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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022053731
(43)【公開日】2022-04-06
(54)【発明の名称】ユーザ監視システム
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/16 20060101AFI20220330BHJP
【FI】
A61B5/16 100
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020160526
(22)【出願日】2020-09-25
(71)【出願人】
【識別番号】000220066
【氏名又は名称】テイ・エス テック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100116034
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 啓輔
(74)【代理人】
【識別番号】100144624
【弁理士】
【氏名又は名称】稲垣 達也
(72)【発明者】
【氏名】和久 道信
【テーマコード(参考)】
4C038
【Fターム(参考)】
4C038PP03
4C038VB01
4C038VB31
(57)【要約】
【課題】椅子に座っているユーザの心理状態を出力するユーザ監視システムを提供する。
【解決手段】ユーザが座る椅子Cnに設けられた、ユーザの動作を特定するための測定値を取得するセンサ(圧力センサS1~S10)と、センサから測定値を取得してユーザの心理状態を推定する監視装置Mとを備えるユーザ監視システムSYSである。監視装置Mは、センサの測定値とユーザの心理状態との関係である推定基準データを予め記憶しており、測定値に基づいて、心理状態を算出する評価処理と、算出した心理状態を出力する出力処理とを実行する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザが座る椅子に設けられた、ユーザの動作を特定するための測定値を取得するセンサと、
前記センサから測定値を取得してユーザの心理状態を推定する監視装置とを備えるユーザ監視システムであって、
前記監視装置は、
前記センサの測定値とユーザの心理状態との関係である推定基準データを予め記憶しており、
前記センサの測定値に基づいて、心理状態を算出する評価処理と、
算出した心理状態を出力する出力処理とを実行することを特徴とするユーザ監視システム。
【請求項2】
前記センサは、複数の圧力センサを含んでなり、
前記推定基準データは、前記複数の圧力センサの測定値同士のバランスおよび/または測定値の変化にユーザの心理状態を対応付けてあることを特徴とする請求項1に記載のユーザ監視システム。
【請求項3】
前記監視装置は、
複数の前記椅子に設けられた前記センサから測定値を取得し、
前記椅子に対応するユーザごとに、前記評価処理を実行し、
前記評価処理の結果、複数のユーザの第1割合以上が同じ心理状態であると判定した場合に、前記出力処理において、当該心理状態を複数のユーザ全体の心理状態として出力することを特徴とする請求項1または請求項2に記載のユーザ監視システム。
【請求項4】
前記心理状態は、ユーザが、聞いている話に集中しているか否かに関連する心理状態であることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のユーザ監視システム。
【請求項5】
前記推定基準データは、前記心理状態を、少なくとも、ポジティブおよびネガティブの2つにカテゴライズしてあることを特徴とする請求項4に記載のユーザ監視システム。
【請求項6】
前記監視装置は、
複数の前記椅子に設けられた前記センサから測定値を取得し、
前記椅子に対応するユーザごとに、前記評価処理を実行し、
前記評価処理の結果、複数のユーザの第2割合以上がポジティブな心理状態である場合には、前記出力処理において、ポジティブな評価結果を出力することを特徴とする請求項5に記載のユーザ監視システム。
【請求項7】
前記監視装置は、
複数の前記椅子に設けられた前記センサから測定値を取得し、
前記椅子に対応するユーザごとに、前記評価処理を実行し、
前記評価処理の結果、複数のユーザが第3割合を超えてネガティブな心理状態である場合には、前記出力処理において、ネガティブな評価結果を出力することを特徴とする請求項5または請求項6に記載のユーザ監視システム。
【請求項8】
前記監視装置は、ネガティブな評価結果として、休憩を促す表示を出力することを特徴とする請求項7に記載のユーザ監視システム。
【請求項9】
前記監視装置は、
複数の前記椅子に設けられた前記センサから測定値を取得し、
