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特開2022-53841リチウムイオン電池の特性計測方法及びシステム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022053841
(43)【公開日】2022-04-06
(54)【発明の名称】リチウムイオン電池の特性計測方法及びシステム
(51)【国際特許分類】
   H02J 7/00 20060101AFI20220330BHJP
   H02J 7/02 20160101ALI20220330BHJP
   H01M 10/44 20060101ALI20220330BHJP
   H01M 10/48 20060101ALI20220330BHJP
【FI】
H02J7/00 Q
H02J7/02 H
H01M10/44 P
H01M10/48 P
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020160693
(22)【出願日】2020-09-25
(71)【出願人】
【識別番号】591051852
【氏名又は名称】株式会社エヌエステイー
(74)【代理人】
【識別番号】100078776
【弁理士】
【氏名又は名称】安形 雄三
(74)【代理人】
【識別番号】100121887
【弁理士】
【氏名又は名称】菅野 好章
(74)【代理人】
【識別番号】100200333
【弁理士】
【氏名又は名称】古賀 真二
(72)【発明者】
【氏名】服部 貴應
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 窓
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 康之
【テーマコード(参考)】
5G503
5H030
【Fターム(参考)】
5G503BA03
5G503BB02
5G503CA02
5G503CA12
5G503EA09
5H030AA10
5H030AS18
5H030AS20
5H030BB02
5H030BB03
5H030BB21
5H030FF42
5H030FF43
5H030FF44
(57)【要約】
【課題】コストが嵩むことなく、多数のリチウムイオン電池の特性計測を同時に行い得ると共に、低電圧側の精度向上及び回生効率向上を実現するリチウムイオン電池の特性計測方法及びシステムを提供する。
【解決手段】N(≧2)個のリチウムイオン電池を直列に接続し、リチウムイオン電池を定電流充電し、リチウムイオン電池の総電圧を監視し、総電圧が定格電圧以上となったときに、定電流充電を定電圧充電に切り替え、リチウムイオン電池のそれぞれにバランス制御を実施し、定電圧充電の充電電流が定格電流以下となったときに、定電圧充電を停止し、リチウムイオン電池を定電流放電し、リチウムイオン電池の各端子間電圧及び直列接続の電流を計測し、端子間電圧が終止電圧となったときに、定電流放電を停止することを、種々の定電流及び種々の定電圧に対して実施し、N個のリチウムイオン電池の特性を計測する。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
N(≧2)個のリチウムイオン電池を直列に接続し、
前記N個のリチウムイオン電池を定電流充電し、
前記N個のリチウムイオン電池の総電圧を監視し、
前記総電圧が定格電圧以上となったときに、前記定電流充電を定電圧充電に切り替え、
前記N個のリチウムイオン電池のそれぞれにバランス制御を実施し、
前記定電圧充電の充電電流が定格電流以下となったときに、前記定電圧充電を停止し、
前記N個のリチウムイオン電池を定電流放電し、
前記N個のリチウムイオン電池の各端子間電圧及び直列接続の電流を計測し、
前記端子間電圧が終止電圧となったときに、前記定電流放電を停止することを、
種々の定電流及び種々の定電圧に対して実施し、前記N個のリチウムイオン電池の特性を計測することを特徴とするリチウムイオン電池の特性計測方法。
【請求項2】
