(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022053928
(43)【公開日】2022-04-06
(54)【発明の名称】スライドボード装置
(51)【国際特許分類】
B60R 5/04 20060101AFI20220330BHJP
【FI】
B60R5/04 T
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020160825
(22)【出願日】2020-09-25
(71)【出願人】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】110001117
【氏名又は名称】特許業務法人ぱてな
(72)【発明者】
【氏名】稲葉 博隆
(72)【発明者】
【氏名】古澤 克仁
【テーマコード(参考)】
3D022
【Fターム(参考)】
3D022BA06
3D022BB03
3D022BC09
(57)【要約】
【課題】構造を簡素化しつつ、高い利便性を発揮可能なスライドボード装置を提供する。
【解決手段】本発明のスライドボード装置1aは、第1ボード3と、第2ボード5と、第1ヒンジ機構7と、移動機構としてのスライドレール機構9とを備えている。第1ヒンジ機構7は、第1ボード3と第2ボード5とを接続する。また、第1ヒンジ機構7は、第1揺動軸心O1周りで第2ボード5を前後方向に揺動させる。これにより、第2ボード5は、第1ボード3の上方に略水平で重なる第1位置と、車両100の高さ方向に略垂直に起立する第2位置と、第1ボード3の前方に位置して第1ボード3と略平行に延びる第3位置との間で変位する。第1ヒンジ機構7は、少なくとも第1位置、第2位置及び第3位置において第2ボード5を保持可能である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車室と、前記車室に連通する荷室とを有する車両に用いられるスライドボード装置であって、
前記車両の前後方向及び前記車両の幅方向に延びる板状に形成され、荷物を載置可能な第1ボードと、
前記前後方向及び前記幅方向に延びる板状に形成されて前記第1ボードと別体をなし、前記荷物を載置可能な第2ボードと、
前記第1ボードの前方に配置され、前記第1ボードと前記第2ボードとを接続するとともに、前記幅方向に延びる第1揺動軸心周りで前記第2ボードを前記第1ボードと独立して前記前後方向に揺動させる第1ヒンジ機構と、
前記荷室に設けられて前記第1ボードと接続し、前記第1ボードを前記前後方向に移動させる移動機構とを備え、
前記第2ボードは、前記第1ボードの上方に略水平で重なる第1位置と、前記車両の高さ方向に略垂直に起立する第2位置と、前記第1ボードの前方に位置して前記第1ボードと略平行に延びる第3位置との間で変位し、
前記第1ヒンジ機構は、少なくとも前記第1位置、前記第2位置及び前記第3位置において前記第2ボードを保持可能であることを特徴とするスライドボード装置。
【請求項2】
前記第1ヒンジ機構は、前記第1位置、前記第2位置及び前記第3位置の間における任意の位置で前記第2ボードを保持可能である請求項1記載のスライドボード装置。
【請求項3】
前記前後方向及び前記幅方向に延びる板状に形成されて前記第1ボード及び前記第2ボードと別体をなし、前記荷物を載置可能な第3ボードと、
前記第2ボードを挟んで前記第1ヒンジ機構とは反対となる個所に配置され、前記第2ボードと前記第3ボードとを接続するとともに、前記幅方向に延びる第2揺動軸心周りで前記第3ボードを前記第1ボード及び前記第2ボードと独立して前記前後方向に揺動させる第2ヒンジ機構とを備え、
前記第3ボードは、前記高さ方向で前記第2ボードに略水平で重なる第4位置と、前記高さ方向に略垂直に起立する第5位置と、前記第2ボードの前方に位置して前記第1ボード及び前記第2ボードと略平行に延びる第6位置との間で変位し、
前記第2ヒンジ機構は、少なくとも前記第4位置、前記第5位置及び前記第6位置において前記第3ボードを保持可能である請求項1又は2記載のスライドボード装置。
【請求項4】
前記第2ヒンジ機構は、前記第4位置、前記第5位置及び前記第6位置の間における任意の位置で前記第3ボードを保持可能である請求項3記載のスライドボード装置。
【請求項5】
前記第1ボードと前記第2ボードとは同一形状である請求項1乃至4のいずれか1項記載のスライドボード装置。
【請求項6】
前記荷物を保持可能な保持部材を備え、
前記第1ボードには、前記保持部材を挿通させつつ取り付け可能な複数の取付孔が形成されている請求項1乃至4のいずれか1項記載のスライドボード装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はスライドボード装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に従来のスライドボード装置が開示されている。このスライドボード装置は、車両に用いられている。車両は、車室と荷室とを有しており、車室と荷室とは連通している。また、車室にはシートが設けられている。シートは、車室内を車両の前後方向に移動可能となっている。
【0003】
スライドボード装置は、第1ボードと、第2ボードと、移動機構とを備えている。第1ボードは、車両の前後方向及び幅方向に延びる板状に形成されている。第1ボードは、前後方向に略水平な状態で荷室内に配置されている。第2ボードは、第1ボードよりも小型であり、前後方向及び幅方向に延びる板状に形成されている。第2ボードは、シートに接続されており、前後方向に略水平な状態で荷室内に延びている。第2ボードは、第1ボードの下方に進入することにより、第1ボードの下方に略水平で重なっている。移動機構は荷室に設けられて第2ボードと接続している。移動機構は、第2ボードを前後方向に移動させることが可能である。
【0004】
このスライドボード装置では、車両に収容された荷物が荷室内で第1ボードに載置される。また、このスライドボード装置では、車室内でシートを車両の前方に移動させること伴い、移動機構が第2ボードを第1ボードに対して前方向に移動させる。これにより、このスライドボード装置では、第2ボードが第1ボードの前方に引き出された状態となる。こうして、このスライドボード装置では、第1ボードと第2ボードとの間に車両の高さ方向の段差が生じているものの、第1ボードに加えて、第2ボードにも荷物を載置することが可能となっている。これにより、このスライドボード装置では、より多くの荷物や第1ボードのみでは載置しきれない大型の荷物を車両に収容可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上記従来のスライドボード装置では、第2ボードを前後方向に移動可能とするに当たり、シート及び移動機構の両方に第2ボードを接続していることから、構造が複雑である。
【0007】
また、この種のスライドボード装置では、更なる利便性の向上が要求されものの、上記従来のスライドボード装置は、第1ボートが前後方向に移動不可能であり、車両に対する荷物の搬入作業及び搬出作業を行い難いことから、利便性の向上が難しい。
