画像を複数の微小領域に分割し、差分画像におおける微小領域の輝度の合計値または平均値に基づいてパーティクルを検出してもよい。複数の画素の輝度値の合計または平均に基づくことで、パーティクルからの散乱光を積分して検出することができ、パーティクルの検出精度を高めることができる。
【0073】
画像解析部76は、画素ごとまたは微小領域ごとにパーティクル検出の閾値を異ならせてもよい。画像解析部76は、パーティクルが含まれない場合に撮像した複数の背景画像に基づいて画素ごとまたは微小領域ごとの閾値を算出してもよい。複数の背景画像は、例えば、撮像装置66によって異なるタイミングに撮像され、時間経過によって輝度値がわずかに変動するような揺らぎを有する。画像解析部76は、特定の画素または特定の微小領域について複数の背景画像における輝度値の平均aおよび標準偏差σを算出し、平均aと標準偏差σを用いて閾値を決定する。例えば、平均aに標準偏差σのk倍を加えた輝度値を閾値tとしてもよく、t=a+kσと表されてもよい。複数の背景画像における輝度値の平均aおよび標準偏差σに基づいて閾値tを決めることで、パーティクルの発生に関係しない輝度値の変化に起因するパーティクルの誤検出を防ぐことができる。閾値tは、例えば50~100枚程度の背景画像における平均aおよび標準偏差σに基づいて決定できる。
【0074】
画像解析部76は、微小領域ごとに個別にパーティクルを検出するのではなく、隣接する複数の微小領域の輝度値が所定の閾値を超える場合にパーティクルを検出してもよい。画像解析部76は、輝度値が所定の閾値を超える微小領域をパーティクルが含まれる可能性がある「候補領域」とする。画像解析部76は、候補領域の周囲に別の候補領域が所定数以上存在する場合、それらの候補領域にパーティクルが含まれると判定する。画像解析部76は、候補領域の周囲に存在する別の候補領域が所定数未満である場合、それらの候補領域にパーティクルが含まれないと判定する。例えば、候補領域を中心とする5×5の微小領域の集合で構成される判定範囲内に三以上の候補領域が存在する場合、判定範囲内に含まれる三以上の候補領域をパーティクルの検出領域とする。一方、候補領域を中心とする5×5の微小領域の集合で構成される判定範囲内に二以下の候補領域が存在する場合、判定範囲内に含まれる二以下の候補領域をパーティクルの検出領域とせずに候補領域のままとする。
【0075】
図8は、パーティクルの検出領域84を模式的に示す図であり、撮像画像80に基づいて特定される候補領域82および検出領域84の分布の一例を示している。
図8において、候補領域82を細実線の枠で示し、検出領域84を太実線の枠で示し、5×5の微小領域の集合で構成される判定範囲86を破線で示している。図示されるように、候補領域82は、撮像画像80の全体にわたって分布している。多くの候補領域82は、他の候補領域82から離れて単発的に存在する。一部の候補領域82は、他の候補領域82の近くに密集して存在する。画像解析部76は、密集して存在する候補領域82をパーティクルの検出領域84とする。具体的には、ある候補領域82を中心とする5×5の微小領域の集合で構成される判定範囲86内に三以上の候補領域82が存在する場合に、その三以上の候補領域82の全てを検出領域84とする。
図8の例では、21個の検出領域84が検出されている。
【0076】
図8に示すように、密集する候補領域82をパーティクルの検出領域84とすることで、パーティクルの発生に関係しない輝度値の変化に起因するパーティクルの誤検出を防ぐことができる。ビームライン装置14や注入処理室16内で発生するパーティクルは、位置を変えずに浮遊するのではなく、速度を有して飛行することが多い。移動するパーティクルを撮像装置66で撮像した場合、パーティクルの飛行軌跡が撮像され、飛行軌跡に対応する複数の領域の輝度値が大きくなる。パーティクルの飛行軌跡に対応する複数の領域は、互いに隣接して存在するため、密集する候補領域82を検出領域84としてパーティクルの検出対象とすることで、飛行するパーティクルを精度良く検出することができる。
【0077】
画像解析部76は、パーティクルの検出結果に基づいてパーティクルの量、速度または大きさを推定してもよい。画像解析部76は、パーティクルが検出された画素または微小領域の数に基づいて、パーティクルの量を推定してもよい。画像解析部76は、パーティクルが検出された画素または微小領域の数をパーティクルの個数としてもよい。パーティクル測定装置62とは別の装置を用いてパーティクルの個数をあらかじめ測定し、パーティクルが検出された画素または微小領域の数とパーティクルの個数の相関関係を記憶部74に記憶しておいてもよい。画像解析部76は、記憶部74に記憶される相関関係に基づいてパーティクルの個数を推定してもよい。画像解析部76は、記憶部74に記憶される相関関係に基づいてウェハWに到達しうるパーティクルの個数を推定してもよい。
【0078】
