IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ゼブラ株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-複数出没式筆記具 図1
  • 特開-複数出没式筆記具 図2
  • 特開-複数出没式筆記具 図3
  • 特開-複数出没式筆記具 図4
  • 特開-複数出没式筆記具 図5
  • 特開-複数出没式筆記具 図6
  • 特開-複数出没式筆記具 図7
  • 特開-複数出没式筆記具 図8
  • 特開-複数出没式筆記具 図9
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022053830
(43)【公開日】2022-04-06
(54)【発明の名称】複数出没式筆記具
(51)【国際特許分類】
   B43K 24/12 20060101AFI20220330BHJP
【FI】
B43K24/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020160674
(22)【出願日】2020-09-25
(71)【出願人】
【識別番号】000108328
【氏名又は名称】ゼブラ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000626
【氏名又は名称】特許業務法人英知国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】細木 真百合
【テーマコード(参考)】
2C353
【Fターム(参考)】
2C353HA02
2C353HA09
2C353HE01
2C353HE14
2C353HJ02
2C353HJ05
(57)【要約】
【課題】 リフィールの振れに起因する振動及び騒音を低減する
【解決手段】 軸筒10と、この軸筒内に収容された複数のリフィール20,30と、これら複数のリフィールをそれぞれ進退可能に挿通して軸筒10に内在されたリフィール案内部40とを具備し、外部操作により選択された前記リフィールが軸筒10の前端から突出するようにした複数出没式筆記具において、リフィール案内部40は、複数のリフィール挿通部41b1が設けられた本体部41と、リフィール挿通部41b1から前方へ突出して複数のリフィール20,30の間に位置する前側軸状部42とを有する。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸筒と、この軸筒内に収容された複数のリフィールと、これら複数のリフィールをそれぞれ進退可能に挿通して前記軸筒に内在されたリフィール案内部とを具備し、外部操作により選択された前記リフィールが前記軸筒の前端から突出するようにした複数出没式筆記具において、
前記リフィール案内部は、複数のリフィール挿通部が設けられた本体部と、前記リフィール挿通部から前方へ突出して前記複数のリフィールの間に位置する前側軸状部とを有することを特徴とする複数出没式筆記具。
【請求項2】
前進した際の前記リフィールが前記前側軸状部に接するようにしたことを特徴とする請求項1記載の複数出没式筆記具。
【請求項3】
前進した際の前記リフィールが前記前側軸状部に接して、前記前側軸状部が撓むようにしたことを特徴とする請求項2記載の複数出没式筆記具。
【請求項4】
前記前側軸状部が、前記リフィールよりも撓み易く形成されていることを特徴とする請求項1~3何れか1項記載の複数出没式筆記具。
【請求項5】
前記前側軸状部をポリプロピレンにより形成したことを特徴とする請求項1~4何れか1項記載の複数出没式筆記具。
【請求項6】
前記前側軸状部が前記リフィール挿通部の前端から突出する長さを、前記リフィールが前記リフィール挿通部の前端から突出する長さの1/5以上の長さであって、且つ前記リフィールの出没が前記前側軸状部により妨げられない長さに設定したことを特徴とする請求項1~5何れか1項記載の複数出没式筆記具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のリフィールを選択的に突出させるようにした複数出没式筆記具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の発明には、例えば特許文献1に記載されるように、軸筒と、この軸筒内に収容