【0008】
本発明は、上記従来の実情に鑑みてなされたものであって、構造を簡素化しつつ、高い利便性を発揮可能なスライドボード装置を提供することを解決すべき課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のスライドボード装置は、車室と、前記車室に連通する荷室とを有する車両に用いられるスライドボード装置であって、
前記車両の前後方向及び前記車両の幅方向に延びる板状に形成され、荷物を載置可能な第1ボードと、
前記前後方向及び前記幅方向に延びる板状に形成されて前記第1ボードと別体をなし、前記荷物を載置可能な第2ボードと、
前記第1ボードの前方に配置され、前記第1ボードと前記第2ボードとを接続するとともに、前記幅方向に延びる第1揺動軸心周りで前記第2ボードを前記第1ボードと独立して前記前後方向に揺動させる第1ヒンジ機構と、
前記荷室に設けられて前記第1ボードと接続し、前記第1ボードを前記前後方向に移動させる移動機構とを備え、
前記第2ボードは、前記第1ボードの上方に略水平で重なる第1位置と、前記車両の高さ方向に略垂直に起立する第2位置と、前記第1ボードの前方に位置して前記第1ボードと略平行に延びる第3位置との間で変位し、
前記第1ヒンジ機構は、少なくとも前記第1位置、前記第2位置及び前記第3位置において前記第2ボードを保持可能であることを特徴とする。
【0010】
本発明のスライドボード装置では、第2ボードが第1ヒンジ機構によって第1ボードに接続されている。これにより、第2ボードは、第1ボードが移動機構によって車両の前後方向に移動する際、第1ボードと一体で前後方向に移動可能である。こうして、このスライドボード装置では、第2ボードを前後方向に移動可能とするに当たり、第2ボードをシート及び移動機構に接続する場合に比べて、構造を簡素化できる。
【0011】
そして、このように第1ボードと第2ボードとが一体で前後方向に移動可能であることから、このスライドボード装置では、第1ボードや第2ボードに荷物を載置しつつ、荷室を通じて車両に荷物を搬入したり、荷室を通じて車両から荷物を搬出したりすることができる。このため、このスライドボード装置によれば、多くの荷物を一度で容易に搬入及び搬出可能である他、荷物や重量のある荷物であっても容易に搬入及び搬出可能である。こうして、このスライドボード装置によれば、荷物の搬入作業及び搬出作業を容易化できる。
【0012】
また、このスライドボード装置において、第2ボードは、第1ヒンジ機構によって揺動することで、第1位置、第2位置及び第3位置に変位可能である。このため、例えば、第2ボードが第1位置となることにより、第2ボード上に荷物を載置することができる。ここで、第1ヒンジ機構は、少なくとも第1位置、第2位置及び第3位置において第2ボードを保持可能である。このため、スライドボード装置では、荷物の搬入作業時や搬出作業時の他、車両の走行時等に第2ボードが不意に第1位置、第2位置及び第3位置に変位することを防止できる。この結果、このスライドボード装置では、第2ボードが第1位置にある際には、第2ボード上で荷物を安定的に載置できる。
【0013】
また、第1ヒンジ機構が第2位置で第2ボードを保持することにより、第1ボード上に荷物を載置可能となる。そして、この状態で第1ボード及び第2ボードを前後方向に移動させることにより、第1ボード上に載置された荷物を車両に搬入可能であるとともに車両から搬出可能である。この際、第2位置にある第2ボードは、第1ボード上に載置されている荷物が搬入及び搬出時に第1ボードから落下することを防止できる。また、第2位置にある第2ボードは、車両内において、荷室と車室とを仕切る仕切り壁としても機能する。これにより、第1ボード上に載置されて車両に収容された荷物が車室内の乗員から見え難くなるとともに、車両の走行時の振動等によって、荷物が車室内に移動することを防止できる。また、第1ヒンジ機構によって第2ボードが第2位置で保持されるため、このスライドボード装置では、車両の走行時等において、第2ボードが荷物に向かって倒れたり、第2ボードが車室に向かって倒れたりし難い。
【0014】
さらに、第1ヒンジ機構が第3位置で第2ボードを保持することにより、第1ボード上及び第2ボード上に荷物を載置可能となる。これにより、第1ボード又は第2ボードのみでは載置できないようなより多くの荷物やより大きな荷物を車両に収容することができる。また、第2ボードが第3位置にある状態で第1ボード及び第2ボードを前後方向に移動させることにより、多くの荷物や大きな荷物に対する搬入作業及び搬出作業も容易化できる。
【0015】
したがって、本発明のスライドボード装置は、構造を簡素化しつつ、高い利便性を発揮する。
【0016】
第1ヒンジ機構は、第1位置、第2位置及び第3位置の間における任意の位置で第2ボードを保持可能であることが好ましい。この場合には、利便性をより高くすることができる。
【0017】
また、本発明のスライドボード装置は、前後方向及び幅方向に延びる板状に形成されて第1ボード及び第2ボードと別体をなし、荷物を載置可能な第3ボードと、第2ボードを挟んで第1ヒンジ機構とは反対となる個所に配置され、第2ボードと第3ボードとを接続するとともに、幅方向に延びる第2揺動軸心周りで第3ボードを第1ボード及び第2ボードと独立して前後方向に揺動させる第2ヒンジ機構とを備え得る。第3ボードは、高さ方向で第2ボードに略水平で重なる第4位置と、高さ方向に略垂直に起立する第5位置と、第2ボードの前方に位置して第1ボード及び第2ボードと略平行に延びる第6位置との間で変位し得る。そして、第2ヒンジ機構は、少なくとも第4位置、第5位置及び第6位置において第3ボードを保持可能であることが好ましい。
【0018】
この場合、例えば第1ヒンジ機構が第3位置で第2ボードを保持し、第2ヒンジ機構が第5位置で第3ボードを保持することにより、このスライドボード装置では、上記のように、第1、2ボード上に荷物を載置することができる。そして、第5位置にある第3ボードは、荷物の搬入作業及び搬出作業の際に第1、2ボード上に載置されている荷物が第1、2ボードから落下することを好適に防止できる他、車両の走行時に荷物が第1、2ボードから落下することを防止できる。
【0019】
また、第1ヒンジ機構が第3位置で第2ボードを保持し、第2ヒンジ機構が第6位置で第3ボードを保持することにより、第1~第3ボード上に荷物を載置可能となる。これにより、このスライドボード装置では、更に多くの荷物や更に大きな荷物を車両に収容することができる。また、第2ボードが第3位置にあり、かつ、第3ボードが第6位置にある状態で第1~第3ボードを前後方向に移動させることにより、荷物に対する搬入作業及び搬出作業も容易化できる。ここで、第2ヒンジ機構は、少なくとも第4位置、第5位置及び第6位置において第3ボードを保持可能であるため、このスライドボード装置では、荷物の搬入作業時や搬出作業時の他、車両の走行時等に第3ボードが不意に第4位置、第5位置及び第6位置に変位することについても防止できる。