前記椅子に対応するユーザごとに、前記評価処理を実行し、
前記出力処理において、前記ユーザごとに、前記評価処理で推定した心理状態に応じた色を表示することを特徴とする請求項1から請求項8のいずれか1項に記載のユーザ監視システム。
【請求項10】
前記監視装置は、前記出力処理において、前記椅子の配置に対応した配置で、前記色を表示することを特徴とする請求項9に記載のユーザ監視システム。
【請求項11】
前記監視装置は、時刻と対応させた評価結果を蓄積して記憶することを特徴とする請求項1から請求項10のいずれか1項に記載のユーザ監視システム。
【請求項12】
前記監視装置は、
時刻と対応させて蓄積された評価結果を表示する第2出力処理であって、時間の経過に合わせて、時刻と対応した評価結果を読み出して表示することで、評価結果の経時的変化を動画として表示する第2出力処理を実行可能であることを特徴とする請求項11に記載のユーザ監視システム。
【請求項13】
前記椅子は、椅子本体と、前記椅子本体に載せられたシートクッションとを含み、前記センサは、前記シートクッションに設けられていることを特徴とする請求項1から請求項12のいずれか1項に記載のユーザ監視システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、椅子に座ったユーザの心理状態を推定して出力するユーザ監視システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、椅子に設けられたセンサを用いてユーザが着席しているか否かを検知して、授業などに出席しているか否かなどを管理する装置が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10-74275号公報
【特許文献2】特開2008-276633号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の装置は、着席の有無が管理できるだけであり、例えば、ユーザが、その授業に興味を持っているか否かなどを知ることはできなかった。
【0005】
そこで、本発明は、椅子に座っているユーザの心理状態を出力するユーザ監視システムを提供することを目的とする。
また、ユーザの心理状態を、視覚的に分かりやすく示すことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記した課題を解決する本発明は、ユーザが座る椅子に設けられた、ユーザの動作を特定するための測定値を取得するセンサと、センサから測定値を取得してユーザの心理状態を推定する監視装置とを備えるユーザ監視システムである。
監視装置は、センサの測定値とユーザの心理状態との関係である推定基準データを予め記憶しており、センサの測定値に基づいて、心理状態を算出する評価処理と、算出した心理状態を出力する出力処理とを実行する。
【0007】
このような構成によれば、椅子に設けられたセンサの測定値に基づいて、推定基準データに照らしてユーザの心理状態を推定し、出力することができる。例えば、授業やセミナーを聞いているユーザが座る椅子でこのシステムを構成すれば、聴講者の心理状態を示すことができる。
【0008】
センサは、複数の圧力センサを含んでいてもよい。この場合、推定基準データは、複数の圧力センサの測定値同士のバランスおよび/または測定値の変化にユーザの心理状態を対応付けておくことができる。
【0009】
推定基準データが複数の圧力センサの測定値との関連で規定してあることでユーザの心理状態を正確に推定することができる。
【0010】
監視装置は、複数の椅子に設けられたセンサから測定値を取得し、椅子に対応するユーザごとに、評価処理を実行し、評価処理の結果、複数のユーザの第1割合以上が同じ心理状態であると判定した場合に、出力処理において、当該心理状態を複数のユーザ全体の心理状態として出力することができる。
【0011】
前記した心理状態は、例えば、ユーザが、聞いている話に集中しているか否かに関連する心理状態である。
【0012】
推定基準データは、心理状態を、少なくとも、ポジティブおよびネガティブの2つにカテゴライズしてあってもよい。
【0013】
監視装置は、複数の椅子に設けられたセンサから測定値を取得し、椅子に対応するユーザごとに、評価処理を実行し、評価処理の結果、複数のユーザの第2割合以上がポジティブな心理状態である場合には、出力処理において、ポジティブな評価結果を出力することができる。
【0014】
監視装置は、複数の椅子に設けられたセンサから測定値を取得し、椅子に対応するユーザごとに、評価処理を実行し、評価処理の結果、複数のユーザが第3割合を超えてネガティブな心理状態である場合には、出力処理において、ネガティブな評価結果を出力することができる。
【0015】