された複数のリフィールと、これら複数のリフィールをそれぞれ進退可能に挿通して前記軸筒内に固定されたデバイダーと、リフィールの後端側に接続されるとともに軸筒周壁を貫通して外部に露出するスライド操作体(押子)とを具備し、選択されたスライド操作体の前進により該スライド操作体に対応するリフィールを軸筒の前端から突出させるようにした筆記具がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005-111876号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、前記従来技術によれば、軸筒を手で握って振った際や、筆記時に軸筒が振られた際等に、軸筒内の複数のリフィールが径方向へ振れて軸筒内周面や隣接する他のリフィールに当接する等して、不快な振動や耳障りな音を発するおそれがある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
このような課題に鑑みて、本発明は、以下の構成を具備するものである。
軸筒と、この軸筒内に収容された複数のリフィールと、これら複数のリフィールをそれぞれ進退可能に挿通して前記軸筒に内在されたリフィール案内部とを具備し、外部操作により選択された前記リフィールが前記軸筒の前端から突出するようにした複数出没式筆記具において、前記リフィール案内部は、複数のリフィール挿通部が設けられた本体部と、前記リフィール挿通部から前方へ突出して前記複数のリフィールの間に位置する前側軸状部とを有することを特徴とする複数出没式筆記具。
【発明の効果】
【0006】
本発明は、以上説明したように構成されているので、リフィールの振れに起因する振動及び騒音を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明に係る出没式筆記具の一例を示す縦断面図であり、(a)は全てのリフィールが没入した状態、(b)は一本のリフィールが突出した状態を示す。
図2】同出没式筆記具について、ボールペン用のスライド操作体に対応する部分を拡大して示す図である。
図3】同出没式筆記具について、シャープペンシル用のスライド操作体に対応する部分を拡大して示す図であり、クリップを省略している。
図4】リフィール案内部の一例を斜め前方から視た斜視図である。
図5図4の(V)-(V)線に沿う断面図である。
図6】ボールペン用のスライド操作体の一例を示し、(a)は前方斜め上方から視た斜視図、(b)は後方斜め下方から視た斜視図、(c)は後端面図である。
図7】シャープペンシル用のスライド操作体の一例を示し、(a)は前方斜め上方から視た斜視図、(b)は後方斜め下方から視た斜視図、(c)は後端面図である。
図8】リフィール案内部の前側軸状部による振動抑制効果を示すグラフである。
図9】スライド操作体の当接部による振動抑制効果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本実施の形態では、以下の特徴を開示している。
第1の特徴は、軸筒と、この軸筒内に収容された複数のリフィールと、これら複数のリフィールをそれぞれ進退可能に挿通して前記軸筒に内在されたリフィール案内部とを具備し、外部操作により選択された前記リフィールが前記軸筒の前端から突出するようにした複数出没式筆記具において、前記リフィール案内部は、複数のリフィール挿通部が設けられた本体部と、前記リフィール挿通部から前方へ突出して前記複数のリフィールの間に位置する前側軸状部とを有する(図1(a)(b)参照)。
【0009】
第2の特徴は、前進した際の前記リフィールが前記前側軸状部に接するようにした(図1(b)参照)。
【0010】
第3の特徴は、前進した際の前記リフィールが前記前側軸状部に接して、前記前側軸状部が撓むようにした(図1(b)参照)。
【0011】
第4の特徴は、前記前側軸状部が、前記リフィールよりも撓み易く形成されている。
【0012】
第5の特徴は、前記前側軸状部をポリプロピレンにより形成した。
【0013】
第6の特徴は、前記前側軸状部が前記リフィール挿通部の前端から突出する長さを、前記リフィールが前記リフィール挿通部の前端から突出する長さの1/5以上の長さであって、且つ前記リフィールの出没が前記前側軸状部により妨げられない長さに設定した(図1(a)(b)参照)。
【0014】
<具体的実施態様>