【0020】
また、第2ヒンジ機構は、第4位置、第5位置及び第6位置の間における任意の位置で第3ボードを保持可能であることが好ましい。これにより、利便性をより一層高くすることができる。
【0021】
第1ボードと第2ボードとは同一形状であることが好ましい。この場合には、第1ボードと第2ボードとを共通化できるため、上記の作用を奏しつつ、製造コストの低廉化が可能となる。
【0022】
また、本発明のスライドボード装置は、荷物を保持可能な保持部材を備え得る。そして、第1ボードには、保持部材を挿通させつつ取り付け可能な複数の取付孔が形成されていることが好ましい。
【0023】
この場合には、保持部材が荷物を保持することにより、車両の走行時の振動等によって荷物が不意に移動することを好適に防止できる。ここで、保持部材は取付孔に挿通されて取付孔に取り付けられるため、保持部材の取り付けも容易である。そして、取付孔は第1ボードに複数形成されているため、第1ボードに保持部材を取り付けるに当たって、取付孔を選択することができる。これにより、このスライドボード装置では、荷物の形状に応じて保持部材の位置等を好適に決定することができるため、利便性を高くすることができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明のスライドボード装置は、構造を簡素化しつつ、高い利便性を発揮する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】
図1は、実施例1のスライドボード装置等を示す断面図である。
【
図2】
図2は、実施例1のスライドボード装置に係り、第1ボード、第2ボード及び第1ヒンジ機構を示す斜視図である。
【
図3】
図3は、実施例1のスライドボード装置に係り、
図1のA-A断面を示す要部拡大断面図である。
【
図4】
図4は、実施例1のスライドボード装置等を示す断面図である。
【
図5】
図5は、実施例1のスライドボード装置等を示す断面図である。
【
図6】
図6は、実施例1のスライドボード装置等を示す断面図である。
【
図7】
図7は、実施例1のスライドボード装置等を示す断面図である。
【
図8】
図8は、実施例1のスライドボード装置等を示す断面図である。
【
図9】
図9は、実施例1のスライドボード装置を示す断面図である。
【
図10】
図10は、実施例1のスライドボード装置を示す断面図である。
【
図11】
図11は、実施例2のスライドボード装置に係り、第1ボード、第2ボード、第1ヒンジ機構及び保持部材等を示す斜視図である。
【
図12】
図12は、実施例3のスライドボード装置に係り、第1ボード、第2ボード、第3ボード、第1ヒンジ機構及び第2ヒンジ機構を示す斜視図である。
【
図13】
図13は、実施例3のスライドボード装置を示す断面図である。
【
図14】
図14は、実施例3のスライドボード装置を示す断面図である。
【
図15】
図15は、実施例3のスライドボード装置を示す断面図である。
【
図16】
図16は、比較例のスライドボード装置等を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明を具体化した実施例1~3を図面を参照しつつ説明する。
【0027】
(実施例1)
図1に示すように、実施例1のスライドボード装置1aは、車両100に用いられている。このスライドボード装置1aは、第1ボード3と、第2ボード5と、第1ヒンジ機構7と、スライドレール機構9とを備えている。スライドレール機構9は、本発明における「移動機構」の一例である。なお、
図1では、説明を容易にするため、スライドボード装置1aや車両100の形状を簡略化及び誇張化して図示している。
図2等についても同様である。
【0028】
本実施例では、
図1に示す各矢印によって、車両100の前後方向及び上下方向を規定している。また、
図2では、
図1に対応して車両100の前後方向及び上下方向を規定している他、車両100の左右方向を規定している。上下方向は、本発明における「高さ方向」に相当しており、左右方向は、本発明における「幅方向」に相当している。そして、
図3以降では、
図1及び
図2に対応して、車両100の前後方向、上下方向及び左右方向を規定している。これらの前後方向、上下方向及び左右方向は互いに直交している。
【0029】
図1に示すように、車両100は、ルーフパネル101と、フロアパネル102と、リヤパネル103と、リヤバンパ104と、バックドア105とを有している。ルーフパネル101は、車両100の上部に設けられており、車両100の天井を構成している。フロアパネル102は、車両100の下部に設けられており、車両100の床を構成している。リヤパネル103は、車両100の後部に設けられており、フロアパネル102の後部と接続している。リヤバンパ104はリヤパネル103に取り付けられている。リヤパネル103及びリヤバンパ104と、ルーフパネル101との間には、開口106が形成されている。バックドア105は、ルーフパネル101の後端に揺動可能に取り付けられている。これにより、バックドア105は
図5及び
図6に示すように、開口106を開放可能であるとともに、
図1、
図4、
図7、及び
図8に示すように、開口106を閉鎖可能である。なお、ルーフパネル101及びフロアパネル102等の形状は適宜設計可能である。
【0030】
また、車両100は、車室107と荷室108とを有している。車室107及び荷室108は、ルーフパネル101と、フロアパネル102との間に設けられている。車室107は、車両100の乗員(図示略)が搭乗可能となっている。車室107には、シート109が設けられている。また、図示及び説明を省略するものの、車両100には走行に必要な動力装置等が設けられている。
【0031】
シート109は、基部109aと座部109bと背もたれ部109cとを有している。基部109aは、フロアパネル102と座部109bとの間に設けられており、シート109をフロアパネル102に取り付けている。座部109bには乗員(図示略)が着座可能となっている。背もたれ部109cは、座部109bの後部に対して揺動可能に取り付けられている。これにより、背もたれ部109cは、
図1及び
図4~
図7に示すように、座部109bに対して略直角に起立する起立状態と、
図8に示すように、座部109bの上方に重なりつつ前後方向に略水平に倒れる水平状態とに変位可能となっている。
【0032】
荷室108は、車室107の後方に位置しており、車室107と連通している。また、荷室108は、開口106を通じて車両100の外部と連通可能となっている。荷室108には、スライドボード装置1aが設けられている他、収納ボックス110が設けられている。収納ボックス110は樹脂製であり、荷室108においてフロアパネル102上に配置されている。収納ボックス110には、収納室110aが形成されている。収納室110aは上部が荷室108に開いており、内部に