監視装置は、ネガティブな評価結果として、休憩を促す表示を出力することもできる。
【0016】
監視装置は、複数の椅子に設けられたセンサから測定値を取得し、椅子に対応するユーザごとに、評価処理を実行し、出力処理において、ユーザごとに、評価処理で推定した心理状態に応じた色を表示してもよい。
【0017】
このような構成によれば、ディスプレイなどに表示された出力結果が、ユーザの心理状態を、ユーザごとに色で表示されるので、どの程度の人数のユーザがどのような心理状態であるかを視覚的に示すことができる。
【0018】
監視装置は、出力処理において、椅子の配置に対応した配置で、色を表示してもよい。
【0019】
このような構成によれば、椅子の配置に対応した配置で、ユーザの心理状態を表す色が表示されるので、椅子の配置との関係で、どのような心理状態のユーザがいるかを視覚的に示すことができる。
【0020】
監視装置は、時刻と対応させた評価結果を蓄積して記憶してもよい。
【0021】
そして、監視装置は、時刻と対応させて蓄積された評価結果を表示する第2出力処理であって、時間の経過に合わせて、時刻と対応した評価結果を読み出して表示することで、評価結果の経時的変化を動画として表示する第2出力処理を実行可能であることが望ましい。
【0022】
このような構成によれば、ユーザの心理状態の経時的変化を動画により分かりやすく示すことができる。
【0023】
椅子は、椅子本体と、椅子本体に載せられたシートクッションとを含み、センサは、シートクッションに設けられていてもよい。
【0024】
このような構成によれば、既存の椅子に、センサを有するシートクッションを載せることで、簡易にユーザ監視システムを導入することができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、椅子に設けられたセンサの測定値に基づいて、推定基準データに照らしてユーザの心理状態を推定し、出力することができる。
【0026】
また、推定基準データが複数の圧力センサの測定値との関連で規定してあることでユーザの心理状態を正確に推定することができる。
【0027】
また、ユーザごとに、評価処理で推定した心理状態に応じた色を表示することで、ディスプレイなどに表示された出力結果において、ユーザの心理状態が、ユーザごとに色で表示されるので、全体のうち、どの程度の人数のユーザがどのような心理状態であるかを視覚的に示すことができる。
【0028】
また、監視装置が、出力処理において、椅子の配置に対応した配置で、色を表示することで、椅子の配置に対応した配置で、ユーザの心理状態を表す色が表示されるので、椅子の配置との関係で、どのような心理状態のユーザがいるかを視覚的に示すことができる。
【0029】
そして、第2出力処理によって、評価結果の経時的変化を動画として表示することで、ユーザの心理状態の経時的変化を動画により分かりやすく示すことができる。
【0030】
また、既存の椅子に、センサを有するシートクッションを載せることで、簡易にユーザ監視システムを導入することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】一実施形態に係るユーザ監視システムの全体構成を説明する図である。
図2】監視装置のブロック図である。
図3】推定基準データの一例を示す表である。
図4】心理状態を時刻と関連付けて蓄積したデータの一例である。
図5】監視装置の処理の一例を示すフローチャートである。
図6図5に続くフローチャートである。
図7】監視装置に表示される画面の一例であり、セミナー開始後間もなくの状態である。
図8】監視装置に表示される画面の一例であり、セミナー開始後30分経過したときの状態である。
図9】監視装置に表示される画面の一例であり、セミナー開始後1時間経過したときの状態である。
図10】オンライン授業でユーザ監視システムを使用した場合の監視装置に表示される画面の一例である。
図11】椅子にシートクッションを載せて使う場合の変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
次に、一実施形態に係るユーザ監視装置について説明する。
図1に示すように、ユーザ監視システムSYSは、複数の椅子Cn(C1,C2,C3・・・)にそれぞれ設けられた複数の圧力センサS1~S10と、監視装置Mとを主に備えてなる。圧力センサS1~S10は、椅子Cnに座っているユーザの動作を特定するための測定値である圧力値を取得するセンサである。以下、圧力センサS1の圧力値はP1のように、圧力センサSnの圧力値はPnと示す。
【0033】
本実施形態においては、ユーザ監視システムSYSの活用事例として、セミナーを開催するセミナールームに各椅子Cnを設置し、セミナーの講師が監視装置Mを見て、各椅子Cnに座ったユーザの心理状態を把握する場合を説明する。本実施形態にいう心理状態は、ユーザが、聞いている話に集中しているか否かに関連する心理状態である。