次に、上記特徴を有する具体的な実施態様について、図面に基づいて詳細に説明する。
本明細書中、軸筒軸方向とは軸筒の中心線が延設される方向を意味し、軸筒周方向とは軸筒の外周を回る方向を意味する。また、「前」とは、軸筒軸方向の一方側であって筆記部が突出する方向を意味し、「後」とは、前記一方側に対する逆方向側を意味する。
また、軸筒径方向とは軸筒の中心線に直交する軸筒の直径方向を意味し、軸筒径方向外側とは軸筒径方向に沿って軸筒中心から離れる方向を意味し、軸筒径方向内側とは軸筒径方向に沿って軸筒中心に向かう方向を意味する。
【0015】
この筆記具Aは、軸筒10と、この軸筒10内に収容された複数のリフィール20,30と、複数のリフィール20,30をそれぞれ進退可能に挿通して軸筒10内に固定されたリフィール案内部40と、リフィール20,30の後端側にそれぞれ接続された複数のスライド操作体50,60と、リフィール20,30をそれぞれ後方へ付勢する付勢部材70と具備し、スライド操作体50,60を選択して前進させる外部操作により、選択されたスライド操作体50(又は60)に対応するリフィール20(又は30)が軸筒10の前端から突出するように構成してある。
【0016】
軸筒10は、複数の筒状部材を接続して、前後方向へわたる長尺円筒状に構成される。
図中、符号11は、当該筆記具Aの最前端部を構成する先細筒状の先口部11、符号12は、先口部11の後端側に接続され後方へ延設された前軸、符号14は、前軸12の後端側に接続された螺合部材、符号15は、螺合部材14に螺合接続されて後方へ延設された長尺円筒状の後軸である。これらの複数の部材の全部又は一部は、一体の部材から形成したり、図示例よりも数の多い複数の部材から構成したりすることが可能である。
また、図中、符号13は、前軸12の外周面に環状に嵌め合わせられた円筒状の弾性グリップ、符号16は、後軸15の後端部に接続された消しゴム、符号17は、消しゴム16を覆うようにして後軸15の後端側に着脱可能接続された後端キャップである。
【0017】
先口部11は、前方へ向かって軸筒中心へ向かう傾斜内面11aと、この傾斜内面11aの最前端部でリフィール20,30の前端部(筆記部)を挿通する開口11bとを有する。この先口部11は、前進した際のリフィール20(又は30)の前端部を傾斜内面11aに沿わせることで、リフィール20(又は30)の前端側を前方斜め軸筒中心側へ傾斜させる(図1(b)参照)。
【0018】
後軸15は、当該筆記具Aの後半部側の外観を形成する略円筒状の部材である。
この後軸15の後端側の周壁には、後述するスライド操作体50,60をそれぞれ径方向へ挿通する開口部15a,15b(図2及び図3参照)が、周方向に所定の間隔を置いて複数設けられる。
【0019】
一方の開口部15aは、後軸15の周壁を前後方向へわたって長尺状に貫通するとともに、後端部を後方へ開放するようにした横向き凹切欠状に形成される。この開口部15aの後端開口部は、後軸15の後端に装着された後端キャップ17によって閉鎖されている。開口部15aの他例としては、前記切欠状ではなく、前後方向へ長尺な貫通孔とすることも可能である。
この開口部15aにおける軸筒周方向の両側の内側面15a1,15a1は、それぞれ、前後方向へ直線状に延設されている(図2参照)。
【0020】
他方の開口部15bは、後軸15の周壁を前後方向へわたって長尺状に貫通するとともに、その後端部を後方へ開放するようにした横向き凹切欠状に形成される。この開口部15bの後端開口部は、後軸15の後端に装着された後端キャップ17によって閉鎖されている。
この開口部15bにおける軸筒周方向の両側の内側面15b1,15b1は、それぞれ、前後方向へ直線状に延設されている(図3参照)。これら内側面15b1,15b1間の幅は、スライド操作体60の幅に応じて、上記開口部15aにおける内側面15a1,15a1の幅よりも大きく形成される。
【0021】
図1(b)に示すように、開口部15b内における軸筒周方向の一端側と他端側には、それぞれ、シャープペンシル用のスライド操作体60を直線状に前方へ案内する平面状のガイド面部15a2が設けられ、このガイド面部15a2の前端側には、前進して軸筒径方向内側へ沈み込んだスライド操作体60後端の被係止部を掛止する段状の係止部15a3が設けられる。このスライド操作体60の前記被係止部は、後述する当接部61a(図7参照)としても機能する。