図4に示す荷物201等を収納可能となっている。
【0033】
図2に示すように、第1ボード3は、樹脂製の板材によって形成されており、一定の剛性を有している。第1ボード3は、前後方向及び左右方向に延びる略矩形状をなしている。
図3に示すように、第1ボード3は、第1表面3aと、第1裏面3bと、第1右側面3cと、第1左側面3dとを有している。第1表面3aには、荷物201~207を載置可能となっている。第1裏面3bは、第1表面3aの反対側に位置している。第1裏面3bには、第1ブラケット11aと第2ブラケット11bとが固定されている。
図2に示すように、第1ブラケット11aと第2ブラケット11bとは、左右方向に離隔して配置されており、それぞれ第1裏面3bから下方に向かって延びているとともに、前後方向に延びている。ここで、第1、2ブラケット11a、11bにおける前後方向の長さは、第1ボード3の前後方向の長さよりも短く設定されている。
図3に示すように、第1右側面3cは、第1ボード3の右端に位置している。第1左側面3dは、第1ボード3の左端に位置している。
図2に示すように、第1右側面3c及び第1左側面3dは、それぞれ第1ボード3の前端から後端まで延びつつ、第1表面3aと第1裏面3bとに接続している。なお、
図2では、説明を容易にするため、スライドレール機構9の図示を省略している。
【0034】
図3に示すように、第2ボード5は、第1ボード3と同様に樹脂製の板材によって形成されており、第1ボード3と同等の剛性を有している。
図2に示すように、第2ボード5は、第1ボード3と同一の形状であり、前後方向及び左右方向に延びる略矩形状をなしている。これにより、第2ボード5は、第2表面5aと、第2裏面5bと、第2右側面5cと、第2左側面5dとを有している。第2表面5aには、荷物201~207を載置可能となっている。
図3に示すように、第2裏面5bは、第2表面5aの反対側に位置している。第2裏面5bには、荷物201を載置可能となっている。第2右側面5cは、第2ボード5の右端に位置している。第2左側面5dは、第2ボード5の左端に位置している。第2右側面5c及び第2左側面5dは、それぞれ第2表面5aと第2裏面5bとに接続している。第1、2ボード3、5における前後方向及び左右方向の長さは、荷室108の大きさに応じて適宜設計可能である。また、第1、2ボード3、5の板厚は、第1、2ボード3、5に要求される剛性に応じて適宜設計可能である。また、第1、2ボード3、5を金属の板材等で形成しても良い。
【0035】
図2に示すように、第1ヒンジ機構7は、左右一対で設けられている。第1ヒンジ機構7は、第1ボード3の前方に設けられている。より具体的には、第1ヒンジ機構7の一方は、第1ボード3の右前方に設けられており、第1ヒンジ機構7の他方は、第1ボード3の左前方に設けられている。第1ヒンジ機構7は、第1本体部7aと、第1接続部7bと、第2接続部7cとを有している。
【0036】
第1本体部7aは、内部にギヤ及びギヤストッパ(いずれも図示略)が設けられており、第2ボード5を後述する第1位置と第2位置と第3位置との間で揺動させることが可能となっている。また、第1本体部7aは、第1位置、第2位置及び第3位置の間における任意の角度で第2ボード5を保持可能となっている。第1接続部7bは、第1本体部7aと接続しつつ、第1本体部7aから第1ボード3に向かって延びている。第2接続部7cは、第1本体部7aと接続しつつ、第1本体部7aから第2ボード5に向かって延びている。
【0037】
第1ヒンジ機構7は、第1接続部7bを第1ボード3に接続するとともに、第2接続部7cを第2ボード5に接続する。具体的には、第1ボード3の右前方に設けられた第1ヒンジ機構7では、第1接続部7bを第1ボード3の第1右側面3cに接続し、第2接続部7cを第2ボード5の第2右側面5cに接続する。また、第1ボード3の左前方に設けられた第1ヒンジ機構7では、第1接続部7bを第1ボード3の第1左側面3dに接続し、第2接続部7cを第2ボード5の第2左側面5dに接続する。こうして、第1ヒンジ機構7は、第1ボード3と第2ボード5との間において、第1ボード3と第2ボード5とを接続している。
【0038】
そして、第1ヒンジ機構7は、第1ボード3と第2ボード5とを接続した状態を維持しつつ、左右方向に延びる第1揺動軸心O1周りで第2ボード5を第1ボード3とは独立して前後方向に揺動させる。これにより、第2ボード5は、
図1及び
図3~
図5に示す第1位置と、
図2、
図6及び
図7に示す第2位置と、
図8に示す第3位置とに変位可能となっている。
【0039】
第2ボード5は、
図1等に示す第1位置となることにより、第1ボード3の上方に略水平で重なる状態となる。つまり、第1位置では、第1ボード3の第1表面3aと第2ボード5の第2表面5aとが対面する状態となり、第2ボード5の第2裏面5bが車両100の上方、すなわち荷室108の上方に面する状態となる。
【0040】
また、第2ボード5は、
図2等に示す第2位置となることにより、第1ボード3に対して、上方に略直角に起立する状態となる。この第2位置では、第2ボード5の第2表面5aが車両100の後方に面する状態となり、第2裏面5bが車両100の前方、すなわち車室107に面する状態となる。
【0041】
そして、第2ボード5は、
図8に示す第3位置となることにより、第1ボード3の前方に位置しつつ、略水平に延びる状態となる。この第3位置では、第2ボード5の第2表面5aが車両100の上方に面する状態となり、第2裏面5bが車両100の下方に面する状態となる。第2ボード5が第3位置にある状態でスライドボード装置1aを車両100内に収容することにより、第2ボード5の一部は車室107内に侵入する。また、第3位置では、第2表面5aと第1表面3aとが略面一となる。ここで、略面一とは、第2表面5aと第1表面3aとが完全に面一である場合の他、第2表面5aと第1表面3aとの間に僅かな段差が不可避的に生じる場合とを含む概念である。
【0042】
図3に示すように、スライドレール機構9は、左右一対で荷室108に設けられている。より具体的には、スライドレール機構9の一方は、荷室108の右方に設けられており、スライドレール機構9の他方は、荷室108の左方に設けられている。この際、両スライドレール機構9は、双方の間に収納ボックス110を配置可能に左右方向に離隔して配置されている。
【0043】
スライドレール機構9は、第1レール91と、第2レール92と、第3レール93と、複数のベアリング94と、固定フレーム95とを有している。第1レール91は、断面が略C字形状をなしており、車両100の前後方向に延びている。第2レール92は、断面が略C字形状をなしており、車両100の前後方向に延びている。第2レール92は、第1レール91内に配置されており、第1レール91に対して前後方向に相対移動可能となっている。第3レール93は、断面が略矩形状をなしており、車両100の前後方向に延びている。第3レール93は、第2レール92内に配置されており、第2レール92に対して前後方向に相対移動可能となっている。各ベアリング94は、第1レール91と第2レール92の間と、第2レール92と第3レール93の間とにそれぞれ設けられており、第2レール92及び第3レール93を前後方向に移動させる。固定フレーム95は、一端で第1レール91と固定されており、他端でフロアパネル102と固定されている。こうして、スライドレール機構9は、荷室108においてフロアパネル102に固定されている。