画像解析部76は、パーティクルの挙動を解析することでパーティクルの速度を推定してもよい。例えば、パーティクルの飛行軌跡に対応する複数の検出領域84の範囲に基づいてパーティクルの速度を推定してもよい。例えば、複数の検出領域84が連なる長さを撮像装置66の撮像周期に対応する時間で割ることで、パーティクルの速度を推定してもよい。画像解析部76は、複数フレームの撮像画像80を比較することで、パーティクルの飛行軌跡を特定してパーティクルの速度を推定してもよい。例えば、時間的に隣接する二つのフレームの撮像画像80を比較し、各フレームの撮像画像80におけるパーティクルの検出領域84の位置の変化を特定することでパーティクルの移動量を推定し、推定した移動量を撮像装置66の撮像周期に対応する時間で割ることでパーティクルの速度を推定してもよい。画像解析部76は、ステレオカメラなどの複数の撮像装置66によって生成される複数の撮像画像80を用いてパーティクルの挙動を解析し、パーティクルの速度を推定してもよい。
【0079】
画像解析部76は、パーティクルの検出領域84の輝度値に基づいてパーティクルの大きさを推定してもよい。パーティクルの散乱光強度は、パーティクルの大きさ(粒径)に依存するため、パーティクルの大きさと散乱光強度の相関関係をあらかじめ測定し、相関関係を記憶部74に記憶しておくことで、散乱光強度(すなわち輝度値)からパーティクルの大きさを推定できる。画像解析部76は、複数の電極間においてパーティクルに作用する電場Eと、パーティクルの加速度αとに基づいてパーティクルの大きさを推定してもよい。
【0080】
条件管理部77は、撮像装置66によって生成される撮像画像を記憶部74に蓄積し、蓄積した撮像画像に基づいて画像解析部76が用いるパーティクルの検出条件を決定する。条件管理部77は、画像解析部76によってパーティクルが含まれないと判定された撮像画像を背景画像として蓄積しておく。条件管理部77は、蓄積した複数の背景画像に基づいて複数の背景画像における画素ごとまたは微小領域ごとの平均aと標準偏差σを算出し、パーティクルを検出するための閾値tを決定する。条件管理部77は、新たに取得する背景画像に基づいて閾値tを更新してもよい。背景画像は、イオン注入装置10の運用によって時間経過ともに変化しうる。そのため、新たに取得する背景画像に基づいて閾値tを更新することで、任意の時点での背景画像との差分に基づいてパーティクルを精度良く検出できる。
【0081】
条件管理部77は、イオン注入装置10の動作状態に応じてパーティクルの検出条件を変更してもよい。条件管理部77は、複数の検出条件を記憶部74に記憶しておき、イオン注入装置10の動作状態に応じて検出条件を変更してもよい。条件管理部77は、イオン注入装置10の動作状態に応じて背景画像を分類して記憶しておき、特定の動作状態に対応する複数の背景画像に基づいて閾値tなどのパーティクルの検出条件を決定してもよい。イオン注入装置10の動作状態に応じて、閾値tに用いる標準偏差σの倍率kを切り替えてもよい。
【0082】
条件管理部77は、イオンビームのビーム電流量に応じて検出条件を変更してもよい。イオンビームのビーム電流量が大きい場合、真空チャンバ内の残留ガスとイオンビームの相互作用に起因する発光現象における発光量が大きくなり、背景画像の全体または一部の輝度値が上昇することがある。そこで、イオンビームのビーム電流量に応じてパーティクルの検出に用いる背景画像を切り替えてもよい。上述の発光現象における発光量に応じて背景画像を切り替えることで、発光現象に起因するパーティクルの誤検出を防止できる。
【0083】
条件管理部77は、輸送されるイオンビームの輸送状態に応じて検出条件を変更してもよい。条件管理部77は、イオンビームがビーム走査部32によって往復走査されていないアンスキャン状態であるか、イオンビームがビーム走査部32によって往復走査されているスキャン状態であるかに応じて検出条件を切り替えてもよい。条件管理部77は、ビームパーク装置24やインジェクタファラデーカップ28によってイオンビームが途中で遮られている状態であるか否かに応じて検出条件を切り替えてもよい。イオンビームの輸送状態に応じて上述の発光現象の影響範囲が異なることから、イオンビームの輸送状態に応じて背景画像を切り替えることで、発光現象に起因するパーティクルの誤検出を防止できる。
【0084】
条件管理部77は、ビームライン装置14および注入処理室16の少なくとも一方の内部圧力の変化に応じて検出条件を変更してもよい。真空排気系を動作させたり、装置内にガスを導入したり、ウェハWを搬送したりする場合、ビームライン装置14内や注入処理室16内でガスの流れが生じ、ガスの流れに沿ってパーティクルが飛散したり、パーティクルの飛散量が増えたりすることがある。また、ビームライン装置14内や注入処理室16内にガスを導入することで、導入したガスとイオンビームの相互作用に起因する発光現象の発光量が変化することがある。このような圧力の変化に応じて、検出条件を切り替えることで、パーティクルをより適切に検出することができる。
【0085】