これらガイド面部15a2及び係止部15a3には、例えば特許文献1に記載の周知構造を適用することが可能である。
【0022】
また、図示を省略するが、一方の開口部15a内にも、同様にして、ボールペン用のスライド操作体50を直線状に前方へ案内する平面状のガイド面部と、このガイド面部の前端側で前進して軸筒径方向内側へ沈み込んだスライド操作体50後端の被係止部を掛止する段状の係止部とが設けられる。このスライド操作体50の前記被係止部は、後述する当接部51a(図6参照)としても機能する。
【0023】
リフィール20,30は、軸筒10の中心軸周りに、周方向に略同等の間隔を置いて複数(図示例によれば合計5本)設けられる。
一方のリフィール20は、色の異なるボールペン用リフィールであり、4本設けられる。各リフィール20は、インクが充填されたインクタンク21の前端側に、最先端部に転写ボールを抱持した筆記部22(ボールペンチップ)を接続してなる。
インクタンク21は、合成樹脂材料、あるいは金属材料から長尺円筒状に形成される。
【0024】
また、他方の単数のリフィール30は、鉛芯を収容した芯タンク31の前端側に鉛芯繰出し機構32を接続して、シャープペンシル用リフィールを構成している。
芯タンク31は、図示例によれば、合成樹脂材料により長尺円筒状に形成される。なお、この芯タンク31の他例としては、金属材料から形成することも可能である。
鉛芯繰出し機構32は、芯タンク31の進退運動により、前端側の筆記部32aから鉛芯を繰り出す。
【0025】
また、リフィール20,30の他例としては、電子ペン用筆記芯等、図示例以外の機能を有するリフィールや筆記芯とすることが可能である。
【0026】
また、リフィール案内部40は、複数のリフィール挿通部41b1を有する本体部41と、リフィール挿通部41b1の前端から前方へ突出して複数のリフィール20,30の間に位置する前側軸状部42と、本体部41から後方へ突出してリフィール20,30間に位置する後側軸状部43とを一体に具備している。
このリフィール案内部40は、軸筒10内に進退不能且つ回転不能に固定された部材であり、当業者等によってデバイダーと呼称される場合もある。
なお、本実施態様によれば、リフィール案内部40を軸筒10とは別体の部材としたが、リフィール案内部40の他例としては、軸筒10の一部分として軸筒10と一体に構成することも可能である。
【0027】
本体部41は、後軸15の内周面に、円筒状の筒状部41aと、この筒状部41a内の空間を前後方向の中央側で仕切る仕切壁部41bとを有する(図4参照)。
【0028】
筒状部41aにおける仕切壁部41bよりも前側の内周面には、複数のリフィール20,30にそれぞれ嵌り合うように、複数の凹曲面部41a2が設けられる。また、筒状部41aの仕切壁部41bよりも後側の内周面にも、略同構造の複数の凹曲面部が設けられる。
なお、図4中、符号41a1は、軸筒10内周面の凸部に嵌り合って回り止めとなる凹溝であり、当該筆記具Aの組立時には周方向の位置決めのために用いられる。
【0029】
仕切壁部41bには、複数のリフィール20,30をそれぞれ挿通し前後方向へ自在に摺動させるように、軸筒周方向に間隔を置いて複数のリフィール挿通部41b1が設けられる。
各リフィール挿通部41b1は、略円筒状の貫通孔であり、進退する各リフィール20(又は30)を挿通して前後方向へ案内する。
【0030】
前側軸状部42は、仕切壁部41bの中心部から前方の開口11bへ向かって円柱状に突出して、複数のリフィール挿通部41b1の軸筒径方向内側に位置する。
この前側軸状部42は、リフィール20,30よりも撓み易いように、その長さ、材質及び形状が適宜に設定され、前進した際のリフィール20(又は30)に当接されることで前端側を軸筒径方向へ撓ませる。
すなわち、リフィール20(又は30)は、前軸12及び先口部11の内壁面に沿って前進することで、その前端側を軸筒中心側へ傾斜させるようにして撓み、前側軸状部42の前端側に当接して、前側軸状部42を撓ませる(図1(b)参照)。
【0031】
詳細に説明すれば、この前側軸状部42は、ポリプロピレン樹脂により、リフィール20,30と略同外径の中実円筒状に形成される。
この前側軸状部42がリフィール挿通部41b1の前端から突出する長さLは、リフィール20,30がリフィール挿通部41b1の前端から突出する長さの1/5以上(図示例によれば約1/2)の長さであって、且つリフィール20,30の出没が前側軸状部42により妨げられない長さに設定される。(図5参照)