【0034】
椅子Cn(C1,C2,C3・・・)は、それぞれ、ユーザが座る椅子であり、すべて互いに同じ構成を有している。椅子Cnは、座部CAと、背もたれCBと、通信制御部CNとを有している。椅子Cnには、圧力センサS1~S10が設けられている。圧力センサS1~S10は、椅子Cnに座るユーザに対向する座面に配置され、椅子Cnに座っているユーザからの圧力値を取得する。
【0035】
座部CAには、圧力センサS1~S6が設けられている。圧力センサS1~S3と、圧力センサS4~S6は、椅子Cnの左右中心に関して左右対称に配置されている。
圧力センサS1,S2,S4,S5は、座部CAにおけるユーザの臀部に対応する位置に配置されている。圧力センサS1,S2,S4,S5は、ユーザの臀部からの圧力を測定する第1クッションセンサを構成している。なお、第1クッションセンサは、圧力センサS1とS4のみ、または、圧力センサS2とS5のみを備えていてもよい。
圧力センサS2,S5は、それぞれ、圧力センサS1,S4の少し前に配置されている。
【0036】
圧力センサS3,S6は、ユーザの大腿の下に位置している。圧力センサS3,S6は、ぞれぞれ、圧力センサS2,S5から前方に大きく離れて配置されている。圧力センサS3,S6は、ユーザの大腿からの圧力値を測定する第2クッションセンサを構成している。
【0037】
背もたれCBには、圧力センサS7~S10が設けられている。圧力センサS7,S8と、圧力センサS9,S10は、椅子Cnの左右中心に関して左右対称に配置されている。圧力センサS7,S9は、ユーザの腰の後ろに対応する位置に設けられている。圧力センサS7,S9は、ユーザの腰からの圧力を測定する第1バックセンサを構成している。
【0038】
圧力センサS8,S10は、それぞれ、圧力センサS7,S9から上方に離れて配置されている。圧力センサS8,S10は、ユーザの背中の上部に対応して位置している。圧力センサS8,S10は、ユーザの背中の上部からの圧力値を測定する第2バックセンサを構成している。
【0039】
通信制御部CNは、圧力センサS1~S10と接続されている。通信制御部CNは、ネットワーク20を介して監視装置Mと通信可能であり、圧力センサS1~S10から取得した圧力値を監視装置Mに送信する。通信制御部CNは、例えば、座部CAの下面や、背もたれCBの内部などに配置されている。ネットワーク20は、インターネットであってもよいし、LAN(Local Area Network)であってもよく、特に限定されない。
【0040】
監視装置Mは、各椅子Cnの圧力センサS1~S10から測定値を取得してユーザの心理状態を推定する装置であり、CPU、ROM、RAMなどを有するパーソナルコンピュータ、タブレットコンピュータまたはスマートフォンなどからなる。監視装置Mは、コンピュータに所定のプログラムを導入し、実行することによって実現される。監視装置Mは、ディスプレイDSPを有している。
【0041】
図2に示すように、監視装置Mは、評価処理部110と、出力処理部120と、第2出力処理部130と、記憶部190とを有する。
【0042】
記憶部190には、圧力センサS1~S10の測定値とユーザの心理状態との関係である推定基準データを予め記憶してある。なお、図示は省略するが、記憶部190は、各椅子Cnから取得した圧力値P1~P10の値を、所定時間分、時刻と対応させて記憶している。
【0043】
例えば、図3に示すように、推定基準データは、圧力センサS1~S10の圧力値P1~P10に基づいた判定基準に対応させて、着座姿勢、心理状態、カラー/濃度、ポジティブ/ネガティブの情報が記憶されている。より具体的には、推定基準データは、複数の圧力センサS1~S10の測定値同士のバランスおよび/または測定値の変化にユーザの心理状態を対応付けてある。例えば、背もたれにかかる圧力値P7,P9が所定範囲の周波数で振動している場合には、着座姿勢は、「頷いている」で、心理状態は「1:納得/同意している」である。ここでの所定範囲の周波数は、例えば、0.5~2Hzである。なお、図3における「/」は、「または」の意味とする。そして、この場合のカラー/濃度は10であり、「ポジティブ」が対応して記憶されている。
【0044】
カラー/濃度は、ユーザが集中している度合いを色で示す場合の色の番号または濃さの意味である。本発明において、色は、色相の違いだけでなく、明度(濃度)の違い、彩度の違いのみで表現されてもよい。例えば、本実施形態では、図面の都合上、モノトーンの濃度(明度)の違いで色を示すが、このような濃度の違いによってユーザの心理状態を示すことも、本願にいう心理状態に応じた色を示すことに含まれる。
【0045】
