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  • 特開-板材接合方法、及び板材接合装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022053729
(43)【公開日】2022-04-06
(54)【発明の名称】板材接合方法、及び板材接合装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/301 20060101AFI20220330BHJP
   H01L 21/683 20060101ALI20220330BHJP
【FI】
H01L21/78 N
H01L21/68 N
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020160524
(22)【出願日】2020-09-25
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2021-04-07
(71)【出願人】
【識別番号】399028078
【氏名又は名称】ハイソル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】特許業務法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】永洞 宏行
【テーマコード(参考)】
5F063
5F131
【Fターム(参考)】
5F063AA33
5F063AA35
5F063CA04
5F063DD87
5F063DD93
5F063FF05
5F063FF11
5F131AA02
5F131BA52
5F131CA32
5F131CA33
5F131DA33
5F131DA42
5F131DB22
5F131DB62
5F131EA05
5F131EA07
5F131EB22
5F131EB23
5F131EB81
5F131EB82
5F131EC62
5F131EC72
5F131EC73
(57)【要約】
【課題】板材の剥離を容易に行う。
【解決手段】冷却装置3に載置された台座1とウェハとを接合させる板材接合方法であって、冷却装置3を用いて冷却された台座1に向けて熱風を吹き付け、結露させる吹き付け工程と、吹き付け工程の後、結露した台座1の上にウェハを載置する載置工程と、載置工程の後、台座1とウェハとを氷結させる氷結工程とを備える。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
台座と板材とを接合させる板材接合方法であって、
前記台座の上面に結露を発生させる結露工程と、
結露した前記台座の上面に前記板材を載置する載置工程と、
前記載置工程の後、前記台座と前記板材との間に介在する結露水を氷結させる氷結工程と
を備えることを特徴とする板材接合方法。
【請求項2】
請求項1に記載の板材接合方法であって、
前記結露工程では、前記台座の下面を氷点以下まで冷却させた状態で、水蒸気を含む気体を前記台座の上面に吹き付け、前記台座の上面を氷点より高く且つ露点以下の温度に維持する
ことを特徴とする板材接合方法。
【請求項3】
請求項2に記載の板材接合方法であって、
前記気体は、室温よりも高温に加熱された空気であり、
前記載置工程では、前記加熱された空気を吹き付けた状態で前記板材を載置し、載置後に前記加熱された空気の吹きつけを停止し、
前記氷結工程では、前記台座の下面を氷点以下まで冷却させた状態を維持する
ことを特徴とする板材接合方法。
【請求項4】
請求項2又は請求項3に記載の板材接合方法であって、
前記台座は、前記板材と同一の材質であり、
前記氷結工程の後、前記板材を切断する切断工程をさらに備える
ことを特徴とする板材接合方法。
【請求項5】
台座と板材とを接合する板材接合装置であって、
前記台座を冷却する冷却装置と、
冷却された前記台座に向けて水蒸気を含む気体を吹き付ける空気吹付装置と、
結露した前記台座の上に前記板材を載置する載置装置とを備え、
前記冷却装置は、前記台座を氷点以下まで冷却可能である
ことを特徴とする板材接合装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、板材接合方法、及び板材接合装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、半導体ウェハをダイシングボンディングフィルムに貼付し、このダイシングダイボンディングフィルムの背面を吸着テーブルに吸着した状態で、ダイシングブレードを用いて半導体ウェハの上面をダイシングする技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011-216529号公報(図2