【0032】
すなわち、前側軸状部42の長さLが上記範囲を下回る場合、突出状態のリフィール20(又は30)に対する前側軸状部42の当接力が弱まり、突出状態のリフィール20(又は30)の振動及び騒音を効果的に低減することができない。
また、前側軸状部42の長さLが大きすぎる場合には、前側軸状部42が障害物となり、リフィール20(又は30)の前進が妨げられてしまう。
【0033】
さらに、本実施の形態の好ましい一例では、シャープペンシル用のリフィール30を前進した際に、芯タンク31が前側軸状部42に押圧されて弓形に曲がって芯タンク31内の鉛芯の移動に支障をきたすことのないように、前側軸状部42の長さLや撓み量等を適宜に調整してある。
【0034】
後側軸状部43は、仕切壁部41bの後端面中心部から後方へ突出して、隣接する付勢部材70間の干渉を防いでいる。
【0035】
また、スライド操作体50,60のうち、一方のスライド操作体50は、複数のボールペン用のリフィール20に対応して複数設けられる。各スライド操作体50は、リフィール20の後端部に接続されている。
また、他方のスライド操作体60は、シャープペンシル用のリフィール30に対応して単数設けられ、リフィール30の後端部に接続されている。
【0036】
各スライド操作体50は、軸筒10における開口部15aの内側面15a1に対し、前後方向の一部分で軸筒周方向に当接するとともに、前後方向の他の部分では離隔するように設けられている(図2参照)。
【0037】
詳細に説明すれば、各スライド操作体50は、軸筒周方向両側の側面部51,51を、それぞれ、前後方向へわたる長尺状に延設している(図6参照)。
このスライド操作体50は、軸筒10後端側の開口部15a内にて、各側面部51を、開口部15aの内側面15a1に対向させる(図2参照)。
各側面部51は、前後へわたる延設方向の最後端部に、開口部15aの内側面15a1に対し点状に接触する当接部51aを有するとともに、この当接部よりも前側の部分を、開口部15aの内側面15a1に対し離隔する離隔部51bとしている。
【0038】
各当接部51aは、図6に示すように、側面部51の最後端部において、スライド操作体50の幅方向(軸筒周方向)の一方へ角状に突出している。
なお、この当接部51aは、図示例以外の形状の突起とすることが可能であるが、好ましくは、例えば凸曲面状の突起等、内側面15a1に対し点接触する形状にする。
【0039】
各離隔部51bは、側面部51における当接部51aよりも前側の部分を前方へゆくにしたがって徐々に凹ませている。
この離隔部51bは、図示例によれば、前後方向の中央側を括れさせた凹湾曲面状に形成され、その前後方向のどの位置においても、開口部15aの内側面15a1から離隔している。
【0040】
両側の離隔部51b,51b間の最小幅部分の寸法は、両側の当接部51a,51a間の最大幅部分の寸法W(図6参照)よりも小さく設定される。寸法Wは、当接部51a,51aが開口部15a内に位置するように、両内側面15a1,15a1間の寸法よりも若干小さく設定される。
そして、これらの設定により、当接部51aは、内側面15a1に対し近接又は接触する。そして、各離隔部51bは、内側面15a1との間に僅かな隙間sを確保する。
なお、図2によれば、本発明の特徴を明確にするために、隙間sを大きめに誇張表現しているが、この隙間は、例えば約0.05mm程度である。
【0041】
また、離隔部51bは、当接部51aよりも前側において、内側面15a1に接触しないようにすれば、例えば、前方へ行くにしたがって内側面15a1から徐々に離れてゆく直線状あるいは曲線状の傾斜面等、図示例以外の形状にすることが可能である。
【0042】
また、図6中、符号52は、軸筒10外周面から突出して外部に露出する操作部、符号53は、軸筒10内側から開口部15aの内縁に接して、スライド操作体50が開口部15aから軸筒径方向外側へ抜けるのを阻む抜止め突起、符号54,55は、先に前進したスライド操作体の係止状態を解除するための解除突起、符号56は、リフィール20の後端開口に圧入されるリフィール接続部、符号57は、付勢部材70の後端部に挿入される付勢部材装着部である。
【0043】