前記定電圧充電、前記定電圧充電及び前記定電流放電を各種電流、各種電圧について実施するようになっている。請求項1に記載のリチウムイオン電池の特性計測方法。
【請求項3】
前記バランス制御が、前記N個のリチウムイオン電池の各端子間電圧が所定の上限電圧を維持する制御である請求項1又は2に記載のリチウムイオン電池の特性計測方法。
【請求項4】
前記バランス制御時に、前記N個のリチウムイオン電池の各バランス電流を計測し、前記各バランス電流に基づく容量によって特性計測を実施する請求項3に記載のリチウムイオン電池の特性計測方法。
【請求項5】
全体を制御するコントローラと、
N(≧2)個のリチウムイオン電池を直列に接続するセル接続手段と、
前記コントローラに接続され、直列接続された前記N個のリチウムイオン電池を定電流充電、定電圧充電及び定電流放電する充放電電源と、
前記コントローラに接続され、前記N個のリチウムイオン電池の各端子間電圧を計測する電圧計測器と、
前記コントローラからのバランス指令に基づき、前記N個のリチウムイオン電池をバランス制御するバランス回路と、
を具備し、前記N個のリチウムイオン電池に対して前記充放電電源により定電流充電を行うと共に、第1の所定条件により定電圧充電に切り替え、前記バランス回路によるバランス制御が第2の所定条件となったときに、前記充放電電源は定電流放電を行い、前記N個のリチウムイオン電池の端子間電圧が第3の所定条件となったときに放電を停止し、前記N個のリチウムイオン電池の特性を計測することを特徴とするリチウムイオン電池の特性計測システム。
【請求項6】
前記バランス回路が、前記N個のリチウムイオン電池のそれぞれに対応するバランス回路要素で構成されており、
前記バランス回路要素が、
前記リチウムイオン電池の端子間電圧を検出し、電流指令を出力する電圧検出部と、
前記電流指令に従って正又は負方向に電流を流すことが可能で、前記端子間電圧を調整する負荷回路と、
で構成されている請求項5に記載のリチウムイオン電池の特性計測システム。
【請求項7】
前記負荷回路が抵抗スイッチング方式若しくは定電流制御方式である請求項6に記載のリチウムイオン電池の特性計測システム。
【請求項8】
前記第1の所定条件が、前記N個のリチウムイオン電池の総電圧が定格電圧以上であるか否かであり、
前記第2の所定条件が、充電電流が定格電流以下であるか否かであり、
前記第3の所定条件が、前記各端子間電圧が終止電圧あるか否かである請求項5乃至7のいずれかに記載のリチウムイオン電池の特性計測システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はリチウムイオン電池の特性計測方法及びシステムに関し、特に複数のリチウムイオン電池を直列に接続し、同時に複数のリチウムイオン電池の特性計測を行い得る方法及びシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
正極と負極とで挟持されたセパレータで成るリチウムイオン電池(リチウムセル)は、高容量、高安全、長寿命といった特長を有しているため、薄型・軽量化されてスマートフォンやタブレット、ノートパソコンなどの電子機器に広く利用されている。図1は、リチウムイオン電池の外観の一例を示しており、平板状の電池本体10の上面に、正極端子11及び負極端子12が設けられた外観構成となっている。
【0003】
このようなリチウムイオン電池の特性向上のために、近年、電池構成部材の開発が盛んに行われている。そこで欠かせないのが、リチウムイオン電池の特性計測である。リチウムイオン電池の特性計測には、充放電レート特性、充放電容量、充放電サイクル劣化などがあり、いずれの計測もリチウムイオン電池に対して充電及び放電を伴っている。
【0004】
図2は充放電レート計測の特性例を示しており、リチウムイオン電池を満充電した後に定電流で放電させ、時間と共にリチウムイオン電池電圧がどのように低下するかの計測例を示している。定電流の大きさとして、この例では1C(電池の公称容量を1時間で完全放電させる電流値)及び0.2C(電池の公称容量を5時間で完全放電させる電流値)を示しているが、これを更に0.5C、2C、3Cのように電流値を変化させて電圧の計測を繰り返し、総合特性を評価する。