【0044】
また、荷室108の右方に設けられたスライドレール機構9では、第3レール93に対して第1ブラケット11aが固定されている。同様に、荷室108の左方に設けられたスライドレール機構9では、第3レール93に対して第2ブラケット11bが固定されている。こうして、スライドレール機構9は、第1、2ブラケット11a、11bを介して第1ボード3と接続している。
【0045】
スライドレール機構9は、第1レール91に対して第2レール92が前後方向に相対移動するとともに、第2レール92に対して第3レール93が前後方向に相対移動することにより、第1ボード3を前後方向に移動させる。
【0046】
具体的には、
図1等に示すように、スライドレール機構9において、第1レール91に対して第2レール92が前方向に相対移動し、第2レール92に対して第3レール93が前方向に相対移動すれば、第1ボード3は前方に移動する。これにより、第1ボード3は、開口106を通じて車両100の外部から荷室108、ひいては車両100内に侵入する。
【0047】
一方、
図5及び
図6に示すように、スライドレール機構9において、第1レール91に対して第2レール92が後方向に相対移動し、第2レール92に対して第3レール93が後方向に相対移動すれば、第2レール92及び第3レール93は、それぞれ開口106を通じて荷室108から車両100の外部に延びる状態となる。これにより、第1ボード3は後方に移動し、開口106を通じて荷室108から車両100の外部に移動する。
【0048】
以上のように構成されたスライドボード装置1aでは、
図3~
図5に示すように、スライドボード装置1aの使用者(図示略)が第2ボード5を第1位置に変位させるとともに、第1ヒンジ機構7が第2ボード5を第1位置で保持することにより、第2ボード5の第2裏面5b上に荷物201を載置可能となる。なお、使用者とは、車両100の乗員の他、車両100に対する荷物201~207の搬入作業又は搬出作業を行う作業者等である。
【0049】
また、このスライドボード装置1aでは、
図6及び
図7に示すように、使用者が第2ボード5を第2位置に変位させるとともに、第2ヒンジ機構15が第2ボード5を第2位置で保持することにより、第1ボード3の第1表面3a上に荷物201を載置可能となる。
【0050】
さらに、このスライドボード装置1aでは、
図8に示すように、使用者が第2ボード5を第3位置に変位させるとともに、第2ヒンジ機構15が第2ボード5を第3位置で保持する。この際、使用者は、シート109の背もたれ部109cを水平状態に変位させる。これにより、スライドボード装置1aでは、第2ボード5が第1ボード3の前方に位置して車室107内に進入した状態となる。ここで、第2ボード5の一部は、水平状態にある背もたれ部109cに支持される。こうして、第2ボード5が第3位置になることにより、第1ボード3の第1表面3a上と、第2ボード5の第2表面5a上とに荷物201や荷物202等を載置可能となる。
【0051】
また、このスライドボード装置1aでは、第1本体部7aが第1位置、第2位置及び第3位置の間における任意の角度で第2ボード5を保持可能であるため、例えば、
図9に示すように、使用者が第2ボード5を第1位置と第2位置との間となる角度に揺動させるとともに、第1ヒンジ機構7がこの位置で第2ボード5を保持することも可能である。この場合には、第1ボード3の第1表面3a上に荷物201を載置可能であるとともに、第2ボード5が荷物201を上方から覆う状態となる。これにより、第2ボード5を荷物201に対する蓋材として機能させることができる。
【0052】
さらに、
図9に示すように、使用者が第2ボード5を第2位置と第3位置との間となる角度に揺動させるとともに、第1ヒンジ機構7がこの位置で第2ボード5を保持することも可能である。この場合には、第1表面3a上に載置された荷物203の一部を第2ボード5が当接しつつ支持することが可能となる。なお、
図9及び
図10では、説明を容易にするため、スライドレール機構9等の図示を省略している。
【0053】
そして、このスライドボード装置1aでは、第1ボード3には、第2ボード5及び第1ヒンジ機構7が接続されている。このため、このスライドボード装置1aでは、第1ボード3がスライドレール機構9によって車両100の前後方向に移動する際、第2ボード5及び第1ヒンジ機構7は、第1ボード3と一体で前後方向に移動可能となっている。こうして、このスライドボード装置1aでは、第2ボード5を前後方向に移動可能とするに当たり、第2ボード5をシート109やスライドレール機構9に接続する必要がない。
【0054】
そして、このように第1ボード3、第2ボード5及び第1ヒンジ機構7が一体で前後方向に移動可能であることから、このスライドボード装置1aでは、第1ボード3の第1表面3aの他、第2ボード5の第2表面5aや第2裏面5bに荷物201等を載置しつつ、開口106を通じて車両100に荷物201等を搬入したり、開口106を通じて車両100から荷物201等を搬出したりすることが可能となっている。このため、このスライドボード装置1aによれば、多くの荷物201等を一度で搬入及び搬出可能である他、荷物201等について、使用者の腕力だけでは搬入及び搬出することが困難な重量である場合であっても、搬入及び搬出を行い易くなっている。こうして、このスライドボード装置1aによれば、荷物201等の搬入作業及び搬出作業を容易化できる。
【0055】
また、このスライドボード装置1aにおいて、第2ボード5は、第1ヒンジ機構7によって第1位置から第3位置までの間で変位可能である。そして、第1ヒンジ機構7は、第1位置、第2位置及び第3位置を含め、第1位置から第3位置までの任意の角度で第2ボード5を保持可能である。これらのため、例えば、
図4に示すように、第2ボード5が第1位置となり、第2ボード5の第2裏面5b上に荷物201が載置されている際に、車両100の走行による振動等によって第2ボード5が不意に第2位置や第3位置に変位することを防止できる。このため、第2ボード5上で荷物201等を安定的に載置可能となっている。また、第1ヒンジ機構7が第2ボード5を保持することにより、第2ボード5は第1位置等を維持しつつ、第1ボード3とともに前後方向に移動することができる。このため、このスライドボード装置1aでは、荷物201等の搬入作業及び搬出作業の際に、第2ボード5が不意に第2位置や第3位置に変位することについても好適に防止することが可能となっている。
【0056】