他方のスライド操作体60は、図7に示すように、軸筒径方向外側の部分が、スライド操作体50よりも軸筒周方向に幅広に形成され、この幅広部分の後端側にクリップ80を接続するようにしている。
このスライド操作体60は、軸筒10における開口部15bの内側面15b1に対し、前後方向の一部分で軸筒周方向に当接するとともに、前後方向の他の部分では離隔するように設けられている(図3参照)。
【0044】
詳細に説明すれば、各スライド操作体60は、軸筒周方向両側の側面部61,61を、それぞれ、前後方向へわたる長尺状に延設している(図7参照)。そして、このスライド操作体60は、軸筒10後端側の開口部15b内にて、各側面部61を、開口部15bの内側面15b1に対向させる(図3参照)。
【0045】
各側面部61は、上述したスライド操作体50の側面部51と略同様にして、前後へわたる延設方向の最後端部に、開口部15bの内側面15b1に対し点状に接触する当接部61aを有するとともに、この当接部61aよりも前側の部分を、開口部15bの内側面15b1に対し隙間s離れた離隔部61bとしている。
【0046】
なお、図7中、符号62は、軸筒10外周面から突出してクリップ80を揺動操作可能に接続するクリップ接続部、符号63は、軸筒10内側から開口部15bの内縁に接してスライド操作体60が開口部15bから軸筒径方向外側へ抜けるのを阻む抜止め突起、符号64,65は、先に前進したスライド操作体の係止状態を解除するための解除突起、符号66は、リフィール20の後端開口に圧入されるリフィール接続部、符号67は、付勢部材70の後端部に嵌め合わせられる付勢部材装着部、符号68は、クリップ80を閉鎖方向へ付勢する圧縮バネ81を装着するためのバネ装着部である。
【0047】
また、付勢部材70は、各リフィール20(又は30)の後端側に環状に装着された圧縮コイルバネである。
この付勢部材70の前端部は、後側軸状部43の外周面と筒状部41aの内周面との間に嵌め合わせられて、仕切壁部41bの後端面によって受けられる。
また、付勢部材70の後端部は、スライド操作体50(又は60)の付勢部材装着部57(又は67)に環状に嵌め合わせられる。
【0048】
次に、上記構成の筆記具Aについて、その特徴的な作用効果を詳細に説明する。
例えば、全てのリフィール20,30の筆記部22,32aが軸筒10内に没入した状態(図1(a)参照)で、使用者等が筆記具Aを径方向に振った場合、複数のリフィール20,30の前部側が、径方向へ撓むようにして振れるが、その振れは軸筒10中心側の前側軸状部42によって阻まれるため、振れ幅が小さくなり、その振れによる振動及び騒音が小さくなる。
【0049】
また、例えば、クリップ80を前方へ押す操作により、シャープペンシル用のリフィール30が前進した際、その前進中のリフィール30は、筆記部32aを先口部11の傾斜内面11aに摺接させることで、軸筒中心側へ徐々に傾斜するようにして撓み、外周面を前側軸状部42の前端側へ当接する(図1(b)参照)。この後、リフィール30は、さらに前進して、その前端側の筆記部32aを、先口部11の開口11bから突出させる。リフィール30の外周面に当接された前側軸状部42は、前端側を撓ませる。
【0050】
この状態で、リフィール30は、図1(b)に示すように、その前端側において筆記部32aの外周面を、先口部11の開口11b内周面に接するとともに、後端側において芯タンク31の外周面をリフィール案内部40のリフィール挿通部41b1内周面に接する。そして、これら二つの接触箇所の間では、芯タンク31の外周面が、弾性的に撓んだ前側軸状部42の前端側によって押圧される。
これらの接触により、突出状態のリフィール30は、径方向の振動が抑制され、例えば、使用者が当該筆記具Aを径方向へ振った際や、筆記時に筆記具Aが径方向へ振れた際等に、不快な振動及び耳障り騒音が小さくなる。
しかも、筆圧によるリフィール30の撓みが前側軸状部42によって適度に抑制され、良好な筆記感触を得ることができる。
【0051】
なお、ボールペン用のリフィール20についても、同様にして振動及び騒音が小さくなり、良好な筆記感触を得ることができる。
【0052】
また、筆記具Aが径方向へ振られた場合、スライド操作体50,60は、それぞれ、当接部51a,61aを開口部15a,15bの内側面15a1,15b1に対し部分的に当接する(図2及び図3参照)。この当接による接触は、略点接触である。