【0005】
このような特性計測システムは図3の構成であり、全体を制御するコントローラ(例えばパソコンやCPU(Central Processing Unit),MPU(Micro Processor Unit),MCU(Micro Controller Unit)などで構成)1Aに、充放電と共に電流検出機能を有する充放電電源2と、端子間電圧を計測する電圧計測器4とが接続されており、充放電電源2及び電圧計測器4の間に1個のリチウムイオン電池(正極及び負極)3が接続されている。
【0006】
このような構成において、CC(定電流)充電/CC(定電流)放電を例として、図4のフローチャートを参照して基本動作を説明する。
【0007】
先ず、コントローラ1Aは充放電電源2に対して正方向の定電流出力を指示し、これにより充放電電源2はリチウムイオン電池3を充電する(ステップS1)。充電期間中、コントローラ1Aは電圧計測器4によりリチウムイオン電池3の端子間電圧を計測し、充放電電源2により充電電流値を計測する(ステップS2)。コントローラ1Aは、電圧計測器4により定格電圧が計測されるまで上記充電を継続し(ステップS3)、計測電圧が定格電圧に達した時点で充電を停止する(ステップS4)。
【0008】
次いで、コントローラ1Aは充放電電源2に対して負方向の定電流出力を指示し、リチウムイオン電池3を放電する(ステップS5)。放電期間中、コントローラ1Aは電圧計測器4によりリチウムイオン電池3の端子間電圧を計測し、充放電電源2により放電電流値を計測する(ステップS6)。コントローラ1Aは、電圧計測器4により終止電圧が計測されるまで上記放電を継続し(ステップS7)、端子間電圧の計測電圧が終止電圧に達した時点で放電を停止する(ステップS8)。
【0009】
上記充放電を複数の定電流について実施し、リチウムイオン電池3の特性を計測する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】WO2017/187637
【特許文献2】WO2018/187888
【特許文献3】特開2011-29139号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上述した従来の特性計測方式の最大の課題は、コストが嵩むことである。即ち、リチウムイオン電池工場では、例えば1000個以上のセルを同時に計測するニーズがあるが、従来の計測方式では、多数のリチウムイオン電池を同時に特性計測する場合には、充放電電源の対象となるリチウムイオン電池の個数と同数だけ用意する必要がある。しかしながら、充放電電源は高価であるため、複数個を用意するとなると、設備費用が膨大になってしまうのが大きな問題である。また、リチウムイオン電池を1個ずつ特性計測すれば、多数のリチウムイオン電池を特性計測する場合には、時間と労力がかかり極めて不経済である。
【0012】
2つ目の課題は、放電時におけるリチウムイオン電池の最小電圧が低いことである。充放電電源で放電すると、リチウムイオン電池の端子間電圧は時間と共に徐々に低下し、遂には終止電圧に至る。しかしながら、終止電圧は非常に低いため、電源によっては放電可能な最小電圧を下回る場合がある。その場合、完全な放電の手前までしか正確な計測を行うことはできず、特性計測の信頼性が損なわれる。一方、放電可能な最小電圧が低い電源もあるが、それらは一般に高価であり、低電圧放電時の電流精度や回生効率など、性能面で不安が残る。
【0013】
本発明は上述のような事情に基づいてなされたものであり、本発明の目的は、コストが嵩むことなく、多数のリチウムイオン電池の特性計測を同時に行い得ると共に、低電圧側の精度向上及び回生効率向上を実現するリチウムイオン電池の特性計測方法及びシステムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明はリチウムイオン電池の特性計測方法に関し、本発明の上記目的は、N(≧2)個のリチウムイオン電池を直列に接続し、前記N個のリチウムイオン電池を定電流充電し、前記N個のリチウムイオン電池の総電圧を監視し、前記総電圧が定格電圧以上となったときに、前記定電流充電を定電圧充電に切り替え、前記N個のリチウムイオン電池のそれぞれにバランス制御を実施し、前記定電圧充電の充電電流が定格電流以下となったときに、前記定電圧充電を停止し、前記N個のリチウムイオン電池を定電流放電し、前記N個のリチウムイオン電池の各端子間電圧及び直列接続の電流を計測し、前記端子間電圧が終止電圧となったときに、前記定電流放電を停止することを、種々の定電流及び種々の定電圧に対して実施し、前記N個のリチウムイオン電池の特性を計測することにより達成される。