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の技術では、板材としての半導体ウェハを、ダイシングボンディングフィルム(ダイシングテープ)に貼り付けている。そのため、半導体ウェハを裁断した各々のICチップをダイシングテープから剥離する手間が掛かる。つまり、ダイシングテープの粘着を弱くするUV光を照射したり、ICチップを突き上げたりする必要がある。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、板材の剥離を容易に行うことができる板材接合方法、及び板材接合装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するために、本発明は、冷却装置に載置された台座と板材(例えば、半導体ウェハ)とを接合させる板材接合方法であって、前記台座の上面に結露を発生させる結露工程と、結露した前記台座の上面に前記板材を載置する載置工程と、前記載置工程の後、前記台座と前記板材との間に介在する結露水を氷結させる氷結工程とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、板材の剥離を容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の実施形態である板材接合装置の構成図である。
図2】本発明の実施形態である板材接合装置が実行する板材接合方法を説明する説明図(1)である。
図3】本発明の実施形態である板材接合装置が実行する板材接合方法を説明する説明図(2)である。
図4】本発明の実施形態である板材接合装置が実行する板材接合方法を説明する説明図(3)である。
図5】本発明の実施形態である板材接合装置が実行する板材接合方法を説明する説明図(4)である。
図6】本発明の実施形態である板材接合装置が実行する個片化方法を説明する説明図(1)である。
図7】本発明の実施形態である板材接合装置が実行する個片化方法を説明する説明図(2)である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態(以下、「本実施形態」と称する)につき詳細に説明する。なお、各図は、本実施形態を十分に理解できる程度に、概略的に示してあるに過ぎない。また、各図において、共通する構成要素や同様な構成要素については、同一の符号を付し、それらの重複する説明を省略する。
【0010】
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態である板材接合装置の構成図である。
板材接合装置10は、XYZステージ6と、XYZステージ6の上に設けた加熱冷却装置3と、ドライヤ4と、ダイシングブレード5と、コレット11と、これらを制御する制御装置9とを備える。板材接合装置10は、台座1(図2)及び板材である半導体ウェハ2(図4)を載置装置としてのコレット11で加熱冷却装置3の上面に載置し、載置された台座1と半導体ウェハ2とを氷結させて、接合するものである。
【0011】
台座1は、板材であり、材質を問わないが、裁断時(SP5)のことを考慮して、半導体ウェハ2と同一素材(例えば、Si基板)が好ましい。半導体ウェハ2には、複数のICチップ2a,2b,2c(図6,7)が形成されている。半導体ウェハ2は、台座1との接合後(SP5(図6),SP6(図7))に裁断される。
【0012】
加熱冷却装置3は、例えば、ペルチェ装置である。加熱冷却装置3は、氷点下(例えば、-10℃未満)まで冷却可能であり、常温以上(例えば、40℃以上)まで加熱可能である。これにより、加熱冷却装置3に載置された台座1の温度は、氷点以下にさせられる。ドライヤ4は、室温(常温)の大気(水蒸気を含む気体)を加熱して、室温よりも高温の温風または熱風(例えば、約60℃の熱風)を対象物(台座1)に吹き付けるものである。このとき、台座1が露点温度以下にさせられるように、加熱冷却装置3の温度やドライヤ4の熱風温度を設定する。ダイシングブレード5は、円盤状のカッターであり、例えば、半導体ウェハ2のダイシングを行う。
【0013】