特に、第2ボード5が第2位置及び第3位置に変位可能であることから、このスライドボード装置1aでは、上記の各作用に加えて、下記の作用も奏することができる。以下、このスライドボード装置1aにおける作用について、
図16に示す比較例のスライドボード装置10との対比を基に説明する。
【0057】
比較例のスライドボード装置10は、第2ボード5及び第1ヒンジ機構7を備えていな点を除いて、実施例1のスライドボード装置1aと同一の構成である。これにより、スライドボード装置10では、第1ボード3の第1表面3a上にのみ荷物201等を載置可能となっている。
【0058】
ここで、第1ボード3と第2ボード5とは同一の形状である。このため、第1ボード3における荷物201等の載置可能範囲と、第2ボード5における荷物201等の載置可能範囲とは等しくなっている。これにより、比較例のスライドボード装置10であっても、実施例1のスライドボード装置1aにおいて、第2ボード5が第1位置にある場合には、載置可能な荷物201等の個数や大きさは同じである。
【0059】
しかし、比較例のスライドボード装置10において、荷物201の搬入作業及び搬出作業を行うに当たって、第1ボード3に荷物201を載置しつつ、第1ボード3を前後方向に移動させた際、第1ボード3上で荷物201が移動し、
図16の白色矢印で示すように、第1ボード3から収納ボックス110の収納室110a内等に落下し易くなる。また、比較例のスライドボード装置10では、車両100の走行時にも第1ボード3上で荷物201が移動し易くなることから、第1ボード3から荷物201が落下し易くなる。特に、第1ボード3上で複数の荷物201を上下方向に積み重ねた場合には、荷物201の移動によって、第1ボード3上で荷物201の荷崩れが生じ易くなることから、第1ボード3から荷物201がより落下し易くなる。
【0060】
また、比較例のスライドボード装置10では、第1ボード3に載置可能な荷物201等の数や大きさの制限を受け易い問題がある。
【0061】
これに対し、実施例1のスライドボード装置1aでは、
図6及び
図7に示すように、第1ヒンジ機構7が第2位置で第2ボード5を保持した状態で第1ボード3に荷物201を載置することにより、荷物201の搬入作業及び搬出作業を行うことができる。これにより、第2位置にある第2ボード5は、荷物201の落下防止壁として機能する。このため、実施例1のスライドボード装置1aでは、たとえ第1ボード3上に複数の荷物201を上下方向に積み重ねた場合であっても、第1ボード3から収納室110a内等に荷物201が落下することを好適に防止することができる。また、
図7に示すように、第2位置にある第2ボードは、車両100内において、荷室108と車室107とを仕切る仕切り壁としても機能する。このため、第2ボード5は、上下方向に積み重ねられた荷物201が車両100の走行時の振動等によって荷崩れすることを好適に防止できる。また、車両100の急停止等により、たとえ荷物201が荷崩れした場合であっても、その荷物201が車室107内に移動することを防止できる。さらに、実施例1のスライドボード装置1aでは、第1ボード3上に荷物201が積み重ねられている場合であっても、第2ボード5によって、この荷物201が車室107内の乗員から見え難くすることができる。ここで、第1ヒンジ機構7によって第2ボード5が第2位置で保持されるため、実施例1のスライドボード装置1aでは、搬入作業時や搬出作業時の他、車両100の走行時において、第2ボード5が荷物201に向かって倒れたり、車両100内で第2ボード5が車室107に向かって倒れたりし難くなっている。
【0062】
また、実施例1のスライドボード装置1aでは、第1ヒンジ機構7が第3位置で第2ボード5を保持することにより、第1ボード3上及び第2ボード5上に荷物201~203等を載置可能となる。これにより、比較例のスライドボード装置10に比べて、より多くの荷物201を載置可能である他、第1ボード3単体や第2ボード5単体よりも大きな荷物202、203等を車両100に好適に収容することができる。また、実施例1のスライドボード装置1aでは、第2ボード5が第3位置にある状態で第1ボード3を前後方向に移動させることにより、このような多くの荷物201や大きな荷物202、203に対する搬入作業及び搬出作業も容易となっている。
【0063】
したがって、実施例1のスライドボード装置1aは、構造を簡素化しつつ、高い利便性を発揮する。
【0064】
特に、このスライドボード装置1aでは、第1ボード3と第2ボード5とが同一形状であるため、第1ボード3と第2ボード5とを共通化することが可能となっている。これにより、このスライドボード装置1aでは、上記の作用を奏しつつ、製造コストの低廉化も可能となっている。
【0065】
また、このスライドボード装置1aでは、第1ボード3が荷室108内に位置することにより、
図3に示すように、第1ボード3は収納ボックス110の上方に配置される。これにより、第1ボード3は収納室110aに対する蓋部材として機能するため、収納室110aを閉鎖するための専用の部材が不要となっている。これにより、このスライドボード装置1aは、収納ボックス110の利便性を高めつつ、車両100の製造コストを低廉化することも可能となっている。
【0066】
(実施例2)
図11に示すように、実施例2のスライドボード装置1b、第1、2ボード3、5、第1ヒンジ機構7及びスライドレール機構9に加えて、保持部材21a~21iを備えている。このスライドボード装置1bも、車両100に用いられている。なお、
図11では、スライドレール機構9の図示を省略している。
【0067】
各保持部材21a~21iは、円柱状をなす金属材を屈曲させることによって形成されている。各保持部材21a~21iのうち、保持部材21a~21gについては、それぞれ大きさが異なっている。また、保持部材21fと保持部材21hとは同一の形状であり、保持部材21gと保持部材21iとは同一の形状である。
【0068】
このスライドボード装置1bにおいて、各保持部材21a~21iの個数は適宜設計可能であり、また、例えば、保持部材21aのみを複数用いても良い。また、各保持部材21a~21iについて略C字形状となるように屈曲させているが、これに限らず、荷物201や荷物204等の形状に応じて他の形状に屈曲していても良い。また、各保持部材21a~21iは、樹脂材等によって形成されても良い。さらに、各保持部材21a~21iは、円柱に限らず、角柱の金属材や樹脂材等によって形成されていても良い。また、各保持部材21a~21iは、屈曲させずに軸方向に延びる柱状に形成されても良い。
【0069】
また、このスライドボード装置1bでは、第1ボード3に対して複数の第1取付孔30が形成されているとともに、第2ボード5に対して複数の第2取付孔50が形成されている。第1取付孔30は、本発明における「取付孔」の一例である。
【0070】
各第1取付孔30は、第1ボード3の第1表面3aから第1裏面3bまで貫通している。各第2取付孔50は、第2ボード5の第2表面5aから第2裏面5bまで貫通している。これらの各第1取付孔30の個数と、各2取付孔30の個数とは同数である。