条件管理部77は、イオンビームに印加される電場の大きさに応じて検出条件を変更してもよい。例えば、ADコラム、ビーム平行化部34、角度エネルギーフィルタ36などの複数の電極に印加される電圧値に応じて検出条件を切り替えてもよい。イオンビームに印加される電場が大きい場合、電場によってパーティクルが加速されたり、電極間で発生する放電によってパーティクルが飛散したりすることがあり、パーティクルの挙動に影響を与える。複数の電極に印加される電圧値に応じて検出条件を切り替えることで、パーティクルをより適切に検出することができる。
【0086】
条件管理部77は、照明装置64の動作を切り替えることでパーティクルの検出条件を変更してもよい。条件管理部77は、実際に測定したパーティクルの量が多い場合や、パーティクルの量が多くなりやすいことが予想される動作状態である場合、照明装置64にシート状の照明光Lを照射させるようにしてもよい。シート状の照明光Lを用いて照射範囲を制限することで、撮像画像において高輝度となる画素または微小領域の数を制限することができ、パーティクルをより適切に検出できる。条件管理部77は、実際に測定したパーティクルの量が少ない場合や、パーティクルの量が少なくなりやすいことが予想される動作状態である場合、照明装置64にボックス状の照明光Lを照射させるようにしてもよい。ボックス状の照明光Lを用いて照射範囲を拡張することで、より広い範囲を測定対象とすることができ、パーティクルをより適切に検出できる。
【0087】
モニタ部78は、画像解析部76によって解析されるパーティクルの有無、量、速度および大きさといった発生状況を記憶部74に記憶しておき、パーティクルの発生状況の時間変化をモニタしてイオン注入装置10の状態に異常がないか否かを診断する。モニタ部78は、例えば、パーティクルの量が突発的に増加した場合、イオン注入装置10の状態に異常が発生したとみなして注入処理を中止したり、アラートを出力したりしてもよい。モニタ部78は、パーティクルの量が時間経過とともに単調に増加し、所定の閾値を超えた場合、ユーザにイオン注入装置10のメンテナンスを促してもよい。モニタ部78は、イオン注入装置10のメンテナンス後に解析されるパーティクルの発生状況に基づいて、注入処理を実行可能な環境であるか否かを診断してもよい。モニタ部78は、診断結果に基づいてイオン注入装置10のビームラインのクリーニング処理の実行をユーザに促してもよい。
【0088】
モニタ部78は、注入レシピごとにパーティクルの発生状況を診断してもよい。モニタ部78は、注入レシピごとにパーティクルの発生状況を記憶部74に記憶し、注入レシピに応じてイオン注入装置10の状態に異常があるとみなす閾値を個別に設定してもよい。モニタ部78は、特定の注入レシピにしたがった注入処理の実行時に、同じ注入レシピを実行した場合の過去のパーティクルの発生状況を基準として、任意の時点でのパーティクルの発生状況を診断してもよい。
【0089】
モニタ部78は、注入レシピごとに記憶部74に記憶しておいたパーティクルの発生状況を分析し、パーティクルが発生しやすい注入条件を抽出してもよい。例えば、パーティクルが発生しやすい注入条件として、イオン種、ビームエネルギー、ビーム電流、ビームサイズ、電極電圧などの注入条件を抽出して表示してもよい。また、パーティクルが発生しやすい注入条件または注入レシピが特定された場合、その特定された注入条件または注入レシピを用いた注入処理を実行しようとする際にアラートを出力してもよい。
【0090】
モニタ部78は、画像解析部76によって解析されるパーティクルの挙動に基づいてパーティクルの発生源を推定してもよい。例えば、特定方向に進行するパーティクルの量が多い場合、パーティクルの進行方向の上流側にパーティクルの発生源があることを推定してもよい。モニタ部78は、複数のパーティクル測定装置62がビームラインAの異なる位置に対応して設けられる場合、各位置におけるパーティクルの発生状況に基づいてパーティクルの発生源を推定してもよい。例えば、ビームラインAの上流側でパーティクルの量が増加した後に、ビームラインAの下流側でもパーティクルの量が増加した場合、ビームラインAの上流側にパーティクルの発生源があることを推定してもよい。
【0091】
以上、本発明を上述の各実施の形態を参照して説明したが、本発明は上述の各実施の形態に限定されるものではなく、各実施の形態の構成を適宜組み合わせたものや置換したものについても本発明に含まれるものである。また、当業者の知識に基づいて各実施の形態における組合せや処理の順番を適宜組み替えることや各種の設計変更等の変形を実施の形態に対して加えることも可能であり、そのような変形が加えられた実施の形態も本発明の範囲に含まれ得る。
【符号の説明】
【0092】
10…イオン注入装置、14…ビームライン装置、16…注入処理室、60…制御装置、62…パーティクル測定装置、64…照明装置、66…撮像装置、70…注入制御部、72…パーティクル解析部、74…記憶部、76…画像解析部、77…条件管理部、78…モニタ部、80…撮像画像、82…候補領域、84…検出領域、86…判定範囲、A…ビームライン、B…イオンビーム、L…照明光、V…画角、W…ウェハ。