XYZステージ6は、加熱冷却装置3をXYZ方向に移動させるものである。なお、XYZステージ6は、加熱冷却装置3でなく、ドライヤ4やダイシングブレード5等を移動させても構わない。コレット11は、吸着孔11aが形成されており、半導体ウェハ2を吸着し、搬送するものである。XYZステージ6との組合せにより、コレット11は、半導体ウェハ2を台座1に載置することができる。制御装置9は、加熱冷却装置3、ドライヤ4、ダイシングブレード5、XYZステージ6及びコレット11の吸着ポンプ(不図示)を制御する。
【0014】
(接合方法)
図2(SP1)~図5(SP4)は、板材接合装置10が実行する板材接合方法を説明する説明図である。図6(SP5)及び図7(SP6)は、板材接合装置10が実行する個片化方法を説明する説明図である。以降の説明では、XYZステージ6による移動を省略する。
【0015】
図2(SP1)の工程では、板材接合装置10を利用して、あるいは作業者の手作業により、加熱冷却装置3の上面に台座1を載置する。このとき、加熱冷却装置3の上面温度T1は、氷点以下(例えば、0℃~-10℃)とする。これに伴い、台座1の温度(下面温度T2,上面温度T3)も氷点下まで低下する。なお、半導体ウェハ2の大きさは、台座1よりも小さい。
【0016】
図3(SP2)の工程では、ドライヤ4を用いて、台座1の上方から大気(水蒸気を含む気体)を吹き付ける。台座1の下面を氷点以下に冷却しつつ、台座1の上面に露点以上の大気を吹き付けることにより、台座1の上面温度T3が0℃よりも高く、且つ露点温度以下に維持される。すると、台座1の上面が結露し、結露水7が発生する。このとき、ドライヤ4が大気中の水蒸気を台座1まで搬送し続けるので、結露水7が増量する。また、ドライヤ4の熱風により、台座1の上面温度T3と下面温度T2との温度差(T3-T2)が大きくなる。
【0017】
図4(SP3)の工程では、板材接合装置10又は作業者の手作業により台座1の上に半導体ウェハ2を載置し、その後、ドライヤ4による熱風の吹き付けを停止する。このとき、台座1と半導体ウェハ2との間に挟み込まれた結露水7は、表面張力により均一になる。なお、台座1の上面を基準とするドライヤ4の高さH(図3)は、少なくとも半導体ウェハ2を挿入可能な高さとする。
【0018】
図5(SP4)の工程では、熱風の吹き付け停止により(SP3)、直ちに、加熱冷却装置3が板材である台座1及び半導体ウェハ2を氷点以下まで冷却されるので、結露水7(図4)が氷8に変化する。これにより、台座1と半導体ウェハ2とが接合される。言い換えれば、制御装置9(図1)は、加熱冷却装置3の温度T1を結露水7が氷結する温度になるように制御する。
【0019】
(個片化方法)
図6(SP5)の工程では、台座1と半導体ウェハ2とが接合した状態で、ダイシングブレード5が半導体ウェハ2を複数のICチップ2a,2b,2cに裁断(切断)する。このとき、台座1と半導体ウェハ2とは、同一素材であるので、ダイシングブレード5は、半導体ウェハ2だけでなく氷8や台座1まで切り込んでも構わない。
【0020】
図7(SP6)の工程では、加熱冷却装置3の表面温度T1を室温以上(例えば、40℃以上)まで上昇させる。これにより、台座1と半導体ウェハ2との間に形成された氷8(図6)が解凍し、さらに解凍した水が乾燥する。結果的に、裁断された複数のICチップ2a,2b,2cが台座1から分離され、個片化が行われる。つまり、従来のように、ダイシングテープの粘着を弱くするUV光を照射したり、ICチップを突き上げたりする必要がない。
【0021】
以上説明したように、本実施形態の板材接合方法では、氷点以下に冷却された台座1の上方から熱風を吹き付けることにより(SP2(図3))、台座1の上面が0℃超、露点温度以下になり、台座1の上面に結露が発生する。次に、結露した台座1の上面の上に半導体ウェハ2を載置し、熱風の吹き付けを停止する(SP3(図4))。さらに、台座1及び半導体ウェハ2を氷点以下に冷却すると、結露により生じた結露水7(図4)が氷結し、氷8に変化する(SP4(図5))。すなわち、台座1と半導体ウェハ2との間に介在する結露水7が氷結することにより、台座1と半導体ウェハ2とが接合する。
【0022】
そして、台座1と半導体ウェハ2との接合状態で、ダイシングブレード5が半導体ウェハ2を複数のICチップ2a,2b,2cに裁断する(SP5(図6))。裁断後、加熱冷却装置3を加熱する(SP6(図7))。これにより、台座1と半導体ウェハ2との間の氷8(図6)が解凍、蒸発する。結果的に、複数のICチップ2a,2b,2cは、台座1から分離する。なお、図4(SP3)の状態で、加熱すれば、板材としての半導体ウェハ2が台座1から分離する。
【0023】
(第2実施形態)