【0015】
また、本発明はリチウムイオン電池の特性計測システムに関し、本発明の上記目的は、全体を制御するコントローラと、N(≧2)個のリチウムイオン電池を直列に接続するセル接続手段と、前記コントローラに接続され、直列接続された前記N個のリチウムイオン電池を定電流充電、定電圧充電及び定電流放電する充放電電源と、前記コントローラに接続され、前記N個のリチウムイオン電池の各端子間電圧を計測する電圧計測器と、前記コントローラからのバランス指令に基づき、前記N個のリチウムイオン電池をバランス制御するバランス回路とを具備し、前記N個のリチウムイオン電池に対して前記充放電電源により定電流充電を行うと共に、第1の所定条件により定電圧充電に切り替え、前記バランス回路によるバランス制御が第2の所定条件となったときに、前記充放電電源は定電流放電を行い、前記N個のリチウムイオン電池の端子間電圧が第3の所定条件となったときに放電を停止し、前記N個のリチウムイオン電池の特性を計測することにより達成される。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、多数のリチウムイオン電池(セル)を同時に特性計測でき、非常に効率的かつ経済的である。従来と比較してバランス回路が付加され、充放電容量計測の場合には更に電流センサが付加されるが、これらは充放電電源より遥かに安価であるため、トータルコストが嵩むことはない。
【0017】
また、N個のリチウムイオン電池を直列接続することにより、リチウムイオン電池の総電圧は1セルのN倍となる。これにより、放電時におけるリチウムイオン電池の最小電圧が低いことに起因する充放電電源の課題を解決することができる。即ち、放電可能な最小電圧が低い高価な電源を必要とせず、低電圧放電時の電流精度や回生効率などを心配する必要がなくなる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】リチウムイオン電池の一例を示す外観図である。
図2】リチウムイオン電池の充放電レートの計測例を示す特性図である。
図3】リチウムイオン電池の従来の特性計測システムの構成例を示すブロック図である。
図4】従来の特性計測システムの動作例を示すフローチャートである。
図5】本発明の構成例(第1実施形態)を示すブロック図である。
図6】複数のリチウムイオン電池を直列に接続するセル接続手段の一例を示す外観展開図である。
図7】本発明で使用するダミーセルの一例を示す外観図である。
図8】コントローラの構成例を示すブロック図である。
図9】バランス回路の構成例を示すブロック図である。
図10】バランス回路要素の負荷回路の構成例を示すブロック図である。
図11】本発明の動作例(第1実施形態)を示すフローチャートである。
図12】本発明の構成例(第2実施形態)を示すブロック図である。
図13】本発明の動作例(第2実施形態)を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明では、CPU等で成るコントローラを介して、直列接続された多数個N(≧2)のリチウムイオン電池(以下、「セル」と称する場合もある)の特性計測を1個の充放電電源により同時に行い得ると共に、N個のリチウムイオン電池のそれぞれについてバランス制御を行うバランス回路を設けることにより、低電圧側の精度向上と回生効率の向上とを図り、効率的かつ経済的な特性計測を実現している。
【0020】
以下に、本発明の実施形態を、図面を参照して説明する。
【0021】