本実施形態においては、濃度が高い(濃い)ほど、ユーザが聞いている話に集中していることを示すこととする。この色の使い方は、逆であってもよく、ユーザが聞いている話に集中しているほど、薄いトーンとしてもよい。
【0046】
本実施形態において、カラー/濃度は、集中している度合いを示すものであるので、その意味で、集中度合いの評価値であるということもできる。一方、着座姿勢は、基準を満たす場合に、どのような姿勢であるかを、発明の理解のために説明しているものであるので、監視装置Mとしては記憶していなくもよい。また、カラー/濃度は、ユーザの集中度合いを示す心理状態ということもできるので、監視装置Mは、図3の心理状態と、カラー/濃度のいずれか一方のみを記憶しているのでも構わない。
【0047】
推定基準データの他の基準について説明すると、例えば、背もたれCBの圧力値P7~P10の合計が0である場合には、着座姿勢は「前のめり」であり、心理状態は「2:強く興味を持っている」である。
【0048】
また、背もたれの圧力値P7~P10の合計が、ユーザの体重のX1%以下であり、かつ、椅子Cnの後部の圧力値の合計であるP1+P4が体重のX2%以上である場合には、着座姿勢は「深く座って背もたれにもたれている」であり、心理状態は、「3:リラックスしてまじめに聞いている」である。また、体重は、簡単に求める方法の一例として、圧力値P1~P6の合計とすることができる。
【0049】
また、椅子Cnの後部の圧力値の合計であるP1+P4が0であり、かつ、背もたれの圧力値P7~P10の合計が、ユーザの体重のX3%以上である場合には、着座姿勢は「浅く座ってのけぞり気味で背もたれにもたれている」であり、心理状態は「4:見下している、優位に立ちたい、疲れている」である。
【0050】
また、圧力P3が体重のX4%以下の状態と圧力P6が体重のX4%以下の状態が交互に発生している場合には、着座状態は「脚を頻繁に組み替える」であり、心理状態は「5:飽きている」である。X1%~X4%は、実験データを集めて適宜設定すればよい。また、上記の圧力P3が体重のX4%以下の状態と圧力P6が体重のX4%以下の状態が交互に発生している時間的間隔の範囲も、10分以内など、適宜な時間を設定することができる。
【0051】
また、圧力P3,P6の少なくとも一方が細かく振動している場合、着座姿勢は「貧乏ゆすり」であり、心理状態は、「5:飽きている、いらいらしている」である。ここでの振動は、例えば、周波数が1~5Hzである。
【0052】
推定基準データの基準は、これらに限られないが、例えば、複数の基準にあてはまらない場合、その他の場合として、着座姿勢は「普通に座っている」、心理状態は「10:普通」などとすることができる。
【0053】
本実施形態において、推定基準データは、心理状態を、ポジティブおよびネガティブの2つにカテゴライズしてある。例えば、心理状態1,2,3と10(普通)は、ポジティブとカテゴライズされ、心理状態4,5,6は、ネガティブとカテゴライズされている。
【0054】
評価処理部110は、圧力センサS1~S10の圧力値P1~P10に基づいて、各椅子Cnごとに、心理状態を算出する評価処理を実行する。具体的には、評価処理部110は、図3に示すような推定基準データの基準に圧力センサS1~S10の値を当てはめ、基準を満たすかどうかを判定する。評価処理部110は、心理状態として、心理状態の数字(図3における心理状態の先頭に記載された数字)を出力する。なお、心理状態の数字に対応した、ポジティブまたはネガティブの値も、心理状態の一つである。
【0055】
そして、評価処理部110は、図4に一例を示すように、時刻と対応させて、評価結果として心理状態の数字を蓄積して記憶させる。
また、本実施形態において、カラー/濃度の数字は、評価結果を表示する際の濃度であるとともに、ユーザがセミナーの話を聞いている集中度合いが高いほど大きい数字が割り当てられている。評価処理部110は、判定した心理状態に対応するカラー/濃度の値の算術平均を算出する。この算術平均は、セミナールームにいるユーザ全体の集中度合いを示す値(これを、「平均集中度AVE」とする。)となる。平均集中度AVEは、0~10の範囲の値で、5が普通の状態である。
【0056】
また、評価処理部110は、各椅子Cnのユーザの心理状態を推定する際に、各椅子Cnにユーザが着座しているか否かを判定する。例えば、評価処理部110は、圧力値P1~P6の合計が所定値未満であれば、着座しておらず、所定値以上であれば、着座していると判定することができる。また、圧力値P1~P6の合計が所定値以上であったとしても、各圧力値の経時的変化が所定値未満である、つまり、人が座っているとしては不自然に静止しすぎていると判定した場合には、着座していないと判定することができる。椅子Cnの上に、重い荷物が載っている場合などは、このように判定される。