前記実施形態では、加熱冷却装置3の温度T1を氷点下に保ちつつドライヤ4から熱風を吹き付けたが、ドライヤ4から室温(常温)の大気を対象物(台座1)に吹き付けることもできる。
【0024】
前記第1実施形態と同様に、図2(SP1)では、加熱冷却装置3の上に台座1を載置する。但し、半導体ウェハ2(図5)を台座1に載置したときの半導体ウェハ2の下面温度T4が氷点(0℃)超、露点温度未満になるように、加熱冷却装置3の上面温度T1を設定する点で相違する。
【0025】
図3(SP2)において、空気吹付装置としてのドライヤ4が台座1まで、大気中の水蒸気を搬送するので、風を吹き付けない無風状態のときよりも、台座1の上面に結露水7が多く発生する。そして、図5(SP5)において、加熱冷却装置3の上面温度T1を氷点下(例えば、0℃~-10℃)に設定することにより、台座1と半導体ウェハ2との間に介在する結露水7が氷結する。
【0026】
(変形例)
本発明は前記した実施形態に限定されるものではなく、例えば以下のような変形が可能である。
前記第1実施形態では、図2(SP1)の工程において、台座1の温度(下面温度T2及び上面温度T3)を氷点下まで低下させていた。しかしながら、第2実施形態のように、図2(SP1)の工程において、台座1の上面温度T3が氷点(0℃)超、露点温度未満になるようにし、図5(SP5)の工程において、加熱冷却装置3の上面温度T1を氷点下(例えば、0℃~-10℃)に設定し、結露水7を氷結させても構わない。
【符号の説明】
【0027】
1 台座
2 半導体ウェハ
2a,2b,2c ICチップ
3 加熱冷却装置
4 ドライヤ(空気吹付装置、熱風発生装置)
5 ダイシングブレード
6 XYZステージ(載置装置)
7 結露水
8 氷
9 制御装置
10 板材接合装置
11 コレット(載置装置)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【手続補正書】
【提出日】2021-01-28
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
台座と板材とを接合させる板材接合方法であって、
前記台座の下面を氷点以下まで冷却させた冷却状態で、水蒸気を含み、室温よりも高温に加熱された空気を前記台座の上面に吹き付け、前記台座の上面を氷点より高く且つ露点以下の温度に維持することにより、前記台座の上面に結露を発生させる結露工程と、
前記加熱された空気を吹き付けた状態で、結露した前記台座の上面に前記板材を載置し、載置後に前記加熱された空気の吹きつけを停止する載置工程と、
前記載置工程の後、前記台座の下面を前記冷却状態に維持することにより、前記台座と前記板材との間に介在する結露水を氷結させる氷結工程と
を備えることを特徴とする板材接合方法。
【請求項2】
請求項1に記載の板材接合方法であって、
前記台座は、前記板材と同一の材質であり、
前記氷結工程の後、前記板材を切断する切断工程をさらに備える
ことを特徴とする板材接合方法。
【請求項3】
台座と板材とを接合する板材接合装置であって、
前記台座の下面氷点以下の冷却状態まで冷却する冷却装置と、
冷却された前記台座に向けて、水蒸気を含み、室温よりも高温に加熱された空気を吹き付け、前記台座の上面を氷点より高く且つ露点以下の温度に維持することにより、前記台座の上面に結露を発生させる空気吹付装置と、
結露した前記台座の上に前記板材を載置する載置装置とを備え、
前記空気吹付装置は、前記板材の載置後に、前記加熱された空気の吹きつけを停止し、
前記冷却装置は、前記板材の載置後に、前記台座の下面を前記冷却状態に維持する
ことを特徴とする板材接合装置。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0006
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0006】
前記目的を達成するために、本発明は、冷却装置に載置された台座と板材(例えば、半導体ウェハ)とを接合させる板材接合方法であって、前記台座の下面を氷点以下まで冷却させた冷却状態で、水蒸気を含み、室温よりも高温に加熱された空気を前記台座の上面に吹き付け、前記台座の上面を氷点より高く且つ露点以下の温度に維持することにより、前記台座の上面に結露を発生させる結露工程と、前記加熱された空気を吹き付けた状態で、結露した前記台座の上面に前記板材を載置し、載置後に前記加熱された空気の吹きつけを停止する載置工程と、前記載置工程の後、前記台座の下面を前記冷却状態に維持することにより、前記台座と前記板材との間に介在する結露水を氷結させる氷結工程とを備えることを特徴とする。