図5は、本発明の第1実施形態を図3に対応させて示しており、本発明では全体の制御や判定、管理等をコントローラ1が行い、N個(≧2)のリチウムイオン電池3-1~3-Nをセル接続手段に収容して電気的に直列に接続し、充放電電源2は、直列接続のリチウムイオン電池3-1~3-Nを定電流若しくは定電圧で充放電すると共に、充放電電流を計測し、更に両端部(リチウムイオン電池3-1の正極及びリチウムイオン電池3-Nの負極)の総電圧を計測するようになっている。
【0022】
図6に、N個のリチウムイオン電池3-1~3-Nを直列接続するセル接続手段の構成例を、リチウムイオン電池3-1~3-4の4個とした場合について示し説明する。リチウムイオン電池3-1~3-4にはそれぞれ正極端子3-1P~3-4P及び負極端子3-1N~3-4Nが設けられており、その配置関係は図6に示すように左右方向に正負交互の関係になっている。セル接続手段は、検査のためのリチウムイオン電池を収容する収容体30と、収納したリチウムイオン電池を保持して固定すると共に、電気的な接続を行うための固定部材20とで構成されている。収容体30には、リチウムイオン電池3-1~3-4を入れて収納するための断面矩形状の収納孔31~34が穿設されており、収納孔31~34の上方からリチウムイオン電池3-1~3-4をそれぞれ収納した後、上方より固定部材20を収容体30に装着して固定する構成となっている。
【0023】
固定部材20は、収容体30の上面を覆う平板状の蓋板21を備え、蓋板21の左右側面に、収容体30の側面を摺動して装着を円滑にするための長形状のガイド板22及び23が配設されていると共に、蓋板21の中央部に側板24が延接されている。側板24にはボールねじ25が螺合されており、ボールねじ25を回動することにより、側板24を介して蓋板21が昇降するようになっている。また、蓋板21の下面には電導材で成るプローブPR1~PR8が設けられており、プローブPR1~PR8は電気的に電圧計測器4及びバランス回路5に接続されると共に、プローブPR1は充放電電源2の正端子(+)に、プローブPR7は充放電電源2の負端子(-)にそれぞれ接続されている。プローブPR2及びPR4は導体片26-1により、プローブPR3及びPR5は導体片26-2により、プローブPR6及びPR8は導体片26-3によりそれぞれ接続されている。
【0024】
なお、プローブPR1~PR8の配設位置は、上下方向の関係において、リチウムイオン電池3-1~3-4の正極端子3-1P~3-4P及び負極端子3-1N~3-4Nに対向するようになっており、プローブPR1~PR8は同一の高さに形成されている。プローブPR1~PR8の形状は図示に限定されるものではなく、正極端子及び負極端子に接触若しくは押圧された状態で、電気的に導通できるものであれば良い。
【0025】
このような構成において、リチウムイオン電池3-1~3-4をそれぞれ収容体30の収納孔31~34に収納した後、上方よりガイド板22及び23に沿って固定部材20を収容体30に被せて装着して固定する。その後、ボールねじ25をモータ等により回動することにより、側板24を経て蓋板21が徐々に下降し、遂にはプローブPR1、PR2,PR3,PR4、PR5、PR6、PR7、PR8の各先端がそれぞれ正極端子3-1P、負極端子3-1N、負極端子3-2N、正極端子3-2P、正極端子3-3P、負極端子3-3N、負極端子3-4N、正極端子3-4Pに接触若しくは押圧するので、その状態で停止する。この状態を保持することにより、図5に示すようなリチウムイオン電池3-1~3-4の直列接続を形成することができる。即ち、充放電電源2(+)→プローブPR1→正極端子3-1P→リチウムイオン電池3-1→負極端子3-1N→プローブPR2→導体片26-1→プローブPR4→正極端子3-2P→リチウムイオン電池3-2→負極端子3-2N→プローブPR3→導体片26-2→プローブPR5→正極端子3-3P→リチウムイオン電池3-3→負極端子3-3N→プローブPR6→導体片26-3→プローブPR8→正極端子3-4P→リチウムイオン電池3-4→負極端子3-4N→プローブPR7→充放電電源2(-+)の直列接続の経路を形成できる。