このため、前記当接による振動及び騒音が、前記接触が前後方向へわたる面接触である場合と比較し、小さくなる。
よって、筆記具Aが突出状態又は没入状態で振られた場合に、スライド操作体50,60の振れによる振動及び騒音を低減することができる。
【0053】
<実験結果>
次に、上記構成の筆記具Aと従来の筆記具について、振動値を測定する比較実験をした結果について説明する。
【0054】
この実験において、従来例は、上記筆記具Aに対し、前側軸状部42を省き、スライド操作体50,60の側面部51,61を、当接部51a,61a及び離隔部51b,61bの無い平坦面状に形成したものである。この従来例では、スライド操作体50,60の側面部51,61が、開口部15a,15bの内側面15a1,15b1に対し略面接触する。
【0055】
実施例X1は、上記筆記具Aに対し、スライド操作体50,60の側面部51,61を、当接部51a,61a及び離隔部51b,61bの無い平坦面状に形成したものである。この実施例X1は、前側軸状部42を有する。
【0056】
また、実施例X2は、上記筆記具Aに対し、前側軸状部42を省いたものである。この実施例X2は、スライド操作体50,60の側面部51,61に、当接部51a,61a及び離隔部51b,61bを有する。
【0057】
これら、従来例及び実施例X1,X2について、先口部11の外周面に振動センサーを固定し、筆記角度:70度、筆記荷重:200g、筆記速度:4.0m/minにて、筆跡がループ状になる筆記を行った。
【0058】
その結果、図8及び図9のグラフに示すとおり、実施例X1,X2は何れも、特に指に振動を感じ易い周波数帯である100~500Hzの範囲において、従来例よりも、振動値が顕著に低くなった。
すなわち、従来例と実施例X1の比較実験により、前側軸状部42による振動抑制効果を確認することができ、また、従来例と実施例X2の比較実験により、当接部51a,61a及び離隔部51b,61bによる振動抑制効果を確認することができた。
【0059】
<変形例>
上記実施態様によれば、特に好ましい一例として、前側軸状部42をポリプロピレンにより形成したが、この前側軸状部の他例としては、ポリプロピレン以外の硬質樹脂材料や、軟質樹脂材料、エラストマー樹脂等から形成することも可能である。
さらに、他例としては、前記前側軸状部の一部をバネや、ゴム等の弾性体により構成することも可能である。
【0060】
また、上記実施態様によれば、特に好ましい一例として、当接部51a,61aをスライド操作体50,60の後端寄り配置したが、他例としては、当接部51a,61aを、側面部51,61の前後方向の中央寄りや前端寄りに配置することも可能である。
【0061】
また、上記実施態様によれば、スライド操作体50,60の側面部51,61に、当接部51a,61a及び離隔部51b,61bを形成したが、他例としては、側面部51,61を平坦面にするとともに、開口部15a,15bの内側面15a1,15b1に、当接部51a,61a及び離隔部51b,61bと略同形状の当接部及び離隔部を設けた態様とすることも可能である。
【0062】
また、上記実施態様によれば、開口部15a,15bの各々を、後方が開口した切欠状に形成したが、この開口部の他例としては、前後方向へ長尺な貫通孔とすることも可能である。
【0063】
また、上記実施態様によれば、スライド操作体50,60の進退操作によりリフィール20,30を出没する複数出没式筆記具を構成したが、他例としては、回転操作により複数のリフィールを選択する複数出没式筆記具に、上記構成のリフィール案内部40を設けるようにしてもよい。この他例によれば、リフィール案内部40の前側軸状部42によって、複数のリフィールの軸筒径方向の振れに起因する振動及び騒音を低減することができる。
【0064】
また、本発明は上述した実施態様に限定されず、本発明の要旨を変更しない範囲で適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0065】
10:軸筒
15a,15b:開口部
20,30:リフィール
40:リフィール案内部
41:本体部
41b1:リフィール挿通部
42:前側軸状部
50,60:スライド操作体
51a,61a:当接部
51b,61b:離隔部
A:筆記具
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9