【0057】
出力処理部120は、評価処理部110において算出した心理状態を、ディスプレイDSPに出力する出力処理を実行する。
出力処理部120は、出力処理において、ユーザごとに、評価処理で推定した心理状態に応じた色を表示する。より具体的には、出力処理部120は、セミナールームの椅子Cnの配置に対応した配置で、椅子Cnの画像を、心理状態に応じた色で表示する。なお、椅子Cnの画像は、詳細な椅子の形状の画像である必要はなく、単純な四角や丸の画像であってもよい。
【0058】
また、出力処理部120は、評価処理部110による評価処理の結果、複数のユーザの第1割合以上が同じ心理状態であると判定した場合に、出力処理において、当該心理状態を複数のユーザ全体の心理状態として出力する。ここでは、出力処理部120は、セミナーに出席しているユーザの30%以上を占める心理状態がある場合には、その心理状態をディスプレイDSPに表示する。すなわち、本実施形態では、第1割合を0.3としている。
【0059】
また、出力処理部120は、評価処理部110による評価処理の結果、複数のユーザの第2割合以上がポジティブな心理状態である場合には、出力処理において、ポジティブな評価結果を出力する。ここでは、ポジティブまたはネガティブの2つの心理状態のうち、セミナーに出席しているユーザの半数以上がポジティブであれば、ポジティブな心理状態として「集中しています」をディスプレイDSPに表示する。すなわち、本実施形態では、第2割合を0.5としている。
また、出力処理部120は、出席しているユーザの半分以上がポジティブである場合に、平均集中度AVEが6より大きければ、「集中しています」を強調して「よく集中しています」をディスプレイDSPに表示する。
【0060】
また、出力処理部120は、評価処理部110による評価処理の結果、複数のユーザが第3割合を超えてネガティブな心理状態である場合には、出力処理において、ネガティブな評価結果を出力する。ポジティブまたはネガティブの2つの心理状態のうち、セミナーに出席しているユーザの半数を超えてネガティブであれば、ネガティブな心理状態として「疲れています」をディスプレイDSPに表示する。すなわち、本実施形態では、第3割合を0.5としている。
また、出力処理部120は、出席しているユーザが半数を超えてネガティブである場合に、平均集中度AVEが4より小さければ、ネガティブな評価結果として、「休憩をとってください」などの休憩を促す表示を出力する。
【0061】
第2出力処理部130は、時刻と対応させて蓄積された評価結果を表示する。具体的には、時間の経過に合わせて、時刻と対応した評価結果を読み出して表示することで、評価結果の経時的変化を動画として表示する。第2出力処理は、セミナーが終わったあとに、監視装置Mに表示の指示を講師が入力することで実行される。
【0062】
以上のような監視装置Mによる、ユーザ監視時処理の一例を、図5および図6のフローチャートを参照して説明する。
図5に示すように、監視装置Mは、講師の操作によりユーザの監視を開始すると、各椅子Cnの圧力センサS1~S10から圧力値P1~P10を取得する(S101)。そして、各圧力値を時刻と関連付けて記憶部190に記憶させる(S102)。
【0063】
そして、監視装置Mは、ステップS110~S115で各椅子Cnについて心理状態を推定する。
具体的には、監視装置Mは、椅子IDを初期値である1とする(S110)。そして、監視装置Mは、該当する椅子IDについて、着座の判定を行い、着座されている場合には、出席者数Nをカウントする(S111)。次に、監視装置Mは、推定基準データと、圧力値に基づいて、心理状態を推定する(S112)。そして、監視装置Mは、推定した心理状態に対応した色で椅子を表示する(S113)。この際、着座していない椅子については、異なる線種で椅子Cnを表示する。次に、監視装置Mは、すべての椅子IDについて推定・表示の処理が終了したか判定し(S114)、終了していなければ(S114,No)椅子IDを更新して(S115)、ステップS111からの処理を繰り返す。
【0064】
一方、監視装置Mは、すべての椅子IDについて推定・表示の処理が終了したと判定した場合(S114,Yes)、心理状態を時刻と関連付けて記憶部190に記憶させる(S118)。また、監視装置Mは、ポジティブなユーザの数Npをカウントし、ディスプレイDSPに表示する(S120)。次に、監視装置Mは、濃度の平均値によって平均集中度AVEを算出し、表示する(S121)。さらに、監視装置Mは、出席者の30%以上を占める心理状態があるか否かを判定し(S122)、ある場合には(S122,Yes)、該当する心理状態をディスプレイDSPに表示させる(S123)。
【0065】