【0026】
また、後述する特性計測に基づいて不良品をセル接続手段から排除した場合には、図7に示すように正負端子を導体片41で短絡したダミーセル40を、排除した不良品の代わりに収納部に収納する。ダミーセル40は正負端子を導体片41で短絡しただけの模擬品なので、コントローラ1はダミーセル40に対するバランス制御や電圧計測を無効化する。
【0027】
なお、上述のセル接続手段では、4個のリチウムイオン電池3-1~3-4について説明しているが、4個に限定されるものではなく、任意の複数の直列接続の構成が可能である。つまり、N個(≧2)のリチウムイオン電池3-1~3-Nを収納孔に入れて収納したときに、プローブや導体片を介して電気的に直列に接続されると共に、リチウムイオン電池3-1~3-Nのそれぞれの正極及び負極を電気的に充放電電源2、電圧計測器4及びバランス回路5に接続可能な構造であれば良い。
【0028】
図8はコントローラ1の機能的な構成例を示しており、CPU1-1が全体の制御等を行い、CPU1-1には充放電電源2、電圧計測器4及びバランス回路5が接続されると共に、充電指令部1-2、放電指令部1-3、電圧判定部1-4、電流判定部1-5、総電圧監視部1-6、切り替え部1-7、バランス指令部1-8が相互に接続されている。
【0029】
また、リチウムイオン電池3-1~3-Nのそれぞれの正極及び負極は、バランス回路5を構成するバランス回路要素5-1~5-Nに接続されると共に、電圧計測器4に接続されている。
【0030】
バランス回路要素5-1~5-Nはいずれも同一の構成であり、例えばリチウムイオン電池3-1に接続されているバランス回路要素5-1の構成は図9に示すようになっている。即ち、リチウムイオン電池3-1の端子間電圧Vtを検出し、端子間電圧Vtに応じた電流指令CMを出力する電圧検出部5-11と、電流指令CMに従って“A→B”又は“B→A”いずれの方向にも指定値の電流を流すことが可能で、それにより端子間電圧Vtを調整する負荷回路5-12とで構成されている。リチウムイオン電池3-1の端子間電圧Vtは電圧検出部5-11で検出され、検出結果として電流指令CMが出力されて負荷回路5-12に入力される。電圧検出部5-11は、端子間電圧Vtが上限電圧V以上の場合に、電流指令CMを出力して“A→B”の方向に電流を流し、端子間電圧Vtの上昇を抑制する。また、端子間電圧Vtが下限電圧V以下の場合に、電流指令CMを出力して“B→A”の方向に電流を流し、端子間電圧Vtの下降を抑制する。
【0031】
負荷回路5-12の構成は、例えば図10(A)に示す抵抗スイッチング方式、又は図10(B)に示す定電流制御方式である。図10(A)に示す抵抗スイッチング方式は、抵抗Rに直列接続されたスイッチ5-122を、電流指令CMに基づく駆動回路5-121によってON/OFF(開閉)するものであり、安価な回路であり、スイッチ5-122のON/OFF頻度を制御することにより所望の平均電流を得る方式である。また、図10(B)に示す定電流制御方式は、電流センサ5-124に直列接続されたFET(Field-Effect Transistor)を、電流指令CMに基づいて、電流センサ5-124の検出電流に従って定電流制御するものであり、高性能で所望の電流を滑らかに精度良く得る方式である。
【0032】
このような構成において、CC(定電流)-CV(定電圧)充電/CC(定電流)放電を例として、図11のフローチャートを参照して基本動作を説明する。下記特性計測を種々の定電流及び定電圧で行い、一定時間が経過しても、端子間電圧Vtが定格電圧に達しないセルがあれば、当該セルを不良品と判定して排除し、代わりに上述したダミーセル40を収納してから、残りのセルで特性計測の判定を継続する。
【0033】
