(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022053793
(43)【公開日】2022-04-06
(54)【発明の名称】鉄筋養生カバー
(51)【国際特許分類】
E04G 21/24 20060101AFI20220330BHJP
【FI】
E04G21/24 B
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020160610
(22)【出願日】2020-09-25
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2021-01-20
(71)【出願人】
【識別番号】503289768
【氏名又は名称】大雅工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165755
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 典彦
(72)【発明者】
【氏名】松元 茂樹
(57)【要約】
【課題】 露出した2列の鉄筋群の先端を被覆することで作業者の安全を確保することができるとともに、保管や持ち運びの際にかさ張ることなく安定して積み重ねることが可能な鉄筋養生カバーを提供する。
【解決手段】 鉄筋養生カバー1は、露出した2列の鉄筋群の先端を被覆する被覆部材10と、被覆部材10の下方に取り付けられた脚部材14と、を備えてなり、被覆部材10は、2つの細長い断面略倒L字状のアングル材を相対して配設する。脚部材14は、前脚部15と、前脚部15に比べて突出長さの短い後脚部16と、を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
露出した2列の鉄筋群の先端を被覆する被覆部材と、被覆部材の下方に取り付けられた脚部材と、を備え、
前記被覆部材は、2つの細長い断面略倒L字状のアングル材を相対して配設され、
前記脚部材は、前記被覆部材の下方に突出する前脚部及び後脚部を有し、
前記後脚部は、前記前脚部の突出長さより短いことを特徴とする鉄筋養生カバー。
【請求項2】
前脚部及び後脚部は、棒体から形成され、被覆部材から下方に突出する縦棒部と、前記縦棒部間に鉄筋群の側面に当接する横棒部と、を有することを特徴とする請求項1記載の鉄筋養生カバー。
【請求項3】
被覆部材は、相対するアングル材の間に間隙部を有することを特徴とする請求項1記載の鉄筋養生カバー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄筋群の先端を被覆する鉄筋養生カバーに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、鉄筋コンクリート構造物の建設現場において、施工途中に複数本の鉄筋が垂直方向に露出し、その複数本の鉄筋からなる鉄筋群の先端は切断された状態であり、その周囲で施工作業する作業者が接触して怪我をするおそれがあった。そのため、作業者の安全を確保するために鉄筋の先端をフック状に折り曲げたりすることや、鉄筋の先端を被覆する種々の鉄筋養生カバーが用いられている。
【0003】
例えば、特許文献1及び2には、断面略逆U字状の樹脂成形からなるものが開示されている。また、特許文献3、7には、それぞれの鉄筋に対して差し込んで被覆するものが開示されている。また、特許文献4-7には、一列に露出した鉄筋群の先端を被覆する細長い断面略コ字状のものが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002-356997号公報
【特許文献2】実用新案登録第3082446号
【特許文献3】実開平4-114933号公報
【特許文献4】特許第6308535号
【特許文献5】実開平6-71774号公報
【特許文献6】実開昭59-63161号公報
【特許文献7】実開昭57-133752号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、近年、鉄筋コンクリート造の建造物の耐震性を向上するために、壁部分を構成する鉄筋は、少なくとも2本の鉄筋を並列させた櫛状の鉄筋群からなるものであり、例えば一辺10m程度とする壁部分において100本以上の鉄筋が垂直方向に配筋されている。そのため、施工途中において、この露出した鉄筋群の先端を被覆するために、従来の鉄筋養生カバーが大量に必要であるとともに、それらの鉄筋養生カバーの保管や持ち運び時にかさ張ってしまうため不便であった。
【0006】
上述した欠点に鑑み、本発明は、露出した鉄筋群の先端を被覆することで作業者の安全を確保することができるとともに、保管や持ち運びの際にかさ張ることなく安定して積み重ねることが可能な鉄筋養生カバーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記課題に鑑み、露出した2列の鉄筋群の先端を被覆する被覆部材と、被覆部材の下方に取り付けられた脚部材と、を備え、
前記被覆部材は、2つの細長い断面略倒L字状のアングル材を相対して配設され、
前記脚部材は、前記被覆部材の下方に突出する前脚部及び後脚部を有し、
前記後脚部は、前記前脚部の突出長さより短いことを特徴とするものである。
【0008】
また、上述した構成に加え、前脚部及び後脚部は、棒体から形成され、被覆部材から下方に突出する縦棒部と、前記縦棒部間に鉄筋群の側面に当接する横棒部と、を有することが好ましい。
【0009】
また、上述した構成に加え、被覆部材は、相対するアングル材の間に間隙部を有することが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
請求項1―3記載の発明によれば、2列の櫛状に露出した鉄筋群の先端を被覆することで作業者の安全を確保することができるとともに、保管や持ち運びの際にかさ張ることなく安定して積み重ねることが可能な鉄筋養生カバーとすることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の鉄筋養生カバーの実施形態の一例を示す斜視図である。