ステップS123の後、またはステップS122で、出席者の30%以上を占める心理状態がないと判定された後(No)、監視装置Mは、出席者数のうちポジティブな人の割合Np/Nが0.5以上であるか否かを判定する(S130)。監視装置Mは、Np/N≧0.5である場合(S130,Yes)、平均集中度AVEが6より大きいか否か判定し(S131)、AVE>6の場合(S131,Yes)、「よく集中しています」とディスプレイDSPに表示し(S132)、AVE>6ではない場合(S131,No)、「集中しています」をディスプレイDSPに表示する(S133)。
【0066】
一方、監視装置Mは、ステップS130においてNp/N≧0.5でない場合(S130,No)、平均集中度AVEが4より小さいか否か判定し(S135)、AVE<4の場合(S135,Yes)、「疲れています。休憩をとりましょう。」とディスプレイDSPに表示し(S136)、AVE<4ではない場合(S135,No)、「疲れています」をディスプレイDSPに表示する(S137)。
【0067】
ステップS132,S133,S136,S137の後、監視装置Mは、処理を終了するか否か判定し(S140)、終了しない場合(S140,No)、出席者数Nを0にリセットして(S141)、ステップS101からの処理を繰り返す。一方、監視装置Mは、講師が監視終了の操作をしたことなどにより処理を終了すると判定した場合(S140,Yes)、処理を終了する。
【0068】
このようなユーザ監視システムSYSによる、監視装置Mでの出力結果の例について説明する。
例えば、15時からセミナーを開始し、同時に監視装置Mでの監視を開始した場合、図7に示すように、監視装置MのディスプレイDSPには、各椅子Cnがセミナールーム内における椅子の配置に合わせて表示される。着座の判定の結果、ユーザが着座している椅子は実線で表示され、着座していない椅子は破線で表示される。ディスプレイDSPの右欄には、出席者数が22人であることが表示される。この一例のセミナールームでは、椅子は、C1~C24の24脚が4脚ずつ6列に配置され、ディスプレイDSP上でも同様の配列で表示される。なお、ディスプレイDSPには、下方に講師がいる教壇21が表示され、右側に窓22が表示されている。
【0069】
図7においては、セミナーが始まったばかりであるので、リラックスしてまじめに聞いているユーザ(C1,C5などの濃度5(深く座って背もたれにもたれている、普通に座っている)の椅子)が過半数を占め、心理状態として「リラックスしてまじめに聞いている」が右欄に表示される。また、右欄には、ポジティブな心理状態である人の割合が19/22(22人中19人の意味)と表示されている。さらに、平均集中度AVEが「Ave.4.68」と表示されている。ポジティブな人は、出席者の過半数を占め、AVEは6以下であるので、ディスプレイDSPの下欄には、「集中しています」が表示される。
【0070】
図8に示すように、セミナー開始から30分が経つと、例えば、セミナーの内容が興味あるものになって、C2,C7のように濃度8(前のめり)の椅子が増えるとともに、C5,C9の椅子のように、濃度10(頷いている)の椅子も散見されるようになる。このため、ポジティブな人の割合は20/22となり、AVEは、6.86となる。この場合には、ポジティブな人が出席者の過半数を占めるとともにAVEが6より大きいので、ディスプレイDSPの下欄には「よく集中しています」が表示される。また、濃度8の椅子が出席者の30%以上であるので、心理状態として、「強く興味を持っている」が右欄に表示される。
【0071】
図9に示すように、セミナー開始から1時間が経つと、例えば、セミナーの内容に新鮮さがなくなるとともに、ユーザが疲れてくるなどして、C7,C11のように濃度3(浅く座ってのけぞり気味で背もたれにもたれている)の椅子が増える。このため、ディスプレイDSPの右欄には、心理状態として「見下している、優位に立ちたい、疲れている」が表示される。また、C22のように濃度2(脚を頻繁に組み替える)や、C24のように濃度0(貧乏ゆすり)の椅子も散見されるようになる。このときには、ポジティブな人は半数未満であり、AVEが4未満であるので、ディスプレイDSPの下欄には、「疲れています。休憩をとりましょう。」が表示される。これにより、講師は、そろそろ休憩をとった方がよさそうであることを知ることができる。
【0072】
また、講師は、セミナーが終わった後、監視装置Mに、第2出力処理部130により、動画で心理状態を表示するように指示を入力すれば、監視装置Mは、例えば、セミナー開始から1分ごとなどのディスプレイDSPに表示された画像を数秒ごとに切り替えるなどして、今回のセミナーにおけるユーザの心理状態の変化を示す動画をディスプレイDSPに表示する。例えば、図7図8図9のような画像をコマ送りで表示する。これにより、講師は、自分のセミナーの展開の善し悪しを振り返り、次回のセミナーの改善に繋げることができる。