先ず、N個のリチウムイオン電池を図6で説明したようなセル接続手段に収容して、リチウムイオン電池の直列接続を形成する。コントローラ1は、充電指令部1-2から充放電電源2に対して正の定電流出力を指示し、充放電電源2は直列接続された全てのリチウムイオン電池3-1~3-Nを同時に充電する(ステップS10)。充電期間中、コントローラ1は、電圧計測器4によりリチウムイオン電池3-1~3-Nの各端子間電圧Vtを計測すると共に、充放電電源2により直列接続を流れる充電電流を計測する(ステップS11)。また、充放電電源2は、直列接続されたリチウムイオン電池3-1~3-Nの総電圧を検出し(ステップS12)、総電圧監視部1-6により上記総電圧が定格電圧以上であるか否かを判定する(ステップS13)。なお、総電圧は、電圧計測器4で計測される各セルの端子間電圧を加算することによっても得られる。
【0034】
上記ステップS13において総電圧が定格電圧よりも小さいと判定された場合には、上記定電流充電を継続し、総電圧が定格電圧以上になった場合には、切り替え部1-7により定電流充電を定電圧充電に切り替える(ステップS14)。同時に、コントローラ1はバランス指令部1-8からバランス指令BCを出力し、バランス回路5(バランス回路要素5-1~5-N)にリチウムイオン電池3-1~3-Nをそれぞれバランス制御するように指示する(ステップS20)。
【0035】
バランス回路5は、バランス回路要素5-1~5-Nにより各セルの端子間電圧Vtが、それぞれ指定された上限電圧Vを維持するように正側(A→Bの方向)に電流を流す。正側への充電の進行に伴い充電電流は徐々に小さくなるが、コントローラ1の電流判定部1-5は、充電電流が定格電流以下になったか否かを判定する(ステップS30)。上記ステップS30において充電電流が定格電流より大きいと判定された場合には、上記バランス制御を継続し、充電電流が定格電流以下になった場合には、充電指令部1-2により充放電電源2は充電を停止する(ステップS31)。
【0036】
次いで、コントローラ1は、放電指令部1-3により充放電電源2に対して負(B→Aの方向)の定電流出力を指示し、直列接続されたリチウムイオン電池3-1~3-Nを放電する(ステップS40)。放電期間中、コントローラ1は、電圧計測器4によりリチウムイオン電池3-1~3-Nの各端子間電圧Vtを計測し、充放電電源2により直列接続の放電電流を計測する(ステップS41)。コントローラ1は、電圧判定部1-4により電圧計測器4で計測された端子間電圧Vtが終止電圧となるまで上記放電を継続し(ステップS42)、計測された端子間電圧Vtが終止電圧に達した時点で、放電指令部1-3により放電を停止する(ステップS43)。コントローラ1は、N個のセルのうち、1つでも端子間電圧Vtが終止電圧に達したら放電を停止する。
【0037】
上記充放電を複数の定電流、定電圧について実施し、リチウムイオン電池3-1~3-Nの特性を同時に計測する。
【0038】
次に、リチウムイオン電池の充放電容量計測を行う場合の本発明の実施形態(第2実施形態)を、図5に対応させた図12に示して説明する。
【0039】
本第2実施形態では、バランス回路5によるバランス制御時の、リチウムイオン電池3-1~3-Nの各バランス電流を計測するための電流センサ6-1~6-Nが、各セルの負極に接続されている。なお、電流センサ6-1~6-Nは、各セルの正極に接続されていても良い
このような構成において、CC(定電流)-CV(定電圧)充電/CC-CV
放電を例として、基本動作を図13のフローチャートを参照して説明する。下記の特性計測を行い、計測電流値と時間からセル容量を計算し、規定容量に満たないセルがあれば、当該セルを不良品と判定して排除し、代わりに上述したダミーセル40を収納してから、残りのセルで特性計測の判定を継続する。
【0040】
先ず、N個のリチウムイオン電池を図6で説明したようなセル接続手段に収容して、リチウムイオン電池の直列接続を形成する。コントローラ1は、充電指令部1-2から充放電電源2に対して正の定電流出力を指示し、充放電電源2は直列接続された全てのリチウムイオン電池3-1~3-Nを同時に充電する(ステップS10)。充電期間中、コントローラ1は、電圧計測器4によりリチウムイオン電池3-1~3-Nの各端子間電圧Vtを計測すると共に、充放電電源2により直列接続を流れる充電電流を計測する(ステップS11)。また、充放電電源2は直列接続されたリチウムイオン電池3-1~3-Nの総電圧を検出し(ステップS12)、総電圧監視部1-6により総電圧が定格電圧以上であるか否かを判定する(ステップS13)。