【0071】
各第1取付孔30及び各第2取付孔50は、同径をなす丸孔である。つまり、各第1取付孔30と各第2取付孔50とは同一の形状である。各第1取付孔30及び各第2取付孔50は、各保持部材21a~21iを挿通しつつ、自己の内部で各保持部材21a~21iを保持可能となっている。なお、各第1取付孔30及び各第2取付孔50は、各保持部材21a~21iの形状に応じて、矩形状等の孔をなしていても良い。また、各第1取付孔30は、第1ボード3の第1表面3aに凹設されていても良く、各第2取付孔50は、第2ボード5の第2裏面5bに凹設されていても良い。このスライドボード装置1bにおける他の構成は、実施例1のスライドボード装置1aと同様であり、同一の構成については同一の符号を付して構成に関する詳細な説明を省略する。
【0072】
詳細な図示を省略するものの、このスライドボード装置1bにおいても、実施例1のスライドボード装置1aと同様、第1ボード3及び第2ボード5に対して、荷物201~203を載置可能である。また、このスライドボード装置1bでは、各第1取付孔30や各第2取付孔50に対して各保持部材21a~21iを挿通して取り付けることにより、第1ボード3や第2ボード5に各保持部材21a~21iを設けることが可能となっている。これにより、このスライドボード装置1bでは、荷物204~206の周囲に各保持部材21a~21iを配置しつつ、各保持部材21a~21iによって荷物204~206を保持することができる。この際、このスライドボード装置1bでは、第1、2ボード3、5に各保持部材21a~21iを取り付けるに当たって、複数の第1取付孔30や第2取付孔50の中から最適な第1取付孔30や第2取付孔50を選択することができる。これにより、このスライドボード装置1bでは、荷物204~206の形状に応じて各保持部材21a~21iの位置や個数を好適に決定することができる。こうして、このスライドボード装置1bでは、荷物201に比べて上下方向に長い荷物204、205や、球体をなす荷物206であっても、運搬作業時や搬出作業時の他、車両100の走行時に荷崩れが生じ難くなっている。
【0073】
ここで、スライドボード装置1bでは、各保持部材21a~21iは、各第1取付孔30や各第2取付孔50に挿通されて各第1、2取付孔30、50に取り付けられるため、各保持部材21a~21iの取り付けも容易となっている。これらのため、このスライドボード装置1bでは、利便性がより高くなっている。このスライドボード装置1bにおける他の作用は、実施例1のスライドボード装置1aと同様である。
【0074】
(実施例3)
図12に示すように、実施例3のスライドボード装置1cは、第1、2ボード3、5、第1ヒンジ機構7及びスライドレール機構9に加えて、第3ボード13及び第2ヒンジ機構15を備えている。このスライドボード装置1cも、車両100に用いられている。なお、
図12では、スライドレール機構9の図示を省略している。後述する
図13~
図15についても同様である
【0075】
第3ボード13は、第1、2ボード3、5と同様に樹脂製の板材によって形成されており、第1、2ボード3、5と同等の剛性を有している。第3ボード13についても、前後方向及び左右方向に延びる略矩形状をなしている。ここで、第3ボード13における前後方向の長さは、第1、2ボード3、5の前後方向の長さに比べて短くなっている。第3ボード13は、第3表面13aと、第3裏面13bと、第3右側面13cと、第3左側面13dとを有している。
【0076】
第3表面13aには、
図13に示す荷物201を載置可能となっている他、
図15に示す荷物207を載置可能となっている。また、図示を省略するものの、第3表面13aには、第2ボード5との組み合わせにより、荷物202~206についても載置可能である。第3裏面13bは、第3表面13aの反対側に位置している。
図12に示すように、第3右側面13cは、第3ボード13の右端に位置している。第3左側面13dは、第3ボード13の左端に位置している。第3右側面13c及び第3左側面13dは、それぞれ第3表面13aと第3裏面13bとに接続している。なお、第3ボード13についても、金属の板材等で形成しても良い。
【0077】
第2ヒンジ機構15についても、第1ヒンジ機構7と同様に左右一対で設けられている。第2ヒンジ機構15は、第2ボード5において第1ヒンジ機構7との接続箇所とは反対側、つまり、第2ヒンジ機構15は、第1ヒンジ機構7に対して第2ボード5を挟んだ反対側となる個所であって、第2ボード5と第3ボード13との間に設けられている。より具体的には、第2ヒンジ機構15の一方は、第2ボード5及び第3ボード13の右側に設けられており、第2ヒンジ機構15の他方は、第2ボード5及び第3ボード13の左側に設けられている。第2ヒンジ機構15は、第2本体部15aと、第3接続部15bと、第4接続部15cとを有している。
【0078】
第2本体部15aは、第1本体部7aと同様の構成であり、第3ボード13を後述する第4位置と第5位置と第6位置との間で揺動させることが可能となっている。また、第2本体部15aは、第4位置、第5位置及び第6位置の間における任意の角度で第3ボード13を保持することが可能となっている。第3接続部15bは、第2本体部15aと接続しており、第2本体部15aから第2ボード5に向かって延びている。第4接続部15cは、第2本体部15aと接続しており、第2本体部15aから第3ボード13に向かって延びている。
【0079】
第2ヒンジ機構15は、第3接続部15bを第2ボード5に接続するとともに、第4接続部15cを第3ボード13に接続する。具体的には、第2、3ボード5、13の右側に設けられた第2ヒンジ機構15では、第3接続部15bを第2ボード5の第2右側面5cに接続し、第4接続部15cを第3ボード13の第3右側面13cに接続する。一方、第2、3ボード5、13の左側に設けられた第2ヒンジ機構15では、第3接続部15bを第2ボード5の第2左側面5dに接続し、第4接続部15cを第3ボード13の第3左側面13dに接続する。こうして、第2ヒンジ機構15は、第2ボード5と第3ボード13との間において、第2ボード5と第3ボード13とを接続している。
【0080】
そして、第2ヒンジ機構15は、第2ボード5と第3ボード13とを接続した状態を維持しつつ、左右方向に延びる第2揺動軸心O2周りで第3ボード13を第1、2ボード3、5とは独立して前後方向に揺動させる。これにより、第3ボード13は、
図13に示す第4位置と、
図14に示す第5位置と、
図12及び
図16に示す第6位置とに変位可能となっている。
【0081】
第2ボード5は、
図13に示す第4位置となることにより、第2ボード5の上方に略水平で重なる状態となる。つまり、第4位置では、第2ボード5の第2裏面5bの一部と第3ボード13の第3裏面13bとが対面する状態となり、第3ボード13の第3表面13aが車両100の上方に面する状態となる。
【0082】
また、第3ボード13は、