【0073】
このようにして、本実施形態のユーザ監視システムSYSによれば、椅子Cnに設けられた圧力センサS1~S10の測定値に基づいて、推定基準データに照らしてユーザの心理状態を推定し、ディスプレイDSPに出力することができるので、セミナーの聴講者(ユーザ)の心理状態を示すことができる。
【0074】
そして、推定基準データは、複数の圧力センサS1~S10の測定値との関連で規定してあるので、ユーザの心理状態を正確に推定することができる。
【0075】
また、ディスプレイDSPに表示された出力結果においては、ユーザの心理状態が、ユーザごとに色で表示されるので、どの程度の人数のユーザがどのような心理状態であるかを視覚的に示すことができる。
【0076】
また、ユーザ監視システムSYSの監視装置Mには、椅子Cnの配置に対応した配置で、ユーザの心理状態を表す色が表示されるので、椅子Cnの配置との関係で、どのような心理状態のユーザがいるかを視覚的に示すことができる。例えば、窓22に近いユーザは、飽きやすいとか、教壇21に近いユーザは、集中しやすいなど、椅子Cnの配置との関係でユーザの心理状態がどのようになりやすいか、を講師などは知ることができる。
【0077】
また、監視装置Mは、ユーザが話に集中しているか否かを示す心理状態の経時的変化を動画により表示することができるので、講師などはセミナーの展開の善し悪しを知ることができる。
【0078】
さらに、本実施形態では説明を省略したが、ユーザの性別、職業、年齢等を合わせて記録しておくことで、これらの要素によるセミナーの反応の違いを解析することもできる。
【0079】
以上に本発明の一実施形態について説明したが、本発明は前記した実施形態に限定されるものではない。具体的な構成については、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更が可能である。
【0080】
例えば、前記実施形態では、セミナールームでのセミナーでユーザ監視システムSYSを活用する場合について説明したが、オンライン授業において、ユーザ監視システムSYSを活用するのもよい。この場合、各生徒(ユーザ)が使用する椅子を前記した椅子Cnとしておく。一例として図10に示すように、教師が使用する監視装置MのディスプレイDSPには、オンライン授業に参加しているユーザが表示されるとともに、各ユーザが、着席している否か、どのような心理状態であるかを表示することができる。これにより、監視装置Mを使用する教師は、生徒の授業の納得具合や、疲れ具合を確認しながら授業を進めることができる。
【0081】
また、オンライン授業にユーザ監視システムSYSを活用することで、生徒の緊張感を維持できる。そして、顔を画面に映さない場合であっても、着座しているか否かが把握でき、履修の可否または証明に用いることもできる。さらに、生徒の顔を画像認証すれば、替え玉受講の抑制を図ることもできる。
【0082】
また、このようなオンライン授業において、椅子Cnを各生徒に配布するのは大げさであるため、図11に示すように、椅子本体C自体にセンサを設けなくてもよい。すなわち、椅子は、椅子本体Cと椅子本体Cに載せられたシートクッション30を含み、センサはシートクッション30に設けられていてもよい。例えば、シートクッション30に、6つの圧力センサS1~S6を設け、この圧力センサS1~S6の測定値を監視装置Mに送信するようにしてもよい。ユーザが持っている既存の椅子に、センサを有するシートクッション30を載せることで、簡易にユーザ監視システムSYSを導入することができる。
【0083】
また、前記実施形態では、出力処理において、ディスプレイDSPへの表示により心理状態を出力したが、音声や、点字ディスプレイにより心理状態を出力してもよい。
【0084】
前記実施形態においては、センサとして圧力センサを例示したが、センサは、ユーザの心理状態を推定するのに有効な、ユーザの動作を特定するための情報を取得するものであれば、圧力センサには限られない。例えば、静電容量センサや、圧力分布センサを用いてもよい。また、センサは、複数ではなく、1つであってもよい。
【0085】
また、本明細書に記載した実施形態および各変形例で説明した各要素は、適宜組み合わせて実施することが可能である。
【符号の説明】
【0086】
30 シートクッション
110 評価処理部
120 出力処理部
C 椅子本体
Cn 椅子
DSP ディスプレイ
M 監視装置
S1~S10 圧力センサ
SYS ユーザ監視システム
図1
図2
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図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11