【0041】
上記ステップS13において総電圧が定格電圧よりも小さいと判定された場合には、上記定電流充電を継続し、総電圧が定格電圧以上になった場合には、切り替え部1-7により定電流充電を定電圧充電に切り替える(ステップS14)。同時に、コントローラ1はバランス指令部1-8からバランス指令BCを出力し、バランス回路5(バランス回路要素5-1~5-N)にリチウムイオン電池3-1~3-Nをバランス制御するように指示する(ステップS20)。
【0042】
バランス回路5は、バランス回路要素5-1~5-Nにより各セルの端子間電圧Vtが、それぞれ指定された上限電圧Vを維持するように正側(A→Bの方向)に電流を流す。この時、後の容量計算のために、電流センサ6-1~6-Nにより各セルのバランス電流を計測する(ステップS20A)。正側への充電の進行に伴い充電電流は徐々に小さくなるが、コントローラ1の充電判定部1-5は、充電電流が定格電流以下になったか否かを判定する(ステップS30)。上記ステップS30において充電電流が定格電流より大きいと判定された場合には、上記バランス制御を継続し、充電電流が定格電流以下になった場合には、充電指令部1-2により充放電電源2は充電を停止すると共に(ステップS31)、放電時間の計測を開始する(ステップS32)。
【0043】
次いで、コントローラ1は、放電指令部1-3により充放電電源2に対して負(B→Aの方向)の定電流出力を指示し、直列接続されたリチウムイオン電池3-1~3-Nを放電する(ステップS40)。放電期間中、コントローラ1は、電圧計測器4によりリチウムイオン電池3-1~3-Nの各端子間電圧Vtを計測し、充放電電源2により直列接続の放電電流を計測する(ステップS41)。コントローラ1は、電圧判定部1-4により電圧計測器4で計測された端子間電圧Vtが終止電圧となるまで上記放電を継続し(ステップS42)、計測された端部電圧Vtが終止電圧に達した時点で、放電指令部1-3により放電を停止する(ステップS43)。コントローラ1は、N個のセルのうち、1つでも端子間電圧Vtが終止電圧に達したら放電を停止する。
【0044】
そして、計測している放電時間が規定時間以上となったときに終了となるが(ステップS43)、規定時間より前に終止電圧になるセルは放電容量不足なので、不良セルとして排除し、ダミーセル40と交換する(ステップS44)。
【0045】
上記充放電を複数の定電流、定電圧について実施し、リチウムイオン電池3-1~3-Nの特性を計測する。
【0046】
本発明では、N個(複数)のリチウムイオン電池に対して、1個の充放電電源があれば良いので、大幅なコストダウンが可能となる。本発明は従来方式より、バランス回路や電流センサ(充放電容量計測のみに必要)が増えるが、これらは充放電電源より遥かに安価であるため、トータルコストの低さは変わらない。また、N個のリチウムイオン電池を直列接続することにより、セルの総電圧は1セルのN倍となる。これにより、放電時におけるセルの最小電圧が低いことに起因する充放電電源の課題を解決できる。つまり、放電可能な最小電圧が低い高価な電源を必要とせず、低電圧放電時の電流精度や回生効率などを心配する必要がなくなる。
【符号の説明】
【0047】
1、1A コントローラ
1-1 CPU
1-2 充電指令部
1-3 放電指令部
1-4 電圧判定部
1-5 電流判定部
1-6 総電圧監視部
1-7 切り替え部
1-8 バランス指令部
2 充放電電源
3、3-1~3-N リチウムイオン電池(セル)
4 電圧計測器
5 バランス回路
5-1~5-N バランス回路要素
6-1~6-N 電流センサ
10 電池本体
11 正極端子
12 負極端子
20 固定部材
21 蓋部
22,23 ガイド
30 収容体
31~34 収納孔
40 ダミーセル
図1
図2
図3
図4
図5
図6
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図10
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図13