図14に示す第5位置となることにより、第2ボード5に対して、上方向に略直角に起立する状態となる。この第5位置では、第3ボード13の第3表面13aが車両100の後方に面する状態となり、第3裏面13bが車両100の前方に面する状態となる。
【0083】
そして、第3ボード13は、
図15に示す第6位置となることにより、第2ボード5の前方に位置しつつ、略水平に延びる状態となる。この第6位置では、第3ボード13の第3表面13aが車両100の上方に面する状態となり、第3裏面13bが車両100の下方に面する状態となる。第3ボード13が第6位置にあり、かつ、第2ボード5が第3位置にある状態でスライドボード装置1cを車両100内に収容することにより、第3ボード13は、第2ボード5よりも更に車室107内の前方に侵入する。また、第6位置では、第3表面13a、第1表面3a及び第2表面5aが略面一となる。なお、この略面一についても、第3表面13a、第1表面3a及び第2表面5aが完全に面一である場合の他、第3表面13aと第2表面5aと第3表面13aとの間に僅かな段差が不可避的に生じる場合とを含む概念である。このスライドボード装置1cにおける他の構成は、実施例1のスライドボード装置1aと同様である。
【0084】
このスライドボード装置1cでは、
図13に示すように、使用者が第2ボード5を第1位置に変位させるとともに、第3ボード13を第4位置に変位させる。そして、第1ヒンジ機構7が第2ボード5を第1位置で保持し、第2ヒンジ機構15が第3ボード13を第4位置で保持することにより、第2ボード5の第2裏面5bと、第3ボード13の第3裏面13bとに荷物201等を載置可能となる。
【0085】
また、このスライドボード装置1cでは、
図14に示すように、使用者が第2ボード5を第3位置に変位させるとともに、第3ボード13を第5位置に変位させる。そして、第1ヒンジ機構7が第2ボード5を第3位置で保持し、第2ヒンジ機構15が第3ボード13を第5位置で保持することにより、第1ボード3の第1表面3aと、第2ボード5の第2表面5aとに荷物201や荷物202を載置可能となる。この際、第5位置にある第3ボード13は、荷物201、202の落下防止壁として機能する。このため、このスライドボード装置1cでは、搬入作業時や搬出作業時の他、車両100の振動等によっても、第1、2ボード3、5に載置された荷物201、202が荷崩れし難くなっている。
【0086】
さらに、このスライドボード装置1cでは、
図15に示すように、使用者が第2ボード5を第3位置に変位させるとともに、第3ボード13を第6位置に変位させる。そして、第1ヒンジ機構7が第2ボード5を第3位置で保持し、第2ヒンジ機構15が第3ボード13を第6位置で保持する。これにより、第1、2ボード3、5の組み合わせだけでは載置し難い大型の荷物207について、第1ボード3の第1表面3aと、第2ボード5の第2表面5aと、第2ボード5の第2表面5aとに載置可能となる。また、この状態では、
図14に示す状態に比べて、より多くの荷物201を載置可能となる。
【0087】
また、詳細な図示を省略するものの、このスライドボード装置1cでは、載置する荷物201等の形状に応じて、第3ボード13について、第4位置から第6位置までの間の任意の角度で保持することにより、荷物201等を好適に載置することが可能となる。
【0088】
さらに、このスライドボード装置1cでは、
図13に示すように、第4位置にある第3ボード13は、第2ボード5の上方に略水平で重なる状態となる。これにより、このスライドボード装置1cでは、第3ボード13が第1ボード3の前方に突出することがない。こうして、このスライドボード装置1cでは、第3ボード13及び第2ヒンジ機構15を有しつつも、全体としての大型化を抑制している。このスライドボード装置1cにおける他の作用は、実施例1のスライドボード装置1aと同様である。
【0089】
以上において、本発明を実施例1~3に即して説明したが、本発明は上記実施例1~3に制限されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更して適用できることはいうまでもない。
【0090】
例えば、実施例1~3のスライドボード装置1a~1cにおいて、第1ボード3と第2ボード5とを異なる形状としても良い。この際、第2ボード5には、第2位置にある際における車両100の後方視界を確保するための窓部等を設けても良い。
【0091】
また、実施例2のスライドボード装置1bにおいて、第2ボード5に対する第2取付孔50の形成を省略しても良い。
【0092】
さらに、実施例3のスライドボード装置1cにおいて、第3ボード13を第1、2ボード3、5と同一の形状としたり、第3ボード13を第1、2ボード3、5よりも大型に形成したりしても良い。
【0093】
また、実施例3のスライドボード装置1cにおいて、第3ボード13、第2ヒンジ機構15に加えて、第4ボード及び第3ヒンジ機構等を設けても良い。
【0094】
さらに、実施例3のスライドボード装置1cにおいて、第4位置にある第3ボード13は、第1ボード3と第2ボード5との間、すなわち、第2ボード5の下方で第2ボード5に略水平で重なっても良い。
【0095】
また、実施例2のスライドボード装置1bの構成と、実施例3のスライドボード装置1cの構成とを組み合わせてスライドボード装置を形成しても良い。
【0096】
さらに、第1ヒンジ機構7は、第1ボード3と第2ボード5とを接続しつつ、第2ボード5を第1~3位置に揺動可能であれば、他の構成であっても良い。同様に、第2ヒンジ機構15は、第2ボード5と第3ボード13とを接続しつつ、第3ボード13を第4~6位置に揺動可能であれば、他の構成であっても良い。
【0097】
また、第1ヒンジ機構7は、電動によって第2ボード5を第1~3位置に揺動させても良い。同様に、第2ヒンジ機構15は、電動によって第3ボード13を第4~6位置に揺動させても良い。
【0098】
さらに、第1ヒンジ機構7は、第2ボード5を第1位置、第2位置及び第3位置にのみ保持可能であっても良い。同様に、第2ヒンジ機構15は、第3ボード13を第4位置、第5位置及び第6位置にのみ保持可能であっても良い。
【0099】
また、実施例1~3のスライドボード装置1a~1cでは、本発明における「移動機構」として、スライドレール機構9を採用しているが、これに限らず、他の機構を採用しても良い。
【0100】
さらに、スライドレール機構9において、第3レール93を省略したり、第1~3レール91~93の他にレールを設けたりしても良い。
【産業上の利用可能性】
【0101】
本発明は、乗用自動車や産業車両等の車両に利用可能である。
【符号の説明】
【0102】
1a~1c…スライドボード装置
3…第1ボード
5…第2ボード
7…第1ヒンジ機構
9…スライドレール機構(移動機構)
13…第3ボード
15…第2ヒンジ機構
21a~21i…保持部材
30…第1取付孔(取付孔)
100…車両
107…車室
108…荷室
201~207…荷物
O1…第1揺動軸心
O2…第2揺動軸心