【
図3】
図1の鉄筋養生カバーを鉄筋群の先端に被覆した状態を示す(a)断面図、及び、(b)正面図である。
【
図4】複数個の鉄筋養生カバーを積み重ねた状態を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(実施形態)
本発明の鉄筋養生カバー1の実施形態の一例について
図1-4に基づいて詳細に説明する。
図1-4において、後述する脚部材14の長い前脚部15側を前方向とし、短い後脚部16側を後方向とする。また、鉄筋群3は、作業面2から垂直方向に2列の櫛状に複数本の鉄筋30、30が露出しているものである。なお、この作業面2は、作業員が施工作業を行う場所であり、例えば、床や天井を構成する鉄筋や型枠が配設されたものや、それらを埋設してコンクリートで固めたものである。
【0013】
鉄筋養生カバー1は、露出した2列の鉄筋群3の先端を被覆する被覆部材10と、被覆部材10の下方に取り付けられた脚部材14と、を主体として備えてなるものである。
【0014】
被覆部材10は、2つの細長い断面略倒L字状のアングル材を相対して断面逆U字状になるように配設されてなり、この被覆部材10全体の幅Aは、2列に並列するように露出した鉄筋30、30間の幅Wよりも狭くするものであり、鉄筋群3の先端を被覆した際に鉄筋群3の先端方向にかけてすぼまるよう被覆することで、鉄筋30、30が作業者に鉄筋30、30の先端が直接接触することを防ぐとともに、作業面2を広く確保することが可能である(
図3(a)参照)。
【0015】
この被覆部材10は、両アングル材の間において被覆部材10の左右両端まで一定の幅の空間からなる間隙部13を有するものであり、この間隙部13によって、鉄筋群3全体が被覆しているかどうかを上方から確認することが可能である。
【0016】
アングル材は、金属の板材を直角に折り曲げて形成したものであり、少なくとも鉄筋群3の先端の上面に位置する水平部11、11と、水平部11、11の一端より下方に垂下させ、鉄筋群3の側面に位置する垂下部12、12と、を有するものである。このアングル材は、より具体的には、作業者が一人で持ち運びを行って作業する観点から、全体の長手方向を183cm程度の長さとし、水平部11、11及び垂下部12、12を3cm程度の幅にすることが好適である。このとき、アングル材間の間隙部13は、水平部11、11の幅に対して半分程度の幅dを有するものであり、約1.5cm程度にすることが好適である。
【0017】
脚部材14は、金属材を主体としてなる棒体からなり、前脚部15及び後脚部16と、被覆部材10を取り付けるための取付部17を有する。この前脚部15及び後脚部16は、覆部材10の下方に突出した縦棒部15a、16aと、縦棒部15a、16a間に鉄筋群3の先端寄りの側面に当接する横棒部15b、16bと、を有するものであり、幅広の正面略U字状に形成されるものである。
【0018】
前脚部15は、被覆部材10とするアングル材の垂下部12、12の幅の約3倍程度の長さで下方に突出するよう縦棒部15aを有し、この縦棒部15aの突出長さは、後脚部の縦棒部16aに比べて長くすることで、先に鉄筋群3の先端付近の側面に当接することで、鉄筋群3全体の先端を被覆部材10内に収めるように揃えることができるため、鉄筋群3の先端を一度に被覆させることを容易に行うことができる。
【0019】
後脚部16は、前脚部15と同様に、アングル材の垂下部12、12の長さの2倍程度となるように下方に突出させて設けられた縦棒部16aを有し、この縦棒部16aの突出長さは、前脚部15の縦棒部15aに比べて短くすることで、鉄筋群3から取り外す際には、後脚部16から上方に持ち上げることで鉄筋群3の先端から離すことができる。
【0020】
棒体は、上述した前脚部15及び後脚部16の縦棒部15a、16a及び横棒部15b、16bを幅広の正面略U字状に折曲形成するために、折曲自在であり、かつ、繰り返しの使用に耐え得る耐久性を有するものであればよく、例えば、約6mm程度の細い直径の鋼線を使用することが好適である。
【0021】
なお、上述した脚部材14は、被覆部材10に対して複数設けてもよく、本実施形態では被覆部材10に対して前脚部15及び後脚部16を一対とする脚部材14を隣接しながら3つ溶接固定したものを例示している。
【0022】
また、鉄筋養生カバー1の保管や持ち運び時において複数個を重ねた状態を
図4に示している。このとき、鉄筋養生カバー1は、一方の脚部材14の前脚部15側に他方の脚部材14の後脚部16が重なるように、互い違いに組み合わせることで、実質的に細長い一つの箱体とすることができ、保管や持ち運び時に場所をとらずに、安定して積み重ねることが可能である。
【0023】
したがって、上述した鉄筋養生カバー1によって、作業面2から露出した鉄筋群3の先端を被覆することが可能である。このとき、脚部材14を棒体によって折曲形成したことで、結束バンド4等でそれぞれの鉄筋30、30を任意の位置で結束することができ、より一層の安定性を高めることができるとともに、この脚部材14の端部側の鉄筋群3を収束させた後に結束することで、簡易的な作業用の通路5を設けることが可能である。
【0024】
また、複数の鉄筋養生カバー1の保管や持ち運び時において、他の鉄筋養生カバー1を互い違いに重ねることで、場所を専有せず安定して積み重ねることができるため、保管や持ち運びをすることが可能である。
【0025】
上記の実施形態では本発明の好ましい実施形態を例示したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した範囲内で改善や変更が可能である。例えば、前脚部よりも後脚部を下方に突出するように変更することが可能である。
【符号の説明】
【0026】
1 鉄筋養生カバー、
10 被覆部材、11 水平部、12 垂下部、13 間隙部、
A 被覆部材全体の幅、d 間隙部の幅、
14 脚部材、15 前脚部、15a 縦棒部、15b 横棒部、
16 後脚部、16a 縦棒部、16b 横棒部、17 取付部、
2 作業面、
3 鉄筋群、30 鉄筋、W 鉄筋間の幅、
4 結束バンド、
5 通路。